JPH06329546A - 創傷治癒促進剤 - Google Patents

創傷治癒促進剤

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JPH06329546A
JPH06329546A JP5122687A JP12268793A JPH06329546A JP H06329546 A JPH06329546 A JP H06329546A JP 5122687 A JP5122687 A JP 5122687A JP 12268793 A JP12268793 A JP 12268793A JP H06329546 A JPH06329546 A JP H06329546A
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reaction
film
acidic
wounds
day
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Application number
JP5122687A
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English (en)
Inventor
Susumu Sakamoto
進 坂本
Atsushi Suzuki
淳 鈴木
Kazuya Otsuji
一也 大辻
Shuichi Tsuchiya
秀一 土屋
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ポリアンテス属(Polianthes L.) に属する
植物から誘導されたカルスが細胞外に分泌する酸性ヘテ
ロ多糖類を有効成分とする創傷治癒促進剤。 【効果】 この酸性ヘテロ多糖類は、皮膚又は粘膜の破
綻をきたした創傷の治癒を促進し、しかも生体適合性に
優れ、安全性も高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は創傷治癒促進剤に関し、
更に詳細には外科手術又は傷害による創傷、その他、熱
傷、凍傷、痔疾、ひび、あかぎれ等の皮膚又は粘膜に破
綻をきたした損傷類の治癒を促進させる作用に優れ、か
つ安全性の極めて高い薬剤に関する。
【0002】外科手術に必然的に伴う皮膚又は粘膜の創
傷に対し、これまでは抗生物質の経口投与又は外傷への
直接的な塗布による細菌感染症の予防、抗炎症剤の投与
による炎症の低減、鎮痛剤投与による疼痛の軽減などの
治療が行われてきた。また、寒冷環境で起こり得るひび
・あかぎれに対し、皮膚の血行や皮脂分泌を盛んにする
入浴が、その予防や治療に最も有効とされてきた。ま
た、ひび・あかぎれ等の治療として、皮膚脂肪膜を補う
ためにクリームの塗布が行われてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこれらの
外科手術後の皮膚又は粘膜の創傷に対する治療は、細菌
感染、炎症、疼痛などの2次的な障害を低減しようとす
る治療でしかなく、創傷の治癒は生体の皮膚再生能力に
頼っているのが現状である。その他ひび・あかぎれなど
の皮膚疾患の治療についてもまた同様で、上述した2次
的な障害の低減のほか、クリームなどを塗布することで
損傷部を外部環境から保護するものであった。そこで、
生体に備わる創傷治癒能を積極的に促進する薬物の開発
が望まれていた。従って本発明の目的は、創傷治癒に関
わる生体の再生能を積極的に促進し、創傷完治までの時
間の短縮を達成し且つ安全性の極めて高い医薬を提供す
ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで前記目的を達成す
るために、本発明者らは鋭意研究をかさねた結果、ポリ
アンテス属の植物由来の酸性ヘテロ多糖類を創傷に適用
することにより種々の皮膚又は粘膜の創傷の治癒が促進
され、かつ副作用も生じないことを見出し、本発明を完
成した。
【0005】すなわち、本発明はポリアンテス属(Poli
anthes L.)に属する植物から誘導されたカルスが細胞
