JPH0631894U - 水処理用濾過材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 抗菌性ゼオライトの抗菌作用を効率良く発揮
させて一次側表面のヌメリの発生を長期間抑制できるよ
うにした水処理用濾過材を提供する。 【構成】 水処理用の濾過材本体１の一次側の表面に、
多孔質セルロースジアセテートの被膜ａで覆われた抗菌
性ゼオライトｂより成る抗菌層２を形成した水処理用濾
過材である。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、水処理用のカートリッジフィルターやバッグ状フィルター等の水処 理用濾過材に関し、さらに詳しくは抗菌作用を有する水処理用濾過材に関するも のである。

【０００２】

【従来の技術】

水処理用濾過材は、工業用水の濾過をはじめ、特に超純水の使用分野、研究所 、微生物除去等々、多くの用途に供されている。 ところで、一般に、水処理用濾過材においては、一次側の表面に付着した細菌 類の増殖によるヌメリが発生しやすく、このヌメリが発生すると、濾過材による 圧力損失の増大、堆積細菌類の二次側への流出といった問題を惹起することにな る。

【０００３】 このため、近年では、抗菌作用をもつ水処理用濾過材が提案され、開発されて いる。例えば、特開平２−２１９１６号公報には、抗菌性ゼオライトを含んだ合 成繊維で造られた濾過材が提案されている。しかしながら、この従来例において は、抗菌性ゼオライトの混入された合成樹脂を繊維の形状に成形するためには、 合成樹脂に対する抗菌性ゼオライトの含有比率をある程度抑えなければならず、 しかも、ブレンドした抗菌性ゼオライトが合成樹脂成分によって包み込まれて、 合成樹脂による遮蔽効果のために抗菌性ゼオライトのイオン化が抑えられるので 、繊維の表面に存在する抗菌性ゼオライトのみが機能するだけとなり、抗菌性ゼ オライト本来の抗菌性能が著しく低下するといった本質的な性能上の問題点があ った。

【０００４】 抗菌作用をもつ水処理用濾過材としてのさらに大きな問題点は、上記の合成繊 維を円筒状に編んでカートリッジフィルターを作ったり、布状に編・織成してバ ッグ状フィルターを作ったりしているため、これらの水処理用濾過材の一次側の 表面だけでなく、肉厚内部や二次側表面にも抗菌性ゼオライトが分散して存在す ることになり、濾過材全体に混在する抗菌性ゼオライトの量の割に、実際に最も 抗菌作用を発揮させたい個所、つまり、濾過すべき水と最初に接触してヌメリが 発生する濾過材一次側の表面における抗菌性ゼオライトの量が極端に小さいこと である。 これらの結果として、抗菌作用が認められるとは言え、その作用はかなり弱く て、水処理用濾過材の一次側表面のヌメリが早期にあらわれ、濾過材の使用期間 をさほど延長することができなかったのである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、このような現状の問題点を解決し、抗菌性ゼオライトの抗菌作用を 効率良く発揮させて一次側表面のヌメリの発生を長期間抑制し得るようにした水 処理用濾過材を提供しようとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記の目的を達成するために、本考案では、水処理用の濾過材本体の一次側の 表面に、多孔質セルロースジアセテートの被膜で覆われた抗菌性ゼオライトより 成る抗菌層を形成している。

