JP5168627B2 - タナイス類を用いた生物検定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タナイス類を用いた生物検定方法に関する。より詳しくは、被検物質への露によるタナイス類の生存率及び造巣活動性の変化に基づいて、前記被検物質が生体に及ぼす影響を評価する生物検定方法に関する。
従来、漁網や船舶、橋梁、火力発電所の冷却導水管等の構築物などの水没表面へ、海藻や貝などの水中生物が付着することを防止するため、塩素や次亜塩素酸、有毒金属イオンなどの殺菌防汚作用を有する化合物を配合した防汚塗料が用いられている。
以前は、例えば、トリブチルスズオキシド等の有機スズ化合物を配合した防汚塗料が広く用いられていたが、近年、有機スズ化合物の毒性と、難分解性による環境中への蓄積の問題から、有機スズ化合物の使用が規制されるに至り、替わって銅を配合した防汚塗料が使用されるようになっている(特許文献1参照)。これらの防汚塗料は、塗膜から金属イオンを水中へ溶出することにより、金属イオンに対して忌避反応を示す水中生物の付着を防止しようとするものである。
これら防汚塗料の防汚性能の評価は、実際に塗面を海水に露して、水中生物の付着程度を評価することにより行われている。海水に露する塗面としては、試験板サイズから小型、大型船舶の船底サイズまで様々である。通常、防汚塗料の開発初期段階では、試験板サイズによるスクリーニング試験から開始し、開発の進行に合わせて、徐々に小型から大型船舶の船底サイズへスケールアップさせていくのが一般的である。
スクリーニング試験には動的試験と静的試験があり、動的試験は船舶の運航時を想定して、試験板をローターに取り付け、海中で回転させた状態での水中生物の付着程度を評価する試験である。静的試験は、試験板を海中に静置して行う試験であり、船舶の運航時を想定していないため、実際の船舶の船底に塗布した場合と必ずしも同様の結果が得られないことがあるが、動的試験と比べ簡便であって、一度に多数の試験板を評価できるという利点がある。
近年、より簡便な試験として、実際に塗面を海水に露することなく、水中生物の塗面への付着挙動を指標として、防汚性能を評価する生物スクリーニング試験(以下、「生物検定」ともいう)が検討されてきている。生物検定に用いられる水中生物としては、ムラサキイガイやフジツボ、ヒドロ虫類などが検討されている。
例えば、ムラサキイガイを用いた生物検定は、まず、耐水性を備えた厚紙の上に直径数cmの円を描き、円の中に被検塗料を塗布して乾燥させる。その後、円の周りに殻長20〜25mmのムラサキイガイを固定し、厚紙ごと海水中へ浸漬して、ムラサイガイが円の中へ足糸を伸張させるか否か、もしくは伸張させた足糸の本数の多寡に基づいて、被検塗料の防汚性能を評価する。この検定方法では、ムラサキイガイの伸張させる足糸が少ないほど、被検塗料に対する忌避反応が強いということができ、防汚性能は高いと評価することができる。
生物検定は、上述の動的試験や静的試験に比べて短時間で防汚性能の評価が可能であるが、ムラサキイガイやフジツボ、ヒドロ虫類等の水中生物を入手が容易ではないという問題がある。特に、フジツボを用いた生物検定にはフジツボの幼生を用いて試験を行う必要があるが、フジツボは幼生の段階で付着して終生を同一の場所で過ごすため、フジツボの幼生を入手することは非常に困難である。また、これらの水中生物を室内飼育する方法も現在まで確立されていない。
ここで、「タナイス類」について説明する。「タナイス類」は、軟甲綱(エビ綱、Malacostraca)、嚢蝦上目(フクロエビ上目、Peracarida)、タナイス目(Tanaidacea)に属する小型甲殻類である。深海性の種では数センチに達するものもあるが、沿岸性の種は砂地や藻場などに住む体長数ミリの小型のものがほとんどである。「タナイス類」には、キスイタナイス、チシマタナイス、コラレルタナイス、ケブカタナイス、ノルマンタナイスなどが含まれる。このうち、静岡県下田市大浦湾鍋田および外浦湾のアマモ場では、ノルマンタナイス(Zeuxo normani)と同定される種の生息が確認されている。
