JPH06319836A - アイアンタイプのゴルフクラブヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 アイアンタイプのゴルフクラブヘッドにおい
て、ゴルフボールを打ったときに発生する振動の減衰率
が高く、かつヘッドのバランスの調節が容易で、ゴルフ
ボールを打ったときの音響を改善する。 【構成】 打撃壁１０の中空側表面に、中空部分２の一
部を占める減衰特性を有する粘弾性樹脂の薄層４を被覆
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、アイアンタイプのゴル
フクラブヘッドに関するものであり、特に中空構造のア
イアンタイプのゴルフクラブヘッドに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】アイアンタイプのゴルフクラブヘッドに
は中実構造のものと中空構造のものが一般に知られてい
る。ヘッドが中空構造のアイアンタイプのゴルフクラブ
については、本出願人のフランス国特許出願ＦＲ−Ａ−
第２６５４６４１号に記載されている。かかるヘッドの
中空部分は、ゴルフボールを打つためのフェースを有す
る打撃壁、後部壁及び打撃壁の周囲と後部壁の周囲をつ
なぐ側面壁により一体的に形成されている。このように
ヘッドを中空構造とすることにより、各壁の質量分布を
任意にとることができるのでヘッドのバランスを容易に
調節することができると共に、中空部分に発泡プラスチ
ックのフォームを充填すればゴルフボールを打ったとき
の音響を改善することができるというヘッドが中実構造
のアイアンタイプのゴルフクラブにはない利点がある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】アイアンタイプのゴル
フクラブでゴルフボールを打つと、そのゴルフクラブに
は振動数１ＫＨｚ〜３０ＫＨｚの間の振動が生じる。こ
の振動はゴルファーのプレイに悪影響を及ぼすので、即
座に減衰させることが望ましい。ヘッドが中実構造のア
イアンタイプのゴルフクラブにおいてはかかる振動の減
衰率が高いので特に問題はないが、ヘッドが中空構造の
アイアンタイプのゴルフクラブにおいてはかかる振動の
減衰率が低いので問題であった。しかし、ヘッドが中実
構造のアイアンタイプのゴルフクラブには上述したヘッ
ドのバランスの調節の容易化やゴルフボールを打ったと
きの音響の改善を図ることができないという欠点があっ
た。本発明は上述した事情から成されたものであり、本
発明の目的は、ゴルフボールを打ったときに発生する振
動の減衰率が高く、かつヘッドのバランスの調節が容易
で、ゴルフボールを打ったときの音響を改善することが
できる中空構造のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、全周にわたっ
て他の壁（１１，１２，１３）に結合されている打撃壁
（１０）を含む連続壁（１０，１１，１２，１３）によ
って画される中空部分（２）を有する中空金属製の本体
（１）から成るアイアンタイプのゴルフクラブヘッドに
関するものであり、本発明の上記目的は、前記打撃壁
（１０）の中空側表面（１００）を前記中空部分（２）
の一部を占める減衰特性を有する粘弾性樹脂の薄層
（４）で被覆することによって達成され、さらに、下記
のいずれかを具備することによって達成される。即ち、
前記粘弾性樹脂の薄層（４）の厚さを１ｍｍ〜８ｍｍで
あって、密度を１ｇ／ｃｍ^３〜２ｇ／ｃｍ^３とするこ
と、前記粘弾性樹脂の薄層（４）の体積を、前記中空部
分（２）の体積の５０％以下とすること、前記中空部分
（２）のうち前記粘弾性樹脂の薄層（４）が占める部分
以外の部分を、密度１ｇ／ｃｍ^３未満の発泡プラスチッ
クのフォームで充填すること、前記粘弾性樹脂の薄層
（４）の縁部（４０）を少なくとも部分的に、前記打撃
壁（１０）の中空側表面（１００）の近傍に設けられた
連続的もしくは非連続的な溝（２０）の中に収納するこ
と、前記粘弾性樹脂を、反応射出成形法により低圧また
は重力を用いて成形可能なものとすること、前記打撃壁
（１０）及び／または後部壁（１２）に、前記中空部分
（２）に突出するリブ（１０１，１２１）を備えるこ
と。

【０００５】

【作用】本発明にあっては、打撃壁と直接接触するよう
に粘弾性樹脂の薄層が配設されているので、かかる薄層
は打撃壁の振動に追従し、せん断応力を受ける。粘弾性
樹脂の薄層のせん断弾性係数は打撃壁より小さく、かか
る薄層の変形は打撃壁より大きいので、振動の振幅を散
逸させることができる。

