JPH06217786A - 抗ネコヘルペスウイルス−1組換え抗体および該抗体をコードする遺伝子断片 - Google Patents
抗ネコヘルペスウイルス−1組換え抗体および該抗体をコードする遺伝子断片Info
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Abstract
染症の治療・予防および診断に有効な抗FHV−1組換
え抗体、およびこの調製に有用な遺伝子断片を提供す
る。 【構成】 FHV−1の中和活性に優れたマウスモノク
ローナル抗体を産生する細胞を構築し、この抗体のFH
V−1特異的結合能を担う抗体V領域をコードする遺伝
子断片を得た。この遺伝子断片とネコ抗体定常領域をコ
ードする遺伝子断片とを用いてキメラ化した抗FHV−
1組換え抗体を得る。
Description
−1(FHV−1)感染症の診断、治療及び予防に期待
できる新規なネコモノクローナル抗体に関する。さらに
詳細にはマウス型抗FHV−1中和モノクローナル抗体
の定常領域をネコ抗体定常領域に変換したネコ型抗FH
V−1組換え抗体及び該抗体をコードする遺伝子断片に
関する。
ある動物であるが、近年の欧米では、「伴侶、仲間、相
棒としての動物」(Companion species)と称され、人
間社会の一員としての地位を獲得しつつある。もう一方
では、医学、薬学、畜産学、獣医学から心理学にいたる
実験動物としての貢献度は従来から大きなものであった
が、近年では医薬品の効果検定や安全性試験にSPF猫
(SPF Cat)などの呼称のもとで更に貢献度が高まって
いる。いずれの場合にも当然の事として、これらのネコ
の疾病、特に伝染病に関するより確実な知識がますます
必要となり、その診断、治療、予防のための方法確立が
要求されている。
HV−1に起因した上部気道性疾患は急性で致死率が高
い。両疾病に対する特効的な治療薬はなく、抗生物質、
サルファ剤等の二次細菌感染予防の対症療法しかなく、
現在の治療法には問題を残している。
度免疫血清や血清由来の免疫グロブリンが使用され有効
な実績を残してきた。しかし、現在では、動物愛護思想
の高まりと共に、ネコ血清原料の入手が困難になりこの
治療法は使いたくとも使用できない状況になっている。
従って、従来の高度免疫血清に代わってFHV−1を中
和できるモノクローナル抗体があればFHV−1感染症
の治療に大きく貢献することが可能である。
体がいくつか確立されているが、確立されているモノク
ローナル抗体は、全てマウスハイブリドーマ由来の抗体
である。これらの抗体を治療薬としてネコに投与した場
合、異種蛋白であるため血中に存在している補体あるい
はFcレセプターを持つ免疫担当細胞との結合力は同種
(ネコ)のそれよりも弱く、抗体+補体による細胞障害
や抗体依存・細胞媒介性細胞障害を誘起しにくいと考え
られる。FHV−1の感染防御及びウイルスの中和には
抗体単独による作用に加えて、これら2つの免疫反応も
重要であることが知られている(Horimoto T. et al. J
pn.J.Vet.Sci. 51, p1025, 1989)。従って、従来のマ
ウス抗体では効果的な治療効果を誘導できない可能性が
ある。
ウス抗体はアナフィラキシーショックや血清病などの副
作用を起こしたり、半減期が短縮し治療効果が薄れる可
能性がある。従って投与する抗体は、従来のマウスモノ
クローナル抗体では決して満足のいくものではなく、ネ
コ型のモノクローナル抗体でなければならなかった。
は、FHV−1ウイルス株を中和するマウスモノクロー
ナル抗体JH2を確立し、この抗体の可変領域(V領
域)をコードする遺伝子の核酸配列を同定し、さらに該
抗体のFHV−1中和に深く係わるV領域中の特異的ア
ミノ酸配をも見いだした。次に本マウス型モノクローナ
ル抗体をネコ型化するために、抗FHV−1中和抗体を
コードする抗体V領域遺伝子を、先に本発明者らが見い
だしたネコ抗体の定常領域をコードする遺伝子断片と連
結させることにより、FHV−1中和活性を有する抗F
HV−1キメラ抗体発現ベクターを構築し、これを発現
