JPH06248336A - 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 - Google Patents
溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法Info
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- JPH06248336A JPH06248336A JP3673993A JP3673993A JPH06248336A JP H06248336 A JPH06248336 A JP H06248336A JP 3673993 A JP3673993 A JP 3673993A JP 3673993 A JP3673993 A JP 3673993A JP H06248336 A JPH06248336 A JP H06248336A
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- hardening
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は、厚み70mm以下の溶接性に優れた
低降伏比HT80の製造法を提供する。 【構成】 重量比でC:0.05〜0.11%、Si:
0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03
%以下、S:0.005%以下、Cr:0.10〜0.
70%、Mo:0.10〜0.60%、V:0.15〜
0.65%、Ti:0.005〜0.025%、Al:
0.06%以下、N:0.012%以下を含有し実質的
にBを含有しない鋼片を熱間圧延後Ac3 〜1000℃
の温度範囲に再加熱して焼入し、さらに750〜870
℃に再び加熱後、焼入し、引き続きAc1 変態点以下の
温度範囲で焼戻処理することにより、厚み70mm以下の
溶接性の優れた低降伏比HT80が製造できる。
低降伏比HT80の製造法を提供する。 【構成】 重量比でC:0.05〜0.11%、Si:
0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03
%以下、S:0.005%以下、Cr:0.10〜0.
70%、Mo:0.10〜0.60%、V:0.15〜
0.65%、Ti:0.005〜0.025%、Al:
0.06%以下、N:0.012%以下を含有し実質的
にBを含有しない鋼片を熱間圧延後Ac3 〜1000℃
の温度範囲に再加熱して焼入し、さらに750〜870
℃に再び加熱後、焼入し、引き続きAc1 変態点以下の
温度範囲で焼戻処理することにより、厚み70mm以下の
溶接性の優れた低降伏比HT80が製造できる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶接性の優れた低降伏比
780N/mm2 級高張力鋼の製造法に関するものであ
る。
780N/mm2 級高張力鋼の製造法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、780N/mm2 級高張力鋼(以下
HT80と言う)はB添加鋼を焼入焼戻処理することに
よって製造していた。しかし、B添加HT80は溶接性
の指標であるPcm=C+Si/30+Mn/20+Cu
/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/1
0+5Bが低く抑えられているにもかかわらず、その溶
接性はHT60に比較して著しく劣っていた。このため
現場溶接施工時には溶接割れ防止、溶接部の硬さ低減の
観点から、200℃以上の予熱が必要とされ、施工能率
の著しい低下を招いていた。これはHT80がB添加に
よる焼入性増大効果に大きく依存し、焼入焼戻組織(焼
戻マルテンサイトあるいは下部ベイナイト)によって優
れた強度、靭性を達成しているため、溶接時(特に小入
熱溶接時)に溶接熱影響部(HAZ)の硬化が著しいこ
とによる。また高層建築用鋼では地震時にそのエネルギ
ーを吸収し建物の倒壊を防ぐため、降伏比(YR)の低
い鋼(YR≦85%)が要求されるが、焼入焼戻組織の
HT80は降伏比が高く、耐震性が劣っていた。
HT80と言う)はB添加鋼を焼入焼戻処理することに
よって製造していた。しかし、B添加HT80は溶接性
の指標であるPcm=C+Si/30+Mn/20+Cu
/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/1
0+5Bが低く抑えられているにもかかわらず、その溶
接性はHT60に比較して著しく劣っていた。このため
現場溶接施工時には溶接割れ防止、溶接部の硬さ低減の
観点から、200℃以上の予熱が必要とされ、施工能率
の著しい低下を招いていた。これはHT80がB添加に
よる焼入性増大効果に大きく依存し、焼入焼戻組織(焼
戻マルテンサイトあるいは下部ベイナイト)によって優
れた強度、靭性を達成しているため、溶接時(特に小入
熱溶接時)に溶接熱影響部(HAZ)の硬化が著しいこ
とによる。また高層建築用鋼では地震時にそのエネルギ
ーを吸収し建物の倒壊を防ぐため、降伏比(YR)の低
い鋼(YR≦85%)が要求されるが、焼入焼戻組織の
HT80は降伏比が高く、耐震性が劣っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は建築用HT8
0の安価な製造技術を提供するものである。本発明法に
基づいて製造したHT80は、小入熱溶接や拘束溶接
においても溶接割れが発生しにくく、溶接施工において
予熱を軽減あるいは省略することが可能であること、
本HT80を用いた建築物は地震のエネルギーを吸収し
優れた耐震性を有すること、などの特徴を持つ。
0の安価な製造技術を提供するものである。本発明法に
基づいて製造したHT80は、小入熱溶接や拘束溶接
においても溶接割れが発生しにくく、溶接施工において
予熱を軽減あるいは省略することが可能であること、
本HT80を用いた建築物は地震のエネルギーを吸収し
優れた耐震性を有すること、などの特徴を持つ。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の具体的手段を下
記(1),(2)に示す。 (1)重量比でC:0.05〜0.11%、Si:0.
