JPH0639410U - トリム一体成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 トリムに皺や型崩れが発生しない状態で一体
発泡成形が行えるようにする。 【構成】 金型２０内に装着された外装部を形成するト
リム１の内部にパッド材原料注入孔１１を介して発泡性
合成樹脂からなるパッド材原料を注入した後上記パッド
材原料を発泡させてヘッドレスト（発泡体充填物）Ｈｂ
を製造するためのトリム一体成形用金型２０であって、
金型２０はトリムが装着される枠型２１と、この枠型２
１の上部開口部を閉止する蓋型２２とからなり、上記枠
型２１は少なくともトリムの稜線部１２に対応する稜線
対応部２１０によってトリム１を支持するようにするよ
うに構成され、かつ、上記稜線対応部２１０以外の部分
には貫通口２１ｄが形成されている。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車用のシートやヘッドレストなどの発泡体充填物を製造するた めのトリム一体成形用金型に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

内部に発泡体からなる充填物（パッド）が充填された品物（発泡体充填物）は 、その弾力性から自動車のシートやヘッドレストあるいは寝具、座布団、さらに は縫いぐるみなど、クッション性が要求される用途に好適に適用される。このよ うな発泡体充填物は、その表面がトリムといわれる外皮で被覆され、このトリム で適切に外形が保持されるとともに、内部の発泡体は保護されている。

【０００３】 そして通常、寝具、布団あるいは縫いぐるみなど一般の発泡体充填物は、上記 パッドとトリムとは別個に製造され、トリムで形づくられた外装部の中にパッド が押し込められて完成するが、例えば自動車用のヘッドレストなど、パッドとト リムとが一体的に接合した状態でできあがっているようなものは、トリムで形成 された外装部の中にパッドになる発泡性合成樹脂の原料（パッド材原料）が予め 装填され、その後この原料を発泡させ、この発泡によって膨脹したパッド材原料 がトリムの内面に一体に接合した状態で発泡体充填物ができあがっている。この ようにトリムとパッドとを一体に成形する方法はトリム一体成形と通称される。

【０００４】 トリム一体成形によって製造された発泡体充填物は、外皮のトリムと内容物で あるパッドとが強固に接合しているため、パッドとトリムとの間にずれが発生せ ず、形崩れが防止されるため、この成形方法はトリムのずれを嫌う上記ヘッドレ スト用などに好適に適用されている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

図３は、上記のようなトリム一体成形における発泡体充填物の製造方法の例を 説明するための斜視図である。この例の場合、発泡体充填物はヘッドレストであ る。この図に示すように、合成樹脂製のウェブが内部空洞の所定の立体形状に縫 製されてトリム１が形成される。このトリム１の内部には一対のロッドＲが突設 された芯体１４が内装されており、このロッドＲを外部に突出させるようにして トリム１は金型２の内壁面に接するように装填される。そして、トリム１に設け られたパッド材原料注入孔１１から発泡性合成樹脂製のパッド材原料を注入して から金型２は閉蓋され、トリム１内のパッド材原料の発泡処理が施され、トリム １とパッドとが一体化したヘッドレストＨが製造される。

【０００６】 ところで、上記のようなトリム一体成形法において使用する従来の金型２は、 内部が密閉された密閉容器であるため、トリム１を金型２の内壁面に沿わせた状 態で装着することは困難であり、結局萎んだ状態で装着されることが多い。

【０００７】 トリム１が金型２内に萎んだ状態で装着されると、内部に装填されたパッド材 原料が発泡してパッド１ａが形成されるに際し、その膨脹によってトリム１を金 型２の内壁面に押圧するが、上記萎んだ状態の癖が直らず、また密閉された金型 ２内ではトリム１の動く自由度が少ないこととも相俟って、トリム１はしわのよ ったいびつな形で押圧され、結局製造されたヘッドレストＨは不良品になること が多かった。

【０００８】 本考案は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、トリム 一体成形方式で発泡体充填物を製造するに際し、トリムにしわを発生させないよ うにすることができるトリム一体成形用金型を提供することを目的としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

