JPH06325508A - 磁気ディスク装置用キャリッジと、その製法及び磁気ディスク装置 - Google Patents

磁気ディスク装置用キャリッジと、その製法及び磁気ディスク装置

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JPH06325508A
JPH06325508A JP10830193A JP10830193A JPH06325508A JP H06325508 A JPH06325508 A JP H06325508A JP 10830193 A JP10830193 A JP 10830193A JP 10830193 A JP10830193 A JP 10830193A JP H06325508 A JPH06325508 A JP H06325508A
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亮二 岡田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気ディスク装置に用いるマグネシウム合金
製キャリッジの熱膨張率を低減し、他の組合せ材料との
熱膨張率差から生じる熱応力、熱歪を低減し、信頼性の
高いキャリッジ、磁気ディスク装置とする。 【構成】 時効現象を利用し、MgとAlの金属間化合物を
網目状に析出させ、全体の熱膨張率をAl合金とほぼ同じ
まで低減した、MgーAl合金製のキャリッジ及び同キャリ
ッジを用いた磁気ディスク装置。 【効果】 本発明のMg合金製キャリッジは磁気円盤材料
であるAl合金とほぼ同じ熱膨張率であるため、熱オフト
ラックが抑制される。その結果、磁気ヘッドの位置決め
が容易となり、磁気記録密度を増すことが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ディスク装置とそ
のキャリッジに係り、特に重量が軽く高速アクセスがで
き熱変形が小さく信頼性の高いキャリッジと、このキャ
リッジの製法、並びに、このキャリッジを用いた磁気デ
ィスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置においては、キャリッ
ジのアクセスをより一層高速化する要求がされてきてお
り、この高速アクセスを達成するために、ますますキャ
リッジの軽量化が図られつつある。このキャリッジを軽
量にするため、磁気円盤上の磁気情報を記録再生するヘ
ッドを支持するキャリッジの材質が、アルミニウム(以
下、Alという)合金から、より密度の低いマグネシウム
(以下、Mgという)合金に変えられつつある。Mg合金を
用いたキャリッジの従来技術として、特開昭63−298881
号公報、及び特開平1−319126号公報に記載のものがあ
る。
【0003】しかし、Mg合金は、Al合金や、ステンレス
(以下、SUSという)と比較すると熱膨張率が大きいた
め、Mg合金をAl合金や、SUSと組み合わせて使う場合、
熱膨張率の差から熱応力が発生し、キャリッジの変形、
すなわち熱オフトラックを引き起こす。そこで、Mg合金
の熱膨張率を下げるために、各種の検討がされている。
Mg合金に粉体、もしくはファイバー状のボロン(以下、
Bという)、炭化珪素(以下、SiCという)を分散させ熱
膨張率を低下させる方法が特開平2−193373号公報に記
載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】Mg合金はAl合金よりも
軽く、Mg合金化することでキャリッジはAl合金の約30
%の軽量化が図られ、高速アクセスには極めて有効であ
る。さらに、Mg合金は減衰能が高く、振動を嫌う磁気デ
ィスク装置には最適の材料である。しかし、Mg合金は耐
食性が低く、熱膨張率が大きいという問題がある。
【0005】耐食性は、不純物として含まれるニッケル
(以下、Niという)、鉄(以下、Feという)、銅(以
下、Cuという)の量を抑制することで、近年著しく改善
されている。特に代表的ダイカスト用Mg合金であるAZ91
(ASTM規格)は、Ni、Fe、Cuの量を抑制することで優れ
た耐食性を示す。なお、AZ91の公称組成は、Al=8.7〜
