JPH062370A - 高力ボルトによる摩擦接合用オーステナイト系ステンレス鋼添え板およびそれを用いる接合方法 - Google Patents

高力ボルトによる摩擦接合用オーステナイト系ステンレス鋼添え板およびそれを用いる接合方法

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JPH062370A
JPH062370A JP16269092A JP16269092A JPH062370A JP H062370 A JPH062370 A JP H062370A JP 16269092 A JP16269092 A JP 16269092A JP 16269092 A JP16269092 A JP 16269092A JP H062370 A JPH062370 A JP H062370A
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雅之 天藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、例えば建築構造物等でステンレス
鋼材を使用する場合に、高力ボルトによる摩擦接合部の
締結力低下を防止できるオーステナイト系ステンレス鋼
添え板とその接合方法に関するものである。 【構成】 接合すべき複数個のステンレス鋼材に重ね、
該材料を貫通する高力ボルトにて締結・接合する、重量
%でNを0.1%以上含有し、常温で35kg/mm2 以上
の0.2%耐力を有することを特徴とする高力ボルトに
よる摩擦接合用オーステナイト系ステンレス鋼添え板と
それを用いた摩擦接合方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば建築構造物の部
材として使用されるステンレス鋼材を摩擦接合するに際
し、ステンレス鋼の常温クリープに起因する摩擦接合部
の締結力低下をよく防止し得る摩擦接合用オーステナイ
ト系ステンレス鋼添え板およびそれを用いる高力ボルト
による摩擦接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、建築構造物等の構造物にステンレ
ス鋼材が使用されることが増大してきている。ところ
が、ステンレス鋼材は、一般構造用鋼である炭素鋼と異
なり、常温でクリープ変形する性質を有する。構造物の
部材を高力ボルトによって締結・接合するときに、その
鋼材が常温でクリープ変形すると、接合部の摩擦力が経
時的に低下する問題が生じる。この摩擦力の低下は構造
物にとって重大な問題である。
【0003】従って、建築構造物等の構造物にステンレ
ス鋼材を使用する場合には、従来、溶接接合あるいは接
合力の弱い中ボルトを多数使用して部材を接合する方法
が採られてきた。
【0004】前記ステンレス鋼の常温クリープ変形に起
因する摩擦接合部の締結力低下を防止する方法が、例え
ば特開平02−72209号公報に開示されている。こ
の先行技術は、ステンレス鋼材をボルトによって締結・
接合するに先んじて接合部を予備圧縮し、被締結体を加
工硬化させ常温クリープ変形に起因する締結力低下を防
止するようにした点によって特徴づけられる。しかしな
がら、この先行技術によるときは、予備圧縮のための装
置が必要であり、施工時の作業性を低下せしめるという
問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ステンレス
鋼を構造用材料として使用するに際し構造上重大な問題
となる高力ボルトによる摩擦接合部の締結力低下を、施
工現場で特別な予備圧縮装置等を必要とすることなくま
た、作業性を低下させることのない手段で防止し、締結
後長期間経過しても当初の締結力が十分保持される摩擦
接合方法およびそのためのオーステナイト系ステンレス
鋼添え板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするとこ
ろは、接合すべき複数個のステンレス鋼材を重ね若しく
は突き合わせ、該複数個のステンレス鋼材を高力ボルト
によって締結・接合するに際し、高力ボルト頭部および
ナットそれぞれと前記複数個のステンレス鋼材間に介挿
させる、重量%でNを0.10%以上含有し常温で35
kg/mm2 以上の0.2%耐力を有する高力ボルトによる
摩擦接合用オーステナイト系ステンレス鋼添え板にあ
る。
【0007】さらに、本発明は、接合すべき複数個のス
テンレス鋼材を重ね若しくは突き合わせ、該複数個のス
テンレス鋼材とこれを締結・接合すべき高力ボルトの頭
