JPH06335334A - アミノ酸組成、脂肪酸組成の改変された油料作物およびその作出方法 - Google Patents

アミノ酸組成、脂肪酸組成の改変された油料作物およびその作出方法

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JPH06335334A
JPH06335334A JP6047058A JP4705894A JPH06335334A JP H06335334 A JPH06335334 A JP H06335334A JP 6047058 A JP6047058 A JP 6047058A JP 4705894 A JP4705894 A JP 4705894A JP H06335334 A JPH06335334 A JP H06335334A
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JP
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oil crop
acid composition
amino acid
gene
dna
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JP6047058A
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Junko Murase
淳子 村瀬
Jun Imamura
順 今村
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Mitsubishi Corp
Mitsubishi Kasei Corp
Original Assignee
Mitsubishi Corp
Mitsubishi Kasei Corp
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】ナタネ等の油料作物に種子貯蔵タンパク質をコ
ードする遺伝子のアンチセンスDNAを導入してアミノ
酸組成および/または脂肪酸組成の改変された油料作物
を作出する。 【効果】 本発明により、油料作物の脂肪酸組成および
/またはアミノ酸組成を改変することができる。具体的
には、脂肪酸として、オレイン酸の含量を減少させ、か
つ、リノール酸及びリノレン酸の含量を増加させたり、
あるいは必須アミノ酸であるリジン、メチオニン、シス
テイン等の含量を増加させたりすることにより、所望の
脂肪酸組成および/またはアミノ酸組成を有する栄養価
の高い種子をつける新しい油料作物を提供することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アミノ酸組成、脂肪酸
組成の改変された油料作物およびその作出方法に関し、
詳細には種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子のアン
チセンスDNAを導入して改変された油料作物およびそ
の作出方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】油料
作物とは、その種子から油(油脂)が採取可能な作物の
ことであり、従来よりナタネ油、ゴマ油等の食用油とし
て、または各種工業用油を採取する目的で広く栽培が行
われている。例えばブラシカ植物の種子は約60重量%
の脂質を含有しており、現在世界の多くの場所で油料植
物として栽培されている。また、その搾り粕は高タンパ
ク質であり飼料および肥料として古くから利用されてい
る。
【0003】しかし、以前よりナタネ油にはヒトの健康
に有害な作用を有するエルカ酸が、また搾り粕には家畜
に有害なグルコシノレートが含まれていることが知られ
ていた。そのためにこれまでに常用の交雑育種法によっ
てそれらの含量を減少させることに努力が払われてき
た。その結果、カナダでは油中にエルカ酸2重量%未
満、搾り粕1g当たり30マイクロモル未満のグルコシ
ノレートしか含まない”ダブルロウ”変種が作られた。
【0004】更に最近では油の消費量が増加すると共に
市場のニーズも多様化し、高脂質量のみならずその使用
目的により脂肪酸組成の異なった油を望むようになっ
た。例えば、食用には先に述べたエルカ酸の限りない低
減の他に、健康志向にともなって高度不飽和脂肪酸の低
減などが望まれている。それに対して、工業用には高エ
ルカ酸のものや、低級脂肪酸のものや高度不飽和脂肪酸
のものが望まれている。また搾り粕においては、高タン
パク質のものや、必須アミノ酸含量の高いものが要求さ
れている。
【0005】これらの様々なニーズに答えるためにはこ
れまでの交配育種では手間がかかり、そのうえ種子成分
をそれぞれ一つの目的にあうように意のままに改変する
ことは困難である。つまり、従来の交配育種は方向性の
ない雑多な変異の中から目的の形質を持つものを選び出
し純系を作り挙げるという実に多大な労力と時間を要す
るプロセスであった。またγ線照射やソマクローナル変
異の利用により、栽培種由来の変異体の中から目的の変
異体を得る方法も試みられてきたが、変異処理によって
その他の遺伝子も変異を受けている場合が多く、直ちに
栽培品種とするには障害が多かった。
【0006】これに対して遺伝子操作を用いた組換え植
物の作出は、目的の形質を司る遺伝子のみを対象にして
人工的に改変し導入する方法であるので、極めて方向性
の高い育種法を提供することが可能となる。これは、
1.目的の形質を司る遺伝子を単離し、2.この遺伝子
を目的の組織や部位で発現し得るように改変し、3.か
かる遺伝子を植物体に導入して再生させることによって
初めて達成されるものである。
【0007】まず上記1として、種子貯蔵物質の生合成
に関与する酵素や貯蔵タンパク質の遺伝子が考えられ
る。種子貯蔵物質はそれを蓄積する植物によって量比は
異なっているが主に脂質、タンパク質、炭水化物があ
る。これらの物質は種子登熟期のほぼ同様の時期、細胞
伸長の時期に生成し蓄積され、その生合成経路は密接に
絡み合っていることが知られている。つまり同じ物質か
らそれぞれの方向へ生合成が進むといった形をとってい
る。ブラシカ植物では、脂質とタンパク質が蓄積される
が、貯蔵脂質の生合成経路に関与する酵素は単離されて
