JPH06191993A - ダイヤモンド類被覆部材の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド類被覆部材の製造方法

Info

Publication number
JPH06191993A
JPH06191993A JP34720292A JP34720292A JPH06191993A JP H06191993 A JPH06191993 A JP H06191993A JP 34720292 A JP34720292 A JP 34720292A JP 34720292 A JP34720292 A JP 34720292A JP H06191993 A JPH06191993 A JP H06191993A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbide
diamond
base material
weight
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP34720292A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3214937B2 (ja
Inventor
Yoshiaki Saito
義昭 斎藤
Atsuhiko Masuda
敦彦 増田
Kazuyuki Fukumoto
和之 福本
Toshio Isozaki
敏夫 磯崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Idemitsu Petrochemical Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Petrochemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Idemitsu Petrochemical Co Ltd filed Critical Idemitsu Petrochemical Co Ltd
Priority to JP34720292A priority Critical patent/JP3214937B2/ja
Publication of JPH06191993A publication Critical patent/JPH06191993A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3214937B2 publication Critical patent/JP3214937B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、通常の超硬合金に密着性よ
くダイヤモンド類膜を被覆した、ダイヤモンド類被覆部
材の製造方法を提供することにある。 【構成】 本発明は、炭化タングステン系超硬合金から
なる基材に、特定のガス分圧を有する窒素を、特定の温
度下に作用させた後、気相法により、前記基材表面にダ
イヤモンド類膜を形成することを特徴とするダイヤモン
ド類被覆部材の製造方法を主たる構成とする。 【効果】 本発明によるダイヤモンド類被覆部材は、超
硬合金に密着性よくダイヤモンド類膜が被覆され、優れ
た耐久性を有し使用寿命が著しく改善されているので摺
動部材や切削工具等に好適に使用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はダイヤモンド類被覆部材
の製造方法に関し、さらに詳しく言うと、炭化タングス
テン系超硬合金上に密着性の優れたダイヤモンド類被覆
部材を製造することのできる、例えば、摺動部材や切削
工具等に好適に使用することのできるダイヤモンド類被
覆部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来よ
り、高い表面硬度と耐摩耗性とを要求される切削工具、
研削工具および研磨工具等の工具類や機械部品等の耐摩
耗部材に、硬度や耐摩耗性などの点で著しく優れたダイ
ヤモンドが利用されている。たとえば、一般に、CVD
法やPVD法等の気相法によるダイヤモンド合成技術を
利用し、工具類や耐摩耗部材等の基材の表面にダイヤモ
ンド類を析出させてダイヤモンド類被膜を形成させる方
法が知られている。このようにダイヤモンド類被膜で基
材を被覆することにより、工具類や耐摩耗部材に高度の
表面硬度と耐摩耗性とを付与することができるのであ
る。
【0003】しかしながら、基材の表面とダイヤモンド
類被膜とは、一般に密着性が悪い。というのは、基材の
表面にダイヤモンド類薄膜を形成する際に基材とダイヤ
モンド類薄膜とに熱膨張係数の差に起因する大きな熱応
力が発生するからである。それゆえ、この密着性を向上
させるために様々な提案がなされている。
【0004】例えば、特開昭60−208473号公報
には、基材とダイヤモンド類被膜との間に金属の炭化物
や窒化物、ホウ素化合物からなる中間層を設ける方法が
示されている。しかしながら、この方法においては、実
用上十分な密着性が得られるには至っていない。
【0005】また、特開昭61−106493号公報に
は、基材成分とダイヤモンドとの混合物を中間層として
用いる方法が提案されている。しかしながら、この場合
にも十分な密着性が得られていない。
【0006】特開昭62−47480号公報において
は、サーメットからなる基材の表面を酸処理して金属成
分を除去しておく方法が提案されている。しかしなが
ら、この方法においては、基材表面が脆くなるという欠
点がある。又、基材にダイヤモンド膜を被覆し、その後
に得られたダイヤモンド被覆部材を熱処理する方法も知
られている。しかしながら、この方法においては、表面
の微細なクラックを除去することにより精密加工に適す
るようなダイヤモンド被覆部材を得ることはできても、
基材とダイヤモンド膜との密着性を向上させるという効
果は殆ど奏することはできない。
【0007】さらに、特開平1−103992号公報に
おいては、超硬合金からなる基材を予め真空中で熱処理
した後、これにダイヤモンド薄膜を形成する方法が提案
されている。このように基材を予め、熱処理することに
より、密着性の向上は見られるが、しかしながら、この
場合にも十分に満足することができる程度には至ってい
ない。
【0008】一方、特開平2−293385号公報にお
いては、炭化タングステンを主成分とする燒結体表面を
脱炭雰囲気で処理し表面に微細な炭化タングステンを形
成し、密着性を改善する技術が開示されている。しかし
ながら、この方法では基板の組成が比較的狭い範囲に限
定されるほか、ホットプレスのようなコストの高い方法
でしか基板を作成できないという欠点がある。
【0009】また、特開平1−246361号公報、特
開平3−115711号公報、特開平4−231428