外に分泌する酸性多糖類を有効成分とする創傷治癒促進
剤を提供するものである。
【0006】本発明の有効成分である酸性ヘテロ多糖類
は、例えばポリアンテス属に属する植物から誘導される
カルスを植物ホルモン含有培地で培養し、その培養物か
ら採取することによって製造される(特開昭64-10997号
公報)。
【0007】ポリアンテス属に属する植物としては、例
えばチューベローズ(Polianthes tuverosa L.)が挙げ
られる。外植片として使用可能な部位としては、その
花、茎、葉、鱗茎、根等の器官又は組織の一部が挙げら
れるが、特に花の一部が好ましい。カルス誘導用の基本
培地としては、植物組織培養に通常用いられるMurasige
-Skoogの培地、Linsmaier-Skoog の培地、Gamborg の培
地、White の培地、Tuleeke の培地、Nitsch & Nitsch
の培地等が用いられる。この基本培地には、植物ホルモ
ンを添加する必要があり、植物ホルモンとしては、2,
4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、α−ナフ
タレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA) 、インドール
酪酸(IBA) 等のオーキシン類;フルフリルアミノプリン
(カイネチン)、ベンジルアデニン(BA)、ジメチルア
ミノプリン(2iP)等のサイトカイニン類が挙げられ
る。その中でも、2,4−D単独、NAA とBAの組み合わ
せ又はNAA とカイネチンの組み合わせが良好な結果を与
える。カルス誘導に必要な植物ホルモン濃度は、2,4
−D単独の場合は5×10-4 Mから1×10-7 M、NAA とBA
又はNAA とカイネチンの組み合わせの場合はNAA の濃度
は5×10-4 Mから1×10-7 M、BA又はカイネチンの濃度
は1×10-7 Mである。カルス誘導培地には上記の基本培
地と植物ホルモンのほかに炭素源として糖が加えられ
る。糖としては、グルコース、フラクトース、マンノー
ス、キシロース、サッカロース、ラムノース、フコー
ス、デンプンなどが挙げられるが、通常はサッカロース
が用いられる。カルス誘導は固体培地でも液体培地でも
可能であるが、通常は固体培地が用いられる。誘導され
たカルスは上記のカルス誘導培地で同じ形態を維持した
まま10代以上にわたって継代培養をすることができる。
継代培養用の培地としては、通常基本培地としてLinsma
ier-Skoog の培地、Murasige-Skoogの培地が用いられ、
植物ホルモンとして1×10-4〜1×10-7 Mの2,4−D
又は1×10-4〜1×10-7 MのNAA と1×10-4〜1×10-7
MのBA、炭素源としては、グルコース、フラクトース、
マンノース、キシロース、サッカロース、ラムノース、
フコース、デンプン等が用いられるが、就中サッカロー
スが好ましく、その添加量は1〜6重量%(以下、単に
%という)が好ましい。
【0008】カルスから多糖類を製造するには、カルス
を寒天培地等の固体培地、液体培地で培養するが、就中
液体培地で培養するのが好ましい。基本培地としてはカ
ルス誘導培地と同様のものが用いられる。植物ホルモン
の種類及び濃度は多糖類の生産性に関係があり、例えば
2,4−D、NAA 、IAA 、IBA 等のオーキシン類;カイ
ネチン、BA、2iP等のサイトカイニン類;ジベレリンA
3 (GA3 )等のジベレリン類等が使用される。この中
で、2,4−D、NAA を単独で、又はNAA とBAもしくは
カイネチンを組み合わせて用いるのが好ましい。その濃
度は、2,4−D又はNAA を単独で用いる場合は5×10
-4 Mから1×10-7 M、特に5×10-5 Mから5×10-6 M
が;NAA とBA又はNAA とカイネチンを組み合わせて用い
る場合には、NAA の濃度は1×10-4 Mから1×10 -7 M、
特に1×10-4 Mから5×10-6 M、BA又はカイネチンの濃
度は5×10-5 Mから1×10-9 M、特に1×10-5 Mから1
