JPH06277712A - 金属板幅圧下方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 幅圧下時に発生する金属板の温度不均一を防
ぐことができる金属板幅圧下方法を提供する。 【構成】 板送り方向に沿い板の上下にそれぞれ配置さ
れた複数の押さえロール１５により、板Ｓを上下より押
さえて板Ｓの座屈を防ぎながら幅圧下ダイス１により板
Ｓを幅方向に圧下する金属板幅圧下方法において、各押
さえロール１５をロール軸に沿って移動可能な複数のリ
ングロール１７により構成し、幅圧下中に前記リングロ
ール１７を幅圧下ダイス１の板幅方向の移動に追従して
板幅中心に向かって移動させるとともに、板幅方向に周
期的に往復動させる。板Ｓとリングロール１７との接触
位置が常に変化するので、リングロール１７からの熱の
散逸が板幅方向に分散され、板温度は均一になる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、スラブなどの比較的
板厚の大きい金属板をプレスにより大きな圧下量で熱間
幅圧下する金属板幅圧下方法およびその装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】比較的板厚の大きい金属板として、連続
鋳造鋼スラブを例として説明する。

【０００３】スラブを一定幅に連続鋳造し、プレスによ
り幅圧下して圧延工程で要求される断面寸法とすること
が行われている。幅圧下工程では、スラブをこれの長手
方向に間欠的に送り、スラブが停止した時にパスライン
の左右に配置したダイスによりスラブを左右から圧下す
る。

【０００４】最近、連続鋳造鋼スラブは薄肉幅広化の傾
向にある。たとえば、従来板厚２５０ mm 、板幅：８０
０〜２０００ mm 程度であったものを、板厚５０〜１０
０ mm 、板幅：９００〜２２００ mm 程度とする。この
ようなスラブを、大きな圧下量（１００〜４００ mm 程
度）で幅圧下することが要望されている。薄肉幅広のス
ラブを大きな圧下量で幅圧下すると、高次の座屈が生じ
やすい。このために、押さえ工具や押さえロールでスラ
ブを上下より押さえた状態で、幅圧下する装置が提案さ
れている（たとえば、特開昭５６−６８５０８、特開昭
６３−２５３０参照）。これらの押さえ装置では、ダイ
スと押さえ工具または押さえロールとの干渉を避けるた
めに、幅狭のスラブの幅寸法よりも短い押さえ工具また
は押さえロールにより、スラブを押さえるようにしてい
る。したがって、幅広のスラブを幅圧下する場合、スラ
ブの中央部付近だけしか押さえられないので、座屈を防
ぐために圧下量を小さくしなければならない。

【０００５】このような問題を解決する押さえ装置とし
て、特開平２−２２９６０２号公報で開示された幅圧下
プレスの座屈防止押さえロール装置がある。この座屈防
止押さえロール装置は、板幅方向に対して少なくとも２
本以上のロール片に分割された分割押さえロールを備え
ている。上記各ロール片は、別個に昇降可能となってい
る。そして、少なくとも上側の分割押さえロールの各ロ
ール片を別個に昇降させて、スラブの幅寸法より内側の
ロール片のすべてによりスラブを押さえるようにし、ま
た、スラブの幅寸法より外側のロール片はスラブから退
避させておく。したがって、スラブ幅に応じて所要のロ
ール片でスラブを押さえることができる。

【０００６】一方、上記座屈押さえロールを使用する場
合、スラブの温度が不均一になるという問題がある。す
なわち、スラブ表面に接触する押さえロールを通って熱
が他の部材に移動し、ロール接触部分およびその近傍の
温度が低くなり、スラブの金属組織が不均一になる。こ
の結果、このようなスラブを圧延して得られた板は機械
的性質がばらつき、製品品質の低下を招く。特に薄厚の
スラブでは、ロール接触部分およびその近傍の熱容量が
小さいために、スラブ内部からスラブ表面へ供給される
熱量が少く、スラブの温度不均一は一層大きくなる。

【０００７】なお、スラブの幅圧下時に、幅圧下ダイス
に接触するスラブ側面から熱が移動して、スラブ側端部
寄りの部分の温度が中央部よりも温度が低くなる。この
結果、スラブを圧延する際に板の側端部に割れが発生す
ることがある。スラブ側端部の温度降下を防ぐために、
保温カバーを設けること（特開平２−１４７０１号公
報）、またはダイス内に誘導加熱装置を設けること（特
開平４−６６２４０号公報）が提案されている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】座屈を防止する押さえ
ロールは、スラブ中央部にも接触する。したがって、上
記保温カバーまたは誘導加熱装置を設けても、スラブの
温度不均一を避けることはできない。