号公報には、ダイヤモンド切削工具用基材を予め加熱処
理をすることによりダイヤモンド類膜と基材との密着性
を向上させるという発明が開示されている。しかしなが
ら、特開平1−246361号公報に記載された熱処理
では、雰囲気ガスとして非酸化性雰囲気を用いるという
記載があり、特開平4−231428号公報には常圧不
活性ガス雰囲気を用いるという記載はあるものの、窒素
ガスを用いるなどという記載がなく、また、窒素ガスを
基材に作用させるという記載もない。これらの公報に記
載された雰囲気ガスは飽くまでも不活性ガス雰囲気とし
て使用されているに過ぎない。
【0010】結局のところ前記した従来の方法では、基
材の表面とダイヤモンド膜との密着性が未だ十分とはい
えず、被覆したダイヤモンド類膜が剥離しやすいので、
ダイヤモンド類被覆部材を用いた切削工具や研磨工具等
の寿命が十分ではないという問題がある。
【0011】本発明の目的は、前記従来の問題点を解消
することにある。すなわち、本発明の目的は、通常の炭
化タングステン系超硬合金に密着性よくダイヤモンド類
膜を被覆した、ダイヤモンド類被覆部材の製造方法を提
供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の請求項1に記載の発明は、炭化タングステン系超硬合
金からなる基材を、1〜300Torrの窒素ガス雰囲
気下に、窒素を基材に作用させつつ、1,200〜1,
600℃で熱処理した後、気相法により、前記基材表面
にダイヤモンド類膜を形成することを特徴とするダイヤ
モンド類被覆部材の製造方法であり、請求項2に記載の
発明は、炭化タングステン系超硬合金からなる基材を、
稀ガスと分圧が1〜760Torrである窒素ガスとを
含有する雰囲気下に、窒素を基材に作用させつつ1,2
00〜1,600℃で熱処理した後、気相法により、前
記基材表面にダイヤモンド類膜を形成することを特徴と
するダイヤモンド類被覆部材の製造方法であり、請求項
3に記載の発明は、前記熱処理における雰囲気の圧力が
760Torr〜3,000気圧である前記請求項2に
記載のダイヤモンド類被覆部材の製造方法であり、請求
項4に記載の発明は、前記炭化タングステン系超硬合金
が、炭化タングステン50〜95重量%と、炭化チタン
1〜30重量%と、コバルト2〜20重量%とからなる
前記請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド類被
覆部材の製造方法であり、請求項5に記載の発明は、前
記炭化タングステン系超硬合金が、炭化タングステン6
0〜95重量%と、炭化タンタル1〜10重量%と、炭
化ニオブ0〜20重量%と、コバルト3〜10重量%と
からなる前記請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモ
ンド類被覆部材の製造方法であり、請求項6に記載の発
明は、前記炭化タングステン系超硬合金が、炭化タング
ステン50〜95重量%と、炭化チタン、窒化チタン、
炭化タンタル、窒化タンタル、炭化ニオブおよび窒化ニ
オブの合計が3〜35重量%と、コバルト2〜15重量
%とからなる前記請求項1〜3のいずれかに記載のダイ
ヤモンド類被覆部材の製造方法であり、請求項7に記載
の発明は、炭化タングステン系超硬合金からなる基材
に、IVa族に属する金属、Va族に属する金属および
VIa族に属する金属よりなる群から選択される二種以
上の金属の炭化物、窒化物および炭窒化物よりなる群か
ら選択される少なくとも一種を成膜し、次いで、1〜3
00Torrの窒素ガス雰囲気下に、窒素を基材に作用
させつつ、1,200〜1,600℃で熱処理した後、
気相法により、前記基材表面にダイヤモンド類膜を形成
することを特徴とするダイヤモンド類被覆部材の製造方
法であり、請求項8に記載の発明は、炭化タングステン
系超硬合金からなる基材に、IVa族に属する金属、V
a族に属する金属およびVIa族に属する金属よりなる
群から選択される二種以上の金属の炭化物、窒化物およ
び炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種を
成膜し、次いで、稀ガスと分圧が1〜760Torrで
ある窒素ガスとを含有する雰囲気下に、窒素を基材に作
用させつつ、1,200〜1,600℃で熱処理した
後、気相法により、前記基材表面にダイヤモンド類膜を
形成することを特徴とするダイヤモンド類被覆部材の製
造方法である。
【0013】以下に、本発明の方法について詳細に説明
する。
【0014】本発明の方法において使用される前記基材
としては、炭化タングステン系超硬合金を挙げることが
できる。
【0015】炭化タングステン系超硬合金の具体例とし
ては、WC、W−WC、WC−C、W−WC−C等のW
−C系、WC−Co、WC−Co−W、WC−Co−
C、WC−Co−W−C等のW−Co系、WC−TaC
−Co、WC−TaC−Co−C等のW−Ta−Co
系、WC−TiC−Co、WC−TiC−Co、WC−
TiCN−Co等のW−Ti−Co系、WC−Nb−C
o、WC−Ta−Nb−Co等のW−Ta−Nb−Co
系、WC−TiC−Nb−Co系、WC−TiC−Ta
C−Co−C、WC−TiC−TaC−NbC−Co−
C等のW−Ti−Ta−Nb−Co−C系等の超硬合金
を挙げることができる。本発明に用いられる炭化タング
ステン系超硬合金としては、Ti、Co、Ta、Nb、
Mo、Cr、Ni等の金属を含有しているものが好まし
い。
【0016】本発明の方法において、基材として使用さ
れる炭化タングステン系超硬合金の内、好ましい組成の
具体例としては、WC−TiC−Co、WC−TaC−
NbC−Co、WC−TiC−TiN−TaC−TaN
−NbC−NbN−Co及びWC−Coの超硬合金を挙
げることができる。なおこれらの超硬合金中には、現実
には、不可避不純物が含有されている。
【0017】WC−TiC−Coの組成を有する超硬合
金としては、炭化タングステン50〜95重量%、好ま
しくは70〜94重量%と、炭化チタン1〜30重量
%、好ましくは2〜20重量%と、コバルト2〜20重
量%、好ましくは4〜10重量%とを有するものを挙げ
ることができる。
【0018】WC−TaC−NbC−Coの組成を有す
る超硬合金としては、炭化タングステン60〜95重量
%、好ましくは85〜92重量%と、炭化タンタル1〜
20重量%、好ましくは2〜10重量%と、炭化ニオブ
0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%と、コバル
ト3〜10重量%、好ましくは4〜6重量%とを有する
ものを挙げることができる。
【0019】WC−TiC−TiN−TaC−TaN−
NbC−NbN−Coの組成を有する超硬合金として
は、炭化タングステン50〜95重量%と、好ましくは
