JPH0637375B2 - 水中生物防汚剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は水中生物防汚剤、より詳しくは、船舶の船底、
漁網等の海中に置かれた設備、構築物等、水中構築物
等、火力発電所等の冷却用水取水路等に、有害な水中生
物が付着、生息繁殖することを防止する新しい水中生物
防汚剤に関する。

従来の技術 船舶の船底、漁網、波力発電ブイ、海底資源開発システ
ム、養殖設備等の海中に置かれた設備、構築物等、ダム
の付属設備等の水中構築物等、火力発電所の復水器冷却
用水、石油化学工業の熱交換器冷却用水等の取水路等の
常時水と接触する部分には、例えばフジツボ、カキ、ム
ラサキガイ、ヒドロムシ、コケムシ、ホヤ、フサコケム
シ、セルブラ、アサオ、アオノリ、シオシドロ等の貝
類、藻類等の各種水中成分が付着、生息繁殖することが
知られている。

之等水中生物の付着繁殖によれば、水中構築物等におい
ては腐食等による耐久性の低下を、船舶等においては液
体抵抗性の増加による船行速度の低下、燃料の空費等、
更に之等の水中生物の除去のための船底の清掃やそのた
めの運行休止による損失を、熱交換器等においては熱伝
導度の低下等を、更に復水器冷却用水、熱交換冷却用水
等の取水路においては取水量の減少、冷却効率の低下、
該水路壁から脱落し流されてくる生物塊による復水器、
熱交換器の性能低下等の各種の弊害が惹起され、設備機
能の低下等の好ましくない状態が招来される。

従来、上記海水及び淡水における有害生物付着による弊
害を防止するために、各種の防汚剤が開発、提案されて
いる。かかる防汚剤としては、例えば、銅酸化物、水銀
酸化物等の重金属化合物、トリブチル錫オキサイド、ト
リフエニル錫クロライド、トリブチル錫アセテート等の
有機錫系化合物等の他、有機塩素系化合物又は有機硫黄
化合物、フエナルサジンクロライド等の砒素化合物等を
有効成分として含有する防汚塗料が最もよく知られてい
る。また、冷却用水等の取水路においては、塩素又はフ
エノール化合物等を直接水路に添加して水中生物の付
着、繁殖を防止する方法が知られている。

しかしながら、上記銅酸化物、水銀酸化物等の重金属化
合物を含有する防汚塗料は、有効成分とする上記金属酸
化物が塗料中のワニス成分と反応するため、その貯蔵安
定性が劣る欠点がある。また、工場排水の流入する港湾
等の汚染海域では汚染水中の微生物の作用により発生す
る硫化水素によって、上記有効成分乃至防汚塗料が変
色、変質を受け、その効力を失なう等の弊害も認められ
る。更に、上記銅酸化物、水銀酸化物等は、フジツボ、
ホヤ、コケムシ等の海中生物に対しては効力が認められ
るが、藻類に対してはほとんど効果を奏し得ない。しか
も上記防汚塗料は、アルミニウム、マグネシウム等を主
体とする軽金属素材に対して適用すれば、有効成分金属
が素材上に析出し、電気化学的に素材の浸食を促進する
重大な欠点がある。

トリブチル錫オキサイド等の有機錫化合物を含有する防
汚塗料は、上記銅酸化物、水銀酸化物を含有させた防汚
塗料と比較すると、防汚効果の面で不充分であり、しか
も高価で、また多量に使用すると塗膜性能を悪くし、取
り扱いの際に悪臭が発生する難点もある。

有機塩素系及び有機硫黄系化合物を含有する防汚塗料
は、前記したいずれのものよりも、尚防汚効果がはるか
に劣っており、例えばコケムシには効果があっても、フ
ジツボには効果がない等、その効果に選択性があり、殆
んど実用に供し得ない。

