JPH0646880Y2 - 流体荷役装置における緊急離脱装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、流体荷役装置の使用時に、強風や波浪等によ
って流体荷役装置が破壊されるのを防止する緊急離脱装
置に関する。

〔従来の技術〕

例えば、シーバースに接岸した石油タンカーから石油を
陸上の貯蔵タンクに荷揚げしたり、あるいは貯蔵タンク
から石油タンカーに荷積みする際に使用される流体荷役
装置においては、強風や波浪等の影響で石油タンカーの
動きが大きくなったような場合、そのままであるとイン
ボードアームやアウトボードアーム等の管路が破壊して
大きな損害を出すことから、遮断用油圧シリンダの作動
によって遮断弁を閉じる遮断装置と、切離し用油圧シリ
ンダの作動によって締結機構を解放する切離し装置とか
らなる緊急離脱装置を管路に設け、遮断装置により管路
を閉じた後、緊急切離し装置を作動させて管路を切り離
し、石油等の輸送流体の流出と管路の破壊を防止してい
る。

従来の緊急離脱装置は、遮断用油圧シリンダで動かされ
て遮断弁を閉じる操作レバーに油圧リミットバルブを取
り付けて遮断弁の全閉を検知し、その検知信号で切離し
用油圧シリンダを作動させて締結機構を解放する構成と
されている。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところが、操作レバーには、寸法上の誤差や、取付け誤
差があるため、何等かの調整手段を設け、所定のタイミ
ングで的確に切離し用油圧シリンダが作動して、遮断弁
の遮断後、間髪を容れずに管路が切り離されるように、
全体の組立て終了後に正しく調整する必要があるが、こ
の調整は意外に難しく手間が掛かるという問題点があ
る。

本考案は、遮断用油圧シリンダの作動後において切離し
用油圧シリンダが作動して締結機構を解放するタイミン
グの調整作業が不要で、しかも常に的確に切離し用油圧
シリンダを作動させることができる、流体荷役装置の緊
急離脱装置を提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するために、本考案は、遮断用油圧シ
リンダの作動によって遮断弁を閉じる遮断装置と、切離
し用油圧シリンダの作動によって締結機構を解放する切
離し装置とを具備した流体荷役装置の緊急離脱装置にお
いて、上記遮断用油圧シリンダのシリンダ本体に、作動
油を流通させて上記切離し用油圧シリンダを上記締結機
構が解放される方向に移動させる配管を、スプールの第
１ポジションにおいて開き、また上記配管を、上記スプ
ールの第２ポジションにおいて閉じる切換え弁を組み付
け、上記切換え弁のスプールを、遮断用油圧シリンダの
可動部材によって、遮断用油圧シリンダを閉移動により
上記遮断弁を閉じ終わる直前に第１ポジションに動かさ
れ、また遮断用油圧シリンダが開移動により遮断弁を開
く途中において第２ポジションに動かされる位置に配設
した構成とした。

〔作用〕

緊急切離し指令が発せられると、まず、作動油の圧送に
より遮断用油圧シリンダが作動して遮断弁を閉じる。こ
の際、作動油を流通させて切離し用油圧シリンダを締結
機構が解放される方向に移動させる配管にも作動油が送
られるが、遮断用油圧シリンダの閉移動の初期において
は、切離し用油圧シリンダの上記配管が切換え弁によっ
て閉じられた状態となっているため、切離し用油圧シリ
ンダが作動することはない。

遮断用油圧シリンダの可動部材は、遮断用油圧シリンダ
の作動で移動してストロークエンドに達する直前に切換
え弁のスプールを押圧する。これによって切換え弁が作
動し、それまで閉じられていた切離し用油圧シリンダの
上記配管を開くので、切離し用油圧シリンダが作動して
締結機構を解放する。

切換え弁はシリンダ本体に組み付けられ、可動部材が直
接切換え弁のスプールを動かす構成とされているため、
調整手段を設けることも、また調整作業を行うことも全
く必要がなく、常に所定のタイミングで的確かつ正確に
切離し用油圧シリンダが作動する。

〔実施例〕

添付図面は本考案の一実施例を示すもので、図中符号１
はシーバース等に立設された立上り管である。この立上
り管１の上端には、インボードアーム２が中空水平回動
継手３を介して左右に、かつ中空垂直回動継手４を介し
て上下にそれぞれ回動自在に取り付けられ、このインボ
ードアーム２の先端には、アウトボードアーム５が中空
垂直回動継手６を介して上下に回動自在に取り付けられ
ている。上記インボードアーム２の根端部には、平衡腕
７がインボードアーム２とは反対方向に延長して設けら
れ、該平衡腕７にはカウンタウエイト８を備えたプーリ
９が周方向に回動自在に枢着されている。

また、上記アウトボードアーム５の中空垂直回動継手６
の部分には、アウトボードアーム５と一緒に中空垂直回
動継手６を中心に回動するプーリ11が設けられ、該プー
リ11と上記プーリ９の間にはワイヤやチエーン等の伝動
索12がスリップを防止して巻き掛けられており、中空垂
直回動継手６を中心にアウトボードアーム５が上下に回
動すると、プーリ11と伝動索12、及びプーリ９を介して
カウンタウエイト８が上下に回動して平衡が保たれるよ
うになっている。