70〜94重量%、炭化チタン、窒化チタン、炭化タン
タル、窒化タンタル、炭化ニオブおよび窒化ニオブの合
計が3〜35重量%、好ましくは5〜20重量%と、コ
バルト2〜15重量%、好ましくは4〜10重量%とを
有するものを挙げることができる。
【0020】WC−COの組成を有する超硬合金として
は、炭化タングステン90〜98重量%、好ましくは9
4〜97重量%と、コバルト2〜10重量%、好ましく
は3〜6重量%とを有するものを挙げることができる。
【0021】上記炭化タングステンとしては、従来の工
具等に使用されるものなどを使用することができ、具体
的には、WC、WCx(但し、xは1以外の正の実数を
表わし、通常、このxは1より大きいかあるいは1より
小さい数である。)で表わされる定比化合物および不定
比化合物、あるいはこれらに酸素等の他の元素が結合、
置換または侵入したもの等を挙げることができる。これ
らの中でも、通常、WCが特に好適に使用される。
【0022】なお、これらは、一種単独で用いてもよ
く、2種以上を併合してもよく、あるいは2種以上の混
合物、固溶体や組成物等として用いてもよい。
【0023】上記炭化チタンとしては、特に限定はな
く、通常の合金を製造するのに用いられるものを使用す
ることができる。具体的には、TiC、TiCy(但
し、yは1以外の正の実数を表わし、通常、このyは1
より大きいかあるいは1より小さい数である。)で表わ
される定比化合物および不定比化合物、あるいはこれら
に酸素等の他の元素が結合、置換または侵入したもの等
を挙げることができる。これらの中でも、通常、TiC
が特に好適に使用される。
【0024】上記炭化タンタルとしては、特に限定はな
く、通常の合金を製造するのに用いられるものを使用す
ることができる。具体的には、TaC、TaCz(但
し、zは1以外の正の実数を表わし、通常、このzは1
より大きいかあるいは1より小さい数である。)で表わ
される定比化合物および不定比化合物、あるいはこれら
に酸素等の他の元素が結合、置換または侵入したもの等
を挙げることができる。これらの中でも、通常、TaC
が特に好適に使用される。
【0025】上記炭化ニオブとしては、特に限定はな
く、通常の合金を製造するのに用いられるものを使用す
ることができる。具体的には、NbC、NbCz(但
し、zは1以外の正の実数を表わし、通常、このzは1
より大きいかあるいは1より小さい数である。)で表わ
される定比化合物および不定比化合物、あるいはこれら
に酸素等の他の元素が結合、置換または侵入したもの等
を挙げることができる。これらの中でも、通常、NbC
が特に好適に使用される。
【0026】上記コバルトとしては、特に限定はない
が、単体金属を好適に使用することができる。
【0027】本発明の方法においては、前記炭化タング
ステン、前記炭化チタン、前記炭化タンタル、前記炭化
ニオブおよび前記コバルトは、特に純粋である必要はな
く、本発明の目的に支障のない範囲であれば不純物を含
有していてもよい。
【0028】例えば、前記炭化タングステンにおいて
は、微量の過剰炭素、過剰金属、酸化物等の不純物等を
含有していてもよい。
【0029】前記各成分の割合を前記の範囲内にするこ
とにより、基材自体の強度を向上させるとともにダイヤ
モンド類膜と基材の表面との密着性を向上させることが
できる。
【0030】本願発明の方法に使用される基材において
は、前記成分が前記割合で配合されているものであれば
特に限定はなく、市販されているものを使用することが
できる。
【0031】市販されている基材の中でも、特に好まし
い例として、たとえば、切削工具用などに好適なWC系
超硬合金(具体的には、たとえば、JIS B 410
4において使用分類記号P01、P10、P20、P3
0、P40、P50等のPシリーズ、M10、M20、
M30、M40等のMシリーズ、K01、K10、K2
0、K30、K40等のKシリーズなどの切削工具用等
の超硬合金チップ、V1、V2、V3等のVシリーズな
どの線引ダイス用、センタ用、切削工具用等の超硬合金
チップなどのWC−Co系等のW−Co−C系超硬合
金、WC−TiC−TaC−Co系等のW−Ti−Ta
−Co−C系超硬合金、あるいはこれらのTaの一部を
Nbに変えたもの等々)などを挙げることができる。な
お、これらには、上記以外の他の元素や添加成分を含有
しているものであってもよい。どのような材質および形
状の超硬合金を採用するかは、使用目的等に応じて適宜
に選択すればよい。
【0032】また、市販されていないものを使用する場
合においては、前記成分を前記割合で配合した後に、燒
結等の方法によって基材を得ることができる。
【0033】なお、燒結に先立ち、前記成分とともに、
必要に応じて、エチレングリコール、エチレン−ビニル
アクリレート、ポリブチレンメタクリレート、アダマン
タン等を主成分とする補助結合剤等を含有していてもよ
い。
【0034】前記焼結の方法としては、特に制限がな
く、従来から公知の焼結方法に従って行なうことができ
る。
【0035】前記燒結の方法においては、前記各成分を
粉末状、微粉末状、超微粒子状、ウイスカー状、あるい
は他の各種の形状のものとして使用することが可能であ
るが、平均粒径が、通常、0.05〜4.0μm、好ま
しくは、0.05〜2.0μm程度の微粒子もしくは超
微粒子状のものや、アスペクト比が20〜200程度の
ウイスカー状のもの等を好適に使用することができる。
【0036】燒結温度しては、通常、1,300〜1,
600℃、好ましくは1,350〜1,550℃程度の
範囲内にするのが適当である。
【0037】燒結時間としては、通常、0.5時間以
上、好ましくは、1〜2時間程度の範囲内にするのが適
当である。
【0038】本発明の方法で使用する基材の形状につい
ては、特に制限はない。
【0039】前記基材は、例えば、前記燒結に際して予
め所望の形状にしておいてから燒結をすることができる
し、あるいは、前記燒結後、必要に応じて所望の形状に
加工して、本発明のダイヤモンド類被覆部材の基材とし
て用いることができる。
【0040】基材の表面における有効成分たとえば炭化
チタン、炭化タンタル、炭化ニオブ等の含有量が少ない
ときには、基材の表面に所定の被覆層を形成するのが好
ましい。
【0041】この被覆層は、周期律表第IVA族、 第V
A族および第VIA族に属する金属並びにSiから選択
される少なくとも一種の金属、周期律表第IVA族、 第
VA族および第VIA族に属する金属並びにSiの炭化
物、窒化物および炭窒化物から選択される少なくとも一
種の金属化合物からなる群から選択される少なくとも一
種により形成される。
【0042】これら被覆層を形成する物質群の中でもさ
らに好ましいのは、金属チタン、窒化チタン、炭化チタ
ンおよび炭窒化チタンであり、また金属タンタル、窒化
タンタル、炭化タンタルおよび炭窒化タンタルである。
