JPH0625298A - 多包虫由来の抗原並びにそれを用いた診断用試薬及び診断方法 - Google Patents

多包虫由来の抗原並びにそれを用いた診断用試薬及び診断方法

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JPH0625298A
JPH0625298A JP20705492A JP20705492A JPH0625298A JP H0625298 A JPH0625298 A JP H0625298A JP 20705492 A JP20705492 A JP 20705492A JP 20705492 A JP20705492 A JP 20705492A JP H0625298 A JPH0625298 A JP H0625298A
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antigen protein
patient
protein
antigen
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JP20705492A
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Akira Ito
亮 伊藤
Kenji Yasuda
憲司 安田
Keiko Yamada
恵子 山田
Takeo Komori
武勇 小森
Hidesaburo Kitaguni
秀三郎 北国
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Meito Sangyo KK
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Meito Sangyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 多包虫由来の粗抗原物質中に存在する、SD
S−ポリアクリルアミドゲルの電気泳動法によって測定
された分子量が18キロダルトン及び16キロダルトン
である特定抗原蛋白質。 【効果】 上記抗原蛋白質は、多包虫症患者で治療を要
する活性型病巣をもつ患者と既に治癒した不活性型病巣
をもつ患者との鑑別のための診断用試薬として有用であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多包虫由来の特定抗原
蛋白質、並びにそれを指標として用いる多包虫症患者の
診断用試薬及び診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】包虫症(エキノコックス症)は、
単包虫症と多包虫症とに分類され、人畜共通寄生蠕虫病
として最も致死率の高い疾病である。このうち、多包虫
症は、北半球全域、即ち、全ヨーロッパから日本を含む
極東地域、アラスカ、カナダ、アメリカ北部で年々患者
の増加が深刻化している。日本では、北海道の一部の地
域に限局された風土病として1937年以来知られてい
たが、現在では、北海道全域が汚染されていることが判
明し、一部東北地方での汚染報告もあり、外国同様に年
々深刻化してきている。
【0003】多包虫の中間宿主は野ネズミであり、終宿
主はキタキツネ、イヌで、小腸に寄生する。ヒトへの感
染は、キタキツネ、イヌが排出した虫卵を何らかのかた
ちで経口摂取して起きる。経口摂取された虫卵は、主に
肝臓に包虫を形成する。包虫は肝臓以外にも肺、脳、脾
臓、骨にも形成される。発育は緩慢であり、潜伏期が1
0年以上におよび、外生出芽による小嚢包の集まりとし
ての多包化が進み、腫瘍様の病巣になり、肝癌と誤診さ
れることが多い。末期には肝障害が進行し、門脈圧亢進
症状を伴って、全身状態が悪化し、肝性昏睡で死亡する
ことが多い。
【0004】多包虫症は、症状の出現が遅いため、現在
の血清学的検査やX線撮影、CT、肝超音波断層などに
よる検診で、診断がついた時点では、殆ど例外なく手遅
れであると言われている。唯一の根治的治療法である外
科的摘出でも、術後の生存率は非常に低いと言われてい
る。一方、予防は、感染源である虫卵が飲料水・食物に
混入することへの注意、虫卵をばらまく動物との接点を
断つことなどが重要である。しかし、この寄生虫病は、
病巣を作るまで通常10年以上経過する点で、早期診
