JPH06288901A - 減衰全反射型薄膜評価装置 - Google Patents

減衰全反射型薄膜評価装置

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JPH06288901A
JPH06288901A JP7470193A JP7470193A JPH06288901A JP H06288901 A JPH06288901 A JP H06288901A JP 7470193 A JP7470193 A JP 7470193A JP 7470193 A JP7470193 A JP 7470193A JP H06288901 A JPH06288901 A JP H06288901A
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洋 岩崎
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光結合用プリズム内の光共振器の形成を回避
してこれによるATRスペクトルに不安定領域が生じる
ことを回避する。 【構成】 光結合用プリズム1を介して被評価薄膜11
に測定用光ビーム2を照射して、減衰全反射による分析
評価を行う減衰全反射型薄膜評価装置において、プリズ
ム1を、被評価薄膜11が配置される面を底面とするそ
の両側の底角α及びβを互いに異なる角度に選定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜の屈折率、減衰係
数(光吸収)、膜厚等を評価測定する減衰全反射型薄膜
評価装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】減衰全反射型薄膜評価方法は、例えば日
本物理学会誌 Vol.43,No.11,1988,第863 〜868 頁に開
示されているように、減衰全反射(以下ATRという)
の現象を利用して薄膜の光学定数評価を行うものであ
る。
【0003】このATRによる評価は、同じ目的で広く
用いられている偏光解析と比較すると、偏光解析が透明
薄膜や吸収バルク材に適性があるのに対し、ATRは被
評価薄膜が金属のように光吸収をもつ薄膜である場合に
好適である。
【0004】このATR評価は、屈折率の高い媒質Aか
ら屈折率の小さい媒質Bに入射する光が、或る入射角、
すなわち両媒質の屈折率によって決まる全反射臨界角を
越えるときに生じる全反射の現象を利用するものであ
る。このとき、両媒質A及びBの界面に光を吸収する物
質の薄膜、例えば金属薄膜が存在すると、媒質Bから滲
み出した光がこの薄膜で吸収されて反射される光パワー
が減少する。
【0005】このATRの現象は、共鳴的な性格を持っ
ている。これは、最も効果的に光パワーを吸収できるモ
ードが金属薄膜表面のプラズマ振動(電気分極の波動)
であり、これが媒質の光学定数で決まる固有の分散関係
角周波数ωと波数kの金属薄膜の面方向成分kH とが満
たす一定の関係)を持っていることにより、滲み出し光
が、これと同じω,kH を持つときに限って高い効率で
プラズモンへとエネルギーが移動し、反射率が激減す
る。
【0006】このATR薄膜評価方法は、例えば図5に
その一例の基本的構成を示すように、断面直角3角形の
柱状の屈折率np を有するプリズム1の底面に形成した
被評価薄膜11例えばAg蒸着膜に対して測定用の入射
光2例えば角周波数ωL のレーザ光を所要の見掛けの入
射角(プリズムに入射する光の、プリズム底面に対する
法線とのなす角を見掛け入射角と称することにする)θ
i をもって照射することによって行われる。
【0007】図6は、この場合の表面プラズモンの分散
関係を示す図である。
【0008】本発明で対象とするATR薄膜評価装置
は、例えば入射光の周波数ωL は固定とするものである
が、光の入射角θi を変えることによって下記数1によ
って波数kH を選定して、図6の分散曲線上の点Pを得
ることができる。
【0009】
【数1】kH =ωL p sinθi /c cは光速を示す。
【0010】図7は、光の入射角θi に対する反射率の
変化を示し、破線曲線は、プリズムのみの場合、実線曲
線はAg薄膜がある場合で、プリズムのみの場合は、θ
i >θc で全反射、Ag薄膜すなわち金属薄膜が存在す
る場合は、図5の点Pの分散関係によるATRによる沈
み込みAが生じる。θc は全反射臨界角。
【0011】このような反射率の角度依存性は、媒質の
光学定数(屈折率n,消衰係数k),金属薄膜の厚さd
を仮定して計算することによって求めることができるの
で、計算結果が実測を再現するようにしてn,k,dの
3者全てを同時に推定できるのである。
【0012】因みに、良く用いられる、入射角固定,単
一波長の偏光解析装置では、kに文献値を仮定してnと
dを求めるとか、膜厚を別法で定めた上でn,kを求め
るというように、2者の推定しかできないものであり、
ここにATR薄膜評価方法の大きな利点が存在する。
【0013】ところで、上述したATR薄膜評価方法で
は、上述したところから明らかなように、全反射臨界角
θc を超える範囲を含んで測定用光ビーム2を角度掃引
するものであるが、いま図5で示すように、光結合用プ
リズム1として2等辺3角形、例えば直角3角形のプリ
ズムを用いる場合、光ビームのプリズム1に対する入射
角が90°(直角3角形の場合は見掛け入射角θi が4
5°に相当)の場合、その見掛け入射角に対する反射率
すなわちATRスペクトルは、図7に示すように45°
近傍で乱れを生じる。
【0014】この現象は図5に示すように、測定用光ビ
ームがプリズム1の一方の斜面に対して直角に入射する
場合、このプリズム1に対する入射点Aと被評価薄膜1
1が配置される底面の全反射がなされる点Bとプリズム
1からの出射点Cとを結ぶ光路が底面に対する点Bを通
る法線に対して対称であるため、点Bから点Cに向かっ
てこの点Cで反射した一部の光が再び同一光路を採って
点Cから点Bに向かいその一部の光が反射するという繰
り返し往復による共振が生じることに因ると考えられ
る。
【0015】すなわち、上述の点A−Cを一回だけ通っ
て点Cから外部に検出される本来の測定用光の振幅に、
上述の共振による光振幅が重ね合わせられ、これらの波
の位相が同相か否かによって検出光が強められたり、弱
められたりする干渉が生じ図8で示す干渉領域Iが発生
するものであると考えられる。
【0016】このようなプリズム内の光干渉による雑音
を回避する方法としては、例えばプリズムの屈折率また
はプリズムの角度を大きく変えて目的のATRスペクト
ルが雑音の出ない角度領域に現れるように動かす方法が
考えられる。
【0017】この場合、プリズムに対して全反射を生じ
させる媒質が常に例えば空気であるというように同じ媒
質である場合には、この方法はかなり有効である。
【0018】しかしながら、例えば化学センサなどに用
いる場合においては、全反射臨界角が必ずしも一定では
なく、この方法の適用が困難となる場合が生じる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述したA
TRスペクトルに干渉領域Iすなわち不安定領域が発生
することを効果的に回避し、しかも上述したような全反
射臨界角が確定されていない場合においても確実にAT
Rスペクトルに干渉領域の発生したがって雑音の発生を
効果的に回避できるようにする。
【0020】すなわち本発明においては、被評価薄膜に
対する光結合用プリズム内に根本的に光共振器が構成す
ることがない構成とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明においては、図1
にその一例の平面図を示すように、光結合用プリズム1
を介して被評価薄膜11に測定用光ビーム2を照射し
て、減衰全反射による分析評価を行う減衰全反射型薄膜
評価装置において、プリズム1を、被評価薄膜11が配
置される面を底面とするその両側の底角α及びβを互い
に異なる角度に選定する。すなわちβ=α+δとする。
ここにδ>0またはδ<0とする。
【0022】
【作用】上述の本発明構成によれば、図1で示すよう
に、測定用光ビーム2が、プリズムの底面(本明細書で
は、上述したところから明らかなように、被評価薄膜1
1が配置される面を底面としている)の所定の点、すな
わち一般には底面の中央の点Bに向かってプリズムの斜
面に直角に入射した光が、点Bで全反射した場合におい
ても、他方の斜面の点Cで反射した一部の光は、図1に
破線図示のように、点Bに向かうことなく他へと反射す
るので光共振器が生じることが回避される。
【0023】したがって、この構成によって得たATR
スペクトルは図2に示すように、干渉領域すなわち不安
定領域がない滑らかな特性となり、ATR評価に対して
雑音の小さい確実な評価(測定)を行うことができる。
【0024】
【実施例】図3を参照して本発明によるATR型薄膜評
価装置の一例を説明する。このATR型薄膜評価装置は
標準的なATR測定系とすることができる。
【0025】この場合、角走査を行うための回転台61
上に被評価薄膜を有する試料62を載置する。
【0026】この試料62は、図1に示すように、光結
合用プリズム1の底面に直接的に被評価薄膜11が形成
された構成とすることができるが、本出願人による特願
平5−72245号で提案した構成を採ることができ
る。すなわち、例えばCD(コンパクトディスク)等の
光ディスクにおいてガラスやプラスチックス等の光透過
性基板に被着されたAl薄膜等を被評価薄膜11とする
ときは、図4に示すように、この光ディスク等の光透過
性基板12を、その薄膜11を有する側とは反対側にお
いて光結合用プリズム1の底面に、カップリング層15
を介して光学的に結合配置した構成とする。
【0027】このカップリング層15は、プリズム1と
このカップリング層15との界面での全反射臨界角が光
透過性基板12と空気との界面での全反射臨界角よりも
大となる液体層と例えば、水、アーモンド油、ヨウ化メ
チレン等層する。
【0028】このように、プリズム1とこのカップリン
グ層15との界面ディスクの全反射臨界角が光透過性基
板11と空気との界面での全反射臨界角よりも大となる
液体層によるカップリング層15とするときは、特願平
5−72245号で説明されているように、プリズムと
基板12との間の各界面のATR評価への実質的影響を
回避できる。
【0029】そして、特に本発明においては、このプリ
ズム1の構成を、被評価薄膜11が配置される面を底面
とするその両側の底角α及びβを互いに異なる角度に選
定する。すなわちβ=α+δとする。ここにδ>0また
はδ<0とする。
【0030】載置台61は、いわゆるゴニオメータステ
ージによって構成することができる。すなわち、例えば
それぞれ2θとθとの関係で回動する第1及び第2のス
テージ63及び64を有して成り、第2のステージ64
上に更に互いに直交するx及びyの2方向に移動可能と
し得、このステージ75上に試料62を載置する。
【0031】そして、光源例えばHe−Neレーザ65
が設けられ、これよりの測定用光ビーム2すなわちレー
ザ光を、偏光子66、ビームスプリッタ67、ビームシ
フタ68を通じてプリズム1に図4で示す所要の見掛け
入射角θi をもって導入する。
【0032】この測定用光ビーム2は、その径を光透過
性基板11の厚さDより小に選定する。
【0033】そして、第1及び第2のステージを2θ及
びθの関係で回転させつつ入射角に対する試料62から
の反射光2Rを測定する。このため、例えば第1のステ
ージ63に配置されたフォトダイオード等の第1の光検
出器69によって検出する。このとき、ビームシフタ6
8を回転させ、ステージ75をx,y方向に移動させる
ことによって、光透過性基板11の薄膜1との界面の所
定の測定位置に入射光が照射されるように調整される。
【0034】一方、ビームスプリッタ67で分離された
レーザ光の一部を、フォトダイオード等の第2の光検出
器70によってレーザ光すなわち測定用光ビームのパワ
ーを検出し、これら光検出器69及び70の各検出出力
をそれぞれ増幅器71及び72によって増幅してこれら
出力A及びBをアナログ割り算器(アナログデバイス
社:AD−533)73に導入してA/Bを得、これに
所要の係数を掛けて反射率を算出する。
【0035】割り算器73の出力はディジタルオシロス
コープを介してパソコン(PC−9801)に導入す
る。そしてここで理論反射率の計算、及び実測値との相
互比較もすべてこのパソコン上で行う。このようにして
ATRによる金属薄膜1の光学定数評価を行う。
【0036】前述したように本発明によれば、その光学
的結合のためのプリズム1の底角を互いに異なる角度と
して不等辺3角形としたことにより、プリズム内部での
光共振器が構成されることを回避したことにより、図2
で説明したATRスペクトルでの干渉領域の発生を回避
でき、正確なATRによる被評価薄膜の光学定数等の評
価(測定)を行うことができる。
【0037】なお、図2及び図8の各ATRスペクトル
は、共にガラス基板上にAu薄膜を被着して上述した液
体カップリング層をもって各プリズム1に光学的に結合
した場合である。
【0038】
【発明の効果】上述の本発明のATR型薄膜評価装置に
よれば、プリズム内での光共振器の発生を回避したの
で、この共振器が構成されることによって発生するAT
Rスペクトルでの不安定領域の発生を回避でき、ATR
評価に対して雑音の小さい確実な評価(測定)を行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置のプリズムの一例の平面図である。
【図2】本発明装置のATRスペクトル図である。
【図3】本発明装置の一例の構成図である。
【図4】本発明装置の一例のプリズム及び試料の関係を
示す平面図である。
【図5】従来装置のプリズムの平面図である。
【図6】表面プラズモンの分散関係を示す図である。
【図7】ATR薄膜評価方法の説明に供する反射率と見
掛け入射角との関係を示す図である。
【図8】従来装置のATRスペクトル図である。
【符号の説明】
1 光結合用プリズム 11 被評価薄膜 12 光透過性基板 15 カップリング層

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光結合用プリズムを介して被評価薄膜に
    測定用光ビームを照射して、減衰全反射による分析評価
    を行う減衰全反射型薄膜評価装置において、 上記プリズムを、上記被評価薄膜が配置される面を底面
    とするその両側の底角が互いに異なる角度に選定された
    ことを特徴とする減衰全反射型薄膜評価装置。
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