これらはその一種で使用されても良いし、また二種以上
の各種の組成をもって使用されても良い。
【0043】前記窒化チタンとしては、たとえば、Ti
N、あるいは、TiNx 、TiN−Ti、Ti−N等に
よって表されるものなどを挙げることができる。前記炭
化チタンとしては、たとえば、TiC、あるいは、Ti
x 、TiC−C、TiC−Ti、TiC−Ti−C、
Ti−C等によって表されるものを挙げることができ
る。前記炭窒化チタンとしては、たとえば、TiCN、
TiC・TiN、TiCX ・TiNx 、TiC・TiN
−C、TiC・TiN−Ti、TiC・TiN−Ti−
C、Ti−N−C等によって表されるものを挙げること
ができる。
【0044】すなわち、前記チタン含有の被覆層として
は、通常Ti、TiN、TiCまたはTiCNで表され
るものが好ましいが、これらの二種以上からなるもので
あってもよく、さらには、これらの一種または二種以上
に、Ti、Cおよび/またはN成分が過剰に含有してい
るものであってもよい。また、このチタンを含有する被
覆層には、本発明の目的を阻害しない範囲で、Ti、C
およびN以外の他の元素もしくは成分を含有してもよ
い。
【0045】該被覆層を前記基材の面上に形成させる方
法としては、一般に用いられている方法、例えば一般に
用いられるイオンプレーティング法やスパッタ法等を採
用することができる。前記被覆層の膜厚としては、特に
制限はないが、通常、通常、100〜50,000Å、
好ましくは1,000〜30,000Åの範囲から、所
望の厚みの固溶体層が得られるように選択される。この
膜厚が100Å未満では中間層の効果が期待しがたく、
また50,000Åを超えると中間層自身の強度が低下
する。
【0046】本願発明の方法においては、表面に被覆層
があるにせよないにせよ前記基材をダイヤモンド類膜で
被覆する前に、前記基材を熱処理して、前記基材の表面
を改質する。
【0047】本発明の方法においては、加熱処理とし
て、前記基材の表面に窒素含有ガスを高温下に作用させ
る。
【0048】前記窒素含有ガスが窒素100%のガスで
あるときには、その窒素ガスの圧力は1〜300Tor
r、好ましくは10〜200Torrにするのが良い。
したがって、窒素含有ガスとして窒素100%のガスを
使用するときの前記加熱処理は減圧条件下になる。
【0049】また、窒素含有ガスが窒素ガスと他の不活
性ガスたとえば稀ガスとの混合ガスであるときには、こ
の混合ガス中の窒素分圧は1〜760Torr、好まし
くは10〜500Torrであるのが良い。前記稀ガス
のなかでも特にアルゴンガスを好適に使用することがで
きる。この混合ガスの全圧は、窒素ガスの分圧が前記範
囲にある限り特に制限がないのであるが、たとえば76
0Torr〜3,000気圧であっても良い。
【0050】いずれの圧力下に加熱処理を行うにせよ、
加熱処理時に窒素が基材表面に作用すると基材表面が物
理的変質あるいは化学的変質を受けると考えられ、例え
ば基材表面に窒化物もしくは炭窒化物層が形成され、基
材層表面が微細な凹凸を形成し、あるいは基材層中でC
o成分が減少するなどして、後述するダイアモンド類薄
膜と基材との密着性を向上させるのに有利な状態にな
る。
【0051】加熱処理時の加熱温度としては、通常、
1,200〜1,650℃が好ましく、特に好ましく
は、1,300〜1,550℃である。温度が前記の範
囲外の場合には、前記基材の表面が十分に改質されな
い。
【0052】熱処理をする時間としては、1分間〜50
0分間が好ましく、特に好ましいのは15分〜300分
である。熱処理をする時間が1分間未満の場合には前記
基材の表面の改質が不十分になる。また、熱処理をする
時間が500分間を越えた場合には、表面の改質が進み
すぎるので、前記基板の表面において凹凸が増大し、ま
た、前記基板に含有されている成分の蒸発により前記基
板の変形を招く危険性を伴うので、好ましくない。
【0053】本願発明の方法においては、上述の基材表
面に窒素を作用させつつ熱処理をすることにより、基材
を変形させることなく前記基材の表面に炭窒化物の含有
量が増大すると共に微細な表面凹凸が形成され、その後
に形成されるダイヤモンド類膜に対する親和性が向上す
ると共に基材表面の細孔に貫入する形でダイヤモンド類
膜が形成されるので、基材に対する密着性の高いダイヤ
モンド類膜を容易に形成することのできる基材とするこ
とができるのである。
【0054】本願発明においては、前記のようにして熱
処理された基材の表面上に、ダイヤモンド類の薄膜を被
覆することもできるし、更に、基材中でのチタン、タン
タル、ニオブ等の含有量が少ないときには、基材に特定
条件のプラズマ処理を施した後、基材の表面上にダイヤ
モンド類の薄膜を被覆するのが好ましい。
【0055】このプラズマ処理としては、炭酸ガスと水
素ガスとの混合ガス雰囲気で、10〜100torr、
500〜1,100℃でプラズマ処理が施される。
【0056】混合ガスにおいては、通常、炭酸ガス60
〜90%および水素ガス40〜10%の混合割合が好ま
しい。プラズマ処理時の圧力としては10〜100to
rrの範囲内が好ましい。圧力が前記の範囲より高いと
処理の制御性が悪く、また、低いと処理に時間がかか
る。基板温度としては500〜1,100℃の範囲内、
好ましくは700〜900℃である。温度が前記の範囲
より高いと処理の制御性が悪く、再現性が悪いし、ま
た、低いと処理に時間がかかる。処理時間は、1分〜2
00分、好ましくは60分である。
【0057】炭酸ガスと水素ガスとの混合ガスのプラズ
マを発生させるには、CVD法を好適に採用することが
できる。プラズマ処理をするCVD法としては、たとえ
ば、マイクロ波プラズマCVD法、高周波プラズマCV
D法、熱フィラメントCVD法、DCアークCVD法等
の多種多様の方法が知られている。本発明の方法におい
ては、これらのいずれの方法も適用することができる
が、中でも、特に、マイクロ波プラズマCVD法、高周
波プラズマCVD法などを挙げることができる。また、
後述するダイヤモンドの気相合成に際して採用されるC
VD法と同じCVD法を採用すると、装置構成上便利で
ある。
【0058】このように、本発明の方法においては、上
述のプラズマ処理をすることにより、基板表面が活性化
し、基板とダイヤモンドとの結合力が増大するのであ
る。
【0059】前記プラズマ処理の外に、基材表面を傷付
処理をしても良い。
【0060】傷付処理としては、たとえばダイヤモンド
砥粒等による表面傷付け処理を挙げることができる。こ
の表面傷付け処理は、公知の方法に準じて行うことがで
きる。このような表面傷付け処理(特にダイヤモンド砥
粒による表面傷付け処理)を行うことによって、基材と
ダイヤモンド類薄膜の密着性をより一層向上させること
ができるなどの好ましい効果が得られる。
