JPH06256911A - 冷間における加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイトステンレス鋼 - Google Patents

冷間における加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイトステンレス鋼

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JPH06256911A
JPH06256911A JP6761893A JP6761893A JPH06256911A JP H06256911 A JPH06256911 A JP H06256911A JP 6761893 A JP6761893 A JP 6761893A JP 6761893 A JP6761893 A JP 6761893A JP H06256911 A JPH06256911 A JP H06256911A
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corrosion resistance
acid corrosion
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JP6761893A
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Tamako Hiyatsupo
珠子 百歩
Toru Inazumi
透 稲積
Yoshio Takagi
愛夫 高木
Katsumi Shomura
克身 正村
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷間における加工若しくは変形後の耐硝酸腐
食性に優れたオーステナイトステンレス鋼を提供するこ
と 【構成】 C:0.02wt%以下、Si:0.8wt
%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.04
wt%以下、S:0.03wt%以下、Al:0.1w
t%以下、Cu:0.3wt%以下、Ni:6〜22w
t%、Cr:13〜27wt%、N:0.02〜0.1
0wt%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からな
り、且つ1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+
2.5≧Cr≧52−2.3(Ni+Mn)−200
(C+N)を満足し、さらに好ましくは3.8Ni+
3.3Mn+265(C+N)−5Si−49.5≧1
0を満足するオーステナイトステンレス鋼である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷間における加工若し
くは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイトステ
ンレス鋼、特に、硝酸プラントや原子燃料再処理プラン
トのように、高度の耐硝酸腐食性が要求される環境下で
使用される構造材料に好適なオーステナイトステンレス
鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】硝酸プラントや原子燃料再処理プラント
のように、高度の耐硝酸腐食性が要求される環境下で使
用される構造材料としては、C含有量が0.02wt%
以下の極低炭素オーステナイトステンレス鋼が使用され
る。この極低炭素オーステナイトステンレス鋼は、粒界
へのCr炭化物生成が起こりにくいため、優れた耐粒界
腐食性を示す。
【0003】従来、オーステナイトステンレス鋼を冷間
加工すると、加工誘起変態によりマルテンサイトが生成
することが知られており、例えば、20℃においてSU
S304に真歪みε=1.0の圧縮変形を加えると、約
55%のマルテンサイトが生成することが報告されてい
る(品川一成等:鉄と鋼,Vol.76,No.3(1990).p.462
〜467)。一方、オーステナイトステンレス鋼が変形を受
け、一部がマルテンサイトに変態すると、耐硝酸腐食性
が劣化することが報告されている(例えば、M. Stelig
a:8e Congr Eur Corros, Vol.2(1985). p.28)。しか
し、この報告では変形温度と耐硝酸腐食性との関係は述
べられているものの、化学成分と耐硝酸腐食性との関係
は検討されていない。
【0004】従来、加工誘起変態に対するオーステナイ
トの安定度を示す指標としては、「Md30」(T. Ange
l:J. Iron Steel Inst., 177(1954). p.165〜17
4)、「Ni当量」(武本敏彦等:鉄と鋼,Vol.76,No.6
(1990).p.894〜901)等が提唱されており、これらは
オーステナイトステンレス鋼の成分設計を行う上で活用
されている。
【0005】上記「Md30」は、引張りにより30%の
真歪みを加えた場合に50%のマルテンサイトを生成す
る温度として定義され、合金元素との関係を示す次式が
提唱されている。 Md30(℃)=413−9.5Ni−13.7Cr−8.
1Mn−9.2Si−18.5Mo−462(C+N) 一方、上記「Ni当量」は、Niが高いほどオーステナ
イト安定度が高くなるという考え方に基づくもので、合
金元素との関係を示す次式が提唱されている。 Ni当量=Ni+0.60Mn+0.18Cr+9.69
(C+N)−0.11(Si)2
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、炭素はオー
ステナイトを安定化して加工誘起マルテンサイトの生成
を抑制する効果の大きい元素である。したがって、従来
の低炭素オーステナイトステンレス鋼のようにC含有量
が0.03wt%程度のものでは、加工誘起マルテンサ
イトの生成による耐硝酸腐食性の劣化はほとんど問題と
ならなかった。ところが、C含有量が0.02wt%以
下の極低炭素オーステナイトステンレス鋼では、従来の
低炭素オーステナイトステンレス鋼に較べてオーステナ
イトの安定度が低いために加工誘起変態を起こしやす
く、冷間での加工や変形による耐硝酸腐食性の劣化が顕
著に認められるようになる。
【0007】図2は、表1〜表4に比較例として示した
低炭素オーステナイトステンレス鋼(比較合金No.
