JPH06224508A - 固体レーザ装置 - Google Patents

固体レーザ装置

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JPH06224508A
JPH06224508A JP954693A JP954693A JPH06224508A JP H06224508 A JPH06224508 A JP H06224508A JP 954693 A JP954693 A JP 954693A JP 954693 A JP954693 A JP 954693A JP H06224508 A JPH06224508 A JP H06224508A
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JP
Japan
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laser
optical element
laser medium
axis
wavelength
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Application number
JP954693A
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Inventor
Katsuhiko Shimomura
克彦 下村
Kenji Suzuki
健司 鈴木
Akira Eda
昭 江田
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基本モード以外の縦モードのレーザ利得を充
分小さくすることによって、モードホップ現象を抑制し
て、極めて安定な出力を得ることができる固体レーザ装
置を提供する。 【構成】 固体レーザ装置は、レーザ媒質23を励起す
るためのポンピング光26を放射する半導体レーザ20
と、ポンピング光26を集束するレンズ系21a,21
bと、凹面ミラー22、Ndが1%程度ドープされたN
dYVO4 からなるレンズ媒質23およびKTiOPO
4 からなる非線形光学素子24などからなる光共振器2
5とで構成されている。レーザ媒質23のレターデーシ
ョンによる位相差Dが、nπ±π/20(nは整数)の
範囲内に設定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光記録、通信、計測な
どの分野で、光源として使用される固体レーザ装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】図6(a)は、従来の固体レーザ装置の
一例を示す構成図である。この固体レーザ装置は、レー
ザ媒質62を励起するためのポンピング光66を放射す
る光源60と、ポンピング光66を集束するレンズ系6
1と、レーザ媒質62、非線形光学素子63および凹面
ミラー64などから成る光共振器65などが、光軸68
上に配置されて構成されている。以下、レーザ媒質62
が正の1軸性結晶であるNdが1%程度ドープされたN
d:YVO4 で形成され、非線形光学素子63が正の2
軸性結晶であるKTiOPO4 で形成されており、光源
60として発振波長が809nmの半導体レーザが使用
される例を用いて説明する。
【0003】光源60から放射されたポンピング光66
がレンズ系61によって集束されて、レーザ媒質62に
入射すると、レーザ媒質62中に反転分布が形成され、
Nd:YVO4 結晶の場合、波長1064nmの光増幅
が可能となる。レーザ媒質62の表面62aにはポンピ
ング光66である波長809nmに対して透過率が高
く、かつ波長1064nmに対して反射率が高いコーテ
ィングが施され、一方、凹面ミラー64の表面64aに
は波長532nmに対して透過率が高く、かつ波長10
64nmに対して反射率が高いコーティングが施されて
おり、これら2つの表面62a,64aによって波長1
064nmに対する光共振器が形成される。
【0004】レーザ媒質62による光増幅作用によって
発振した波長1064nmのレーザ光は、非線形光学素
子63を通過することによって、第2高調波である波長
532nmに変換され出力光67が得られる。なお、非
線形光学素子63の表面63a、63bは波長1064
nmおよび波長532nmに対して透過率が高いコーテ
ィングが施され、レーザ媒質62の表面62bには波長