【0061】本願発明においては、前記のようにして熱
処理された、あるいは熱処理およびプラズマ処理された
超硬合金基材の表面上に、ダイヤンモンド類の薄膜を被
覆する。
【0062】ここでいうダイヤモンド類とは、ダイヤモ
ンドの他に、ダイヤモンド状炭素を一部において含有す
るダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素を含む。
【0063】前記ダイヤモンド類膜の形成は、従来の気
相合成法等の各種の気相合成法によって行うことがで
き、中でも、CVD法による方法が好適に採用される。
こうしたダイヤモンド類薄膜の気相合成法としてのCV
D法としては、たとえば、マイクロ波プラズマCVD
法、高周波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD
法、DCアークCVD法等の多種多様の方法が知られて
いる。本発明の方法においては、これらのいずれの方法
も適用することができるが、中でも、特に、マイクロ波
プラズマCVD法、高周波プラズマCVD法などが好適
に適用される。
【0064】また、こうしたプラズマCVD法によるダ
イヤモンド類膜の気相合成法においては、原料ガスとし
て、少なくとも炭素源ガスを含む各種の種類および組成
の原料ガスを使用することのできることが、知られてい
る。原料ガスとして、たとえば、CH4 とH2 の混合ガ
ス等のように炭化水素を炭素源ガスとして含有する原料
ガス、COとH2 の混合ガス等のように炭化水素以外の
炭素化合物を炭素源ガスとして含有する原料ガスなど、
各種の原料ガスを挙げることができる。
【0065】本発明の方法においては、ダイヤモンド類
膜の形成が可能であれば、上記の原料ガス等を初めとす
る従来法で使用されている原料ガスなどの各種の原料ガ
スを適宜に使用してダイヤモンド類膜を形成させること
ができる。中でも、COとH2 との混合ガス、あるいは
CH4 とH2 との混合ガスが好ましい。特に、COとH
2 との混合ガスを原料ガスとして使用すると、炭化水素
を用いた場合に比べてダイヤモンド類の堆積速度が速く
て、効率よく製膜することができるなどの点で優れてい
る。
【0066】以下に、この特に好ましいダイヤモンド類
膜の形成方法の例として、COとH2 を原料ガスとして
用いる方法について、その好適な方法の例を説明する。
【0067】すなわち、本発明の方法においては、前記
ダイヤモンド類膜の形成は、下記の一酸化炭素と水素ガ
スとの混合ガスを原料ガスとして用いる方法(以下、こ
の方法を、方法Iと称すことがある。)によって特に好
適に行うことができる。
【0068】すなわち、この方法Iは、一酸化炭素と水
素とを、一酸化炭素ガスが1容量%以上となる割合で、
含有する混合ガスを励起して得られるガスを、基板に接
触させることを特徴とするダイヤモンドの合成方法であ
る。
【0069】この方法Iにおいて、使用に供する前記一
酸化炭素としては特に制限がなく、たとえば石炭、コー
クスなどと空気または水蒸気を熱時反応させて得られる
発生炉ガスや水性ガスを充分に精製したものを用いるこ
とができる。
【0070】使用に供する前記水素について特に制限が
なく、たとえば石油類のガス化、天然ガス、水性ガスな
どの変成、水の電解、鉄と水蒸気との反応、石炭の完全
ガス化などにより得られるものを充分に精製したものを
用いることができる。
【0071】この方法Iにおいては、原料ガスとして一
酸化炭素と前記水素とを、一酸化炭素ガスの含有量が1
容量%以上、好ましくは3容量%以上、さらに好ましく
は5容量%以上となる割合で、含有する混合ガスを励起
して得られるガスを、前記基材(焼結基材)に接触させ
ることにより、その所定の面上にダイヤモンド類を堆積
させる。前記混合ガス中の一酸化炭素ガスの含有量が1
容量%よりも少ないとダイヤモンドが生成しなかった
り、ダイヤモンドがたとえ生成してもその堆積速度が著
しく小さい。
【0072】前記原料ガスを励起して励起状態の炭素を
含有する前記原料ガスを得る手段としては、たとえばプ
ラズマCVD法、スパッタ法、イオン化蒸着法、イオン
ビーム蒸着法、熱フィラメント法、化学輸送法などの従
来より公知の方法を用いることができる。
【0073】前記プラズマCVD法を用いる場合には、
前記水素は高周波またはマイクロ波の照射によってプラ
ズマを形成し、前記化学輸送法および熱フィラメント法
などのCVD法を用いる場合には、前記水素は熱または
放電により原子状水素を形成する。この原子状水素は、
ダイヤモンドの析出と同時に析出する黒鉛構造の炭素を
除去する作用を有する。
【0074】この方法Iにおいては、前記原料ガスのキ
ャリヤーとして、不活性ガスを用いることもできる。不
活性ガスの具体例としては、アルゴンガス、ネオンガ
ス、ヘリウムガス、キセノンガス、窒素ガスなどが挙げ
られる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以
上を組合わせて用いてもよい。
【0075】この方法Iにおいては、以下の条件下に反
応が進行して、炭化タングステン系超硬合金製の基材上
にダイヤモンド類が析出する。すなわち、前記炭化タン
グステン系超硬合金製の基材の表面の温度は、前記原料
ガスの励起手段によって異なるので、一概に決定するこ
とはできないが、たとえばプラズマCVD法を用いる場
合には、通常、400℃〜1,000℃、好ましくは4
50℃〜950℃である。この温度が400℃より低い
場合には、ダイヤモンドの堆積速度が遅くなったり、励
起状態の炭素が生成しないことがある。一方、1,00
0℃より高い場合には、基材上に堆積したダイヤモンド
がエッチングにより削られてしまい、堆積速度の向上が
見られないことがある。反応圧力は、通常、10-3〜1
3 torr、好ましくは1〜800torrである。
反応圧力が10-3torrよりも低い場合には、ダイヤ
モンドの堆積速度が遅くなったり、ダイヤモンドが析出
しなくなったりする。一方、103 torrより高くし
てもそれに相当する効果は得られない。
【0076】以上のようにして、前記燒結処理をした所
定の基材面上に、ダイヤモンド類膜を好適に形成するこ
とができる。本発明の方法においては、前記ダイヤモン
ド類膜の形成は、もちろん、上記の方法I以外の方法を
適用して行ってもよい。
【0077】形成させる前記ダイヤモンド類膜の膜厚
は、使用目的等に応じて適宜に適当な膜厚にすればよ
く、この意味で特に制限はないが、通常は、5〜100
μmの範囲に選定するのがよい。この膜厚が、あまり薄
すぎると、ダイヤモンド類膜による被覆効果が十分に得
られないことがあり、一方、あまり厚すぎると、使用条
件によっては、ダイヤモンド類膜の剥離等の離脱が生じ
ることがある。なお、切削工具等の過酷な条件で使用す
る場合には、通常、この厚みを、10〜30μmの範囲
に選定するのが好適である。