9.0%、マンガン(以下、Mnという)=0.13%、亜鉛
(以下、Znという)=0.68〜0.7%、Mg=残である(R
obert.S.Busk著、マグネシウム製品設計、1988出版、
40項)。AZ91は含まれるNi、Fe、Cuの量によってAラン
クから最高のDランクに分けられ、もっとも耐食性に優
れるDランク、AZ91Dの不純物の公称組成は、Fe=0.032
×Mn含有率(%)以下、Ni=0.005%以下、Cu=0.07
%以下である(Robert.S.Busk著、マグネシウム製品
設計、1988出版、270項)。なお、上記の%はすべて重
量%であり、これ以後、ことわりのないかぎり全て重量
%で表記する。
【0006】磁気ディスク装置を使用する環境は、湿
度、温度ともに比較的低く、耐食性にとって良好であ
る。そのため、たとえMg合金であっても極端な腐食は生
じにくい。特に、前述のAZ91Dを用いる場合では、耐食
性は簡単な表面処理で十分防げる。
【0007】しかし、AZ91は熱膨張率が26/106(1/
℃)であり、磁気ディスク装置に用いる他の部品材料と
の熱膨張率差が大きい。例えば、ロードアームやキャリ
ッジ用シャフトにはSUS304を用いており、その熱膨張率
は約17/106(1/℃)であり、軸受には高炭素クロム
軸受鋼(以下、SUJという)を用いており、その熱膨張
率は約12/106(1/℃)であり、ICの取付け基板、磁
気円盤、磁気円盤用スペーサ等にはAl合金を用いてお
り、その熱膨張率は約23/106(1/℃)である。した
がって、磁気ディスク装置内の温度が上昇した場合、キ
ャリッジに前記の熱膨張率差を原因とする熱応力や、変
形が生じ、この変形は、磁気ヘッドの位置ずれ、すなわ
ち熱オフトラックを引き起こし、装置の性能の信頼性を
低下させることになる。特に、高密度化の進む磁気ディ
スク装置では、重要な課題である。
【0008】上記AZ91の熱膨張率は、下記(1)式に示
す複合則によって算出したものであり、我々による実測
でもほぼ同様の値を得ている。
【0009】 α(AZ91)= V(Mg)×α(Mg)+V(Al)×α(Al) … (1) α(AZ91):AZ91の熱膨張率 V(Mg) :AZ91におけるMgの体積% α(Mg) :Mgの熱膨張率{26.1/106(1/℃)} V(Al) :AZ91におけるAlの体積% α(Al) :Alの熱膨張率{23.9/106(1/℃)} なお、MgとAlの熱膨張率は100℃までの値である(日本
金属学会編、金属データブック、1984出版、13項)。
【0010】したがって、キャリッジの材料としてMg合
金を用いる場合は、耐食性を考慮するとAZ91Dを用いれ
ば良いが、熱膨張率によるキャリッジの変形、応力の発
生等の抑制を考慮するとAZ91Dの材料の改質をおこなわ
なければならない。特に、磁気情報が書き込まれている
磁気円盤及び磁気円盤用スペーサであるAl合金とAZ91D
の熱膨張率を一致させることが重要である。
【0011】前記従来技術である特開昭63−298881号公
報や、特開平1−319126号公報に記載のものは、磁気円
盤、磁気円盤用スペーサ等にキャリッジと同質のMg合金
を用いることで磁気円盤とキャリッジ間の熱膨張差によ
って生じる熱オフオラックを低減する方法を提案してい
る。しかし、磁気円盤、磁気円盤用スペーサ等にキャリ
ッジと同質のMg合金を用いれば、SUSやSUJで製作されて
いるスピンドルや軸受との熱膨張率差は従来のAl合金製
の磁気円盤、磁気円盤用スペーサよりも大きくなり、ス
ピンドルや軸受と磁気円盤やキャリッジとの熱膨張率差
によって熱オフトラックが発生し、磁気ディスク装置全
体の熱オフトラックの低減にはあまり効果がない。さら
に、磁気円盤には厳しい平滑度と寸法安定性が求めら
れ、現在は特殊なAl合金が用いられている。単純にキャ
リッジと熱膨張率を合わせるために、同質のMg合金に変
えるには他の課題が多く、現実的ではない。
【0012】前記従来技術、特開平2−193373号公報に
記載のものは、Bや、SiCがMg合金に不均一に分散するの
で、キャリッジが不均質になり、特にキャリッジのアー
ム(ガイドアーム)においてB、SiCが偏析し、熱膨張率