【０００６】

【実施例】図１は本発明のアイアンタイプのゴルフクラ
ブヘッドの一例を示す外観斜視図であり、図２〜図４は
それぞれヘッドの内部構造を示すＡ−Ａ′断面図であ
る。中空構造の本体１は、ゴルフボールを打つためのフ
ェースを有する打撃壁１０，後部壁１２及び打撃壁１０
の周囲と後部壁１２の周囲をつなぐ側面壁（この例では
ヘッドのソールを構成する壁１１及びヘッドのトウを構
成する壁１３）により一体的に形成されている。打撃壁
１０は、単独でゴルフボールを打ったときの衝撃に耐え
得る強度が確保されるような厚みを持っており、鋼材製
の打撃壁の場合の厚さは約２．５ｍｍ〜４ｍｍとなって
いる。また、ヘッドのヒールはネック部３と一体となっ
ており、このネック部３と図示していないシャフトが連
結されている。上述した本体１を構成する連続した各壁
１０〜１３の厚さは任意とすることができ、各壁１０〜
１３の質量分布を所望のものとすることができる。一般
に本体１は、鋼、青銅、チタン、アルミニウム、銅ベリ
リウム又はその他の合金により製作されている。

【０００７】打撃壁１０の中空側の面には、振動数１Ｋ
Ｈｚ〜３０ＫＨｚの間の振動に対し常温で優れた減衰特
性を有する粘弾性樹脂の薄層４が被覆されている。この
粘弾性樹脂の薄層４の厚みｅは１ｍｍ〜８ｍｍ、密度は
１ｇ／ｃｍ^３〜２ｇ／ｃｍ^３、硬度は４０ショアＤ以下
のもの、例えばＰＵ（ポリウレタン）系のエラストマ樹
脂が用いられる。従って、打撃壁１０に及ぶ質量は、側
面壁１１，１３、後部壁１２に分布する利用可能な質量
との関係において無視できるものである。粘弾性樹脂の
薄層４の体積は、ヘッドの中空部分２の体積の５０％以
下、好ましくは２５％〜３５％となっている。ヘッドの
中空部分２のうち粘弾性樹脂の薄層４が占める部分以外
の部分には、図２に示す例では密度が１ｇ／ｃｍ^３未満
の発泡プラスチックのフォームが充填されている。この
発泡プラスチックのフォームは粘弾性樹脂の薄層４と密
接して粘弾性樹脂の収縮により生じる打撃壁１０との間
隙を埋め、薄層４と打撃壁１０の密着度を高めると共に
ヘッドのバランスの調整をする役割やゴルフボールを打
ったときの音響を改善する役割のみならず、粘弾性樹脂
の薄層４のせん断応力を高める補強材としての役割をな
す。また、図３に示す例では後部壁１２に孔が設けられ
ている。この孔を設けることにより、ヘッドのバランス
をさらに容易に調節することが可能となる。また、図４
に示す例では粘弾性樹脂の薄層４の縁部４０を収納する
ための溝２０が打撃壁１０の中空側表面の近傍に設けら
れている。この溝２０は粘弾性樹脂の薄層４の縁部４０
を全周にわたって、あるいは部分的に収納できるような
連続的もしくは非連続的に設けられている。この溝２０
は粘弾性樹脂の薄層４の保持手段としての役割をなす。
粘弾性樹脂の薄層４が収縮して溝２０と間隙が生じたと
きは、同図の拡大図に示すようにその間隙には発泡プラ
スチックのフォームがまわり込む。

【０００８】図５及び図６は、本発明のアイアンタイプ
のゴルフクラブヘッドの製造方法の一例を説明するため
の分解斜視図及びＣ−Ｃ′断面図である。第１段階で
は、打撃壁１０で成る第１の要素と、ネック部３と一体
化された側面壁１１，１３及び後部壁１２から成る第２
の要素５とを例えば鋳造により鋼材で別々に製造する。
この鋳造の際に、側面壁１１，１３及び後部壁１２と一
体化させた形で中空側にウエイト６，７を製造すること
も可能である。これらのウエイト６，７はヘッドのトウ
側及びヒール側に間隔をあけて配設されている。このよ
うなウエイト６，７の配置により、ゴルファーがこのゴ
ルフクラブをスウィングしたときの側面方向の慣性モー
メントを高めることが可能となるので、スウィングを滑
らかに行うことができると共に、スウィングが偏心して
もその許容誤差を大きくとることができる。なお、ウエ
イトの配置は本発明においては任意とすることができ
る。

【０００９】第２段階では、第１の要素（打撃壁）１０
を第２の要素５の周縁５０に密接させて溶接する。ウエ
イト６，７は打撃壁１０の中空側表面１００から一定距
離ｅ１だけ離れており、ウエイト６，７とこの面１００
の間に形成される空間は、粘弾性樹脂の薄層４の保持手
段として用いられる溝２０の役割をなす。