【0078】以上のようにして、本発明の方法により、
炭化タングステン系超硬合金製の基材に密着性よくダイ
ヤモンド類膜を被覆することができ、このようにして得
られたダイヤモンド類膜被覆部材は、摺動部材や切削工
具等に好適に使用することができる。
【0079】
【実施例】
(実施例1、2)使用された基材は以下の通りである。
【0080】炭化タングステン92.5重量%、炭化チ
タン2.5重量%、コバルト5重量%を主成分とする1
2.7mm×12.7mmの基板を基材(A)とした。
【0081】炭化タングステン89重量%、炭化タンタ
ル5重量%、コバルト6重量%を主成分とする12.7
mm×12.7mmの基板を基材(B)とした。
【0082】加熱炉内に配置されたところの、表1に示
す種類の基板に、表1に示す圧力の純窒素ガスを、表1
に示す温度で、表1に示す時間をかけて接触させた。純
窒素ガスで処理された基板表面を電子顕微鏡で観察し、
エネルギー分散型元素分析をしたところ、基材表面には
Co相が発見されず、かつ微細な凹凸が形成されてい
た。また、この基板表面をX線分散元素分析装置を用い
て分析したところ、金属炭化物の特性ピークが窒化物の
ピーク側にシフトしており、このことから表面に窒化物
ないし炭窒化物が生成含有されていることが分かった。
【0083】次に、この処理済みの基板を、ダイヤモン
ド合成反応管内の基板支持台に載せ、一酸化炭素ガスを
20容量%含有する一酸化炭素ガスと水素ガスとの混合
ガスを反応管に流通させた。その後、周波数2.45G
Hzのマイクロ波を導入して、プラズマCVD法による
ダイヤモンドの形成を行なった。
【0084】なお、反応管内の圧力は40torr、基
板の温度は925℃であり、10時間かけて反応を行な
った。その結果、膜厚約25μmのダイヤモンド膜が基
材の表面上に形成された。
【0085】得られたダイヤモンド類膜被覆部材につ
き、インデンテーション法により、ダイヤモンド膜と基
材の表面との密着性を評価した。
【0086】なお、インデンテーション法による評価方
法とは、半球形またはピラミッド形に整形されたダイヤ
モンドの圧子を評価対象物である試料に押し当てて試料
の表面を変形させ、変形後における試料の状態を観察
し、試料の密着性を評価する方法である。
【0087】本願実施例においては試料がダイヤモンド
類膜被覆部材なので、基材にピラミッド形の圧子を適当
な荷重で押し込んで基材を変形させ、基材が元の状態よ
りも盛り上がっている部分について観察する。この部分
においては、変形した基材がその表面に形成されている
ダイヤモンド類膜を押しあげることになるので、ダイヤ
モンド類膜と基材との密着性が悪い場合にはダイヤモン
ド類膜が基材から剥離する部分の面積が大きくなるので
ある。したがって、剥離したダイヤモンド類膜の面積の
大小を測定することにより、基材とその表面に形成され
たダイヤモンド類膜との密着性の良し悪しを評価するこ
とができる。
【0088】本願実施例においては、測定条件として
は、ロックウェル圧子への荷重を100kg・fとし、
該圧子によるダイヤモンド類膜の剥離面積を求め、この
測定値により、密着性の大小を評価した。評価基準を以
下に示すと共に評価結果を表1に示す。
【0089】評価基準 ◎;0.05mm2 以下 ○;0.05〜0.5mm2 △;0.5〜2.0mm2 ×;2.0mm2 以上
【0090】
【表1】
【0091】(実施例3〜8)前記実施例1で使用され
たのと同じ基材(A)および基材(B)と以下の組成の
基材(C)とを使用した。
【0092】基材(C);炭化タングステン91重量
%、炭化ニオブ3重量%、コバルト6重量%を主成分と
する12.7mm×12.7mmの基板 加熱炉内に、表2に示す種類の基材を配置した。次いで
加熱炉内を一旦真空にしてから、この加熱炉内に窒素ガ
スを導入して加熱炉内の圧力を表2に示す圧力にした。
この圧力は窒素ガスの圧力を示す。さらに加熱炉内にア
ルゴンガスを導入して加熱炉内の全圧を表2に示す値に
調整した。加熱炉内の基材を表2に示す温度にて表2に
示す時間かけて加熱しつつ、加熱炉内の窒素ガスを基材
に作用させた。
【0093】このように処理された基材板面を電子顕微
鏡で観察し、エネルギー分散型元素分析装置で分析した
ところ、基材表面にはCo相が発見されず、かつ微細な
凹凸が形成されていた。また、この基板表面をX線分散
元素分析装置を用いて分析したところ、基材表面に窒化
物ないし炭窒化物が生成含有されていることが分かっ
た。
【0094】この基材表面に前記実施例1と同様にして
ダイヤモンド薄膜を形成してダイヤモンド類被覆部材を
得た。
【0095】前記実施例1と同様にしてダイヤモンド膜
の密着性を測定し、評価した。その結果を表2に示し
た。
【0096】
【表2】
【0097】(実施例9〜12)市販のWC−Co系超
硬合金K10(W:87重量%,Co:7重量%,C:
6重量%)の表面に厚さ1.5μmのTiCをコーティ
ングした12.7mm×12.7mmの基板を基材
(D)とした。
【0098】市販のWC−Co系超硬合金K10(W:
87重量%,Co:7重量%,C:6重量%)の表面に
厚さ1.5μmのTiCNをコーティングした12.7
mm×12.7mmの基板を基材(E)とした。
【0099】市販のWC−Co系超硬合金K10(W:
87重量%,Co:7重量%,C:6重量%)の表面に
厚さ1.5μmのTaCをコーティングした12.7m
m×12.7mmの基板を基材(F)とした。
【0100】市販のWC−Co系超硬合金K10(W:
87重量%,Co:7重量%,C:6重量%)の表面に
厚さ1.5μmのNbCをコーティングした12.7m
m×12.7mmの基板を基材(G)とした。
【0101】加熱炉内に配置されたところの、表3に示
す種類の基板に、表3に示す圧力の純窒素ガスを導入
し、さらに加熱炉内にArガスを導入して全圧を表3に
示す値にした。加熱炉内の基材の表3に示す温度で、表
3に示す時間をかけて加熱しつつ、窒素ガスを基材に作
用させた。このように処理された基板表面及び断面を電
子顕微鏡で観察したところ、コーティング相の基材内部
への含浸が起こっており、しかもCo相が存在せず、か
つ、微細な凹凸が形成されていた。
【0102】この基材表面に前記実施例1と同様にして
ダイヤモンド薄膜を形成してダイヤモンド類被覆部材を
得た。
【0103】前記実施例1と同様にしてダイヤモンド膜
の密着性を測定し、評価した。その結果を表3に示し
た。
【0104】
【表3】
【0105】(比較例1)前記実施例で使用したのと同
じ基材(A)を用いた。
【0106】基材(A)を加熱炉内に配置してから加熱
炉内を表4に示す圧力にし、次いで基材を表4に示す温
度に加熱し、表4に示す時間加熱処理をした。
【0107】加熱処理後の基材の表面に前記実施例1と
同様にしてダイヤモンド膜を形成し、前記実施例1と同
