JPH0647839B2 - 構造物の建設方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、農家の建物、工場および飛行機の格納庫のよ
うに、周縁部で支持される屋根の下の広い領域を覆う構
造物の建設方法に係わり、特に、屋根の骨組みとなる梁
にプレストレス（ポストテンション）を与える建設方法
に関する。

より詳細には、本発明は、構造物の屋根の骨組みが、複
数のトラス梁を互いに固定して１つのトラスユニットと
して構成するオーストラリア特許第505,679号に記載さ
れたトラス構造のポストテンション技術を用いたもので
ある。

［従来技術］ トラス梁は、上弦材と下弦材とを有している。ここで、
トラス梁が両端支持の場合には、上弦材には圧縮力が作
用する。また、上弦材は、そのような圧縮力が作用しな
い状態、つまり、両端支持でない状態において直線状あ
るいはアーチ状をなす材料で構成される。

一方、下弦材には、金属管とこの金属管内に挿入された
加張ケーブルとで構成されたものがある。このような下
弦材においては、加張ケーブルを金属管に対して引っ張
る、すなわちポストテンションにより金属管に圧縮力を
加え、これによって、アーチ状に撓ませることができ
る。この場合の下弦材の全長は変化するが、その全長は
上弦材と下弦材との間の距離、トラス梁を構成する鉛直
材及び斜材、さらに上弦材の変形の容易性などによって
影響される。

上弦材及び下弦材は各腹材との格点によって複数の区分
に区画され、各区分のそれぞれによって湾曲形状を形成
する。上下弦材の各区分の長さつまり格間長を適当に設
定することにより、上弦材に所望の湾曲形状が与えられ
る。

ポストテンションによる湾曲形状の変化がかなり僅かな
場合には、上弦材は無理なく撓む。しかしながら、ポス
トテンションで下弦材の長さを大幅に減少させなければ
ならない場合には、上弦材に過度な曲げが生じてしま
う。この場合には、上弦材を複数の部分に分割して夫々
をヒンジ機構で連結することにより、過度な変形を回避
することができる。そして、そのように構成することに
より、上弦材の端部の接線角が互いに０度の状態から９
０度までになる程度の変形が可能となる。

アーチ、連続梁等の構造は、上記のようなヒンジ機構を
用いて築造され、そのような場合、上弦材のたわみ又は
曲がりの程度は、加張ケーブルによって変形を受ける金
属管の長さによってのみ制限を受けることになる。

下弦材の全長変化を大きくとるために、下弦材のうち各
格点の近傍に下弦材の長手方向に伸縮可能な滑り継手を
介在させることがある。このようなトラス梁では、下弦
材が滑り継手の縮小端まで縮められた後に下弦材の金属
管に圧縮力が作用し、この圧縮力は上弦材及び下弦材の
変形に対する抵抗となる。

構造物を形成しあるいは撓ませて持ち上げるために必要
な力よりもケーブルに与えられた張力が大きければ大き
い程、下弦材に蓄えられたエネルギがより大きく、上下
弦材間の腹材にかかる負荷が大きい。プリロードシステ
ムは、そのような下弦材に蓄えられたエネルギーを、風
や地震および使用に際して使用する負荷に対向して作用
させることにより、構造物の強度および剛性を増加させ
るものである。

代表的なプリロードは、ポストテンションによって構造
物の形状を形成するのに必要な引張力の０．１〜１００
倍とされている。

下弦材に圧縮力が作用している場合の下弦材の各区分ど
うしの間における変形は、加張ケーブルの外周と金属管
の内周によって構成される空間の大きさによって制御さ
れる。この空間即ち隙間は、各弦材のうわぞりの所望
度、および腹材どうしの間の距離に対する金属管の寸法
の比に依存しており、３〜１００mm程度といわれてい
る。

加張ケーブルの外周と管部材の内壁との間の空間は、通
常、ポルトランドセメント、水および化学添加材のセメ
ント物質で埋められ、これによって、加張ケーブルは金
属管内に固定されるとともに、滑り継手がその縮小端に
おいて固定される。