させ、抗FHV−1キメラ抗体を得ることに成功するに
至った。すなわち、本発明は、遺伝子工学的手法を用い
てマウス型抗体の定常領域をネコ抗体の定常領域と置き
換えた、これまでに報告のない抗FHV−1ネコ型キメ
ラ抗体、およびこの調製に有用な該抗体をコードする遺
伝子断片を提供することを目的とする。かくして、FH
V−1感染症に対して有効かつ副作用のない、診断薬・
治療薬・予防薬への抗FHV−1抗体の応用が可能とな
る。
-K1ウイルス粒子で免疫されたマウスのリンパ球とマ
ウスミエローマ細胞を常法にしたがい細胞融合し、ハイ
ブリドーマを作製した。ハイブリドーマの培養上清中の
ウイルス中和能を指標にクローニングを行った結果、F
HV−1の中和活性において極めて優れたモノクローナ
ル抗体を産生する抗体産生細胞JH2を確立することに
成功した。
体可変(V)領域のアミノ酸によって規定されているこ
とが知られている。そこで、JH2のV領域がいかなる
アミノ酸で構成されているか調べた。アミノ酸配列は、
該抗体のV領域をコードする遺伝子をクローニングし、
その核酸塩基配列を調べることにより決定した。
酸配列を有していることが分かった。一般に、抗体のH
鎖遺伝子領域には約200個のVH、数10個のD、4つの
JH遺伝子が存在する。一方L(κ)鎖遺伝子領域には約
200のVκ、4つのJκ遺伝子がある。B細胞の分化に
ともない、これらのV(D)Jの各断片のうちから1つを
選んで再構成が起こり可変領域全体のアミノ酸をコード
する遺伝子となることが知られている。さらに、N配列
の付加、Somatic Mutationにより、抗体可変領域の多様
性は莫大な数となる。本発明により明らかにされたJH
2の可変領域遺伝子はこの中から選択された唯一のもの
である。図中のCDRは、抗原と結合する上で重要な領
域である。JH2の場合も、これら6つのCDR領域の
アミノ酸がFHVと結合し、中和反応を引き起こしてい
るものと考えられる。中でもH鎖CDR3に見られるAs
p Gly Ala Trp Phe Pro PheはJH2特有のアミノ酸配
列であることが他の抗体可変領域との相同性比較により
明かとなった。
鎖のCDR領域のアミノ酸がFHV−1との結合および
中和反応と密接に関連する部位と考えられ、これはJH
2抗体の可変領域遺伝子を単離することにより初めて明
かとなった。さらに、JH2のV領域の核酸塩基配列、
アミノ酸配列が明らかになったことにより、この配列を
基にさらに抗原結合活性を向上させたり、V領域そのも
のをネコ型化を可能にするものである。そして、この様
なアミノ酸配列を持つ抗体もしくはペプチドはFHV−
1感染症の治療、診断、予防に用いることが出来ると推
察される。
V−1に対して中和活性を有する抗体のV領域をコード
する遺伝子断片とは、下記の特徴を有する遺伝子断片を
言う。
に対して特異的に反応する抗体VHまたはその一部をコ
ードする遺伝子断片とは、該抗体のCDR3をコードす
る核酸配列部分が、下記のアミノ酸配列をコードする核
酸配列であることを特徴とする抗体VH遺伝子断片であ
る。 Asp Gly Ala Trp Phe Pro Phe
する好ましいVH遺伝子断片とは、該抗体のCDR1〜
3をコードする核酸配列部分が、それぞれ下記のアミノ
酸配列をコードする核酸配列である遺伝子断片が挙げら
れる。 CDR1:LeuSerThrSerGlyMetGlyAlaGly CDR2:HisIleTrpTrpAspAspValLysArgTyrAsnProAlaLeuLy
sSer CDR3:SerGlnIleTyrPheAspTyrAspGlyAlaTrpPheProPhe
列の一例としては、配列表:配列番号1に記載のアミノ
酸配列をコードする核酸配列が挙げられる。その具体的
核酸配列とは、例えば、配列表:配列番号1に記載の核
酸配列が挙げられる。
−1)に対して特異的に反応する抗体VLまたはその一
部をコードする遺伝子断片とは、該抗体のCDR1〜3
をコードする核酸配列部分が、それぞれ下記のアミノ酸
配列をコードする核酸配列である遺伝子断片が挙げられ
