JP2825216B2 - 複屈折フィルタ - Google Patents

複屈折フィルタ

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JP2825216B2
JP2825216B2 JP4249154A JP24915492A JP2825216B2 JP 2825216 B2 JP2825216 B2 JP 2825216B2 JP 4249154 A JP4249154 A JP 4249154A JP 24915492 A JP24915492 A JP 24915492A JP 2825216 B2 JP2825216 B2 JP 2825216B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、数100フェムト秒程度
以下の短い時間幅を有する光パルスを発生するレーザ共
振器内において用いられる複屈折フィルタ(発振波長制
御素子)に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の典型的な複屈折フィルタを図5
(a)(b)に示す。同図に示すように、偏光依存光学
要素502及び光学結晶板501が出力結合鏡503と
端面鏡504との間に挟まれ直線型共振器が構成されて
いる。偏光依存光学要素502は、透過率が偏光によっ
て変化する光学素子であり、光学結晶板501と同様に
S偏光成分がP偏光成分よりも損失するように構成され
ている。例えば、非直入射の誘電対蒸着鏡、ブリュース
ター窓又は界面、更に偏光に依存する利得を有するレー
ザ媒質が用いられる。
【0003】一方、光学結晶板501は、レーザ共振器
内の光軸505に対してブリュースター角と等しくなる
ように傾けて保持されている。つまり、光学結晶板50
1の法線方向と光軸505となす入射角(出射角)φ0
が、ブリュースター角と一致するように保持されてい
る。また、光学結晶板501は、一軸性の光学的非等方
性を有し、結晶軸506が板面に並行となるように加工
されている。この加工法は波長板を、作成する際に使用
される方法と同一である。
【0004】この複屈折フィルタで、レーザの発振中心
波長を変化させる場合、光学結晶板501を、板面内で
回転させることにより、結晶軸506と入射平面とのな
す幾何方位角αを変化させている。上記構成の複屈折フ
ィルタにおいて、光学結晶板501は、光軸505に対
してブリュースター角をなすように配置されているの
で、入射面内に偏光した直線偏光成分(P偏光)は反射
損失を受けないが、それと直交する直線偏光成分(S偏
光)は反射損失を受ける。
【0005】従って、このようなレーザ共振器では、P
偏光がS偏光よりも損失の点から有利であり、故にP偏
光で発振が実現する。ここで、一軸性の光学的非等方性
を有する光学素子501に入射した光は、常光線と
光線に別れて結晶中を伝播する。この際、各々の成分に
対する屈折率が異なるため、結晶内の光路に沿う光学長
に差が生じる。その結果、結晶板からの出射時に二つの
成分は位相差を以て重ね合わせられることになり、出射
光は入射光の偏光状態とは一般には異なる偏光状態を有
するに至る。
【0006】ところが、上記常光線成分及び異常光線成
分についての光路に沿う光学長の差が波長の整数倍(N
倍)に一致する場合にのみ、出射光は入射光と同一の偏
光状態を保つことができる。この様な波長を、以下、N
次の共鳴波長と呼ぶことにする。共鳴波長においては、
結晶板の通過前後でP偏光が保たれるため、共振器周回
に際し、光の受ける損失が常に最小であり、選択的にレ
ーザ発振が起こる。
【0007】ここで、光学結晶板501を面内で回転さ
せて幾何方位角αを変化させると、異常光線屈折率が変
化し、共鳴波長が変化するから、この現象に基づいて、
光学結晶板501を面内で回転させることにより、レー
ザ発振波長を変化制御することができる。先ず、S偏光
成分の損失について説明する。S偏光成分は、光学結晶
板501の入出射時に、電場の大きさとしてそれぞれ減