本発明では、造巣種のタナイス類を広く用いることができ、特に、沿岸性小型種のZeuxo属タナイス(Zeuxo sp.)が好適に採用される。Zeuxo属タナイスは、体長は成体でおよそ3mm程度、海草の一種であるアマモの葉上に高頻度に観察され、遠浅の砂泥海底にアマモが形成する大群落(アマモ場)に生息する動物の優占種の1つとなっている。
造巣種のタナイス類は、付着藻類やいわゆるシルト(砂より小さく、粘土より粗い堆積物)を用いて、全身を内部に収容し得る筒状の巣を造る。体長は3mm程度の小型種は肉眼で観察しづらい場合があるが、その巣は大きさが1cm程度であるため、容易に視認することが可能である。
特開平5−123634号公報
上述したように、従来、防汚性能評価に用いられてきた水中生物を用いた生物検定方法は、水中生物の入手が難しいために簡便さの点で問題があった。
そこで本発明は、従来用いられてきたムラサキイガイやフジツボ、ヒドロ虫類等に替わる水中生物を用いて、より簡便に実施が可能な生物検定方法を提供することを主な目的とする。
上記課題を解決するため、本願発明者らは、種々の水中生物を用いた生物スクリーニング方法を検討し、日本近海の遠浅の砂泥海底に広く生息するタナイス類を用いた生物検定方法を完成させた。
すなわち、本発明は、被検物質への露によるタナイス類の生存率及び造巣活動性の変化に基づいて、前記被検物質が生体に及ぼす影響を評価する生物検定方法を提供するものである。タナイス類には、通常採捕が可能な造巣性小型種であるZeuxo属のタナイス(Zeuxo sp.)を用いることができる。
ここで、一般に生物検定方法において、「被検物質が生体に及ぼす影響」とは、被検物質が有する生体毒性を指す場合が多いが、本発明においても、被検物質に露されたタナイス類の生存率の低下に基づいて、該被検物質の有する生体毒性を評価することが当然に可能である。さらに、これに限定されず、逆に、タナイス類の生存率を上昇させるような生体保護作用としての「被検物質が生体に及ぼす影響」を評価することも可能である。
さらに、既に説明したとおり、タナイス類は造巣活動を行う特徴を有するため、本発明では、このタナイス類の造巣活動性に基づいて、上記のような「被検物質が生体に及ぼす影響」を評価することが可能である。
生物の生存率にのみ基づく生物検定方法では、被検物質が生体に及ぼす致死的(リーサル)な影響のみしか評価できない場合が多い。これに対して、本生物検定方法では、被検物質によるタナイス類の正常な造巣活動性の低下または消失をもって、被検物質がタナイス類に及ぼす非致死的(サブリーサル)な生体毒性を評価することが可能である。また、逆に、造巣活動性の亢進をもって、生存率には反映されない該被検物質の有する生体保護作用を評価することもできる。
本生物検定方法は、特に、防汚塗料を被検物質とした生物検定に有効なものである。すなわち、本生物検定方法を用いた防汚塗料の防汚性能評価方法においては、タナイス類の生存率及び造巣活動性の低下に基づいて、該防汚塗料に対する水中生物の忌避反応強度、ひいては、該防汚塗料の防汚性能を評価することが可能である。
また、本発明は、上記の生物検定方法に用いるための生物検定キットをも提供するものである。生物検定キットは、タナイス類及びその飼育容器、巣材等から構成され、本発明に係る生物検定方法を実施し得るものであれば、狭く解釈されることはない。
本発明により、より簡便に実施が可能な水中生物を用いた生物検定方法が提供される。
動物を用いた種々の生物検定方法は、特に医薬品業界における医薬品候補化合物の薬効評価や安全性試験のために広く用いられている。生物検定に用いられる動物は、サルやブタ、イヌ、ラット・マウス等のげっ歯類、ショウジョウバエや線虫など、非常に多岐にわたっている。
このうち、線虫は約1000個の細胞から成る非常に単純な構造を有する生物であり、その全ての細胞の発生、分化の過程が細胞系譜として明らかにされているため、基礎的なデータを得るための生物検定に広く用いられている。また、ショウジョウバエは、研究室内での飼育・繁殖が容易で、遺伝学的知見や発生学的知見の蓄積が豊富であり、さらに様々な遺伝子型及び表現型を有する多数の系統が樹立されているため、検定の目的に応じて所望の系統を選択して使用することが可能となっている。
