JPH0634751B2 - D−フエニルアラニンの分離方法 - Google Patents
D−フエニルアラニンの分離方法Info
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- JPH0634751B2 JPH0634751B2 JP23715986A JP23715986A JPH0634751B2 JP H0634751 B2 JPH0634751 B2 JP H0634751B2 JP 23715986 A JP23715986 A JP 23715986A JP 23715986 A JP23715986 A JP 23715986A JP H0634751 B2 JPH0634751 B2 JP H0634751B2
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Description
【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野
本発明は、光学的に純度の高いD−フェニルアラニンの
分離方法に関する。 D−フェニルアラニンは鎮痛作用を有し、鎮痛剤のほ
か、抗生物質の合成原料などとしても最近注目を集めて
いる医薬,医薬原料として有用なアミノ酸である。 従来の技術及び発明が解決しようとしている問題点 D−フェニルアラニンの製造及び分離方法に関しては、
ベンジルヒダントインをある種の微生物が生産する酵素
ヒダントイナーゼを作用させて酵素的にD−フェニルア
ラニンを得る方法や、(発酵と工業Vol 138 No.10 P937
外)また、優先晶出法、ジアステレオマー法などの物理
化学的な手法による光学分割法による方法が多数知られ
ている。 前者においては原料ベンジルヒダントインの工業的な入
手に難があり、後者は完全な光学分割はできず、かなり
の量の異性体(L−体)が混入される。 D−フェニルアラニンは用途によっては光学異性体の混
入は厳しく制限されており、含有量によってはその商品
価値を低下させる。したがってD−フェニルアラニンの
製造においては、極力L−フェニルアラニンの含有量を
減少させる必要があるが、化学的方法によるD−フェニ
ルアラニンの製造においては、得られたD−体及びL−
体のラセミ体から高純度のD−体のみを得る分離に大変
困難をきたす。 例えばN−アセチルグリシンとベンズアルデヒドの縮合
などの化学的方法で得られたラセミ体反応液から、通常
のアミノ酸の光学分割法として知られているN−アセチ
ル−DL−アミノ酸のL体のみ加水分解するアシラーゼ
酵素を用いたアシラーゼ反応後、反応液を固液分離に付
した場合、加水分解により生成したL−フェニルアラニ
ンの溶解度分がN−アセチル−D−フェニルアラニンの
結晶に付着される。 またアシラーゼ酵素による選択的加水分解反応において
は、効率のよい分離法を考慮するのは勿論だが、L−フ
ェニルアラニンの生成物濃度が高くなると、反応を阻害
する。したがってN−アセチル−DL−フェニルアラニ
ンのアシラーゼ反応による光学分割においては1回のア
シラーゼ反応のみでは、限度があり、たとえ酵素を多用
してもN−アセチル−L−フェニルアラニンを充分に反
応せしめることはできず、得られるN−アセチル−D−
フェニルアラニン中にかなりの未反応L−体が混入さ
れ、最終的に加水分解して得られるD−フェニルアラニ
ンの高光学純度を得るには問題があることもわかった。 問題点を解決するための手段 本発明者らはこのような問題点を踏まえ、化学的方法に
より得られたN−アセチル−DL−フェニルアラニンの
ラセミ体反応液からN−アセチル−D−フェニルアラニ