更に、フエナルサジンクロライドを含有する防汚塗料
は、フエナルサジンクロライド自体人体に対して甚だし
い粘膜刺激性があり、その施工作業が難しい。

また塩素、フエノール化合物等を冷却用水の取水路に添
加する方法では、むしろ之等化合物による冷却装置自体
の腐食等の問題があり、しかも水中生物の付着防止効果
は、到底満足できるものではない。

加えて、上記いずれの場合にも用いられる有効成分化合
物は人体、魚類等に対して毒性が強く、その使用上著し
い制約がある。

発明が解決しようとする問題点 本発明者は、上記従来の防汚塗料乃至防汚剤有効成分化
合物に見られる諸々の欠点を解消して、より防汚効果が
優れており、しかも安全に使用できる新しい防汚剤を提
供することを目的として、鋭意研究を重ねた。その結
果、特定の自然残留磁化を有する鉱物が、その特有の電
磁波によって、優れた防汚効果を奏し得ると共に、従来
のこの種防汚剤有効成分化合物に見られる欠点を悉く解
消し得、その利用によれば上記目的に合致する防汚剤を
提供できることを見出した。本発明は、この新しい知見
に基づいて完成されたものである。

問題点を解決するための手段 本発明によれば、自然残留磁化１０^−４〜１０^−１３Ｔ
（Ｓｌ慣用磁化強度、以下同じ）を有する鉱物を有効成
分として含有することを特徴とする水中生物防汚剤が提
供される。

本発明の水中生物防汚剤は、上記特定の自然残留磁化を
有する鉱物を有効成分とすることに基づいて、それ自体
無毒性であり安全に使用することができ、しかも各種の
水中生物のいずれに対しても非常に優れた防汚効果を奏
し得る。本発明防汚剤を適用して付着乃至生息繁殖を防
止（防汚）される水中生物には、通常の有害な各種の貝
類、藻類等の全てが包含され、その代表例としてはフジ
ツボ、カキ、ムラサキガイ、ヒドロムシ、コケムシ、ホ
ヤ、フサコケムシ、セルブラ、アサオ、アオノリ、ヒラ
アオノリ、シオシドロ、チヤシオグサ、ユリモ、シオグ
サ等を例示できる。

また、本発明防汚剤は、例えば上記特定の鉱物を含有さ
せた塗料、モルタル等の形態で、貯蔵安定性が良好であ
ることは勿論のこと、これを海中に置かれた設備、構築
物等、水中構築物等、火力発電所等の冷却用水取り水路
壁等に塗布適用することによって、汚染海域等において
も、安定した水中生物の付着防止効果を長期間に亘って
奏し得、アルミニウム、マグネシウム等を主体とする軽
金属素材に対してもその電気化学的浸食を起させること
なく安全に適用でき、冷却用水等の取水路壁に適用して
も冷却装置を腐食させるおそれもない。更に、本発明の
水中生物防汚剤は、取り扱いも容易で、刺激性もなけれ
ば、悪臭等が生じることもない。

本発明防汚剤は、上記特定磁化を有する鉱物をその粉末
形態のままで、又はこれを適当な手段、例えば焼結手段
等により適当な大きさ、形状等に成型した形態で、或い
はモルタル、コンクリート、塗料等の形態で、水中生物
の防汚を要望される場所に適用して、幅広い水中生物に
対して優れた防汚効果を発揮できる。その適用場所とし
ては、船舶、漁網、波力発電ブイ、海底資源開発システ
ム、養殖設備等の海中設備、構築物等の置かれた海水、
ダム付属設備等の水中構築物等の存在する水中、火力発
電所の復水器冷却用水、石油化学工業の熱交換器冷却用
水等、之等の取水路等を例示することができる。