滑り継手の管壁は、好ましくはTanθ＝０．１〜１．
０、深さが１〜１０mmあるいはそれ以上の一定の傾斜を
有する波型を有する形状部材から構成される。

これらの内部には上記セメント物質が充填され、必要な
強度が下弦材に付与される。

構造物の下弦材が加張ケーブルによる力より大きい負荷
を受けた時、金属管の圧縮の反力は下弦材に沿う方向へ
向かう張力に変換される。

構造物での外部印加負荷に耐えるように印加される湾曲
ケーブル発生力の原理は公知である。しかし、この概念
は、トラス梁システムに印加される外部負荷を支えるた
めの反発力を相互に生み出す互いに曲率の異なる加張ケ
ーブルと金属管においても当てはまる。

圧縮された下弦材の金属管は、過剰のケーブルエネルギ
を貯蔵し、外部力の印加時に加張されたケーブルの方法
と同じ方法でこのエネルギを解放する。

実験によれば、屋根トラス棟木／梁の下弦材を上方に湾
曲させるポストテンションケーブルの張力は、下方に印
加される力を発生し、従って風によって生じる浮力に耐
えられる。構造物自身の重さを支持するために要求され
る力より過剰のこれらの力のエネルギは、構造物の過剰
の変形なしに管の前圧縮下弦材部材に蓄えられる。

「発明が解決しようとする課題」 本発明の課題は、上記に記載の構造物を地上レベルで組
み立て、構造物の中央部フレームをポストテンションに
よって所望の形状とし、その後クレーンを用いないで最
終の形状とするとともに構造物を持ち上げることにあ
る。

「課題を解決するための手段」 本発明は、複数の腹材で互いに接続された上弦材及び下
弦材で構成された中央フレームを地上で組み立て、中央
フレームの外縁部に支柱の端部を水平方向の軸線回りに
回転自在に連結し、下弦材に設けられるとともに下弦材
の両端部まで延長させられたケーブルでポストテンショ
ンを施すことにより、中央フレームに所望の形状を付与
し、下弦材の端部と支柱の自由端との間を連結している
ケーブルでポストテンションを施すことにより、支柱を
回転させて同支柱を略水平位置から略垂直位置まで持ち
上げて、これによって、中央フレームを最終位置まで上
昇させることを特徴とする。

さらに本発明は、複数の腹材で互いに接続された上弦材
及び下弦材で構成された中央部フレームを地上で組み立
て、この中央フレームの外周側に、複数の腹材で互いに
接続された上弦材及び下弦材で構成された外側フレーム
を組み立て、この外側フレームの上弦材の外縁部に支柱
の端部を水平方向の軸線回りに回転自在に連結し、中央
及び外側フレームの下弦材に設けられるとともに、端部
が支柱に沿って延在させられたケーブルでポストテンシ
ョンを施すことにより中央フレーム及び外側フレームに
所望の形状を付与し、次に、ケーブルの端部を支柱の自
由端から引き出すようにして加張することにより、支柱
を回転させて同支柱を略水平位置から略垂直位置まで持
ち上げ、これによって、中央フレームを上昇させ、同時
にジャッキ手段によって中央フレームを持ち上げること
を特徴としている。なお、中央フレームや外側フレーム
を屋根材で覆うことも特徴としている。

「実施例」 以下に、図面の参照して本発明の実施例を説明する。

第1a、1bおよび1c図において、パラボラ型門形構造は、
中央フレーム１０と、各中央フレーム１０の端部が蝶番
継手１２で蝶番接続された支柱１１とからなっている。
第1a図は基礎１３に平坦に横たわる全組立物を示してい
る。

この中央フレーム１０は、上弦材１４と、好ましくはス
チールパイプ部材から製造された下弦材１５と、これら
上下弦材１４および１５を相互接続する斜材１６および
鉛直材１７とからなっている。下弦材１５の内部には複
数の加張ケーブルがに挿通され、加張されると、構造物
が第1b図に示すように上ぞりとなる。ケーブルの端部
は、ポストテンション後、点１８の位置でアンカ固定さ
れる。

