JPH06336615A - ハイス系複合ロールの熱処理方法 - Google Patents

ハイス系複合ロールの熱処理方法

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JPH06336615A
JPH06336615A JP15127893A JP15127893A JPH06336615A JP H06336615 A JPH06336615 A JP H06336615A JP 15127893 A JP15127893 A JP 15127893A JP 15127893 A JP15127893 A JP 15127893A JP H06336615 A JPH06336615 A JP H06336615A
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outer layer
inner layer
composite roll
carbide
heat treatment
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JP15127893A
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Inventor
Hiroyuki Kimura
広之 木村
Yutaka Nakai
豊 中井
Akitoshi Okabayashi
昭利 岡林
Takeru Morikawa
長 森川
Hiroaki Katayama
博彰 片山
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Kubota Corp
Original Assignee
Kubota Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ハイス系鋳鉄材で形成された外層を高硬度化
し、かつ黒鉛鋼内層を強靱化することができるハイス系
複合ロールの熱処理方法を提供する。 【構成】 ハイス系鋳鉄材で形成された外層の内周面に
黒鉛鋼で形成された内層が溶着された複合ロールの熱処
理方法である。複合ロールを800〜950℃に加熱保
持して内層をオーステナイト化し、焼入れ、焼戻しす
る。次に、外層がオーステナイト温度でかつ外層と内層
との境界部が1090℃を越えないように外層をその表
面から急加熱した後、外層に焼入れ、焼戻しする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は外層がハイス系鋳鉄材
で、内層が黒鉛鋼で形成された複合ロールの熱処理に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、耐摩耗性の向上のため、圧延使用
層たる外層をV:3〜10wt%、W:1.5〜10wt%
を含有したハイス系鋳鉄材によって形成した複合ロール
が使用されている。この複合ロールの内層( 軸心部)
は、通常、強靱で鋳造性の良好性なダクタイル鋳鉄材に
より形成されるが、より高い強度が要求される場合は、
鋼材の内でも比較的鋳造容易な黒鉛鋼で鋳造形成される
場合が多い。
【0003】前記複合ロールは、外層の内周面に内層が
鋳造された後、外層の高硬度特性を実現させるため、焼
き入れ、焼き戻し熱処理が施される。この場合、外層で
は、炭化物を基地中に十分固溶させ、焼戻し時に良好な
二次硬化能を得るためには、オーステナイト化温度は高
い方がよい。しかし、内層を黒鉛鋼で形成した場合、高
温に加熱するほど、炭化物が結晶粒界にネット状に生成
して、強度が劣化する。また、鋳造複合ロールの場合、
外層から内層にCr、Mo、W、Vなどの外層中の炭化
物生成元素が混入するため、鋳造時点で既にネット状炭
化物が生成し、以後の熱処理によっても消失しないた
め、内層の強度を劣化させる場合が多い。
【0004】一方、本出願人は、特願平2−17895
9号に開示した通り、外層表面を急加熱し、外層と内層
の境界部を1100℃以下として焼き入れる熱処理方法
を提案している。この方法により、内層を高温にするこ
となく、外層の高温加熱が可能になった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記熱処理によれば、