【０００７】 尚、濾過材本体としては、既存のカートリッジフィルターやバッグ状フィルタ ーであってもよく、平板状に形成されたものであってもよい。濾過材本体の一次 側の表面に、多孔質セルロースジアセテートの被膜で覆われた抗菌性ゼオライト より成る抗菌層を形成する具体的な手段としては、大別して、セルロースジアセ テートとその溶剤（例えば、エチレングリコールモノフェニールエーテル、セロ ソルブ、セロソルブアセテート、ブチセロソルブ、ポリエチレングリコールジア セテート、ブチロラクトン、ジプロピオネート、ジブチレート、ジメトキシエチ ルフタレート、トリアセチン、ブチレングリコールジアセテート、メチルエチル ケトン、トリエチルサイトレートのうち１種類又は２種類以上を配合したものが 使用される。）と抗菌性ゼオライト（粒径１μ程度の粉末）とによって、セルロ ースジアセテートと抗菌性ゼオライトとの比率が１：0.3 以上１：20以下に調整 されたコロイド状液を形成し、このコロイド状液を濾過材本体（抗菌作用を有し ていない市販の水処理用濾過材をそのまま使用できる。）の一次側の表面に吹き 付けて層状に固着させる手段と、前記コロイド状液を予め布状に形成された繊維 に噴霧又は塗布或いは印捺して形成した抗菌性繊維体や、前記コロイド状液を噴 霧又は塗布或いは印捺した後、布状に形成した抗菌性繊維体を、濾過材本体の一 次側の表面に添設する手段の２手段を採用できる。これらのいずれの手段を採用 した場合にも、抗菌層自体が濾過抵抗（濾過材本体の圧力損失の原因）とならな いようにすることが望ましい。布状に形成する繊維としては、例えば、レーヨン 、コットン、セルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル 等を任意に採用できるが、親水性の優れたセルロースジアセテートトウを用いる のが望ましい。

【０００８】

【作用】

上記の構成によれば、実際に最も抗菌作用を発揮させたい個所である濾過材一 次側の表面に、多孔質セルロースジアセテートの被膜で覆われた抗菌性ゼオライ トより成る抗菌層を形成するため、抗菌性ゼオライトによる抗菌作用が、集中的 に効率良く行われることになる。

【０００９】 しかも、抗菌性ゼオライトの表面を覆うセルロースジアセテートの被膜が多孔 質で、水の出入りが容易であるので、抗菌性ゼオライトのイオン化が有効に行わ れ、また、多孔質セルロースジアセテートの被膜はスライムや藻等に対する防汚 性に優れているので、抗菌性ゼオライトが持つ吸着性に起因する殺菌の残骸付着 が抑制され、抗菌作用が効率良く行われることになる。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 実施例１ 図１は本考案に係る水処理用濾過材を示す。図において、１は濾過材本体、２ は濾過材本体１の一次側の表面に形成された抗菌層、３は芯体である。上記の水 処理用濾過材は、セルロースジアセテート２重量％をトリアセチン９８重量％に 混合した溶液に抗菌性ゼオライト（粒径１μ程度の粉末）として、ＡＫ−８０Ｎ （株式会社シナネンゼオミック製品）を２０重量％混合してコロイド状液を形成 し、このコロイド状液をアセテートトウ（単糸デニール４、トータルデニール４ 万）に２５重量％塗布して、図２および図３に示すように、多孔質セルロースジ アセテートの被膜ａで覆われた抗菌性ゼオライトｂがアセテート繊維ｃの表面に 前記被膜ａを介して固着された抗菌性繊維（抗菌性ゼオライトｂが固着されたア セテートトウ）を形成する一方、濾過材本体として、公知のカートリッジフィル ター（外径６５mm、長さ２５０mm、１００ミクロン：株式会社キュノ製品）を用 意し、その外周に前記抗菌性繊維を３周巻き付けて、前記抗菌層２を形成したも のである。

【００１１】 得られた水処理用濾過材を噴霧用水の水処理ラインの濾過器に使用して、表面 のヌメリ発生に起因する圧力損失を測定したところ、表１に示す結果を得た。

【００１２】

【表１】

【００１３】 以上の結果から、無加工の濾過材では、６０日経過した時点でヌメリ発生に伴 う濾過器の圧力損失が大きくなり、濾過器として使用できなくなるのに対して、 本考案の濾過材では、表面のヌメリ発生が長期間抑制され、無加工の濾過材に比 べて顕著な使用耐用性が得られることがわかる。

【００１４】 実施例２ セルロースジアセテート１重量％をトリアセチン９９重量％に混合した溶液に 抗菌性ゼオライト（粒径１μ程度の粉末）として、Ｙ−２７０（株式会社シナネ ンゼオミック製品）を５重量％混合してコロイド状液を形成し、このコロイド状 液を、濾過材本体として用意した公知のカートリッジフィルター（外径６５mm、 長さ２５０mm、１００ミクロン：株式会社キュノ製品）の外周面に５ｇ噴霧して 自然乾燥することにより、図４に示すように、多孔質セルロースジアセテートの 被膜ａで覆われた抗菌性ゼオライトｂを前記被膜ａを介して濾過材本体１の外周 面に直接層状に固着して、図１で示した水処理用濾過材と同じように、濾過材本 体１の一次側の表面に、抗菌層２が形成された水処理用濾過材とした。

【００１５】 得られた水処理用濾過材を噴霧用水の水処理ラインの濾過器に使用して、表面 のヌメリ発生に起因する圧力損失を測定したところ、表２に示す結果を得た。

【００１６】

【表２】

【００１７】 以上の結果から、本考案の濾過材では、表面のヌメリ発生が長期間抑制され、 無加工の濾過材に比べて顕著な使用耐用性が得られることがわかる。

【００１８】 尚、本考案による濾過材本体１としては、図１のようなカートリッジフィルタ ーの他、図５に示すようなバッグ状フィルターであってもよく、図６に示すよう に、平板状に形成されたものであってもよい。濾過材本体１がバッグ状フィルタ ーである場合、内側が一次側となるので、内面に抗菌層２を形成することになる 。また、平板状の濾過材本体１である場合には、その片面に抗菌層２を形成する ことになる。これらいずれの場合においても、濾過材本体１の一次側の表面に、 多孔質セルロースジアセテートの被膜ａで覆われた抗菌性ゼオライトｂより成る 抗菌層２を形成する具体的な手段としては、先に述べたとおり、コロイド状液を 濾過材本体１の一次側の表面に直接吹き付けて層状に固着させる手段と、コロイ ド状液を予め布状に形成された繊維に噴霧又は塗布或いは印捺して形成した抗菌 性繊維体や、前記コロイド状液を噴霧又は塗布或いは印捺した後、布状に形成し た抗菌性繊維体を、濾過材本体１の一次側の表面に添設する手段の２手段を採用 できる。

【００１９】

【考案の効果】

以上のように、本考案によれば、実際に最も抗菌作用を発揮させたい個所であ る濾過材一次側の表面に、多孔質セルロースジアセテートの被膜で覆われた抗菌 性ゼオライトより成る抗菌層を形成するため、抗菌性ゼオライトによる抗菌作用 が、集中的に効率良く行われることになる。しかも、抗菌性ゼオライトの表面を 覆うセルロースジアセテートの被膜が多孔質で、水の出入りが容易であるので、 抗菌性ゼオライトのイオン化が有効に行われ、また、多孔質セルロースジアセテ ートの被膜はスライムや藻等に対する防汚性に優れているので、抗菌性ゼオライ トが持つ吸着性に起因する殺菌の残骸付着が抑制され、抗菌作用が効率良く行わ れることになる。 これらの結果として、濾過材の一次側表面のヌメリの発生を長期間抑制でき、 濾過材の使用期間を延長し得るに至ったのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す水処理用濾過材の斜視
図である。

【図２】抗菌層の構成を説明する要部の拡大図である。

【図３】図３におけるＡ−Ａ断面拡大図である。

【図４】抗菌層の構成を説明する要部の一部拡大断面図
である。

【図５】水処理用濾過材の変形例を示す一部を破断した
斜視図である。

【図６】水処理用濾過材の変形例を示す一部を破断した
斜視図である。

【符号の説明】

１…濾過材本体、 ２…抗菌層、 ａ…多孔質セルロースジアセテートの被膜、 ｂ…抗菌性ゼオライト。

フロントページの続き (71)出願人 000236160 株式会社テクノ菱和 東京都港区南青山２丁目３番６号 (72)考案者 森岡 俊行 大阪府堺市南島町１丁43番地の１ 大阪フ イルター工業株式会社内 (72)考案者 柳瀬 敏郎 大阪市都島区都島北通１丁目２番16号 中 村物産株式会社内 (72)考案者 戸谷 剛 名古屋市中村区名駅４丁目７番23号 豊通 オイルセンター株式会社内 (72)考案者 中野 康彦 大阪市北区天満２丁目７番３号 株式会社 テクノ菱和大阪支店内

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 水処理用の濾過材本体の一次側の表面
   に、多孔質セルロースジアセテートの被膜で覆われた抗
   菌性ゼオライトより成る抗菌層が形成されて成る水処理
   用濾過材。