JPH0621302Y2 - 刈払機の刈刃取付け装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は刈払機の刈刃取付け装置に関し、さらに詳し
くは、刈払機の備える出力軸に対して刈刃を確実に取付
け、かつ、締着台と、出力軸などの駆動側の部材との間
で固定機能をもたせた取付装置に関する。

〔従来の技術〕

従来周知の刈払機の多くは、操作主杆の一端部に動力源
としての小型のエンジンが取付けられており、このエン
ジンの出力が操作主杆の内部を貫いて挿通されている伝
達軸を介して操作主杆の他端部に設けてあるギヤケース
に入力されており、ギヤケースの出力軸に取付けた刈刃
抑えと、刈刃の締着座金とにより刈刃を締着固定するよ
うに構成されたものである。

さらに詳しくは、前記出力軸には円板状の刈刃抑えが一
体的に固定されていて、この刈刃抑えに対して密着する
刈刃を出力軸に嵌込み、出力軸に形成した雄ねじ部に固
定ナット、ロックナットとをねじ込むことで出力軸に対
して刈刃を締着する構成、いわゆるダブルナットによる
取付形式である。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、刈刃は毎分数千回転もの高速回転をさせられ
るものであるから、高速回転中に刈刃が脱落するような
ことがあると、刈刃が回転しながら辺りを暴れて不慮の
事故を起すことになり、安全上の対策から、刈刃は出力
軸に対してダブルナットにより締着されることが望まし
い。

そのために、刈刃の取付けや、交換に際してはダブルナ
ットの締着けや、弛緩作業が必要となり大へん煩わし
く、機械に対する認識が浅い婦女子の場合、刈刃の交換
ができないことがあり、また通常、出力軸は左回転させ
られているから左ねじによる締着が行われているので、
不慣れな作業者が刈刃を交換すると確実な締着が行われ
ないこともあって甚だ危険である。

そこで、この考案は比較的簡単な作業で刈刃の脱着を行
い得、しかも、刈刃の回転が高速になればなる程きつく
刈刃を締着固定でき、しかも、高速回転時には螺合によ
る取付部に対してダブルナットによる締着と同様に締着
台に対して緩みどめ機能をもつ取付け装置を提供するこ
とを目的とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

上述のような目的を達成するために、この考案は、操作
主杆の一端部にエンジンをもち、他端部にギヤケースを
もち、このギヤケースの出力軸に取付けられている刈刃
抑えと、出力軸に取付けられ、この刈刃抑えとの間で刈
刃を取付ける刈刃の締着台とを備える刈払機の刈刃取付
け装置において、前記締着台は前記出力軸に対して螺合
する取付け部と、内部に形成した収容空間に収容されて
いて遠心力で移動する移動子と、この移動子の移動によ
り刈刃を刈刃抑えに対して圧接する摩擦板と、締着台に
取り付けられている遠心ガバナと、この遠心ガバナに発
生する遠心力により前記出力軸などの駆動側の部材に対
して係止状態となる係止部とを備え、前記摩擦板は締着
台にその内周縁が固定されていて、刈刃抑えとの間で所
定回転数以上になったとき刈刃を摩擦固定し、前記係止
部は前記遠心ガバナの運動で締着台と前記駆動側の部材
との間を係止状態として前記締着台の脱落を防止するよ
うに構成したことを特徴とするものである。

〔作用〕

この考案の刈刃取付け装置は、締着台の内部空間に収容
されている移動子が、出力軸の高速回転で発生する遠心
力により径方向に移動し、この移動に伴う摩擦板のせり
上げによって、刈刃を刈刃抑えに対して強力に押し付
け、さらに、遠心ガバナに発生する遠心力により駆動さ
れる係止部が出力軸あるいは、刈刃抑えに対して係止状
態となってダブルナットと同様の固定機能をする。出力
軸の回転が低下すると、遠心力の減少に伴い締着力も低
下し、出力軸と刈刃との関係は両者互に自由になり、係
止部によるダブルナット機能も解除される。

〔実施例〕

以下、この考案の実施例を添付した図面に沿って説明す
る。先ず、第１図は刈払機の刈刃と、これを取付けるギ
ヤケースの出力軸部分を示す部分断面図であって、符号
１は例えば減速機構を内包するギヤケースを示し、この
ギヤケース１の下面には段付の出力軸２が突設されてい
て、この出力軸２のギヤケース１寄りが大径部2Aで、そ
の下端寄りが小径部2Bになっており、大径部2Aにはスプ
ライン溝が形成され、小径部2Bには左ねじによる雄ねじ
部が形成されている。

さらに、ギヤケース１の下面部には円盤状の刈刃抑え３
が前記大径部2Aのスプライン溝に嵌合されて閉塞状態に
おかれており、この刈刃抑え３は、その周縁のフランジ
部3Aの中心部に段部3Bを介してボス部3Cになっている。
このボス部3Cの径は刈刃Ｘの中心孔Ｘ₁に嵌まる寸法に
定めらると共に、このボス部3Cは後述する締着台４内部
に突出できる高さに定めらる。また、ボス部3Cの内周に
は周方向に沿って凹溝3Dが形成してあり、後述する遠心
ガバナの係止爪片が遠心力で陥入できるようになってい
る。