部およびナットの間に、重量%でNを0.10%以上含
有し常温で35kg/mm2 以上の0.2%耐力を有するオ
ーステナイト系ステンレス鋼添え板を介挿させて高力ボ
ルトによって締結・接合することを特徴とする摩擦接合
方法を要旨とする。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明者
等は、ステンレス鋼を摩擦接合したときに生じる締結力
の低下は、ボルト座金直下にかかる高い圧縮応力によっ
てステンレス鋼が常温でクリープ変形することに起因
し、この常温クリープを抑制するためには被締結体であ
るオーステナイト系ステンレス鋼中のN含有量を増加さ
せ、その降伏強度を高くすることが有効であることを見
出した。
【0009】また、構造材全体の降伏強度を上げなくて
も、圧縮応力の集中する締結部のボルト座金直下の降伏
強度を上げれば十分であり、そのためには被締結構造材
料とボルト座金の間に、図1に示すごとく降伏強度の高
いステンレス鋼添え板を挟んで高力ボルトで接合するこ
とが有効であることを見出した。
【0010】そして、Nを含有するオーステナイト系ス
テンレス鋼の添え板を使って高力ボルト締結体を製作
し、その締結力低下量を測定することから締結力低下抑
制に必要なオーステナイト系ステンレス鋼添え板の降伏
強度と、それを達成させるのに必要なN含有量を求め
た。その結果、重量%でNを0.10%以上含有し、常
温における0.2%耐力が35kg/mm2 以上であれば十
分な効果が現れることが明確になった。
【0011】
【作用】本発明の締結力低下を防止する摩擦接合方法と
そのステンレス鋼添え板についてさらに詳細に説明す
る。図1に本発明で提案する降伏強度の高いオーステナ
イト系ステンレス鋼添え板を使った高力ボルトによる摩
擦接合方法の概略図を示す。図中高力ボルトaによって
座金b直下に高い圧縮応力が導入されるため、その部位
に降伏強度が高く常温クリープの発生しにくいステンレ
ス鋼添え板cを適用する。この添え板によってステンレ
ス鋼構造材dには添え板との接触面全体から、平均的に
低い圧縮応力が負荷されるために局所的に高い圧縮応力
が発生せず、被締結体の常温クリープによる締結力低下
は防止できる。
【0012】ただしこのステンレス鋼添え板の厚さが不
足すると、被締結体への圧縮応力の集中を抑制する効果
が小さくなるため、添え板の厚さは3mm以上とすること
が望ましい。この接合方法により、構造材dには通常の
強度を有するステンレス鋼材を使用することができ、ま
たボルト締め付けの際に特別な装置、手間を要せず、今
まで使用されてきた高力ボルトおよび座金でその施工基
準に従って締め付けることができる。
【0013】オーステナイト系ステンレス鋼の降伏強度
を上昇させ、常温でのクリープ変形を抑制するにはNの
添加が有効である。Nはオーステナイト系ステンレス鋼
中に多量に固溶することができ、ステンレス鋼の最大の
特徴である耐食性を低下させることなく降伏強度を上昇
させることができる元素である。そしてN添加による降
伏強度、すなわち0.2%耐力の上昇は常温クリープ変
形の抑制にも効果があることが本発明者らによって確認
されている。
【0014】さらに、高力ボルトによって導入される圧
縮応力下でクリープ変形を抑制するには、ボルト座金直
下に0.10%以上のNを含有し、その0.2%耐力が
35kg/mm2 以上であるオーステナイト系ステンレス鋼
添え板を挿入しなければならないことを明らかにした。
なお0.2%耐力で35kg/mm2 を0.1%耐力に換算
すると約30kg/mm2 である。
【0015】本発明のオーステナイト系ステンレス鋼添
え板では、Nを0.10%以上含有し、その0.2%耐
力が35kg/mm2 以上であれば十分な効果を得ることが
できる。従って、N以外の成分について特に言及する必
要はないが、その他の成分でC,Si,P含有量の増加
あるいはNb,Ti,Moの添加は降伏強度を上昇させ
る効果を有し、またMnあるいはCr含有量の増加はN
の固溶量をさらに増加させ、本発明の効果をさらに向上
させる。
【0016】しかし、これらの元素を過度に添加する
と、耐食性が劣化したり、製造性が低下しコスト上昇を
招いたりする。従って、本発明の効果を確保し、建築構
造物等で使用するのに好ましいオーステナイト系ステン
レス鋼添え板の成分範囲は重量%で、C:0.1%以
下、Si:3%以下、Mn:10%以下、P:0.05
%以下、Cr:17〜30%、Ni:7〜20%、N:
0.10〜0.5%で、必要に応じてMo:5%以下、
