JPH06198518A - 工作物の表面を精密加工する方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】潤滑剤が均等に配分されるような、工作物表面
の精密加工方法を提供すること。 【構成】工作物（１）の表面（６）に、潤滑剤の保持部
として所定の模様に従って配置される溝（９）を、輻射
処理によって形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、工作物の表面、特に内
燃機関のシリンダの穴壁を精密加工する方法であって、
摩擦と温度に関して高負荷可能で工作物の使用中に潤滑
剤が供給される表面を得るために、ホーニングと輻射と
により工作物の表面を精密加工する方法に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】高負荷可能な表面、例えばピストンエン
ジンのシリンダ摺動面を形成している穴壁を形成させる
ため、ホーニングに引き続いてプラトーホーニングを行
う技術が知られている。この方法においては、例えば精
密中ぐり加工によってあらかじめ加工されている穴を、
まず最終寸法以下の数μｍの寸法にホーニング加工す
る。このホーニング加工は、穴に高精度の形状精度及び
寸法精度を持たせると共に、正確な粗削り深さを得るた
めである。この工程は１回のホーニング処理または複数
回のホーニング処理で行われ、例えば予ホーニング及び
中間ホーニングによって行われる。この場合にホーニン
グ砥石によって形成され互いに交差しているホーニング
加工部は、例えば鋳鉄から成っている工作物を後で実地
に使用する場合、潤滑剤の保持部を形成する。このホー
ニング工程に引き続いて行われるプラトーホーニングに
おいては、非常に微細な切削手段を用いて最終寸法にホ
ーニング加工される。この場合、既にホーニング加工さ
れた表面の尖端部だけが削り取られる。この加工によ
り、穴内を運動するピストンの支持面が拡大されて、工
作物の後の実地の使用に適合せしめられる。

【０００３】上記の最後の工程を輻射加工により行うこ
とも知られている。このためレーザー光線が使用される
（ドイツ特許公開第３９３２３２８号公報）。レーザー
光線により、ホーニング加工された表面の尖端部が主に
蒸発によって削り取られ、さらにウロコ状に形成された
部分や緩く付着している粒子が除去される。この処理に
おいては、ホーニング加工部は残される。

【０００４】さらに、仕上げホーニングされた穴の最終
加工も知られている。この最終加工では、ブラッシング
及び（または）高圧輻射によって、いわゆる薄板表面ま
たはウロコ状の部分が除去され、材料の黒鉛薄膜構造が
露出せしめられる（ドイツ特許公開第３７１９７９６号
公報）。この最終加工も、工作物の使用時に潤滑剤を分
配させるために必要なホーニング加工部を残すことを目
的としている。

【０００５】ホーニングに使用されるホーニング砥石の
表面はその材料に起因して不規則であるので、ホーニン
グ加工部の幅、深さ、間隔は一定でない。さらに、通常
は６個ないし８個のホーニング砥石が周囲に配設される
この種のホーニング工具を使用することにより、穴の長
さ方向に、横断面の理想的な円形形状からずれた部分が
生じ、その結果穴はいくつかの個所で正確な最終寸法よ
りもわずかに狭くなる。この狭くなった個所において
は、次の工程によって材料が他の領域よりも多く削り取
られ、従って穴表面の担持能力が穴の長さ方向において
一定でない。この場合付加的に、ホーニング加工部の深
さが一定でなくなる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、潤滑
剤が均等に配分される潤滑剤保持部が得られるような、
工作物表面の精密加工方法を提供することである。また
本発明は、穴の長さ方向において担持面が一定の高機能
を有するようなこの種の方法を提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、工作物の表面に、潤滑剤の保持部として所
定の模様に従って配置される溝を、輻射処理によって形
成させることを特徴とするものである。

【０００８】輻射処理による溝形成工程は、精密加工の
順番で任意に行うことができる。例えば、予ホーニング
加工を行った後に表面が最終寸法に精密ホーニング加工
され、その結果ホーニング加工部が非常に浅いにもかか
わらず表面の保持能力は高くなる。次に、溝が輻射によ
り形成される。

【０００９】しかしこの輻射処理を予ホーニング加工の
前に行うこともでき、或いは複数回のホーニング加工の
際に任意の２回のホーニング加工の間に行うことがで
き、或いは最後の工程として行うこともできる。いずれ
にしろ、輻射の運動学に応じた所定の模様が互いに交差
する溝によって形成され、これらの溝は、工作物を実際
に使用するときに潤滑剤を均等に配分する用を成し、こ
のことは従来の方法では不可能なことであった。

【００１０】

【実施例】次に、本発明の実施例を、穴壁を精密加工す
る例に関して添付の図面を用いて説明する。しかし本発
明による方法は、湾曲した外面、例えば筒状の外面にも
適用でき、また平面の加工にも適用することができる。