ないのが現状である。一方貯蔵タンパク質であるクルシ
フェリンやナピンの遺伝子は、アラビドプシス(Pla
nt Phys.,87,859−866,1988;
PlantMol.Biol.,11,805−82
0,1988)、大根(PlantMol.Bio
l.,20,467−479,1992;Gene,
,77−85,1991)、ナタネ(Plant M
ol.Biol.,,191−201,1985;P
lant Mol.Biol.,14,633−63
5,1990)などでいくつか単離されている。
【0008】上記2は、貯蔵タンパク質をコードする遺
伝子のアンチセンスDNA(アンチセンスオリゴヌクレ
オチド)を導入してその産生を抑え、植物の形質を優性
に改変させるためのDNA部品の選択と構築である。ナ
タネに関しては、ナピンプロモーターを用いてDHFR
遺伝子およびナピンセンス遺伝子からなるキメラ遺伝子
をナタネ導入し発現させた例(S.E.Radde,T
heor.Appl.Genet.,75,685−6
94,1988)が報告されているが、貯蔵タンパク質
のアンチセンス遺伝子を導入した例はまだ報告されてい
ない。またアンチセンスDNAを導入した例としては、
じゃがいもの澱粉合成酵素の一つであるADP−グルコ
ースーピロホスホリラーゼ遺伝子のアンチセンスDNA
をじゃがいもに導入した時、じゃがいも中の澱粉量が減
少しショ糖含量と一部のタンパク質量が上昇したという
報告がある(EMBO J.,11,1229−123
8,1992)。
【0009】上記3は遺伝子導入の手段であるが、例え
ばナタネの場合、プロトプラストにエレクトロポーレー
ションでDNAを導入し培養を経て植物体を再生させる
方法(Plant Science,52,111−1
16,1987)と、アグロバクテリウムを介してDN
Aを導入し再生させる方法(特表平1−500718号
公報)等が知られている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ブラシカ
植物等の油料作物の種子貯蔵タンパク質量およびアミノ
酸組成を改変する目的で検討を重ねた結果、種子貯蔵タ
ンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスDNAを導
入することによりかかる目的が達成されるばかりではな
く、予想外にもその脂肪酸量、脂肪酸組成および必須ア
ミノ酸組成をも改変することができることを初めて見い
出し、本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち本発明の要旨は、種子貯蔵タンパ
ク質をコードする遺伝子のアンチセンスDNAを導入し
て形質転換された油料作物、その作出方法およびそのた
めに使用される組換えベクター並びにその油料作物から
得られる種子に存する。以下本発明につき詳細に説明す
る。本発明における油料作物としては、前述の通り、そ
の種子から油(油脂)を採取できるものであれば、いか
なるものであってもよい。具体的には、ナタネ、ゴマ、
トウゴマ(ヒマ)、エゴマ、ラッカセイ、オリーブ、ダ
イズ、トウモロコシ、アマ、ヒマワリ、アブラヤシ等が
挙げられる。本発明においては、ナタネ、ダイズ、トウ
モロコシが好ましい作物であり、特に好ましいのはナタ
ネである。
【0012】種子貯蔵タンパク質についても特に制限は
されないが、本発明においてはナピンまたはクルシフェ
リンであることが好ましい。この2種のタンパク質は、
ブラシカ属植物の種子における貯蔵タンパク質の主要な
タンパク質であり、ナタネの場合それぞれ全タンパク質
の約20%と60%を占めている。ナピンはブラシカ植
物が生合成する1.7S貯蔵タンパク質の総称であり、
その中にはアミノ酸配列が部分的に異なるものが数種類
存在している。それらをコードする遺伝子は二十数個の
ジーンファミリーを形成している。しかしそのホモロジ
ーはどの植物間においても各遺伝子間で90%以上と高
い。一方クルシフェリンは12S貯蔵タンパク質の総称
でアミノ酸配列より4種類知られている。それらはナピ
ンと比べて相同性が低く、ある植物種内においてもそれ
ぞれおよそ40%程度しかない。
【0013】本発明において導入するのは、かかる種子
貯蔵タンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスDN
Aである。従って本発明で導入するアンチセンスDNA
は、どの種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子に対す
るものであっても良いが、導入したアンチセンスDNA
の発現したアンチセンスRNAが細胞中に内在する本来
の遺伝子の転写産物とハイブリッドを作ると仮定すれ
ば、それらの塩基配列の相同性が高いほど効率がよいた
め、ジーンファミリー間でも相同性の最も高い部分を用
いることが望ましい。それらの遺伝子はcDNAでもゲ
ノミックDNAでも、またそれらの全長でも一部でも良
い。例えば種子貯蔵タンパク質としてナピンを使用する
場合、ナピン遺伝子は、Rask L.らによって報告
されたnapA塩基配列(J.Biol.Chem.,
262,12196−12201,1986)を基に、
1111bpから1783bp程度までを用い、クルシ
フェリンを使用する場合は、A.J.Ryanらによっ
て報告されたcruA塩基配列(Nuc.Acid R
es.,17,3584,1989)を基に680bp
から1278bpまでをB.napus等のゲノムDN
Aを鋳型としてPCR法により増幅させて単離する。P
CR法(Saiki,Science,239,487
−491,1988)は、鋳型の熱変性、プライマーと
鋳型のアニーリング及び耐熱性ポリメラーゼによる伸長
方法からなる工程を繰り返すことにより、標的DNA領
域を増幅する方法である。即ち、napus
v.Westar等の植物体の葉より、ゲノムDNA
を、例えばMol.Gen.Genet.,211,2
7−34,1988に準じて単離し、このゲノムDNA
約300ngを鋳型として用いる。これらの鋳型DNA
を熱変成して+鎖と−鎖の1本鎖に解離し、アニーリン
グした後、耐熱性ポリメラーゼによりDNAを合成する
という工程を20〜30回繰り返して該相補鎖DNAを
増幅する。この増幅させた部分はナピン転写領域の90