に差が生じて熱オフトラックが生じる。キャリッジの生
産は、ダイカスト法が最も優れている。しかし、高融点
材料で密度の小さいBや、SiCを、溶解しているMg合金に
均一に分散させることは困難であり、Bや、SiCの偏析が
生じやすい恐れがある。
【0013】本発明の目的は、耐食性に優れ、均質で、
かつ他の材料との熱膨張率差を小さくして、熱応力、変
形を抑制した信頼性の高いMg合金製キャリッジと、該キ
ャリッジの製法を提供し、さらに、前記キャリッジを用
いて、熱オフトラックが小さく、信頼性の高い、高速ア
クセスが可能である磁気ディスク装置とすることであ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下に述べ
る手段で達成される。回転駆動されるスピンドルと、該
スピンドルを中心として同心状に配置され前記スピンド
ルと共に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の外
側に配置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再生
するヘッドを有してなるロードアームと、該ロードアー
ムを接続してキャリッジ軸で保持されているガイドアー
ムを有したキャリッジと、該キャリッジを作動させるア
クチュエータとを含んでなる磁気ディスク装置に用いる
前記キャリッジにおいて、該キャリッジがマグネシウム
とアルミニウムとを主成分とする合金で形成されてお
り、かつ、マグネシウムとアルミニウムの金属間化合物
であるγ相が連続して網目状に析出し、γ相の粒子の平
均面積を少なくとも0.5μm2とすることである。
【0015】あるいは、回転駆動されるスピンドルと、
該スピンドルを中心として同心状に配置され前記スピン
ドルと共に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の
外側に配置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再
生するヘッドを有してなるロードアームと、該ロードア
ームを接続してキャリッジ軸で保持されているガイドア
ームを有したキャリッジと、該キャリッジを作動させる
アクチュエータとを含んでなる磁気ディスク装置に用い
る前記キャリッジにおいて、該キャリッジがマグネシウ
ムとアルミニウムとを主成分とする合金で形成されてお
り、かつ、マグネシウムとアルミニウムの金属間化合物
であるγ相の析出量が、X線回折においてγ相の最強ピ
ーク強度I1が母相であるマグネシウムの最強ピーク強度
I2と比較し、強度比I1/I2を少なくとも0.1とすること
である。
【0016】あるいは、回転駆動されるスピンドルと、
該スピンドルを中心として同心状に配置され前記スピン
ドルと共に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の
外側に配置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再
生するヘッドを有してなるロードアームと、該ロードア
ームを接続してキャリッジ軸で保持されているガイドア
ームを有したキャリッジと、該キャリッジを作動させる
アクチュエータとを含んでなる磁気ディスク装置に用い
る前記キャリッジにおいて、該キャリッジがマグネシウ
ムとアルミニウムとを主成分とする合金で形成されてお
り、かつ、その熱膨張率が25/106(1/℃)をこえな
い値であること。
【0017】さらに、請求項1から3のうち、いずれか
1項に記載の磁気ディスク装置用キャリッジにおいて、
該キャリッジの密度が1.95g/cm3をこえない値であ
ること。
【0018】あるいは、回転駆動されるスピンドルと、
該スピンドルを中心として同心状に配置され前記スピン
ドルと共に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の
外側に配置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再
生するヘッドを有してなるロードアームと、該ロードア