【０００９】なお、連続鋳造鋼スラブを金属板の例とし
て説明したが、上記課題は連続鋳造鋼スラブと同様の寸
法の金属板にも生じるものである。

【００１０】この発明は、幅圧下時に発生する金属板の
温度不均一を防ぐことができる金属板幅圧下方法を提供
しようとするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】この発明の金属板幅圧下
方法は、板送り方向に沿い板の上下にそれぞれ配置され
た複数の押さえロールにより、板を上下より押さえて板
の座屈を防ぎながら幅圧下ダイスにより板を幅方向に圧
下する金属板幅圧下方法において、各押さえロールをロ
ール軸に沿って移動可能な複数のリングロールにより構
成し、幅圧下中に前記リングロールを幅圧下ダイスの板
幅方向の移動に追従して板幅中心に向かって移動させる
とともに、板幅方向に周期的に往復動させる。

【００１２】リングロールの数は、幅圧下時のダイス間
の最大および最小間隔、板厚、圧下量、ロール幅などを
考慮して決められる。普通、リングロールの数は２〜１
０個程度である。リングロールをスラブ幅方向へ移動お
よび往復動させるには、油圧シリンダなどにより力を加
えて強制的に移動させる。リングロールを幅圧下ダイス
の移動に追従させるには、プレスに同期して、または検
出したダイスの移動信号に基づいて油圧シリンダなどを
駆動する。リングロールの往復動の振幅は１０〜２００
mm 、周期は１／１０〜１／１００ Hz 程度である。

【００１３】なお、板側端部を従来技術のように保温ま
たは加熱し、幅圧下ダイスとの接触による板側端部の温
度低下を防ぐようにしてもよい。

【００１４】

【作用】この発明の金属板幅圧下方法では、幅圧下中に
前記リングロールを幅圧下ダイスの板幅方向の移動に追
従して板幅中心に向かって移動させるとともに、板幅方
向に周期的に往復動させる。したがって、板とリングロ
ールとの接触位置が常に変化するので、リングロールか
らの熱の散逸が板幅方向に分散され、板温度は均一にな
る。

【００１５】

【実施例】図１〜図３は、この発明の一実施例である連
続鋳造鋼スラブの幅圧下装置を示している。図１は幅圧
下装置の正面図、図２および図３はそれぞれ図１に示す
幅圧下装置の押さえロールの配置を示す平面図および側
面図である。

【００１６】幅圧下装置は、主として幅圧下ダイス１、
昇降装置１２、および押さえロール１５により構成され
ている。

【００１７】幅圧下ダイス１は、パスラインの左右に進
退可能に配置されている。相対するダイス面の間隔は出
口に向かって狭まり、出口側に平行部が設けられてい
る。幅圧下ダイス１は、油圧シリンダのロッド６に連結
されている。

【００１８】昇降装置１２は左右に相対する４組が上下
に対となっており、パスラインに沿ってハウジング１１
に設けられている。各昇降装置１２は油圧シリンダ（図
示しない）でそれぞれ独立して駆動される。昇降装置１
２にはそれぞれロール軸チョック１３が取り付けられて
いる。

【００１９】押さえロール１５は、上下に対をなす４組
よりなっている。押さえロール１５の軸１６が、上記ロ
ール軸チョック１３に固定されている。押さえロール軸
１６には、リングロール１７がロール軸方向に移動可能
かつ回転可能に取り付けられている。各押さえロール軸
１６のリングロール１７の数は、ダイス入側から順次
６、５、４、３個となっている。

【００２０】案内軸１９が各押さえロール１５の直上ま
たは直下に、押さえロール軸１６に平行に配置されてい
る。案内軸１９の両端は、ロール軸チョック１３に固定
されている。図４に示すように、ロール保持金具２１の
一端が押さえロール軸１６に軸受２３を介して、また他
端が案内軸１９に軸受２５を介してそれぞれロール軸方
向に移動可能にはめ合っている。ロール保持金具２１の
個数は、対応する押さえロール１５のリングロール１７
の個数と同じである。ロール保持金具２１の押さえロー
ル軸側には、押さえロール１５のリングロール１７が軸
受２４を介して回転可能にはめ合っている。また、ロー
ル保持金具２１の案内軸側には、油圧シリンダ２７のロ
ッド２８が連結されている。ロール軸チョック１３に取
り付けられた支持フレーム３０に、油圧シリンダ２７は
固定されている。