る。 CDR1:ArgAlaSerGlnSerIleSerAsnAsnLeuHis CDR2:AlaSerGlnSerIleSerGly CDR3:GlnGlnSerAsnSerTrpProHisThr
列の一例としては、配列表:配列番号2に記載のアミノ
酸配列をコードする核酸配列が挙げられる。その具体的
核酸配列とは、例えば、配列表:配列番号2に記載の核
酸配列が挙げられる。
染症の治療用として直接ネコに投与することは、有効性
の減弱、副作用、半減期の短縮などの点から困難と考え
られる。これは抗体そのものがネコにとって異種蛋白で
あるマウス由来のものであるため、ネコの補体やFcレ
セプターを有する免疫担当細胞と結合できない可能性が
あり、その結果ADCCやCDCを誘導しにくいことが
予想される。前述のようにFHV感染症においては、こ
れらの作用がウイルス中和に大きく寄与していることを
考えると抗体はネコのFc領域をもつ必要がある
疫原性を惹起すれば、生体より速やかにクリアランスさ
れるため半減期が短縮されたり、血清病などの副作用を
引き起こすかも知れない。抗体分子としての免疫原生も
Fc領域に集約されているといわれており、このことか
らもFc領域は同種蛋白であるネコの抗体分子のアミノ
酸配列であることが好ましい。そこで本発明者らは、J
H2の抗体定常領域を、ネコのそれと遺伝子工学的手法
を用いて置き換えることにより、ネコ型JH2を作製す
ることに成功した。
供される上記抗FHV−1抗体のVHをコードする遺伝
子およびVL遺伝子の下流(3'側)に、ネコ抗体定常領域
遺伝子;CH遺伝子およびCL遺伝子を接続することに
より該ネコ型抗体すなわち、ネコ型キメラ抗体をコード
する抗体H鎖およびL鎖の構造遺伝子が構築され、これ
を適当な動物細胞等で発現されることにより目的の抗F
HV−1キメラ抗体が調製される。
遺伝子は、本発明者らが先に見いだしている(特開平3-
123488、特開平3-201986および特開平3-72873)。この
ようなネコ抗体定常領域をコードする遺伝子の核酸配列
としては、CHをコードする遺伝子断片として、配列
表:配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝
子断片が挙げられる。その具体的な核酸配列としては、
配列表:配列番号3に記載の核酸配列が挙げられる。ま
た、このようなCH遺伝子は、Escherichia coliCCG-CB
25G;微工研菌寄第11166号(FERM P-11166)として本出
願人により寄託されている。また、Cκをコードする遺
伝子として、配列表:配列番号4に記載のアミノ酸配列
をコードする遺伝子断片が挙げられる。その具体的な核
酸配列としては、配列表:配列番号4に記載の核酸配列
が挙げられる。また、このようなCκ遺伝子は、Escher
ichia coli FCK-CEK8A;微工研菌寄第10985号(FERM P-
10985)として本出願人により寄託されている。さら
に、Cλをコードする遺伝子として、配列表:配列番号
5に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子断片が挙げ
られる。その具体的な核酸配列としては、配列表:配列
番号5に記載の核酸配列が挙げられる。また、このよう
なCλ遺伝子は、Escherichia coli FCL-T162;微工研
菌寄第10942号(FERM P-10942)として本出願人により
寄託されている。
する抗体のV領域をコードする遺伝子断片は、上記のよ
うなV領域がマウス由来、C領域がネコ由来の配列から
なるキメラ抗体の他に、V領域のフレーム(FR)領域
についてもマウス以外の抗体(本発明の場合にはネコ抗
体)由来の配列に組換えられた改変抗体の調製にも用い
ることができる。ネコ抗体の一般的なV領域FR領域の
アミノ酸配列に関しては、未だその全配列に関しては報
告されていない。しなしながら、その配列の一部につい
ては、既に報告されており(KEHO J.M. et al. Proc.
