JPH06321524A - 石炭灰の改質方法 - Google Patents

石炭灰の改質方法

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JPH06321524A
JPH06321524A JP10709093A JP10709093A JPH06321524A JP H06321524 A JPH06321524 A JP H06321524A JP 10709093 A JP10709093 A JP 10709093A JP 10709093 A JP10709093 A JP 10709093A JP H06321524 A JPH06321524 A JP H06321524A
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Japan
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coal ash
reaction
aqueous solution
tank
solid
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JP10709093A
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Hideo Kato
秀男 加藤
Junsuke Haruna
淳介 春名
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、石炭をエネルギー源とする発電所
等において発生する多量の石炭灰を有効利用するための
新規な改質方法を提供する。 【構成】 石炭灰にアルカリ水溶液を添加し、熱水処理
して多孔質結晶物に改質するに際して、アルカリ水溶液
と石炭灰の反応固液比を0.5〜3.0リットル/kg
の範囲として撹拌、熱水処理する。 【効果】 反応時間が短縮でき、製造コストが非常に低
減され、産業廃棄物であった石炭灰の有効資源化が可能
となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、石炭をエネルギー源と
する発電所等において発生する多量の石炭灰を有効利用
するための改質方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、石炭利用の拡大に伴い、排出され
る石炭灰も莫大な量に達している。しかしながら、こう
した石炭灰の多くは、埋め立て処理されているが、こう
した埋め立て地の確保も年々困難となっている。
【0003】一方、従来より行われている石炭灰の単純
な利用方法にセメント用原材料や路盤材としての活用が
あるが、これらにしても現在までに充分な利用推進が図
られ、将来的に大幅な需要増加は期待できないことか
ら、石炭灰の処理対策については、新たな用途分野に活
用できる有効利用促進のための石炭灰の改質が重要な課
題となっている。
【0004】上記課題を解決すべく、こうした石炭灰を
高付加価値化させて再資源化することによる有効利用方
法として、石炭灰に苛性ソーダなどのアルカリ溶液を添
加して熱水処理することにより、多孔質結晶物である人
工ゼオライトに改質する方法が、例えば、特開昭59−
86687号、同61−90745号および同61−1
78416号などに提案されている。これらの方法によ
り得られる多孔質結晶物たる人工ゼオライトは、陽イオ
ン交換機能および吸着機能を有することから、土壌改良
剤や産業排水からPb、Cdなど除去する吸着剤として
利用できるとするものである。
【0005】しかしながら、ゼオライトには、人工ゼオ
ライト以外にも、沸石として天然に産出されるモルデナ
イトゼオライトやクリノプチロライトゼオライトなどの
天然ゼオライトが存在し、イオン交換機能や吸着機能を
有することから、硬水の軟化剤、土壌改質資材、肥効成
分保持剤の農業用など広範囲に利用されている。
【0006】さらに、水酸化ナトリウム、ケイ酸ソー
ダ、コロイドシリカ、アルミン酸ナトリウムなどを原料
として工業的に製造される合成ゼオライトが、すでに実
用化されており、その特殊な結晶構造から、分子ふるい
とも呼ばれ、その合成組成金属成分を変えることによっ
て細孔径を変化させることができるため、天然ゼオライ
トの有する機能に加え、新たに触媒機能に優れ、多くの
用途に用いられている。