また、ケーブルは点１８の位置から各支柱１１に沿って
点１９の位置まで延長されている。ケーブルの加張は、
通常、複数のケーブルを１つのグループとしてグループ
毎に実施されるが、１本づつ段階的に実施してもよい。
ケーブルの加張により、各支柱１１は中央フレーム１０
に対して蝶番継手１２の回りに回動し、支柱１１を第1b
図に示す水平位置から第1c図に示す垂直位置に直立させ
る。第２図に示すように、中央フレーム１０および支柱
１１の近接端部は、支柱が直立したときに密着できるよ
うな形状に形成されている。

その後、これらケーブルの端部を、各々点１９の位置で
固定してもよく、あるいは基礎に固定して、建物を風に
吹き飛ばされないように地面に固定してもよい。

本発明は、上記のようにクレーンを用いなくても構造物
を直立できることを特徴としている。

第２図は前述の完成した門形構造物を示し、第３図は連
設された門形構造物の一部を示している。

第4aおよび4b図は、中央フレーム２０及び支柱２１を互
いに平行な上下弦材を有するトラス梁で構成した場合の
実施例を示す。

これらの図に示すように、ほとんどの構造物においてそ
の建設は、支柱の最下端部にローラ車輪２２を配置して
行われる。

第５図は、門形構造物の建設の順序を示すもので、その
建設は次の５段階からなる。

1.門形トラスを地上で組立てる。

2.ポストテンションによって門形トラスをアーチ状に形
成する。

3.支柱Ａにおいてポストテンションし、一側を持ち上げ
る。

4.支柱Ｂにおいてポストテンションし、他の側を持ち上
げる。

5.支柱Ａ，Ｂの基部に基礎を打って、永久に固定する。

場合によっては、上記のような門形構造物が複数地面に
並べて形成され、ポストテンションによって所定の形状
が付された棟木手段、あるいは普通の棟木手段によって
１つの構造物を構成するように相互接続される。棟木手
段には、好適な屋根材が取付られて建物の屋根が形成さ
れる。屋根材は、金属板、合成あるいはコンクリート板
のような種々の材料から製造される。その後、全構造物
は構造物の一側において支柱を直立させ、その後他の側
の支柱を直立させて建設される。

本発明は、第６図および第７図に示す方法で円形、方形
あるいはその他の多角形の構造物の構造物に適応するこ
とができる。第６図は、中央フレームが円形をなすとと
もに、ポストテンションを施すトラス梁が中央で集合す
る放射状に配置された例、第７図は中央フレームが矩形
状をなしトラス梁が対角に配置された例である。

第８、９および１０図は、本発明を、非常に広い構造物
の建設に適用した例を示している。この例では、中央フ
レーム２５の外周側に外側フレーム２３および２４が接
続されている。外側フレーム２３および２４の外縁部に
は、蝶番継手によって支柱２６および２７が取り付けら
れている。また、中央フレーム２５、外側フレーム２
３，２４のトラス梁には、ケーブル２８が挿通されてい
る。

第８図は一時的な支持体２９、３０、３１および３２を
用いて、構造物が地上で組み立てられる状態を示してい
る。

第９図はケーブル２８でポストテンション後、中央トラ
ス２５の中央にケーブル３４を有する油圧ジャッキ３３
が配置された状態を示す。

この例では、中央フレーム２５及び外側フレーム２３，
２４の持ち上げは同時に行われる。すなわち、中央フレ
ーム２５の持ち上げは、油圧ジャッキ３３により行わ
れ、同時に、外側フレーム２３，２４の持ち上げが張力
ケーブル３５および３６を加張することにより行われ
る。

フレーム２３，２４，２５が第１０図に示す位置に到着
すると、中央の支柱３７がその場に永久的に固定され、
一時的な支持体２９、３０、３１および３２が取り外さ
れる。第８、９および１０図に示される構造物の例で
は、長さが１００メートルにも及び構造物の建設でも行
うことができる。