N.A.S. 69, p2052, 1972)、これらおよび、本発明者ら
が先に見いだしたネコ抗体の定常領域のアミノ酸配列等
から適当なプライマーを調製することにより、ネコ抗体
V領域をコードする遺伝子をクローニングし、該FR領
域のアミノ酸配列を見いだすことも可能であろう。改変
抗体の基本的調製法に関しては、公知の技術(例えば、
特開昭62-296890号)に従い調製される。この場合に用
いられる、本発明の遺伝子断片とは、VH鎖およびVL
鎖をコードする一部の遺伝子として、少なくとも下記の
アミノ酸配列をコードする核酸配列を含む遺伝子断片を
言う。 Asp Gly Ala Trp Phe Pro Phe
DRをコードする核酸部分として、VH鎖、VL鎖それ
ぞれ下記のアミノ酸をコードする核酸配列が用いられ
る。VH鎖; CDR1:LeuSerThrSerGlyMetGlyAlaGly CDR2:HisIleTrpTrpAspAspValLysArgTyrAsnProAlaLeuLy
sSer CDR3:SerGlnIleTyrPheAspTyrAspGlyAlaTrpPheProPhe VL鎖; CDR1:ArgAlaSerGlnSerIleSerAsnAsnLeuHis CDR2:AlaSerGlnSerIleSerGly CDR3:GlnGlnSerAsnSerTrpProHisThr
改変抗体の調製の際には、従来の技術に従い、V領域の
CDR部分をマウス由来の配列にするよりも、CDRに
隣接するV領域のFR領域の一部についてもCDRと同
様のマウス由来の配列にすることで、本来のマウスモノ
クローナル抗体の持つ特異性に優れた抗体を調製できる
ことがあることをこれまでに見いだしている。すなわ
ち、VH鎖については図3に記載されているアミノ酸配
列を、VL鎖については図4に記載されているアミノ酸
配列を参考にすることにより、V領域のFR領域につい
てもその一部をマウス由来の配列にすることで、CDR
のみをマウス由来の配列にした改変抗体より更に優れた
改変抗体を調製できる可能性がある。
の可変領域をコードする遺伝子を用いて、キメラ抗体用
または改変抗体用のV領域構造遺伝子を構築し、本発明
者らが先に見いだしたネコ抗体定常領域をコードする遺
伝子と連結させることにより、ネコ型抗FHV−1組換
え抗体、いわゆるキメラ抗体をコードする構造遺伝子が
調製される。この遺伝子を適当なプロモーター遺伝子の
下流に連結させ公知の技術に従い動物細胞等で発現させ
ることにより得られる本発明の組換え抗体は、マウス型
抗体のJH2と同じ優れた中和活性を保持していた。さ
らにFHV感染ネコへ投与した場合においては、顕著な
副作用を呈することなく病状を緩和させた。E.A.Emini
等はチンパンジーのHIV感染におけるモノクローナル
抗体の感染防御効果を検討した。その結果、ヒト型のキ
メラ抗体はHIV感染を防御出来た(E.A.Emini et al.
Nature,355,p728,1992)が、オリジナルのマウス型抗
体は防御出来なかった(E.A.Emini et al. J.Virol.,6
4,p3674,1990)。これは、Fc領域依存性のADCCあるい
はCDC活性を誘導できなかった点、及び消失半減期が短
かったことによるものと考えられる。今回見いだされた
FHV感染ネコにおけるFH2抗体の有効性も前例同様
マウス型の抗体では効果が弱いと考えられ、ネコ型化す
ることによってはじめて認められるものと推察される。
以上のことから本抗FHV−1キメラ抗体FH2はFH
V−1感染症の治療・予防において、実質的な治療薬と
なり得るものである。以下、本発明を実施例に沿って更
に詳細に説明する。
リドーマの作製 FHV−1感染FL細胞(ネコ肺細胞)の培養上清を硫酸
アンモニウムで沈降させ、透析後、リン酸緩衝液に再懸
濁させBALB/cマウスの腹腔内にフロイントの完全アジュ
バントとともに免疫した。2週間後、マウスのリンパ球
とマウスミエローマ細胞(P3U1)をポリエチレングリコー
ル法で細胞融合し、ハイブリドーマを作製した。ハイブ
リドーマの培養上清中のウイルス中和能を指標にクロー
ニングを行い4種類のFHV−1中和モノクローナル抗
体産生細胞を確立した。下記の表1は各モノクローナル
抗体が10TCID50のFHV−1を中和するのに必要な抗体
の最小有効濃度を示している。これらのモノクローナル
抗体のうちJH2抗体は最も強力にFHV−1−K1株