本考案の請求項１記載のトリム一体成形用金型は、金型内に装着された外装部 を形成するトリムの内部にパッド材原料注入孔を介して発泡性合成樹脂からなる パッド材原料を注入した後上記パッド材原料を発泡させて発泡体充填物を製造す るためのトリム一体成形用金型において、上記金型はトリムが装着される枠型と 、この枠型の開口部を閉止する蓋型とからなり、上記枠型には少なくともトリム の稜線部が成形時に圧着される稜線対応部が形成され、かつ、上記稜線対応部以 外の部分には貫通口が形成されていることを特徴とするものである。

【００１０】

【作用】

上記請求項１記載のトリム一体成形用金型によれば、トリムが装着される枠型 は、少なくともトリムの稜線部が成形時に圧着される稜線対応部が形成され、か つ、上記稜線対応部以外の部分には貫通口が形成されているため、トリムが萎ん だ状態で枠型内に装着されても、枠型の外部から上記貫通口を通してトリムを操 作することにより、適正にトリムの位置を修正することができる。

【００１１】 また、パッド材原料が発泡して膨脹し、トリムを内側から押圧しても、発泡体 充填物の形状を決定するトリムの稜線部は枠型の稜線対応部で確実に支持されて いるため、パッドの型崩れは発生しない。

【００１２】 さらに、上記貫通口によってトリムの動くことができる自由度は大きくなって いるため、トリムはパッド材原料の発泡による膨脹に適正に追随し、上記稜線部 の支持とも相俟って仕上がった発泡体充填物が不良品になることを回避すること ができる。

【００１３】

【実施例】

図１は、本考案おけるトリム一体成形用金型を説明するための金型内にヘッド レストが形成されている状態を例示する一部切欠き斜視図である。なお、この例 においては、本考案方法が適用される発泡体充填物として自動車用のヘッドレス トが採用されている。この図に示すように、本考案のトリム一体成形用金型が適 用されるヘッドレストＨｂは金型２０によって一体発泡で製造される。この金型 ２０は、四囲が開放された枠型２１と、この枠型２１の上部に形成された開口部 を閉止するための蓋型２２とから基本構成されている。

【００１４】 上記枠型２１は、底板２１ａと、この底板２１ａの四隅に立設された四本の型 柱２１ｂと、この型柱２１ｂの頂部に取り付けられたフランジ部２１ｃとからな る。従って、底板２１ａの縁部と、左右一対の型柱２１ｂと、フランジ部２１ｃ の縁部とで囲まれた部分には貫通口２１ｄが形成された状態になっている。

【００１５】 そして、型柱２１ｂの内部側の角部には、ヘッドレストＨｂの稜線部１２に対 応した部分がそれに沿って凹部を形成するように凹設された稜線対応部２１０が 形成されている。また底板２１ａの内面底部には、ヘッドレストＨｂの外形部の 局面に対応した凹面が形成されている。

【００１６】 なお、本実施例の場合は、発泡体充填物がヘッドレストＨｂであることから、 金型２０内でこのヘッドレストＨｂの稜線部１２を支持させるために、底板２１ ａに四本の型柱２１ｂを立設し、この型柱２１ｂの稜線部１２に対応する部分に 稜線対応部２１０が形成されている。

【００１７】 なお、本考案の金型２０はこのような四本の型柱２１ｂが形成されたものに限 定されるものではなく、発泡体充填物の形状に応じてその稜線に沿った稜線対応 部が形成されるものであればどのようなものでもよい。例えば、型柱２１ｂの本 数が増減されたり、あるいは型柱２１ｂだけではなく水平方向に延びる桟材が用 いられる場合もある。但し、本考案においては、金型２０の稜線対応部２１０以 外の適宜の側面に貫通口２１ｄが形成されるのは必須であり、この貫通口２１ｄ から金型２０に装着されたトリム１の装着状態を種々修正することができるよう になっている。

【００１８】 上記枠型２１の内部にはヘッドレストＨｂの外装部を形成するトリム１が装着 される。このトリム１の内部には予めヘッドレストＨｂの芯体１４が内装されて おり、この芯体１４の一側面には二本のロッドＲが立設されている。このような トリム１の略中央部には、パッド材原料注入孔１１が設けられており、このパッ ド材原料注入孔１１から発泡性合成樹脂のパッド材原料が装填される。