【００１０】第３段階では、膨張せずにその場で硬化反
応する２成分から成る粘弾性樹脂を、反応射出成形法
（ＲＩＭ）により低圧又は重力を用いて後部壁１２に設
けられたオリフィス１２０から中空部分２に注入する。
粘弾性樹脂は反応前においては低粘度の液状を呈してい
るので、注入された粘弾性樹脂は打撃壁１０の中空側表
面１００上に自然に広がり、ほぼ一定の厚みの層を形成
する。なお、粘弾性樹脂の注入中及び硬化中において
は、ヘッドはそのまま水平に維持する。さらに、ヘッド
を所定の角度で傾けた状態で粘弾性樹脂を注入・硬化す
ることにより、ヘッドの所定の部分、例えばトウ又はヒ
ールにおける粘弾性樹脂の薄層の厚みを厚くし、振動の
減衰特性を向上させることができる。

【００１１】また、粘弾性樹脂として熱可塑性樹脂を用
いても良い。この場合、溶融された熱可塑性樹脂をオリ
フィス１２０から打撃壁１０の中空側表面１００上に射
出し、冷却硬化するようにしても良い。なお、上述した
粘弾性樹脂の薄層は振動を減衰させる特性を有してお
り、打撃壁１０を補強する特性は有していない。

【００１２】図７及び図８は、本発明のアイアンタイプ
のゴルフクラブヘッドの製造方法の別の一例を説明する
ための分解斜視図及び断面図である。第１段階では、後
部壁１２で成る第１の要素と、ネック部３と一体化され
た側面壁１１，１３及び打撃壁１０から成る第２の要素
８とを例えば鋳造により鋼材で別々に製造する。この鋳
造の際に、側面壁１１，１３及び打撃壁１０と一体化さ
せた形で中空側にウエイト９を製造することも可能であ
る。このウエイト９はヘッドのトウ側に配設されてい
る。なお、ウエイトの配置は本発明においては任意とす
ることができる。第２段階では、第１の要素（後部壁）
１２を第２の要素８の周縁８０に密接させて溶接する。
第３段階では、上述した粘弾性樹脂を同様の方法により
トウを構成する壁１３に設けられたオリフィス１３０か
ら中空部分２に注入あるいは射出する。そして、粘弾性
樹脂が液状であるうちに打撃壁１０が下方を向くように
ヘッドを回転させて水平に維持し、粘弾性樹脂を硬化さ
せる。

【００１３】なお、上述した以外の本発明のアイアンタ
イプのゴルフクラブヘッドの製造方法も可能である。例
えばネック部３にヘッドの中空部分２に通じるオリフィ
スを設けて上述した方法により粘弾性樹脂を注入或いは
射出する。この場合、オリフィスからヘッドの中空部分
２までに注入用ノズルあるいは射出用ノズルを導入する
ようにしても良い。

【００１４】以上の各方法により粘弾性樹脂の薄層４を
形成した後、発泡プラスチックのフォーム、例えばポリ
ウレタンフォームをオリフィスからヘッドの中空部分２
に射出して充填する。この発泡プラスチックのフォーム
は、ゴルフボールを打ったときの音響を改善し、粘弾性
樹脂の薄層４の打撃壁１０に対する維持を補完し、補強
材として役立つ。また、シャフトやグリップを取付けた
後のクラブのバランス調整に役立つ。そして、オリフィ
スをネジ，クリップ，接着等による栓をして塞ぐ。

【００１５】図９は本発明のアイアンタイプのゴルフク
ラブヘッドの別の一例の内部構造を示す断面図である。
このように打撃壁１０の中空側表面１００に中空側に突
出するリブ１０１を設けることにより、打撃壁１０のせ
ん断応力を高め、振動の減衰特性を向上させることがで
きる。さらに、リブ１０１による打撃壁１０の中空側表
面１００の表面積の増加により粘弾性樹脂の薄層４との
接着強度を高めることができるので、グルフクラブの疲
労による粘弾性樹脂の薄層４と中空側表面１００との剥
離を高い確率で回避することができる。図１０はゴルフ
ボールを打った後の振動現象による打撃壁１０の変形状
態を示す断面図である。フェイス平面ｐに対する打撃壁
１０の中空側への沈み込みの際に、粘弾性樹脂の薄層４
の中空側の面４１に生じる力ｆ１，ｆ２は、粘弾性樹脂
の薄層４の打撃壁側の面４２に生じる力ｆ１′，ｆ２′
に対抗するので、粘弾性樹脂の薄層４の打撃壁１０に対
するせん断効果を生じさせる。