ームを接続してキャリッジ軸で保持されているガイドア
ームを有したキャリッジと、該キャリッジを作動させる
アクチュエータとを含んでなる磁気ディスク装置におい
て、前記キャリッジが請求項1から4のうち、いずれか
1項に記載のキャリッジを用いることである。
【0019】あるいは、回転駆動されるスピンドルと、
該スピンドルを中心として同心状に配置され前記スピン
ドルと共に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の
外側に配置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再
生するヘッドを有してなるロードアームと、該ロードア
ームを接続してキャリッジ軸で保持されているガイドア
ームを有したキャリッジと、該キャリッジを作動させる
アクチュエータとを含んでなる磁気ディスク装置に用い
るキャリッジの製造方法において、該キャリッジをマグ
ネシウムとアルミニウムを主成分とするマグネシウム合
金で形成し、200℃〜300℃の温度で、少なくとも8時間
加熱することである。
【0020】
【作用】MgーAl合金の時効による各種物性の変化を調べ
た結果、一定量以上の金属間化合物γ相を析出させる
と、熱膨張率が急激に低減する現象を見出した。γ相は
Mg相よりも熱膨張率が小さく、γ相が母相のMg中に一定
量以上、連続して網目状に析出すること、さらに、析出
したγ相の粒子面積が少なくとも0.5μm2より大きく
なるほど、母相のMgの熱膨張率が低減される。
【0021】したがって、Mgの熱膨張率を抑制するため
に必要なγ相量が存在する。その量を定量的に示すと、
X線回折においてγ相の最強ピーク強度(以下、I1とい
う)が母相であるMgの最強ピーク強度(以下、I2とい
う)と比較し、その強度比I1/I2(以下、Irという)が
少なくとも0.1となる量に相当する。
【0022】上記量のγ相を形成するための時効条件と
は、200℃〜300℃の温度で、少なくとも8時間加熱する
ことである。原理的には、150℃をこえない温度でもγ
相の析出は可能であるが、析出速度が遅く工業的利用に
は適さない。また、350℃をこえる温度で加熱した場
合、析出したγ相が再び母相中に溶出するため、γ相が
効果的に析出せず、熱膨張率が低減する現象は認められ
ない。
【0023】
【実施例】本発明の実施例であるMg合金製キャリッジを
用いた磁気ディスク装置を図1から図3に示す。図1の
磁気ディスク装置1は、図示されないモータにより回転
駆動されるスピンドル3と、該スピンドル3を中心とし
て同心状に配置され前記スピンドル3と共に回転する複
数枚の磁気円盤2と、該磁気円盤2の外側に配置され
て、前記磁気円盤2上の磁気情報を記録再生するヘッド
4を有してなるロードアーム5と、前記磁気円盤2上の
情報をヘッド4で微弱な電気信号に変換してリード線8
で転送する複数の信号線を支持するフレキシブルプリン
テッドサーキット板(以下、FPC板という)9と、前記
ロードアーム5を接続してキャリッジ軸7で保持されて
いるガイドアーム11を有したキャリッジ10と、該キ
ャリッジ10を作動させるアクチュエータ6とを含んで
構成されている。
【0024】図2は本発明の一実施例である前記キャリ
ッジ10の斜視図である。該キャリッジ10は、前記ア
クチュエータ6に相対して磁気力が作用するコイル15
を取り付けたコイル支持部16と、前記キャリッジ軸7
を介して前記コイル支持部16と対称に位置する複数本
の前記ガイドアーム11と、該ガイドアーム11を、前
記キャリッジ軸7の軸方向と直角をなし、等間隔で互い
に平行になるよう整列支持する円筒構造のガイドアーム
支持部17と、該ガイドアーム支持部17の両端側面に
FPC板9を取り付けるために設けたFPC支持部18、及び
19と、軸受14をしまりばめ結合する軸受支持部13
とから構成されている。
【0025】本実施例のキャリッジは、材料にマグネシ
ウム合金であるAZ91Dを用い、ダイカストによって、加
熱温度を200℃〜300℃とし、少なくとも8時間加熱して
形成されたものである。なお、前記AZ91Dの組成分析結
果は、Al=8.9%、Mn=0.32%、Zn=0.8%、Fe=0.
002%、Ni=0.0008%、Cu=0.005%、Mg=残、であ
る。
【0026】図3は磁気円盤2とヘッド4、及びガイド
アーム11の相対的位置関係を示す磁気ディスク装置1
の一部断面図である。磁気円盤2はスペーサ22ととも
に重ねられ、図示されていないモータによって回転する
ハブ23に固定されている。磁気円盤2、及びスペーサ
22はAl合金製であり、その熱膨張率は約23/106(1
/℃)である。スピンドル3はSUSであり、またハブ2
3はFe合金であり、ともに熱膨張率は約(12〜17)/10
6(1/℃)である。
【0027】本発明の実施例であるMg合金製キャリッジ
の熱膨張率を、図4から図6によって説明する。図4
は、本発明の実施例であるMg合金製キャリッジの熱膨張
率変化を測定したデータを示すものである。横軸が加熱
時間、縦軸が熱膨張率を示す。図中○印の線が200℃で
加熱した結果を、また図中△印の線が300℃で加熱した
結果を示す。熱膨張率測定用試料は、材料にAZ91Dを使
ってダイカスト法によって作製したキャリッジから切り
出した熱膨張率測定用試験片である。切り出し位置は前
記ガイドアーム11部であり、切り出し位置は常に一定
とした。熱膨張率測定は(株)真空理工製、レーザ式精
密熱膨張測定装置LIX−1を用いた。測定条件としては、
測定温度範囲が、磁気ディスク装置の動作温度範囲を検
討して−10℃から60℃、昇温速度を2℃/分とし、0℃か
ら50℃の平均熱膨張率を用いて評価した。測定は−10℃
から60℃までの昇温時のみとした。
【0028】図4に示すように、加熱時間が8時間をこ
えると熱膨張率は急激に低減し、約24/106(1/℃)
に達する。この熱膨張率の低減は、前記の単純な複合則
(1)式では説明できず、金属間化合物γ相の影響によ
る結果である。熱膨張率の低減したAZ91Dの組織を詳細
に観察した結果、微細なγ相が連続して網目状に析出し
た状態が認められた。この連続して網目状に析出した金
属間化合物γ相が、複合材料のフィラーに相当する役割
を果たし、材料であるAZ91D全体の熱膨張率を低減させ
るものである。
【0029】同様の実験を各種加熱温度で行った結果、
温度が350℃をこえると熱膨張率の低減現象は認められ
なかった。この現象を調べるため、350℃の温度をこえ
て加熱した試料の組織を加熱時間を変え観察した。その
結果、加熱時間の経過と共にγ相の析出量が減少する現
象が認められた。これは、一旦析出したγ相が、加熱時
間の経過と共に再び母相中に溶解したものである。特に
加熱温度が400℃をこえるとγ相の再溶解現象が顕著に
なることが認められた。
【0030】また、γ相の析出状態と熱膨張率との相関
関係を図6に示す。横軸にγ相の平均粒子面積(μ
2)、縦軸に熱膨張率を示す。γ相の粒子の平均面積
を、走査型電子顕微鏡写真を画像処理(使用した装置
名:ルーゼックスII)して算出した結果、析出したγ相
の粒子面積が大きいほど、熱膨張率は低減することが分
かった。
【0031】各加熱時間における試験片のX線回折をと
り、γ相の析出量と熱膨張率との相関を調べた結果を図
5に示す。横軸はX線回折結果におけるγ相の最強ピー
ク強度I1とMgの最強ピーク強度I2との比、Ir=I1/I2
示す。すなわち、Irの値が大きいほど金属間化合物γ相
の析出量が多いことを示す。縦軸は熱膨張率を示す。な
お、結晶が立方晶であるγ相の最強ピーク強度I1は、ミ
ラー指数で示せば(411)の回折である。結晶が六方晶
であるMgの最強ピーク強度I2は(10・1)の回折である。
なお、図4と同様に○印の線が200℃で加熱した結果、
△印の線が300℃で加熱した結果である。さらに、□印
は400℃で6時間保持後、大気中で急速に冷却しγ相が殆
ど析出していない状態の熱膨張率とIrの値である。図5
に示すように、Irが0.1をこえると、熱膨張率は急激に
減少する。すなわち、Irが0.1をこえる量のγ相が析出
すると、AZ91Dの熱膨張率が低減する。なお、Mg合金に
含有されたAlが、すべてγ相となったときのIrの値は、
従来のデータから推測すると0.12〜0.15となる。
【0032】図4に示すごとく、300℃で10時間加熱す
ることによってMg合金製キャリッジ10の熱膨張率を約
24/106(1/℃)にすることができる。すなわち上記
条件の加熱によって、キャリッジ10の熱膨張率を、Al
合金製の磁気円盤2およびスペーサ22の熱膨張率であ
る23/106(1/℃)とほぼ等しくでき、磁気円盤2、
スペーサ22とキャリッジ10との熱膨張率差に起因す
る熱オフトラックは解消できる。さらに処理をされてな
い元のAZ91Dの熱膨張率に比較し、ロードアーム5の材
料であるSUS304との熱膨張率差が約23%も低減し、ロー
ドアーム5とキャリッジ10との熱膨張率に起因する熱
オフトラックの低減にも有効である。
【0033】なお、本実施例ではMg合金としてAZ91Dを
用いたが、本発明は金属間化合物を網目状に析出させる