【００１９】 上記パッド材原料注入孔１１の側縁部にはトリム１と同じ材料の蓋用トリム１ ３が取り付けられており、トリム１内へのパッド材原料の装填後この蓋用トリム １３でパッド材原料注入孔１１が閉止されるようになっている。また、蓋型２２ の蓋用トリム１３に対応した部分には開孔部２３が設けられている。

【００２０】 この開孔部２３は、蓋型２２の側縁部に設けられたブラケット２５の水平軸２ ６周りに回動自在に軸支されたリッド２４によって開閉可能に構成されており、 枠型２１の上部開口が蓋型２２によって閉止され、外れないように締結された状 態でリッド２４を開放することによりここからパッド材原料をトリム１内に装填 することができるようになっている。

【００２１】 なお、通常トリム１は、その表皮を構成するポリエチレン、ポリプロピレン、 ポリビニルクロライド、ポリアミド等からなる可撓性を備えたシートと、このシ ートの裏面に一体に積層貼設された上記例示の合成樹脂より低温で軟化溶融する ポリウレタン樹脂等のプリーツパッドとからなる。上記シートとプリーツパッド とが積層溶着されてトリム１が形成されている。

【００２２】 また、発泡性合成樹脂からなるパッド材原料としては、ポリエチレンフォーム 、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ウレタンフォームなどがあ るが、取り扱いが容易でしかも現場発泡に適したウレタンフォームが好適に使用 される。本実施例においてはパット材原料としては、ウレタンフォームの原料で あるジイソシアネートとジオールとが用いられている。

【００２３】 図２は、本考案に係る金型２０を用いて一体発泡により発泡体充填物を製造す る状態を例示する金型２０の側面図であり、同図の（イ）は枠型２１の内部に芯 体１４が内装されたトリム１が装着された状態、同図の（ロ）は芯体１４が引き 上げられた状態のトリム１の内部にパッド材原料が装填されつつある状態、同図 の（ハ）はトリム１内に装填されたパッド材原料の発泡により発泡体充填物が形 成した状態を示している。

【００２４】 まず、図２の（イ）に示すように、金型２０の蓋型２２は枠型２１から取り外 され、枠型２１の上部開口部から芯体１４が内装されているトリム１が装填され る。芯体１４に固設された一対のロッドＲは枠型２１から上部に突出した状態に なっている。

【００２５】 つぎに、同図の（ロ）に示すように、蓋型２２で枠型２１の上部開口部は閉止 されて締結される。そしてロッドＲを上方に引き上げて適切に係止することによ り芯体１４がトリム１内で上方に引き上げられた状態が維持される。この状態に おいては、枠型２１の型柱２１ｂ間に貫通口２１ｄが形成されているため、この 貫通口２１ｄからの操作によって適切にトリム１の装着状態を調整することがで きる。

【００２６】 トリム１の装着状態の調整後、蓋型２２に設けられたリッド２４およびトリム １に設けられた蓋用トリム１３は開放され、トリム１の中央上部のロッドＲ間に 形成された開孔部２３からパット材原料ＭであるジイソシアネートＭ１とジオー ルＭ２とがトリム１内に充填される。

【００２７】 そして、同図の（ハ）に示すように、リッド２４が閉じられ、例えば加熱処理 が施されると、パット材原料Ｍは発泡してトリム１内にパッド１ａが形成される 。なお、発泡処理は加熱に限らず、常温で自然発泡させることもある。発泡に際 してパット材原料Ｍは膨脹し、この膨脹によってパット材原料Ｍはトリム１の内 面を押圧するが、枠型２１の側面部には貫通口２１ｄが形成され、上記押圧に充 分対応してトリム１は膨脹変形することができるようになっているため、この変 形によってトリム１の表面がいびつに型崩れするようなことはない。