1064nmに対して透過率が高いコーティングが施さ
れる。
【0005】図6(b)は、図6(a)に示したレーザ
媒質62と非線形光学素子63の偏光軸の配置を示す部
分斜視図である。レーザ媒質62であるNd:YVO4
結晶は正の1軸性結晶であって、主屈折率ncが他の2
つの主屈折率naより大きく、かつ発振容易軸であるc
軸が、光軸68に対して垂直上方に向き、主屈折率na
のa軸が光軸68に一致するように配置されている。
【0006】一方、非線形光学素子63であるKTiO
PO4 結晶は正の2軸性結晶であって、図6(c)に示
すように、屈折率楕円体の主屈折率がnx<ny<nz
となるようx,y,z軸を選ぶと、z軸とy′軸のなす
角度θ=90°、y軸とy′軸のなす角度φ=21.3
°の方向に傾いたz−y′平面に平行に切出されている
(J.Q.Yao and Theodore S.Fahlen、J.Appl.Phy
s.vol55(1),65(1984年))。したがって、その偏光軸
はz軸とy′軸となって、図6(b)に示すように、
x′軸が光軸68と一致し、かつz軸はレーザ媒質62
のc軸に対して光軸68方向から見てα=45°の角度
で傾いて配置される。
【0007】この固体レーザ装置では、光共振器内部に
閉じ込められる波長1064nmのレーザ光が非線形光
学素子63において、z軸方向に直線偏光した基本波、
およびy′軸方向に直線偏光した基本波の存在によって
第2高調波が発生する、いわゆるタイプIIの位相整合
条件で高調波変換されることによって、波長532nm
のコヒーレント光として凹面ミラー64を通して出力光
67が外部へ放射される。
【0008】ここで、非線形光学素子63は、特定の縦
モード(以下、基本モードという)の波長に対して片道
のレターデーションによる位相差がmπ(ただし、mは
整数)となるように調整されているため、レーザ媒質6
2内での基本モードの偏光状態は、発振容易軸であるc
軸と平行な直線偏光に保たれる。一般には、レーザ媒質
62の利得のピーク波長付近の縦モードを基本モードと
して選択する。非線形光学素子63のレターデーション
は波長に依存して変化するので、基本モード以外の縦モ
ードの偏光方向はc軸と平行にはならない。この結果、
基本モードとそれ以外の縦モードとの間にレーザ利得の
差別化が図られ、基本モードのみの単一縦モードで発振
することが期待される。このように、非線形光学素子6
3をいわゆる複屈折フィルターとして利用することによ
り、固体レーザ装置を基本モードのみの単一縦モードで
発振させ、出力を安定化させることが試みられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
固体レーザ装置では、光共振器65において隣接する縦
モード間の、利得の差別化が不十分である。このため利
得が最大の縦モードでレーザ発振が生ずる場合でも高調
波変換損失等が要因となって、利得が最大でないたとえ
ば隣接する縦モードにおいてもレーザ発振が可能となる
ことがある。この結果、発振可能な縦モード間で発振モ
ードが時間経過とともに変化する、いわゆるモードホッ
プ現象が生じ、出力光67の強度が著しく不安定とな
る、という課題がある。
【0010】本発明の目的は、上述の課題を解決するた
め、基本モード以外の縦モードのレーザ利得を十分小さ
くすることによってモードホップ現象を抑制して、極め
て安定な出力光を得ることができる固体レーザ装置を提
供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、複屈折性およ
びレーザ利得の偏光依存性を持つレーザ媒質、ならびに
複屈折光学素子を含む光共振器と、前記レーザ媒質を励
起するための半導体レーザとを備える固体レーザ装置に
おいて、当該レーザ共振器の発振波長において、前記レ
ーザ媒質の片道レターデーションにより前記レーザ媒質
の偏光軸を偏光方向とする2偏光成分の間に生ずる位相
差Dが、 nπ−π/20≦D(rad)≦nπ+π/20(ただ
し、nは整数) の条件を具備することを特徴とする固体レーザ装置であ
る。
【0012】また本発明においては、前記レーザ媒質
が、Nd:YVO4 またはNd:LiYF4であること
が好ましい。
【0013】さらに本発明においては、前記複屈折光学
素子が非線形光学素子であり、かつ当該非線形光学素子
で前記レーザ媒質によって発振するレーザ光の波長を変
換することが好ましい。