6)および極低炭素オーステナイトステンレス鋼(比較
合金No.2)と本発明例である本発明合金No.2に
ついて、冷間加工量と耐硝酸腐食性の関係を調べたもの
である。これによれば、従来の極低炭素オーステナイト
ステンレス鋼(比較合金No.2)は、低炭素オーステ
ナイトステンレス鋼(比較合金No.6)に較べて冷間
加工量が少ない場合の耐硝酸腐食性は優れているもの
の、冷間加工量の増加とともに耐硝酸腐食性が劣化し、
冷間加工量があるレベル以上では耐硝酸腐食性が低炭素
オーステナイトステンレス鋼とほとんど同程度になって
しまう。すなわち、従来の極低炭素オーステナイトステ
ンレス鋼は、加工誘起マルテンサイトに起因する耐硝酸
腐食性の劣化が生じやすいことを示している。
【0008】したがって、従来の極低炭素オーステナイ
トステンレス鋼は、冷間加工や変形を受けない状態で耐
硝酸腐食性を高める成分設計を行っても、製造時の矯正
や現場施工時の曲げ変形等によって生成した加工誘起マ
ルテンサイトの影響により、実際に構造材料として使用
される段階では所定の耐硝酸腐食性を有していないとい
うような事態が容易に起こり得る。
【0009】このように極低炭素オーステナイトステン
レス鋼では、加工誘起マルテンサイト生成によって材料
本来の耐硝酸腐食性が損なわれるため、加工誘起変態を
抑制する手段を講ずる必要がある。しかし、現在加工誘
起変態に関して用いられているパラメータであるMd30
やNi当量は、加工誘起変態を抑制する成分設計上の指
針とはなるものの、いずれのパラメータも加工誘起マル
テンサイトによる耐硝酸腐食性の劣化が考慮されていな
いため、これらに基づき成分設計を行っても、冷間にお
ける加工や変形後の満足すべき耐硝酸腐食性を得ること
ができないという問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述したよ
うな従来の問題に鑑み、極低炭素オーステナイトステン
レス鋼の耐硝酸腐食性に及ぼす主要元素および微量元素
の影響について検討を行い、C、Si、Mn、Ni、C
r、N、Mo、W等の元素および種々の微量元素を変化
させた合金について、冷間における加工若しくは変形前
後の耐硝酸腐食性を調べた。その結果、これらの元素の
含有量が特定の成分条件の下で、加工誘起変態に対する
抵抗と耐硝酸腐食性を考慮した特定の関係式を満たす場
合に、冷間における加工若しくは変形後でも優れた耐硝
酸腐食性が得られることを見出した。本発明はこのよう
な知見に基づきなされたもので、以下のような構成から
なることをその特徴とする。
【0011】(1) C:0.02wt%以下、Si:
0.8wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、
P:0.04wt%以下、S:0.03wt%以下、A
l:0.1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、N
i:6〜22wt%、Cr:13〜27wt%、N:
0.02〜0.10wt%を含有し、残部Feおよび不
可避不純物からなり、且つ下記式を満足する、冷間に
おける加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオー
ステナイトステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+2.5≧Cr≧52−2.3 (Ni+ Mn)−200(C+N) … 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
(wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
%) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
%)
【0012】(2) C:0.02wt%以下、Si:
0.8wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、
P:0.04wt%以下、S:0.03wt%以下、A
l:0.1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、N
i:6〜22wt%、Cr:13〜27wt%、N:
0.02〜0.10wt%を含有し、これにMoおよび
Wのうちの1種または2種をMo:3.0wt%以下、
W:3.0wt%以下含有し、残部Feおよび不可避不
純物からなり、且つ下記´式を満足する、冷間におけ
る加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステ
ナイトステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si−2.7(Mo+W)+2.5 ≧Cr≧52−2.3(Ni+Mn)−200(C+N)−0.3(Mo+ W) …´ 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
(wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
%) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
%) Mo:Mo含有量(wt%) W :W含有量(wt
%)
【0013】(3) C:0.02wt%以下、Si:
0.8wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、
P:0.04wt%以下、S:0.03wt%以下、A
l:0.1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、N
i:6〜22wt%、Cr:13〜27wt%、N:
0.02〜0.10wt%を含有し、残部Feおよび不
可避不純物からなり、且つ下記、式を満足する、冷
間における加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れた
オーステナイトステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+2.5≧Cr≧52−2.3 (Ni+ Mn)−200(C+N) … 3.8Ni+3.3Mn+265(C+N)−5Si−49.5≧10 … 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
(wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
%) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
%)
【0014】(4) C:0.02wt%以下、Si:
0.8wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、
P:0.04wt%以下、S:0.03wt%以下、A
l:0.1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、N
i:6〜22wt%、Cr:13〜27wt%、N:
0.02〜0.10wt%を含有し、これにMoおよび
Wのうちの1種または2種をMo:3.0wt%以下、
W:3.0wt%以下含有し、残部Feおよび不可避不
純物からなり、且つ下記´、´式を満足する、冷間
における加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオ
ーステナイトステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si−2.7(Mo+W)+2.5 ≧Cr≧52−2.3(Ni+Mn)−200(C+N)−0.3(Mo+ W) …´ 3.8Ni+3.3Mn+265(C+N)−5Si−2.4(Mo+W) −49.5≧10 …´ 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
(wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
%) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
%) Mo:Mo含有量(wt%) W :W含有量(wt
%)
【0015】(5) 上記(1)〜(4)に記載のオー
ステナイトステンレス鋼において、Ti、Nb、V、Z
r、Hf、Taの群の中から選ばれる1種または2種以
上の元素を合計で1.0wt%以下含有する、冷間にお
ける加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオース
テナイトステンレス鋼。
【0016】(6) 上記(1)〜(5)に記載のオー
ステナイトステンレス鋼において、不純物元素たるBが
10ppm以下である、冷間における加工若しくは変形
後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイトステンレス
鋼。
【0017】(7) 上記(1)〜(5)に記載のオー
ステナイトステンレス鋼において、不純物元素たるBが
5ppm以下である、冷間における加工若しくは変形後
の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイトステンレス鋼。
【0018】
【作用】以下、本発明の成分条件の限定理由について説
明する。Cの含有量が0.02wt%を超えると、溶接
等の加熱によってCr236の粒界析出が促進され、粒
界に沿ってCr欠乏層が形成される結果、耐硝酸腐食性
が劣化する。このためCは0.02wt%以下とする。
Siは通常脱酸剤として添加される元素であるが、過剰
に添加するとステンレス鋼の腐食電位を高めるととも
に、有害なσ相およびη相の析出を促進し、耐硝酸腐食
性を著しく劣化させる。このためSiは0.8wt%以
下とする。
【0019】Mnはオーステナイトを安定化させる効果
を有するが、過剰な添加は加工性の劣化につながるた
め、その範囲を0.05〜2.0wt%とする。Pは粒
界に偏析して耐硝酸腐食性を劣化させるため、その含有
量は低いほうが望ましく、本発明では0.04wt%以
下とする。Sの増加は硫化物の生成を促進し、それらを
起点とする選択的な腐食により耐硝酸腐食性および耐孔
食性を劣化させる。このためSの含有量は低いほうが望
ましく、本発明では0.03wt%以下とする。
【0020】Alは脱酸剤として添加されるが、その含
有量が0.1wt%を超えると靭性を劣化させる。この
ためAlは0.1wt%以下とする。Cuは耐孔食性の
向上には有効であるが、その含有量が0.3wt%を超
えるとPの粒界偏析を促進させる。このためCuは0.
3wt%以下とする。Niは、オーステナイトを安定化
させる効果を有し、この効果を十分に得るためには6w
t%以上の添加量が必要である。但し、Niは高価な元
素であるため、過剰な添加は製造コストの上昇を招く。
このためNiは6〜22wt%の範囲とする。
【0021】Crはステンレス鋼の表面を不働態化する
基本元素であり、その添加により耐硝酸腐食性を向上さ
せる効果が得られ、この効果を十分に得るためには13
wt%以上の添加量が必要である。しかし、Crはフェ
ライト安定化元素であるため、その含有量が27wt%
を超えるとオーステナイト組織の安定性を著しく損な
い、耐硝酸腐食性に有害なσ相の析出が促進される。こ
のためCrは13〜27wt%の範囲とする。
【0022】Nは、ステンレス鋼の強度向上に効果のあ
る元素であるが、過剰な添加は窒化物の析出量を促進
し、耐硝酸腐食性に悪影響を与える。このため、Nは
0.02〜0.10wt%の範囲とする。MoおよびW
は耐孔食性の向上に効果のある元素である。硝酸塩等の
塩類が存在し、耐硝酸耐食性に加えて耐孔食性が必要と
される場合がしばしばあることを考慮し、上述した基本
成分に対し、必要に応じてMoおよびWの1種以上を適
量添加することができる。しかし、これらの元素を3.