ことでMg合金の熱膨張率を低下させる方法を用いるもの
であり、材料としてAZ91Dに限るものではない。Alの含
有率の少ないMg合金、例えばAZ31、AZ61、AZ81を使用し
てもよい。
【0034】また逆にMg合金中のAlの重量比率を増し、
γ相の量を増して熱膨張率をより小さくすることも可能
である。この場合、Al含有率の増加によってキャリッジ
の重量は増すが、SUSとの熱膨張率差が小さくなり、SUS
を使用した部品との間で生じる熱オフトラックを小さく
することができる。Alの含有率を増す場合、Alの比率は
γ相とMg相との共晶点である約30重量%までが実用的で
ある。MgーAl合金において、Alの比率を約30重量%とす
ると、複合則で求めた計算上の密度は1.945g/cm3
なる。即ち、本発明が適用できる実用的なMgーAl合金で
は、密度は最大1.945g/cm3となる。
【0035】本発明は、磁気記録密度が高い、もしくは
磁気記録容量の大きい磁気ディスク装置に効果的であ
る。特に、磁気ヘッドの位置決めの制御方式がサーボ面
だけの位置情報で行うサーボ面サーボ方式の磁気ディス
ク装置に特に効果的である。
【0036】
【発明の効果】本発明を用いれば、比重が約1.8g/cm3
と小さいMg合金をキャリッジに用い、かつ、その熱膨張
率を磁気円盤材料であるAl合金の熱膨張率とほぼ同じと
することができる。その結果、磁気円盤とキャリッジと
の熱膨張率差によって生じる熱オフトラックは、ほとん
どが解消できる。
【0037】また、従来のMg合金製キャリッジに比較
し、熱膨張率が約23%も低減するために、Al合金以外の
材料、例えばSUSとの熱膨張率差も小さくなり、SUSとの
熱膨張率差に起因する熱オフトラックが低減される。
【0038】熱オフトラックが低減するために磁気ヘッ
ドの位置決めが容易となり、磁気記録密度を増すことが
可能となる。さらに、各磁気円盤に位置情報を記録し磁
気ヘッドの位置決めに用いるデータ面サーボ方式を用い
る必要がなく、磁気記録容量が多く取れるサーボ面サー
ボ方式を用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるMg合金製キャリッジを用
いた磁気ディスク装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施例であるマグネシウム合金製キャ
リッジの斜視図である。
【図3】本発明の実施例である磁気ディスク装置の部分
断面図である。
【図4】本発明の実施例であるマグネシウム合金製キャ
リッジの熱膨張率と時効時間との関係を示すグラフであ
る。
【図5】本発明の実施例であるマグネシウム合金製キャ
リッジの熱膨張率と、X線回折結果におけるγ相とMg相
の最強ピーク強度比Irとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例であるマグネシウム合金製キャ
リッジのγ相の平均粒子面積と熱膨張率との関係を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 磁気ディスク装置 2 磁気円盤 3 スピンドル 4 ヘッド 5 ロードアーム 6 アクチュエー
タ 7 キャリッジ軸 8 リード線 9 FPC板 10 キャリッジ 11 ガイドアーム 12 ロードアー
ム取付け部 13 軸受支持部 14 軸受 15 コイル 16 コイル支持
部 17 ガイドアーム支持部 18 FPC板支
持部 19 FPC板支持部 20 ガイドアー
ム背面部 21 カバー 22 スペーサ2
3 ハブ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転駆動されるスピンドルと、該スピン
    ドルを中心として同心状に配置され前記スピンドルと共
    に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の外側に配
    置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再生するヘ
    ッドを有してなるロードアームと、該ロードアームを接
    続してキャリッジ軸で保持されているガイドアームを有
    したキャリッジと、該キャリッジを作動させるアクチュ
    エータとを含んでなる磁気ディスク装置に用いる前記キ
    ャリッジにおいて、該キャリッジがマグネシウムとアル
    ミニウムとを主成分とする合金で形成されており、か
    つ、マグネシウムとアルミニウムの金属間化合物である
    γ相が連続して網目状に析出し、γ相の粒子の平均面積
    が少なくとも0.5μm2であることを特徴とする磁気デ
    ィスク装置用キャリッジ。
  2. 【請求項2】 回転駆動されるスピンドルと、該スピン
    ドルを中心として同心状に配置され前記スピンドルと共