一方、海産生物を用いた生物検定は、現在その開発が途上に付いたばかりであり、
スズキ目スズメダイ科の熱帯魚であるクマノミ類を用いた生物検定方法や、より単純な生物を用いたものとして、節足動物甲殻網に属し、ミジンコの仲間であるアルテミア(一般に、商品名「シーモンキー」の名で知られる)を用いた生物検定方法が提案されている。
しかし、クマノミ類については研究室内での飼育、繁殖方法が確立されておらず、アルテミアについても化合物毒性への感受性が不安定であるといった問題がある。
本発明にかかるタナイス類を用いた生物検定方法は、従来のショウジョウバエを用いた生物検定の海産生物仕様とも呼び得るものである。本生物検定方法は、上記のクマノミ類やアルテミアを用いた方法に替わって、海産生物を用いた生物検定方法のデファクトスタンダードとなる可能性を有している。
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
図1は、タナイス類の1種であるノルマンタナイス(Zeuxo normani)のオス個体(A)及びメス個体(B)を示す図である。図中、スケールバーは1mmを表す。
本発明に用いるタナイス類は、ノルマンタナイスに限定されず、キスイタナイス、チシマタナイス、コラレルタナイス、ケブカタナイス等であってもよい。また、遺伝子改変により様々な遺伝子型及び表現型を有する系統を作出することにより、ショウジョウバエを用いた生物検定と同様、目的に応じて所望の系統を選択して使用することも可能となる。
タナイス類は、日本近海の遠浅の砂泥海底に広く生息している。また、タナイス類の仔は、図1(B)に示すようにメス個体の腹部に抱卵された卵から、親と同じ形(成形)で生まれ、人工海水中において1ヶ月程度で容易に成長させることができる。また、一世代は3ヶ月程度と短い。従って、タナイス類は、先に説明したムラサキイガイやフジツボ、ヒドロ虫類及び上記クマノミ類に比べて、入手及び実験室内での飼育・繁殖が極めて容易である。
図2は、ノルマンタナイスの巣(A)及び巣穴から頭部を露出させたノルマンタナイス(B)を示す図である。図中、(A)のスケールバーは1cm、(B)のスケールバーは1mmを表す。
タナイス類は、図2に示されるように、付着藻類やシルトを用いて、全身を内部に収容し得る筒状の巣を造る。タナイス類の体長は3mm程度であるので、肉眼では観察しづらい場合があるが、この巣は大きさが1cm程度で容易に視認することができる。
図3は、シャーレ中にノルマンタナイスが形成した巣を示す図である。
図3(A)は、シャーレに人工海水、巣材となるシルト、ノルマンタナイスを入れた直後のシャーレの様子を示している。
図3(B)は、ノルマンタナイスに巣を形成させるため2時間放置した後に、巣材として用いられなかったシルトを洗い流した後のシャーレの様子を示している。なお、シルトを洗い流す際には、造巣していない生存個体及び死亡個体も同時に洗い流されることとなる。
図3(B)では、シャーレ表面に筒状の巣(図中矢頭参照)が形成されており、シャーレ上から巣を容易に観察することができる。これに対して、図3(A)で、巣材中に生存しているノルマンタナイス(符号付さず)は、巣に比べて観察しづらい。
次に、このタナイス類の生存率及び造巣活動性に基づいた生物検定方法について具体的に説明する。
本生物検定方法は、例えば、図3に示したようなシャーレ内での実施が考えられる。この場合の実施手法として、例えば「表1」に示すようなパターンが考えられる。
まず、シャーレ中に人工海水と一定数のタナイス類を入れる。次に、被検物質を、人工海水中に添加(手法A及びC)、または予めシャーレの表面に塗布(手法B及びD)することによりタナイス類に露する。被検物質として医薬品候補化合物等の通常の化学物質を用いる場合には人工海水中への添加を採用し、防汚塗料等の塗料及び塗料組成化学物質を用いた検定ではシャーレ表面へ塗布することが好適となる。