【００１１】図１は、穴２を備えた工作物１の軸断面図
である。穴２にはホーニング工具３が挿入されている。
ホーニング工具３はホーニング砥石４を備えている。例
えば６個または８個のホーニング砥石４をホーニング工
具３の周方向に配分して設けることができる。ホーニン
グ砥石４は通常のように半径方向に位置調整可能であ
り、このため、端部側に円錐部５を備えた、軸方向に位
置調整可能なバーが設けられている。ホーニング工具３
は通常のように回転駆動され、且つ二重矢印で示した方
向に（軸方向に）往復動するように駆動される。その際
ホーニング砥石４は筒状の穴壁６を加工する。

【００１２】穴壁６は粗ホーニングされており、この場
合粗削りの深さは従来の通常の深さよりも浅くてよい。
図１に関連して説明した工程により穴壁６は仕上げ寸法
にホーニングされ、その結果穴壁６は所定の最終直径と
所定の公差の円筒率を有するにいたる。ホーニング砥石
４の切削表面は、仕上げ寸法にホーニングされた表面、
即ち穴壁６が、非常に微細であり、且つ非常に高い担持
能力を有するように選定されている。従って従来のホー
ニングされた穴壁とは異なり、深いホーニング加工部を
持った表面の基本構造は存在しない。

【００１３】図２は、第２の工程を実施するための構成
を示したものである。穴２内には処理装置７がある。処
理装置７は、ここではノズル８を備えた輻射工具として
図示されている。ノズル８からは流体が高圧で噴射さ
れ、輻射線が半径方向に穴壁６にぶつかる。輻射工具は
ホーニング工具３と同様に回転可能に且つ軸方向へ往復
動するように駆動される。処理装置７がレーザー装置で
あるのが有利であり、該レーザー装置は同様に駆動さ
れ、しかし回転可能な工学系を備えることもでき、その
結果レーザー装置は軸方向にのみ穴２内へ出入する。

【００１４】処理装置７により穴２の表面に溝９が形成
される（図３ないし図５）。図３は、断面図にて示した
穴２の表面の展開図である。一点鎖線で示したのは穴軸
線Ａである。処理装置７の往復動の速度と回転速度と
は、溝９の交差角度が２０°ないし７０°になるように
設定される。図示した実施例では交差角度はほぼ７０°
である。互いに交わっている溝９は交差個所１０で連通
する。輻射処理の場合、特にレーザー光線を用いた無接
触の処理の場合、溝９のエッジに材料堆積部、扁平部、
またはウロコ状の部分が生じないので、交差個所１０も
これらから完全に自由であり、その結果、溝９によって
形成される保持部に潤滑剤を最適に分配させることがで
きる。

【００１５】レーザー光線または高圧流体輻射線の強度
及び幅、及び処理装置７の走行運動は、溝９が所望の幅
と深さを得るように選定される。溝９の深さは、図３に
おいてホーニング加工部１１によって示した粗削り深さ
よりもかなり深い。溝９の幅はほぼ１０μｍないし７０
μｍであり、深さはほぼ５μｍないし１５μｍである。

【００１６】溝９の複数の個所に幅広部１２及び凹部１
３を設けることができる。この場合凹部１３は、幅広部
１２の位置に設けることができる。溝９の長さ方向にお
ける幅広部１２及び凹部１３の配分は、１ｍｍの長さに
つき１個の凹部１３及び（または）幅広部１２が設けら
れ、或いは１０個以下の凹部１３及び（または）幅広部
１２が設けられるように選定されている（図３は寸法ど
おりに図示したものではない）。溝９は、幅広部１２に
おいて約３０μｍないし１００μｍに拡げることがで
き、凹部１３は約２５μｍないし５０μｍの深さを持つ
ことができる。

【００１７】同じ方向に延在し隣合っている溝９の間隔
ａまたはｂは、０．１ｍｍないし１ｍｍであり、間隔ａ
とｂは同じ大きさであるか、或いは図３に示すように異
なっていることもできる。間隔が小さい場合には、処理
装置７を複数の行程で穴２を貫通させることが必要であ
る。レーザー光線を使用する場合には、小さな間隔を得
るために転向ミラーを複数個設けることもできる。また
処理装置７にたいして、溝９の間隔ａとｂを調整するた
めの制御装置（図示せず）が設けられている。

【００１８】次に、本発明の有利な構成を列記してお
く。

【００１９】（１）輻射処理の際に形成される溝（９）
がホーニング加工部（１１）よりも深く、且つ完成した
表面（６）の潤滑剤保持部だけを形成するように、また
は主に潤滑剤保持部を形成するように、表面（６）を、
非常に浅い粗削り深さと高担持機能を持つ最終寸法にホ
ーニング加工することを特徴とする方法。

【００２０】（２）輻射によって、交差模様の溝（９）
であって、潤滑剤を配分するための交差個所（１０）で
互いに連通している溝（９）を形成させることを特徴と
する、上記第１項に記載の方法。

【００２１】（３）穴壁（６）を展開して水平方向に測
ったときの溝（９）の交差角度（α）が２０°ないし７
５°であることを特徴とする、上記第１項または第２項
に記載の方法。