%以上とクルシフェリン転写領域の25%をカバーす
る。
【0014】次に上記の遺伝子を導入した発現ベクター
を構築する。例えばナタネ種子でかかる遺伝子を十分量
発現させるためには、ベクター構築の際に特異的なプロ
モーターを用いることが重要となる。また効率良く種子
貯蔵タンパク質の量を減少させるためには、内在する本
来の種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の発現時
期、発現場所とアンチセンスDNAの発現時期、発現場
所を同じにすることが望ましい。例えば、ナピン遺伝子
やクルシフェリン遺伝子のアンチセンスDNAを導入し
napusを形質転換する際には、napu
のナピン遺伝子由来のプロモーターを上記napAの
シークエンスを基に1bpから1145bp程度までを
PCR法により増幅して用いればよい。また、この時導
入遺伝子をしてクルシフェリンのアンチセンスDNAを
用いた場合には、クルシフェリンのプロモーターを使用
しても良く、上記cruAのシークエンスを基に1bp
から709bp程度までを増幅し用いればよい。但しこ
の際、それらの増幅させたプロモーターがシュード遺伝
子でなく実際に種子内で発現しているものであることが
好ましい。
【0015】更に、効率良く遺伝子の転写を終結させ生
成したRNAを安定させるために、ターミネーターが用
いられる。具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子NOS
のターミネーター(pBI221、Jefferso
n、EMBO J.,,3901−3907,198
7)等が挙げられるが、その他植物細胞内でターミネー
ターとして機能するものであればいずれのものでも良
い。
【0016】植物形質転換法としてはアグロバクテリウ
ム法、エレクトロポーレーション法等が挙げられるが、
アグロバクテリウム法を用いる場合には、plan系列
(Plant Cell Rep.,10,286−2
90、1991)のプラスミドを、エレクトロポーレー
ション法を用いる場合には、pUC系列のプラスミド等
を用いることが好ましい。これらのプラスミドには、選
択マーカー遺伝子としてネオマイシンフォスフォトラン
スフェラーゼ遺伝子またはハイグロマイシンフォスフォ
トランスフェラーゼ遺伝子を含んでいる。その他にクロ
ラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、
βーグルクロニダーゼ遺伝子等から選ばれる2つ以上の
外来遺伝子を使用し、かつその一つは目的とする形質転
換体を選択する際に有効の、いわゆる選択マーカー遺伝
子とするのが好ましい。かかる選択マーカーとしては、
ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼが好まし
い。エレクトロポーレーション法では、選択マーカー遺
伝子と他の外来遺伝子を同一のプラスミド中に有するも
のを使用してもよいし、選択マーカー遺伝子を有するプ
ラスミドと他の外来遺伝子を有するプラスミドとを併用
してもよい。
【0017】かかるプラスミドを油料作物の下胚軸また
はプロトプラストに導入再生することによって、種子貯
蔵タンパク質含量の変化した油料作物を作出することが
できる。アグロバクテリウム法による形質転換法は(特
表平1−500718号公報)に準じて行うことができ
る。
【0018】エレクトロポーレーション法においてブラ
シカ植物由来のプロトプラストは次のようにして調製す
ることが出来る。すなわち、無菌培養されたシュートよ
り常法に従い、例えばセルラーゼやペクチナーゼ等の細
胞壁分解酵素を含む等張溶液中に25〜30℃で5〜2
0時間酵素処理する。処理終了後濾過して未消化物を除
き、ろ液を遠心分離し、精製されたプロトプラストを得
ることが出来る(特願平4−276069号)。例えば
ナピン遺伝子やクルシフェリン遺伝子のアンチセンスD
NAを導入してnapusを形質転換する際には、
napuscv. Westar由来のプロトプラ
スト6×105 個/mlに対し、上記のようにして調製
したナピンアンチセンスDNA発現ベクター、またはク
ルシフェリンアンチセンスDNA発現ベクター(例えば
40〜80μg/ml)を選抜遺伝子としてネオマイシ
ンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(例えば40〜
80μg/ml)を含み、30〜200mM塩化カリウ
ム、0〜50mM塩化マグネシウム、0.2〜0.6M
マンニトールを含む緩衝液などの液体媒体中に懸濁し、
これに電気パルスを印加してプラスミドをプロトプラス
ト中に導入する。電気パルス処理は、100〜1000
μFのコンデンサーを用いて得られる200〜1000
V/cmの初期電圧の直流パルスで、パルス幅1〜30
msec程度の条件で印加するのが好適である。上述の
ようにして電気パルス処理したプロトプラストを例え
ば、0.05〜0.5mg/lの2,4−ジクロロフェ
ノキシ酢酸(2,4−D)、0.02〜0.5mg/l
のナフタレン酢酸(NAA)、0.1〜2.0mg/l
のベンジルアミノプリン(BAP)及び0.4Mグルコ
ースを含むKM液体培地(Planta,126,10
5−110,1975)に105 個/mlになるように
懸濁し、暗条件下25℃で培養する。培養後3〜4週間
で、0.5〜1mmφ程度のコロニーが形成される。そ
の際、例えば選択マーカー遺伝子であるネオマイシンフ
ォスフォトランスフェラーゼ遺伝子を導入しておいた場
合、培養開始2週間後にカナマイシンを10〜50μg
/ml程度培養液中に添加し、更に培養を続けることで
形質転換細胞の一次選択を効率良く行うことが出来る。
ついでこのコロニーを同濃度のカナマイシンを含んだカ
ルス増殖培地、例えば0.5〜2mg/lの2,4−
D、0.1〜0.5mg/lのBAP、1〜5%のソル
ビトール、1〜5%のショ糖、0.5〜2g/lのカゼ
イン分解物(CH)及び0.5〜1%の寒天を含むMS
固形培地(Murashige and Skoog,
1962)上で2〜4週間、照明下(1000〜400
0lux)、25℃で培養し、3〜5mmφの緑のカル
スを得る。このカルスをカナマイシンを含まない再分化
培地、例えば0.01〜0.1mg/lのNAA、0.
5〜2mgのBAP、1〜5%のソルビトール、0.5
〜2%のショ糖、0.05〜0.5mg/lのCH及び
0.5〜1%の寒天を含むMS固形培地R培地上で、照
明下(1000〜4000lux)、25℃で培養し再
生幼植物を得る。次いでこの幼植物を発根誘導培地、例
えば0.05〜0.2mg/lのNAA、0.01〜
0.05mgのBAP、1〜5%のショ糖及び0.2%
のゲルライト(Kelco,Division of
Merck and Co.,Inc.)を含むMS固
形培地で発根させる。
【0019】この幼植物の葉からゲノムDNAを、例え
ばMol.Gen.Gent.,211,27−34,
1988に準じて単離し、このゲノムDNA300ng
をPCR法に供することで、種子貯蔵タンパク質をコー
ドする遺伝子に対するアンチセンスDNAの取り込まれ
た形質転換体を二次選択することが出来る。種子貯蔵タ
ンパク質がナピンである場合、用いるプライマーは、例
えば前述のnapAシークエンス1bp〜19bpとN
OSのターミネーター中の一部、1579bpから15
95bpまで(5’−GCATGACGTTATTTA
TG−3’,pCaMVNEO;Fromm et a
l,Nature,319,791−793,198
6:配列表の配列番号5)を用い、種子貯蔵タンパク質
のクルシフェリンである場合、用いるプライマーは例え
ば前述のcruAシークエンス1bpから上流18bp
と上記NOSターミネーターの一部を用い、アニーリン
グで増幅させる。
【0020】種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子に
対するアンチセンスDNAの導入が確認された幼植物を
馴化後、温室にて育成することで、3〜6カ月後に種子
を形成される。導入遺伝子の存在は、ゲノミックDNA
のサザン解析(Southern,J.Mol.Bio
l.,98,503−517,1975)によって確認
できる。例えばゲノムDNAは(Wolbot et
al,Mol.Gen.Gent.,211,27−3
4,1988)に準じて調整し、その10μgを100
μlの反応系(組成はTOYOBO Co.による)に
おいて適当な制限酵素で切断する。これを一回エタノー
ル沈殿し70%エタノールで洗浄、乾燥し再蒸留水10
μlに溶かして泳動用色素(Molecular Cl
oning)2μlを加えて0.8%アガロースゲル電
気泳動(FMC SEAKEMGTG AGAROS
E,TBE緩衝液)で分画する。これをアマシャム社ハ
イボンドNメンブレン取扱説明書の方法に準じて酸部分
分解、アルカリ変成してハイボンドN膜にブロットす
る。膜は42℃で1時間以上プレハイブリダイゼーショ
ンする(50%ホルムアミド×4 SSCP(Mole
cular Cloning)1% SDS,0.5%
スキムミルク,0.25mg/ml ウシ精子DN
A)。プローブは形質転換に使用したプラスミドを上記
と同様に適当な制限酵素で切断し、エタノール沈殿し7
0%エタノールで洗浄、乾燥し再蒸留水5μlに溶かし
て泳動用色素(Molecular Cloning)
1μlを加えて0.8%アガロースゲル電気泳動(FM
C SEAKEM GTG AGAROSE,TBE緩
衝液)で分画して、アンチセンスを含んだDNA断片、
またはその部分断片をアガロースゲルより回収する(M
olecular Cloning)。そのDNA断片
のうち25ngをアマシャム社マルチプライムラベリン
グキットと[α−32P]dCTPにより調整する。熱変
性したプローブをハイブリダイゼーション液(0.1
g,デキストラン硫酸/ml−プレハイブリ液)に混合
し、プレハイブリダイゼーション液をきった膜にまぶ
し、42℃で一晩静置する。2×SSC+0.1%SD
S 100ml中で15分×2回室温で振とうし、更に
0.1×SSC+0.1%SDS 100ml中で15
分×2回洗ってプローブの特異的な結合をオートラジオ
グラフィで検出する。
【0021】種子における種子貯蔵タンパク質をコード
する遺伝子に対するアンチセンスDNAの発現は、種子
全タンパク質を常法、例えばNature,227,6
80−685,1970に準じてサンプルバッファー
(62.5mM Tris−HCl pH6.8,2%
SDS,10% Glycerol,5%2−メルカ
プトエタノール,0.0001% ブロモフェノールブ
ルー)100μl/種子1粒を加えて抽出し、そのうち
15μgをSDS Polyacrilamide G
el Electropholesis(Natur
e,227,680−685,1970)により分画す
る。このゲルを一晩クマシー染色(0.25%クマシー
ブリリアントブルー,45%エタノール,10%酢酸)
した後脱色液(エタノール:酢酸:水=25:8:6
5)につけて適度なバンドの濃さまで脱色することによ
り行うことができる。ナピン遺伝子のアンチセンスDN
Aを導入してnapusを形質転換した際には、ナ
ピンタンパク質はこの方法により4kD付近にα鎖が、
9kD付近にβ鎖が分画される。クルシフェリン遺伝子
のアンチセンスDNAを導入した際には、クルシフェリ
ンタンパク質は20kD付近に3〜4本のα鎖が、30
kD付近に3〜4本のβ鎖が分画される。これらのバン
ドの濃さを非形質転換体のものと比較することによりナ
ピンやクルシフェリン含量の変化を推定し、ナピンアン
チセンスDNA、クルシフェリンアンチセンスDNAの
発現の確認、及び発現の程度を判定することが出来る。
上記のようにして得られた本発明の油料作物は、アミノ
酸組成及び/または脂肪酸組成が栄養的に有利に改変さ
れる。例えば、リノ−ル酸,リノレン酸等の不飽和脂肪
酸含量を増加させたり、リジン、メチオニン、システイ
ン等の必須アミノ酸の含量を増加させることにより、油
料作物の栄養価を高めることが可能である。
【0022】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はその要旨を越えない限り以下に制約されるもの
ではない。 実施例 1 ベクターの構築(pNAKM)(図1参
照) ナピンプロモーター及びナピン遺伝子の一部をnapA
(J.Biol.Chem.,262,12196−1
2201,1987)のシークエンスを基にPCR法で
単離した。まず、napus cv. Westa
rの葉からCTAB法(Focus,12,13−1
5,1989)によりゲノムDNAを抽出する。すなわ
ち、乳鉢に入れた葉約5gに液体窒素を適当量加え乳棒
を用いてよく摺り潰す。それにDNA抽出液(2% C
TAB、1.4M NaCl、0.2% 2−メルカプ
トエタノール、20mM EDTAおよび100mM
Tris−HCl(pH8))を15ml加えて更に摺
り潰し、抽出物をポリプロピレン性のチューブに移して
65℃で1時間以上、ときどき振とうしながら放置す
る。それに抽出液と等量のフェノール(10mM Tr
is−HCl(pH8)および1mM EDTAで飽和
したもの):クロロホルム:イソアミルアルコール=2
5:24:1を加えてよく混合し、15000rpmで
15分遠心分離する(KUBOTA,KR−20000
T)。上清を別の遠心管にとり、その2/3容のイソプ
ロパノールを加えて30分以上室温に静置した後、14
000rpmで20分遠心分離して、上澄みを捨て沈殿
を得る。これに適当量の70%エタノールを加えて沈殿
を洗浄した後、乾燥させる。この沈殿を1g/ml塩化
セシウム加えたTE(10mM Tris−HCl(p
H8.0)および1mM EDTA)750μlに溶か
し、10mg/ml臭化エチジウムを一滴加えて100
000rpmで一晩遠心する(BECKMAN,TL−
100)。バンド部分を回収し、n−ブタノールで臭化
エチジウムを除いて透析膜(三光純薬)に移し、水中で
脱塩する。さらに、エタノール沈殿(30mM 酢酸ナ
トリウム存在下に2.5容のエタノールを加え、150
00rpm 15分冷却遠心分離し沈殿を回収する)に
よりゲノムDNAを回収し、1μg/mlになるように
TE溶液で溶かす。
【0023】このゲノムDNA300ngをPCR法に
供した。この時、プライマーはnapA(J.Bio
l.Chem.,262,12196−12201,1
987)の1から19bpの19塩基(5’−AAGC
TTTCTTCATCGGTGA−3’:配列表の配列
番号1)と、1125から1145bpの21塩基
(5’−CAAGATTAAAAACATACACGA
−3’:配列表の配列番号2)の相補鎖配列をナピンプ
ロモーター用に、また1111から1131bpの20
塩基(5’−CTCATCAATACAAACAAGA
T−3’:配列表の配列番号3)と、1763から17
83bpの20塩基(5’−TATGTAAGGTTT
TATCTAGG−3’:配列表の配列番号4)の相補
鎖配列をナピンアンチセンス用に用いた。PCR法はP
erkin Elmer Cetus社のDNA Th
ermal Cycler機を用い、同社のGene−
AmpKitのプロトコールにより試薬を混合し、反応
液100μlを、ナピンプロモーター用には熱変性94
℃で1分、アニーリングは52℃で2分、耐熱性ポリメ
ラーゼによる伸長反応は72℃で3分のサイクルを30
回、ナピンアンチセンス用にはアニーリング温度を50
℃にして行った。反応液の1/20量をアガロースゲル
電気泳動で分析し増幅したバンドを検出した。プロモー
ターは約1.1kb,ナピンアンチセンスは約0.7k
bのバンドとなる。
【0024】これらのDNA断片をエタノール沈殿で回
収し、pUC19プラスミドのHincII及びSma
にそれぞれクローニングした(pNap,pNAS)。
次に、pNAS10μgをXbaI,KpnIで切断し
(TYOBOの添付したバファーを用い、100μlの
スケールで37℃3時間反応)、1% SeakemG
TGアガロース(FMC)ゲル電気泳動(1×TBEバ
ッファー,Molecular Cloning,Ma
niatis)で分画(MUPID,コスモバイオ,1
00V,30分)し、ゲルを0.5μg/l臭化エチジ
ウムで染色してナピンアンチセンス部分を切出し、透析
膜に移して4℃120mAで1時間の電気泳動によりD
NAを回収した。これに等容量のフェノールを加えて振
とうし、層を分離して水層を回収する。更にクロロホル
ムなどでこのDNA断片を精製し、エタノール沈殿後5
μlの水に溶かした。このうちの1μlと同じ酵素で処
理し回収したpNap2μlをTAKARAライゲーシ
ョンキット(TAKATRAの処方による30μl)を
用いて連結した(4℃一晩)。
【0025】この10μlを大腸菌コンピテントセルD
H5α(BRL)に形質転換し(Inoue,Gen
e,96,23−29,1990)、アンピシリン50
μg/mlを含むLB寒天培地(Molecular
Cloing)上でプラスミドを持つコロニーを選抜し
た。これらのコロニーに由来する1ml培養液(LB培
地)からDNAをアルカリSDS法(Molecula
r Cloing)で調製し、その1/50量をHin
dIII、KpnI 各1U(TOYOBO)で切断して
(10μl反応系 RNase0.5μg/mlを含む
37℃30分)、1.8kbのバンドを生じるクローン
を選んだ。このプラスミドはナピンプロモーターの後に
ナピン遺伝子の一部が逆向きに連結されている。ターミ
ネーターはpBI221由来のNOSのものを用いた
(TOYOBO)。
【0026】pBI221 10μgをSacIで切断
し(TOYOBOの添付したバファーを用い、120μ
lのスケールで37℃一晩反応)、フェノール及びクロ
ロホルムでこのDNA断片を精製し、エタノールで沈殿
後、20μlの水に溶かした。このうち8μlをTAK
ARAブランテイングキット(TAKARAの処方によ
る10μlスケール)を用いてDNA断片の両端を平滑
末端にした。この反応液から平滑端DNA断片を精製回
収し、5μlの水に溶かして、そのうち2μlをKpn
Iリンカー(TOYOBO)1μlとTAKARAライ
ゲーションキットを用いて連結した。KpnIリンカー
を接続した断片を更に精製回収し、水5μlに溶解して
その全量をEcoRIおよびKpnIで切断し、ベクタ
ー部分とNOSのターミネーター部分を含むDNA断片
を上記のように精製した。
【0027】この断片0.1μgと先のナピンプロモー
ター及びナピンアンチセンスを含んだDNA断片0.1
μgとを連結した(pNAAS)。エレクトロポーレー
ション法で形質転換を行う場合にはこのプラスミドを用
いる。アグロバクテリウム法に用いるプラスミドは次の
ように構築した。大腸菌選択マーカーにテトラサイクリ
ン抵抗性遺伝子及びスペクチノマイシン抵抗性遺伝子
を、植物選択用マーカーにノパリン抵抗性遺伝子を持つ
プラスミド(pKM424;Plant Cell R
ep.,10,286−290,1991;pLAN4
21の目的遺伝子部分(35SP −GUS−NOST
をマルチクローニングサイトと交換したもの)をHin
dIII,EcoRIで切断し、フェノール処理及びエタ
ノール沈殿によりDNAを精製する。同じ酵素処理をし
たpNAASプラスミドからナピンプロモーターとナピ
ンアンチセンスを含むDNA断片を回収し、先のpKM
424と連結させる(pNAKM)。
【0028】このプラスミドをアグロバクテリウムEH
A101株に形質転換させる。EHA101のシングル
コロニーを一晩YEB培地(0.1% Yeast e
xtract,0.5% Beef extract,
0.5% Peptone及び0.5% Sucros
e(pH7.0))で培養し、その1mlを25μg/
mlのカナマイシン(Km)、12.5μg/mlのク
ロラムフェニコール(Cm)、25μg/mlのスペク
チノマイシン(Sp)及び1μg/mlのテトラサイク
リン(Tc)を含んだYEB培地に加えて、30℃5〜
6時間培養する。その培養液を4000rpm、5分遠
心分離し、その沈殿に20mlの10mM Tris−
HCl(pH8)を加え洗浄する。回収した沈殿を40
0μlのYEB培地に懸濁し、この懸濁液90μlと先
のプラスミド(pNAKM)10ng/10μlを合わ
せて−110℃で5分、37℃で25分処理する。これ
にYEB400μl加えて、30℃で一晩振とう培養す
る。この培養液を50μlを50μg/mlのカナマイ
シン(Km)、25μg/mlのクロラムフェニコール
(Cm)、50μg/mlのスペクチノマイシン(S
p)及び2μg/mlのテトラサイクリン(Tc)を含
んだYEB寒天培地にまいて30℃二晩培養し、プラス
ミドを含んだコロニーを選択する(DNA Cloni
ng)。これらのコロニーに由来する1ml培養液(Y
EB培地)からDNAをアルカリSDS法(Molec
ular Cloing)で調製し、その全量をHin
dIII、EcoRI 各1U(TOYOBO)で切断し
て(10μl反応系 RNase0.5μg/mlを含
む37℃30分)、2.1kbのバンドを生じるクロー
ンを選んだ。
【0029】実施例 2 形質転換とアンチセンスナピ
ンDNAの導入されたカルスの選択及び再生napus cv. Westarの種子を、10
%過酸化水素水で25分処理して乾燥させ、MS寒天培
地上で照明下(1000〜4000lux)2〜3週間
培養する。その無菌下胚軸を2〜5mmの長さに切断
し、前培養培地(B5−Vitamine;Gambo
rg et al,Exp.Cell.Res.,
,151−158,1968、1mg/l 2,4−
D、3% Sucrose及び0.7% Agaros
eを含むMS寒天培地上に適当量のタバコ培養細胞BY
−2を敷き詰め滅菌漉紙をかぶせた培地)上に置いて、
明所下一晩前培養する。pNAKMプラスミドを有した
アグロバクテリウムの1コロニーを、抗生物質を含むY
EB液体培地5ml中で30℃一晩培養する。この培養
液を3000rpm、10分遠心分離し、3%のショ糖
を含むMS液体培地で一回洗浄した後、同じMS培地に
懸濁する。このアグロバクテリウム懸濁液に先の前培養
した下胚軸を入れて、25℃で5〜20分振とう培養す
る。この溶液を濾過し、下胚軸のみ無菌ペーパータオル
上で余分なアグロバクテリウムを取り除き、元の前培養
培地上で三晩同時培養し、下胚軸にアグロバクテリウム
を感染させる。この後、下胚軸を除菌培地(B5−Vi
tamine、1mg/l 2,4−D、3% Suc
rose、0.7% Agarose及び500mg/
lCarbeniciline(Cb)を含んだMS寒
天培地)上に移して三日培養して、アグロバクテリウム
の増殖を抑える。
【0030】次にこれらの下胚軸を一次選択培地(B5
−Vitamine、3mg/lBAP、1mg/l
Zeatine、2% Sucrose、0.7% A
garose、30mg/l Km及び500mg/l
Cbを含むMS寒天培地)上に移して2週間培養す
る。これによりアグロバクテリウムの感染したpNAK
Mプラスミドを持った形質転換植物細胞のみ分裂増殖し
て緑色のカルスを形成することができる。
【0031】更にこれらの下胚軸を二次選択培地(一次
選択培地のSucrose含量を2%から1%に減少さ
せた培地)上に移し、3週間培養する。この時形質転換
したカルスは更に大きくなり、次にこのカルス部分のみ
を発芽培地(二次選択培地よりKmを除き、Cbを50
0mg/l〜250mg/lに減少させたもの)に移
す。再生した芽は伸長培地(0.1mg/l BAP、
250mg/l Cb及び0.7% Agarosを含
むB5寒天培地)上で成長させ、次に発根培地に移した
後馴化させる。
【0032】これらの再生植物体からゲノムDNAを調
製し、導入したプラスミドの1部をプライマーとしたP
CRを行うアンチセンスナピンDNAの導入された植物
を更に選抜した。ゲノムDNAをMol.Gen.Ge
net.,211,27−34,1988に準じて、次
のように調製する。カナマイシン耐性植物50〜100
mgを緩衝液(15% ショ糖、50mM トリス−塩
酸(pH8)、50mM NaEDTA及び500mM
塩化ナトリウム)中で摩砕し、核分画を遠心分離す
る。これを界面活性剤(1.5% SDS、20mM
トリス−塩酸(pH8)及び10mM EDTA)で処
理し、遊離した核内成分を0.6容のイソプロパノール
で沈殿させて核酸を得、これを70%エタノールで洗浄
後乾燥させてゲノム分画とする。この分画300ngを
PCR法に供した。この時プライマーはナピンプロモー
ター部分の1bpから上流19塩基(配列表の配列番号
1)と、NOSターミネーターの1579bpから15
95bpまで(配列表の配列番号5:pCaMVNE
O;Fromm,Nature,319,791−79
3,1986)の相補鎖配列を用いた。PCRは熱変性
が94℃で1分、アニーリングが45℃で2分、伸長反
応を72℃3分で行った。反応後反応液10μlをアガ
ロースゲル電気泳動で分析し、増幅したバンドを検出し
た。PCR法で導入遺伝子が確認された植物体を鉢上げ
したところ、3〜6ヶ月後に種子を形成した。
【0033】実施例 3 完熟種子におけるアンチセン
スナピンDNAの発現の確認 完熟種子の半粒にタンパク質抽出用サンプルバファー
(62.5mMトリス−塩酸(pH6.8)、2% S
DS及び10%グリセロール)100μlを加え、摩砕
して遠心分離した後、上澄みの1部を(全タンパク質量
15μg分)SDS−PAGEによって分子量別に分画
する。このゲルを一晩クマシー染色した後、脱色してナ
ピン含量を調べた。ナピンの減少量は画像解析(画像解
析システム,MKSIPS)によりナピンのバンドの量
とナピン以外のタンパク質、例えばクルシフェリンのバ
ンドの量との相対値の変化によって定量した。つまり、
ナピン含量が減少すると、ナピンのバンドの量/クルシ
フェリンのバンドの量の値は小さくなる。また残りの半
粒の種子は播種培地(3%ショ糖を含んだMS寒天培
地)上で発芽させ、その苗からゲノムDNAを抽出し、
実施例2と同様のPCR法により導入遺伝子の次代への
遺伝を確認した。これにより、ナピン含量の減少と導入
遺伝子の存在の相関関係が確認された。表1にSDS−
PAGEの画像解析結果とPCRによる導入遺伝子の有
無との関係を示す。表中、Westar1〜8は形質転
換していないnapus cv. Westarの
完熟種子を同様に処理したコントロールである。
【0034】
【表1】
【0035】実施例 4 完熟種子中の全タンパク質含
量の測定 実施例3で抽出した全種子タンパク質溶液を、Bio−
Rad Protein Assay(Bio−Rad
Labs.)でタンパク質定量する。再蒸留水799
μlに200μlの試薬を加え、その中にサンプル1μ
lを添加して30分室温で放置した後、595nmの吸
光度を測定する。この結果ナピン含量の減少と全タンパ
ク質含量には相関は認められなかった(図2)。
【0036】実施例 5 完熟種子中のタンパク質のア
ミノ酸組成の解析 SDS−PAGEによりナピン含量の減少した種子の残
り半粒を7個分集め、適当量のアセトンを加えて摩砕す
る。その摩砕物を遠心分離し沈殿を乾燥させて200μ
lの70%蟻酸を加え、タンパク質を溶解させる。遠心
分離後上清50μlを乾燥させて、110℃HCl蒸気
中窒素下で24時間加水分解する。これにクエン酸緩衝
液を100μl加え、遠心分離した上清20μlをアミ
ノ酸分析にかけた。コントロールとして形質転換してい
ないnapus cv. Westarの完熟種子
を同様にしてアミノ酸分析を行った。その結果、アンチ
センスナピンDNAを導入することにより全タンパク質
のアミノ酸組成が変化しており、またそのアミノ酸組成
はナピン減少分をクルシフェリンタンパク質が補ったと
仮定した時のアミノ酸組成と類似していた。表2に形質
転換体種子のアミノ酸分析の結果を示す。なお、表中の
アミノ酸はすべて1文字記号で表した。
【0037】
【表2】
【0038】実施例 6 完熟種子中の脂質含量と脂肪
酸組成の解析 SDS−PAGEでナピン含量の減少が認められた半粒
の種子10個分を集め、5mlのクロロホルム:メタノ
ール=3:1溶液を加えて摺り潰し、上澄みを遠心管に
移す。この操作を3回繰り返して、全部の上澄みを集め
て室温で20分放置する。これに再蒸留水5ml、クロ
ロホルム5mlを加えて攪拌し、4℃、3000rp
m、20分遠心分離する。下層のクロロホルム層を梨型
フラスコに移して、適当量のエタノールを加えながら3
0℃で減圧乾燥させる。抽出乾燥物に50nmolのペ
ンタデカン酸メチル(C15:0)と2.5%硫酸含有メタ
ノール2mlを加えて、80℃で2時間メチル化する。
その後ヘキサン2mlを加え、攪拌静置して上層のヘキ
サン層を別のチューブに取り、減圧乾固させる(The
or.Appl.Genet.,80,241−24
5,1990)。この乾固物にヘキサン100μlを加
えて、そのうち2μlをGCで脂肪酸分析にかけた(G
C−9A,Shimazu Co.;50m×0.25
mmφ×0.25μMfilm Cyarnoprop
yl 23 column,TOYO KASEI K
OGYO Co.185℃,1ml/min He;I
njector,200℃)。コントロールとして形質
転換していないnapus cv. Westar
の種子5粒分から同様に脂肪酸を抽出し分析し比較した
ところ、ナピン含量の減少した形質転換体の種子は全脂
肪酸量に変化はなかったが、オレイン酸が減少しその分
リノール酸とリノレン酸が増加していた(図3)。
【0039】実施例 7 後代の植物体におけるアンチ
センスナピンDNAの発現の確認 実施例2で再生した植物体(T0 世代)に形成された種
子(T1 世代)を播種し、これより形成された種子(T
2 世代)のナピン含量を実施例3と同様に調べたとこ
ろ、T1 種子と同様ナピン含量が減少していた。また同
様に実施例5に従って脂肪酸組成を測定したところ、オ
レイン酸の減少とリノール酸、リノレン酸の増加が認め
られた。
【0040】以上のように、アンチセンスナピンDNA
をブラシカ植物に導入することにより種子中のアミノ酸
組成及び脂肪酸組成を改変させることが可能であり、か
かる形質は後代まで遺伝されることが確認された。
【0041】実施例 8 ベクターの構築(pNACR
U)(図1参照) 形質転換、アンチセンスクルシフェ
リンDNAの導入されたカルスの選択及び発現 クルシフェリン遺伝子の一部をcruA(Nuc.Ac
id Res.,17,3584,1989)のシーク
エンスを基に前述のPCR法で単離した。この時、プラ
イマーはクリシフェリンアンチセンス用としてcruA
の680から700bpの21塩基(5′−AAAAA
CCACAACAACTAAGTA−3′:配列表の配
列番号6)と、1261bpから1278bpの18塩
基(5′−CACTGATGAGTCCTGGAA−
3′:配列表の配列番号7)の相補鎖配列を用いた以外
は、全てナビン遺伝子の一部を単離する場合に準じた。
クルシフェリンアンチセンスは約0.6kbのバンドと
なる。このDNA断片を回収しpUC19プラスミドの
SmaIにクローニングした(pCAS)。つぎにpC
AS10μgをナビンアンチセンスの場合と同様の処理
をしてナビンプロモーターとNOSのターミネーターの
間に連結した(pCRAS)。エレクトロポーレーショ
ン法で形質転換を行う場合にはこのプラスミドを用い
る。アグロバクテリウム法に用いるプラスミドは次のよ
うに構築した。pCRASプラスミドからナビンプロモ
ーターとクルシフェリンアンチセンスを含むDNA断片
を前述のpKM424とHindIII,EcoRIサ
イトで連結させる(pCAKM)。このプラスミドをア
グロバクテリウムEHA101株に前述の方法に準じて
形質転換させた。
【0042】続いて、二次選択時のプライマーとしてク
ルシフェリン塩基配列の1bpから上流18bp(配列
表の配列番号7)と、NOSターミネーターの1579
bpから1595bpまで(前述)を用いた他は、実施
例2と同様にして、形質転換、アンチセンスクルシフェ
リンDNAの導入されたカルスの選択及び再生を行っ
た。
【0043】実施例 9 完熟種子中のタンパク質のア
ミノ酸組成の解析 SDS−PAGEによりクルシフェリン含量の減少した
種子の残り半粒を8個分集め、ナビンアンチセンスDN
Aを導入した種子と同様にしてアミノ酸分析を行った。
その結果、アンチセンスクルシフェリンDNAを導入す
ることにより全タンパク質のアミノ酸組成が変化して、
必須アミノ酸であるCys、Met、Lys含量が増加
していた。表3に形質転換体種子のアミノ酸分析の結果
