JPH06190432A - 熱延鋼材のデスケーリング装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱延鋼材に生成されるスケールを高圧水によ
りデスレーリングするとき、高圧水の供給量を極力減ら
す。 【構成】 圧延中の熱延鋼材まで所定の距離を置いて配
置した固定高圧水噴射ヘッダーと、圧延中の熱延鋼材に
近接離間可能な可動高圧水噴射ヘッダーとから構成され
た熱延鋼材のデスケーリング装置。 【効果】 高圧水を供給するポンプの電力費が低減す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、熱延鋼板等の鋼材製
品を製造するときに、圧延素材加熱時に生成された１次
スケールや、１次スケール除去後に生成された２次スケ
ールを除去するためのデスケーリング装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】熱間圧延機により熱延鋼板等の鋼材製品
を製造するに際しては、圧延素材であるスラブを酸化性
雰囲気の加熱炉に装入し、１１００〜１３００℃の加熱
温度で数時間加熱してから圧延する。このようにしてス
ラブを加熱すると、スラブの表面には１次スケールが生
成される。この１次スケールあるいは１次スケール除去
後に生成される２次スケールが、圧延中の鋼材の表面に
付着または置かれている状態のまま圧延すると、該鋼材
の表面にこれらのスケールが食い込み、最終製品に表面
疵として残るので、圧延機前面にデスケーリング装置を
設けて、これらのスケールを除去するようにしている。

【０００３】上述した熱延鋼材のデスケーリング装置
は、通常通過する圧延中の鋼材の表面から２００〜４０
０ｍｍ上方に設けた高圧水ヘッダーと、この高圧水ヘッ
ダーに所定の間隔で設けた複数の高圧水噴射ノズルとか
ら構成されており、高圧水噴射ノズルから１００〜４０
０ｋｇｆ／ｃｍ²の高圧水を圧延鋼材表面に噴射し、高
圧水の圧力で吹き飛ばすことにより、スケールを鋼材表
面から除去するようにしている。

【０００４】高圧水噴射ノズルから噴射される高圧水
は、ノズルを離れると円錐状に拡がるが、拡がる面積が
大きければ大きいほど鋼材表面での水量密度（単位時
間、単位面積当りの水量）が小さくなり、それにともな
い高圧水の鋼材に対する衝突力も小さくなり、スケール
が除去しにくくなる。図２のグラフは、鋼材に当たると
きの高圧水の水量密度を、ノズルと鋼材間の距離が変わ
っても同一に保つためには噴射する高圧水の流量をどの
ように変化させなければならないかの一例を示すもので
あり、ノズルと鋼材間の距離が大きくなるにつれて、直
線的に流量を増加させなければならないことが分かる。

【０００５】そこで、高圧水噴射ノズルは噴射口の形状
を工夫して、鋼材進行方向の噴射幅はできるだけ狭くな
るようにして、水量密度を上げようとしている。また、
同じような理由から、高圧水ヘッダーの鋼材表面からの
高さも可能なかぎり低くするようにしている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の熱延鋼材のデスケーリング装置においては、次
のような問題点があった。すなわち、仕上圧延に入る前
の圧延鋼材の前後端は、圧延鋼材の長手方向中央部が平
坦であるのに対して、上下方向に反り返るのが普通であ
る。そのため、あまり高圧水ヘッダーを鋼材表面に近づ
けると、この前後端の反り返り部が高圧水ヘッダーに当
り、高圧水ヘッダーを破損することになる。したがっ
て、鋼材表面からある程度離れた位置に高圧水ヘッダー
を配置しなければならなくなるので、前述したように高
圧水の水量密度が低下する。そして、水量密度の低下に
よるスケールの除去能力の低下を補うために、供給する
高圧水の供給量を増やさねばならず、高圧水供給ポンプ
の電力費が増加するという問題点があった。

