JPH0622151Y2 - 可変容量ベーン型回転圧縮機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、例えば自動車用空調装置の冷媒圧縮機として
用いられる可変容量ベーン型回転圧縮機の改良に関す
る。

（従来の技術） 一般に、自動車用空調装置の冷媒圧縮機においては、空
調装置の負荷に対応して冷媒ガスの循環量を変化させて
車内を常に快適な環境に保つために、吐出量を可変制御
することができる可変容量ベーン型回転圧縮機が用いら
れている。

従来のこの種の可変容量ベーン型回転圧縮機としては、
例えば実開昭５９−７６７８６号公報に記載されたもの
が知られている。このものにおいては、カムリングの開
口端を封止する一方のサイドプレートに圧縮室の略全域
に開口するまゆ形のバイパスポートが形成され、さらに
サイドプレートとカムリングの間に円形のバイパス開口
部を有する制御用円板が介装されている。また、制御用
円板の側面には円周方向に大径の傘歯車が形成され、該
傘歯車には、小径の傘歯車、すなわち、ピニオンが噛合
し、さらにピニオンは圧縮機のハウジングおよびサイド
プレートを貫通する駆動軸に取り付けられている。そし
て、圧縮機の外部に設けられた駆動モータによって駆動
軸が回転駆動されると、上記ピニオンおよび大径の傘歯
車を介して制御用円板が回動され、バイパス開口部の位
置が変化して圧縮機の吐出量が可変制御されるようにな
っている。

（考案が解決しょうとする問題点） しかしながら、このような従来の可変容量ベーン型回転
圧縮機にあっては、ピニオンの駆動軸が圧縮機のハウジ
ングおよびサイドプレートを貫通する構成となっていた
ため、圧縮機の組立時に、ハウジングを装着した後、ピ
ニオンを取り付ける場合には、ピニオンが通過できる大
径の孔を通してピニオンよりも小径の駆動軸が挿入され
るので、的確にピニオンを位置決めすることが困難であ
り、組立の手間が掛かって製造コストが高くなるという
問題点があった。

また、駆動軸をサイドプレートの内方から外方に貫通さ
せて予めピニオンの位置決めを行い組立を容易にして
も、ハウジングを貫通する駆動軸のシール構造が非常に
複雑になって逆に製造コストが高くなるという問題点が
あった。さらに、制御用円板を回動する駆動モータが圧
縮機の外部に設けられているため、圧縮機の外形が大き
くなり、スペースが制限された車両に設けられる冷媒圧
縮機に要求される車載性が低下するという問題点があっ
た。

（考案の目的） そこで本考案は、可動板を回動させるアクチュエータ
を、一体的に連結された駆動モータ、スクリュー軸およ
び移動部材により構成し、ハウジングに穿設された装着
穴に嵌装するとともに、リンクアームを介して移動部材
と可動板を連結することにより、圧縮機の組立てを容易
にするとともに圧縮機の外形を小型化して、製造コスト
を低減し、併せて圧縮機の車載性を向上させることを目
的としている。

（問題点を解決するための手段） 本考案による可変容量ベーン型回転圧縮機は上記目的達
成のため、ロータが収装され、該ロータによって圧縮室
が画成されるカムリングと、カムリングの開口端を封止
する一方のサイドプレートと、サイドプレートを覆って
カムリングに固着されたハウジングと、ハウジングおよ
びサイドプレートによって画成された吸入室と、サイド
プレートに形成され、圧縮室に開口して圧縮室を吸入室
に連通するバイパスポートと、サイドプレートおよびカ
ムリングの間に回動自在に設けられ、バイパスポートの
開口位置を変化させるバイパス開口部を有する可動板
と、可動板を回動するアクチュエータと、を備え、アク
チュエータによって可動板を回動させて圧縮機の吐出量
を変化させる可変容量ベーン型回転圧縮機において、前
記アクチュエータが、それぞれ一体的に連結された駆動
モータと、駆動モータによって回転駆動されるスクリュ
ー軸と、スクリュー軸に螺合され、スクリュー軸の回転
に伴って該軸上を往復移動する移動部材と、からなり、
ハウジングに穿設された装着穴に嵌装されるとともに、
前記移動部材の往復直線運動を前記可動板の回動に変換
するリンクアームを介してこれら移動部材と可動板とを
連結している。