断、早期治療が強く叫ばれている。
【0005】ところで、現在までに、WHOが評価して
いる唯一の血清学的診断法は、多包虫由来の粗抗原物質
を用いるEm2−ELISA法と呼ばれている方法であ
る。しかし、多包虫に感染することにより一旦生じた抗
体は患者体内に長期にわたって保持されるため、この検
査では、多包虫に一度感染したことのある患者は完治し
ていても全例が陽性になるという難点がある。そのた
め、この検査による陽性者全員が治療を必要とする訳は
なく、X線撮影、超音波検査、CT、その他煩雑な血清
学的検査を施行した後に、総合的に診断を下しているの
が現状である。実際に、Em2−ELISA法陽性患者
で開腹手術を施したが、自然治癒していたケースがかな
り報告されている。つまり、治療を要する活性型病巣と
自然治癒した不活性型病巣との鑑別が不可能であること
が指摘され始めている。治療を要する活性型病巣と既に
治癒した不活性型病巣との鑑別は、患者に無用の生命の
危険を伴いかねない外科手術を強要する愚を避けるため
に必要である。
【0006】また、最近、ベンズイミダゾール系薬物
(アルベンダゾール等)を用いる化学療法によって、完
治した症例、著効を示した症例、全く効果が見られなか
った症例が報告され、化学療法の適用基準となる病態の
指標が探索されている。それ故、患者の病状(病態)を
判断し、活性型病巣と不活性型病巣の有無を確実に鑑別
出来るシステム(診断薬、診断キット、診断システム)
を開発することができれば、外科的療法、化学的療法を
含む治療指針の確立、予後モニタリングが可能となり、
その恩恵は計り知れないものがある。
【0007】
【発明の開示】本発明者らは、多包虫症患者で活性型病
巣を持つ患者と不活性型病巣を持つ患者とを判断すべ
く、これら患者の血清中の特異性抗体に着目し、多包虫
由来の抗原物質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動後、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に
転写し、それを、多包虫症患者で活性型病巣又は不活性
型病巣を持つ血清と反応させ、或いは多包虫症患者で活
性型病巣を持つ患者の病巣が治癒と共に不活性型病巣に
変わって行く時、経時的にその患者の血清と反応させ、
活性型病巣を持つ患者の血清には存在し、不活性型病巣
を持つ患者の血清には存在しない特異的抗体、または活
性型病巣を持つ時の血清には存在し、治癒と共に不活性
型病巣を持つ時の血清には存在しなくなっていく特異的
抗体の有無を詳細に調べた。
【0008】その結果、そのような特異的抗体が存在す
ることが判明し、かかる特異的抗体を利用して多包虫由
来の粗抗原物質の中から、治療を要する活性型病巣と既
に治癒した不活性型病巣の鑑別の指標となり得る2種類
の抗原性蛋白質を見い出した。
【0009】かくして、本発明によれば、 (1) 下記第1表に示すアミノ酸組成を有し且つSDS−
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって測定した分
子量が約18キロダルトンである多包虫由来の蛋白質
(以下、抗原蛋白−Iという)。
【0010】
【表3】 第 1 表 ────────────────────── アミノ酸 モル% ────────────────────── アスパラギン酸 9.87±0.20 スレオニン 4.31±0.19 セリン 5.92±0.73 グルタミン酸 12.56±0.23 グリシン 8.40±0.39 アラニン 8.40±0.20 バリン 7.06±0.15 1/2−シスチン 0.90±0.08 メチオニン 2.52±0.04 イソロイシン 4.92±0.13 ロイシン 9.84±0.17 チロシン 3.24±0.08 フエニルアラニン 4.26±0.08 リシン 5.49±0.13 ヒスチジン 1.72±0.10 アルギニン 4.18±0.09 プロリン 5.17±0.13 トリプトフアン 1.23±0.08 ────────────────────── 計 100.00 ────────────────────── (2) 下記第2表に示すアミノ酸組成を有し且つSDS−
ポリアクリルアミド電気泳動法によって測定した分子量
が約16キロダルトンである多包虫由来の蛋白質(以