なお、フレームの材料には種々の材料が用いられる。多
くの場合、全部材はスチール、コンクリート製である
が、上弦材として下弦材の金属管を使用してもよい。ま
た、上弦材、支柱および斜材として木材を用いてもよ
く、さらに、全部を合板のカバーで覆ってもよい。

「発明の効果」 以上説明したように本発明によれば、複数の腹材で互い
に接続された上弦材及び下弦材で構成された中央フレー
ムを地上で組み立て、中央フレームの外縁部に支柱の端
部を水平方向の軸線回りに回転自在に連結し、下弦材の
内部に設けられるとともに下弦材の両端部まで延長させ
られたケーブルでポストテンションを施すことにより、
中央フレームに所望の形状を付与し、次に、下弦材の端
部と支柱の自由端との間を連結しているケーブルでポス
トテンションを施すことにより、支柱を回転させて同支
柱を略水平位置から略垂直位置まで持ち上げて、これに
よって、中央フレームを最終位置まで上昇させるから、
クレーンを一切使用しないで構造物を建設することがで
きる。したがって、飛行機の格納庫の建設のように一般
に強風にさらされるような環境においても、安全に建設
することができ、しかも、材料日及び建設費用が非常に
安価であるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第1a、1bおよび1c図は種々の建設段階を示す門形構造物
の概略図、第２図は門形構造物の建設完成図、第３図は
第２図の門形構造の複数物の正面図、第4aおよび4b図は
他の門形構造物の構造図および建設図、第５図は他の門
形構造物の建設段階図、第６図は本発明を円形構造物に
適応した平面図、第７図は本発明を矩形の構造物に適応
した平面図、第８、９および１０図は複数のフレームを
有する構造物の正面図である。 １０……中央フレーム、１１……支柱、１２……蝶番継
手、１３……基礎、１４……上弦材、１５……下弦材、
１６……斜材、１７……鉛直材、１８……点、１９……
点、２０……中央フレーム、２１……支柱、２２……ロ
ーラ車輪、２３，２４……外側フレーム、２５……中央
フレーム、２６，２７……支柱、２８……ケーブル、２
９，３０，３１，３２……一時支持体、３３……ジャッ
キ、３４，３５、３６……ケーブル、３７……中央カラ
ム。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の腹材で互いに接続された上弦材及び
   下弦材で構成された中央フレームを地上で組み立て、上
   記中央フレームの外縁部に支柱の端部を水平方向の軸線
   回りに回転自在に連結し、上記下弦材に設けられるとと
   もに上記下弦材の両端部まで延長させられたケーブルで
   ポストテンションを施すことにより、上記中央フレーム
   に所望の形状を付与し、上記下弦材の端部と上記支柱の
   自由端との間を連結しているケーブルでポストテンショ
   ンを施すことにより、上記支柱を回転させて同支柱を略
   水平位置から略垂直位置まで持ち上げて、上記中央フレ
   ームを最終位置まで上昇させることを特徴とする構造物
   の建設方法。
2. 【請求項２】複数の腹材で互いに接続された上弦材及び
   下弦材で構成された中央フレームを地上で組み立て、こ
   の中央フレームの外周側に、複数の腹材で互いに接続さ
   れた上弦材及び下弦材で構成された外側フレームを組み
   立て、この外側フレームの外縁部に支柱の端部を水平方
   向の軸線回りに回転自在に連結し、上記中央及び外側フ
   レームの下弦材に設けられるとともに、端部が上記支柱
   に沿って延在させられたケーブルでポストテンションを
   施すことにより上記中央フレーム及び外側フレームに所
   望の形状を付与し、次に、ケーブルの端部を上記支柱の
   自由端から引き出すようにして加張することにより、上
   記支柱を回転させて同支柱を略水平位置から略垂直位置
   まで持ち上げ、これによって、上記中央フレームを上昇
   させ、同時にジャッキ手段によって上記中央フレームを
   持ち上げることを特徴とする構造物の建設方法。