【0014】さらに本発明においては、前記非線形光学
素子が、KTiOPO4 であることが好ましい。
【0015】
【作用】本発明に従えば、レーザ共振器の発振波長にお
いて、レーザ媒質の片道レターデーションによりレーザ
媒質中の2偏光成分の間に生ずる位相差Dが、nπ−π
/20≦D≦nπ+π/20(ただし、nは整数)の条
件を具備することによって、基本モード以外の縦モード
の利得が大きく減少して、基本モードの差別化を大きく
することができる。
【0016】図1は、本発明の固体レーザ装置に適用可
能なレーザ共振器の一例を示す斜視図である。このレー
ザ共振器は、レーザ媒質1と、複屈折光学素子2と、反
射鏡3とで構成されており、レーザ媒質1の表面1aお
よび反射鏡3の表面にレーザ媒質1の発振波長において
高反射率となるコーティングが施されている。なお、レ
ーザ媒質1の冷却および温度調整によるレターデーショ
ンの制御のため、ならびに複屈折光学素子2の温度調整
によるレターデーションの制御のために、ペルチェ素子
などの温度制御装置4,5がそれぞれ設けられている。
【0017】レーザ媒質1は、発振容易軸をa軸とする
レーザ利得の偏光依存性を有し、かつ光軸6に対して直
交2方向に偏光軸a,bを持つ複屈折性を有する。ここ
で、偏光軸a,bの屈折率をそれぞれna,nbとする
と、na<nbである。
【0018】複屈折光学素子2は、光軸6に対して直交
2方向に偏光軸c,dを持つ複屈折性を有し、それぞれ
の屈折率をnc,ndとすると、nc<ndである。こ
のc軸が、レーザ媒質1のa軸に対して角度α、たとえ
ばα=45゜で傾いて配置されている。
【0019】このようなレーザ共振器において、複屈折
光学素子2のレターデーションを、たとえば温度制御手
段5の温度調整によって制御して、ある特定の発振モー
ド(以下、基本モードという)の波長λ0において生ず
る位相差をnπに設定することによって、基本モードの
差別化を図ることができる。
【0020】このときのレーザ媒質1のレターデーショ
ンの影響について検討するため、レーザ媒質1のレター
デーションにより生ずる位相差をδ1、複屈折光学素子
2のレターデーションによる位相差をδ2、としてジョ
ーンズマトリクスによる偏光解析を行う。
【0021】図1に示したレーザ共振器において、レー
ザ媒質1の表面1aを基準として、ここからレーザ共振
器内を往復する光のジョーンズマトリクスMは、次の式
(1)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】ここで、C(δ1,0)はレーザ媒質1で
生ずる位相の変化であり、C(δ2,0)は複屈折光学
素子2で生ずる位相の変化であり、R(α)は角度αの
回転による座標変換を示し、各マトリクスの内容は次の
式(2)〜(5)で示される。
【0024】
【数2】
【0025】ここで、δ1はレーザ媒質1の片道レター
デーションで生ずる位相差であり、δ2は複屈折光学素
子2の片道レターデーションで生ずる位相差であり、α
はレーザ媒質1の偏光軸αと複屈折光学素子2の偏光軸
cとのなす角度であって、図1の構成ではα=45゜と
なる。
【0026】次に、ジョーンズマトリクスMを求めるた
めに、式(1)に式(2)〜(5)を代入する。
【0027】
【数3】
【0028】次に、図1のレーザ共振器中でレーザ発振
可能な偏光モードを求める。レーザ媒質1の表面1aに
おいてレーザモードとして成立し得る電界ベクトルE
は、ジョーンズマトリクスMの固有ベクトルとなる。す
なわち
【0029】
【数4】
【0030】ここで、m11,m12,m21,m22
はジョーンズマトリクスMの各成分であり、λはMの固
有値であり、Ea,Ebはそれぞれ電界ベクトルEのa
軸成分およびb軸成分である。
【0031】したがってレーザ媒質1の表面1aにおい
て、レーザモードの電界ベクトルEとa軸とのなす角、
すなわちレーザモードの偏光方向7とa軸とのなす角θ
1aは、次式(8)で与えられる(ただし、端面1a側
から見て、反時計まわり方向を正とする。)。
【0032】
【数5】
【0033】となる。なお、Re(m11)はm11の
実数部を表し、Im(m11)はm11の虚数部を表
す。
【0034】得られた式(10)を用いて、δ1をパラ
メータとして固定し、δ2に対するθ1aの変化を計算
した結果を、図2のグラフに示す。
【0035】図2は、レーザ媒質1の表面1aにおける