を中和した。
抽出し、Oligo dTカラム(Stratagene社製、Poly(A) Qui
k mRNA Purification Kit)によってmRNAを精製し
た。逆転写酵素(タカラ社;以下特別にことわりのない
かぎり遺伝子操作用の試薬はタカラ社製のものを用い
た)により一本鎖cDNAを合成した。5'側のプライマ
ーとしては抗体のリーダー領域(MHL34,MKL104)の、3'側
にはJ領域(MHJ3,MKJ124)の塩基配列を有するオリゴヌ
クレオチド合成した。下記にその塩基配列を示す。 VH鎖増幅用プライマー MHL341:TCTAGAAGCTTGCCGCCACCATGGGCAGACTTACATTCTCAT
T MHJ3 :GAAGATCTGGATCCACTCACCTGCAGAGACAGTGA Vκ鎖増幅用プライマー MKL104:GGAATTCAAGCTTGCCGCCACCATGGT(T/A)T(C/T)CTCA
CCTCAG MKJ124:CTAGATCTGGATCCACTTACGTTT(T/G)ATTTCCA(A/G)C
TT
れぞれ添加した。94℃1分、55℃1分、72℃1分で30サ
イクルPCR(Polymerase Chain Reaction)を行い、プ
ライマーによって挟まれた可変領域遺伝子(VH、V
κ)を増殖した。図2は増幅された遺伝子断片のアガロ
ース電気泳動パターンである。遺伝子の大きさはVH
(H鎖)約400bp、Vκ(L鎖)約400bpであり期待され
たバンドの大きさとほぼ一致した。
により決定した。VHおよびVκ遺伝子断片をpUC18に
それぞれクローン化し、ジデオキシ法(USB社製、Sequen
ase ver.2)により塩基配列を決定した。
よびそれによってコードされるアミノ酸配列を示したも
のである。オープンリーディングフレーム(ORF)を
とりドメイン構造を形成するCysは保存されていたこと
からこの遺伝子が発現型の遺伝子であることが示され
た。また、JH3で再配列していることが解った。次
に、この遺伝子のコードするアミノ酸配列のホモロジー
検索を行なった。検索用ソフトウエアはGENETYX-CD(ソ
フトウエア社)を用い、Gene Bankのデータベースを検
索した。その結果、VHIII/J606ファミリーに属する
抗体1から5が相同性の高いVHとして検索された(図
5)。図5中の*は、他のVHと相同性のあるアミノ酸
を示し、それ以外の領域は、JH2のみに認められたア
ミノ酸配列である。特に下線で示された部分はこれまで
に報告のない新規なアミノ酸配列で、JH2抗体に特徴
的な領域である。
よびそれによってコードされるアミノ酸配列を示したも
のである。L鎖と同様にORFをとりドメイン構造を形
成するCysは保存されていたことからこの遺伝子が発現
型の遺伝子であることが示された。また、Jκ1で再配
列していることが解った。図6は、ホモロジー検索の結
果を示している。JH2のVκの場合も他のVκと相同
性が認められた。
た部分がJH2抗体特異的な部分であり、抗原結合活性
を規定する重要なアミノ酸配列であると推察された。
コ抗体γ鎖定常領域遺伝子CB25γ(特開平3-201986)ある
いはκ鎖定領域CEK(特開平3-123488)と連結した。発現
用のプロモーターにはニワトリのβ-アクチンのプロモ
ーター(特願平1-309785)を、セレクションマーカーに
はneo(Southern P.J. J.Mol.Appl.Genet.,1,327,198
2)あるいはdhfr遺伝子(Stark,G.R. and Wahl,G.M.,Ann
u.Rev.Biochem.,53,p447,1984)を用いた。図7および図
8は、作製されたキメラ抗体H鎖およびL鎖発現ベクタ
ーの制限酵素地図である。
それぞれ10μgをPvuIで切断し2x106のマウスミエロー
マ細胞P3ーX63ーAg8ー6.5.3.(ATCC・CRL1580)にlipofecti
n(BRL社製)を用いてco-transfectionし0.25x10-7M メ
トトレキセート(MTX)を含む5%FCS/RPMI1640選択培地で
培養し薬剤耐性株(形質転換体)を選別した。培養上清
中に発現されるネコIgGを指標にキメラ抗体産性細胞
を限界希釈法によってクローン化し発現細胞FH2を確
立し、以下の性状解析を行った。
クローナル抗体発現細胞)の培養上清を抗ネコ抗体(E.