を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】本発明により、油料作物の脂肪酸組成お
よび/またはアミノ酸組成を改変することができる。具
体的には、脂肪酸としてオレイン酸の含量を減少させ、
かつ、リノール酸及びリノレン酸の含量を増加させた
り、あるいは必須アミノ酸であるリジン、メチオニン、
システイン等の含量を増加させたりすることにより、所
望の脂肪酸組成および/またはアミノ酸組成を有する栄
養価の高い種子をつける新しい油料作物を提供すること
ができる。
【0046】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:19 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 AAGCTTTCTT CATCGGTGA 19
【0047】配列番号:2 配列の長さ:21 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CAAGATTAAA AACATACACG A 21
【0048】配列番号:3 配列の長さ:20 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CTCATCAATA CAAACAAGAT 20
【0049】配列番号:4 配列の長さ:20 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 TATGTAAGGT TTTATCTAGG 20
【0050】配列番号:5 配列の長さ:17 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GCATGACGTT ATTTATG 17
【0051】配列番号:6 配列の長さ:21 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 AAAAACCACA ACAACTAAGT A 21
【0052】配列番号:7 配列の長さ:18 配列の型:核酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CACTGATGAG TCCTGGAA 18
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1および実施例8で作成したベ
クターの構築を表す図面である。
【図2】napus cv. Westarの種子
中における全タンパク質含量を表す図面である。図中、
Wは天然種子を、Tは形質転換した種子をそれぞれ表
す。
【図3】napus cv. Westarの種子
中における脂肪酸組成を表す図面である。図中、○は天
然種子を、●は形質転換した種子をそれぞれ表す。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子
    のアンチセンスDNAを導入して形質転換された油料作
    物。
  2. 【請求項2】 種子貯蔵タンパク質がナピンであること
    を特徴とする請求項1記載の油料作物。
  3. 【請求項3】 形質転換が種子のアミノ酸組成及び脂肪
    酸組成の改変であることを特徴とする請求項2記載の油
    料作物。
  4. 【請求項4】 脂肪酸組成の改変が、オレイン酸、リノ
    ール酸及びリノレン酸の含量の改変であることを特徴と
    する請求項3記載の油料作物。
  5. 【請求項5】 脂肪酸組成の改変が、リノール酸及びリ
    ノレン酸の含量の増加による改変であることを特徴とす
    る請求項3記載の油料作物。
  6. 【請求項6】 種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子
    がnapA塩基配列で表されることを特徴とする請求項
    1記載の油料作物。
  7. 【請求項7】 アンチセンスDNAが、配列表の配列番
    号3および4で表される塩基配列の相補鎖配列をプライ
    マーとして得られた合成DNAであることを特徴とする
    請求項1記載の油料作物。
  8. 【請求項8】 種子貯蔵タンパク質がクルシフェリンで
    あることを特徴とする請求項1記載の油料作物。
  9. 【請求項9】 形質転換が種子のアミノ酸組成の改変で
    あることを特徴とする請求項8記載の油料作物。
  10. 【請求項10】 アミノ酸組成の改変が、リジン、メチ
    オニンおよびシステインの含量の改変であることを特徴
    とする請求項9記載の油料作物。
  11. 【請求項11】 アミノ酸組成の改変が、リジン、メチ
    オニンおよびシステインの含量の増加による改変である
    ことを特徴とする請求項9記載の油料作物。
  12. 【請求項12】 種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝
    子がcruA塩基配列で表されることを特徴とする請求
    項1記載の油料作物。
  13. 【請求項13】 アンチセンスDNAが、配列表の配列
    番号6および7で表される塩基配列の相補鎖配列をプラ
    イマーとして得られた合成DNAであることを特徴とす
    る請求項1記載の油料作物。
  14. 【請求項14】 種子特異的に発現するプロモーターの
    下流に油料作物の種子貯蔵タンパク質遺伝子のアンチセ
    ンスDNAを導入してなるベクター。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載のベクターおよび油
    料作物の下胚軸もしくはプロトプラストを液体媒体に懸
    濁して油料作物を形質転換し、カルスを形成させ、該カ
    ルスから植物体を再生させることを特徴とする形質転換
    された油料作物の作出方法。
  16. 【請求項16】 請求項14に記載のベクターおよび油
    料作物の下胚軸もしくはプロトプラストを液体媒体に懸
    濁して油料作物を形質転換することを特徴とする、油料
    作物のアミノ酸組成および/または脂肪酸組成を改変す
    る方法。
  17. 【請求項17】 請求項1記載の油料作物から得られる
    種子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008515406A (ja) * 2004-10-06 2008-05-15 ユーティーアイ リミテッド パートナーシップ 植物におけるオレオシン発現のモジュレーションの方法

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