レーザモードの偏光方向を計算した結果を示すグラフで
ある。なお、偏光状態を(a)δ1=nπ+π/90の
とき、(b)δ1=nπ+π/20のとき、(c)δ1
=nπ+π/2のとき、の場合に分けて図示している
(ただし、nは整数)。
【0036】図2中、横軸はδ2、縦軸は表面1aにお
けるレーザモードの偏光方向とレーザ媒質1の発振容易
軸aとがなす角θ1aである。ジョーンズマトリクスに
よる偏光解析は、一般に2つの解を持つため、位相差δ
2に対して2つのθ1aが得られるが、このうちθ1a
が0に近い側の実線カーブにおける偏光が、大きなレー
ザ利得を有することになり、発振し易いことになる。こ
れに対して、b軸が発振容易軸である場合には、θ1a
がπ/2あるいは−π/2に近い破線カーブ側の偏光が
発振し易くなる。ここで実線と破線で示される偏光方向
の差は常にπ/2である。したがってb軸が発振容易軸
である場合のレーザモードの偏光方向と発振容易軸との
関係は、a軸が発振容易軸である場合と同様になる。
【0037】図3は、図2の横軸δ2を波長λに換算し
たグラフである。図3中、(a)(b)および(c)で
示すカーブは、それぞれδ1がnπ+π/90、nπ+
π/20,およびnπ+π/2のときに対応している。
【0038】δ2と波長λとの関係は、 δ2=2π・Δn・L/λ …(11) で表される。ここでΔnは非線形光学素子2の偏光軸c
とdとの屈折率の差、Lは非線形光学素子2の結晶長で
ある。
【0039】式(11)の微分からλに対するδ2の変
化は、 dδ2=−2π・Δn・L/λ2×dλ …(12) で与えられる。
【0040】レーザの発振波長域程度の比較的狭い波長
範囲ではλ2およびΔnの変化は無視できるので、dδ
2はdλに比例すると考えてよい。したがって、位相差
δ2は波長λに対して直線的に変化し、図3のカーブの
形状は左右反転するだけで図2とほぼ同様になる。ただ
し、図3のグラフにおいては、図2の各グラフに示した
2つのカーブのうち、より発振し易い側の実線カーブの
みを変換して示している。レーザ共振器の縦モードは、
共振器長によって定まる波長間隔Δλごとに存在してい
る。このうちのある特定の縦モード(基本モード)の波
長において、位相差δ2=mπとなり、偏光方向θ1a
は0となる。この波長をλ0とすると、各縦モードの波
長はλ0+k・Δλ(ただし、kは整数)となる。図3
中の縦点線が、これらの共振器縦モードを表している。
【0041】ここで、基本モード(波長λ0)およびそ
れに隣接する縦モード(波長λ0+Δλ、λ0−Δλ)
の偏光方向θ1aを、図3の白丸で示される点から読み
取り図4に示す。図4(a)、図4(b)および図4
(c)は、それぞれ位相差δ1がnπ+π/90、nπ
+π/20およびnπ+π/2の状態に対応した偏光状
態を示す模式図である。aおよびbはレーザ媒質1の偏
光軸を表し、太線矢印は、それぞれの縦モードの偏光方
向を表す。レーザ媒質1の発振容易軸aのレーザ利得を
利用して、各隣接縦モードが発振する場合、そのレーザ
利得は、その偏光軸a上への方向余弦cosθa1にほ
ぼ比例する。図4(a)、図4(b)、図4(c)のい
ずれの場合でも、基本モード波長λ0において、その偏
光方向がa軸に一致し最大利得が得られるが、これに隣
接する縦モード(波長λ0+Δλ、λ0−Δλ)の偏光
方向は各偏光状態(a)、(b)、(c)において大き
く異なり、レーザ媒質1のレターデーションにより生ず
る位相差δ1の影響を強く受ける。たとえば図4(c)
のような偏光状態では、基本モードとその隣接縦モード
との間での偏光方向の差が小さく、レーザ利得の差別化
が困難である。これに対して図4(a)のように、位相
差δ1がnπに近いときほど、基本モードとその隣接縦
モードとの間での偏光方向の差が大きく、レーザ利得の
差別化が容易になる。
【0042】前述した偏光状態(a)、(b)、(c)
以外の場合についても同様な偏光解析を行ったところ、
nπ−π/2<δ1<nπ+π/2の範囲内では、位相
差δ1がnπに近づくにつれて、隣接縦モードのθ1a
の絶対値│θ1a│が連続的かつ単調に増加する傾向に
ある。したがってこの範囲内では常に、位相差δ1がn
πに近いときほど大きな縦モード弁別効果が得られ、単
一縦モード化による出力の安定化が容易になる。
【0043】さらに図3のカーブの形状から、縦モード
間隔であるΔλの値が変化しても、位相差δ1がnπに
近いときほど大きな縦モード弁別効果が得られることが