【0007】こうしたゼオライトの品質を判断するひと
つの指標として、陽イオン交換容量(陽イオンをどれだ
けイオン交換し得る能力を有しているかを示す指標であ
る。以下、単にCECとも記す)があるが、天然ゼオラ
イトが概ね150meq/100g以下、合成ゼオライ
トが400〜600meq/100gであるのに対し、
上記人工ゼオライトでは、150〜350meq/10
0gであり、天然ゼオライトと合成ゼオライトとの中間
に位置する能力である。
【0008】また合成ゼオライトでは、原料のシリカゲ
ルおよびアルミナが非常に高価であるため、極めて高価
なものである。そのため、価格よりも性能を重要視する
分野において合成ゼオライトの持つ優れた触媒機能およ
びCECが有効に利用されているものである。これに対
し、天然ゼオライトでは、天然の岩石を粉砕、▲か▼焼
して加工することで製造できるため、合成ゼオライトに
比し安価に製造できるため、性能よりも価格を重視する
上記分野において広く利用されている。
【0009】したがって、上記人工ゼオライトにおいて
は、天然ゼオライトと同様の機能を持ち、またその能力
も天然ゼオライトと合成ゼオライトとの中間に位置する
ことから、価格もその中間であれば、上述したような用
途において十分に利用価値を有するものである。
【0010】しかしながら、こうした多孔質結晶物たる
人工ゼオライトへの改質方法では、いずれも多孔質結晶
物への改質は可能であるが、高い結晶化率を得るために
は、表1に示すように、長い反応時間を必要とする。
【0011】
【表1】
【0012】そのため、これらに記載の方法により生産
する場合には、大型の設備が必要となり、設備の建設費
が高い上に製造コストも高く、現在市販されている天然
ゼオライト系の土壌改質資材等の天然ゼオライトに比べ
大幅に高価なものとなるため、天然ゼオライトに代わる
ものとして利用することができず、実用的な技術にはな
り得ておらず、こうした従来技術を工業規模技術にまで
高めるには、大幅な反応時間の短縮を達成する必要があ
り、そのためには反応速度の飛躍的な向上改善という技
術的な課題を解決する必要があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、石炭をエネルギー源とする発電所等において発
生する多量の石炭灰を有効利用するための新規な石炭灰
の改質方法を提供するものである。
【0014】さらに本発明の目的は、石炭灰にアルカリ
水溶液を添加して熱水処理することにより多孔質結晶物
に改質する方法において、反応速度の向上により短時間
で多孔質結晶物に改質することのできる石炭灰の改質方
法を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記諸目的
を達成するために、石炭灰にアルカリ水溶液を添加して
熱水処理することにより多孔質結晶物に改質する方法に
おいて、反応速度の向上により短時間で多孔質結晶物に
改質できる石炭灰の改質方法について鋭意研究した結
果、石炭灰にアルカリ水溶液を添加して撹拌煮沸して熱
水処理する際、石炭灰の比重が軽く微細であるため、容
易に撹拌できる反面、固体と液体とが等速度にて同一方
向に運動してしまい、固体と液体の相対速度がほぼゼロ
の状態で流動し易いことから、固体濃度が高くなるよう
に固体と液体の比(反応固液比)を調整することによ
り、撹拌容器内での液体と固体の運動速度および方向に
差を生じさせ、固体と液体との相対速度を上昇させるこ
とで、固体と液体の接触効率(接触強度)が向上でき、
その結果として溶液反応における反応速度が飛躍的に向
上できることを知り、これにより短時間で多孔質結晶物
に改質できることを見出だしたものであり、この知見に
基づき本発明を完成するに至ったものである。
【0016】さらに、本発明者らは、上記知見により得
られた熱処理後のスラリーに関し、新たに生じる課題を
未然に解決すべく鋭意検討した結果、熱処理後のスラリ
ーの固体濃度が高すぎるため、配管閉塞や濾過不良を発
生し易いことから、熱処理後に再度固液比を大きくする
ことで、上記課題を解決でき、石炭灰の改質方法におけ
る全体プロセスを安定して行うことができることを知
り、この知見に基づき本発明を完成するに至ったもので
ある。
【0017】すなわち、本発明の目的は、(1)石炭灰
にアルカリ水溶液を添加し、熱水処理して多孔質結晶物
に改質するに際して、アルカリ水溶液と石炭灰の反応固