0wt%を超えて添加すると耐硝酸腐食性を劣化させ、
また、ステンレス鋼の製造コストを上昇させる。このた
め、MoおよびWの含有量は、それぞれ3.0wt%以
下とする。
【0023】Ti、Nb、V、Zr、Hf、Taは、炭
素を固定することによってCr236の析出を抑制し、
耐鋭敏化性を向上させるのに有効な元素であり、これら
の元素の1種または2種以上を上述した基本成分に対し
て適量添加することができる。しかし、これらの元素の
添加量が合計で1.0wt%を超えると耐硝酸腐食性を
劣化させるため、その含有量は合計で1.0wt%以下
とする。Bは粒界に偏析するとともにCrに富む硼化物
を形成し、耐硝酸腐食性を劣化させる。その悪影響は含
有量が5ppmを超えると現われ、10ppmを超える
と特に顕著となる。このような悪影響は比較的高濃度の
硝酸環境(例えば、65%硝酸)で特に顕著である。こ
のため、比較的高濃度の硝酸環境への適用が予測される
場合には、その含有量を10ppm以下、より好しくは
5ppm以下とすることが望ましい。
【0024】本発明では上述した成分条件に加え、図1
に示されるように下式で定義されるE,FがE≧0,F
≧0を満足すること、 E=1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+2.5−
Cr F=Cr−[52−2.3(Ni+Mn)−200(C+
N)] 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
(wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
%) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
%) すなわち、 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+2.5≧Cr
≧52−2.3(Ni+Mn)−200(C+N) を満足することが必要であり、このような関係式を満足
した場合に加工誘起変態によるマルテンサイト生成が抑
制され、冷間における加工若しくは変形後の優れた耐硝
酸腐食性が得られる。なお、ここでいう冷間における加
工、変形とは、300℃以下程度の温間における加工、
変形も含んでいる。
【0025】また、冷間における加工若しくは変形後の
より優れた耐硝酸腐食性を得るためには、上記に定義さ
れるE,FがE≧0,F≧0を満足するとともに、図1
に示すようなより限定された条件であるE+F≧10を
満足すること、すなわち、 3.8Ni+3.3Mn+265(C+N)−5Si−4
9.5≧10 を満足することが必要である。
【0026】また、Moおよび/またはWが添加された
場合には、下式で定義されるE´,F´がE´≧0,F
´≧0を満足すること、 E´=1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si−2.7
(Mo+W)+2.5−Cr F´=Cr−[52−2.3(Ni+Mn)−200(C+
N)−0.3(Mo+W)] 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
(wt%) C :C含有量(wt%) N :含有量(wt%) Si:Si含有量(wt%) Mo:Mo含有量(wt
%) W :W含有量(wt%) すなわち、 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si−2.7(Mo
+W)+2.5≧Cr≧52−2.3(Ni+Mn)−20
0(C+N)−0.3(Mo+W) を満足することが必要であり、このような関係式を満足
した場合に加工誘起変態によるマルテンサイト生成が抑
制され、冷間における加工若しくは変形後の優れた耐硝
酸腐食性が得られる。
【0027】また、冷間における加工若しくは変形後の
より優れた耐硝酸腐食性を得るためには、上記に定義さ
れるE´,F´がE´≧0,F´≧0を満足するととも
に、図1に示すようなより限定された条件であるE´+
F´≧10を満足すること、すなわち、 3.8Ni+3.3Mn+265(C+N)−5Si−
2.4(Mo+W)−49.5≧10 を満足することが必要である。
【0028】
【実施例】表1ないし表4に示す成分の合金を真空高周
波溶解炉で溶製し、得られた鋼塊を1200℃に加熱し
て熱間圧延し、10mm厚の鋼板とした。次いで、これ
ら鋼板について1100℃×30分の固溶化熱処理を行
った後、1〜60%の冷間加工を引張り加工または冷間
圧延で与えた。これら鋼板から2×20×30mmの腐
食試験片を採取し、電解研磨により0.2mm表面を除