下、抗原蛋白−IIという)。
【0011】
【表4】 第 2 表 ────────────────────── アミノ酸 モル% ────────────────────── アスパラギン酸 10.93±0.22 スレオニン 5.00±0.22 セリン 6.05±0.74 グルタミン酸 12.00±0.22 グリシン 6.71±0.31 アラニン 6.71±0.16 バリン 7.79±0.16 1/2−シスチン 1.03±0.09 メチオニン 2.94±0.05 イソロイシン 4.96±0.13 ロイシン 9.95±0.17 チロシン 3.16±0.08 フエニルアラニン 4.53±0.09 リシン 6.85±0.16 ヒスチジン 1.69±0.10 アルギニン 4.83±0.11 プロリン 4.09±0.10 トリプトフアン 0.78±0.05 ────────────────────── 計 100.00 ────────────────────── が提供される。
【0012】本発明により提供される上記抗原蛋白−I
及び抗原蛋白−IIを用いて、多包虫症患者の血清中の
抗体を調べると、治療を要する活性型病巣を持つ患者と
治癒した患者又は不活性型病巣を持つ患者では、これら
の抗原に対する特異抗体の応答が全く異なることがわか
った。しかも、抗原蛋白−Iに対する抗体応答が認めら
れるが抗原蛋白−IIに対する抗体応答が認められない
患者は、活動型初期の病巣を持っており、更に抗原蛋白
−Iのみならず抗原蛋白−IIに対する抗体応答も同時
に認められる患者は、活動型末期の病巣を持っているこ
とが判明した。
【0013】従って、本発明の抗原蛋白−I又は−II
を用いれば、単に、現在又は過去の多包虫感染の有無の
判定が可能であるばかりでなく、活性型病巣を持つ患者
と既に治癒した患者又は不活性型病巣を持つ患者との判
別が可能となり、しかも抗原蛋白−Iと抗原蛋白−II
をうまく併用することにより、多包虫症患者の病態の進
行状況をも判定することが可能となる。
【0014】しかして、本発明の抗原蛋白−I及び−I
Iを臨床診断に用いた場合の一例を示せば、下記第3表
及び第4表に要約するとおりである。下記表にはWHO
が評価しているEm2−ELISA法の結果も併せて示
す。
【0015】
【表5】第3表:治療前における抗体応答を指標とする患者の分類 治療前の抗体応答 Em-2 抗原蛋白 症状 治療 患者 抗原 I II ────────────────────────────── 1 − − − 健常者 不要 2 + − − 既往歴有、自然治癒 不要1) 3 + + − 初期の活動型 要2) 4 + + + 進行型 要3) ────────────────────────────── 注:1)定期的に検査する必要がある。
【0016】2)軽度。
【0017】3)重度。
【0018】
【表6】第4表:治療後における抗体応答を指標とする患者の分類 治療後の抗体応答 抗原蛋白 治療 患者 I II ────────────────────── 1 + + 継続 2 + − 継続 3 − + 継続 4 − − 不要1) ────────────────────── 注:1)定期的に検査する必要がある。
【0019】上記第3表から明らかなように、活動型初
期の病巣を持つ患者(3)は、抗原蛋白−Iに対する抗
体応答は陽性であるが、抗原蛋白−IIに対する抗体応
答は陰性である。また、活動型末期(進行型)の病巣を
持つ患者(4)は、抗原蛋白−I及び−IIのいずれに
対しても陽性である。これにより、病状の進行状況を判
定でき、外科的治療または投薬を必要とすると診断する
ことができる。しかし、前者の患者において、治療の結
果、抗原蛋白−Iに対する抗体応答が認められなくなっ
た場合、または、後者の患者で、抗原蛋白−I及び抗原
蛋白−IIに対する抗体応答が認められなくなった場合
は、活動型の病巣が無くなり、治癒に向かっていると判
定することができる(第4表参照)。
【0020】本発明により提供される抗原蛋白−I及び
抗原蛋白−IIは、例えば、次のようにして調製するこ
とができる。
【0021】あらかじめ多包虫症患者より得られた多包
虫を、例えば、スナネズミの腹腔内に移植し、数ケ月
後、例えば2ケ月後に開腹し、ぶどうの房状になった多
包虫を取り出す。これにデオキシコール酸(濃度:0.