ンのみを効率よく分離し、高光学的純度を有するD−フ
ェニルアラニンを得る方法を鋭意検討し、本発明方法に
達したものである。 すなわち、本発明方法は、1)N−アセチル−DL−ア
ミノ酸のL体のみ加水分解するアシラーゼ酵素を用い
て、N−アセチル−DL−フェニルアラニンを処理し、
N−アセチル−L−フェニルアラニンのみ加水分解し、
得られたアシラーゼ反応液を、2)濃縮後冷却してでき
るだけ多くのL−フェニルアラニンを結晶として晶出分
離するか、または反応液に無機酸を添加してpHを1以下
にすることにより、L−フェニルアラニンのみを完全に
溶解してろ液として分離するかのいずれかの方法で、L
−フェニルアラニンを分離後、3)主にN−アセチル−
D−フェニルアラニン及び未反応のN−アセチル−L−
フェニルアラニンよりなるろ液または結晶を、再度上記
のアシラーゼ酵素により処理して、4)得られた反応終
了液のpHを1以下にして、生成残存するL−フェニルア
ラニンを溶解させて、固液分離し、5)得られたN−ア
セチル−D−フェニルアラニン結晶を加水分解に付する
ことよりなる、光学的に高純度のD−フェニルアラニン
を得る方法である。 本発明は以下の様にして実施する。 N−アセチル−DL−フェニルアラニンのアシラーゼ酵
素によるアシラーゼ加水分解反応は、N−アセチル−D
L−フェニルアラニンの5〜40%水溶液を苛性ソーダ
で中性付近もしくは弱アルカリ付近まで中和した水性媒
体中で、温度30〜60℃、反応時間10〜70Hrで実
施するのが好ましく、またアシラーゼの安定化のために
通常行なわれている様にCoCl2・6H2Oを添加し系内のコバ
ルトイオン濃度が10-6M〜10-2Mの濃度となるよう
にして実施するのが望ましい。 上記の様な方法で得られたアシラーゼ反応終了液中に
は、加水分解により生成したL−フェニルアラニンの溶
解度が2%前後であるため、溶解度分以外のL−フェニ
ルアラニンの結晶が析出しており、未反応のN−アセチ
ル−L−フェニルアラニンとN−アセチル−D−フェニ
ルアラニン及び溶解度分のL−フェニルアラニンは溶液
となっている。この反応水溶液からなるべく多くのL−
フェニルアラニンを系外へ除去するために、アシラーゼ
反応マスを濃縮した後、冷却を行ない固液分離によりL
−フェニルアラニンを系外へ除去する。その際、好まし
くはL−フェニルアラニンの濃度が20%程度となるま
で濃縮を行ない、0〜10℃まで冷却してL−フェニル
アラニンの結晶を固液分離するのがよい。 また本発明においては、上記の濃縮、冷却による方法以
外に、L−フェニルアラニンを分離する方法としてアシ
ラーゼ反応終了後、直ちにPHを塩酸などで1以下にし
て、生成しているL−フェニルアラニンを完全に溶解さ
せ、ろ液として分離することもできる。その場合はN−
アセチル−D−フェニルアラニン及び未反応のN−アセ
チル−L−フェニルアラニンは結晶として析出するので
これを分離する。その際、水でよく洗浄して付着してい
るL−フェニルアラニンを十分除去するのがよい。 このようにしてL−フェニルアラニンを固液分離して得
られた、N−アセチル−D−フェニルアラニン及び未反
応のN−アセチル−L−フェニルアラニン及び若干のL
−フェニルアラニンを含むろ液または結晶は、L−フェ
ニルアラニン濃度が0.5%以内となる様に水で希釈さ
れ、この水溶液中に新たにN−アセチル−DL−アミノ
酸のL体のみ加水分解するアシラーゼ酵素を添加して再
度反応を行なわせる。 これにより、アシラーゼ酵素反応阻害もなく、未反応の
N−アセチル−L−フェニルアラニンは再度加水分解さ