前記出力軸２の小径部2Bには、左ねじが形成されてお
り、この小径部2Bに対して締着台４が、その中心に設け
た取付部としての雌ねじ孔4Aがねじ込まれることで螺着
される。

この締着台４は、その下面41が緩やかな曲面を描いた容
器型をしているもので、中心部にはドーナツ型のボス部
42が形成されており、このボス部42の外径は前記刈刃抑
え３の段部3Bの外径と略等しいものになっていて、外周
部には段部42Aをもっている。

さらに、ボス部42の外周には底面が外周に向って漸次浅
くなってテーパ面43となったドーナツ型の空間が形成さ
れ、移動子としてのボール７を収容する移動子収容空間
44となっており、その移動子収容空間44の外周縁はリム
45になっており、リム45の外周には締着台４を出力軸２
にねじ込んだり、緩めたりする指懸りとなる凹凸45Aが
設けてある。

前記移動子収容空間44の開放面には摩擦板としてのドー
ナツ型板ばね５が被せられ、この板ばね５の内周縁5Aは
ボス部42の段部42Aに嵌着されていて、その板ばね５の
外周縁は自由状態であり、締着台４のリム45の段部45B
に収まるように弾性により常時フラットな状態に戻ろう
としている。

また、移動子収容空間44中には移動子としての複数のボ
ール７あるいは、ロールや、くさびなど（図示せず）が
収容されており、ボール７の径部分では板ばね５に接触
せずに、テーパ面43に沿って外周方向に移動した場合に
前記板ばね５に当たる寸法に定められてくさび効果を期
待できるようになっている。

前記締着台４のボス部42の周縁部には支軸61で支えられ
た係止部としての係止爪片62が周方向に沿って複数個各
支軸61にガバナアーム63を介して取り付けられていて、
この係止爪片62は重錘の機能をもち、遠心ガバナ６を構
成しており、ガバナアーム63は互いにリングバネ64で連
結されて求心方向に付勢されている。

そして、刈刃Ｘを出力軸２に対して装着する場合には、
その中心孔Ｘ₁を刈刃抑え３のボス部3Cに嵌込み、出力
軸２の小径部2Bに対して締着台４の雌ねじ孔4Aを螺合さ
せて、刈刃抑え３のフランジ部3Aと、板ばね５との間で
締着状態にする。

エンジン起動時にはその回転数はさほど高くないから、
出力軸２が回転してもボール７に対して大きな遠心力は
作用せず、ボール７は移動子収容空間44の中心部寄り
で、加えられる遠心力の大きさに比例して遊動状態にな
っている。

この状態では、出力軸２ならびに、締着台４は回転させ
られても、ボール７が大きい遠心力の作用を受けるまで
は板ばね５と刈刃Ｘとの間の結合力は発生せず、恰もク
ラッチの機能も果している。

エンジンの回転数を上昇させるにしたがい、出力軸２の
回転も高速回転となり、ボール７に作用する遠心力が大
きくなって、テーパ面43に沿って移動子収容空間44の外
周へとボール７が移動する。ボール７はテーパ面43と板
ばね５との間にあって、遠心力の大きさに比例して外周
に移動するので、板ばね５の弾性を超える遠心力が作用
すると、言換えると、エンジンが高速回転状態になる
と、板ばね５は自己弾性に抗してボール７により押上げ
られて、板ばね５と刈刃Ｘとの間に強い摩擦力が発生
し、この摩擦力により出力軸２，刈刃抑え３，締着台４
と共に一体的になって刈刃Ｘは回転させられる。

このとき、係止部の遠心ガバナ６に対して、遠心力が加
わると重錘機能をもつ係止爪片62は外側に広がり、刈刃
抑え３の凹溝3Dに陥り、締着台４と刈刃抑え３とを取付
部と共に一体化する。言い換えると、遠心ガバナの作用
により係止爪片62が刈刃抑え３を捉えて、あたかも、ロ
ックナットにより締着したかのごとく固定状態にする。

エンジンの回転数が低回転領域では、ボール７に作用し
て板ばね５を強力に刈刃Ｘに圧着する遠心力は発生して
いないから、刈刃Ｘと出力軸２との間には一種の遠心ク
ラッチ機構が存在して刈刃Ｘは低回転状態にあり、逆に
云うと刈刃Ｘが樹木に食込んでロック状態になりエンジ
ンが過負荷状態になったときには、刈刃Ｘと出力軸２，
延いてはエンジンは急停止するか、あるいは、低回転に
出力ドロップするので、遠心力が消滅することでボール
７は摩擦の解消方向に移動し、同時に遠心ガバナに加わ
る遠心力も消滅して刈刃Ｘのみをロック状態として、エ
ンジンの急停止を防止し、急激な増加負荷を吸収するこ
とができる。