本発明防汚剤においては、その有効成分として自然残留
磁化１０^−４〜１０^−１３Ｔを有する鉱物を利用するこ
とを必須の要件とする。該鉱物としては、代表的には、
上記範囲の自然残留磁化を有する粘土類及び鉱石類を例
示できる。この粘土類は、通常、石英、長石、緑泥石、
角閃石及び雲母をその構成鉱物とし、ＳｉＯ_２及びＡｌ
_２Ｏ_３を主成分とする赤褐色のものであり、本発明では
特にその粒度を約２μｍ以下とした微粉末形態で用いる
のが好ましい。また上記鉱石類とは、花崗岩、石英斑
岩、安山岩、流紋岩等やそれらの周辺の堆積岩、例えば
泥岩、砂岩等が熱による変成作用を受けて硬くなった所
謂ホルンフェルスを指称し、これは、ＳｉＯ_２及びＡｌ
_２Ｏ_３を主成分とする灰色鉱石であり、通常適当な大き
さに粉砕して利用され、特に本発明では粒度５μｍ以下
の微粉末形態で用いるのが有利である。

本発明に利用される上記特定磁化を有する鉱物の具体例
としては、宮崎県東臼杵郡北方町や同西臼杆郡日之影町
付近に産生される粘土及び鉱石を例示できる。之等の特
徴及び分析値は、下記第１表に示す通りである。ただ
し、第１表例示の鉱物（粘土及び鉱石）は、大崩花崗岩
と四万十層の砂岩との接触部分であって、花崗岩が貫入
して既存岩である変成岩に種々のタイプの熱変性乃至鉱
化作用を与え、局所的に複変成岩が生成している場所
（宮崎県網の瀬鉱山）より採集したものである。この鉱
床は、通常のホルンフェルス化、珪化作用、石灰質岩に
おけるスカルン化作用などの他に、電気石その他の硼素
鉱化作用、グライゼン作用などが行なわれ各種の金属鉱
床を胚胎している。採集した場所も、ベルチェ鉱、バレ
ンチン石、チャプマン石、輝安鉱、金鉱が共存した高温
浅熱水性の鉱床であって昭和初期まで採掘されていた。

なお、第１表例示の鉱物の採集場所の造岩作用を参考に
して、同様な造岩作用が発現したと考えられる三群変性
帯、三波川変性帯、領家変性帯等の各所にある旧鉱山よ
り試料を採集した所、鹿児島県の錫山谷山鉱山（１０
^−１０Ｔ）及び大口鉱山（１０^−７Ｔ）、宮崎県土呂久
鉱山（１０^−７Ｔ）、大分県尾平鉱山（１０^−６Ｔ）、
山口県薬王寺鉱山（１０^−６Ｔ）、岡山県哲多鉱山（１
０^−４Ｔ）、愛媛県佐々連鉱山（１０^−９Ｔ）、和歌山
県妙法鉱山（１０^−７Ｔ）、富山県千野谷鉱山（１０
^−１１Ｔ）、福島県石川山鉱山（１０^−１２Ｔ）等にお
いて自然残留磁化を有する鉱物（鉱石及び粘土）が確認
された。

一方、第１表例示の鉱物の採集場所である網の瀬鉱山よ
り３ｋｍ以内にある槙峰鉱山（銅鉱山）においては自然
残留磁化を有する鉱物は確認されなかった。

上記例示の鉱物（粘土及び鉱石）は、また上記成分以外
に、チタン、マンガン、銅、鉛、アンチモン、バリウ
ム、ジルコニウム、ルビジウム、ストロンチウム等の微
量金属が含有されている。

上記鉱物は、これをそのまま、例えば適当な粒度の粉末
状形態等で本発明防汚剤として利用することもでき、例
えば焼結操作等により適宜の大きさ、形状等に賦形して
利用することもできる。また例えば之等を通常のモルタ
ル、コンクリート、塗料等に配合した形態で利用するこ
ともできる。更に、本発明防汚剤は、例えば船底、漁
網、養殖資材、熱交換器の冷却水管、海洋構築物等に加
工された各種の金属、コンクリート、合成樹脂等に塗装
剤として利用して、練込み、塗布、噴霧等の適宜の塗装
手段によって、塗膜を形成させて実用することもでき
る。かかる塗装剤乃至塗料としての利用に当り、上記特
定の自然残留磁化を有する鉱物の使用割合は、適宜に決
定でき、特に限定されるものではないが、通常得られる
塗料乃至塗装剤中に上記鉱物が約１０〜２０重量％程度
配合されるものとするのが適当である。