様にダイヤモンド膜の密着性を測定しようとしたとこ
ろ、測定以前にダイヤモンド膜が基材表面から自然剥離
した。
【0108】(比較例2〜5)基材として前記実施例で
使用したのと同じ基材(A)、(D)および(E)を用
いた。
【0109】基材を加熱炉内に配置してから加熱炉内に
表4に示すガスを導入して表4に示す圧力に調整し、次
いで基材を表4に示す温度に加熱し、表4に示す時間加
熱処理をした。
【0110】加熱処理後の基材の表面に前記実施例1と
同様にしてダイヤモンド膜を形成し、前記実施例4と同
様にダイヤモンド膜の密着性を測定した。結果を表5に
示した。
【0111】
【表4】
【0112】
【発明の効果】本発明の方法により、通常の超硬合金に
密着性よくダイヤモンド類膜を被覆するダイヤモンド類
被覆部材の製造方法を提供することができる。本発明に
よるダイヤモンド類被覆部材は、優れた耐久性を有し、
使用寿命が著しく改善されているので摺動部材や切削工
具等に好適に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 磯崎 敏夫 千葉県袖ケ浦市上泉1660番地 出光石油化 学株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化タングステン系超硬合金からなる基
    材を、1〜300Torrの窒素ガス雰囲気下に、窒素
    を基材に作用させつつ、1,200〜1,600℃で熱
    処理した後、気相法により、前記基材表面にダイヤモン
    ド類膜を形成することを特徴とするダイヤモンド類被覆
    部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭化タングステン系超硬合金からなる基
    材を、稀ガスと分圧が1〜760Torrである窒素ガ
    スとを含有する雰囲気下に、窒素を基材に作用させつつ
    1,200〜1,600℃で熱処理した後、気相法によ
    り、前記基材表面にダイヤモンド類膜を形成することを
    特徴とするダイヤモンド類被覆部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記熱処理における雰囲気の圧力が76
    0Torr〜3,000気圧である前記請求項2に記載
    のダイヤモンド類被覆部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記炭化タングステン系超硬合金が、炭
    化タングステン50〜95重量%と、炭化チタン1〜3
    0重量%と、コバルト2〜20重量%とからなる前記請
    求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド類被覆部材
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記炭化タングステン系超硬合金が、炭
    化タングステン60〜95重量%と、炭化タンタル1〜
    10重量%と、炭化ニオブ0〜20重量%と、コバルト
    3〜10重量%とからなる前記請求項1〜3のいずれか
    に記載のダイヤモンド類被覆部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記炭化タングステン系超硬合金が、炭
    化タングステン50〜95重量%と、炭化チタン、窒化
    チタン、炭化タンタル、窒化タンタル、炭化ニオブおよ
    び窒化ニオブの合計が3〜35重量%と、コバルト2〜
    15重量%とからなる前記請求項1〜3のいずれかに記
    載のダイヤモンド類被覆部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 炭化タングステン系超硬合金からなる基
    材に、IVa族に属する金属、Va族に属する金属およ
    びVIa族に属する金属よりなる群から選択される二種
    以上の金属の炭化物、窒化物および炭窒化物よりなる群
    から選択される少なくとも一種を成膜し、次いで、1〜
    300Torrの窒素ガス雰囲気下に、窒素を基材に作
    用させつつ、1,200〜1,600℃で熱処理した
    後、気相法により、前記基材表面にダイヤモンド類膜を
    形成することを特徴とするダイヤモンド類被覆部材の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 炭化タングステン系超硬合金からなる基
    材に、IVa族に属する金属、Va族に属する金属およ
    びVIa族に属する金属よりなる群から選択される二種
    以上の金属の炭化物、窒化物および炭窒化物よりなる群
    から選択される少なくとも一種を成膜し、次いで、稀ガ
    スと分圧が1〜760Torrである窒素ガスとを含有
    する雰囲気下に、窒素を基材に作用させつつ、1,20
    0〜1,600℃で熱処理した後、気相法により、前記
    基材表面にダイヤモンド類膜を形成することを特徴とす
    るダイヤモンド類被覆部材の製造方法。
JP34720292A 1992-12-25 1992-12-25 ダイヤモンド類被覆部材の製造方法 Expired - Fee Related JP3214937B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34720292A JP3214937B2 (ja) 1992-12-25 1992-12-25 ダイヤモンド類被覆部材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34720292A JP3214937B2 (ja) 1992-12-25 1992-12-25 ダイヤモンド類被覆部材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06191993A true JPH06191993A (ja) 1994-07-12
JP3214937B2 JP3214937B2 (ja) 2001-10-02

Family

ID=18388616

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP34720292A Expired - Fee Related JP3214937B2 (ja) 1992-12-25 1992-12-25 ダイヤモンド類被覆部材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3214937B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6037287A (en) * 1997-11-26 2000-03-14 Praxair S.T. Technology, Inc. Laser clad pot roll sleeves and bushings for galvanizing baths
