JPH0632117Y2 - 高周波温熱治療装置の電極構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （イ）産業上の利用分野 この考案は、例えば生体を開腹し内部の癌組織を、直接
加熱治療するのに使用される高周波温熱治療装置の電極
構造。

（ロ）従来の技術 第５図（Ａ）及び第６図（Ａ）は、従来の高周波温熱治
療装置の電極構造を示す説明図である。

第５図（Ａ）に示す電極構造（アプリケータ）は、偏平
な下開口有底の筒体７１の内部に電極を配備し、この筒
体７１の下開口部に袋状の液収納バッグ７２を取付けて
いる。筒状本体７１内の電極には給電線７３が接続さ
れ、この給電線７３は外部へ引き出してある。また、液
収納バッグ７２には冷却液供給用の液パイプ７４を外方
へ突出し、液収納バッグ７２内に冷却液を充填するよう
になっている。この電極構造は、所謂可搬式のコンパク
トタイプであり、第５図（Ｂ）に示すように、一対の電
極構造（電極と液収納バッグとから成る一対のアプリケ
ータ）をそれぞれ生体Ａの癌組織に対応する皮膚面に対
し対向状に配置し、両電極間に高周波電界を印加して癌
細胞を加熱治療する。

また、第６図（Ａ）に示す電極構造（アプリケータ）
は、偏平な下開口有底の筒状本体８１の内部に電極（図
示せず）を配備し、この筒状本体８１の下開口部に液収
納バッグ８２を取付け、筒状本体８１の上部には取付用
アーム８３を突設している。この取付用アーム８３内に
電極と接続する給電線を内装配備すると共に、液収納バ
ッグ８２には冷却液供給の液パイプを備えている（図示
せず）。この電極構造は、所謂ガントリータイプの高周
波温熱装置体に取付けられるもので、第６図（Ｂ）に示
すように一対の支持体８４に対し回動可能に配備された
弯曲状アーム８５の両端部に備える取付体８６に、アプ
リケータの取付用アーム８３を固定している。使用に際
しては、弯曲状アーム８５を回動設定して対向する一対
のアプリケータを生体の患部皮膚面に対向接面させ、両
電極間に高周波電界を印加して、癌組織を加熱治療す
る。

（ハ）考案が解決しようとする問題点 一般に、癌等に対する高周波温熱治療は、一対の電極
（アプリケータ）を、癌組織に対応する皮膚面に対し対
向接面させ、両電極間に高周波電界を印加して癌細胞を
加熱する。ところが、癌組織によっては、例えば開腹手
術をして癌組織を臨出させ、この開腹生体内部に一方の
アプリケータを挿入して、直接癌組織に接面させ、他方
のアプリケータを癌組織に対応する皮膚面に対向して接
面させることが、加熱治療上効果的である場合がある。

ところが、このような開腹手術においては、前記第６図
（Ａ）、第６図（Ｂ）に示すガントリータイプの装置
は、大部分が固定式であり手術場における使用に適さな
い。一方、５図（Ａ）、第５図（Ｂ）に示す可搬式の電
極構造（アプリケータ）の場合であれば、一応開腹生体
内部に挿入することは可能である。しかしながら、第４
図で示すように、この可搬式タイプのアプリケータを開
腹生体内に挿入する時は、開腹による生体Ａの一部、つ
まりアプリケータの上外周部に位置する生体組織Ｂが筒
状本体（電極）７１側上面方向へ周り込む。このため、
この状態で一対のアプリケータに高周波電界を印加する
時は、生体Ａの周り込み組織Ｂに高周波電気力線（図中
矢印線）が作用し、癌細胞以外の部分を加熱することと
なり、加熱効率が悪い許かりでなく生体の周り込み組織
が火傷する等の不利があった。

この考案は、上記問題点を解消させ、例えば開腹された
生体内に挿入した場合であっても、癌組織以外の部位へ
高周波電気力線が作用せず、加熱治療の効率化と生体火
傷の発生を防止する高周波温熱治療装置の電極構造を提
供することを目的とする。

（ニ）問題点を解決するための手段及び作用 この目的を達成させるために、この考案の高周波温熱治
療装置の電極構造では、次のような構成としている。

高周波温熱治療装置の電極構造は、内部に電極を配備し
た筒状本体の下開口部に対し、袋状の液収納バッグを取
付けた電極構造であって、前記筒状本体の上部に、高周
波電気力線を阻止する高絶縁体部を配備して構成してい
る。