【００１６】図１１及び図１２は本発明のアイアンタイ
プのゴルフクラブヘッドのさらに別の一例を示す断面図
及びＢ−Ｂ′断面図である。このように後部壁１２の中
空側の面に中空側に突出し、かつ突出端が粘弾性樹脂の
薄層４内に突入したリブ１２１を設けても良い。リブ１
２１は、好ましくはゴルフボールを打ったときの粘弾性
樹脂の薄層４の変形移動幅が最大である打撃壁１０の中
央領域内に配置され、リブ１２１に沿った粘弾性樹脂の
薄層４の中空側の面に補足的なせん断応力を生じさせ、
ヘッドの減衰特性を向上させている。

【００１７】なお、上述したリブ１０１，１２１同士を
連結するようにしても良い。また、リブの構造は特に限
定されず、例えばハニカム構造としても良い。

【００１８】

【発明の効果】以上のように本発明のアイアンタイプの
ゴルフクラブヘッドによれば、打撃壁の中空側表面に減
衰特性を有する粘弾性樹脂の薄層を被覆するようにして
いるので、ゴルフボールを打ったときに発生する振動を
素早く減衰させることができると共に、ゴルフボールを
打ったときの音響を改善することができ、ゴルファーの
プレイに好影響を及ぼす。加えて、ヘッドの慣性モーメ
ントを増加させることができるので、ゴルファーのスウ
ィングをより滑らかにすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の一例を示す外観斜視図である。

【図２】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の内部構造を示す第１の断面図である。

【図３】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の内部構造を示す第２の断面図である。

【図４】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の内部構造を示す第３の断面図である。

【図５】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の製造方法の一例を説明するための分解斜視図である。

【図６】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の製造方法の一例を説明するための断面図である。

【図７】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の製造方法の別の一例を説明するための分解斜視図図で
ある。

【図８】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の製造方法の別の一例を説明するための断面図である。

【図９】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド
の別の一例の内部構造を示す断面図である。

【図１０】図９に示すヘッドの主要部の変形状態を示す
断面図である。

【図１１】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッ
ドのさらに別の一例の内部構造を示す第１の断面図であ
る。

【図１２】本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッ
ドのさらに別の一例の内部構造を示す第２の断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 本体 ２ 中空部分 ３ ネック部 ４ 粘弾性樹脂の薄層 ６，７，９ ウエイト １０ 打撃壁 １１，１３ 側面壁 １２ 後部壁 ２０ 溝 １２０，１３０ オリフィス １０１，１２１ リブ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジャン−マルク ギボー フランス国 アヌシイ 74000 シュマン デ クローシュ 23

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 全周にわたって他の壁（１１，１２，１
   ３）に結合されている打撃壁（１０）を含む連続壁（１
   ０，１１，１２，１３）によって画される中空部分
   （２）を有する中空金属製の本体（１）から成るアイア
   ンタイプのゴルフクラブヘッドにおいて、前記打撃壁
   （１０）の中空側表面（１００）が前記中空部分（２）
   の一部を占める減衰特性を有する粘弾性樹脂の薄層
   （４）で被覆されていることを特徴とするアイアンタイ
   プのゴルフクラブヘッド。
2. 【請求項２】 前記粘弾性樹脂の薄層（４）の厚さが１
   ｍｍ〜８ｍｍであって、密度が１ｇ／ｃｍ^３〜２ｇ／ｃ
   ｍ^３である請求項１に記載のアイアンタイプのゴルフク
   ラブヘッド。
3. 【請求項３】 前記粘弾性樹脂の薄層（４）の体積が、
   前記中空部分（２）の体積の５０％以下である請求項１
   または２に記載のアイアンタイプのゴルフクラブヘッ
   ド。
4. 【請求項４】 前記中空部分（２）のうち前記粘弾性樹
   脂の薄層（４）が占める部分以外の部分が、密度１ｇ／
   ｃｍ^３未満の発泡プラスチックのフォームで充填されて
   いる請求項１、２または３に記載のアイアンタイプのゴ
   ルフクラブヘッド。
5. 【請求項５】 前記粘弾性樹脂の薄層（４）の縁部（４
   ０）が少なくとも部分的に、前記打撃壁（１０）の中空
   側表面（１００）の近傍に設けられた連続的もしくは非
   連続的な溝（２０）の中に収納されている請求項１、
   ２、３または４に記載のアイアンタイプのゴルフクラブ
   ヘッド。
6. 【請求項６】 前記粘弾性樹脂が、反応射出成形法によ
   り低圧または重力を用いて成形可能なものである請求項
   １、２、３、４または５に記載のアイアンタイプのゴル
   フクラブヘッド。
7. 【請求項７】 前記打撃壁（１０）及び／または後部壁
   （１２）が、前記中空部分（２）に突出するリブ（１０
   １，１２１）を有している請求項１、２、３、４、５ま
   たは６に記載のアイアンタイプのゴルフクラブヘッド。