【００２８】 本考案のトリム一体成形用金型は、以上詳述したように、トリム１の稜線部１ ２に対応した稜線対応部２１０以外は開放された貫通口２１ｄが形成された枠型 ２１を用いるものであるため、まず金型２０の軽量化が実現するとともに、蓋型 ２２装着された萎んだ状態のトリム１の立体形状の調整を上記貫通口２１ｄを介 して容易に行うことができる。さらに、パット材原料Ｍの発泡による押圧力を適 切に貫通口２１ｄを介して外部に逃がすことが可能であるため、従来の密閉型の 金型２においては逃げ場がなかったことからトリム１が金型２内でいびつに型崩 れするというようなことは起こらず不良品発生率が大幅に改善されるなど一体成 形によって発泡体充填物を製造する上で極めて有用である。

【００２９】

【考案の効果】

以上説明したように本考案のトリム一体成形用金型は、金型内に装着された外 装部を形成するトリムの内部にパッド材原料注入孔を介して発泡性合成樹脂から なるパッド材原料を注入した後上記パッド材原料を発泡させて発泡体充填物を製 造するためのトリム一体成形用金型において、上記金型はトリムが装着される枠 型と、この枠型の開口部を閉止する蓋型とからなり、上記枠型には少なくともト リムの稜線部が成形時に圧着される稜線対応部が形成され、かつ、上記稜線対応 部以外の部分には貫通口が形成されて構成されている。

【００３０】 従って、トリムが萎んだ状態で枠型内に装着されても、枠型の外部から上記貫 通口を通してトリムを操作することにより、適正にトリムの位置を修正すること ができるとともに、パッド材原料が発泡して膨脹し、トリムを内側から押圧して も、発泡体充填物の形状を決定するトリムの稜線部は枠型の稜線対応部で確実に 支持されているため、パッドの型崩れは発生しない。

【００３１】 さらに、上記貫通口によってトリムの動くことができる自由度は大きくなって いるため、トリムはパッド材原料の発泡による膨脹に適正に追随し、上記稜線部 の支持とも相俟って仕上がった発泡体充填物は設定通りの立体形状に仕上がり、 不良品率を大きく低下させることが可能になる。その分作業の簡素化や製造コス トの低減につながるなど工業上の価値は大きい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案おけるトリム一体成形用金型を説明する
ための金型内にヘッドレストが形成されている状態を例
示する一部切欠き斜視図である。

【図２】本考案に係る金型２０を用いて一体発泡により
発泡体充填物を製造する状態を例示する金型２０の側面
図であり、同図の（イ）は枠型２１の内部に芯体１４が
内装されたトリム１が装着された状態、同図の（ロ）は
芯体１４が引き上げられた状態のトリム１の内部にパッ
ド材原料が装填されつつある状態、同図の（ハ）はトリ
ム１内に装填されたパッド材原料の発泡により発泡体充
填物が形成した状態を示している。

【図３】従来のヘッドレストのトリム一体成形用金型の
一例を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ トリム １ａ パッド １１ パッド材原料注入孔 １２ 稜線部 １３ 蓋用トリム ２、２０ 金型 ２１ 枠型 ２１ａ 底板 ２１ｂ 型柱 ２１ｃ フランジ部 ２１ｄ 貫通口 ２１０ 稜線対応部 ２２ 蓋型 ２３ 開孔部 ２４ リッド Ｍ パッド材原料 Ｍ１ ジイソシアネート Ｍ２ ジオール Ｈ、Ｈｂ ヘッドレスト

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 大下 裕樹 広島県安芸郡府中町新地１番14号 デルタ 工業株式会社内

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 金型内に装着された外装部を形成するト
   リムの内部にパッド材原料注入孔を介して発泡性合成樹
   脂からなるパッド材原料を注入した後上記パッド材原料
   を発泡させて発泡体充填物を製造するためのトリム一体
   成形用金型において、上記金型はトリムが装着される枠
   型と、この枠型の開口部を閉止する蓋型とからなり、上
   記枠型には少なくともトリムの稜線部が成形時に圧着さ
   れる稜線対応部が形成され、かつ、上記稜線対応部以外
   の部分には貫通口が形成されていることを特徴とするト
   リム一体成形用金型。