5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03%以
下、S:0.005%以下、Mo:0.10〜0.60
%、V:0.15〜0.65%、Ti:0.005〜
0.025%、Al:0.06%以下、N:0.012
%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな
る実質的にBを含有しない鋼を熱間圧延後、Ac3 〜1
000℃の温度範囲に再加熱して焼き入れし、さらに7
50〜870℃に再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変
態点以下の温度範囲で焼戻処理することを特徴とする厚
み70mm以下の溶接性の優れた低降伏比780N/mm2
級高張力鋼の製造法。
記(1),(2)に示す。 (1)重量比でC:0.05〜0.11%、Si:0.
5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03%以
下、S:0.005%以下、Mo:0.10〜0.60
%、V:0.15〜0.65%、Ti:0.005〜
0.025%、Al:0.06%以下、N:0.012
%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな
る実質的にBを含有しない鋼を熱間圧延後、Ac3 〜1
000℃の温度範囲に再加熱して焼き入れし、さらに7
50〜870℃に再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変
態点以下の温度範囲で焼戻処理することを特徴とする厚
み70mm以下の溶接性の優れた低降伏比780N/mm2
級高張力鋼の製造法。
【0005】(2)重量比でC:0.05〜0.11
%、Si:0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、
P:0.03%以下、S:0.005%以下、Mo:
0.10〜0.60%、V:0.15〜0.65%、T
i:0.005〜0.025%、Al:0.06%以
下、N:0.012%以下さらにNb:0.005〜
0.05%、Cr:0.05〜0.70%、Cu:0.
05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Ca:
0.001〜0.006%の1種または2種以上を含有
し、残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にB
を含有しない鋼を熱間圧延後、Ac3 〜1000℃の温
度範囲に再加熱して焼き入れし、さらに750〜870
℃に再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温
度範囲で焼戻処理することを特徴とする厚み70mm以下
の溶接性の優れた低降伏比780N/mm2 級高張力鋼の
製造法。
%、Si:0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、
P:0.03%以下、S:0.005%以下、Mo:
0.10〜0.60%、V:0.15〜0.65%、T
i:0.005〜0.025%、Al:0.06%以
下、N:0.012%以下さらにNb:0.005〜
0.05%、Cr:0.05〜0.70%、Cu:0.