き、試験中の切り出し時の加工によるマルテンサイト変
態を起こした部分を除去した後、沸騰65%硝酸中に4
8時間ずつ5回浸漬して耐硝酸腐食性の評価を行った。
この浸漬試験においては、硝酸を48時間毎に更新し
た。試験終了後、腐食減量を測定し、5回の平均腐食速
度を求めた。
【0029】図2は、本発明合金No.2、比較合金N
o.2および比較合金No.6について、それぞれ未冷
間加工の試料と1〜60%の冷間加工を行った試料の耐
硝酸腐食性試験の結果を示している。比較合金No.2
は従来の極低炭素オーステナイトステンレス鋼、比較合
金No.6は従来の低炭素オーステナイトステンレス鋼
にそれぞれ相当する成分を有している。図2によれば、
比較合金No.2では冷間加工度が大きくなるにしたが
って耐硝酸腐食性が急激に劣化しているのに対し、本発
明合金では冷間加工度に拘らず、耐硝酸腐食性の劣化は
見られない。
【0030】表5は冷間加工度25%の試料について、
その耐硝酸腐食性試験の結果を示している。また、図3
および図4は表5に示される各試料(但し、比較合金に
ついては、各成分元素の含有量が本発明条件を満足し、
且つE,FまたはE´,F´が本発明条件を満足しない
試料)の耐硝酸腐食性をE,FおよびE´,F´の値で
整理して示したものである。
【0031】表5に示される耐硝酸腐食性の評価基準は
以下の通りである。なお、Mo、Wを添加した試料で
は、これら元素の添加による耐硝酸腐食性の劣化分を考
慮し、Mo、W無添加材よりも評価基準を低めに設定し
てある。 Mo,W無添加材 ◎:平均腐食速度が、0.1mm/year未満 ○:平均腐食速度が、0.1mm/year以上、0.2m
m/year未満 ×:平均腐食速度が、0.2mm/year以上 Moおよび/またはW添加材 ◎:平均腐食速度が、0.15mm/year未満 ○:平均腐食速度が、0.15mm/year以上、0.2
5mm/year未満 ×:平均腐食速度が、0.25mm/year以上
【0032】表5及び図3,図4から明らかなように、
本発明が規定する成分組成と上記関係式(E≧0,F≧
0或いはE´≧0,F´≧0)を満足する本発明合金N
o.1〜25は冷間加工後の優れた耐硝酸腐食性を示
し、このうち特に、E+F≧10或いはE´+F´≧1
0を満足するものは、特に優れた耐硝酸腐食性を示して
いる。これに対し、本発明条件を満足していない比較合
金はいずれも冷間加工後の耐硝酸腐食性が劣っている。
すなわち、比較合金No.1はSi量と上記の関係式で
規定される成分条件が本発明範囲外の比較例、比較合金
No.2〜No.4、No.7〜No.9は、各成分元
素の含有量は本発明範囲にあるが、上記の関係式で規定
される成分条件が本発明範囲外の比較例、比較合金N
o.5、No.10は上記の関係式で規定される成分条
件は本発明範囲にあるが、Si量が本発明範囲外の比較
例、比較合金No.11は同じくMo量が本発明範囲外
の比較例であり、いずれの比較例も冷間加工後の優れた
耐硝酸腐食性は得られていない。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【発明の効果】以上述べたように本発明のオーステナイ
トステンレス鋼は、冷間における加工若しくは変形、例
えば製造時の矯正や現場施工時の曲げ変形等を受けた場
合でも、安定して優れた耐硝酸腐食性を示す。このた
め、硝酸プラントや原子燃料再処理プラント等の構造用
材料として極めて好適なオーステナイトステンレス鋼で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成分条件であるE≧0(またはE´≧
0)およびF≧0(またはF´≧0)を満足する範囲
と、同じくE≧0(またはE´≧0),F≧0(または
F´≧0)およびE+F≧10(またはE´+F´≧1
0)を満足する範囲を示すグラフ
【図2】本願実施例中の本発明合金と比較合金(低炭素
オーステナイトステンレス鋼および極低炭素オーステナ
イトステンレス鋼)について、冷間加工度と耐硝酸耐食
性との関係を示すグラフ
【図3】本願実施例の試料(Mo,W無添加材)の耐硝
酸腐食性を、E,Fの値で整理して示すグラフ
【図4】本願実施例の試料(Moおよび/またはW添加
材)の耐硝酸腐食性をE´,F´の値で整理して示すグ
ラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 正村 克身 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.02wt%以下、Si:0.8
    wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.