液比を0.5〜3.0リットル/kgの範囲として撹
拌、熱水処理することを特徴とする石炭灰の改質方法に
より達成される。
【0018】本発明の他の目的は、(2)熱水処理後の
スラリーの反応固液比を2.5リットル/kg以上に調
整した後に、連続的に余剰のアルカリ水溶液と多孔質結
晶物を分離することを特徴とする石炭灰の改質方法によ
り達成される。
【0019】本発明の他の目的は、(3)アルカリ水溶
液が水酸化ナトリウム水溶液である上記(1)または
(2)に示す石炭灰の改質方法によっても達成される。
【0020】本発明の他の目的は、(4)アルカリ水溶
液の濃度が1〜4Nである上記(1)ないし(3)のい
ずれかに示す石炭灰の改質方法に示すによっても達成さ
れる。
【0021】
【作用】以下、本発明を実施態様に基づき、より詳細に
説明する。
【0022】図1は、本発明に係る石炭灰の改質方法に
用いられる石炭灰改質装置の一実施態様を示す概略図で
ある。
【0023】図1より、本発明の石炭灰の改質方法に用
いられる石炭灰改質装置1の構成としては、まず、石炭
灰ホッパー2および反応液タンク3が設けられ、これら
は配管4および5により攪拌機6を備えてなる反応槽7
の上槽部に連結され、配管5の経路上には移送ポンプ8
が設けられている。また該反応槽7の下槽部は、バッフ
ァータンク9の上部に配管10により連結され、配管1
0の経路上には移送ポンプ11が設けられている。
【0024】次に該バッファータンク9の下部は、脱液
機12と配管13により連結され、配管13の経路上に
は移送ポンプ14が設けられている。該脱液機12の下
方にはコンベア15が連設され、該コンベア15の他端
は、水洗槽16まで延びている。また該水洗槽16には
系外より洗浄水供給用の配管17が設けられ、該配管1
7上にはバルブ18が設けられている。
【0025】さらに上記水洗槽16の下槽部は脱水機1
9と配管20により連結されており、該配管20の経路
上には移送ポンプ21が設けられている。該脱水機19
の下方にはコンベア22が連設されている。
【0026】また上記脱液機12は、レシーバタンク2
3と配管24で連結され、またレシーバタンク23は真
空ポンプ25および反応液タンク3にそれぞれ配管26
および27で連結され、配管27の経路上には排水ポン
プ27が設けられている。
【0027】なお上記反応液タンク3には、アルカリ溶
液タンク29が配管30により連結され、配管30の経
路上には移送ポンプ31が設けられている。
【0028】さらに上記脱水機19は、レシーバタンク
32と配管33で連結され、レシーバタンク32は配管
34により真空ポンプ35と連結されている。また該レ
シーバタンク32は配管36により系外の排水処理装置
(図示せず)に連結されると共に配管36より分岐した
配管37により反応液タンク3に連結されている。また
配管36の経路上には排水ポンプ38が設けられ、配管
37の経路上にはバルブ39が設けられている。
【0029】上記構成を有する石炭灰改質装置1を用い
てなる石炭灰の改質方法について詳述する。
【0030】まず、石炭灰ホッパー2から石炭灰が、ま
た反応液タンク3から事前にアルカリ溶液タンク29よ
り送られたアルカリ溶液と配管27および37を通じて
再循環されるアルカリ回収液および回収洗浄水とを用い
て濃度調整および温度調整したアルカリ溶液が、それぞ
れ配管4および5を通じて反応槽7に所定の固液比とな
るように調整して装入し、所定温度で該反応槽7に備え
られている撹拌機6により、撹拌、煮沸し、石炭灰を多
孔質結晶物に改質する(ゼオライト化)反応を行う。
【0031】ここで、本発明に用いられる原料の石炭灰
としては、特に限定されるものでなく、例えば、フライ
アッシュ、クリンカアッシュまたは石炭燃料灰などを用
いることができる。こうした石炭灰は、例えば、火力発
電などで微粉炭などを燃焼させた際に副生する石炭灰で
あり、煙道の気流中などから採取される。したがって、
採取した時点で石炭灰の粒径はかなり細かくそのまま用
いることも可能であるが、反応性(接触面積)を高める
には、通常50μm以下の粒子が98%以上、好ましく
は20μm以下の粒子が50%以上、より好ましくは1
0μm以下の粒子が40%以上となるように粉砕して用
いることが望ましい。該石炭灰が30μm以下の粒子が
30%の場合には、アルカリ水溶液との接触面積が減少
し、反応効率が低下するため結晶化率が低くなるなど好
ましくない。