【０００７】このような問題を解消する手段として、特
公昭６３−６８２１３号公報に開示された技術がある。
この技術に基づくデスケーリング方法は、高圧水ヘッダ
ーを圧延中の鋼材に接近できるように昇降可能に構成す
るとともに、高圧水ヘッダーを鋼材に接近させたとき
に、隣合う高圧水噴射ノズルからの高圧水のスプレーが
十分に重なり合うように、高圧水ヘッダーを水平方向に
旋回可能とし、高圧水ヘッダーを鋼材の幅方向に対して
斜めになるような状態でデスケーリングするもので、鋼
材の前後端が通過するときは高圧水ヘッダーを上下方向
ににがすものである。しかし、この方法では高圧水ヘッ
ダーを斜めにするので、幅の広い鋼材には適用できなく
なるという問題点がある。

【０００８】また、特開平１−１７８３１２号公報に開
示された技術もある。この技術に基づくデスケーリング
方法は、高圧水ヘッダーを圧延中の鋼材に接近できるよ
うに昇降可能に構成するとともに、各高圧水噴射ノズル
毎に高圧水が遮断できる構造とし、高圧水ヘッダーが高
い位置にあるときには、高圧水スプレーの拡がりが大き
いので、使用高圧水噴射ノズルを減らし、高圧水ヘッダ
ーが低い位置にあるときには、高圧水スプレーの拡がり
が小さいので、使用高圧水噴射ノズルを増やして使用す
るというものである。しかし、この方法は、高圧水の供
給量を高圧水ヘッダーが高い位置にあるときに十分な水
量密度にしなければならないので、高圧水ヘッダーが低
い位置にあるときには、必要以上の高圧水を使用してい
るという問題点がある。

【０００９】この発明は、従来技術の上述のような問題
点を解消するためになされたものであり、鋼材の平坦な
部分が通過するときには、鋼材に接近してその位置に応
じた水量密度の高圧水でデスケーリングができ、鋼材前
後端の反り返り部が通過するときには上下方向に退避
し、高い位置に固定配置した高圧水ヘッダーを使用して
デスケーリングするので、高圧水の供給量を減らすこと
ができ、したがって高圧水供給ポンプの電力費を低減す
ることのできる熱延鋼材のデスケーリング装置を提供す
ることを目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この発明に係る熱延鋼材
のデスケーリング装置は、圧延中の熱延鋼材まで所定の
距離を置いて配置した固定高圧水噴射ヘッダーと、圧延
中の熱延鋼材に近接離間可能な可動高圧水噴射ヘッダー
とから構成されたものである。

【００１１】

【作用】この発明に係る熱延鋼材のデスケーリング装置
を使用してデスケーリングを行うときは、次のようにし
て行う。鋼材の先端部分がデスケーリング装置を通過す
るときには、熱延鋼材の表面から所定距離を置いて配置
した固定高圧水噴射ヘッダーから、その位置に対応した
水量密度の高圧水を鋼材表面に噴射して、デスケーリン
グを行う。

【００１２】次いで、熱延鋼材の平坦部が通過するとき
には、熱延鋼材表面に可動高圧水噴射ヘッダーを近づ
け、その位置に対応した水量密度の高圧水を鋼材表面に
噴射して、デスケーリングを行う。

【００１３】そして、鋼材の後端部分がデスケーリング
装置を通過するときには、可動高圧水噴射ヘッダーを鋼
材から遠ざけ、ふたたび熱延鋼材の表面から所定距離を
置いて配置した固定高圧水噴射ヘッダーから、その位置
に対応した水量密度の高圧水を鋼材表面に噴射して、デ
スケーリングを行う。このようにして、デスケーリング
を行うので、供給する高圧水は必要最小限の供給量でよ
く、高圧水を供給するポンプの電力費が低減できる。

【００１４】

【実施例】本発明の実施例の熱延鋼材のデスケーリング
装置を、図１に基づき説明する。このデスケーリング装
置は、鋼材２１の搬送ローラー２２から所定の距離を置
いた位置に固定して設けられた複数の高圧水噴射ノズル
１を有する固定高圧水噴射ヘッダー２と、同じく複数の
高圧水噴射ノズル３を有する可動高圧水噴射ヘッダー４
と、この高圧水噴射ヘッダー４を回動支軸５の回りに接
続されて回動可能になっている回動アーム６と、回動ア
ーム６を回動支軸５の回りに回動させるための油圧また
は空気圧シリンダー７とから構成されている。