【００２２】（４）溝（９）の中央の幅が１０μｍない
し７０μｍであり、深さが約５μｍないし１５μｍであ
ることを特徴とする、上記第１項から３項までのいずれ
か１つに記載の方法。

【００２３】（５）溝（９）がその長さ方向に配分され
た凹部（１３）を有し、その深さはこれらの個所におい
て有利には約２５μｍないし５０μｍであることを特徴
とする、上記第１項から４項までのいずれか１つに記載
の方法。

【００２４】（６）溝（９）が、その長さ方向に配分さ
れる、特に凹部（１３）に設けられる幅広部（１２）を
有し、該幅広部（１２）における溝（９）の深さが有利
には約３０μｍないし１００μｍであることを特徴とす
る、上記第１項から５項までのいずれか１つに記載の方
法。

【００２５】（７）溝（９）が、０．１ｍｍないし１．
０ｍｍの長さに、それぞれ１個の凹部（１３）及び（ま
たは）１個の幅広部（１２）を有していることを特徴と
する、上記第５項または第６項に記載の方法。

【００２６】（８）同じ方向に延びる隣合う溝（９）の
間隔（ａ；ｂ）が０．１ｍｍないし１．０ｍｍであるこ
とを特徴とする、上記第１項から７項までのいずれか１
つに記載の方法。

【００２７】（９）前記間隔（ａ；ｂ）が、輻射過程を
制御することにより調整可能であることを特徴とする、
上記第８項に記載の方法。

【００２８】（１０）輻射をレーザー光線によって行う
ことを特徴とする、上記第１項から９項までのいずれか
１つに記載の方法。

【００２９】（１１）輻射を流体により高圧で行うこと
を特徴とする、上記第１項から９項までのいずれか１つ
に記載の方法。

【００３０】（１２）表面（６）をまず最終寸法に精密
ホーニング加工し、次に輻射によって溝（９）を形成さ
せることを特徴とする、上記第１項から１１項までのい
ずれか１つに記載の方法。

【００３１】（１３）表面（６）を複数のホーニング加
工処理で最終寸法に精密ホーニング加工すること、溝
（９）を形成させるための輻射処理を２回のホーニング
加工処理の間に行うことを特徴とする、上記第１項から
１１項までのいずれか１つに記載の方法。

【００３２】（１４）精密中ぐり後の表面（６）を、溝
（９）を形成させるための輻射によって処理し、次に１
回のホーニング加工処理または複数のホーニング加工処
理で精密加工し、その際特に輻射処理の後に予ホーニン
グを行うことを特徴とする、上記第１項から１１項まで
のいずれか１つに記載の方法。

【００３３】（１５）最後の工程としてプラトーホーニ
ング処理を行うことを特徴とする、上記第１項から１４
項までのいずれか１つに記載の方法。

【００３４】

【発明の効果】本発明による方法によれば、ホーニング
砥石によって工作物の表面にホーニング加工部を形成さ
せる代わりに、輻射によって、例えばレーザー光線を用
いて、所定の模様の溝が形成される。これによって、必
要な潤滑剤保持部が形成される。この輻射処理において
は、所定の深さの溝が所定の模様に従って形成され、有
利には規則的な交差模様の溝が形成され、その際溝のエ
ッジにおいて材料が捲れ上がったり、変形したりしな
い。従って、機械的なホーニング加工の際に生じる薄板
状表面が避けられ、即ち尖端が折り曲げられて材料の黒
鉛薄膜構造を部分的に蔽うようなことがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】工作物の穴に挿入されたホーニング工具の図で
ある。

【図２】工作物の穴に挿入された輻射工具を示す図であ
る。

【図３】穴表面の部分拡大展開図である。

【図４】図３の矢印ＩＶの方向に見た図である。

【図５】図３の線Ｖ−Ｖによる断面図である。

【符号の説明】

１ 工作物 ２ 穴 ６ 工作物の表面 ９ 溝

フロントページの続き (72)発明者 ヴァルター ラング ドイツ連邦共和国 デー・7012 フェルバ ッハ フルーアシュトラーセ 22 (72)発明者 カール・ハインツ ベルゲン ドイツ連邦共和国 デー・7024 フィルダ ーシュタット アイアーヴィーゼンシュト ラーセ 23 (72)発明者 エルンスト ラング ドイツ連邦共和国 デー・7302 オストフ ィルデルン １ キルヒハイマーシュトラ ーセ 78／１ (72)発明者 ウルリヒ クリンク ドイツ連邦共和国 デー・7442 ノイフェ ン パウルスシュトラーセ 37

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 工作物の表面を精密加工する方法であっ
   て、摩擦と温度に関して高負荷可能で、工作物の使用中
   に潤滑剤が供給される表面を得るために、ホーニングと
   輻射とにより工作物の表面を精密加工する方法におい
   て、 工作物（１）の表面（６）に、潤滑剤の保持部として所
   定の模様に従って配置される溝（９）を、輻射処理によ
   って形成させることを特徴とする方法。