衰する。その比率は、電場透過率q(=2n/(n2
1)<1)として表される。但し、nは光学結晶板50
1の常光屈折率である。例えば、通常使用される結晶水
晶の場合、1.55μm波長帯では電場透過率q=0.916と
なる。
【0008】次に、偏光依存光学要素502のS偏光成
分に対する電場透過率qSと、P偏光成分に対する電場
透過率qPとの比をq′(=qS/qP)とすると、この
系で実現される共振器1周あたりの最低のパワー透過
率、すなわち、最良消光比は、q4q′2として表され
る。最良消光比は、光学結晶板501に入射時に、常光
線成分と異常光線成分とが等分に励起される場合に実現
する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
複屈折フィルタでは、図6に示すように、レーザ発振波
長を変化させるために光学結晶板501を面内で回転さ
せると、常光線成分と異常光線成分への配合比が甚大に
変化するため、消光比が劣化する問題がある。即ち、図
6に、結晶水晶を用いた従来の1.55μm用複屈折フィル
タのパワー透過率を、幾何方位角α=28°,40°,52°
の場合について示す。偏光依存光学要素502の電場透
過率比q′としては、溶融石英製のブリュースター板一
枚の通過に相当する0.876を想定した。
【0010】幾何方位角α=40°の場合、常光線成分と
異常光線成分との等配分が達成され、図6中実線で示す
ように、パワー透過率の底である最良消光比は0.8762×
0.9164=0.540が達成される。また、N=2の共鳴波長
が1.55μmとなるように、結晶厚L=0.358mmが選ばれ
ている。ここで、共鳴波長すなわちレーザ発振波長を1.
43μmに変えるために、幾何方位角αを28°とした場合
には、図6中点線で示すように、パワー透過率の底であ
る消光比は0.7まで劣化している。同様に、幾何方位角
αを52°とした場合には、図6中破線で示すように、パ
ワー透過率の底である消光比は0.7まで劣化している。
【0011】レーザ媒質の利得は、一般に波長に依存す
る利得スペクトルとして表される。複屈折フィルタによ
って利得スペクトルの裾に対応する波長を選択して発振
を起こさせるためには、利得中心波長の発振を抑圧する
必要があり、従って、次式を満足する必要がある。 (当該波長における利得)>(消光比)×(利得中心波長における利得)…(1)
【0012】この為、利得中心から離れた所望の波長を
フィルタより選択しても、消光比が劣化すると、式
(1)の右辺に表される利得中心における総利得が該当
波長における利得を超越してしまい、その結果、所望す
る当該波長ではなく利得中心波長での発振が生じてしま
う。このようにして従来の複屈折フィルタでは、発振波
長選択範囲が利得中心波長の近傍に制限される結果とな
る。
【0013】複屈折フィルタの透過帯域幅いわゆるバン
ド幅は、共鳴波長の次数Nに反比例する。他方、バンド
幅の最適値は、複屈折フィルタの使用される個々の短パ
ルスレーザに依存して変化する。一般に、バンド幅が広
いほど、時間幅の狭いパルスが発生される可能性がある
が、発振波長の選択性は、逆にバンド幅が狭い場合に優
れており、最適のバンド幅両者の兼ね合いによって決
定されるからである。発振波長の選択性に関して言え
ば、レーザ利得媒質の利得波長も寄与するため、異なる
レーザ媒質には一般に異なる次数の複屈折フィルタが適
合する。
【0014】これに加えて、短パルスレーザ特有の事情
がある。即ち、短パルスを形成するモード同期機構は、
発振中心波長の回りに逐次新たな波長成分を付加し発振
波長幅を広げる動作を行う。これが十分強く機能すれ
ば、バンド幅の広い複屈折フィルタの下でも、バンド幅
全体を覆う安定な発振が達成されるが、モード同期機構
による発振波長幅拡張効果が不足すると、当該フィルタ
のバンド幅の一部のみで発振が起こることとなり、その
結果、微小な擾乱によって発振中心波長が変化してしま
う。上記モード同期機構は、レーザ共振器中に設置した