    04wt%以下、S:0.03wt%以下、Al:0.
    1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、Ni:6〜2
    2wt%、Cr:13〜27wt%、N:0.02〜
    0.10wt%を含有し、残部Feおよび不可避不純物
    からなり、且つ下記式を満足する、冷間における加工
    若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイト
    ステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+2.5≧Cr≧52−2.3 (Ni+ Mn)−200(C+N) … 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
    (wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
    %) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
    %)
  2. 【請求項2】 C:0.02wt%以下、Si:0.8
    wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.
    04wt%以下、S:0.03wt%以下、Al:0.
    1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、Ni:6〜2
    2wt%、Cr:13〜27wt%、N:0.02〜
    0.10wt%を含有し、これにMoおよびWのうちの
    1種または2種をMo:3.0wt%以下、W:3.0
    wt%以下含有し、残部Feおよび不可避不純物からな
    り、且つ下記´式を満足する、冷間における加工若し
    くは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイトステ
    ンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si−2.7(Mo+W)+2.5 ≧Cr≧52−2.3(Ni+Mn)−200(C+N)−0.3(Mo+ W) …´ 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
    (wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
    %) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
    %) Mo:Mo含有量(wt%) W :W含有量(wt
    %)
  3. 【請求項3】 C:0.02wt%以下、Si:0.8
    wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.
    04wt%以下、S:0.03wt%以下、Al:0.
    1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、Ni:6〜2
    2wt%、Cr:13〜27wt%、N:0.02〜
    0.10wt%を含有し、残部Feおよび不可避不純物
    からなり、且つ下記、式を満足する、冷間における
    加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナ
    イトステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si+2.5≧Cr≧52−2.3 (Ni+ Mn)−200(C+N) … 3.8Ni+3.3Mn+265(C+N)−5Si−49.5≧10 … 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
    (wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
    %) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
    %)
  4. 【請求項4】 C:0.02wt%以下、Si:0.8
    wt%以下、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.
    04wt%以下、S:0.03wt%以下、Al:0.
    1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、Ni:6〜2
    2wt%、Cr:13〜27wt%、N:0.02〜
    0.10wt%を含有し、これにMoおよびWのうちの
    1種または2種をMo:3.0wt%以下、W:3.0
    wt%以下含有し、残部Feおよび不可避不純物からな
    り、且つ下記´、´式を満足する、冷間における加
    工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステナイ
    トステンレス鋼。 1.5Ni+Mn+65(C+N)−5Si−2.7(Mo+W)+2.5 ≧Cr≧52−2.3(Ni+Mn)−200(C+N)−0.3(Mo+ W) …´ 3.8Ni+3.3Mn+265(C+N)−5Si−2.4(Mo+W) −49.5≧10 …´ 但し Ni:Ni含有量(wt%) Mn:Mn含有量
    (wt%) C :C含有量(wt%) N :N含有量(wt
    %) Si:Si含有量(wt%) Cr:Cr含有量(wt
    %) Mo:Mo含有量(wt%) W :W含有量(wt
    %)
  5. 【請求項5】 Ti、Nb、V、Zr、Hf、Taの群
    の中から選ばれる1種または2種以上の元素を合計で
    1.0wt%以下含有する、請求項1、2、3または4
    に記載の冷間における加工若しくは変形後の耐硝酸腐食
    性に優れたオーステナイトステンレス鋼。
  6. 【請求項6】 不純物元素たるBが10ppm以下であ
    る、請求項1、2、3、4または5に記載の冷間におけ
    る加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステ
    ナイトステンレス鋼。
  7. 【請求項7】 不純物元素たるBが5ppm以下であ
    る、請求項1、2、3、4または5に記載の冷間におけ
    る加工若しくは変形後の耐硝酸腐食性に優れたオーステ
    ナイトステンレス鋼。
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