US6110240A (en) * 1996-05-31 2000-08-29 Ngk Spark Plug Co., Ltd. Superhard article with diamond coat and method of manufacturing same
JP2012512801A (ja) * 2008-12-19 2012-06-07 サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク ダイヤモンド複合材料を製造する方法
US8455278B2 (en) 2005-07-11 2013-06-04 Apollo Diamond, Inc Method of forming a waveguide in diamond
CN105386049A (zh) * 2015-11-21 2016-03-09 太原理工大学 一种在硬质合金表面制备梯度硬质复合涂层的方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6110240A (en) * 1996-05-31 2000-08-29 Ngk Spark Plug Co., Ltd. Superhard article with diamond coat and method of manufacturing same
US6037287A (en) * 1997-11-26 2000-03-14 Praxair S.T. Technology, Inc. Laser clad pot roll sleeves and bushings for galvanizing baths
US8455278B2 (en) 2005-07-11 2013-06-04 Apollo Diamond, Inc Method of forming a waveguide in diamond
JP2012512801A (ja) * 2008-12-19 2012-06-07 サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク ダイヤモンド複合材料を製造する方法
CN105386049A (zh) * 2015-11-21 2016-03-09 太原理工大学 一种在硬质合金表面制备梯度硬质复合涂层的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3214937B2 (ja) 2001-10-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6083570A (en) Synthetic diamond coatings with intermediate amorphous metal bonding layers and methods of applying such coatings
CN1296518C (zh) 复合材料及其制备方法
JP4028891B2 (ja) 多成分系硬質物層の製造法および複合体
Narayan Laser processing of diamond-like carbon–metal composites
Gaydaychuk et al. Influence of Al-Si-N interlayer on residual stress of CVD diamond coatings
Spinnewyn et al. Diamond nucleation on steel substrates
JP3214891B2 (ja) ダイヤモンド類被覆部材
JPH07173608A (ja) 耐摩耗性被覆部材
JP2001511219A (ja) 超硬合金基材または炭化物含有サーメット基材の硬質材料による被覆
JP3214937B2 (ja) ダイヤモンド類被覆部材の製造方法
JPH0819522B2 (ja) 付着性にすぐれたダイヤモンド被覆焼結合金及びその製造方法
JP3236899B2 (ja) 耐摩耗性および耐欠損性のすぐれた表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具の製造法
JP3353239B2 (ja) ダイヤモンド類被覆部材の製造方法
WO1993000454A1 (en) Diamond-covered member and production thereof
JP3260157B2 (ja) ダイヤモンド類被覆部材の製造方法
JP3260156B2 (ja) ダイヤモンド類被覆部材の製造方法
JP3190090B2 (ja) ダイヤモンド被覆部材の製造方法
JP2539922B2 (ja) ダイヤモンド被覆超硬合金
JPH0617252A (ja) ダイヤモンド類被覆部材およびその製造方法
JPH116056A (ja) 金属間化合物含有ターゲット、およびこれを用いた硬質被覆部材の製造方法
JPH07145483A (ja) 耐摩耗性被覆部材
JP3249278B2 (ja) 工具用被覆体
JP3167374B2 (ja) 高密着性ダイヤモンド被覆焼結合金
JP2828512B2 (ja) 被覆TiCN基サーメット
JP3985413B2 (ja) 耐摩耗性のすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20010622

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080727

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090727

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090727

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090727

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100727

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100727

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110727

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110727

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees