JPH062880B2 - 造花用蝋組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、造花用の蝋組成物に関する。

＜従来の技術とその問題点＞ 従来の造花としては、紙製造花や布製造花、プラスチッ
ク製の造花がある。

これらの造花のうち、紙製造花と布製造花とは、いずれ
も製作が比較的に容易であって、趣味工芸品として製作
されることが多いが、素材が直接外気にさらされるの
で、飾っておくうちに変色や退色が生じやすく、長持ち
しない、という欠点がある。しかも、光沢が不足し、装
飾性に乏しい、という欠点もある。また、プラスチック
製の造花は、上記の各欠点を有するほかに、製作に専門
的な技術や装置を必要とするため、趣味工芸品として製
作するには不向きである。

これに対しては、紙等のシート材料と蝋（ワックス）と
を組み合わせた、いわゆる蝋製の造花が考えられてい
る。この蝋製の造花は、花弁や葉等の所要の形状を有す
るシート材料をベースとするものであって、シート材料
の多数枚を花の形に組み合わせたのち、各シート材料の
表面に蝋被膜を形成することによって、形が固定され
る。このように製作された造花は、写実的でかつ光沢が
あって長持ちし、しかも比較的容易に製作することがで
きるので、趣味工芸品として一般の人にも作ることがで
きる。

ところで、現在、防水剤や離型剤、絶縁剤等の工業用蝋
組成物は多数存在するが、専ら工芸品や装飾品に使用す
る蝋組成物は、開発されていない。特に、蝋を用いた造
花自体が新規に創出されたものであるから、これに使用
するに適した蝋組成物は、未だ存在しない。

本件発明者が検討したところでは、蝋製の造花に使用す
る蝋組成物としては、光沢、硬さ、防湿性に優れ、均一
な被膜を形成することができ、かつ安価で扱いやすいも
のであることが望ましい。

＜発明の目的＞ 本発明は、上述の現状に鑑みてなされたものであって、
蝋製の造花に適した性状を有する蝋組成物を提供するこ
とを目的とする。

＜問題点を解決するための手段＞ 本発明は、上記の目的を達成するために、パラフィンワ
ックス約３０部とマイクロクリスタンワックス約２０部
とで全体の約半部を占める主原料を構成し、この主原料
にパルバックス約３０部と脂肪酸エステル約１０部とキ
ャンデリラワックス約１０部とを補助原料として混合し
ている。

＜実施例＞ 以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明
する。

図面は本発明による蝋組成物を用いた造花の斜視図であ
る。同図に示した造花は、花弁を構成するシート１ａ
と、葉を構成するシート１ｂと、がくを構成するシート
１ｃと、茎部分２と、枝部分３とからなる。

上記図面での拡大図示部分は、各シート１ａ〜１ｃのう
ち、花弁を構成するシート１ａを一部破断して示してい
る。この花弁を構成するシート１ａは、花弁の形状を有
するシート材料４ａをベースとするものである。ベース
となるシート材料４ａには、紙、布、その他のシートが
用いられる。このシート材料４ａの表面全面には蝋被膜
５ａが形成されている。

詳細な図示は省略したが、葉、がくを構成するシート１
ｂ，１ｃも同様に、葉やがくの形状をそれぞれ有するシ
ート材料４ｂ，４ｃをベースとするもので、各シート材
料４ｂ，４ｃの表面全面に蝋被膜５ｂ，５ｃが形成され
ている。

次に各シートの表面に蝋被膜５ａ，５ｂ，５ｃを形成す
る蝋組成物の組成を説明する。

この実施例における蝋組成物は、次のような組成を有す
る。

パラフィンワックス ……３３部 マイクロクリスタンワックス……２０部 （マイクロワックス） パルバックス ……２７部 脂肪酸エステル ……１０部 （一般式＝ＲＣＯＯＲ′） キャンデリラワックス ……１０部 このうち、全体の1/3を占めるパラフィンンワックス
は、融点が低い（６０℃前後）ので、蝋組成物全体に低
温で溶融しかつ低温で迅速に固化する特性を与え、蝋組
成物の加工性を良好にしている。また、パラフィンンワ
ックスは含油量が少ない（通常１％以下）ので、このパ
ラフィンンワックスの含有により蝋組成物の特性を改善
し、蝋組成物による蝋被膜５ａ〜５ｃに充分の光沢と硬
度とを与える。マイクロクリスタンワックスは、一般に
パラフィンンワックスより油分が多く（１５％以下）、
その結果、蝋組成物に適度の粘りを与え、蝋被膜５ａ〜
５ｃを形成した場合にシート材料１ａ〜１ｃへの湿気の
浸入を防止する。パルバックス（日本精蝋株式会社製の
蝋配合材料：軟化点６３〜６６℃、粘度ｃｐ／１２０℃
で１３５〜３５０、針入度２５℃で８〜１２）は、主と
して発泡抑止剤として作用し、光透過性に優れた蝋被膜
５ａ〜５ｃの形成に役立っている。脂肪酸エステル（パ
ルミチン酸含有量４０〜４６％で木蝋等を鹸化分解して
得た脂肪酸を分溜して精製したもの）とキャンデリラワ
ックスとは、他のワックスとよく混ざる特性を有するの
で、これらの原料の含有により、他の構成原料どうしが
均一に混合している。また、キャンデリラワックスは、
このほか、光沢、硬度、均一な被膜形成性、防湿性に優
れており、そのため蝋組成物の特性が一層改善されてい
るが、このキャンデリラワックスは産地、産出時期等に
よって組成、性状にかなりのばらつきがあるため、蝋組
成物への混合比率は上記実施例のように低率に抑えられ
ている。

このように、本発明の蝋組成物は、石油ワックスの軽質
留分であるパラフィンワックスと、石油ワックスの重質
留分であるマイクロクリスタンワックスとで全体の約半
部を占める主原料を構成し、この主原料に補助原料とし
て、パルバックスと、油脂系合成ワックスである脂肪酸
エステルと、植物系ワックスであるキャンデリラワック
スを混合したものである。この条件の範囲内であれば、
上記の各原料の混合比は、適宜変更することが可能であ
る。

しかして、上記蝋組成物により各シート１ａ〜１ｃに蝋
被膜５ａ〜５ｃを形成するには、まず、シート材料４ａ
〜４ｃを組み合わせて、花の本体部分６や枝葉部分７の
形を各別に形作ったのち、これら本体部分６、枝葉部分
７を加熱溶融した蝋組成物の溶液中に短時間、浸漬して
引き上げる。蝋組成物の溶融温度は約８０℃に設定す
る。蝋組成物は比較的低温で溶融するので、一般の人に
も扱いやすく、しかもシート材料４ａ〜４ｃに高温が加
わらないので、シート材料４ａ〜４ｃを変質させるおそ
れがない。

各シート材料４ａ〜４ｃの表面に付着した蝋組成物は、
空気中で冷却固化することによって、各シート材料４ａ
〜４ｃの表面全面に蝋被膜５ａ〜５ｃを形成する。この
場合、蝋組成物は迅速に固化するので、蝋被膜５ａ〜５
ｃが部分的に分厚くなったり薄くなったりすることがな
く、均一の厚さの蝋被膜５ａ〜５ｃが形成される。固化
した蝋被膜５ａ〜５ｃによって、各シート材料４ａ〜４
ｃの形が固定される。また、蝋被膜５ａ〜５ｃは充分な
光沢と硬度とを有し、各シート１ａ〜１ｃにガラスもし
くは陶器のような輝きを与える。また、蝋被膜５ａ〜５
ｃはその防湿性によりシート材料４ａ〜４ｃの吸湿によ
る変質を防止する。

このようにシート材料４ａ〜４ｃの表面に蝋被膜５ａ〜
５ｃが形成された本体部分６と枝葉部分７とをテープ等
を用いて結合するとともに、茎部分２、枝部分３の形を
整えて造花の全体を完成する。

なお、各シート材料４ａ，４ｂ，４ｃには、染色もしく
は着色剤の塗布により予め所要の着色を施しておいても
よいし、また無地のシート材料４ａ〜４ｃを用い、その
シート材料４ａ〜４ｃに蝋被膜５ａ〜５ｃを形成したの
ち、蝋被膜５ａ〜５ｃの表面に着色してもよい。

＜発明の効果＞ 以上のように、本発明は、パラフィンワックス約３０部
とマイクロクリスタンワックス約２０部とで全体の約半
部を占める主原料を構成し、この主原料にパルバックス
約３０部と脂肪酸エステル約１０部とキャンデリラワッ
クス約１０部とを補助原料として混合したものであっ
て、各構成原料の特性がそれぞれ生かされて、加工性に
優れた蝋組成物が得られ、この蝋組成物により充分な光
沢と硬度と防湿性とを有する蝋被膜が形成される。した
がって、蝋製の造花に適した性状を有する蝋組成物が得
られ、この蝋組成物を用いることによって、写実的でか
つ光沢があって長持ちする造花を容易に製作することが
できる。

また、本発明の蝋組成物は、石油ワックスであるパラフ
ィンンワックスとマイクロクリスタンワックスとを主原
料とするものであるから、天然ワックスを主原料とする
ものに比べ特性が一定し、しかも石油ワックス自体が低
価格であるので、安価な蝋組成物が得られる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明による蝋組成物を用いた造花の斜視図であ
って、一部を拡大して示している。 １ａ，１ｂ，１ｃ…シート、４ａ，４ｂ，４ｃ…シート
材料、５ａ，５ｂ，５ｃ…蝋被膜。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】花弁、葉等の所要形状を有するシート材料
   の表面に蝋被膜を形成する蝋組成物であって、 パラフィンワックス約３０部とマイクロクリスタンワッ
   クス約２０部とで全体の約半部を占める主原料を構成
   し、この主原料にパルバックス約３０部と脂肪酸エステ
   ル約１０部とキャンデリラワックス約１０部とを補助原
   料として混合してなる造花用蝋組成物。