JPH06211614A - 徐放性フェロモン製剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】本発明は製剤表面でのフェロモンの自動酸化、
多量化等の劣化を防止し、そこでの高分子粘着物の生成
や、それに伴うごみ、埃等の付着を防止すると共に、低
温時にも十分な放出量を確保できるフェロモン製剤を提
供する。 【構成】この徐放性フェロモン製剤はエチレン−酢酸ビ
ニル共重合体製容器内に、炭素数13〜18の不飽和アルコ
ール系性フェロモン物質と、炭素数10〜20の直鎖状のア
セテート化合物とを封入したものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、昆虫の性フェロモン物
質（以下、単にフェロモンとする）を大量に圃場に漂わ
せて昆虫の配偶行動を撹乱させて害虫を防除する、交信
撹乱防除に使用する徐放性フェロモン製剤に関する。

【０００２】

【従来の技術】人工的に合成した昆虫のフェロモンによ
り、その配偶行動を撹乱させて害虫を防除する交信撹乱
方法は、害虫の総合防除の概念が一般的になっている現
在、殺虫剤の使用節減につながるものとして注目され、
その将来が期待されている。害虫は一般に春から秋にか
けて繰り返し発生するので、フェロモンによる防除は第
一世代の成虫が発生する時期にフェロモン製剤を圃場に
設置し、夏から秋を通してフェロモンを放散させる方法
がとられている。このように害虫の発生期間が長いた
め、害虫の防除にはフェロモンを徐々に放散する徐放性
フェロモン製剤が用いられている。害虫の交信撹乱防除
に用いられる徐放性フェロモン製剤は、少なくとも数カ
月は有効に作用させることが要求される。それには液状
のフェロモンを、これに対して適度の透過性を備えた容
器中に封入したものが好ましく、このタイプの製剤とし
て高分子製の細管やアンプルにフェロモンを充填したも
の（特開昭56−142202号、同57−156403号および同63−
145201号各公報など）が提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、アルコール
を官能基として有するフェロモンを封入する場合には、
アルコール分子特有の極性のために徐放性を付与するの
に適当な材料が限られ、例えば、特開昭61−202643号公
報ではアルコール系のフェロモンの放散に酢酸ビニル含
有率が１〜20重量％のエチレン−酢酸ビニル共重合体製
の細管が採用されている。しかし、この製剤にも次のよ
うな問題がある。すなわち、このフェロモン製剤を通期
で使用する場合、害虫の第一世代の発生は気温の低い春
先が殆どであり、低温での放出量を確保するために酢酸
ビニル含有量の多いものを用いると、夏場の高温時での
放出量が多くなり過ぎるだけでなく、製剤外壁に浸出す
るフェロモン量も増加する。フェロモンは一般にその構
造中に不飽和結合を持っているので、これが製剤外壁に
浸出すると、自動酸化、多量化等の化学反応を受けて変
質する。その結果、製剤表面に高分子粘着物が滞留して
埃等の付着を促進したり、高分子物の被膜を形成したり
して、フェロモンの放出量を減少させる。これを避ける
ために酢酸ビニル含有量の少ないものを使用すると、春
先や秋口等の低温時に放出量が少なくなり、放出量が十
分に確保されなくなる。したがって、本発明の目的は、
製剤表面でのフェロモンの自動酸化、多量化等の劣化を
防止し、そこでの高分子粘着物の生成や、それに伴うご
み、埃等の付着を防止すると共に、低温時にも十分な放
出量を確保できるフェロモン製剤を提供するものであ
る。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは種々検討の
結果、、エチレン−酢酸ビニル共重合体製の容器を用い
る害虫防除用の放出制御製剤において、炭素数13〜18の
不飽和アルコール系フェロモンに、炭素数10〜20の直鎖
状のアセテート化合物を添加すると、１）このアセテー
ト化合物とエチレン−酢酸ビニル共重合体との高い相溶
性によって、上記フェロモンの放出量は、充填量が同じ
であれば、これに対するアセテート化合物の添加割合に
関係なく一定となる；２）前記フェロモンを化学的に安
定なアセテート化合物で希釈することにより、製剤容器
の内部ばかりでなく、バリアー壁および表面での性フェ
ロモン物質の安定性が改善される；という知見を得て本
発明を完成した。すなわち、本発明による徐放性フェロ
モン製剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体製容器内
に、炭素数13〜18の不飽和アルコール系フェロモンと、
炭素数10〜20の直鎖状のアセテート化合物とを封入して
なるものである。