NbあるいはTi:0.5%以下を添加できる。
【0017】また、金属組織をオーステナイト単相に維
持することによって、非磁性鋼の接合あるいは非磁性を
要求される接合箇所にも、本発明のオーステナイト系ス
テンレス鋼添え板は有効である。しかし本発明鋼材の一
部にフェライト相あるいはマルテンサイト相を含有して
も本発明の効果に害を与えるものでない。
【0018】
【実施例】図2に示すように、市販されているSUS3
04オーステナイト系ステンレス鋼板(0.2%耐力=
26kg/mm2 )に、Nを添加した各種オーステナイト系
ステンレス鋼添え板を表裏両側から重ね、それらを貫通
するようにF10T相当の高力ボルト4本で締結した。
使用したステンレス鋼添え板はいずれも溶体化熱処理を
施した厚さ9mmの鋼板で、その化学成分と0.2%耐力
は表1のとおりである。
【0019】
【表1】
【0020】表中A〜FはNの含有量が0.10%以上
である本発明ステンレス鋼添え板で、いずれも35kg/
mm2 以上の0.2%耐力を有する。G〜HはN含有量が
0.10%未満の比較鋼種で0.2%耐力はいずれも3
5kg/mm2 未満である。
【0021】締結体は各々2体ずつ製作し、一体は締め
付け直後に引張試験を実施し、締結部がすべり始める荷
重を測定した。もう一体は、締め付け後6ケ月そのまま
放置した後に引張試験を実施した。表2には締結直後の
すべり荷重と6ケ月放置後のすべり荷重との差、つまり
締結力の低下量を締結直後のすべり荷重で除した値(締
結力低下率)を百分率で示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2からNを0.10%以上含有し、その
0.2%耐力が35kg/mm2 以上であるステンレス鋼添
え板で締結したものは、締結力低下が小さいことがわか
る。
【0024】
【発明の効果】本発明のステンレス鋼添え板とその接合
方法で、ステンレス鋼を構造用材料として使用する場合
に問題となる高力ボルトによる摩擦接合部の締結力低下
を防止でき、産業上寄与するところは極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の接合説明図である。
【図2】(a)は本発明の接合を示す平面図、(b)は
(a)の側面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 志村 保美 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 接合すべき複数個のステンレス鋼材を重
    ね若しくは突き合わせ、該複数個のステンレス鋼材を高
    力ボルトによって締結・接合するに際し、高力ボルト頭
    部およびナットそれぞれと前記複数個のステンレス鋼材
    に介挿させる、重量%でNを0.10%以上含有し、常
    温で35kg/mm2 以上の0.2%耐力を有する高力ボル
    トによる摩擦接合用オーステナイト系ステンレス鋼添え
    板。
  2. 【請求項2】 接合すべき複数個のステンレス鋼材を重
    ね若しくは突き合わせ、該複数個のステンレス鋼材とこ
    れを締結・接合すべき高力ボルトの頭部およびナットそ
    れぞれの間に、重量%でNを0.10%以上含有し、常
    温で35kg/mm2 以上の0.2%耐力を有するオーステ
    ナイト系ステンレス鋼添え板を介挿させて高力ボルトに
    よって締結・接合することを特徴とする摩擦接合方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103255839A (zh) * 2013-05-06 2013-08-21 同济大学 钢套石膏型竹节点
JP2016047952A (ja) * 2014-08-28 2016-04-07 Jfeスチール株式会社 高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法

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JP2016047952A (ja) * 2014-08-28 2016-04-07 Jfeスチール株式会社 高強度オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法

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