理解される。
【0044】以上述べたような原理において、縦モード
に対応する偏光状態の差別化およびそれにともなうレー
ザ利得の差別化は、図1に示される様な共振器構造のレ
ーザ装置に限定されず、一般に、複屈折性を示しかつレ
ーザ利得の偏光依存性をもつレーザ媒質と、複屈折光学
素子とを備えるレーザ共振器において実現可能である。
すなわち、このようなレーザ装置において、レーザ媒質
のレターデーションによって生ずる位相差をnπに近づ
けることによって、より大きな縦モード弁別効果が得ら
れ、出力の安定化が可能となる。
【0045】さらに、レーザ媒質として、Ndが1%程
度ドープされたNd:YVO4 またはNd:LiYF4
を用いることによって、レーザ利得の差別化による基本
モードの出力安定化を効果的に行うことが出来る。すな
わち、Nd:YVO4 およびNd:LiYF4 は、レー
ザ利得の強い偏光依存性を有すとともに複屈折性を持つ
ため、上述のような原理によって出力の安定化を図るこ
とが可能な固体レーザ装置において好適である。
【0046】また、複屈折光学素子が非線形光学素子で
あり、出力が安定化されたレーザ光の波長をこれによっ
て変換することにより、出力が安定化された第二高調波
を得ることが出来る。
【0047】さらに、非線形光学素子として、KTiO
PO4 を用いることによって、上述のような原理での出
力安定化に有利な共鳴器配置となるtypeIIの位相
整合で、効率良く波長変換を行うことができる。
【0048】
【実施例】以下、図面を参照しながら本発明の実施例に
ついて説明する。
【0049】(実施例1)図5(a)は、本発明の一実
施例である固体レーザ装置を示す構成図である。この固
体レーザ装置は、レーザ媒質23を励起するためのポン
ピング光26を放射する半導体レーザ(SONY社製S
LD303WT−25)20と、ポンピング光26を集
光するレンズ系21a、21b(ニューポート社製F−
L10B)と、凹面ミラー22、Ndが1%程度ドープ
されたNd:YVO4 からなるレーザ媒質23およびK
TiOPO4 からなる非線形光学素子24で構成された
光共振器25等から構成されている。凹面ミラー22の
曲面22bの曲率半径は15mmであり、これと非線形
光学素子24の表面24bとを両端面とする光共振器2
5の共振器長は約7.5mmに設定される。また、レー
ザ媒質23および非線形光学素子24の結晶長は、それ
ぞれ0.5 mmおよび5mmである。レーザ媒質23の
表面23bと非線形光学素子24の表面24aとの間に
は約1mmの空隙がある。レーザ媒質23および非線形
光学素子24は、それぞれペルチェ素子などの温度制御
装置29,30によって、精密に温度調節することが可
能である。
【0050】凹面ミラー22の平面22aにはポンピン
グ光26の波長809nmに対して透過率が95%以上
になるコーティングが施されている。一方、凹面ミラー
22の曲面22bにはポンピング光26の波長809n
mに対して透過率が95%以上であり、かつレーザ媒質
23の発振波長である波長1064nmに対して反射率
が99.9%以上となるコーティングが施されている。
レーザ媒質23の表面23aおよび23bには波長10
64nmに対して透過率が99.9 %以上となるコーテ
ィングが施されている。非線形光学素子24の表面24
aには、波長1064nmに対して透過率が99.9 %
以上となるコーティングが施されている。非線形光学素
子24のもう一方の表面24bには、波長1064nm
に対して反射率が99. 9%以上となり、かつ第二高調
波の波長である波長532nmに対して透過率が95%
以上となるコーティングが施されている。
【0051】レーザ媒質23および非線形光学素子24
の偏光軸の配置および非線形光学素子24のカット方向
は、従来と同様であり、図5(b)で示すように、レー
ザ媒質23であるNd:YVO4結晶は正の1軸性結晶
であって、主屈折率ncが他の2つの主屈折率naより
大きく、かつ発振容易軸であるc軸が、光軸28に対し
て垂直上方に向き、主屈折率naのa軸が光軸28に一
致するように配置されている。
【0052】一方、非線形光学素子24であるKTiO
PO4結晶は、正の2軸性結晶であって、図5(c)に
示すように、屈折率楕円体の主屈折率がnx<ny<n
zとなるようにx,y,z軸を選ぶと、z軸とy軸のな
す角度θ=90゜、y軸とy′軸のなす角度φ=21.