5〜5%、好ましくは1%)を含むリン酸緩衝生理食塩
水を加え、解剖用のハサミで細かく切り刻み、これをホ
モゲナイズした後、更に、デオキシコール酸を含むリン
酸緩衝生理食塩水を加え、超音波を施し、破砕する。こ
れを多包虫粗抗原溶液(多包虫原頭節抗原)とする。
【0022】次に、この多包虫粗抗原溶液を、例えば、
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いた分画
装置(Prep cell Model 491; Bio Rad 社製)にかけ、抗
原蛋白−I及び抗原蛋白−IIを分離・精製する。この
時のSDS−ポリアクリルアミドゲルのアクリルアミド
の濃度は、4〜20%、好ましくは12〜20%の範囲
内が適当である。
【0023】あるいは、前記と同様にして得られた多包
虫粗抗原溶液を、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフ
イーあるいはアフイニテイークロマトグラフイーを用い
て精製することもできる。
【0024】これらの抗原蛋白は、分子量既知の標準蛋
白質を用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
法によって測定する時、おのおの分子量は約18キロダ
ルトン及び約16キロダルトンであった。
【0025】また、ニンヒドリン発色分析法によるアミ
ノ酸組成は前記第1表及び第2表に示すとおりであっ
た。
【0026】さらに、本発明の抗原蛋白−I及び抗原蛋
白−IIは、遺伝子工学的又はタンパク質工学的に製造
される合成ペプチドであることもできる。
【0027】本発明の抗原蛋白−I及び/又は抗原蛋白
−IIは、免疫学的手法によって患者血清中の抗体検出
のための診断用試薬として使用することができる。
【0028】本発明の抗原蛋白を用いる患者の体液中の
抗体の検出は、免疫学的手法により、具体的には例えば
次の(1)〜(3)に示す方法により行なうことができ
る。
【0029】(1) 抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIを、
例えば、リン酸緩衝生理食塩水に溶かし、これを吸着さ
せたポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜を用い
て、イムノブロッティング法で、患者血清を検査する:
まず抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIをスポットしたP
VDF膜をブロッキング溶液に浸漬しブロッキングす
る。次に、多包虫症患者の血清をブロッキング溶液で適
当に稀釈した溶液に、ブロッキング済みのPVDF膜を
入れ反応させる。反応後、ブロッキング溶液で洗浄し、
ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体をブロッキング
溶液で適当に稀釈した溶液に、多包虫症患者の血清と反
応させたPVDF膜を入れ反応させる。反応後、ブロッ
キング溶液で洗浄後、基質溶液に入れ発色させる。反応
後、抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIのスポットが存在
する場合、抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIに対する特
異抗体が存在する、つまり、その多包虫症患者が活性型
病巣を持っていると判定し、スポットが見られない場
合、抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIに対する特異抗体
が存在しない、つまり、その多包虫症患者が不活性型病
巣を持っていると判定する。
【0030】(2) 抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIを、
例えば、ELISA用96well plate に吸着させ、患
者の血清を加え、酵素抗体法により、抗体を検出するこ
とができる:まず抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIを吸
着させたELISA用96well plateの各wellを、ブロ
ッキング溶液で満たしブロッキングする。次に、多包虫
症患者の血清をブロッキング溶液で適当に稀釈した溶液
を、ブロッキング済みのELISA用96well plate
の各wellに入れ反応させる。反応後、ブロッキング溶液
で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体をブ
ロッキング溶液で適当に稀釈した溶液を、多包虫症患者
の血清と反応させたELISA用96well plateの各w
ellに入れ反応させる。反応後、ブロッキング溶液で洗
浄後、基質溶液に入れ、発色させる。反応後、抗原蛋白
−I及び抗原蛋白−IIを吸着させたwellで発色が見ら
れた場合、抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIに対する特
異抗体が存在する、つまり、その多包虫症患者が、活性
型病巣を持っていると判定し、発色が見られない場合、
抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIに対する特異抗体が存
在しない、つまり、その多包虫症患者が、不活性型病巣
を持っていると判定する。
【0031】(3) 抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIを、
例えば、ラテックス粒子に吸着させ、患者の血清を加
え、凝集反応が見られた場合、抗原蛋白−I及び抗原蛋
白−IIに対する特異抗体が存在する、つまり、その多
包虫症患者が、活性型病巣を持っていると判定し、凝集
反応が見られない場合、抗原蛋白−I及び抗原蛋白−I
Iに対する特異抗体が存在しない、つまり、その多包虫
症患者が、不活性型病巣を持っていると判定する。
【0032】本発明による診断用試薬は、通常の免疫学
的検査法に用いられる任意の形態であることができる。
例えば、PVDF膜に吸着させたもの、あるいはELI
SA用96well plateに吸着させたもの、あるいはラ
テックス粒子に物理的又は化学的に吸着させたものなど
であることができる。
【0033】次に、本発明を実施例によってさらに具体
的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0034】
【実施例】
実施例1:抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIの分離・精
製 日本において発見された多包虫症患者より得られた多包
虫を、スナネズミ腹腔内に移植した。2ケ月後に凍結処
理済みの動物体内から、ぶどうの房状になった多包虫を
取り出した。まず、1%デオキシコール酸を含むリン酸
緩衝生理食塩水を加え、解剖用のハサミで細かく切り刻
み、これをホモゲナイズした後、更に、デオキシコール
酸を含むリン酸緩衝生理食塩水を加え、超音波処理を施
し破砕した。これを多包虫粗抗原溶液とした。なお、デ
オキシコール酸を含むリン酸緩衝生理食塩水の組成は以
下のとおりである。
【0035】
【表7】 次に、この多包虫粗抗原溶液をSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を用いた分画装置(Bio Rad 社製:Pre
p cell Model 491 )を用い、抗原蛋白−I及び抗原蛋白
−IIを分離・精製した。
【0036】まず、多包虫症粗抗原蛋白1mlとサンプ
ル処理液1mlを混合し、100℃で5分間加熱処理し
た。なお、サンプル処理液は以下のとおりである。
【0037】
【表8】 サンプル処理液 蒸留水 1.4ml 0.5 M Tris/HCl (pH6.8) 2.0ml Glycerol 2.0ml 10% SDS 2.0ml 2−Mercaptoethanol 0.2ml 0.05% Bromophenol blue 0.4ml 次に、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行っ
たが、そのときに用いたポリアクリルアミドゲルまたは
泳動用バッファーの組成は次のとおりである。
【0038】
【表9】 ポリアクリルアミドゲル 分離ゲル 濃縮ゲル (20%T) (4%T) Acrylamide/bis 13.33ml 0.65ml (30% T/2.67%C) 蒸留水 1.615ml 3.1ml 1.5 M Tris/HCl (pH8.8) 5ml − 0.5 M Tris/HCl (pH6.8) − 1.25ml 10%過硫酸アンモニウム 50μl 25μl TEMED 5μl 5μl 泳動用バッファー Tris(hydroxymethyl)aminoethane 3.0g Glycine 14.4g SDS 1.0g 蒸留水 1.0l 熱処理した多包虫粗抗原溶液をポリアクリルアミドゲル
の上部にのせ、40mAの条件で下方に電気泳動をしな
がら、ゲルの下部より分離した物質を回収した。得られ
た各フラクションを平板状SDS−ポリアクリルアミド
ゲル(TEFCO社製:01−113)を用いて電気泳
動にかけた。この時、分子量が既知である標準蛋白質
(Bio Rad社製:161−0305)を同時に電気泳
動しておいた。更に、PVDF膜に転写した。転写の条
件は、150mAで1時間で行った。ブロッティング溶
液の組成は以下のとおりである。
【0039】
【表10】 ブロッティング溶液 Tris(hydroxymethyl)aminoethane 3.02g Glycine 14.4g Methanil 200ml 蒸留水 2l 転写後、PVDF膜を以下の組成をもつブロッキング溶
液に室温で1時間浸漬し、ブロッキングした。
【0040】
【表11】 ブロッキング溶液 Casein 10g NaCl 8.77g Tris(hydroxymethyl)aminoethane 2.423gHCl(1N) 6ml 蒸留水 1l 次に、多包虫症の活性型病巣を持つ患者の血清を前述の
ブロッキング溶液で50倍稀釈した溶液に、ブロッキン
グしたPVDF膜を入れ、室温で1時間振盪した。反応
後、ブロッキング溶液で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識
抗ヒトIgG抗体を前述のブロッキング溶液で1000
倍稀釈した溶液に、多包虫症の活性型病巣を持つ患者の