05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Ca:
0.001〜0.006%の1種または2種以上を含有
し、残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にB
を含有しない鋼を熱間圧延後、Ac3 〜1000℃の温
度範囲に再加熱して焼き入れし、さらに750〜870
℃に再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温
度範囲で焼戻処理することを特徴とする厚み70mm以下
の溶接性の優れた低降伏比780N/mm2 級高張力鋼の
製造法。
【0006】
【作用】以下、本発明について説明する。発明者らの研
究によれば、HT80の溶接性や低降伏比を画期的に改
善するには、B無添加が必須である。B無添加による焼
入性の低下に伴う強度確保のため焼入、焼戻によるVの
析出硬化を利用した。また微量Ti添加、熱処理条件の
最適化により結晶粒を微細化した鋼では、Vによる析出
硬化を行っても、極めて優れた低温靭性を示すことがわ
かった。
究によれば、HT80の溶接性や低降伏比を画期的に改
善するには、B無添加が必須である。B無添加による焼
入性の低下に伴う強度確保のため焼入、焼戻によるVの
析出硬化を利用した。また微量Ti添加、熱処理条件の
最適化により結晶粒を微細化した鋼では、Vによる析出
硬化を行っても、極めて優れた低温靭性を示すことがわ
かった。
【0007】HT80としての特性を得るために必要な
最低のV量は0.15%である。しかし、0.65%を
超えるVの添加では全量が固溶せず、析出硬化に寄与し
ないため、その上限を0.65%とした。次に前述のよ
うなVの効果を十分に発揮させるためには、製造法が適
切でなければならない。このため熱間圧延後の熱処理条
件を限定する必要がある。
最低のV量は0.15%である。しかし、0.65%を
超えるVの添加では全量が固溶せず、析出硬化に寄与し
ないため、その上限を0.65%とした。次に前述のよ
うなVの効果を十分に発揮させるためには、製造法が適
切でなければならない。このため熱間圧延後の熱処理条
件を限定する必要がある。
【0008】まずHT80の強度と優れた低温靭性を得
るためには、熱間圧延後に再加熱によりVの固溶並びに
γに再変態させることでの組織の微細化が必要で、この
ため再加熱温度の下限をAc3 変態点とする。再加熱温
度が高すぎると結晶粒が大きくなって低温靭性が劣化す
るので、その上限は1000℃にしなければならない。
続いて750〜870℃に再加熱後、再び焼入し、Ac
1 以下の温度に再加熱して焼戻処理する。750〜87
0℃の再加熱・焼入する理由は、降伏比の低減のためで
ある。一般にVで析出強化した鋼はYRが著しく高い。
そこで750〜870℃の(γ+α)2相域に再加熱・
焼入を行う。
るためには、熱間圧延後に再加熱によりVの固溶並びに
γに再変態させることでの組織の微細化が必要で、この
ため再加熱温度の下限をAc3 変態点とする。再加熱温
度が高すぎると結晶粒が大きくなって低温靭性が劣化す
るので、その上限は1000℃にしなければならない。
続いて750〜870℃に再加熱後、再び焼入し、Ac
1 以下の温度に再加熱して焼戻処理する。750〜87
0℃の再加熱・焼入する理由は、降伏比の低減のためで
ある。一般にVで析出強化した鋼はYRが著しく高い。
そこで750〜870℃の(γ+α)2相域に再加熱・
焼入を行う。
【0009】部分的にγ変態させることによって未変態
の領域は軟化、γ変態領域は硬化してミクロ組織が2相
化(軟らかい相と硬い相)し、降伏比の低減が可能とな
る。再加熱温度が750℃以下では、γに変態する領域
が小さいために、前述の効果が得られない。しかし、8
70℃を超えると完全にγ変態し、目的とする2相組織
が得られず、低YR化や優れた靭性が達成できない。焼
戻処理はVの析出効果を発揮させるために必須である。
しかし、その温度がAc1 点を超えると強度が著しく低
下するので、Ac1 点以下としなければならない(望ま
しい焼戻温度は450〜650℃である)。
の領域は軟化、γ変態領域は硬化してミクロ組織が2相
化(軟らかい相と硬い相)し、降伏比の低減が可能とな
る。再加熱温度が750℃以下では、γに変態する領域
が小さいために、前述の効果が得られない。しかし、8
70℃を超えると完全にγ変態し、目的とする2相組織
が得られず、低YR化や優れた靭性が達成できない。焼
戻処理はVの析出効果を発揮させるために必須である。
しかし、その温度がAc1 点を超えると強度が著しく低
下するので、Ac1 点以下としなければならない(望ま
しい焼戻温度は450〜650℃である)。
【0010】しかし、Vの添加量や製造法が適切であっ