Y.LABS.INC)固相化マイクロタイタープレートに加え、
室温で1時間反応させた。プレートを洗浄後、HRP-
抗ネコ抗体(E.Y.LABS.INC)を室温で1時間反応させ
た。再びプレートを洗浄後、TMBZで発色させ吸光度
450nmを測定し抗ネコ抗体との反応性を調べた(図
9)。FH2の培養上清は濃度依存的に抗ネコ抗体と反
応したが、マウス抗体を発現しているJH2の培養上清
は抗ネコ抗体と反応しなかった。このことからFH2細
胞の発現しているキメラ抗体はネコ抗体であることがわ
かった。
S-II)で精製した。精製キメラ抗体を12.5%SDS-PAGEに
かけ、ネコIgG標品(ポリクローナル抗体)と比較し
た。分子量はBio Rad社製のプレステインドマーカーに
より求めた。図10に示されるように、キメラ抗体は還
元状態下ではH鎖5万、L鎖2.5万で非還元状態では約1
5万のところにバンドを検出したことから、H2L2の
2量体を形成し、ネコの生体内に存在しているIgGと
同じ形をとっていることがわかった。
H2及びJH2)をFHV−1-K1(硫安沈澱粗精製
品)固相化マイクロタイタープレートに加えた。プレー
トを洗浄後、HRP-抗ネコ抗体あるいはHRP-抗マウ
ス抗体を反応させた。TMBZで発色させ、FHV−1
ウイルス粒子との反応性を調べた。FH2抗体はマウス
抗体JH2と同様にFHV−1-K1と特異的に反応し
た。しかしながら、他のウイルスに特異的な組換えキメ
ラ抗体(同じネコ定常領域と異なるマウス可変領域を持
っている抗体)は反応しなかった(図11)。
上清(FH2及びJH2)をFHV−1ウイルス100TCI
D50と4℃で6時間反応させた。CRFK細胞を0.25×1
05個加えて37℃で2日培養した。CPE(Cell Roundi
ng)を観察し、最低有効中和濃度を求めた。下記の表2
にその結果をまとめた。その結果、FH2抗体はFHV
−1を1.95ug/mlで中和することが確認された。
鼻より強制感染させた。2日目にFH2を30-10mg/Kgで
頸静脈より静脈内投与した。体重、体温、食餌量、飲水
量及び元気などの一般臨床症状、さらに、流涙、結膜
炎、鼻漏、くしゃみおよび咳などの呼吸器病変を経時的
に観察し、無症状0点、軽度の症状を1点、中度2点、
重度3点としてスコア化した。その結果、10及び30mg/k
g投与群で病状が緩和され、FH2のFHV感染症に対
するin vivoでの有用性が示された。また、FH2投与
後に発熱、下痢、嘔吐その他のショック様症状などの副
作用は観察されなかった。以上のこのことより、FH2
抗体はFHV−1感染症に対して有効かつ副作用のない
診断薬、治療薬・予防薬への応用を可能にするものであ
る。
H2のVH、Vκ遺伝子のアガロースゲル電気泳動結果
を示す模式図である。
それによってコードされるアミノ酸配列を示す。
それによってコードされるアミノ酸配列を示す。
での相同性比較を行った結果を示す。
での相同性比較を行った結果を示す。
限酵素地図を示す。
限酵素地図を示す。
性を示したものである。
す模式図である。
合性を示したものである。
に対する本発明のキメラ抗体の有効性を示したものであ
る。
Claims (20)
- 【請求項1】 ネコヘルペスウイルス−1(FHV−
1)に対して特異的に反応するモノクローナル抗体。 - 【請求項2】 ネコヘルペスウイルス−1(FHV−
1)に対して特異的に反応する、遺伝子組換え技術によ
り調製された組換え抗体。 - 【請求項3】 VHの相補性決定領域(CDR)のアミ
ノ酸配列が、下記のアミノ酸配列を有することを特徴と
する請求項2の抗体。 Asp Gly Ala Trp Phe Pro Phe - 【請求項4】 該VHおよびVLのアミノ酸配列中のC
DRの配列が、それぞれ下記のアミノ酸配列である請求
項2の抗体。 VH; CDR1:LeuSerThrSerGlyMetGlyAlaGly CDR2:HisIleTrpTrpAspAspValLysArgTyrAsnProAlaLeuLy
sSer CDR3:SerGlnIleTyrPheAspTyrAspGlyAlaTrpPheProPhe VL; CDR1:ArgAlaSerGlnSerIleSerAsnAsnLeuHis CDR2:AlaSerGlnSerIleSerGly CDR3:GlnGlnSerAsnSerTrpProHisThr - 【請求項5】 該VHおよびVLのアミノ酸配列が、そ