血清と反応させたPVDF膜を入れ、室温で1時間で振
盪した。反応後、ブロッキング溶液で洗浄後、基質溶液
に入れ、37℃で30分間反応して発色させた。基質溶
液の組成は以下のとおりである。
【0041】基質溶液 A液 80% Ethanol 100ml 4-Chloro-1-naphtol 0.2g B液 0.1Mリン酸バッファー A液4ml+B液16ml+H22 4μlを基質溶液
とする。
【0042】このようにして得られた結果より、分子量
が既知である標準蛋白質から、分子量約18キロダルト
ンの抗原蛋白−I及び分子量約16キロダルトンの抗原
蛋白−IIを含むフラクションを調べ、回収した。
【0043】実施例2:抗原蛋白−I及び抗原蛋白−I
Iのアミノ酸組成の決定 実施例1で得られた抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIを
前述と同様に、TEFCO社製の平板状SDS−ポリア
クリルアミドゲル(20%)を用いて電気泳動にかけ、
更に、PVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜の一
部を切り取り、ブロッキング溶液に室温で1時間浸漬
し、多包虫症の活性型病巣を持つ患者の血清を前述のブ
ロッキング溶液で50倍稀釈した溶液に、ブロッキング
したPVDF膜を入れ、室温で1時間振盪した。反応
後、ブロッキング溶液で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識
抗ヒトIgG抗体を前述のブロッキング溶液で1000
倍稀釈した溶液に、多包虫症の活性型病巣を持つ患者の
血清と反応させたPVDF膜を入れ、室温で1時間で振
盪した。反応後、ブロッキング溶液で洗浄後、基質溶液
に入れ、37℃で30分間反応して発色させた。このよ
うにして得られた結果より、抗原蛋白−I及び抗原蛋白
−IIの位置を調べ、残りのPVDF膜で抗原蛋白−I
及び抗原蛋白−IIの存在する部分を切り出し、アミノ
酸組成を求めた。
【0044】抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIの吸着し
たPVDF膜を蒸留水で3回洗浄後、6N HCl(4
%チオグリコール酸添加)、減圧シール下、110℃で
22時間加水分解処理した。濃縮乾固後、全量を70μ
lに、調製、50μlを日立社製のアミノ酸分析計L−
8500(ニンヒドリン発色、特殊アミノ酸分析法)に
注入、分析した。
【0045】その結果は、下記第5表及び第6表に示す
とおりである。
【0046】
【表12】 第5表:抗原蛋白−Iのアミノ酸組成 ────────────────────── アミノ酸 モル% ────────────────────── アスパラギン酸 9.87 スレオニン 4.31 セリン 5.92 グルタミン酸 12.56 グリシン 8.40 アラニン 8.40 バリン 7.06 1/2−シスチン 0.90 メチオニン 2.52 イソロイシン 4.92 ロイシン 9.84 チロシン 3.24 フエニルアラニン 4.26 リシン 5.49 ヒスチジン 1.72 アルギニン 4.18 プロリン 5.17 トリプトフアン 1.23 ────────────────────── 計 100.00 ──────────────────────
【0047】
【表13】 第6表:抗原蛋白−IIのアミノ酸組成 ────────────────────── アミノ酸 モル% ────────────────────── アスパラギン酸 10.93 スレオニン 5.00 セリン 6.05 グルタミン酸 12.00 グリシン 6.71 アラニン 6.71 バリン 7.79 1/2−シスチン 1.03 メチオニン 2.94 イソロイシン 4.96 ロイシン 9.95 チロシン 3.16 フエニルアラニン 4.53 リシン 6.85 ヒスチジン 1.69 アルギニン 4.83 プロリン 4.09 ────────────────────── トリプトフアン 0.78 ────────────────────── 計 100.00 実施例3:健常者及び多包虫症患者血清を用いたイムノ
ブロッティング 実施例1と同様にして得られた抗原蛋白−I及び抗原蛋
白−IIをPVDF膜にスポットし、健常者及び多包虫
症患者の血清と反応させるイムノブロッティングを行っ
た。まず抗原蛋白−I及び抗原蛋白−IIをスポットし
たPVDF膜をブロッキング溶液に浸漬した。次に、健
常者及び多包虫症患者の血清を前述のブロッキング溶液
で50倍稀釈した溶液に、ブロッキングしたPVDF膜
を入れ、1時間振盪した。反応後、ブロッキング溶液で
洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体を前述
のブロッキング溶液で1000倍稀釈した溶液に、多包
虫症の活性型病巣を持つ患者の血清と反応させたPVD
F膜を入れ、1時間振盪した。反応後、ブロッキング溶
液で洗浄後、基質溶液に入れ、37℃で30分間反応し
て発色させた。反応後、多包虫粗抗原、抗原蛋白−I及
び抗原蛋白−IIのスポットが存在する部分を調べた。
下記第7表にその結果を示す。
【0048】