【0032】また、本発明に用いられるアルカリ水溶液
としては、特に制限されるものでなく、例えば、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液を用いること
ができる。
【0033】次に、濃度調整したアルカリ水溶液の濃度
としては、特に限定されるものでないが、通常1〜4
N、好ましくは1.5〜3N、より好ましくは1.8〜
2.3Nの範囲である。該アルカリ水溶液の濃度が1N
未満の場合には、得られる多孔質結晶物の陽イオン交換
容量(CEC)が充分でなく、また4Nを越える場合に
は、得られる多孔質結晶物のCECは充分であるが、多
孔質結晶物の結晶構造がフィリップサイト構造(有効最
小径4〜5オングストローム)のものが大幅に減少し、
ハイドロキシソーダライト構造(有効最小径2〜3オン
グストローム)のものが急増するため、分子量の大きな
アンモニアイオンなどのガス吸着が困難となるため好ま
しくない。
【0034】また、温度調整したアルカリ水溶液の温度
としては、通常85〜100℃、好ましくは90〜10
0℃、より好ましくは98〜100℃の範囲である。該
温度が85℃未満の場合には、所定の反応温度に加熱す
るまでに時間を要し、また100℃を越える場合には、
圧力容器を用いて加熱する必要があり、設備が大型とな
り運転費も高く好ましくない。こうした温度調整方法と
しては、例えば、反応液タンク3にヒータを設けたり、
配管5の経路上に加熱装置を設けるなどの方法が挙げら
れる。
【0035】また本発明に用いられる石炭灰とアルカリ
水溶液との固液比としては、通常0.5〜3.0リット
ル/kg、好ましくは1.5〜2.5リットル/kg、
より好ましくは2.0〜2.2リットル/kgの範囲で
ある。該固液比が、0.5リットル/kg未満の場合に
は、アルカリ水溶液が不足しスラリー化できず、粘性を
帯びたペースト状態に混練できるだけで、十分な改質が
なされず、また3.0リットル/kgを越える場合に
は、固体濃度が低下し、撹拌による固体と液体との相対
速度が小さくなるため、接触効率が低下し、充分な反応
速度が得られず好ましくない。
【0036】また反応時の煮沸温度は、通常90〜10
0℃、好ましくは95〜100℃、より好ましくは98
〜100℃の範囲である。該温度が90℃未満の場合に
は、反応速度が大幅に低下し、反応に長時間を要し、ま
た100℃を越える場合には、大型の高圧設備を必要と
し、加熱に要するコストに見合うだけの充分な効果(結
晶化率の向上など)が得られず好ましくない。
【0037】また、本発明における撹拌時に必要とされ
る流体速度としては、反応固液比や液体の粘性などによ
り異なるが、通常0.7〜3m/sec、好ましくは
0.7〜2m/sec、より好ましくは1〜2m/se
cの範囲である。該流体速度が、0.7m/sec未満
の場合には、用いる固体濃度が大きいため撹拌による十
分な混合(固液接触)が行われず、多くの石炭灰が反応
槽7底部に沈降堆積したままの状態になるなど好ましく
なく、また3m/secを越える場合には、撹拌力の増
加に見合うだけの充分な効果(結晶化率の向上など)が
得られず好ましくない。したがって、上記流体速度とな
るように、反応槽7に備えられている撹拌機6に用いる
撹拌翼の形状、大きさもしくは数量等を選択する必要が
ある。
【0038】なお、本発明により石炭灰から改質される
多孔質結晶物は、石炭灰中に含まれる非結晶質構造を有
するものをアルカリで熱水処理することにより得られる
もので、一般に化学組成がMeO・Al2 3 ・mSi
2 ・nH2 O(MeはNa2 、K2 、Caなどのアル
カリ金属またはアルカリ土類金属で用いるアルカリ成分
により異なる。)で示される人工ゼオライトであり、そ
の結晶構造は、主にP型(フィリップサイト)である
が、アルカリ水溶液の濃度などを変えることによりH型
(ハイドロキシソーダライト)、Y型、A型などの構造
を持つものも製造することができる。
【0039】次に、上記熱水処理後の多孔質結晶物含有
スラリーは、撹拌を続けながら、該スラリーの固液比を
大きくするため新たに反応液タンク3よりアルカリ水溶
液を反応槽7に供給して調整した後に配管10を経てバ
ッファータンク9に移される。
【0040】ここで、多孔質結晶物含有スラリーの固液
比としては、通常2.5〜3.5リットル/kg、好ま
しくは2.5〜3リットル/kg、より好ましくは2.