ても、基本成分が適当でないとHT80としての優れた
特性が得られない。以下、この点について説明する。C
の下限0.05%は、母材および溶接部の強度確保なら
びにNb,Vなどの添加時に、これらの効果を発揮させ
るための最小量である。しかしC量が多すぎると溶接性
の著しい劣化を招くので、上限を0.11%とした。
ても、基本成分が適当でないとHT80としての優れた
特性が得られない。以下、この点について説明する。C
の下限0.05%は、母材および溶接部の強度確保なら
びにNb,Vなどの添加時に、これらの効果を発揮させ
るための最小量である。しかしC量が多すぎると溶接性
の著しい劣化を招くので、上限を0.11%とした。
【0011】Siは多く添加すると溶接性、HAZ靭性
を劣化させるため、上限を0.5%とした。鋼の脱酸は
Al,Tiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加す
る必要はない。Mnは強度、靭性を確保する上で不可欠
な元素であり、その下限は0.6%である。しかしMn
量が多すぎると焼入性が増加して溶接性、HAZ靭性を
劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助
長するので上限を1.6%とした。
を劣化させるため、上限を0.5%とした。鋼の脱酸は
Al,Tiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加す
る必要はない。Mnは強度、靭性を確保する上で不可欠
な元素であり、その下限は0.6%である。しかしMn
量が多すぎると焼入性が増加して溶接性、HAZ靭性を
劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助
長するので上限を1.6%とした。
【0012】本発明鋼において不純物であるP,Sをそ
れぞれ0.03%、0.005%以下とした理由は、母
材、溶接部の低温靭性をより一層向上させるためであ
る。Pの低減は粒界破壊を防止し、S量の低減はMnS
による靭性の劣化を防止する。好ましいP,S量はそれ
ぞれ0.01%,0.002%以下である。Moは強
度、靭性を共に向上させる元素で、HT80には0.1
0%以上が必須である。しかし多すぎると溶接性、HA
Z靭性上好ましくなく、その上限は0.60%である。
れぞれ0.03%、0.005%以下とした理由は、母
材、溶接部の低温靭性をより一層向上させるためであ
る。Pの低減は粒界破壊を防止し、S量の低減はMnS
による靭性の劣化を防止する。好ましいP,S量はそれ
ぞれ0.01%,0.002%以下である。Moは強
度、靭性を共に向上させる元素で、HT80には0.1
0%以上が必須である。しかし多すぎると溶接性、HA
Z靭性上好ましくなく、その上限は0.60%である。
【0013】Tiは炭窒化物を形成してHAZ靭性を向
上させる。Al量が少ない場合、Tiの酸化物を形成し
HAZ靭性を向上させるが、0.005%未満では効果
がなく、0.025%を超えるとHAZ靭性に好ましく
ない影響があるため、0.005〜0.025%に限定
する。Alは一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、
SiおよびTiによっても脱酸は行われるので本発明鋼
については下限は限定しない。しかしAl量が多くなる
と鋼の清浄度が悪くなり、溶接部の靭性が劣化するので
上限を0.06%とした。
上させる。Al量が少ない場合、Tiの酸化物を形成し
HAZ靭性を向上させるが、0.005%未満では効果
がなく、0.025%を超えるとHAZ靭性に好ましく
ない影響があるため、0.005〜0.025%に限定
する。Alは一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、
SiおよびTiによっても脱酸は行われるので本発明鋼
については下限は限定しない。しかしAl量が多くなる
と鋼の清浄度が悪くなり、溶接部の靭性が劣化するので
上限を0.06%とした。
【0014】Nは一般的に不可避的不純物として鋼中に
含まれるものであるが、Vと結合して炭窒化物を形成し
て強度を増加させ、またTiNを形成して前述のように
HT80の性質を高める。このためN量として最低0.
001%が必要である。しかしながらN量が多くなると
HAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブの表面キズの発生な
どを助長するので、その上限を0.012%とした。
含まれるものであるが、Vと結合して炭窒化物を形成し
て強度を増加させ、またTiNを形成して前述のように
HT80の性質を高める。このためN量として最低0.