このような構成を有する電極構造で、筒状本体の下部は
冷却液を充填した液収納バッグにより生体皮膚面が保護
される。また、筒状本体の上部には高周波電気力線を阻
止する高絶縁体部、例えば絶縁資材により形成された絶
縁製筒体（プラスチック筒体）内にエア、或いはシリコ
ン樹脂等の誘電率の低い絶縁部材が充填されている。従
って、例えば開腹手術により開腹された生体内に、この
電極構造（電極と液収納バッグとから成るアプリケー
タ）を挿入して癌細胞に直接接面させる。そして、他方
のアプリケータをこの一方の電極に対向して、皮膚面に
接面させる。この状態において、開腹組織内に挿入した
アプリケータの上外周部に位置する開腹された生体組織
は、アプリケータ上部の高絶縁製筒体の周壁高さによ
り、周り込みが阻止される。仮に、開腹された生体組織
が、アプリケータの上部へ周り込んだとしても、この部
分は高い絶縁体部（誘電率の低い絶縁領域）に接触す
る。従って、周り込み生体組織には高周波電気力線は全
く作用せず、癌組織に対する加熱効率が向上する許かり
でなく、周り込み生体組織は加熱されず火傷する等の不
利が解消される。

（ホ）実施例 第１図は、この考案に係る高周波温熱治療装置の電極構
造の具体的な一実施例を示す一部切欠き正面図である。

高周波温熱治療装置の電極構造は、公知のように、下開
口有底の筒状本体１の内部に円板状の電極２を固定配備
し、この筒状本体１の下開口部にリング状パット１ａを
設け、袋状の液収納バッグ３を脱着可能に取付けてい
る。筒状本体１の外周には、液収納バッグ３の固定用リ
ング体４が螺着してあり、この固定用リング体４の下周
部と筒状本体１の外下周部との間にて、液収納バッグ３
の開口取付縁（肉圧部）３１を挟圧固定するように設定
してある。

この考案の特徴は、前記筒状本体１の底面、つまり上部
に筒状本体１とほぼ同径の筒状高絶縁体部５を一体に配
備した点にある。

この高絶縁体部５は、例えばプラスチック等の絶縁資材
で成形された下開口有底の絶縁筒体５１で、下開口部を
上記筒状本体１の上部に固定し、上部（底面）に給電線
５２及び冷却液循環用パイプ５３を備えている。この給
電線５２は、一端を高周波電源部（図示せず）に接続
し、他端を筒体５１の空室５４内を挿通して上記電極２
に接続している。また、パイプ５３は一端を冷却液タン
ク（図示せず）に接続し、他端を上記液収納バッグ３に
連通させて冷却液が液収納バッグ３内に充填するように
設定している。この高絶縁体部（筒体５１）５の空室５
４には、エア或いはシリコン樹脂等の誘電率の低い高絶
縁材料５５が充填されている。

また、高絶縁体部（筒体５１）５の外周部には、筒軸方
向へ昇降可能な位置決め用リング５６が嵌挿配備してあ
り、例えば開腹した生体組織（皮膚面側）に接面させる
ことで、生体組織内へ挿入した筒状本体１に対し、生体
組織が周り込むのを防止すると共に、筒状本体（液収納
バッグ３）１の生体組織内への挿入深さ調整をネジ結合
による上下動により企図する。更に、絶縁筒体５１の上
部には、角度調整用の固定アーム（治具）５７が備えて
ある。

第２図は、電極構造の他の実施例を示す斜視図である。

先の実施例では、筒状本体１の上部に対し、一定の高さ
を有する絶縁筒体（高絶縁体部５）５１を配備した例を
示したが、この実施例では高絶縁体部５は、偏平な筒状
本体１の上部に絶縁資材により成形された可撓性袋体５
８を一体に取付けている。この袋体５８には、絶縁資材
注入具５９が設けられている。この絶縁資材注入具５９
は、例えばエア注入用のゴム球５９ａであり、ゴム球５
９ａに連続するホース５９ｂを可撓性袋体５８に連通さ
せ、袋体５８内にエアを充填するように設定している。
また、袋体５８内へはエアに変えてシリコン樹脂等を注
入しても良い。この実施例では、先の実施例に示す高絶
縁体部（筒体５１）５に比し高さが低いため、コンパク
トで開腹生体内への挿入が一層便宜である。また、開腹
生体内への挿入状態において、電極構造（アプリケー
タ）に対する開腹生体組織の周り込み動作は、多少生じ
るが、高絶縁体部５に接触する周り込み生体組織には高
周波電気力線は全く作用せず、生体組織が火傷する等の
不利はない。

第３図は、電極構造の更に他の実施例を示す正面図であ
る。

先の実施例では、いずれも筒状本体１に対し高絶縁体部
５を一体に取付けた例を示したが、この実施例では高絶
縁体部（エア充填袋体）５の下部に、筒状本体１に対し
脱着可能な例えば接着テープ、係合フック等の接着手段
６０を備え、筒状本体１に対し高絶縁体部５を分離可能
としている。この実施例の場合、不使用時の収納性がコ
ンパクトであると共に、開腹生体組織内への挿入は勿
論、通常の皮膚面に対し接面させるアプリケータとして
も使用便宜である。

このような構成を有する高周波温熱治療装置の電極構造
を使用して、例えば開腹手段により開腹された生体組織
内の癌細胞を加熱治療する場合は、まず癌細胞に対応す
る背中側の皮膚面に通常のアプリケータを接面配置す
る。そして、生体の開腹部に対し固定アーム５７を操作
して筒状本体（液収納バッグ３側）１を挿入し、液収納
バッグ３を癌細胞に直接接面させる。この状態で、位置
決めリング体５６を昇降させ開腹生体表面に接面させ
る。これにより、筒状本体１の上部に位置する高絶縁体
部５の下方一部が、開腹生体内部に進入し、アプリケー
タの上部に対応する生体組織が高絶縁体部５と位置決め
リング体５６とにより周り込み動作が阻止される。ここ
で、両アプリケータの電極３に、高周波電圧を印加す
る。この時、高周波電気力線は、両電極３間の癌細胞に
のみ集中的に作用して加熱する。従って、従来のよう
に、アプリケータの上部に対する開腹生体組織の周り込
み動作がなく、この周り込み生体組織に電気力線が作用
しないため、高効率な加熱効果が得られる許かりでな
く、火傷する等の不利が解消される。また、アプリケー
タに対する生体組織の周り込み動作がないため、体液等
の侵入による感電等の虞れが全くない。

（ヘ）考案の効果 この考案では、以上のように、電極を内蔵し下開口部に
液収納バッグを取付た筒状本体の上部に、高周波電気力
線を阻止する高絶縁体部を配備することとしたから、例
えば開腹手術による開腹生体内部に電極構造を挿入し、
癌細胞に直接、接面させた場合であっても、開腹生体組
織は電極構造上部の高絶縁体部に接触する。従って、高
絶縁体部に接触する生体組織には、高周波電気力線が作
用せず、電気力線は癌細胞に集中して作用することとな
り、高効率な加熱が達成させる許かりでなく、火傷等の
不利が解消される等、考案目的を達成した優れた効果を
有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、実施例高周波温熱治療装置の電極構造を示す
一部切欠き正面図、第２図は、高周波温熱治療装置の電
極構造の他の実施例を示す斜視図、第３図は、高周波温
熱治療装置の電極構造を示す更に他の実施例を示す正面
図、第４図は、従来の電極構造により加熱治療する状態
を示す説明図、第５図（Ａ）は、従来の可搬形電極構造
を示す斜視図、第５図（Ｂ）は、可搬形電極構造で加熱
治療する状態を示す正面図、第６図（Ａ）は、従来のガ
ントリー装置用電極構造を示す正面図、第６図（Ｂ）
は、ガントリー装置用電極にて加熱治療する状態を示す
正面図である。 １：筒状本体、２：電極、 ３：液収納バッグ、５：高絶縁体部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】内部に電極を配備した筒状本体の下開口部
   に対し、袋状の液収納バッグを取付けた電極構造におい
   て、 前記筒状本体の上部に、高周波電気力線を阻止する高絶
   縁体部を配備したことを特徴とする高周波温熱治療装置
   の電極構造。