3゜の方向に傾いたz,y′平面に平行に切り出されて
いる。したがって、その偏光軸はz軸とy′軸とになっ
て、図5(b)に示すように、x′軸が光軸28と一致
し、かつz軸はレーザ媒質23のc軸に対して光軸28
の方向から見てα=45゜の角度で傾いて配置される。
【0053】半導体レーザ20から放射されるポンピン
グ光26はレンズ系21a、21bによって集束され、
凹面ミラー22を通過してレーザ媒質23に入射する。
この結果レーザ媒質23中に反転分布が形成され、波長
1064nmの発振が起こる。レーザ光が非線形光学素
子24を通過することによって、第二高調波である波長
532nmに変換された出力光27が得られる。
【0054】非線形光学素子24(厚さ5mm)である
KTiOPO4 結晶のレターデーションによって生ずる
位相差δKTは、温度変化に対して、−6.3×10-2×
π(rad/℃)の割合で変化する。したがって、温度
制御装置30によって非線形光学素子24の温度を16
℃程度の範囲で制御することによって、約π(rad)
の範囲で調整可能となるため、任意の縦モード波長にお
いて片道レターデーションによる位相差δKTをmπ(た
だし、mは整数)とする事が可能である。
【0055】一方、レーザ媒質23(厚さ0.5mm)
であるYVO4結晶のレターデーションによる位相差δY
Vについては、その温度変化率が5.6×10-3×π
(rad/℃)という小さい値であるため、温度調整に
よって大きな調整範囲を得ることが困難である。
【0056】そこで、レーザ媒質23における位相差δ
YVを調整するために、同一ブールから切り出された2個
のYVO4 単結晶23−1および23−2を用意して、
δYVの変化の影響を調べた。マイクロメータによる測定
の結果、両者の結晶厚の差は20μm以下であった。ま
た、両者に施された高反射および無反射コーティングは
すべて同一のバッチで行われたため、その反射特性およ
び透過特性には大差が無かった。
【0057】YVO4結晶23−1および23−2のレ
ターデーションによって生ずる位相差δYVは、予めセナ
ルモン法によって測定した。その際、光源として半導体
レーザ励起により、Nd:YVO4のレーザ利得のピー
ク波長で発振しているNd:YVO4レーザを用い、Y
VO4結晶の温度を変化させて数点の温度で測定し、2
5℃における位相差δYVを内挿によって求めた。その結
果、結晶23−1および23−2のYVO4 のレーザ利
得のピーク波長における位相差δYVは、それぞれnπ−
π/3およびnπ−π/20と測定された。
【0058】次に、これらの結晶23−1,23−2を
用いてレーザ共振器を構成し、非線形光学素子24の温
度調節によって、YVO4結晶のレーザ利得のピーク波
長に最も近い縦モード波長において、非線形光学素子2
4における位相差δKT=mπと調整し、レーザ媒質23
としてYVO4結晶23−1を用いた場合および23−
2を用いた場合の基本波スペクトルを分光器で観測し
た。いずれの場合にも、レーザ媒質23の温度は温度制
御装置29によって25℃に保たれていた。
【0059】その結果、レーザ媒質23として、位相差
δYV=nπ−π/3であるYVO結晶23−1を用い
た場合には、基本波スペクトルは多モードとなった。そ
のため、モードホッピング現象が起こり、基本波および
第二高調波の出力は不安定なものとなった。一方、レー
ザ媒質23として、位相差δYV=nπ−π/20であ
るYVO4 結晶23−2を用いた場合には、基本波スペ
クトルは単一縦モードとなった。そのため、モードホッ
ピング現象は抑制され、基本波および第二高調波の出力
は極めて安定であった。
【0060】このように、レーザ媒質23の結晶厚を調
整して、位相差δYVがπの整数倍に近いYVO4結晶を
レーザ媒質として使用することによって、単一縦モード
化による出力安定化が実現される。しかも、ジョーンズ
マトリクスによる偏光解析の結果から、位相差δYVがn
πに近いときほど単一縦モード化が容易なので、単一縦
モード化による出力の安定化を図るには、nπ−π/2
0≦δYV≦nπ+π/20とすることが望ましい。な
お、切り出された結晶における位相差δYVが、この条件
を満足しないときは、研磨やエッチングなどの加工を用
いて所定の結晶厚に仕上げることによって、この条件を
満たすことができる。
【0061】以上の実施例において、レーザ媒質23に