巣材はシャーレ内に投入する場合(手法A及びB)と、投入しない場合(手法C及びD)がある。巣材を投入しない場合(手法A及びB)には、タナイス類が造巣することはないので、被検物質がタナイス類に及ぼす影響の評価基準には、タナイス類の生存率が採用される。すなわち、生存個体の数を経時的に測定することにより生存率の変化を求め、被検物質のタナイス類への影響を評価する。
巣材を投入する場合(手法C及びD)には、タナイス類は、図3(B)で示したような巣をシャーレ表面に作るが、この際、人工海水中に添加、もしくはシャーレ表面へ塗布された被検物質によって、タナイス類が死滅した場合には、巣は形成されない。従って、形成された巣の数を基準として、タナイス類への影響を評価することができる。
このように形成された巣の数は、タナイス類の生存率を反映したものであるが、上述の通り、タナイス類自体に対して巣のほうが視認性に優れるので、巣材を用いない手法A及びBにおいて個体数を測定するのに比して、巣材を用いた手法C及びDにおいて巣の数を測定するほうが容易であり、より簡便にタナイス類の生存率を評価することが可能である。
さらに、手法C及びDでは、被検物質によるタナイス類の正常な造巣活動性の低下または消失をもって、該化合物がタナイス類に及ぼす影響を評価することも可能である。これにより、被検物質がタナイス類に及ぼす致死的な生体毒性のみならず、非致死的(サブリーサル)な生体毒性を評価することも可能となる。
例えば、防汚塗料を被検物質として、該防汚塗料の防汚性能を評価することを目的とした生物検定では、手法C及びDを用いることにより、防汚塗料がタナイス類に及ぼす付着忌避性を評価することが可能である。
防汚塗料の防汚性能としては、水中生物に対して生体毒性を有することにより、水中生物を死滅させる作用に加え、水中生物に対して付着忌避反応を誘起する作用により、水中生物の付着を防止する機能がある。
巣材を用いない手法A及びBであっても、水中生物を死滅させる作用については、タナイス類の生存率に基づいて評価が可能である。しかし、付着忌避反応を誘起する作用については、生存率のみに基づく手法A及びBでは評価が不可能である。付着忌避反応の誘発は、タナイス類の生存そのものには影響を及ぼさない場合も多いためである。
これに対して、巣材を用いた手法C及びDでは、タナイス類が防汚塗料に対して付着忌避反応を示した場合には、シャーレに形成される巣の数が減少(造巣活動性が低下)することとなるため、付着忌避反応性についての評価が可能となる。
図4は、付着忌避反応性の異なる4種類の防汚塗料をシャーレに塗布して、人工海水と一定数のノルマンタナイスを入れ、2時間放置した後、シルトを洗い流した際のシャーレを示す図である。
図4では、(A)、(B)、(D)、(C)の順で、シャーレに形成されたタナイス類の巣の数が増加しており(図中矢頭参照)、(A)で塗布された防汚塗料が最も付着忌避反応性が強く、逆に(C)の防汚塗料は付着忌避反応性が最も弱いといえる。
このようなタナイス類の正常な造巣活動性が低下または消失は、防汚塗料に限らず各種の被検物質を用いた検定でも確認される。従って、被検物質が有する生体毒性がタナイス類の死亡を引き起こす程度ではない場合にも、手法C及びDを用いることで、タナイス類の造巣活動性の低下として表出される被検物質の生体毒性を評価することが可能になる。
本生物検定方法における被検物質には、上記医薬品候補化合物や防汚塗料の他、各種化学物質や天然化合物を広く含み得るが、特に、タナイス類が海産生物であることから、防汚塗料や防汚処理剤、油処理剤などの主に海域で用いられる化学物質やバラスト水の生体影響評価に好適である。バラスト水は、船舶が積荷のない状態の船舶が、重し代わりとして船内に積む海水である。バラスト水は、積み込まれる港と排出される港が異なるため、地球規模での生態系攪乱を引き起こす可能性が指摘されており、バラスト水が生体に及ぼす影響の評価は重要な課題の1つとなっている。
また、これまで「被検物質が生体に及ぼす影響」として、生体に対するいわば負の影響、例えば、医薬品候補化合物や防汚塗料の生体毒性の評価を目的とした利用について説明したが、本生物検定方法は生体に対する正の影響、すなわち生体保護作用についても評価が可能である。