【００２１】上記のように構成された幅圧下装置におい
て、スラブＳは搬送ローラーテーブル（図示しない）に
よりパスラインに沿って間欠的に送られる。スラブＳが
送られている間は、幅圧下ダイス１は左右に開き、上下
に対となった押さえロール１５は開いた状態となってい
る。また、押さえロール１５のリングロール１７は、あ
らかじめ図２に示すようにパスラインに沿って千鳥形に
配置されている。スラブＳが幅圧下ダイス１の間で停止
すると、上下に対となった押さえロール１５が下降また
は上昇してスラブＳを挟み、固定する。ついで、幅圧下
ダイス１の間隔を徐々に狭め、スラブＳを幅方向に圧下
する。幅圧下中、押さえロール１５はスラブＳを上下よ
り挟圧し、スラブＳの座屈を防止する。圧下が進むに従
い板厚が増すので、押さえロール１５に作用する荷重は
大きくなる。荷重が一定値（座屈防止に必要な荷重）を
超えると、昇降装置１２により押さえロール１５を少し
開いて押圧力を緩める。一方、圧下が進むに従い板幅は
狭くなる。このとき、リングロール１７は幅圧下ダイス
１と同期して油圧シリンダ２７によって移動される。す
なわち、幅圧下中のスラブＳの幅に応じてロール保持金
具２１、つまりリングロール１７がスラブ幅中心に向か
って強制的に移動されるとともに、スラブ幅方向に往復
動される。リングロール１７はスラブ表面上を往復動す
るので、スラブＳとリングロール１７との接触位置が常
に変化するので、リングロール１７からの熱の散逸がス
ラブ幅方向に分散され、スラブ温度は均一になる。ま
た、リングロール１７の移動により、左右に隣り合うリ
ングロール１７の間隔は狭くなる。そして、スラブ幅が
狭くなっても、スラブＳはすべてのリングロール１７に
より均一に保持され、座屈は生じにくくなる。

【００２２】スラブＳの幅圧下が終わると、幅圧下ダイ
ス１は後退され、押さえロール１５は開かれる。つい
で、押さえロール１５のリングロール１７は油圧シリン
ダ２７により移動され、左右に隣り合うものどうしの間
隔が広げられて、図２に示す初めの位置に戻される。そ
して、スラブＳは次の１幅圧下工程の長さ分だけ前進さ
れる。

【００２３】

【発明の効果】幅圧下中にリングロールを幅圧下ダイス
の板幅方向の移動に追従して板幅中心に向かって移動さ
せるとともに、板幅方向に周期的に往復動させる。した
がって、板とリングロールとの接触位置が常に変化する
ので、リングロールからの熱の散逸が板幅方向に分散さ
れ、板温度は均一になる。この結果、機械的性質にバラ
ツキのない高品質の製品を得ることができる。

【００２４】また、幅圧下が進むに従って板幅が狭くな
っても、金属板は常にすべてのリングロールにより均一
に保持されるので、座屈は生じにくくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の幅圧下装置の一例を示す正面図であ
る。

【図２】図１に示す幅圧下装置の押さえロールの配置を
示す平面図である。

【図３】上記幅圧下装置の押さえロールの配置を示す側
面図である。

【図４】上記幅圧下装置のロール保持金具の断面図であ
る。

【符号の説明】 １ 幅圧下ダイス ６ 油圧シリンダロッド １１ ハウジング １２ 昇降装置 １３ ロール軸チョック １５ 押さえロール １６ 押さえロール軸 １７ リングロール １９ 案内軸 ２１ ロール保持金具 ２７ 油圧シリンダ Ｓ スラブ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 板送り方向に沿い板の上下にそれぞれ配
   置された複数の押さえロールにより、板を上下より押さ
   えて板の座屈を防ぎながら幅圧下ダイスにより板を幅方
   向に圧下する金属板幅圧下方法において、各押さえロー
   ルをロール軸に沿って移動可能な複数のリングロールに
   より構成し、幅圧下中に前記リングロールを幅圧下ダイ
   スの板幅方向の移動に追従して板幅中心に向かって移動
   させるとともに、板幅方向に周期的に往復動させること
   を特徴とする金属板幅圧下方法。