001%が必要である。しかしながらN量が多くなると
HAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブの表面キズの発生な
どを助長するので、その上限を0.012%とした。
【0015】本発明鋼の基本成分は以上のとおりであ
り、十分に目的を達成できるが、さらに目的に対し特性
を高めるため、以下に述べる元素即ちNb,Ni,C
u,Cr,Caを選択的に添加すると強度、靭性の向上
について、さらに好ましい結果が得られる。
り、十分に目的を達成できるが、さらに目的に対し特性
を高めるため、以下に述べる元素即ちNb,Ni,C
u,Cr,Caを選択的に添加すると強度、靭性の向上
について、さらに好ましい結果が得られる。
【0016】次に、前記添加元素とその添加量について
説明する。NbはVとほぼ同じ効果をもつ元素である。
0.005%以下では効果が少なく、0.05%を超え
るとHAZ靭性に好ましくない影響がある。Niは溶接
性、HAZ靭性に悪影響を及ぼすことなく、母材の強
度、靭性を向上させるが、0.05%以下では効果が薄
く、1.0%以上では極めて高価になるため経済性を失
うので、上限は1.0%とした。
説明する。NbはVとほぼ同じ効果をもつ元素である。
0.005%以下では効果が少なく、0.05%を超え
るとHAZ靭性に好ましくない影響がある。Niは溶接
性、HAZ靭性に悪影響を及ぼすことなく、母材の強
度、靭性を向上させるが、0.05%以下では効果が薄
く、1.0%以上では極めて高価になるため経済性を失
うので、上限は1.0%とした。
【0017】CuはNiとほぼ同様な効果を持つほか、
Cu析出物による強度の増加や耐食性や耐候性の向上に
も効果を有する。この場合Cu量が0.5%以上で、そ
の効果が著しい。しかし、Cu量が1.0%を超えると
熱間圧延時にCu割れが発生し製造が困難になり、また
0.05%以下では効果がないのでCu量は0.05〜
1.0%に限定する。
Cu析出物による強度の増加や耐食性や耐候性の向上に
も効果を有する。この場合Cu量が0.5%以上で、そ
の効果が著しい。しかし、Cu量が1.0%を超えると
熱間圧延時にCu割れが発生し製造が困難になり、また
0.05%以下では効果がないのでCu量は0.05〜
1.0%に限定する。
【0018】Crは母材、溶接部の強度を高める元素
で、その下限を0.05%とした。しかし、多すぎると
溶接性やHAZ靭性を著しく劣化させるので、その上限
を0.7%とした。Caは硫化物(MnS)の形態を制
御し、シャルピー吸収エネルギーを増加させ低温靭性を
向上させる効果がある。しかしCa量は0.001%未
満では実用上効果がなく、0.006%を超えるとCa
O,CaSが多量に生成して大型介在物となり、鋼の靭
性のみならず清浄度も害し溶接性、耐ラメラテア性にも
悪影響を与えるので、Ca添加量の範囲を0.001〜
0.006%とする。本発明は厚板ミルに適用すること
がもっとも好ましいが、ホットコイル、形鋼などにも適
用できる。
で、その下限を0.05%とした。しかし、多すぎると
溶接性やHAZ靭性を著しく劣化させるので、その上限
を0.7%とした。Caは硫化物(MnS)の形態を制
御し、シャルピー吸収エネルギーを増加させ低温靭性を
向上させる効果がある。しかしCa量は0.001%未
満では実用上効果がなく、0.006%を超えるとCa
O,CaSが多量に生成して大型介在物となり、鋼の靭
性のみならず清浄度も害し溶接性、耐ラメラテア性にも
悪影響を与えるので、Ca添加量の範囲を0.001〜
0.006%とする。本発明は厚板ミルに適用すること
がもっとも好ましいが、ホットコイル、形鋼などにも適
用できる。
【0019】
【実施例】周知の転炉、連続鋳造、厚板工程により鋼板
を製造し、その強度、靭性、溶接性(yスリット割れ
性、硬さ)などを調査した。表1の1〜9に本発明鋼、
10〜17に比較鋼の化学成分を示す。表2に本発明鋼
と比較鋼の鋼板製造条件とその機械的性質、溶接性を示
す。
を製造し、その強度、靭性、溶接性(yスリット割れ
性、硬さ)などを調査した。表1の1〜9に本発明鋼、
10〜17に比較鋼の化学成分を示す。表2に本発明鋼
と比較鋼の鋼板製造条件とその機械的性質、溶接性を示
す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】表2の本発明鋼1〜9は、母材の強度、靭
性ならびに溶接性がバランスよく達成できている。これ
に対し比較鋼10ではV量が不足しているため、強度不
足となっている。比較鋼11はC量が低く、強度不足と
なっている。比較鋼12ではBが添加されているため、
HAZ硬さが極めて高く、またyスリット割れ停止温度
も非常に高くなっている。
性ならびに溶接性がバランスよく達成できている。これ
に対し比較鋼10ではV量が不足しているため、強度不
足となっている。比較鋼11はC量が低く、強度不足と
なっている。比較鋼12ではBが添加されているため、
HAZ硬さが極めて高く、またyスリット割れ停止温度
も非常に高くなっている。
【0024】比較鋼13ではMo量が低く、強度不足と