×10-7 Mが好ましい。炭素源としては、グルコース、フ
ラクトース、マンノース、キシロース、サッカロース、
ラムノース、フコース、デンプンなどが用いられる。多
糖類の生産は添加する炭素源の種類にはあまり強く影響
されるものではなく、通常サッカロースが用いられる。
炭素源の濃度と多糖類の生産量との間にもあまり深い関
係はないが、一般には1〜6%が好ましい。培養法は特
に制限されないが、通常、20〜30℃の温度で15〜30日間
行うのが好ましく、また振とう培養が好ましい。
【0009】このようにして得られた培養物からの多糖
類の採取は、例えば培養物から細胞を遠沈又はろ過等に
よって除去したのち、培養液をロータリーエバポレータ
ー等を用いて濃縮し、濃縮液にエタノールを加えて沈澱
させ、沈澱物を凍結乾燥することによって行われる。上
記多糖類の精製は、通常の多糖類の精製法に従って精製
することができる。例えば、粗精製の上記多糖類を水に
溶解し、遠心分離して不溶物を完全に除去し、透析ある
いはイオン交換クロマトグラフィやゲル濾過クロマトグ
ラフィを用いる方法によって高純度精製品を得ることも
できる。
【0010】叙上の方法により得られる多糖類中には、
本発明創傷治癒促進剤の有効成分である酸性ヘテロ多糖
類が含まれている。このものは、2NのH2 SO4 を用
い100 ℃、8時間加水分解した後、酢酸エチル:ピリミ
ジン:酢酸:水=5:5:1:3の混合比の展開溶媒を
用いて薄層クロマトグラフィーを行い、アニリン:ジフ
ェニルアミン:アセトン:燐酸試薬で呈色させたとこ
ろ、アラビノース、マンノース、ガラクトース、グルク
ロン酸及びキシロースが検出された。また、ガスクロマ
トグラフィーによる分析結果からも、これらが構成糖と
して含まれることが確認された。そして、箱守法による
メチル化の後のガスクロマト分析(GC-MS法)によれば、
その結合様式と構成比は、
【化2】 であることが認められた。また、グルクロン酸のカルボ
キシル基はその0〜50%がメチルエステル体として存在
する。更に、本発明の有効成分である多糖類は陰イオン
交換樹脂等に吸着するので酸性であると判断された。更
にまた、高速液体クロマトグラフィー(カラム:東曹製
TSK Gel 4000PW、5000PW及び6000PW)によれば、その分
子量は1.0 ×104 〜2.0 ×107 であった。
【0011】この酸性ヘテロ多糖類は、次の物理化学的
性質を有する。溶媒に対する溶解性 水に可溶で、エタノール、エーテル、アセトンに不溶で
ある。呈色反応 アンスロン反応:陽性 カルバゾール反応:陽性 エルソン−モルガン反応:陰性色及び形状 エタノール沈澱を経たものは白色ないし灰白色粉末であ
る。透析を経てイオン交換により精製し、凍結乾燥を経
たものは白色綿状又は繊維状である。比旋光度 〔α〕D 25:0〜+20°(c=1.0,水溶液)赤外吸収スペクトル 赤外吸収スペクトルは図1に示す通りである。核磁気共鳴スペクトル 13 C−核磁気共鳴スペクトルは図2に示す通りである
(溶媒:D2 O、チューブ5mm、内部標準ジオキサ
ン)。また、本発明に用いる酸性ヘテロ多糖類は、次の
繰り返し構造を有する。
【化3】
【0012】本発明の有効成分である酸性ヘテロ多糖類
と他の多糖類との相違は、特開昭64-10997号ですでに述
べたように、次の通りである。すなわち、本発明の酸性
ヘテロ多糖類に含まれるグルクロノマンナン構造〔→
2)α−D−Man-(1→4)−β−D−GlcUA-(1→〕
を部分構造として持つ公知多糖としては、 Drosera ca
pensisから得られる多糖(CHANNEら, Carbohydr. Re
s., 113 巻,113 〜124 頁,1983年)、 Drosera binat
aから得られる多糖(CHANNEら,Phytochemistry, 21
巻,9号,2297〜2300頁,1982年)、 Nicotiana tabac
um の培養細胞から得られる多糖(MORIら, Carbohydr.
Res., 91巻,49〜58頁,1981年;AKIYAMA ら,Agric.
Biol. Chem., 48巻,2号,403 〜407 頁,1984年)な
どが知られている。しかしながら、Drosera capensis
Drosera binateから得られる多糖類は、主な結合様式
に-2Man1- 及び-4GlcUA1- があり、-3Ara1- がないとい
う点で明らかに本発明の酸性ヘテロ多糖類と異なる。ま
た、 Nicotiana tabacumから得られる多糖について
は、MORIらの報告では主な結合様式に-3Ara1- がないと
いうこと、またAKIYAMA らの報告では主な結合様式に-4
GlcUA1-、-2Man1- 及び-5Ara1-があり、-3Ara1- がない
という点で本発明に用いられる酸性ヘテロ多糖類とは明
らかに異なる。
【0013】本発明の酸性ヘテロ多糖類は水溶性であ
り、蒸留水又は生理食塩水に多糖類を0.5 〜1重量%溶
解した塗布剤として、又はグリセリン等の混合により膜
特性を改変可能な酸性ヘテロ多糖体フイルムの貼付剤と
して、又は凍結乾燥法などにより得られる粉末の散布剤
として使用される。
【0014】酸性ヘテロ多糖体フイルムの成形法として
は、例えば温風乾燥法が挙げられる。酸性ヘテロ多糖体
の0.5 〜2.0 重量%高濃度水溶液を、使用目的に合った
型枠に流し込み、40℃から50℃の温風で乾燥してフ
イルムが完成する。フイルムの保存と取扱いに便利なよ
うに剥離紙上にフイルムを形成すればよい。この剥離紙
の材質はシリコン又はPETフイルム、OPPフイル
ム、クラフト紙、上質紙などをシリコーン処理又はPE
処理したものなどが挙げられ、フイルムが剥離紙から剥
がれやすいこと、更に適度の強度を保つが、裁断しやす
いことが剥離紙の条件として挙げられる。またフイルム
特性を改変するために、0.1 %程度のグリセリン等を乾
燥前の多糖体水溶液に添加することで、柔らかいフイル
ムを仕上げることが可能である。
【0015】酸性ヘテロ多糖類粉末の調製法としては、
例えば凍結乾燥法が挙げられる。酸性ヘテロ多糖類の水
溶液、又は水溶液からエタノール沈澱法により得られる
沈澱を予備凍結し、凍結乾燥を行う。水溶液の凍結乾燥
物は空気層を含んだ真綿状の粉末になる。一方、エタノ
ール沈澱物の凍結乾燥物は乾固物となるが、この乾固物
をコーヒーミル等の粉砕機により粉末にする。このよう
にして得られる粉末は、水溶液の凍結乾燥粉末とは違
い、さらさらの触感をもつ粉末となる。
【0016】本発明の創傷治癒促進剤には、他の薬効成
分を配合することができる。該薬効成分としては例えば
アクリノール、アルキルポリアミノエチルグリシン、塩
化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、オキシドー
ル、過マンガン酸カリウム、グルクロン酸クロルヘキシ
ジン、チメロサール、プロノボール、ポビドンヨード、
マーキュロクロム等の外用殺菌消毒剤;カラミン等の創
傷保護剤;エリスロマイシン、塩化オキシテトラサイク
リン、塩酸グラミシジンS、硫酸ストレプトマイシン、
塩酸テトラサイクリン、塩酸デメチルクロル、硫酸カナ
マイシン等の化膿性疾患用剤;塩化亜鉛、ヘパリン、デ
キストラン硫酸ナトリウム、クロタミトン、吉草酸ベタ
メサゾン、トリアムシノロンアセトニド等の鎮痛収斂消
炎剤;繊維芽細胞成長因子、上皮細胞成長因子等の生物
学的製剤などである。
【0017】創傷への多糖類水溶液の塗布剤の場合は、
創傷全体を被覆する量を1日2回以上使用するのが好ま
しい。フイルム貼付の場合は、創傷全体を被覆するよう
なサイズにフイルムを裁断し貼付する。創傷面が乾燥し
ている場合は、蒸留水又は生理食塩水により創傷面を適
度に湿らせフイルムを貼付するのが好ましい。フイルム
の交換は、フイルムが物理的に力などにより剥がれたと
き、又は長時間にわたる水洗によりフイルムが溶解した
ときにのみ行えばよい。粉末の使用は、創傷全体を被覆
する量を1日2回以上散布するのが好ましい。創傷面が