せることができて極力減らすことができる。 二回目のアシラーゼ反応が終了したら、溶液のPHを塩酸
などで1以下とすることにより、生成しているL−フェ
ニルアラニンを溶解させ、未反応物のほとんど含まれな
いN−アセチル−D−フェニルアラニンを析出させ固液
分離により単離する。その際好ましくはアシラーゼ反応
終了液は濃縮などによりN−アセチル−D−フェニルア
ラニンの濃度を高くしておく方がよい。 かくして光学純度の高い、すなわちD−体含量99%以
上のN−アセチル−D−フェニルアラニンを得ることが
できる。 本発明のアシラーゼ反応において使用するアシラーゼ酵
素は、選択的にN−アセチル−DL−アミノ酸のL−体
のみを加水分解するものであればいかなる菌体より取得
されたものでもよいが、アシラーゼ反応は通常中性付近
もしくは弱アルカリ付近で行なわれており、従って本発
明においても至適PHが6〜9付近のアシラーゼを使用す
るのが好ましい。例えば、アスペルギルス属、ペニシリ
ウム属の菌など公知の糸状菌、シュードモナス属菌など
公知細菌、ストレプトミセス属などの公知の放線菌など
から得られたものが使用できる。 本発明方法により得られたN−アセチル−D−フェニル
アラニンの加水分解は、常法に従い実施できる。即ち塩
酸使用量がN−アセチル−D−フェニルアラニンの1.25
倍モル程度、N−アセチル−D−フェニルアラニンの濃
度が10〜30%の塩酸水溶液中で、加熱還流を数時間
行ない冷却、中和して析出した結晶を固液分離すること
により高収量で光学純度の高い(光学純度99%以上)
D−フェニルアラニンを得ることができる。 また副生したL−フェニルアラニンは、単離してL−フ
ェニルアラニン製品としても良いし、あるいはラセミ
化、アセチル化によりN−アセチル−DL−フェニルア
ラニンとして再使用することもできる。 以下実施例を示す。 実施例1 N−アセチル−DL−フェニルアラニン100gをイオ
ン交換水及び20%苛性ソーダ水溶液にて溶解し、PH7.
5に合わせる。CoCl2・6H2Oを反応系内のCo2+濃度が5×
10-4Mとなる様に添加した。反応液の全重量が550gと
なる様にして、天野製薬(株)製アシラーゼ酵素1.4g(1
8,000U/g)を添加して40℃/40Hrで反応を行った。反
応開始後10Hr付近より結晶が析出し始めた。 反応終了後、反応液を減圧下(約100mm/Hg)で濃縮し、
水留去を行ない濃縮液180g(L−フェニルアラニン20
%濃縮液)を得た。 反応終了マスのHLC分析の結果、N−アセチル−L−
フェニルアラニンよりL−フェニルアラニンへの転換率
は88%であった。 次に濃縮液を冷却して、10℃/2Hr晶出後、ヌッチェ
により真空ろ過を行ない、L−フェニルアラニンの粗結
晶を約40g(Dry換算33.0g)とろ液141gを得た。
ろ液中のL−フェニルアラニン濃度は1.5%であった。 得られたろ液を水で希釈して全体を450gとし、さら
に20%苛性ソーダ水溶液にてPHを7.5に合わせた。つ
いで天野製薬(株)製アシラーゼ酵素0.7gを添加して4
0℃/40Hrで2回目の反応を行なった。2回目アシラー
ゼ反応終了後の反応液中のL−フェニルアラニン濃度は
0.47%より1.4%まで上昇し、N−アセチル−L−フェ
ニルアラニンの大部分がL−フェニルアラニンへ転換し
ていることを示す。 得られた反応終了液を約300gまで減圧下に濃縮し、室
温にて濃塩酸を加えてPH1とした。引続き10℃/2Hr晶
出を行ない、ヌッチェで真空ろ過後水洗,乾燥を行な
い、N−アセチル−D−フェニルアラニンの結晶42.8g
を得た。 この結晶は純度99.6%、旋光度▲〔α〕20 D▼=−40.2