光非線型媒質により実現され、その場合モード同期の強
さは、一般に共振器内の光パルスのエネルギ又は瞬時強
度によって変化する。それ故、最適なバンド幅、即ち、
複屈折フィルタの次数は短パルスレーザの構成及びその
動作の詳細、例えば、出力結合鏡の透過率、励起の強
さ、発振波長に依存して変化するのである。
【0015】上述したように、一枚の複屈折フィルタに
おいて、幾何方位角αを変化させることにより、異常光
線屈折率が変化し、その結果、常光線成分及び異常光線
成分についての光路に沿う光学長の差が変化するので、
原理的に幾何方位角αを大きく変化させれば異なる次数
の共鳴条件を達成できる。
【0016】しかるに、従来の複屈折フィルタにおいて
は、幾何方位角αの変化に伴い、消光比が急激に劣化す
るため、設計中心での次数と異なる次数では全くフィル
タとして機能しない。故に、従来の複屈折フィルタにお
いては、次数が非可変であり、次数毎に異なる厚さを有
する結晶板、例えば、上記例出は、N=2次の0.358mm
厚の結晶板の他に、N=1次用には0.179mm厚、N=3
次用には0.716mm厚の結晶板を作成する必要があった。
短パルスレーザの動作条件如何によっては、これらを一
々取り替えて使用しなければならず、煩雑であった。更
に、工業的には、最適の結晶板厚が、個々のレーザの発
振波長及び動作条件によって変わり得るが故に、本種の
複屈折フィルタは勢い特注生産とならざるを得ず、低価
格化が阻まれると共に結晶資源の浪費が避けがたい状況
であった。
【0017】更に、1.55μm波長帯においてすら、N=
1次に対する結晶厚が0.179mmであり、より短波長用の
フィルタでは、概ね波長に応じて薄い結晶板が必要とな
る。厚さが0.5mm以下の結晶板の取扱は、その脆弱さ及
び撓みやすさ故に困難であり、更に、板内における多重
干渉効果(エタロン効果)の抑制が非常に困難である。
従って、従来の複屈折フィルタは、通信波長帯では一次
及び二次、可視域では一次から三次までの低次のフィル
タは実用的ではなかった。
【0018】以上述べたように、従来の複屈折フィルタ
は、透過中心波長を変化させる際に、急速な消光比の劣
化を伴い、その結果、狭い波長範囲のみでレーザ発振波
長を変化させるに留まり、また、一つの発振波長に対し
てはバンド幅を変えることが不可能であった。更に、バ
ンド幅の広い低次のフィルタの実現は、結晶板厚の非実
用的な薄さ故に、困難であった。
【0019】本発明者は、上述した従来の複屈折フィル
タでの問題点がそもそも何に起因するのかについて鋭意
検討した結果、従来の複屈折フィルタでは、結晶板の結
晶軸の方向が全く最適化されていないことが、正に問題
の懐胎されるところであることに着目して本発明を完成
したものである。即ち、本発明は、上記従来技術に鑑み
てなされたものであり、光学結晶板を面内で回転させて
レーザ発振波長を変化させる際に、消光比の劣化が非常
に少なく、また、一つの発振波長に対してはバンド幅が
可変であり、更に、低次のフィルタが容易に実現できる
複屈折フィルタを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成する本
発明の構成は一軸性の光学的非等方性を有する光学結晶
板が、光の入射角がブリュースター角を成してレーザ共
振器中に配置され、且つ、板面内に回転することによ
り、上記レーザ共振器の発振波長を変化させるフィルタ
において、上記光学結晶板の結晶軸と板面とのなす角で
ある潜り角θがtan-1n<θ<tan-1(2n2+1)1/2
満足するように該光学結晶板は切り出されることを特徴
とする。但し、nは、上記光学結晶板の常光線屈折率を
示す。
【0021】
【作用】本発明は、一軸性の光学的非等方性を有し、結
晶軸と板面とのなす角度である潜り角θが、常光屈折率
nに対して、tan-1n<θ<tan-1(2n2+1)1/2であ
る光学結晶板を、光の入射角がブリュースター角をなす
ように傾けてレーザ共振器中に配置し、この光学結晶板
を板面内で回転させることにより、レーザの発振波長を
変化させるので、消光比の劣化が非常に小さく、かつ、
一つの発振波長に対してはバンド幅が可変であり、更
に、低次のフィルタの実現が可能となる。
【0022】
【実施例】以下、本発明について、図面に示す実施例を
参照して詳細に説明する。図1(a)(b)に本発明の
一実施例を示す。同図に示すように、光学結晶板101
及び偏光依存光学素子102が、出力結合鏡103と端
面鏡104との間に挟まれて直線形共振器が構成されて
いる。光学結晶板101は、レーザ共振器内の光軸10
5に対してブリュースター角をなすように、つまり、光
学結晶板101の法線方向と光軸105とのなす入射角
(出射角)φ0がブリュースター角と一致するように傾
けて保持されている。光学結晶板101は一軸性の光学
的非等方性を有し、その結晶軸106は従来と異なり板
面と平行ではなく、板面に対して所定の潜り角θをなし
ている。
【0023】本発明者は、潜り角θの最適値を鋭意探索
したところ、次のような結論を得られた。但し、ここに
いう“最適”とは、中心波長の変化、即ち、幾何方位角
αの変化に伴う消光比の劣化を最小限に留めることを言
うものである。上述したように、消光比は、光学結晶板
入射時に励起される常光線成分と異常光線成分との比に
依存する。そこで、その比を規格方位角αeqとして導入
すれば、P偏光成分は各々常光線成分と異常光線成分と
に、sinαeq:cos αeqの比で分割されることになり、
また、S偏光成分は各々常光線成分と異常光線成分と
に、−cosαeq:sinαeqの比で分割されると表現でき
る。ここで、規格方位角αeqは、一般に0°から180°ま
でを採ることができる。
【0024】常光線成分及び異常光線成分についての光
路に沿う光学長の差が波長の整数倍(N倍)に一致する
波長の場合のみ、出射光は入射光と同一の偏光状態を保
つことができる。これがフィルタの中心波長であり、結
晶板の通過前後でP偏光が保たれる故、共振器周回に際
し光の受ける損失が常に最小であり、選択的にレーザ発
振が起こる。それ以外の波長の光はS偏光成分に伴う損
失を受ける。上記光学長の差を位相差(=2π×光学長
差/波長)として表し、フィルタのパワー透過率を位相
差の関数として表すことにより、このフィルタ特性が規
格化した形で表現される。
【0025】図1に示す直線型共振器における規格化し
たフィルタ特性(共振器一周当りのパワー透過率)を計
算した結果を図2に示す。S偏光成分の光学結晶板10
1の入出射時の電場減衰率qとして0.916の値を用い、
また、偏光依存光学要素102のS偏光成分に対する電
場透過率qSとP偏光成分に対する電場透過率qPとの比
q′(=qS/qP)として0.874の値を用いた。
【0026】図2に見られるように、位相差ψ=2Nπ
において透過率は最大であり、これがフィルタの透過帯
中心である。図2にの左右両側における位相差ψ=2
(N±1)πの点において現れている低いピークは、直
線型共振器特有の現象であり、図1に示す共振器におい
て、光学結晶板101の左側で純粋なP偏光となり、右
側でS偏光を持つ場合に対応している。直線型共振器に
おいて、フィルタの消光比は、位相差ψ=2(N+1/
2)πにおけるパワー透過率として定義できる。図2に
見られるように、この消光比は規格方位角αeqが45°又
は135°の場合に最良消光比q4q′2となり、規格方位
角αeqがそれから外れるに従い急速に劣化する。消光比
rejは、規格方位角αeqの関数として近似的に下式の
ように表される。
【0027】
【数2】 但し、各αeqに対し、上記消光比Rrejに関する式
(2)のうちで、含まれる三角関数がより小さい方を用
いる。板面内で結晶を回転させレーザの発振中心波長を
変化させる際に現れる消光比の変化を検討する場合、消
光比の規格方位角αeq依存性にのみ注目すれば良い。式
(2)を見ると、この目的に対し、2cos2αeq(45°≦
αeq≦135°)又は2sin2αeq(0°≦αeq≦45°、135
°≦αeq≦180°)によって表される消光能を導入す
る。ここで、消光能は、最良の消光比が得られる場合に
1をとり、消光比の劣化に伴って減少する。許容できる
消光能の下限をηとすると、規格方位角α eqは、45°又
は135°の周りで変化できる範囲±Δαeqは次のように
制限される。
【0028】
【数3】 例えば、消光能の下限ηを0.9とすると、対応する許容
規格方位角変化Δαeqは、約3°となる。規格方位角α
eqを、幾何方位角α及び潜り角θの関数として表すと、
次式が得られる。 cosαeq=(cosφcosθcosα−sinφsinθ)/sinγ …(4) 但し、φは屈折角、γは屈折方向と結晶軸のなす角であ
り、次式で与えられる。 sin2γ=cos2θsin2α+(cosφcosθcosα−sinφsinθ)2 …(5)
【0029】これら(4)(5)を用いて、幾何方位角
αの変化に伴う規格方位角αeqの理想値45°又は135°
からの乖離が可能な限り小さくなる様な潜り角θを探索
する。この為、図3(A)には、横軸に潜り角θをと
り、縦軸に幾何方位角αをとった平面上で等しい規格方
位角αeqを与える点を結んだ、いわゆる規格方位角に対
する等高線を描いた。図3(A)において、太破線で示
す等高線はαeq=45°の場合を示し、太実線で示す等高
線はαeq=135°の場合を示し、何れの場合も上述した
ように最良の消光比が得られる。
【0030】光学結晶板101を面内で回転させてレー
ザ発振波長を変化させる実際の使用条件に即して、図3
(A)上で横軸から立てた垂線を動作線と考えることが
できる。上記の幾何方位角αの変化に伴う規格方位角α
eqの理想値からの乖離が最小である条件は、この動作線
がαeq=45°又はαeq=135°の等高線に接することで
ある。これは、αeq=135°の右端において達成され、
その際の潜り角θoptは次式で計算される。
【0031】
【数4】 但し、nは光学結晶板101の常光屈折率である。次に
有限の許容規格方位角変化Δαeqを斟酌する。一例とし
て、3°のΔαeqを選び、45°±Δαeq=42°、48°の
等高線を細破線で、135°±Δαeq=132°、138°の等
高線を細実線で図3(A)中に示した。これらに即して
考察を進めると、最適な潜り角は、上述した135°の等
高線の右端ではなく、132°の等高線の右端である。そ
れは、次の理由による。
【0032】即ち、135°の等高線の右端に接する、即
ち潜り角θoptに対応する動作線を追ってゆくと、135°
の等高線と138°の等高線とに挟まれた三日月型の領域
を突っ切る。これは、規格方位角αeqが常に135°以上
の値をとることを意味し、132°の等高線と135°の等高
線との間の規格方位角範囲(下側許容規格方位角範囲)
を使わずに捨てていることになる。これに対し、132°
の等高線の右端に接する動作線上では、該下側許容規格
方位角範囲も利用することができるのである。以上の考
察により、最適の潜り角θ′optは、許容規格方位角変
化Δαeqに依存し、次式で表される。
【0033】
【数5】 この最適の潜り角θ′optは、常に式(6)で与えられ
るθoptよりも小さい。一方、式(3)により、許容規
格方位角変化Δαeqは最大でも45°を越え得ない。式
(7)に示すように、Δαeqが45°の極限では、θ′
optはtan-1nに近づく。従って、最適の潜り角θ′opt
に対しては、次の不等式が常に成り立つ。
【0034】
【数6】 次に、消光比の劣化を許容できる範囲に保って幾何方位
角を変化できる範囲について説明する。潜り角がθ′
optの本発明の場合は、図3(A)において、θ=θ′
optから立てた垂線がαeq=138°の等高線と2回交わ
り、このうち下側交点が本発明の方位角下限307、上
側交点が本発明の方位角上限308である。これに対
し、潜り角が0である従来の複屈折フィルタの場合に
は、αeq=132°の等高線の縦軸切片が方位角下限30
9であり、αeq=138°の等高線の縦軸切片が方位角上
限310である。図3(A)に示すように、本発明にお