乾燥しているときには、創傷面を適度に湿らせて粉末を
散布するとよい。
【0018】
【発明の効果】本発明の創傷治癒促進剤は、皮膚又は粘
膜の破綻をきたした創傷類の治癒を著しく促進し、しか
も生体適合性に優れ、高い安全性を示すことから、治療
に極めて有用である。また抗炎症剤、抗菌剤等の二次的
な障害を低減する薬物との併用により、更なる治癒の促
進を達成できる。また、有効成分である多糖類は植物細
胞培養技術の応用により製造されることから、安定に均
質な多糖類を得ることが可能である。
【0019】
【実施例】以下実施例で本発明を詳細に説明するが、本
発明はこれに限定されるものではない。
【0020】実施例1 酸性ヘテロ多糖類の製造 ポリアンテス属に属する植物として、チューベローズ
Polianthes tuberosaL.)を用いた。カルスは滅菌し
たチューベローズの開花2〜7日前の蕾を植物ホルモン
として1×10-5 MのNAA と1×10-6 MのBAを含み、炭素
源として3%のサッカロースを含むLinsmaler-Skoog 培
地(寒天培地)を用いて誘導した。誘導されたカルスは
同培地で継代培養した。数代以上に継代し安定化したカ
ルスを、植物ホルモンとして1×10-5 Mの2,4−Dを
含み、炭素源として5%のサッカロースを含むLinsmale
r-Skoog 培地(液体培地)に5%濃度となるよう接種し
た。培地は暗所にてロータリーシェイカーを用いて振盪
数120rpm、27℃±1℃で30日間行った。この後、濾過及
び遠心分離により、培養液から細胞を取り除き、これを
ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。この濃縮
液に約3倍量のエタノールを加え、5℃で24時間静置し
沈澱を得た。この沈澱を遠心分離によって回収し、70%
エタノールで3回洗浄した後、凍結乾燥により水分を除
去し、目的とする多糖類を得た。以上の操作を5回行
い、ロットによる多糖類収量、全糖量、ウロン酸量、タ
ンパク質量、水分量、中性糖組成比の変動を比較した。
その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1から明らかなように、上記製法により
得られた多糖類は、完全人工制御下での培養によって得
られるため、ロットによる多糖類収量、全糖量、ウロン
酸量、タンパク質量、水分量、中性糖組成比の変動は少
なく、均一性の高いものである。
【0023】実施例2 酸性ヘテロ多糖類のフイルム
成形 ポリアクリル製のたて20cm×よこ40cm×高さ2cmのフイ
ルム作製枠の枠底に剥離紙としてPETフイルム(ポリ
エステルフイルム)を置き、この上から実施例1で得ら
れた酸性ヘテロ多糖類の1重量%水溶液を流し込んだ。
40℃の温風乾燥器内で一昼夜乾燥させ、適当な大きさに
裁断し酸性ヘテロ多糖体フイルムを成形した。フイルム
の使用に際しては、剥離紙からフイルムを剥離し使用す
ることができる。酸性ヘテロ多糖類のフイルムは透明度
が高く、また膜強度も強かった。更に、創傷面などの適
用部位への付着性が高く、一度貼付すれば物理的には剥
がれにくかった。しかし酸性ヘテロ多糖類は高い水溶性
を示すことから、貼付したフイルムは水洗により剥がす
ことが可能であった。よってこのフイルムは、臨床使用
の操作性に優れた成形物であると言える。
【0024】実施例3 酸性ヘテロ多糖類水溶液の有
効性試験 5〜6週齢の雄性Wister系ラットを1週間予備飼育し、
体重150g〜160gの健康な個体を選び、1群8匹として実
験に供した。バルビタール麻酔下ラットの背部をバリカ
ンとシェイバーにより除毛し、背部中央に直径15mmの正
円1個をマジックインクで描いた。この円に沿って皮膚
を切除し、筋膜に達する円形皮膚欠損傷を作製した。欠
損傷作製の1日後に、エーテル麻酔下に欠損傷の長径と
短径をノギスで測定し、長径×短径を欠損傷面積とし
た。ここに算出した欠損傷面積で群分けを行い、実施例
1で得られた酸性ヘテロ多糖体水溶液による治療を開始
した。治療方法は1日2回(午前中1回と午後に1
回)、欠損傷に約1mlの0.5 重量%多糖水溶液を完全治
癒日まで連日塗布した。欠損傷治癒の評価は、欠損傷面
積の減少速度と完全治癒に必要な日数で行った。欠損傷
面積の測定は、エーテル麻酔下、群分けを行った日から
隔日に行った。また完全治癒日は観察により判断し、観
察者が決めた一定の判断基準により欠損傷の傷痕が完全
に消失した日とした。治療の陽性対照群として、創傷治
癒促進効果が確認されているアラントイン(府川ら(19
73):応用薬理,7(9−10),1305−1314)を0.5 %
配合したクリームを同様に1日2回、完治日まで連日塗
布を行った。また陰性対照群は、群分け後から全く治療
処置は行わなかった。治療の有効性は、陰性対照群との
差の統計学的有意性を比較することにより判断した。p
値が0.05未満(p<0.05)である場合は統計的に有意で
あると判断した。分散の解析はF検定で行い、分散が等
しい場合にはSTUDENT t-TESTを行い、分散が等しくない
場合は、COCHRAN-TEST又はAS.WELCH-TEST を行った。
【0025】得られた結果を図1と図2に示す。図1は
欠損傷面積の経日変化を示したもので、群分け日の平均
欠損傷面積を100 %として表した。全ての値を平均値±
標準誤差(SE)で表した。酸性ヘテロ多糖類水溶液によ
る治療群は、欠損傷作製日3日目から陰性対照群より欠
損傷面積が小さくなり、作製5日目には陰性対照群に比
較して有意に(p<0.05)小さくなり、作製7日目には
p<0.001 の有意差が確認された。一方、陽性対照のア
ラントイン配合クリーム塗布群の欠損傷面積は、欠損傷
作製3日目には陰性対照群と比較して有意に(p<0.00
1)大きくなった。ここで観察されたクリーム塗布群が
陰性対照群より大きくなる現象は他の研究により認めら
れている(肥後ら(1978):応用薬理,7(9−10),
1305−1314)。5日目以降はアラントインの効果が表れ
治癒促進に向かうが、試験期間中においてはついには陰
性対照と比較して有意な差は観察されなかった。図2は
完全治癒に必要な日数の比較を示した。各群内における
各個体の完全治癒に必要であった日数の分散を表し、そ
の日数の平均を算出した。酸性ヘテロ多糖類水溶液によ
る治療群は、無処置群と比較して平均治癒日数は少なか
った。また陽性対照のアラントイン配合クリーム塗布群
とは、ほぼ同じ平均治癒日数であった。以上の結果よ
り、酸性ヘテロ多糖類水溶液には、創傷の治癒を著しく
促進する作用があることが確認された。
【0026】実施例4 酸性ヘテロ多糖類フイルムの
有効性試験 実施例3と全く同様の円形欠損傷治癒実験を行った。た
だし、酸性ヘテロ多糖類フイルムによる治療は、群分け
日に同フイルムを創傷面全体をカバーするように貼付
し、以後全く治療処理は行わなかった。
【0027】得られた結果を図3に示す。図3は欠損傷
面積の経日変化を示したもので、群分け日の平均欠損傷
面積を100 %として表した。また、全ての値を平均値±
標準誤差(SE)で表した。フイルム貼付群は無処置群と
比較して、統計学的な有意差は見られないものの試験期
間の全てにおいて欠損傷面積は減少していた。特に、欠
損傷作製3日目には大きな差が見られた。また陽性対照
のアラントイン配合クリームによる治療群と比較する
と、欠損傷作製初期(3〜6日目)においては酸性ヘテ
ロ多糖類フイルム処置群のほうが欠損傷面積の減少が著
しい。欠損傷作製中期〜後期(7〜16日目)にかけては
両群は同程度の有効性であった。以上より、酸性ヘテロ
多糖類フイルムには、創傷の治癒を促進する作用がある
ことが確認された。
【0028】実施例5 皮膚一次刺激性試験 13週齢の雄性日本白色種ウサギ6匹を用いて、健常皮膚
又は損傷皮膚に対する一次刺激性の試験を行った。ウサ
ギの背部をバリカンとシェイバーにより毛刈り及び毛剃