    に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の外側に配
    置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再生するヘ
    ッドを有してなるロードアームと、該ロードアームを接
    続してキャリッジ軸で保持されているガイドアームを有
    したキャリッジと、該キャリッジを作動させるアクチュ
    エータとを含んでなる磁気ディスク装置に用いる前記キ
    ャリッジにおいて、該キャリッジがマグネシウムとアル
    ミニウムとを主成分とする合金で形成されており、か
    つ、マグネシウムとアルミニウムの金属間化合物である
    γ相の析出量が、X線回折においてγ相の最強ピーク強
    度I1が母相であるマグネシウムの最強ピーク強度I2と比
    較し、強度比I1/I2が少なくとも0.1であることを特徴
    とする磁気ディスク装置用キャリッジ。
  3. 【請求項3】 回転駆動されるスピンドルと、該スピン
    ドルを中心として同心状に配置され前記スピンドルと共
    に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の外側に配
    置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再生するヘ
    ッドを有してなるロードアームと、該ロードアームを接
    続してキャリッジ軸で保持されているガイドアームを有
    したキャリッジと、該キャリッジを作動させるアクチュ
    エータとを含んでなる磁気ディスク装置に用いる前記キ
    ャリッジにおいて、該キャリッジがマグネシウムとアル
    ミニウムとを主成分とする合金で形成されており、か
    つ、その熱膨張率が25/106(1/℃)をこえない値で
    あることを特徴とする磁気ディスク装置用キャリッジ。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のうち、いずれか1項に
    記載の磁気ディスク装置用キャリッジにおいて、キャリ
    ッジの密度が1.95g/cm3をこえない値であることを
    特徴とする磁気ディスク装置用キャリッジ。
  5. 【請求項5】 回転駆動されるスピンドルと、該スピン
    ドルを中心として同心状に配置され前記スピンドルと共
    に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の外側に配
    置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再生するヘ
    ッドを有してなるロードアームと、該ロードアームを接
    続してキャリッジ軸で保持されているガイドアームを有
    したキャリッジと、該キャリッジを作動させるアクチュ
    エータとを含んでなる磁気ディスク装置において、前記
    キャリッジが請求項1から4のうち、いずれか1項に記
    載のキャリッジを用いたことを特徴とする磁気ディスク
    装置。
  6. 【請求項6】 回転駆動されるスピンドルと、該スピン
    ドルを中心として同心状に配置され前記スピンドルと共
    に回転する複数枚の磁気円盤と、該磁気円盤の外側に配
    置されて、前記磁気円盤上の磁気情報を記録再生するヘ
    ッドを有してなるロードアームと、該ロードアームを接
    続してキャリッジ軸で保持されているガイドアームを有
    したキャリッジと、該キャリッジを作動させるアクチュ
    エータとを含んでなる磁気ディスク装置に用いるキャリ
    ッジの製造方法において、該キャリッジをマグネシウム
    とアルミニウムを主成分とするマグネシウム合金で形成
    し、200℃〜300℃の温度で、少なくとも8時間加熱する
    ことを特徴とする磁気ディスク装置用キャリッジの製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7872826B2 (en) 2005-10-27 2011-01-18 Hitachi Global Storage Technologies Netherlands B.V. Disk storage device and control method for the same
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WO2012066986A1 (ja) * 2010-11-16 2012-05-24 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金板、及びその製造方法

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