°(C=2,CH3OH)であり、光学的にほぼ純品のN−
アセチル−D−フェニルアラニンであることが確認され
た。 上記により得られたN−アセチル−D−フェニルアラニ
ン25gを、濃塩酸及び水に溶解して、全容量が100
g、塩酸濃度を7%として、加熱還流を8Hr行ない、冷
却後32%苛性ソーダ水溶液にてPHを5.0とし、10℃/
2Hr晶析を行なった。 ヌッチェによる真空ろ過し、水にて洗浄後、結晶を乾燥
して白色のD−フェニルアラニン精結晶15.2gを得た。 本品は純度100.1%、▲〔α〕20 D▼=+346°(C=
2、水)であり、光学異性体分離用カラム(ダイセル社
製キラルパック)で分析した結果、L−体は0.3%の混
入であった。 比較例 実施例1と同様に行なった。ただしアシラーゼ酵素使用
量は倍量の2.8gとし、2回目のアシラーゼ反応はカッ
トした。得られたN−アセチル−D−フェニルアラニン
の旋光度▲〔α〕20 D▼=−36.2°(C=2、CH3OH)と
低く、さらにこれより得られたD−フェニルアラニンの
▲〔α〕20 D▼=+29.4°と低かった。この場合L−体
の8%が混入していた。 実施例2 実施例1と同様にして一回目の光学分割反応を行ない、
濃縮液を得た。濃縮液に室温にて濃塩酸86gを加えて
PHを1.0とし、5℃に冷却、2Hr晶出を行なった。析出
している未反応のN−アセチル−L−フェニルアラニン
を含むN−アセチル−D−フェニルアラニンの結晶をろ
別し、乾燥後46gを得た。 この結晶は、純度98.7%、旋光度〔α〕20 D=−32.4°
(C=2、CH3OH)。光学純度は約90%であった。 得られた結晶40gを用いて水及び20%苛性ソーダ水
溶液にてPHを7.5、全容量を220gとなる様にし、天野製
薬(株)製アシラーゼ酵素0.7gを添加して40℃/40Hr
で2回目の反応を行なった。反応液中には新たにL−フ
ェニルアラニンが重量で2.9g生成しており、N−アセ
チル−L−フェニルアラニンの大部分はL−フェニルア
ラニンへ転換していることを示す。 上記により得られた反応終了液を室温にて濃塩酸を加え
PH1.0とし、さらに10℃/2Hr晶出後ヌッチェで真空ろ
過、水洗、乾燥を行ない、N−アセチル−D−フェニル
アラニンの結晶32gを得た。 この結晶は純度99.8%。〔α〕20 D=−40.3°(C=
2、CH3OH)であり、ほぼ純品のN−アセチル−D−フ
ェニルアラニンであることが確認された。 上記により得られたNーアセチル−D−フェニルアラニ
ン25gを用いて実施例1と同様に加水分解を行ない、
D−フェニルアラニン精結晶14.8gを得た。本品は純度
99.8%、〔α〕20 D=+34.8°(C=2、水)であり光
学異性体分離用カラム(ダイセル社製、キラルパック)
で分析した結果、L−体は0.2%の混入であった。
分離方法に関する。 D−フェニルアラニンは鎮痛作用を有し、鎮痛剤のほ
か、抗生物質の合成原料などとしても最近注目を集めて
いる医薬,医薬原料として有用なアミノ酸である。 従来の技術及び発明が解決しようとしている問題点 D−フェニルアラニンの製造及び分離方法に関しては、
ベンジルヒダントインをある種の微生物が生産する酵素
ヒダントイナーゼを作用させて酵素的にD−フェニルア
ラニンを得る方法や、(発酵と工業Vol 138 No.10 P937
外)また、優先晶出法、ジアステレオマー法などの物理
化学的な手法による光学分割法による方法が多数知られ
ている。 前者においては原料ベンジルヒダントインの工業的な入
手に難があり、後者は完全な光学分割はできず、かなり
の量の異性体(L−体)が混入される。 D−フェニルアラニンは用途によっては光学異性体の混