ける方位角の上下限に挟まれる許容変化範囲は、従来の
それに比較して著しいことが判る。
【0035】引続き、本発明の複屈折フィルタの波長選
択範囲を吟味する。上述の常光線成分及び異常光線成分
についての光路に沿う光学長の差に伴う位相差ψは、式
(5)で与えられる屈折方向と結晶軸とのなす角γを用
いて、下式のように表される。
【数7】 但し、neは異常光線に伴う主軸屈折率、Lは結晶板厚
である。
【0036】結晶板厚Lを屈折率の余弦cosφで除した
項は、結晶内で屈折光線に沿った光路長である。板面内
で結晶を回転子幾何方位角αを変化させる際、式(9)
中で変化するのは、sin2γの項のみである。それ故、こ
のsin2γを規格位相差fbと定義することとする。
【0037】潜り角θの各々に対し、αeq=45°ないし
135°を与える幾何方位角αをとり、それに伴われる規
格位相差fbを図3(B)に示す。図3(B)におい
て、太破線は、αeq=45°に伴われる規格位相差であ
り、太実線はαeq=135°に伴われる規格位相差であ
り、上述したようにこれらの上では最良の消光比が得ら
れる。図3(B)に見られるように、本発明による最適
の潜り角θ′opt付近では、潜り角が0である従来の複
屈折フィルタに比べて、規格位相差が小さいことが判
る。これにより、式(9)を考慮すると、同一波長、同
一次数のフィルタを作成する場合、本発明のフィルタで
は、従来のフィルタに比較して結晶板厚が約5倍大きく
なることになる。この為、本発明によれば、バンド幅の
広い低次のフィルタが、結晶板厚の厚さの制約を受ける
ことなく、容易に実現できる。
【0038】同様に、有限の許容規格方位角変化Δαeq
を斟酌する。一例として、3°のΔαeqを選び、45°±
Δαeq=42°、48°に伴われる規格位相差を細破線で、
135°±Δαeq=132°、138°に伴われる規格位相差を
細実線で図3(B)中に示した。消光比の劣化を許容で
きる範囲を保って位相差を変化できる範囲を見ると、潜
り角がθ′optの場合の本発明の場合は、図3(B)上
でθ=θ′optから立てた垂線がαeq=138°の位相差と
2回交わり、このうち下側交点が本発明の位相差下限f
b -であり、上側交点が本発明の位相差上限fb +である。
これに対し、潜り角が0である従来の複屈折フィルタの
場合は、αeq=132°に伴われる位相差の縦軸切片が位
相差下限319であり、αeq=138°に伴われる位相差
の縦軸切片が位相差上限320である。図3(B)に見
えるように、本発明においては、位相差の上下限に挟ま
れる許容変化範囲が、従来のそれに比較して著しく広い
ことが判る。
【0039】上記の位相差下限fb -及び位相差上限fb +
は、それぞれ許容規格方位角変化Δαeqに依存してお
り、次式のように表される。
【数8】 これらの比(fb +/fb -)が、選択可能な波長範囲を与
え、結晶水晶で一例として3°のΔαeqを選ぶと、(f
b +/fb -)は5.4内外となる。この幅は、一つの次数の
フィルタとして用いた場合、例えば、選択可能波長下限
が0.5μmであるとすると、上限波長2.7μmに至るま
で、消光比の劣化を許容できる範囲に保って選択波長を
変化させ得ることを意味する。勿論、現実には、このよ
うな広い帯域で波長可変なレーザは存在しないが、この
数字から、本発明による一枚の複屈折フィルタが、可視
から近赤外波長域に至る種々の短パルス光源、例えば、
色素レーザ、チタンサファイアレーザ、半導体レーザ及
び色中心レーザ等で共通に使用できることが判る。ま
た、一つのレーザについては、フィルタの次数すなわち
バンド幅を5倍以上変化できることが判る。
【0040】本発明において、フィルタの設計中心の位
相差の選び方には、二通りの仕方がある。一つは、例え
ば、図3(A)に示すように132°の等高線の右端を動
作中心に選ぶ方法であり、これによる中心位相差fb (c)
は次式のようになる。 fb (c)={n2sec2(135°−Δαeq)+1}-1 …(11) 他の一つは、上記fb +とfb -との幾何平均を中心位相差