かくして、本発明の水中生物防汚剤は、各種水中生物が
付着、生息、繁殖するか、そのおそれのある水系に適用
して、非常に優れた防汚効果を奏し得る。本発明防汚剤
がかかる優れた効果を奏する理由は、現在尚、明らかで
はないが、本発明に用いる有効成分鉱物はそれ特有の電
磁波を有しており、これが、藻類、貝類等の水中生物の
細胞膜の透過性増大をもたらし、これによって水中生物
は膨潤破裂され、仮死状態もしくは仮死に至らしめられ
るものと考えられる。

更に、代表的な海水中の有害生物であるムラサキガイ
は、その生活史上、卵が受精した後、トコロフオア、Ｄ
状子貝、アンボ期等と呼ばれる段階を経て稚貝から成貝
となるが、本発明防汚剤は、上記アンボ期幼生までのも
のを、仮死状態に至らしめる特に顕著な効果があり、こ
の付着期幼生の付着を確実に防止できる利点がある。ま
たフジツボは、ノウプリウス、シプリスと呼ばれる幼生
期を経て成貝となるが、本発明防汚剤は、上記シプリス
までのものに対して顕著な効果を示すことが認められて
いる。

実施例 以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げ
る。

実施例１ 海水利用の冷却水路４系を用いて、冬期３ケ月間に亘っ
て、以下の水路試験を行なった。

水路の形成は一過式であり、各々の水路はそれぞれ１０
００ｍ^３／時間の流量である。試験区の水路には取水口
より５０m 付近の喫水線から５０m ^２下部に５００g ／
m ^２となる量の前記第１表に記載の鉱石又は粘土を、モ
ルタルとアクリル樹脂とで塗布した。

塩素ガス区として、水路の残留塩素濃度を試験期間中１
ppm に保った区を設けた。

試験は、１月１２日に開始し、３月２０日に効果を判定
した。効果の判定は、処理個所から７０m の水路に壁面
に１００×１００mmのスレート板を３枚設けて、之等に
付着した仔貝及び海藻類の付着状況（仔貝については１
m ^２当りの付着数及び海藻類についてはその発生状態）
を肉眼観察することにより行なった。

得られた結果を、下記第２表に示す。尚、観察された仔
貝は、主としてムラサキガイであった。

上記第２表より、本発明水中生物防汚剤の利用によれ
ば、仔貝及び海藻類の付着を確実に防止できることが明
らかである。

実施例２ 第１表に記載の鉱石又は粘土のそれぞれ５g を釉薬とし
て施釉として、本発明水中生物防汚剤としての各陶板
（直径１０×厚さ１cm）試料を作成した。

人工ふ化又は海中よりプランクトンネットで採取したム
ラサキガイ及びフジツボの幼生を、上記各陶板試料のそ
れぞれを浸漬した１ｌビーカーに入れ、１時間後、その
生死及び付着防止効果を顕微鏡観察した。

試験結果を、下記第３表に示す。

尚、第３表には、上記試料を用いなかった無処理区につ
いての同一試験結果を併記する。

上記第３表より、本発明水中生物防汚剤の利用によれ
ば、貝類の付着を良好に防止できることが明らかであ
る。

実施例３ ポリアミド繊維製漁網（３．０３cm網目）を、第１表記
載の鉱物の添着液（鉱石又は粘土１０重量％、塩化ゴム
５重量％、ロジン２重量％及びトルエン８３重量％から
なる）に浸漬し、充分含浸させた後、１２時間風乾し
て、本発明水中生物防汚剤による防汚加工を行なった。

上記で得られた加工漁網から５０×５０cm寸法の試験片
を切取り、これを６０×６０cmの鉄枠に張設し、浸漬用
筏により海中に吊るし、海深１．５m のところに保っ
た。

６ケ月間に亘って、１ケ月毎に海水中に浸漬した漁網試
験片を引き上げ、試験片にノリ、アオサ、クサコケ、ヒ
ドロ、ホヤ等の海藻類がどれだけ付着しているかを観察
すると共に、上記漁網試験片の重量を測定し、その重量
増加率（％）を計測した。

得られた結果を第４表に示す。

尚、第４表には、上記防汚加工処理を行なわなかった無
処理の漁網試験片を用いて同一試験を行なった結果を、
無処理区として併記する。

また、漁網試験片の重量増加率（％）は、試験開始前の
漁網試験片の重量に対する所定時間経過後の漁網試験片
の重量増加分の割合を百分率で示したものであり、之等
の重量はそれぞれ海水中に浸漬したものを引き上げ、１
時間水切りをした後に秤量したものである。

上記第４表より、本発明水中生物防汚剤の利用によれ
ば、優れた防汚効果が奏されることが判る。

実施例４、比較例１〜５ 下記Ａ〜Ｆの鉱物それぞれ５ｇを釉薬として施釉した陶
板（直径１０×厚さ１ｃｍ）を試料として水中生物防汚
剤としての効果を調べた。

Ａ…第１表例示の粘土を比重差で分留し、Ｘ線デフラク
トメーター及び強力Ｘ線回折装置で確認して回収した雲
母以外の成分（実施例４）。

Ｂ…第１表例示の粘土を比重差で分留し、Ｘ線デフラク
トメーター及び強力Ｘ線回折装置で確認して回収した雲
母（比較例１）。

Ｃ…福島県安達郡戸沢村北戸沢産の黒雲母（比較例
２）。

Ｄ…福島県安達郡戸沢村北戸沢産の鉄かんらん石（比較
例３）。

Ｅ…福島県東白川郡常豊村渋井産のモンモリロン石（比
較例４）。

Ｆ…福島県相馬市中村産のひる石（比較例５）。

Ａ〜Ｆの化学成分及び磁化強度の分析値は、下記第５表
に示す通りである。

人工ふ化又は海中よりプランクトンネットで採集したム
ラサキガイ及びフジツボの幼生を、上記各試料のそれぞ
れを浸漬した１ビーカーに入れ、１時間後、その生死
及び付着防止効果を顕微鏡で観察した。

結果を、下記第６表に示す。

第６表における評価基準は第３表（実施例２）における
評価基準と同様にした。

実施例５、比較例６〜１０ ウォッシュプライマー１回塗の上に、第５表記載の鉱物
（Ａ〜Ｆ）それぞれの供試品（１μｍ粉末）１０重量部
とエポキシ系プライマー９０重量部を混合した塗料を１
回塗したスライムラック試験板（厚さ２×幅３０×長さ
５０ｃｍ：ＳＰＣ−１）に洞海湾（北九州市）の海水を
１／分の流量で流し、試験板に付着する貝・海草類の
状況を観察した。

上記第６表・第７表より、特定強度の自然残留磁化を有
する鉱物を利用した本発明水中生物防汚剤に利用によれ
ば、貝類及び海草類の付着を良好に防止できることが明
らかである。すなわち、優れた防汚効果が奏されること
が判る。一方、自然残留磁化を有しない鉱物を利用した
ものでは、貝類及び海草類の付着を十分には防止できな
いことが判る。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】自然残留磁化１０^−４〜１０^−１３Ｔを有
   する鉱物を有効成分として含有することを特徴とする水
   中生物防汚剤。