内層の高温加熱が避けられるが、内層内部は鋳造時の組
織がそのまま残存するようになる。鋳造複合ロールの場
合、外層から内層に炭化物生成元素が混入するため、鋳
放しでも、これらの炭化物が結晶粒界にネット状に生成
し易い。従って、かかる組織が内層に現れると、黒鉛鋼
本来の高強度が得難いという問題がある。
【0006】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、ハイス系鋳鉄材で形成された外層を高硬度化すると
共に、黒鉛鋼で形成された内層に黒鉛鋼本来の強靱性を
発現させることができるハイス系複合ロールの熱処理方
法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のハイス系複合ロ
ールの熱処理方法は、ハイス系鋳鉄材で形成された外層
の内周面に黒鉛鋼で形成された内層が溶着された複合ロ
ールの熱処理方法であって、複合ロールを800〜95
0℃に加熱保持して内層をオーステナイト化し、焼入
れ、焼戻し後、外層がオーステナイト温度でかつ内層が
950℃を越えないように外層をその表面から急加熱し
た後、外層又は外層及び内層を焼入れ、焼戻しする。
【0008】
【作用】複合ロールを800〜950℃(炭化物分解固
溶温度)に加熱することにより、鋳造時に内層の黒鉛鋼
の結晶粒界に生成したネット状炭化物を分解して、炭化
物構成元素を基地中に溶け込ませ、ネットの幅を縮小
し、分断状にすることができる。800℃未満では炭化
物の分解作用を期待することができない。一方、950
℃を越えると、炭化物の分解により生じた元素が、ある
程度基地中に固溶した後、冷却途中で溶け込んだ元素が
再び結晶粒界に再析出するようになり、ネットの縮小が
困難になる。950℃以下でも再固溶した元素は冷却途
中に析出するが、急冷することにより、結晶粒界に再析
出せずに、基地中で粒状に析出させることができる。と
ころが、950℃を越えると、再固溶する元素が多くな
り過ぎるため、急冷させても、一部は結晶粒界に析出し
てしまう。尚、鋳造段階で内層にネット状炭化物が晶出
しなかった場合、冷却途中での結晶粒界への炭化物の析
出が起こり難い傾向があり、1050℃以下ならば急冷
することにより、ネット状炭化物の析出を防止すること
ができる。
【0009】このネット状炭化物の分断のための加熱を
行う前に、複合ロールを予め1000〜1090℃に加
熱することにより、ネット状炭化物のネットの太さを細
くすることができ、炭化物ネットの縮小、分断に要する
炭化物分解固溶温度における加熱時間を比較的短時間で
済ますことができる。1000℃未満では溶け込みの促
進作用が過小であり、一方1090℃を越えると炭化物
の分解、基地への固溶が促進されるものの、基地中に固
溶した炭化物生成元素が粒界に再析出するようになり、
炭化物ネットの分断が却って抑制されるようになる。
【0010】その後、複合ロールに対し、焼入れ、焼戻
し熱処理を施すことにより、内層材をネット状炭化物の
ない、基地組織が主として粒状パーライトからなる強靱
材質にすることができる。次に、外層がオーステナイト
温度で、かつ内層が950℃を越えないように外層をそ
の表面側から急加熱すると、外層が高温のオーステナイ
トになり、外層のハイス系鋳鉄材の高硬度炭化物の分
解、基地中への固溶を促進することができる。一方、内
層は950℃以下に止まるため、炭化物ネットが再形成
されることはない。
【0011】その後、複合ロールに対し、焼入れ、焼戻
し熱処理を施すことにより、内層の強靱性を損なうこと
なく、外層を二次硬化させて高硬度化することができ
る。尚、内層のオーステナイト化温度は750℃前後で
あるため、外層の加熱時にこれ以上の温度に加熱された
場合は、再び焼入れ、焼戻しの熱処理を受けることにな
る。
【0012】
【実施例】本発明の熱処理の対象となる複合ロールの外
層に使用されるハイス系鋳鉄材として、好ましい組成例
( 単位wt%、内層材等において同様) と限定理由を下記
に記す。C :1.0〜3.0%、 Si:0.1〜
2.0%、Mn:0.1〜2.0%、 Cr:3.0
〜10.0%、Mo:0.1〜9.0%、 W :
1.5〜10.0%、V、Nbの一種以上:総計で3.
0〜10.0%を本質的に含有し、残部が実質的にFe
からなる。
【0013】C:1.0〜3.0% Cは主としてFeおよびCrと結合してM7 3 型の高
硬度複合炭化物を形成すると共に、Cr, Mo, V, N
b, Wと結合してMC型,M6 C型,M2 C型等の高硬
度複合炭化物をも形成する。この高硬度複合炭化物形成
のために、1.0%以上のC%が必要である。一方、
3.0%を越えてCが含有されると炭化物量が増すと共
に脆くなり、耐クラック性が劣化する。
【0014】Si:0.1〜2.0% Siは本発明材が鋳造合金であるため、湯流れ性の確保
のために必要な元素であり、同時に又、使用原材料から
0.1%程度は不可避的に含有される。しかし、2.0
%を越えると靱性の低下を招くため好ましくない。 Mn:0.1〜2.0% Mnは硬化能を増し、また、Sと結合してMnSを生成
し、Sによる脆化を防ぐ元素であり、同時に使用原材料
から0.1%程度は不可避的に含有される。しかし、
2.0%を越えると靱性の低下を招くため好ましくな
い。
【0015】Cr:3.0〜10.0% CrはFe, Mo, V, Nb, Wと共にCと結合して、
高硬度複合炭化物を形成して高温に於ける耐摩耗性の向
上に寄与する。また、一部は基地中に固溶して焼入れ性
および耐摩耗性を改善する。3.0%未満ではこれらの
効果が少なく、耐摩耗性改善が期待できない。一方、1
0.0%を越えて含有されると靱性の劣化を来すため好
ましくない。
【0016】Mo:0.1〜9.0% MoはFe, Cr, V, Nb, Wと共にCと容易に結合
して、主としてM7 3 型, M6 C型, M2 C型複合炭
化物を形成し、常温および高温硬度を高めて耐摩耗性の
向上に寄与する。MoはWに比較して少量添加でその効
果を発揮する。このさい、0.1%未満では所期の耐摩
耗性を得ることができず、一方、9.0%を越えると靱
性の低下を来し好ましくない。
【0017】W:1.5〜10.0% Wも同様にFe, Cr, Mo,V, Nbと共にCと容易
に結合して複合炭化物を形成し、常温および高温硬度を
高めて耐摩耗性の向上に寄与する。1.5%未満では所
期の耐摩耗性を得ることができず、一方、10.0%を
越えると靱性の低下を来し、耐ヒートクラック性を悪化
させる。また、遠心力鋳造の際、マクロ偏析を生成し易
くさせる。このため10.0%以下とする。
【0018】V, Nbの一種以上:総計で3.0〜1
0.0% VはNbと同様にFe, Cr, Mo, Wと共にCと容易
に結合して、主としてMC型の複合炭化物を形成し、常
温および高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。
また、このMC型複合炭化物は厚さ方向に枝状に生成す
るため、基地の塑性変形を抑止し、機械的性質、さらに
は耐クラック性の向上にも寄与する。単独または二種を
複合して3.0%以上添加しないとかかる効果は現れに
くい。しかし、添加量が10.0%を越えると靱性の低
下を招来すると共に、遠心力鋳造の際、マクロ偏析を生
成し易くなる。
【0019】外層のハイス系鋳鉄材は以上の合金成分を
本質的成分として含有するほか残部がFeおよび不純物
で形成される。尚、P, Sは原料より不可避的に混入す
るが、材質を脆くするので少ない程望ましく、P:0.2
%以下、S:0.1 %以下に止めておくのがよい。前記鋳
鉄材組成において、本質的成分として含有するとは、前
記ハイス系鋳鉄材の材質特性を損なわず、むしろ向上さ
せる元素の含有を許容する意味であり、このような元素
として下記のものがある。
【0020】Co:0.5〜7.0% Coは熱処理時にオーステナイトへのMo,W,Vの固
溶を促進し、またCの拡散を抑制するため、焼き戻し二
次硬化能を向上させると共に高温時の硬度低下を抑制す
る。その結果、耐摩耗性が向上する。0.5%未満では
このような効果が過少であり、一方7.0%を越えると
効果は飽和し、経済性に欠ける。 Al, Ti,Zr:各々0.01〜0.5% Al, Ti,Zrは溶湯中で酸化物を生成して、溶湯中
の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させると
共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために凝
固組織の微細化に効果がある。0.01%未満ではこの
効果は十分ではなく、一方、0.50%を越えて含有さ
れると介在物となって残留し、好ましくない。尚、A
l, Ti,Zrは、本発明では主として鋳造組織の微細
化による耐摩耗性改善のために添加されるものであり、
単に脱ガスを目的として添加されるものではない。
【0021】B:0.01〜0.50% Bは溶湯中の酸素と結合して、脱酸効果を示す。その
他、生成した酸化物を核とする凝固組織の微細化効果、
および基地中に溶け込んだBによる焼入れ性の増大効果
を有する。圧延ロールのような大質量の鋳物の場合、冷
却速度を速くすることが困難な場合があるが、焼入れ性
の増大によって、焼入れ組織を得易くなる。0.01%
未満ではこのような効果が十分ではなく、一方0.50
%を越えると材質が脆くなり好ましくない。
【0022】本発明の対象となる複合ロールの内層材と
しては、既述の通り黒鉛鋼が使用されるが、その好適な
組成例を下記に記す。成分限定理由は公知であるため省
略する。C :1.0〜2.3%、 Si:0.5〜
3.0%、Mn:0.2〜1.5%、 Ni:3.0
%以下、Cr:2.0%以下、 Mo:2.0%
以下、W、V、Nb:総計で4.0以下、を本質的に含
有し、残部が実質的にFeからなる。尚、P、Sは材質
を脆くするので各々0.2%以下に止めておくのがよ
い。
【0023】複合ロールは、通常、中実状ロールの場
合、外層が遠心力鋳造された後、その内部に内層(軸芯
部) が静置鋳造される。尚、円筒状のスリーブロールの
場合、外層に引き続いて内層も遠心力鋳造される。次
に、本発明の複合ロールの熱処理について説明する。先
ず、鋳造後の複合ロールを800〜950℃(炭化物分
解固溶温度)に昇温し、ロール全体を同温度に保持後、
焼入れ、焼戻しを行う。保持時間は、ロールの大きさに
もよるが、5〜40hr程度である。かかる加熱処理に
より、内層の黒鉛鋼結晶粒界に生成したネット状炭化物
が分解し、炭化物構成元素が基地中に粒状炭化物として
析出し、炭化物ネットの縮小、分断が生じる。
【0024】尚、前記温度に保持する前に、1000〜
1090℃に2〜5hr保持後、急冷(焼入れ)するこ
とにより、前記炭化物分解固溶温度における保持時間を
短縮することができる。内層の結晶粒界に生成したネッ
ト状炭化物の太さを細くすることができるからである。
その後、複合ロールに対し、焼入れ、焼戻し熱処理を施
し、内層材を強靱化する。焼入れの際の急冷手段として
は、強制空冷や噴霧水冷を適用すればよい。焼戻し温度
は、500〜600℃程度である。
【0025】次に、外層表面を急加熱し、外層をオース
テナイト域温度に加熱する。この際、内層が950℃を
越えないように留意する。但し、外層・内層の境界近傍
に負荷がかからないような圧延ロールの場合、その部分
が多少劣化しても構わないため、境界付近の内層が90
0℃以上になってもよい。外層表面温度は1100℃以
上に急加熱するのがよい。
【0026】加熱速度は、あまり遅いと内層内部まで温
度が上がるので、150℃/hr程度以上にするのがよ
い。外層の急速加熱方法としては、外層外周面の回りに
誘導加熱コイルを設置したり、外層表面にノズル口が指
向した多数のガスバーナを軸方向に沿って適宜間隔で配
置しておき、これらによって外層表面を加熱すればよ
い。加熱に際しては、ロールを回転させるのがよい。
【0027】外層をオーステナイト域温度に加熱後、6
50℃以下の温度に急冷し、焼入れる。650℃以下に
急冷するのは、冷却速度が遅かったり、冷却後の温度が
650℃を越えると、オーステナイト中に過飽和に固溶
した合金元素が拡散し析出するため、爾後の焼戻し熱処
理によって二次硬化が生じにくくなるからである。冷却
速度は強制空冷や噴霧水冷により300℃/hr以上に
するのがよい。もっとも、高温の外層から低温の内層へ
熱が移動するため、内層温度が低い場合には、外層の冷
却速度は自然放冷でも十分速くなる。
【0028】外層を焼入れした後、500〜560℃の
温度で保持し、室温まで冷却する焼戻しを数回行なう。
かかる温度の焼戻しにより、オーステナイト化熱処理の
際に外層材の基地中に固溶したMo, W, V, Nb等の
安定な炭化物を形成する元素が微細炭化物として析出
し、2次硬化現象を生じ、外層を高硬度化する。これら
の炭化物は、高温においても安定なため、外層材は高温
下でも耐摩耗性に優れる。焼戻し温度の保持時間は、微
細炭化物の析出を促進するため、5〜20hr程度がよ
い。
【0029】本発明の複合ロールは熱間圧延、冷間圧延
を問わず、圧延設備の圧延用ロールおよびその付帯設備
のピンチロールあるいは圧延材の搬送用ローラー等の、
耐摩耗性を要求されるロール、ローラーに適用される。
次に本発明の具体的実施例を掲げる。 実施例A (1) 内径φ900mmの遠心力鋳造用金型に外層材(ハ
イス系鋳鉄)溶湯を肉厚で70mm分遠心力鋳造し、外
層内面が半凝固状態の時点で、その内面に黒鉛鋼溶湯を
肉厚で165mm分鋳込み、内径φ508mmの円筒状
複合ロールを鋳造した。鋳造後の各層の成分を表1に示
す。尚、外層は溶湯組成と同様である。また、鋳造後の
内層の金属組織顕微鏡写真を図1に示す。本例では、外
層成分の混入濃度が低いため、組織中にネット状炭化物
の晶出は認められなかった。
【0030】
【表1】
【0031】(2) 鋳造された複合ロールを歪み取り焼鈍
し、粗加工した後、複合ロールを1050℃で3hr保
持後、焼入れし、内層材のネット状炭化物の分解、基地
への再析出を促進した後、更に840℃で10hr保持
した後、400℃/hrの冷却速度で焼入れ後、580
℃で焼戻した。外層、内層の硬度を測定したところ、外
層Hs50〜53、内層Hs40〜43であった。 (3) 次に、均熱炉でロール全体を500℃に加熱した
後、誘導加熱により外層を800℃予熱し、更にその表
面温度が1130℃になるまで加熱した後、自然放冷に
より焼入れ、更にロール全体を550℃で焼戻した。 (4) 得られたロールの内層の硬度を測定したところ、外
層の焼入れ・焼戻し熱処理前とほぼ同様であった。ま
た、内層より引張試験片を採取し、同試験に供したとこ
ろ、引張強さ75kgf/mm2 、伸び2.8%であり、強靱
性に優れることが確認された。また、内層組織を顕微鏡
観察したところ、図2に示す通り、ネット状炭化物の析
出は認められなかった。 (5) 比較のため、(1) と同様にして複合ロールを鋳造
し、1100℃で3hr保持後、焼入れ・焼戻し熱処理
を施した後、(3) と同様の外層熱処理を施して、外層、
内層の硬度を測定したところ、外層Hs83〜86、内
層Hs52〜55であった。また、内層の機械的性質を
測定したところ、引張強さ62kgf/mm2 、伸び0.4%
であった。また、内層組織を顕微鏡観察したところ、図
3に示す通り、ネット状炭化物の析出が認められた。前
記の通り、内層の硬度が高く、また伸びが低かったの
は、ネット状炭化物の生成によるものと考えられる。 実施例B (1) 内径φ780mmの遠心力鋳造用金型に外層材(ハ
イス系鋳鉄)溶湯を肉厚で60mm分遠心力鋳造し、外
層が凝固した後、その内面に黒鉛鋼溶湯を肉厚で135
mm分鋳込み、内径φ470mmの円筒状複合ロールを
鋳造した。鋳造後の各層の成分を表2に示す。鋳造後の
内層の金属組織顕微鏡写真を図4に示す。本例では、外
層成分の混入濃度が比較的高いため、組織中にネット状
炭化物の晶出が認められた。
【0032】
【表2】
【0033】(2)鋳造された複合ロールを歪み取り焼鈍
し、粗加工した後、複合ロールを840℃で20hr保
持した後、400℃/hrの冷却速度で焼入れ後、58
0℃で焼戻した。外層、内層の硬度を測定したところ、
外層Hs52〜55、内層Hs42〜45であった。 (3) 次に、実施例と同様にして外層を予熱し、更にその
表面温度が1130℃になるまで加熱した後、自然放冷
により焼入れ、更に550℃で焼戻した。 (4) 得られたロールの内層の硬度を測定したところ、外
層の焼入れ・焼戻し熱処理前とほぼ同様であった。ま
た、内層より引張試験片を採取し、同試験に供したとこ
ろ、引張強さ64kgf/mm2 、伸び1.2%であり、強靱
性に優れることが確認された。また、内層組織を顕微鏡
観察したところ、図5に示す通り、ネット状炭化物の析
出は認められなかった。 (5) 比較のため、(1) と同様にして複合ロールを鋳造
し、1100℃で3hr保持後、焼入れ・焼戻し熱処理
を施した後、(3) と同様の外層熱処理を施して、外層、
内層の硬度を測定したところ、外層Hs84〜87、内
層Hs55〜58であった。また、内層の機械的性質を
測定したところ、引張強さ59kgf/mm2 、伸び0.34
%であった。また、内層組織を顕微鏡観察したところ、
図6に示す通り、ネット状炭化物の析出が認められた。
【0034】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明のハイス系複
合ロールの熱処理方法によれば、複合ロールを800〜
950℃に加熱して焼入れ、焼戻しするので、内層を形
成する黒鉛鋼に生成したネット状炭化物を縮小、分断す
ることができ、あるいはネット状炭化物の析出を抑制し
て内層を強靱化することができる。また、外層がオース
テナイト温度でかつ内層が950℃を越えないように外
層をその表面から急加熱した後、外層材に焼入れ、焼戻
し処理を施すので、内層に炭化物ネットを形成すること
なく、外層を高硬度複合炭化物の生成による二次硬化に
より、高硬度化することができる。従って、本発明の熱
処理により、内層が強靱性に優れ、外層が耐摩耗性に優
れた複合ロールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例Aにおける鋳造後の複合ロール内層の金
属組織写真(100倍)である。
【図2】実施例Aにおける熱処理後の複合ロール内層の
金属組織写真(100倍)である。
【図3】実施例Aと同組成の比較例における熱処理後の
複合ロール内層の金属組織写真(100倍)である。
【図4】実施例Bにおける鋳造後の複合ロール内層の金
属組織写真(100倍)である。
【図5】実施例Bにおける熱処理後の複合ロール内層の
金属組織写真(100倍)である。
【図6】実施例Bと同組成の比較例における熱処理後の
複合ロール内層の金属組織写真(100倍)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森川 長 大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号 株式会社クボタ内 (72)発明者 片山 博彰 大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号 株式会社クボタ内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハイス系鋳鉄材で形成された外層の内周
    面に黒鉛鋼で形成された内層が溶着された複合ロールの
    熱処理方法であって、 複合ロールを800〜950℃に加熱保持して内層をオ
    ーステナイト化し、焼入れ、焼戻し後、外層がオーステ
    ナイト温度でかつ内層が950℃を越えないように外層
    をその表面から急加熱した後、外層又は外層及び内層に
    焼入れ、焼戻しを施すことを特徴とするハイス系複合ロ
    ールの熱処理方法。
  2. 【請求項2】 複合ロールを1000〜1090℃に加
    熱して内層材のネット状炭化物の分解と基地中への固溶
    を促進した後、800〜950℃に加熱する請求項1に
    記載したハイス系複合ロールの熱処理方法。
JP15127893A 1993-05-27 1993-05-27 ハイス系複合ロールの熱処理方法 Pending JPH06336615A (ja)

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JP15127893A Pending JPH06336615A (ja) 1993-05-27 1993-05-27 ハイス系複合ロールの熱処理方法

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JP (1) JPH06336615A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100404152C (zh) * 2005-09-13 2008-07-23 安泰科技股份有限公司 一种高速钢复合轧辊及其制备方法
CN109652626A (zh) * 2019-01-16 2019-04-19 常州凯达重工科技有限公司 高速钢轧辊铸造余热热处理方法

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