とする方法であり、これによる中心位相差fb (m)は次式
のように計算される。 fb (m)={n2sec2(135°−Δαeq)+tan2(135°−Δαeq)}-1 …(12) 中心波長λで次数Nのフィルタを設計する場合、式
(9)の位相差が2Nπに等しくなる条件から、結晶厚
Lを次式に従って決定すれば良い。
【0041】
【数9】 但し、式(13)中のfbとしては、中心位相差fb (c)
又はfb (m)の何れかを用いる。このように、本発明によ
れば、式(7)に示されるように最適の潜り角θを決定
し、また、式(13)に示すように実際にフィルタを作
成する場合の結晶厚を決定することができる。
【0042】ここで、式(8)の潜り角の下限を満たす
条件(tan-1n<θ)であるθを設定するならば、一般
に従来よりも良好な複屈折フィルタを得ることができ
る。しかしながら、最適な複屈折フィルタの条件は、上
述したように式(8)に示した上限と下限を満たす潜り
角を設定する場合に得られる。次に、具体的な実施例に
ついて説明する。本実施例では、複屈折フィルタを構成
する一軸性の光学的非等方性を有する光学結晶板として
結晶水晶を用いた。結晶水晶は、透明波長帯の広さ、適
当な硬度、耐水性、更に安価さから推奨される材料であ
る。1.5μm帯の色中心レーザ用に、中心波長を1.50μ
mに選び、二次のフィルタを設計した。波長1.50μm
で、結晶水晶の常光線屈折率nは1.528、異常光線に伴
う主軸屈折率n e は1.537である。
【0043】図2に示す特性により、Δαeqが5°とな
ると消光比の劣化がかなり目立つので、5°以内の許容
規格方位角変化の選択が推奨される。本実施例では、許
容規格方位角変化Δαeqとして、3°を選んだ。このと
き、式(7)より、最適の潜り角θ′optは、66.0°と
定まる。結晶水晶の常光線屈折率は、0.5μm〜2μmの
範囲で1.52〜1.55の値をとるが、3°のΔαeqに対応す
る最適の潜り角θ′op tは、この範囲で僅かに65.9°か
ら66.2°まで変化するに過ぎない。十分の数度の潜り角
偏差は本発明のフィルタの特性には全く影響しないの
で、事実上66.0°の潜り角を0.5μm〜2μmの範囲で常
に採用して良い。このように、本発明のフィルタは、大
量の結晶板の生産に好都合で、ひいては価格の低減、資
産の節約にも通じる。
【0044】波長1.50μmにおける常光線屈折率1.528
に対応して、ブリュースター入射角φは、56.88°、屈
折角φはこれの余角の33.12°である。本実施例では、
中心位相差として式(12)のfb (m)を用いた。3°の
Δαeqに対応するfb (m)の値は、0.155である。これら
の値を、式(13)に代入すると、結晶厚Lが1.85mm
定まる。このようにして設計作成された複屈折フィルタ
のパワー透過率を、種々の幾何方位角αについて図4に
示す。図4に実線で示すように、幾何方位角αが48°の
際の中心波長は1.543μmであり、この時のパワー透過
率特性は設計中心付近の特性を示している。この際のフ
ィルタの次数は2である。幾何方位角αを44°から53°
まで変えることにより、この2次のフィルタの透過中心
波長を図の全波長範囲、即ち1.35μmから1.75μmまで
変化させることができる。
【0045】更に、幾何方位角αを大きく減らしても、
消光比が保たれ、図4に点線で示すようにα=28°にお
いて、波長1.43μmに中心を持つ一次フィルタの透過特
性が得られる。この際、前記の2次の透過中心はこの半
分の0.77μmまで動いている。このように、本発明の複
屈折フィルタは、設計中心で2次のフィルタとして設計
しても、幾何方位角αを変えるだけで1次のフィルタが
得られるので、設計中心で比較して従来フィルタに比し
て5倍厚い結晶板となるに加えて、更に、2倍の板厚を
稼げ、結果として、従来フィルタに比して10倍厚い結
晶板によって等価なフィルタを作成できることになる。