更にまた、アウトボードアーム５の先端には、遮断弁13
を備えた連絡管14が中空垂直回動継手15を介して上下に
回動自在に設けられ、該連絡管14には、船舶側の荷役管
16が、連絡管14の管端に設けられた接合フランジ14aに
自体の管端に設けられた接合フランジ16aを当接させ、
それらの接合フランジ14a,16aを切離し装置17によって
一体に接合して切離し自在に連絡されている。なお、切
離し装置17は周知のもので（例えば、本出願人の出願に
係る、特願昭60-158758号（特開昭62-20991号公報）参
照）、上記接合フランジ14a,16aを接合状態でクランプ
する締結機構18と該締結機構18による接合フランジ14a,
16aの締結を解く切離し用油圧シリンダ19とから成る。

符号21は荷役管16に設けられた遮断弁であり、遮断用油
圧シリンダ22の作動により連動機構23を介して、上記連
絡管14に設けられた遮断弁13と一緒に、管路を遮断する
構成とされている。上記遮断弁13,14、遮断用油圧シリ
ンダ22、及び連動機構23は、遮断装置24を構成するが、
この遮断装置24の基本構造も周知のものである（例え
ば、本出願人の出願に係る、特願昭60-287329号（特開
昭62-146200号公報））。

上記遮断用油圧シリンダ22は、シリンダ本体26にピスト
ンロッド25を備えたピストン27を装入して成るもので、
そのロッドエンドカバー28に切換え弁29が組み込まれて
いる。切換え弁29は、４個の油圧ポートP,T,A,Bと、該
油圧ポートP,T,A,Bの連絡を切り換えるスプール31とを
有する。

この切換え弁29は、作動油を流通させて切離し用油圧シ
リンダ19を締結機構18が解放される方向（第１図で左方
向）に移動させる配管36を、スプール31の第１ポジショ
ン（第４図の状態）において開き、また上記配管36を、
スプール31の第２ポジション（第１図と第３図の状態）
において閉じるものである。

切換え弁29のスプール31は、遮断用油圧シリンダ22のピ
ストン（可動部材）27と、プッシュロッド（可動部材）
34の移動面に、それらの間にそれらの移動方向（第２図
で左右方向）に移動自在に配設されている。プッシュロ
ッド34は、スプリング35で第２図において左に付勢され
ている。また、ピストンロッド25の上記プッシュロッド
34に向き合う部分にはボルト33が螺着され、ナット32の
締付けによって固定されている。なお、ピストンロッド
25、ボルト33、及びスプリング35も可動部材である。

切換え弁29のスプール31は、遮断用油圧シリンダ22が閉
移動により遮断弁13,21を閉じ終わる直前に遮断用油圧
シリンダ22のピストン27で第１ポジションに動かされて
配管36を開き、また、遮断用油圧シリンダ22が開移動に
より遮断弁13,21を開く途中において遮断用油圧シリン
ダ22のピストンロッド25によりボルト33とプッシュロッ
ド34及びスプリング35を介して第２ポジションに動かさ
れ、配管36を閉じる構成とされている。

なお、第１図においては、遮断用油圧シリンダ22のピス
トンロッド25が切換え弁29のスプール31に連結されて描
かれており、第２図のものと異なるが、便宜的なもので
ある。しかし第１図のものも実施可能である。

しかして、符号37は遮断弁22の油圧回路に設けられたバ
ルブであり、切離し用油圧シリンダ19の締結状態におい
てカム38により押されて遮断用油圧シリンダ22の油圧回
路を開き、また切離し用油圧シリンダ19の解放移動時に
遮断用油圧シリンダ22の油圧回路を閉じるようにされて
いる。39はスプール31のストッパリング、40は栓であ
る。

次に上記のように構成された本考案に係る流体荷役装置
における緊急離脱装置の作用を説明する。

第１図は、流体荷役装置の使用状態、すなわち荷役流体
の輸送状態を示すもので、連絡管14と荷役管16とは切離
し装置17の締結機構18によって一体に連結されるととも
に、２個の遮断弁13,21は遮断用油圧シリンダ22の開作
動によって共に開かれている。なお、この状態では、切
離し用油圧シリンダ19の閉側と遮断用油圧シリンダ22の
開側に油圧がかかっている（実線の矢印参照）。

強風や波浪の影響でタンカーの揺れが大きくなり、緊急
切離し指令が出されると、作動油の圧送方向が切り換え
られて切離し用油圧シリンダ19の開側と遮断用油圧シリ
ンダ22の閉側に第１図の破線矢印のように油圧が加えら
れる。この際遮断用油圧シリンダ22の油圧回路はカム38
の作用で開状態にあるので、遮断用油圧シリンダ22は直
ちに作動し、ピストン27を第１図で右方（第２図で左
方）に移動させるが、作動油の圧送方向が切り換えられ
た直後は、まだ切換え弁29が切離し用油圧シリンダ19の
配管36を閉じているため、切離し用油圧シリンダ19が作
動して締結機構18を解放することはない。