【０００５】これを説明すると、膜透過型の放出制御製
剤では、物質放出速度は一般に一次側（容器内部）の物
質濃度に依存するため、希釈剤などにより希釈した溶液
を封入すると、物質の放出速度は希釈率に大きく依存す
るようになる。しかし、本発明によりエチレン−酢酸ビ
ニル共重合体膜を用いて不飽和アルコール系フェロモン
の放出制御を行うときに、このフェロモンを上記アセテ
ート化合物により希釈すると、アセテート化合物とエチ
レン−酢酸ビニル共重合体との相溶性のために、上記フ
ェロモンの放出量は希釈率とは関係なくほぼ一定とな
る。これはアセテート化合物が多いと、これがエチレン
−酢酸ビニル共重合体に、より多く溶解・膨潤し、上記
フェロモンに対するバリアー性を低下させるためであ
り、逆にアセテート成分が少ないと、一次側のアルコー
ル濃度が高いことにより膜中の濃度勾配がきつくなるた
めと推定される。また、前述したように、フェロモンは
構造中に不飽和結合を持っているため、酸化や重合反応
を起こし易い。一般に化学反応の反応速度は物質の濃度
に依存するものであるから、希釈剤などによって希釈す
ると、化学反応速度を抑えることが可能と考えられる。
これをフェロモン製剤に利用すると、希釈によりフェロ
モンの劣化を防ぐことが可能になると考えられるが、フ
ェロモンの放出量が希釈率に依存し、長期にわたり均一
な放出をする製剤を得ることは難しいと考えられる。し
かし、エチレン−酢酸ビニル共重合体製容器において、
アルコール系のフェロモンを放出させる場合、アセテー
ト化合物を混合すると、放出量が希釈率に依存しないだ
けでなく、希釈することによりフェロモンの劣化を防ぐ
ことも可能となる。

【０００６】本発明に適用される不飽和アルコール系性
フェロモン物質は炭素数13〜18のもので、これにはＺ−
７−テトラデセノール、Ｚ−９−テトラデセノール、Ｅ
−11−テトラデセノール、Ｚ−９，Ｅ−12−テトラデカ
ジエノール、Ｚ−11−ヘキサデセノール、Ｅ−11−ヘキ
サデセノール、Ｅ−10，Ｅ−12−ヘキサデカジエノー
ル、Ｅ−10，Ｚ−12−ヘキサデカジエノール、Ｚ−７，
Ｚ／Ｅ−11−ヘキサデカジエノール、Ｚ−13−オクタデ
セノール、Ｚ−３，Ｚ−13−オクタデカジエノールなど
が例示される。また、直鎖状のアセテート化合物は炭素
数10〜20の直鎖状のもので、これにはデシルアセテー
ト、ドデシルアセテート、テトラデシルアセテート、ヘ
キサデシルアセテート、オクタデシルアセテート等の飽
和のアセテートやＥ−５−デセニルアセテート、Ｚ−11
−テトラデセニルアセテート、Ｅ−11−テトラデセニル
アセテート、Ｚ−11−ヘキサデセニルアセテート、Ｚ−
９，Ｅ−12−テトラデカジエニルアセテート等の不飽和
のアセテートなどが例示される。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の具体的態様を実施例および比
較例により説明するが、本発明はこの実施例に限定され
るものではない。 実施例 内径1.10mm、肉厚0.55mm、長さ 200mm、酢酸ビニル含有
率６％のエチレン−酢酸ビニル共重合体製の細管に、Ｅ
−11−テトラデセノールとＥ−11−テトラデセニルアセ
テートの60：40の混合物を 160mg充填した製剤を準備し
た。これを25℃、風速 0.5ｍ／秒の条件下に放置して、
放出速度を測定したところ、Ｅ−11−テトラデセノール
は約1.5mg/日／本で50日以上にわたって放出した。ま
た、細管内の混合液の組成も60：40で変わらなかった。

【０００８】

【発明の効果】本発明の徐放性フェロモン製剤は性フェ
ロモン物質の酸化、重合等の劣化が防止できるほか、希
釈による放出量の低下がなく均一な放出が確保できる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エチレン−酢酸ビニル共重合体製容器内
   に、炭素数13〜18の不飽和アルコール系性フェロモン物
   質と、炭素数10〜20の直鎖状のアセテート化合物とを封
   入してなる徐放性フェロモン製剤。