5〜2.7リットル/kgの範囲である。該固液比が
2.5リットル/kg未満の場合には、固体濃度が高す
ぎるために、配管閉塞や脱液機12に回転真空吸引濾過
器を用いて脱液分離する場合に濾過不良を生じるなど好
ましくない。また、3.5リットル/kgを越える大過
剰のアルカリ水溶液を用いる場合には、上記トラブルは
発生せず、また回収によりリサイクルも可能であるが、
後工程での洗浄に長時間を要したり、大量使用に対応し
た装置の大型化が必要となるなどの点から好ましくな
い。
【0041】また、上記スラリーの固液比の範囲内であ
れば、該スラリーをバッファータンク9に移した後に、
さらに、反応液タンク3からアルカリ水溶液を反応槽7
に通じ、槽内部を洗浄し、続いて配管10を通してバッ
ファータンク9に供給することで、配管10内部も洗浄
でき、残留スラリーによる反応槽内壁や配管内壁などへ
の固着を防止することができ望ましいものである。
【0042】また、上記スラリーに供給するアルカリ水
溶液は、反応時に供給するものと同様の濃度および温度
に調整されたものをそのまま用いることができるが、こ
れら濃度や温度は、特に重要でなく、これらが未調整な
ものであってもよい。
【0043】上記バッファータンク9では、以後の工程
を連続化するため、反応の完了したスラリーを該スラリ
ーの固体成分が沈殿しないように、撹拌機などを用いた
撹拌しながら順次スラリーを移送すべく一時貯蔵するた
めのものである。例えば、連続処理能力が1.5t/h
rである場合、反応槽7での反応時間が5時間で完了す
るとすれば、反応槽7およびバッファータンク9の容積
は約7.5t程度あれば効率よく連続処理できるもので
ある。なお従来技術のように反応時間が長い場合に同様
の処理能力により連続処理していくには、巨大な反応槽
7およびバッファータンク9が必要となるため、設備費
や運転コストがかかるものであった。
【0044】続いて、バッファータンク9より上記スラ
リーを配管13を経て脱液機12に連続して送り、該ス
ラリーに含まれるアルカリ溶液を脱液する。このうち該
アルカリ脱液は、真空ポンプ26により吸引すること
で、配管23よりレシーバタンク23に回収し、さらに
排液ポンプ28により配管27を通じて反応液タンク3
に戻して循環使用する。
【0045】ここで、本発明に用いられる脱液機12と
しては、固液分離することができるものであれば特に制
限されるものでないが、連続的に固液分離することので
きるものが望ましく、例えば、回転真空吸引濾過器、遠
心分離機などを用いることができる。
【0046】他方、脱液機12で脱液された上記スラリ
ーの濾過ケーキは、コンベア15によって搬送し、水洗
槽16に装入する。同時に水洗槽16には配管17を通
じて多量の洗浄水を供給して撹拌洗浄を行う。
【0047】ここで、水洗槽16での撹拌洗浄する際の
濾過ケーキ(固体)と洗浄水(液体)の固液比は、通常
7〜20リットル/kg、好ましくは10〜15リット
ル/kgの範囲である。該固液比が7リットル/kg未
満では洗浄効果が不十分となり、使用用途によっては、
得られる多孔質結晶物含有固形物に含まれる残留アルカ
リによる塩害や腐食などの問題が生じるため好ましくな
い。また固液比が20リットル/kgを越える場合に
は、洗浄は充分ではあるが、水洗槽16の大型化による
設備費の増加および運転コストの増加に見合うだけの効
果が期待できないため好ましくない。なお洗浄水として
は、一般に経済性に優れた工業用水等が用いられる。た
だし、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液を
用いた場合に、洗浄水中に多量のカルシウムやカリウム
などのアルカリ金属を多く含む場合には洗浄中にナトリ
ウムとイオン交換するため、得られる多孔質結晶物のイ
オン交換機能や吸着機能が異なったものとなるため、使
用用途によっては、使用する洗浄水にも注意を要する。
【0048】次に、水洗槽16で洗浄がなされた多孔質
結晶物含有スラリーは、移送ポンプ21により配管20
を通じて脱水機19に送って脱水処理する。このうち脱
水液は、真空ポンプ35によって吸引することでレシー
バタンク32に回収し、その一部の脱水液は、バルブ3
9を開き排水ポンプ38により配管36および分岐配管
37を通じて、反応液タンク3に戻して循環使用し、残
りの大部分の脱水液は、バルブ39を閉じ配管36を通
じて系外の排液処理装置に送り処理した後に排水する。