〔他の実施例〕

以上の実施例では、出力軸と一体である刈刃抑え３を遠
心ガバナ６に加わる遠心力で捉える形式のものを示した
が、第４図、第５図に示すように、回転方向に沿った平
面内で拡径する遠心ガバナ８を設けて支軸81の端部に係
止部としてのフック82を形成し、ガバナアーム83の先端
部に重錘84を形成して、締着台４に対して引張りばね85
で連結したものであってもよく、この場合、フック82は
出力軸２に形成してある係止溝2Cを捉えるようにする。

この実施例では板ばね５の内周縁5Aは締着台４のボス部
42の外周に形成してある区画壁46に固定され、この区画
壁46と板ばね５で囲まれる空間にボール７を収容する。

なお、前記締着台４の移動子収容空間44の底面即ち、テ
ーパ面43には、第６図，第７図に示すように移動子とし
てのボール７がリム45の内側で安定するようにボールの
数に対応して、リム45の内面に沿って小突起45Xを形成
し、遠心力がボール７に作用している状態では各ボール
が独立できるようにすることも好ましい。

またなお、第８図ないし、第１０図に示すように移動子
収容空間44の底面に、周方向に沿ってボール７の転がり
止めの小突起43Xをボール７の数に対応して形成し、ボ
ール７が周方向に迷走するのを防止するのもよい。

〔考案の効果〕

以上の説明から明らかなように、この考案の刈払機の刈
刃取付け装置は、出力軸に取付けて刈刃を刈刃抑えに対
して締着する締着台に摩擦板の内周縁を固定し、締着台
内の空間には遠心力の作用で外周に拡がる移動子を設
け、この移動子の遠心力による移動により、締着台に設
けた摩擦板を刈刃に対して押しつけることで生じる摩擦
力により出力軸や締着台と一体化できるように構成する
と共に、締着台と共に回転する遠心ガバナにより発生す
る遠心力を利用して出力軸あるいは、刈刃抑えなどの駆
動側の部材に対して係止爪片を係止するように構成した
から、次のような効果が得られる。

(a).締着台の螺込み，取外しの操作のみで、工具を使用
せずに刈刃の着脱を容易に行うことができる。

(b).エンジン回転数が上昇すればするほど遠心ガバナに
発生する遠心力により締着台に対してダブルナットと同
様なロック状態となり、締着台と、出力軸との間で緩み
が生じることがない。

(c).エンジン出力が低域，例えばアイドリング状態で
は、刈刃と出力軸との間では摩擦板とによる直接的は動
力伝達が断たれて強制駆動状態にないので刈刃は連れ回
り状態であり、エンジン起動時に刈刃がエンジン回転と
同様に回転することがなく安全である。

【図面の簡単な説明】 添付図面はこの考案の実施例を示し、第１図は要部の側
断面図、第２図は締着台の断面図、第３図は締着台の平
面図、第４図は他の実施例による要部の側断面図、第５
図は第４図のＶ−Ｖ線に沿う断面図、第６図は締着台の
他の実施例による平面図、第７図は第６図VII-VII線に
沿う断面図、第８図はさらに別の実施例による締着台の
平面図、第９図は第８図X-X線に沿う断面図である。 １……ギヤケース ２……出力軸、2A……大径部、2B……小径部 ３……刈刃抑え、3A……フランジ部、3B……段部、3C…
…ボス部 ４……締着台、4A……雌ねじ孔、41……下面、42……ボ
ス部、43……テーパ面、44……移動子収容空間、45……
リム、45A……凹凸 ５……板ばね 6,8……遠心ガバナ、61、81……支軸、62……係止爪片、
82……フック、駆動カム、63、83……ガバナアーム、84
……重錘、 ７……ボール

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】操作主杆の一端部にエンジンをもち、他端
   部にギヤケースをもち、このギヤケースの出力軸に取付
   けられている刈刃抑えと、出力軸に取付けられ、この刈
   刃抑えとの間で刈刃を取付ける刈刃の締着台とを備える
   刈払機の刈刃取付け装置において、前記締着台は前記出
   力軸に対して螺合する取付部と、内部に形成した収容空
   間に収容されていて遠心力で移動する移動子と、この移
   動子の移動により刈刃を刈刃抑えに対して圧接する摩擦
   板と、締着台に取り付けられている遠心ガバナと、この
   遠心ガバナに発生する遠心力により前記出力軸などの駆
   動側の部材に対して係止状態となる係止部とを備え、前
   記摩擦板は締着台にその内周縁が固定されていて、刈刃
   抑えとの間で所定回転数以上になったとき刈刃を摩擦固
   定し、前記係止部は前記遠心ガバナの運動で締着台と前
   記駆動側の部材との間を係止状態として前記締着台の脱
   落を防止するように構成したことを特徴とする刈払機の
   刈刃取付け装置。