入は厳しく制限されており、含有量によってはその商品
価値を低下させる。したがってD−フェニルアラニンの
製造においては、極力L−フェニルアラニンの含有量を
減少させる必要があるが、化学的方法によるD−フェニ
ルアラニンの製造においては、得られたD−体及びL−
体のラセミ体から高純度のD−体のみを得る分離に大変
困難をきたす。 例えばN−アセチルグリシンとベンズアルデヒドの縮合
などの化学的方法で得られたラセミ体反応液から、通常
のアミノ酸の光学分割法として知られているN−アセチ
ル−DL−アミノ酸のL体のみ加水分解するアシラーゼ
酵素を用いたアシラーゼ反応後、反応液を固液分離に付
した場合、加水分解により生成したL−フェニルアラニ
ンの溶解度分がN−アセチル−D−フェニルアラニンの
結晶に付着される。 またアシラーゼ酵素による選択的加水分解反応において
は、効率のよい分離法を考慮するのは勿論だが、L−フ
ェニルアラニンの生成物濃度が高くなると、反応を阻害
する。したがってN−アセチル−DL−フェニルアラニ
ンのアシラーゼ反応による光学分割においては1回のア
シラーゼ反応のみでは、限度があり、たとえ酵素を多用
してもN−アセチル−L−フェニルアラニンを充分に反
応せしめることはできず、得られるN−アセチル−D−
フェニルアラニン中にかなりの未反応L−体が混入さ
れ、最終的に加水分解して得られるD−フェニルアラニ
ンの高光学純度を得るには問題があることもわかった。 問題点を解決するための手段 本発明者らはこのような問題点を踏まえ、化学的方法に
より得られたN−アセチル−DL−フェニルアラニンの
ラセミ体反応液からN−アセチル−D−フェニルアラニ
ンのみを効率よく分離し、高光学的純度を有するD−フ
ェニルアラニンを得る方法を鋭意検討し、本発明方法に
達したものである。 すなわち、本発明方法は、1)N−アセチル−DL−ア
ミノ酸のL体のみ加水分解するアシラーゼ酵素を用い
て、N−アセチル−DL−フェニルアラニンを処理し、
N−アセチル−L−フェニルアラニンのみ加水分解し、
得られたアシラーゼ反応液を、2)濃縮後冷却してでき
るだけ多くのL−フェニルアラニンを結晶として晶出分
離するか、または反応液に無機酸を添加してpHを1以下
にすることにより、L−フェニルアラニンのみを完全に
溶解してろ液として分離するかのいずれかの方法で、L
−フェニルアラニンを分離後、3)主にN−アセチル−
D−フェニルアラニン及び未反応のN−アセチル−L−
フェニルアラニンよりなるろ液または結晶を、再度上記
のアシラーゼ酵素により処理して、4)得られた反応終
了液のpHを1以下にして、生成残存するL−フェニルア
ラニンを溶解させて、固液分離し、5)得られたN−ア
セチル−D−フェニルアラニン結晶を加水分解に付する
ことよりなる、光学的に高純度のD−フェニルアラニン
を得る方法である。 本発明は以下の様にして実施する。 N−アセチル−DL−フェニルアラニンのアシラーゼ酵
素によるアシラーゼ加水分解反応は、N−アセチル−D
L−フェニルアラニンの5〜40%水溶液を苛性ソーダ
で中性付近もしくは弱アルカリ付近まで中和した水性媒
体中で、温度30〜60℃、反応時間10〜70Hrで実
施するのが好ましく、またアシラーゼの安定化のために
通常行なわれている様にCoCl2・6H2Oを添加し系内のコバ
ルトイオン濃度が10-6M〜10-2Mの濃度となるよう
にして実施するのが望ましい。 上記の様な方法で得られたアシラーゼ反応終了液中に
は、加水分解により生成したL−フェニルアラニンの溶
解度が2%前後であるため、溶解度分以外のL−フェニ