【0046】逆に、幾何位相角αを大きく増やしても、
消光比が保たれ、図4に破線で示すようにα=65°にお
いて、波長1.626μmに中心を持つ3次のフィルタの透
過特性が得られ、また、α=82°において、波長1.696
μmに中心を持つ4次のフィルタの透過特性が得られ
る。後者の場合には、波長1.38μmに5次の透過中心が
見られる。ここで、各々の次数の透過特性の幅が、次数
に応じて変化することが注目される。このように、本発
明の複屈折フィルタでは、消光比を保ちつつ、バンド幅
を5倍変化させることができる。
【0047】
【発明の効果】以上、実施例に基づいて具体的に説明し
たように、本発明は、一軸性の光学的非等方性を有し、
結晶軸が板面と平行ではなく板面から所定の潜り角で傾
いた光学結晶板を、光軸に対してブリュースター角をな
すように傾けてレーザ共振器中に配置し、この光学結晶
板を板面内で回転させて幾何方位角を変化させ、レーザ
の発振波長を変化させるので、消光比の劣化が非常に小
さくなり、また、一つの発振波長に対してバンド幅が可
変となり、更に、低次のフィルタの実現が可能となり、
工業的にも多大な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】同図(A)(B)は本発明の一実施例に係る複
屈折フィルタの構成図である。
【図2】複屈折フィルタの規格化した特性図である。
【図3】同図(A)(B)は複屈折フィルタの結晶軸潜
り角依存性を示す特性図である。
【図4】本発明の複屈折フィルタの特性図である。
【図5】従来の複屈折フィルタの構成図である。
【図6】従来の複屈折フィルタの特性図である。
【符号の説明】
101 光学結晶板 102 偏光依存光学要素 103 出力結合鏡 104 端面鏡 105 光軸 106 結晶軸 α 幾何方位角 θ 潜り角 φ0 入射角 φ 屈折角 L 結晶厚
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 昭59−14722(JP,B2) APPLIED OPTICS,Vo l.31(24)(20 August 1992),pages 5022−5029;J. Mentel et al.:”Bir efringent filter w ith arbitrary orie ntation of the opt ic axis:an analysi s of improved accu racy" (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G02B 5/30 H01S 3/106

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一軸性の光学的非等方性を有する光学結
    晶板を、レーザ共振器中で光軸に対してブリュースター
    角をなすように傾斜して保持し、且つ、該光学結晶板を
    板面内で回転させて幾何方位角を変化させることによ
    り、上記レーザ共振器の発振波長を変化させる複屈折フ
    ィルタにおいて、上記光学結晶板の結晶軸と板面とのな
    す角である潜り角θが次式を満足するように該光学結晶
    板を切り出したことを特徴とする複屈折フィルタ。 【数1】
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Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
APPLIED OPTICS,Vol.31(24)(20 August 1992),pages 5022−5029;J.Mentel et al.:"Birefringent filter with arbitrary orientation of the optic axis:an analysis of improved accuracy"

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