おける位相差δYVを制御する方法として、結晶厚を調整
する方法を説明したが、(1)レーザ媒質23として温
度変化率が大きい結晶を使用することによって、温度調
整によって位相差δYVを制御する方法、(2)レーザ媒
質23の発振容易軸cを中心として、レーザ媒質23を
わずかに角変位させることによって、2つの偏光成分に
対する光路長を変化させて、位相差δYVを制御する方
法、(3)レーザ媒質23として圧力または電場によっ
て複屈折率が変化する材料を用いて、光軸28に対して
垂直方向に、所定の圧力または電場を印加することによ
って、位相差δYVを制御する方法、などの位相差制御方
法を単独でまたは併用して適用することができる。
【0062】
【発明の効果】以上詳説したように本発明によれば、レ
ーザ利得の偏光依存性及び複屈折性を示すレーザ媒質の
レターデーションを調節することによって、基本モード
以外の縦モードのレーザ利得が十分に低減され、他の縦
モードへのモードホッピング現象が抑制されるため、出
力変動が少ない極めて安定した出力を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体レーザ装置に適用可能なレーザ共
振器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すレーザ共振器中のレーザ媒質1の表
面1aにおけるレーザモードの偏光方向θ1aを、複屈
折光学素子2のレターデーションによって生ずる位相差
δ2に対して示したグラフである。
【図3】図1に示すレーザ共振器中のレーザ媒質1の表
面1aにおけるレーザモードの偏光方向θ1aを、レー
ザモードの波長λに対して示したグラフである。
【図4】図1に示すレーザ共振器における、基本モード
およびそれに隣接する縦モードの偏光方向を示した模式
図である。
【図5】図5(a)は本発明の一実施例である固体レー
ザ装置を示す構成図であり、図5(b)はレーザ媒質2
3と非線形光学素子24の偏光軸の配置を示す部分斜視
図であり、図5(c)は非線形光学素子24のカット方
向を説明する座標系である。
【図6】図6(a)は従来の固体レーザ装置の一例を示
す構成であり、図6(b)はレーザ媒質62と非線形光
学素子63の偏光軸の配置を示す部分斜視図であり、図
6(c)は非線形光学素子63のカット方向を説明する
座標系である。
【符号の説明】
1,23 レーザ媒質 2 複屈折光学素子 3 反射鏡 4,5,29,30 温度制御装置 6,28 光軸 7 レーザモードの偏光方向 20 半導体レーザ 21a,21b レンズ系 22 凹面ミラー 24 非線形光学素子 25 光共振器 26 ポンピング光 27 出力光

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複屈折性およびレーザ利得の偏光依存性
    を持つレーザ媒質、ならびに複屈折光学素子を含む光共
    振器と、 前記レーザ媒質を励起するための半導体レーザとを備え
    る固体レーザ装置において、 当該レーザ共振器の発振波長において、前記レーザ媒質
    の片道レターデーションにより前記レーザ媒質の偏光軸
    を偏光方向とする2偏光成分の間に生ずる位相差Dが、 nπ−π/20≦D(rad)≦nπ+π/20(ただ
    し、nは整数) の条件を具備することを特徴とする固体レーザ装置。
  2. 【請求項2】 前記レーザ媒質が、Nd:YVO4また
    はNd:LiYF4であることを特徴とする請求項1に
    記載の固体レーザ装置。
  3. 【請求項3】 前記複屈折光学素子が非線形光学素子で
    あり、かつ当該非線形光学素子で前記レーザ媒質によっ
    て発振するレーザ光の波長を変換することを特徴とする
    請求項1または2に記載の固体レーザ装置。
  4. 【請求項4】 前記非線形光学素子が、KTiOPO4
    であることを特徴とする請求項3に記載の固体レーザ装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009016709A1 (ja) * 2007-07-30 2009-02-05 Mitsubishi Electric Corporation 波長変換レーザ装置

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