ルアラニンの結晶が析出しており、未反応のN−アセチ
ル−L−フェニルアラニンとN−アセチル−D−フェニ
ルアラニン及び溶解度分のL−フェニルアラニンは溶液
となっている。この反応水溶液からなるべく多くのL−
フェニルアラニンを系外へ除去するために、アシラーゼ
反応マスを濃縮した後、冷却を行ない固液分離によりL
−フェニルアラニンを系外へ除去する。その際、好まし
くはL−フェニルアラニンの濃度が20%程度となるま
で濃縮を行ない、0〜10℃まで冷却してL−フェニル
アラニンの結晶を固液分離するのがよい。 また本発明においては、上記の濃縮、冷却による方法以
外に、L−フェニルアラニンを分離する方法としてアシ
ラーゼ反応終了後、直ちにPHを塩酸などで1以下にし
て、生成しているL−フェニルアラニンを完全に溶解さ
せ、ろ液として分離することもできる。その場合はN−
アセチル−D−フェニルアラニン及び未反応のN−アセ
チル−L−フェニルアラニンは結晶として析出するので
これを分離する。その際、水でよく洗浄して付着してい
るL−フェニルアラニンを十分除去するのがよい。 このようにしてL−フェニルアラニンを固液分離して得
られた、N−アセチル−D−フェニルアラニン及び未反
応のN−アセチル−L−フェニルアラニン及び若干のL
−フェニルアラニンを含むろ液または結晶は、L−フェ
ニルアラニン濃度が0.5%以内となる様に水で希釈さ
れ、この水溶液中に新たにN−アセチル−DL−アミノ
酸のL体のみ加水分解するアシラーゼ酵素を添加して再
度反応を行なわせる。 これにより、アシラーゼ酵素反応阻害もなく、未反応の
N−アセチル−L−フェニルアラニンは再度加水分解さ
せることができて極力減らすことができる。 二回目のアシラーゼ反応が終了したら、溶液のPHを塩酸
などで1以下とすることにより、生成しているL−フェ
ニルアラニンを溶解させ、未反応物のほとんど含まれな
いN−アセチル−D−フェニルアラニンを析出させ固液
分離により単離する。その際好ましくはアシラーゼ反応
終了液は濃縮などによりN−アセチル−D−フェニルア
ラニンの濃度を高くしておく方がよい。 かくして光学純度の高い、すなわちD−体含量99%以
上のN−アセチル−D−フェニルアラニンを得ることが
できる。 本発明のアシラーゼ反応において使用するアシラーゼ酵
素は、選択的にN−アセチル−DL−アミノ酸のL−体
のみを加水分解するものであればいかなる菌体より取得
されたものでもよいが、アシラーゼ反応は通常中性付近
もしくは弱アルカリ付近で行なわれており、従って本発
明においても至適PHが6〜9付近のアシラーゼを使用す
るのが好ましい。例えば、アスペルギルス属、ペニシリ
ウム属の菌など公知の糸状菌、シュードモナス属菌など
公知細菌、ストレプトミセス属などの公知の放線菌など
から得られたものが使用できる。 本発明方法により得られたN−アセチル−D−フェニル
アラニンの加水分解は、常法に従い実施できる。即ち塩
酸使用量がN−アセチル−D−フェニルアラニンの1.25
倍モル程度、N−アセチル−D−フェニルアラニンの濃
度が10〜30%の塩酸水溶液中で、加熱還流を数時間
行ない冷却、中和して析出した結晶を固液分離すること
により高収量で光学純度の高い(光学純度99%以上)
D−フェニルアラニンを得ることができる。 また副生したL−フェニルアラニンは、単離してL−フ
ェニルアラニン製品としても良いし、あるいはラセミ
化、アセチル化によりN−アセチル−DL−フェニルア
ラニンとして再使用することもできる。 以下実施例を示す。 実施例1 N−アセチル−DL−フェニルアラニン100gをイオ
ン交換水及び20%苛性ソーダ水溶液にて溶解し、PH7.