【0049】ここで、本発明に用いられる脱水機19と
しては、固液分離することができるものであれば特に制
限されるものでないが、連続的に固液分離することので
きるものが望ましく、例えば、回転真空吸引濾過器、遠
心分離機などを用いることができる。
【0050】他方、脱水機19で脱水して得られた本発
明の改質方法に係る多孔質結晶物を含有する固形物は、
コンベア22により搬送し、用途に応じて、そのまま風
乾等により乾燥して製品とする以外にも必要な設備に送
り、イオン交換、造粒加工などを施して吸着剤や土壌改
質剤などの製品に加工することもできる。
【0051】
【実施例】以下、本発明の実施例について述べる。
【0052】実施例1 図1に示す石炭灰改質装置1を用いて本実施例における
石炭灰の改質方法により多孔質結晶物の製造を行った。
【0053】まず、ヒータ機能を備える反応液タンク3
から事前にアルカリ溶液タンク29から送られた水酸化
ナトリウム水溶液と配管27および37を通じて再循環
される水酸化ナトリウム回収液および回収工業用水とを
用いて濃度2Nおよび温度100℃に調整した水酸化ナ
トリウム水溶液を16m3 、また石炭灰ホッパー2から
50μm以下の粒子が100%のフライアッシュとが、
それぞれ配管4および5を通じて反応槽7に反応固液比
が1.5、2.2、3.0、3.7および4.9リット
ル/kgとなるようにそれぞれ別々に調整して装入し、
該反応槽7に備えられている撹拌機6により、100℃
の温度にて流体速度1m/secとして撹拌、煮沸し、
フライアッシュから化学組成が主にNaO・Al2 3
・3.5SiO2 ・4.5H2 Oで示されるP型(フィ
リップサイト)の結晶構造を持つ多孔質結晶物たる人工
ゼオライトに改質する反応を上記5種類の異なる反応固
液比のものについてそれぞれ5時間ずつ行った。
【0054】次に、上記熱水処理後の多孔質結晶物含有
スラリーは、撹拌を続けながら、配管10を通じてバッ
ファータンク9に移した。
【0055】続いて、バッファータンク9より上記スラ
リーを配管13を通じて脱液機12である回転真空吸引
濾過器に連続して送り、該スラリーに含まれるアルカリ
溶液を脱液した。
【0056】この時点で、該スラリーのうち上記反応固
液比が1.5および2.2リットル/kgのものについ
ては、固体濃度が高すぎるために、配管10、13の閉
塞や濾過不良を生じ、後工程での多孔質結晶物の精製処
理が不能となった。
【0057】そこで、上記スラリーのうち反応固液比が
1.5および2.2リットル/kgのものについては、
熱水処理後に新たに反応液タンク3よりアルカリ水溶液
を反応槽7に供給して多孔質結晶物含有スラリーの固液
比を3.0リットル/kgに調整した後に配管10を通
じてバッファータンク9に移し、続いて、バッファータ
ンク9より上記スラリーを配管13を通じて脱液機12
としての真空吸引濾過器に連続して送り、該スラリーに
含まれるアルカリ溶液を脱液した。
【0058】このうち該アルカリ脱液は、真空ポンプ2
6により吸引し、配管23を通じてレシーバタンク23
に回収し、さらに排液ポンプ28により配管27を通じ
て反応液タンク3に戻して循環使用した。
【0059】他方、脱液機12で脱液された上記スラリ
ーの濾過ケーキは、コンベア15により搬送し、水洗槽
16に装入すると共に水洗槽16には配管17を通じて
多量の工業用水を濾過ケーキ(固体)と工業用水(液
体)の固液比10.0リットル/kgとなるように供給
して撹拌洗浄を行った。
【0060】次に、洗浄がなされた多孔質結晶物含有水
溶液は、移送ポンプ21により配管20を通じて脱水機
19である真空吸引濾過器に送って連続的に脱水処理し
た。このうち脱水液は、真空ポンプ35により吸引して
レシーバタンク32に回収し、その一部の脱水液は、バ
ルブ38を開き排水ポンプ37により配管36および3
6bを通じて、反応液タンク3に戻して循環使用し、残
りの大部分の脱水液は、バルブ38を閉じ配管36およ
び36aを通じて系外の排水処理装置に送り処理した後
に排水した。
【0061】他方、脱水機19で脱水して得られた本発
明の改質方法に係る多孔質結晶物を含有する固形物は、
コンベア22により搬送し、そのまま170℃にて乾燥
させて多孔質結晶物を含有する固形物の粉末をそれぞれ
得た。
【0062】得られた5種類の多孔質結晶物を含有する
固形物の粉末について、X線回折を理学電気製、ロータ
フレックスRV−200を用いて、またアンモニウムイ
オンをインデックスイオンとして80%エタノール洗浄
を用いるショーレンベルガー法で陽イオン交換容量(C
EC)を測定し、固形物中に占める多孔質結晶物の生成
比率(結晶化率)を求めた。
【0063】図2に本実施例における各反応固液比に対
する多孔質結晶物の結晶化率を表すグラフを、また表2
にCECの測定結果を示す。
【0064】
【表2】
【0065】図2のグラフより、反応固液比が2.5リ
ットル/kg以下で熱水処理することにより、短時間で
高結晶化率が得られ、該多孔質結晶物のCECは、従来
技術による人工ゼオライトの持つ性能とほぼ同じ値であ
ることが確認された。
【0066】
【発明の効果】本発明により、従来技術に比して、反応
時間が約1/3以下にまで短縮でき、設備費および製造
コストが非常に低減され、産業廃棄物であった石炭灰の
有効資源化が可能となる。
【0067】また、本発明により得られる多孔質結晶物
たる人工ゼオライトは、優れたイオン交換機能および吸
着機能を有するため、その後、必要に応じて造粒または
カルシウム等によりイオン交換などを行うことで、ガス
吸着材、水処理材、土壌改質材および触媒など幅広い分
野での利用が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る石炭灰の改質方法に用いられる
石炭灰改質装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】 本実施例における各反応固液比に対する多孔
質結晶物の結晶化率を表すグラフを示す。
【符号の説明】
1…石炭灰改質装置、 2…石炭灰ホッパ
ー、3…反応液タンク、 4、5、1
0、13、17、20、24、26、27、30、3
3、34、36、37…配管、6…攪拌機、
7…反応槽、8、11、14、21、31
…移送ポンプ、9…バッファータンク、 12
…脱液機、15…コンベア、 16…
水洗槽、18、39…バルブ 19…脱
水機、23、32…レシーバタンク、 25、35
…真空ポンプ、28…排液ポンプ、 2
9…アルカリ溶液タンク、38…排水ポンプ。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年7月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石炭灰にアルカリ水溶液を添加し、熱水
    処理して多孔質結晶物に改質するに際して、アルカリ水
    溶液と石炭灰の反応固液比を0.5〜3.0リットル/
    kgの範囲として撹拌、熱水処理することを特徴とする
    石炭灰の改質方法。
  2. 【請求項2】 熱水処理後のスラリーの反応固液比を
    2.5リットル/kg以上に調整した後に、連続的に余
    剰のアルカリ水溶液と多孔質結晶物を分離することを特
    徴とする石炭灰の改質方法。
  3. 【請求項3】 前記アルカリ水溶液が水酸化ナトリウム
    水溶液である請求項1または2に記載の石炭灰の改質方
    法。
  4. 【請求項4】 前記アルカリ水溶液の濃度が1〜4Nで
    ある請求項1ないし3のいずれかに記載の石炭灰の改質
    方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997010051A1 (fr) * 1995-09-13 1997-03-20 The Sangyo Shinko Co., Ltd. Adsorbant et procede de traitement des gaz d'echappement
JP2003096652A (ja) * 2001-09-21 2003-04-03 Nippon Steel Chem Co Ltd 吸放湿性吸音材
JP2006176399A (ja) * 2004-11-29 2006-07-06 National Institute Of Advanced Industrial & Technology フィリップサイト型ゼオライト膜及びその製造方法
JP2009167068A (ja) * 2008-01-18 2009-07-30 Central Res Inst Of Electric Power Ind ゼオライト製造装置及び発電設備

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