被検物質の「生体保護作用」とは、例えば、タナイス類の生存期間を延長する作用や、一の物質をタナイス類に露した際の生存率の低下を防止するような他の一の物質の作用等を指す。また、タナイス類の造巣活動性を亢進させる作用も、水中付着生物にとっての生体保護作用の1つとみなすことができる。
また、本発明は、本生物検定方法に用いる生物検定キットをも提供するものである。該生物検定キットは、例えば、タナイス類と巣、飼育容器、人工海水等から構成される。これにより、「表1」で説明したような実施パターンに従って、キット購入者が簡便に本発明に係る生物検定を実施することが可能となる。
タナイス類は、アマモ葉及び餌となる珪藻やデトリタス、アマモ種子等とともに人工海水中に入れた状態で供給することが望ましい。巣は、乾燥させたアマモ葉を粉砕したものや砂粒などを用いることができる。このうち、特に0.25mm以上0.5mm以下の砂粒を用いた場合、タナイス類の造巣が最もよく観察される。また、飼育容器については、図3で示したようなシャーレが採用され、その材質はガラスやプラスチックなど表面が滑面であるものが好適である。人工海水は、蒸留水に塩化ナトリウムを加えて浸透圧を調整したものや天然海水をろ過したものを使用する。
<実施例1>タナイス類の生存率に基づく生物検定方法
ノルマンタナイスを用いて、以下の条件により、生存率に基づく防汚塗料の防汚性能評価を行った。
(1)飼育容器:直径130mm×深さ80mmのプラスチック製タッパーの蓋と底面に直径100mmの穴を開け、目合い250μmのナイロン網を張った。垂下型生け簀を利用して、水深3mの海中(鍋田湾)に設置した。
(2)試験板:縦118mm×横70mm×厚さ2mmの塩化ビニル製の試験板を用いた。
(3)塗料:3種の塗料A、B及びCを用いた。各塗料の想定防汚性能は、A>B>Cと想定される。塗料Aは、有機スズ化合物を配合した塗料(ナビオ#1100、大日本塗料)であり、防汚性能は最も高いと考えられる。塗料B及びCは銅(亜酸化銅)を配合した塗料であり、塗料Bは加水分解可能基を含むアクリル樹脂(樹脂b)を成分とし、塗料Cは加水分解可能基を含まないアクリル樹脂(樹脂c)を成分とする。塗料Bは、塗料Cに比べ銅成分が溶出しやすく、高い防汚性能を発揮する。塗料B及びCの組成を「表2」に示す。
飼育容器内壁および試験板を、上記の塗料Aにより塗装し、これを飼育ケース1とした。また、塗料Bにより塗装した飼育容器内壁および試験板を飼育ケース2とし、塗料Bに溶出助剤Dを加えて塗装したものを飼育ケース3とした。さらに、塗料Cにより塗装したものを飼育ケース4、塗料Cに溶出助剤Dを加えて塗装したものを飼育ケース5とした。ここで、「溶出助剤」とは、防汚塗料中に含まれる金属イオンを溶出し易くすることで、防汚塗料の防汚性能を向上させるために用いられるものである。なお、飼育ケース6については、塗料を塗装しない飼育容器内壁および試験板とした。
アマモ(海草の一種)上に巣を作り生息しているタナイスをアマモと一緒に採集し、顕微鏡下で各サイズ(1mm単位)に分類した。このうち、体長2mm-3mmのもの30匹、3mm以上のもの15匹の合計45匹を、各飼育容器へ移した。飼育容器を垂下型生け簀に設置して、1ヶ月間後、陸上に引き上げ、タナイスの観察、計数を行った。実験は合計4回実施した。また、海中に設置した垂下型生け簀は、1週間毎に清掃を行い、目詰まりによって海水の循環が妨げられないようにした。
生存個体数の測定結果を「表3」に示す。
上述の通り、塗料A,B,Cの防汚性能はA>B>Cであるものと推定されるため、溶出助剤Dを加えた塗料等により塗装した各飼育ケースの防汚性能は、ケース1(A)>ケース3(B+D)>ケース5(C+D)>ケース2(B)>ケース4(C)>ケース6の順に高いものと予測された。
検定の結果、飼育ケース1におけるタナイスの生存個体数は、1回目から4回目までそれぞれ45匹中6匹、17匹、12匹、4匹であり、合計の生存率は21.7%であった。これに対して、塗装を行っていない飼育ケース6では、合計の生存率は90%と高かった。これにより、飼育ケース1では80%近いタナイスが、塗料Aの生体毒性により死亡したということができ、塗料Aが優れた防汚性能を発揮していることが確認された。
塗料Bを塗装した飼育ケース2では、生存率は62.2%と、飼育ケース6に比して有意に低下した。さらに、塗料Bに溶出助剤Dを加えて塗装した飼育ケース3では、生存率が22.8%にまで低下した。
また、塗料Cを塗装した飼育ケース4では、生存率は31.7%であり、飼育ケース6に比して有意に低下した。さらに、塗料Cに溶出助剤Dを加えて塗装した飼育ケース5では、生存率が26.1%にまで低下した。
検定の結果、タナイスの生存率に基づいて得られた防汚性能評価は、ケース1(A)>ケース3(B+D)>ケース5(C+D)>ケース4(C)>ケース2(B)>ケース6となった。これは事前の予想とほぼ一致するものであり、本発明に係る生物検定方法が、防汚塗料の防汚性能評価に有用であることを示している。
<実施例2>タナイス類の造巣活動性に基づく生物検定方法
ノルマンタナイスを用いて、以下の条件により、造巣活動性に基づく防汚塗料の防汚性能評価を行った。まず、実施例1で用いた塗料A及びCを塗装した試験板を、天然ろ過海水50ml中に24時間浸漬し、溶出液A及びCを調製した。得られた溶出液50mlを、ガラス製の10cmシャーレに移し、巣(砂粒0.7g)及びタナイス(体長2mm〜3mm、10匹)をいれた。タナイスに巣を形成させるため6時間放置した後、タナイスの定着(造巣)挙動を観察した。
シャーレに造巣・定着した個体数の測定結果を「表4」に示す。
塗料Aを塗装した試験板から調製した溶出液Aを入れたシャーレ1では、1匹の死亡個体を除き、10匹中9匹が造巣活動を行わず、シャーレに定着しなかった(未定着)。同条件のシャーレ2においても、10匹全てが未定着であった。これに対して、天然ろ過海水のみを入れたシャーレ5及び6では、それぞれ6匹、7匹のタナイスが巣を形成し、シャーレ表面に定着した。これは、シャーレ1及び2では、塗料Aの付着忌避性により、タナイスの定着が阻害されていることを示しており、塗料Aが優れた防汚性能を発揮していることが確認される。
塗料Cを塗装した試験板から調整した溶出液を入れたシャーレ3及び4中では、定着個体が合計5匹に対して、未定着個体は合計13匹であった。このことは、塗料Cを塗装した試験板から調製した溶出液Cの付着忌避性は、塗料Aを塗装した試験板から調製した溶出液Aに比べて弱いことを示唆している。この結果は、事前の想定防汚性能の予測(A>C)と一致するものであり、本発明に係る生物検定方法が、防汚塗料の付着忌避性の評価に有用であることを示している
本発明にかかる生物検定方法は、医薬品候補化合物等の各種化学物質や天然化合物が生体に及ぼす影響を評価するための薬効試験や安全性試験に利用することができる。特に、本発明で用いられるタナイス類は、海産生物であることから、防汚塗料や防汚処理剤、油処理剤などの主に海域で用いられる化学物質やバラスト水の生体影響評価に有用である。
タナイス類の1種であるノルマンタナイス(Zeuxo normani)のオス個体(A)及びメス個体(B)を示す図である。 ノルマンタナイスの巣(A)及び巣穴から頭部を露出させたノルマンタナイス(B)を示す図である。 シャーレ上にノルマンタナイスが形成した巣を示す図である。 付着忌避反応性の異なる4種類の防汚塗料を塗布したシャーレ上に形成された巣を示す図である。

Claims (4)

  1. 被検物質への露によるタナイス類の生存率の変化に基づいて前記被検物質の生体毒性を評価する手順と、造巣活動性の変化に基づいて前記被検物質の忌避反応強度を評価する手順と、を含み、前記忌避反応強度を評価する手順に、造巣に用いられなかった巣材を洗い流す手順を含む、生物検定方法。
  2. 前記タナイス類は、Zeuxo属のタナイス(Zeuxo sp.)であることを特徴とする請求項1記載の生物検定方法。
  3. 前記被検物質は、防汚塗料であることを特徴とする請求項1記載の生物検定方法。
  4. 請求項1記載の生物検定方法に用いるための、前記タナイス類、前記巣材、飼育容器、及び人工海水から構成される生物検定キット。
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