れぞれ配列表:配列番号1中のアミノ酸順位20番〜1
43番および配列番号2中のアミノ酸順位21番〜12
7番に記載するアミノ酸配列である請求項2の抗体。 - 【請求項6】 該抗体の定常領域のアミノ酸配列がネコ
抗体由来のアミノ酸配列である請求項2の抗体。 - 【請求項7】 該抗体のH鎖定常領域のアミノ酸配列
が、配列表:配列番号3に記載のアミノ酸配列、および
L鎖定常領域のアミノ酸配列が、配列表:配列番号4に
記載のアミノ酸配列または配列表:配列番号5に記載の
アミノ酸配列である請求項6の抗体 - 【請求項8】 ネコ(FHV−1)に対して特異的に反
応する抗体VHまたはその一部をコードする遺伝子断片
であって、CDR3をコードする核酸配列部分が、下記
のアミノ酸配列をコードする核酸配列であることを特徴
とする抗体VH遺伝子断片。 Asp Gly Ala Trp Phe Pro Phe - 【請求項9】 CDR1〜3をコードする核酸配列部分
が、それぞれ下記のアミノ酸配列をコードする核酸配列
である請求項8の遺伝子断片。 CDR1:LeuSerThrSerGlyMetGlyAlaGly CDR2:HisIleTrpTrpAspAspValLysArgTyrAsnProAlaLeuLy
sSer CDR3:SerGlnIleTyrPheAspTyrAspGlyAlaTrpPheProPhe - 【請求項10】 抗体VHをコードする核酸配列が、配
列表:配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする核
酸配列である請求項8の遺伝子断片。 - 【請求項11】 抗体VHをコードする核酸配列が、配
列表:配列番号1に記載の核酸配列である請求項8の遺
伝子断片。 - 【請求項12】 抗体VLのCDR1〜3をコードする
核酸配列部分が、それぞれ下記のアミノ酸配列をコード
する核酸配列であることを特徴とする抗体VL遺伝子断
片。 CDR1:ArgAlaSerGlnSerIleSerAsnAsnLeuHis CDR2:AlaSerGlnSerIleSerGly CDR3:GlnGlnSerAsnSerTrpProHisThr - 【請求項13】 抗体VLをコードする核酸配列が、配
列表:配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする核
酸配列である請求項12の遺伝子断片。 - 【請求項14】 抗体VLをコードする核酸配列が、配
列表:配列番号2に記載の核酸配列である請求項12の
遺伝子断片。 - 【請求項15】 ネコヘルペスウイルス−1(FHV−
1)に対して特異的に反応するネコキメラ抗体H鎖をコ
ードする遺伝子断片であって、上記請求項8の遺伝子断
片の下流(3'側)に、ネコ抗体H鎖の定常領域をコードす
る遺伝子断片を結合させたことを特徴とする組換え遺伝
子断片。 - 【請求項16】 該ネコ抗体H鎖の定常領域をコードす
る遺伝子断片が、配列表:配列番号3に記載のアミノ酸
配列をコードする核酸配列である請求項15の組換え遺
伝子断片。 - 【請求項17】 ネコヘルペスウイルス−1(FHV−
1)に対して特異的に反応するネコキメラ抗体L鎖をコ
ードする遺伝子断片であって、上記請求項12の遺伝子
断片の下流(3'側)に、ネコ抗体κ鎖の定常領域をコード
する遺伝子断片を結合させたことを特徴とする組換え遺
伝子断片。 - 【請求項18】 該ネコ抗体κ鎖の定常領域をコードす
る遺伝子断片が、配列表:配列番号4に記載のアミノ酸
配列をコードする核酸配列である請求項17の組換え遺
伝子断片。 - 【請求項19】 ネコヘルペスウイルス−1(FHV−
1)に対して特異的に反応するネコキメラ抗体L鎖をコ
ードする遺伝子断片であって、上記請求項12の遺伝子
断片の下流(3'側)に、ネコ抗体λ鎖の定常領域をコード
する遺伝子断片を結合させたことを特徴とする組換え遺
伝子断片。 - 【請求項20】 該ネコ抗体λ鎖の定常領域をコードす
る遺伝子断片が、配列表:配列番号5に記載のアミノ酸
配列をコードする核酸配列である請求項19の組換え遺
伝子断片。
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