遮断用油圧シリンダ22の上記作動で２個の遮断弁13,21
は同時に閉じられるが、遮断弁13,21が閉じ終わる直前
にピストン27が切換え弁29のスプール31を動かし、２個
の油圧ポートP,Aを連通させて切離し用油圧シリンダ19
の配管36を開くので、切離し用油圧シリンダ19が作動し
て締結機構18を解放し、遮断弁13,21が閉じ終わると同
時に荷役管16から連絡管14を切り離す。この際、カム38
はバルブ37から離れてこれを閉じさせる。

上記で荷役管16から切り離された連絡管14を再び荷役管
16に接続して荷役を再開するには、接合フランジ14a,16
aを相互に当接させてそれらを切離し装置17の締結機構1
8で一体に接合する。この際、切離し用油圧シリンダ19
の締結作動でカム38はバルブ37を開とする。その後、遮
断用油圧シリンダ22を作動させて遮断弁13,21を開く
が、この時遮断弁13,21が開き終わる前に、ボルト33が
プッシュロッド34とスプリング35を介してスプール31を
押し、切換え弁29を第３図の状態にして切離し用油圧シ
リンダ19の配管36を閉とする。

なお、上記では、遮断用油圧シリンダ22のピストン27が
スプール31を押し動かして切換え弁29を作動させ、切離
し用油圧シリンダ19の油圧回路36を開くように構成され
ているが、ピストンロッド25でスプール31を動かして切
離し用油圧シリンダ19の配管36を開とするように構成す
ることもできる。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案に係る流体荷役装置におけ
る緊急離脱装置は、遮断用油圧シリンダの作動によって
遮断弁を閉じる遮断装置と、切離し用油圧シリンダの作
動によって締結機構を解放する切離し装置とを具備した
流体荷役装置の緊急離脱装置において、上記遮断用油圧
シリンダのシリンダ本体に、作動油を流通させて上記切
離し用油圧シリンダを上記締結機構が解放される方向に
移動させる配管を、スプールの第１ポジションにおいて
開き、また上記配管を、上記スプールの第２ポジション
において閉じる切換え弁が組み付けられ、上記切換え弁
のスプールは、遮断用油圧シリンダの可動部材によっ
て、遮断用油圧シリンダが閉移動により上記遮断弁を閉
じ終わる直前に第１ポジションに動かされ、また遮断用
油圧シリンダが開移動により遮断弁を開く途中において
第２ポジションに動かされる位置に配設された構成とさ
れ、従来の操作レバーのように、寸法上の誤差や取付け
誤差など、大きい誤差を生じる余地がないので、調整手
段をもうけることも、また調整作業を行うことも必要と
せず、全体の組み立てが容易である。

また、長期間の使用、あるいは気温の昇降に伴う部材の
伸縮等の影響で作動のタイミングが狂うようなことが少
なく、常に正確かつ的確に作動する長所がある。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案に係る流体荷役装置における緊急離脱装置
の一実施例を示すもので、第１図は全体構造を示す概略
図、第２図は遮断用油圧シリンダの要部を示す断面図、
第３図と第４図は切換え弁の切換え状態を示す断面図で
ある。 13……遮断弁、17……切離し装置、18……締結機構、19
……切離し用油圧シリンダ、21……遮断弁、22……遮断
用油圧シリンダ、24……遮断装置、25……ピストンロッ
ド（可動部材）、26……シリンダ本体、27……ピストン
（可動部材）、29……切換え弁、31……スプール、36…
…配管。

フロントページの続き (72)考案者 松井 博 東京都大田区蒲田本町１丁目９番３号 株 式会社新潟鉄工所エンジニアリングセンタ ー内 (56)参考文献 特開 昭62−20991（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−146200（ＪＰ，Ａ) 実開 昭63−76699（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−35802（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】遮断用油圧シリンダの作動によって遮断弁
   を閉じる遮断装置と、切離し用油圧シリンダの作動によ
   って締結機構を解放する切離し装置とを具備した流体荷
   役装置の緊急離脱装置において、上記遮断用油圧シリン
   ダのシリンダ本体に、作動油を流通させて上記切離し用
   油圧シリンダを上記締結機構が解放される方向に移動さ
   せる配管を、スプールの第１ポジションにおいて開き、
   また上記配管を、上記スプールの第２ポジションにおい
   て閉じる切換え弁が組み付けられ、上記切換え弁のスプ
   ールは、遮断用油圧シリンダの可動部材によって、遮断
   用油圧シリンダが閉移動により上記遮断弁を閉じ終わる
   直前に第１ポジションに動かされ、また遮断用油圧シリ
   ンダが開移動により遮断弁を開く途中において第２ポジ
   ションに動かされる位置に配設されたことを特徴とする
   流体荷役装置における緊急離脱装置。