（作用） 本考案では、可動板を回動させるアクチュエータが、一
体的に連結された駆動モータ、スクリュー軸および該ス
クリュー軸の回転に伴って該軸上を往復移動する移動部
材によって構成され、ハウジングに穿設された装着穴に
嵌装されるとともに、移動部材の往復直線運動を可動板
の回動に変換するリンクアームを介してこれら可動部材
と可動板とが連結される。したがって、圧縮機の組立が
容易になるとともに圧縮機の外形が小型化される。した
がって、製造コストが低減し、併せて圧縮機の車載性が
向上する。また、移動部材の往復直線運動をリンクアー
ムによって可動板の回動に変換しているので、リンクア
ームのリンク比を可変されることにより、可動板の回動
ストロークを任意に設定することができる。この結果、
圧縮機の外径を小型化しつつ可動板の回動ストロークを
大きくすることができ、吐出容量の変化量を大きくする
ことができる。

（実施例） 以下、本考案を図面に基づいて説明する。

第１〜３図は本考案の一実施例を示す図である。

第１、２図において、１は筒状のカムリングであり、断
面が略楕円状のカム面１ａが内周に形成されている。カ
ムリング１内には支軸２ａ、２ｂが一体に形成された円
柱状のロータ２が収装され、ロータ２によってカムリン
グ１内には一対の圧縮室３が画成される。カムリング１
の第１図中左側の開口端１ｂには一方のサイドプレート
４がボルト５によって固着され、カムリング１の開口端
１ｂを封止している。６はハウジングであり、ハウジン
グ６はサイドプレート４を覆って図外のボルトによりカ
ムリング１に固着され、ハウジング６とサイドプレート
４によって吸入室７が画成される。なお、カムリング１
の第１図中右側の開口端１ｃには他方のサイドプレート
８が設けられ、カムリング１の開口端１ｃが封止されて
いる。第２図を示すように、サイドプレート４には外周
に沿って圧縮室３の略全域に亘り開口する一対の円弧状
のバイパスポート９が形成され、バイパスポート９によ
って圧縮室３が吸入室７に連通されている。サイドプレ
ート４とカムリング１の間には、円形の可動板10が介装
され、可動板10の外周10aがサイドプレート４のカムリ
ング１側に設けられたリングプレート４ａの円形の内周
４ｂに摺接して可動板10はロータ２の支軸２ａの周りに
回動自在に支持されている。可動板10の外周部には、可
動板10の外周に沿って扇形に切欠いて形成された一対の
バイパス開口部11が穿設され、可動板10の回動によって
圧縮室３と吸入室７を連通するバイパスポート９の開口
位置が変化するようになっている。なお、図示はしてい
ないが、カムリング１には複数のベーンが先端部でカム
面１ａに摺接するように出没自在に嵌挿されており、ロ
ータ２が回転すると、サイドプレート４に設けられた流
入口12を通して吸入室７に導入された冷媒ガスが、第２
図に示すように、サイドプレート４およびカムリング１
を軸方向に貫通し、複数箇所でカム面１ａに開口する一
対の吸入ポート13を通して圧縮室３に供給される。圧縮
室３に供給された冷媒ガスは圧縮室３内で圧縮され、サ
イドプレート８とリヤハウジング１４の間に形成された
吐出室15に導入され、さらにリヤハウジング14に設けら
れた吐出口14aを通して図外の空調装置へ供給される。
そして、第３図において、可動板10が時計回転方向に回
動すると、これに伴ってバイパス開口部11が移動し、バ
イパスポート９の開口位置が変化して圧縮室３内のベー
ンの圧縮開始点が遅くなり、さらに圧縮室３から吸入室
７にバイパスされる冷媒ガスの流量が大きくなるので、
圧縮機の吐出量は減少し、可動板10が反時計回転方向に
回動すると、逆にベーンの圧縮開始点が早くなり、さら
にバイパスされる冷媒ガスの流量が小さくなるので、圧
縮機の吐出量が増加する。

第１、２図において、16はハウジング６に設けられ、可
動板10を回動し、上述のように圧縮機の吐出量を変化さ
せるアクチュエータであり、アクチュエータ16は、駆動
モータ17、スクリュー軸18、円板状の移動部材19から構
成される。そして、駆動モータ17の出力軸17aはスクリ
ュー軸18の基端部に嵌挿、連結され、スクリュー軸18は
駆動モータ17によって回転駆動される。移動部材19には
スクリュー軸18が貫通して螺合し、駆動モータ17の回転
によって移動部材19がスクリュー軸18の軸上を往復移動
する。一方、20はハウジング６にロータ２の軸線、すな
わち可動板10が回動する軸線に直交して穿設されたシリ
ンダ状の装着穴であり、装着穴20は一端がハウジング６
の外方に開口し駆動モータ17が嵌挿、装着される大径部
20a、大径部20aの他端に連続して大径部20aと同軸に形
成され、移動部材19が摺動自在に嵌挿される中径部20b
およびスクリュー軸18の先端部が嵌挿、支持される小径
部20cからなる。そして、アクチュエータ16は前述のよ
うに、それぞれ同軸上に一体的に連結された駆動モータ
17、スクリュー軸18および移動部材19からなり、ハウジ
ング６の外方から装着穴20に嵌挿され、装着される。

21はリンクアームであり、リンクアーム21の一端部には
移動部材19の外周から突出して設けられたピン22が貫通
してリンクアーム21が回動自在に移動部材19に連結さ
れ、リンクアーム21の他端部には、可動板10の外周部に
サイドプレート４の一方のバイパスポート９を通して突
出して設けられたピン23が貫通し、リンクアーム21が回
動自在に可動板10に連結されている。そして、リンクア
ーム21は移動部材19と可動板10を連結し、移動部材19が
駆動モータ17の軸方向に移動すると、可動板10はピン2
2、リンクアーム21およびピン23を介して回動される。
すなわち、移動部材19がスクリュー軸18の軸上を往復直
線運動すると、この直線運動はリンクアーム21によって
可動板10の回動に変換される。また、ハウジング６の装
着穴20とサイドプレート４の間には装着穴20に沿って長
溝24が延設され、長溝24にはリンクアーム21が嵌挿され
ており、長溝24の幅は、リンクアーム21が移動部材19に
よって移動して可動板10を回動するときに、リンクアー
ム21の自由な回動に支障のないように充分広く形成され
ている。さらに、第３図に示すように、装着穴20の中径
部20bと長溝24の間にはスクリュー軸18に沿って延設さ
れたガイド窓25が設けられ、ガイド窓25には移動部材19
のピン22が貫通してガイド窓25はピン22の移動をガイド
するとともにスクリュー軸18の回転による移動部材19の
共回りを防止し、移動部材19がスクリュー軸18の回転に
よって正しく軸方向に移動できるようにしている。な
お、26は装着穴20の大径部20aの中径部20b側に嵌装され
た封止金具であり、大径部20aと中径部20bの段差面に当
接するとともに、封止金具26に嵌挿されるスクリュー軸
18の基端部との間にシール部材27が設けられて中径部20
b内が外部からシールされている。また、封止金具26は
装着穴20の小径部20cと共にスクリュー軸18を回転自在
に支持する機能を有している。

第３図において、アクチュエータ16の駆動モータ17は制
御回路28に接続されており、制御回路28は図外の空調装
置に設けられた吸入圧力センサー29、エバポレータ圧力
センサー30、エバポレータ温度センサー31、あるいは自
動車の車内に設けられた車内温度センサー32等から出力
される単独の信号あるいは複数の信号を受け、駆動モー
タ17を駆動して車内が予め設定された設定温度になるよ
うに制御する。また、制御回路28は、図外の車両エンジ
ンに設けられたエンジンの状態、例えば吸入ガス温度、
冷却水温度等を検出する各種センサー、あるいはエンジ
ンの運転状態、例えばエンジンの回転数、排気ガス温度
等を検出する各種センサー、さらに車両に設けられた日
射センサー等の信号を受けて駆動モータ17の駆動制御を
補正する機能も有している。

次に、作用を説明する。

第１、２図において、ロータ２が図外のエンジン等、駆
動源に連結されて回転駆動されると、サイドプレート４
の流入口12を通して吸入室７に導入された冷媒ガスが吸
入ポート13を通して圧縮室３に供給され、圧縮室３内で
圧縮されて吐出室15に導入され、さらに吐出口14aを通
して図外の空調装置へ供給される。このとき、第３図に
おいて、制御回路28が吸入圧力センサー29、エバポレー
タ圧力センサー30、エバポレータ温度センサー31、ある
いは車内温度センサー32等の信号を受け、車内を設定温
度にするために、駆動モータ17を駆動制御して圧縮機の
吐出量を変化させる。そして、圧縮機の吐出量を減少さ
せる場合には、制御回路28によって駆動モータ17が駆動
され、スクリュー軸18が回転して移動部材19が図中上方
向に移動する。これに伴って、移動部材19がリンクアー
ム21を介して可動板10を時計回転方向に回動し、前述の
ように、バイパス開口部11が移動し、バイパスポート９
の開口位置が変化してベーンの圧縮開始点が遅くなり、
さらに圧縮室３から吸入室７にバイパスされる冷媒ガス
の流量が大きくなって圧縮機の吐出量が減少する。逆
に、圧縮機の吐出量を増加させる場合には、制御回路28
によって駆動モータ17が駆動され、スクリュー軸18が上
述の場合とは逆方向に回転され、移動部材19が下方向に
移動する。これに伴って、移動部材19がリンクアーム21
を介して可動板10を反時計回転方向に回動し、ベーンの
圧縮開始点が早くなり、さらにバイパスされる冷媒ガス
の流量が小さくなって圧縮機の吐出量が増加する。この
ように、アクチュエータ16は可動板10を回動させて圧縮
機の吐出量を可変制御し、的確に車内温度を設定値とし
て車内を常に快適な環境に保つことができる。

一方、第１、２図において、圧縮機の組立時には、アク
チュエータ16の構成要素である駆動モータ17、スクリュ
ー軸18および移動部材19がそれぞれ一体的に連結されて
いるので、外方からハウジング６の装着穴20に嵌装する
ことは極めて容易であり、また、ハウジング６をカムリ
ング１に装着する以前に、リンクアーム21を外方から移
動部材19に装着することができる。さらに、ハウジング
６の装着時には、可動板10のピン23をリンクアーム21の
他端部に嵌挿して連結するだけであり、特に繁雑なアク
チュエータ16の位置決めの必要がないので圧縮機の組立
が著しく容易になる。さらに、アクチュエータ16全体が
装着穴20内に収納されるので、組立てられた圧縮機の外
方には突出部がなく、圧縮機の外形が小型化される。

このように、本実施例においては、可動板10を回動させ
るアクチュエータ16を、一体的に連結された駆動モータ
17、スクリュー軸18および移動部材19により構成し、ハ
ウジング６に穿設された装着穴20に外方から嵌装すると
ともに、リンクアーム21を介して移動部材19と可動板10
を連結しているので、圧縮機の吐出量を的確に可変制御
できることは勿論、圧縮機の組立てを容易にすることが
でき、さらに圧縮機の外形を小型化することができる。
その結果、圧縮機の製造コストを低減し、併せて圧縮機
の車載性を向上することができる。また、移動部材19の
往復直線運動をリンクアーム21によって可動板10の回動
に変換しているので、リンクアーム21のリンク比を可変
させることにより、可動板10の回動ストロークを任意に
設定することができる。この結果、圧縮機の外径を小型
化しつつ可動板10の回動ストロークを大きくすることが
でき、吐出容量の変化量を大きくすることができる。

（効果） 本考案によれば、可動板を回動させるアクチュエータ
を、一体的に連結された駆動モータ、スクリュー軸およ
び該スクリュー軸の回転に伴って該軸上を往復移動する
移動部材によって構成し、ハウジングに穿設された装着
穴に嵌装されるとともに、移動部材の往復直線運動を可
動板の回動に変換するリンクアームを介してこれら可動
部材と可動板とを連結しているので、圧縮機の組立てを
容易にし、さらに圧縮機の外形を小型化することができ
る。したがって、製造コストを低減し、併せて圧縮機の
車載性を向上することができる。また、移動部材の往復
直線運動をリンクアームによって可動板の回動に変換し
ているので、リンクアームのリンク比を可変させること
により、可動板の回動ストロークを任意に設定すること
ができる。この結果、圧縮機の外径を小型化しつつ可動
板の回動ストロークを大きくすることができ、吐出容量
の変化量を大きくすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１〜３図は本考案に係る可変容量ベーン型回転圧縮機
の一実施例を示す図であり、第１図はその正面断面図、
第２図は第１図のII-II線矢視断面図、第３図はそのア
クチュエータおよび可動板の作動を示す構成図である。 １……カムリング、 １ｂ……開口端、 ２……ロータ、 ３……圧縮室、 ４……サイドプレート、 ６……ハウジング、 ７……吸入室、 ９……バイパスポート、 10……可動板、 11……バイパス開口部、 16……アクチュエータ、 17……駆動モータ、 18……スクリュー軸、 19……移動部材、 20…装着穴、 21…リンクアーム。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ロータが収装され、該ロータによって圧縮
   室が画成されるカムリングと、カムリングの開口端を封
   止する一方のサイドプレートと、サイドプレートを覆っ
   てカムリングに固着されたハウジングと、ハウジングお
   よびサイドプレートによって画成された吸入室と、サイ
   ドプレートに形成され、圧縮室に開口して圧縮室を吸入
   室に連通するバイパスポートと、サイドプレートおよび
   カムリングの間に回動自在に設けられ、バイパスポート
   の開口位置を変化させるバイパス開口部を有する可動板
   と、可動板を回動するアクチュエータと、を備え、アク
   チュエータによって可動板を回動させて圧縮機の吐出量
   を変化させる可変容量ベーン型回転圧縮機において、前
   記アクチュエータが、それぞれ一体的に連結された駆動
   モータと、駆動モータによって回転駆動されるスクリュ
   ー軸と、スクリュー軸に螺合され、スクリュー軸の回転
   に伴って該軸上を往復移動する移動部材と、からなり、
   ハウジングに穿設された装着穴に嵌装されるとともに、
   前記移動部材の往復直線運動を前記可動板の回動に変換
   するリンクアームを介してこれら移動部材と可動板とを
   連結したことを特徴とする可変容量ベーン型回転圧縮
   機。