【表14】 第7表:多包虫に対する特異抗体の検出 ─────────────────────────────────── 被検者 治療の イムノブロッティングの結果 外科的並びに薬剤 前後 (特異抗体の有無) 治療の必要性 粗抗原 I II ─────────────────────────────────── 健常者 1 − − − 2 − − − 3 + − − 4 − − − 5 + − − 患者 6 治療前 + ++ ++ 要 7 治療前 + + − 要 8 治療前 + ++ ++ 要 9 治療前 + + + 要 10 治療前 + + − 要 11 治療前 + ++ − 要 12 治療前 + ++ ++ 要 13 治療前 + + + 要 14 治療前 + ++ ++ 要 15 治療前 + ++ + 要 16 治療前 + ++ + 要 17 治療前 + + − 要 18 治療前 + + − 要 19 治療前 + ++ + 要 20 治療前 + ++ ++ 要 21 治療前 + ++ + 要 22 治療前 + − − 不要(自然治癒)1) 23 治療前 + − − 不要(自然治癒)1) 24 治療前 + ++ ++ 要 治療後 + + + 要 治療後 + + − 要 治療後 + − − 不要1) 25 治療前 + + + 要 治療後 + − − 不要1) ─────────────────────────────────── 1) 定期的に検査を続けた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北国 秀三郎 岐阜県可児市若葉台8−55

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記表に示すアミノ酸組成を有し且つS
    DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって測定
    した分子量が約18キロダルトンである多包虫由来の蛋
    白質。 【表1】 ────────────────────── アミノ酸 モル% ────────────────────── アスパラギン酸 9.87±0.20 スレオニン 4.31±0.19 セリン 5.92±0.73 グルタミン酸 12.56±0.23 グリシン 8.40±0.39 アラニン 8.40±0.20 バリン 7.06±0.15 1/2−シスチン 0.90±0.08 メチオニン 2.52±0.04 イソロイシン 4.92±0.13 ロイシン 9.84±0.17 チロシン 3.24±0.08 フエニルアラニン 4.26±0.08 リシン 5.49±0.13 ヒスチジン 1.72±0.10 アルギニン 4.18±0.09 プロリン 5.17±0.13 トリプトフアン 1.23±0.08 ────────────────────── 計 100.00 ──────────────────────
  2. 【請求項2】 下記表に示すアミノ酸組成を有し且つS
    DS−ポリアクリルアミド電気泳動法によって測定した
    分子量が約16キロダルトンである多包虫由来の蛋白
    質。 【表2】 ────────────────────── アミノ酸 モル% ────────────────────── アスパラギン酸 10.93±0.22 スレオニン 5.00±0.22 セリン 6.05±0.74 グルタミン酸 12.00±0.22 グリシン 6.71±0.31 アラニン 6.71±0.16 バリン 7.79±0.16 1/2−シスチン 1.03±0.09 メチオニン 2.94±0.05 イソロイシン 4.96±0.13 ロイシン 9.95±0.17 チロシン 3.16±0.08 フエニルアラニン 4.53±0.09 リシン 6.85±0.16 ヒスチジン 1.69±0.10 アルギニン 4.83±0.11 プロリン 4.09±0.10 トリプトフアン 0.78±0.05 ────────────────────── 計 100.00 ──────────────────────
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の蛋白質よりなるこ
    とを特徴とする多包虫症患者診断用試薬。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載の蛋白質を用い被検
    者の体液中の該蛋白質抗原に対する抗体を免疫学的に検
    出することを特徴とする多包虫症患者の診断方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007309851A (ja) * 2006-05-19 2007-11-29 Adtec Kk エキノコックス多包虫症の診断法
CN107402298A (zh) * 2016-05-18 2017-11-28 上海新吉而生物科技有限公司 一种犬粪包虫病抗原快速检测试剂盒及其使用方法
US10247207B2 (en) 2015-11-05 2019-04-02 Kabushiki Kaisha Toyota Jidoshokki Industrial vehicle

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