なっている。また比較鋼14では再加熱温度が880℃
と高く、殆どがγ化されたためYRが高くなっている。
比較鋼15では焼戻温度が710℃と高く軟化が著し
く、強度が不足している。比較鋼16では再加熱温度が
730℃と低いため、γ化が不十分で強度不足である。
比較鋼17では最初の焼入時の加熱温度が1050℃と
高く、結晶粒の微細化が十分に行えないため、母材靭性
が不良である。
なっている。また比較鋼14では再加熱温度が880℃
と高く、殆どがγ化されたためYRが高くなっている。
比較鋼15では焼戻温度が710℃と高く軟化が著し
く、強度が不足している。比較鋼16では再加熱温度が
730℃と低いため、γ化が不十分で強度不足である。
比較鋼17では最初の焼入時の加熱温度が1050℃と
高く、結晶粒の微細化が十分に行えないため、母材靭性
が不良である。
【0025】
【発明の効果】本発明の化学成分および製造法で製造し
た厚鋼板、形鋼、ホットコイルなどの鋼材は、溶接性に
優れた低降伏比HT80である。その結果、現場での溶
接施工能率や安全性が著しく向上し建築物などの安全性
を大きく高めることができる。
た厚鋼板、形鋼、ホットコイルなどの鋼材は、溶接性に
優れた低降伏比HT80である。その結果、現場での溶
接施工能率や安全性が著しく向上し建築物などの安全性
を大きく高めることができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比で C :0.05〜0.11%、 Si:0.5%
以下、 Mn:0.6〜1.6%、 P :0.03
%以下、 S :0.005%以下、 Mo:0.10
〜0.60%、 V :0.15〜0.65%、 Ti:0.00
5〜0.025%、 Al:0.06%以下、 N :0.01
2%以下 残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にBを含
有しない鋼を熱間圧延後、Ac3 〜1000℃の温度範
囲に再加熱して焼き入れし、さらに750〜870℃に
再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温度範
囲で焼戻処理することを特徴とする溶接性の優れた低降
伏比780N/mm2 級高張力鋼の製造法。 - 【請求項2】 重量比で Nb:0.005〜0.05%、 Cr:0.05
〜0.70%、 Cu:0.05〜1.0%、 Ni:0.05
〜1.0%、 Ca:0.001〜0.006% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
項1記載の溶接性の優れた低降伏比780N/mm2 級高
張力鋼の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3673993A JPH06248336A (ja) | 1993-02-25 | 1993-02-25 | 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3673993A JPH06248336A (ja) | 1993-02-25 | 1993-02-25 | 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06248336A true JPH06248336A (ja) | 1994-09-06 |
Family
ID=12478102
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3673993A Withdrawn JPH06248336A (ja) | 1993-02-25 | 1993-02-25 | 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06248336A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103667909A (zh) * | 2013-12-13 | 2014-03-26 | 武汉钢铁(集团)公司 | 一种屈强比≤0.65的移动式海洋平台用钢及生产方法 |
CN111440991A (zh) * | 2020-04-07 | 2020-07-24 | 湖南华菱涟源钢铁有限公司 | 一种屈服强度800MPa级热轧钢板及其制造方法 |
-
1993
- 1993-02-25 JP JP3673993A patent/JPH06248336A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103667909A (zh) * | 2013-12-13 | 2014-03-26 | 武汉钢铁(集团)公司 | 一种屈强比≤0.65的移动式海洋平台用钢及生产方法 |
CN111440991A (zh) * | 2020-04-07 | 2020-07-24 | 湖南华菱涟源钢铁有限公司 | 一种屈服强度800MPa级热轧钢板及其制造方法 |
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