5に合わせる。CoCl2・6H2Oを反応系内のCo2+濃度が5×
10-4Mとなる様に添加した。反応液の全重量が550gと
なる様にして、天野製薬(株)製アシラーゼ酵素1.4g(1
8,000U/g)を添加して40℃/40Hrで反応を行った。反
応開始後10Hr付近より結晶が析出し始めた。 反応終了後、反応液を減圧下(約100mm/Hg)で濃縮し、
水留去を行ない濃縮液180g(L−フェニルアラニン20
%濃縮液)を得た。 反応終了マスのHLC分析の結果、N−アセチル−L−
フェニルアラニンよりL−フェニルアラニンへの転換率
は88%であった。 次に濃縮液を冷却して、10℃/2Hr晶出後、ヌッチェ
により真空ろ過を行ない、L−フェニルアラニンの粗結
晶を約40g(Dry換算33.0g)とろ液141gを得た。
ろ液中のL−フェニルアラニン濃度は1.5%であった。 得られたろ液を水で希釈して全体を450gとし、さら
に20%苛性ソーダ水溶液にてPHを7.5に合わせた。つ
いで天野製薬(株)製アシラーゼ酵素0.7gを添加して4
0℃/40Hrで2回目の反応を行なった。2回目アシラー
ゼ反応終了後の反応液中のL−フェニルアラニン濃度は
0.47%より1.4%まで上昇し、N−アセチル−L−フェ
ニルアラニンの大部分がL−フェニルアラニンへ転換し
ていることを示す。 得られた反応終了液を約300gまで減圧下に濃縮し、室
温にて濃塩酸を加えてPH1とした。引続き10℃/2Hr晶
出を行ない、ヌッチェで真空ろ過後水洗,乾燥を行な
い、N−アセチル−D−フェニルアラニンの結晶42.8g
を得た。 この結晶は純度99.6%、旋光度▲〔α〕20 D▼=−40.2
°(C=2,CH3OH)であり、光学的にほぼ純品のN−
アセチル−D−フェニルアラニンであることが確認され
た。 上記により得られたN−アセチル−D−フェニルアラニ
ン25gを、濃塩酸及び水に溶解して、全容量が100
g、塩酸濃度を7%として、加熱還流を8Hr行ない、冷
却後32%苛性ソーダ水溶液にてPHを5.0とし、10℃/
2Hr晶析を行なった。 ヌッチェによる真空ろ過し、水にて洗浄後、結晶を乾燥
して白色のD−フェニルアラニン精結晶15.2gを得た。 本品は純度100.1%、▲〔α〕20 D▼=+346°(C=
2、水)であり、光学異性体分離用カラム(ダイセル社
製キラルパック)で分析した結果、L−体は0.3%の混
入であった。 比較例 実施例1と同様に行なった。ただしアシラーゼ酵素使用
量は倍量の2.8gとし、2回目のアシラーゼ反応はカッ
トした。得られたN−アセチル−D−フェニルアラニン
の旋光度▲〔α〕20 D▼=−36.2°(C=2、CH3OH)と
低く、さらにこれより得られたD−フェニルアラニンの
▲〔α〕20 D▼=+29.4°と低かった。この場合L−体
の8%が混入していた。 実施例2 実施例1と同様にして一回目の光学分割反応を行ない、
濃縮液を得た。濃縮液に室温にて濃塩酸86gを加えて
PHを1.0とし、5℃に冷却、2Hr晶出を行なった。析出
している未反応のN−アセチル−L−フェニルアラニン
を含むN−アセチル−D−フェニルアラニンの結晶をろ
別し、乾燥後46gを得た。 この結晶は、純度98.7%、旋光度〔α〕20 D=−32.4°
(C=2、CH3OH)。光学純度は約90%であった。 得られた結晶40gを用いて水及び20%苛性ソーダ水
溶液にてPHを7.5、全容量を220gとなる様にし、天野製
薬(株)製アシラーゼ酵素0.7gを添加して40℃/40Hr
で2回目の反応を行なった。反応液中には新たにL−フ
ェニルアラニンが重量で2.9g生成しており、N−アセ
チル−L−フェニルアラニンの大部分はL−フェニルア
ラニンへ転換していることを示す。 上記により得られた反応終了液を室温にて濃塩酸を加え
PH1.0とし、さらに10℃/2Hr晶出後ヌッチェで真空ろ
過、水洗、乾燥を行ない、N−アセチル−D−フェニル
アラニンの結晶32gを得た。 この結晶は純度99.8%。〔α〕20 D=−40.3°(C=
2、CH3OH)であり、ほぼ純品のN−アセチル−D−フ
ェニルアラニンであることが確認された。 上記により得られたNーアセチル−D−フェニルアラニ
ン25gを用いて実施例1と同様に加水分解を行ない、
D−フェニルアラニン精結晶14.8gを得た。本品は純度