りし、1インチ×1インチの損傷皮膚と健常皮膚を各々
4箇所を試料適用部位とした。実施例1で得た酸性ヘテ
ロ多糖類の1.0 重量%の0.5ml をリント布に染み込ま
せ、適用部位に貼付した。24時間後に貼付を除去し、除
去後3、24及び48時間後の計3回皮膚反応を判定した。
その結果、健常皮膚及び損傷皮膚に対して、酸性ヘテロ
多糖類の貼付による皮膚反応は全く認められなかった。
【0029】実施例6 皮膚累積刺激性試験 13週齢の雄性日本白色種ウサギ6匹を用いて、皮膚累積
刺激性の試験を行った。ウサギの背部をバリカンとシェ
イバーにより毛刈り及び毛剃りし、試料適用部位とし
た。実施例1で得た酸性ヘテロ多糖類の1.0 重量%の約
30mgを、綿棒にて直径2cmの円形状に試料適用部位に塗
布した。この操作を1日1回、日曜日を除く毎日、2週
間にわたり計12回行った。毎塗布24時間後に皮膚反応を
判定した。その結果、酸性ヘテロ多糖類の塗布による皮
膚反応は全く認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸性ヘテロ多糖類水溶液による治療の欠損傷面
積の経日変化を、群分け日の平均欠損傷面積を100 %と
して表した図面である。
【図2】図1と同治療により完全治癒までに必要な日数
を示し、各試験群内における各個体の完全治癒に必要な
日数の分散を表し、また、その日数の平均を算出した図
表である。
【図3】酸性ヘテロ多糖類フイルムによる治療の欠損傷
面積の経日変化を示したもので、群分け日の平均欠損傷
面積を100 %として表した図表である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年6月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】この酸性ヘテロ多糖類は、次の物理化学的
性質を有する。溶媒に対する溶解性 水に可溶で、エタノール、エーテル、アセトンに不溶で
ある。呈色反応 アンスロン反応:陽性 カルバゾール反応:陽性 エルソン−モルガン反応:陰性色及び形状 エタノール沈澱を経たものは白色ないし灰白色粉末であ
る。透析を経てイオン交換により精製し、凍結乾燥を経
たものは白色綿状又は繊維状である。比旋光度 〔α〕 25:0〜+20゜(c=1.0,水溶液) また、本発明に用いる酸性ヘテロ多糖類は、次の繰り返
し構造を有する。
【化3】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアンテス属(Polianthes L.) に属
    する植物から誘導されたカルスが細胞外に分泌する酸性
    ヘテロ多糖類を有効成分とする創傷治癒促進剤。
  2. 【請求項2】 アラビノース、マンノース、ガラクトー
    ス、グルクロン酸及びキシロースを構成糖として含有
    し、それらの結合様式と構成比が 【化1】 であり、分子量が1×104 〜2×107 である酸性ヘテロ
    多糖類を有効成分とする創傷治癒促進剤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001059137A1 (en) * 2000-02-10 2001-08-16 Biologic A/S Method for remodelling cell wall polysaccharide structures in plants
CN104435610A (zh) * 2014-11-29 2015-03-25 顾明明 一种治疗冻伤的中药制剂及制备方法
CN104491785A (zh) * 2014-12-09 2015-04-08 李跃 一种用于治疗反复性冻疮的膏剂
CN105343861A (zh) * 2015-12-15 2016-02-24 济南舜昊生物科技有限公司 一种治疗冻疮的药膏

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