99.8%、〔α〕20 D=+34.8°(C=2、水)であり光
学異性体分離用カラム(ダイセル社製、キラルパック)
で分析した結果、L−体は0.2%の混入であった。
Claims (2)
- 【請求項1】1)N−アセチル−DL−アミノ酸のL体
のみを選択的に加水分解するアシラーゼ酵素を用いて、
N−アセチル−DL−フェニルアラニンを処理し、N−
アセチル−L−フェニルアラニンのみ加水分解してL−
フェニルアラニンとし、得られたアシラーゼ反応液を、 2)濃縮、冷却して反応液中のL−フェニルアラニンを
結晶として固液分離した後、 3)主にN−アセチル−D−フェニルアラニン及び未反
応のN−アセチル−L−フェニルアラニンよりなるろ液
を、再度上記のアシラーゼ酵素で処理して、N−アセチ
ル−L−フェニルアラニンのみ加水分解してL−フェニ
ルアラニンとし、 4)得られた反応終了液のpHを1以下にして生成した
L−フェニルアラニンを溶解させ、 5)固液分離して得られたN−アセチル−D−フェニル
アラニンの結晶を加水分解に付すことよりなる、光学的
に純度の高いD−フェニルアラニンの分離方法。 - 【請求項2】1)N−アセチル−DL−アミノ酸のL体
のみを選択的に加水分解するアシラーゼ酵素を用いて、
N−アセチル−DL−フェニルアラニンを処理し、N−
アセチル−L−フェニルアラニンのみ加水分解してL−
フェニルアラニンとし、得られたアシラーゼ反応液を、 2)pHを1以下にして、反応液中に生成したL−フェ
ニルアラニンをろ液として固液分離した後、 3)主に、N−アセチル−D−フェニルアラニン及び未
反応のN−アセチル−L−フェニルアラニンよりなる結
晶を、再度上記のアシラーゼ酵素で処理して、N−アセ
チル−L−フェニルアラニンのみ加水分解してL−フェ
ニルアラニンとし、 4)得られた反応終了液のpHを1以下にして、生成し
たL−フェニルアラニンを溶解させ、 5)固液分離して得られたN−アセチル−D−フェニル
アラニンの結晶を加水分解に付すことよりなる、光学的
に純度の高いD−フェニルアラニンの分離方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23715986A JPH0634751B2 (ja) | 1986-10-07 | 1986-10-07 | D−フエニルアラニンの分離方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23715986A JPH0634751B2 (ja) | 1986-10-07 | 1986-10-07 | D−フエニルアラニンの分離方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6391097A JPS6391097A (ja) | 1988-04-21 |
JPH0634751B2 true JPH0634751B2 (ja) | 1994-05-11 |
Family
ID=17011269
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23715986A Expired - Lifetime JPH0634751B2 (ja) | 1986-10-07 | 1986-10-07 | D−フエニルアラニンの分離方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0634751B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4912042A (en) * | 1989-08-17 | 1990-03-27 | Eastman Kodak Company | Preparation of D-malic acid or derivative |
-
1986
- 1986-10-07 JP JP23715986A patent/JPH0634751B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6391097A (ja) | 1988-04-21 |
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