【００１５】次に、このデスケーリング装置で熱延鋼材
をデスケーリングする手順を説明する。油圧または空気
圧シリンダー７は圧延開始前にシリンダーロッド７ａを
後退させ、回動アーム６を回転して、可動高圧水噴射ヘ
ッダー４を図１の点線の位置まで上昇させておく。鋼材
２１の先端が通過したことを位置センサー１１で把握す
ると、把握してから一定時間後に、固定高圧水噴射ヘッ
ダー２に高圧水を供給している高圧水配管の遮断弁が開
かれ、固定高圧水噴射ヘッダー２の複数の高圧水噴射ノ
ズル１から、鋼材先端部分の表面に高圧水が噴射され
る。

【００１６】そして、噴射を開始してから一定時間後
に、固定高圧水噴射ヘッダー２への高圧水の供給を停止
するとともに、油圧または空気圧シリンダー７のシリン
ダーロッド７ａを前進させ、回動アーム６を回転して、
可動高圧水噴射ヘッダー４を図１の実線の位置まで下降
させた後、可動高圧水噴射ヘッダー４に高圧水を供給し
ている高圧水配管の遮断弁を開き、可動高圧水噴射ヘッ
ダー４の複数の高圧水噴射ノズル３から、鋼材中間部分
の表面に高圧水を噴射する。

【００１７】次いで、鋼材２１の後端部分が通過したこ
とを位置センサー１１で把握すると、把握してから一定
時間後に、固定高圧水噴射ヘッダー２に高圧水を供給し
ている高圧水配管の遮断弁が開き、固定高圧水噴射ヘッ
ダー２の複数の高圧水噴射ノズル１から、鋼材先端部分
の表面に高圧水が噴射される。そして、同時に可動高圧
水噴射ヘッダー４への高圧水の供給を停止し、油圧また
は空気圧シリンダー７のシリンダーロッド７ａを後退さ
せ、回動アーム６を回転させて、可動高圧水噴射ヘッダ
ー４を図１の点線の位置まで上昇させる。

【００１８】そして、このデスケーリング装置の後方に
配置した位置センサー１２で、鋼材２１の後端が通過し
たことを把握すると、固定高圧水噴射ヘッダー２への高
圧水の供給が停止される。

【００１９】なお、鋼材２１の下面のデスケーリングを
行う複数の高圧水噴射ノズル１３を有する高圧水噴射ヘ
ッダー１４は、搬送ローラー２２により保護されている
ので、鋼材２１の表面に近づけることができ、従来どお
り固定ヘッダーのみでよい。図１中符号１５は噴射した
高圧水が飛び散らないようにするためのカバーである。
本発明を仕上圧延機前のデスケーリング装置に表１に示
すような条件で適用した。

【００２０】

【表１】

【００２１】そして、その効果を従来の方法と比較して
表２に示す。

【００２２】

【表２】

【００２３】表２から分かるように、本発明のデスケー
リング装置を使用すると、従来のデスケーリング方法よ
りも高圧水の供給量が７０％ですみ、そのためポンプの
電力費も７０％と大幅に低減することができる。

【００２４】

【発明の効果】この発明により、熱延鋼材の大部分のデ
スケーリング時に、高圧水噴射ヘッダーを鋼材に近づけ
てデスケーリングできるので、少ない高圧水の供給量で
所望の水量密度を得ることができる。したがって、高圧
水を供給するポンプの電力費を低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例の熱延鋼材のデスケーリング装
置の側面図である。

【図２】同一の水量密度を得るための、ノズル鋼材間の
距離と高圧水供給量との関係を示すグラフである。

【符号の説明】

１ 高圧水噴射ノズル ２ 固定高圧水噴射ヘッダー ３ 高圧水噴射ノズル ４ 可動高圧水噴射ヘッダー ５ 回動支軸 ６ 回動アーム ７ 油圧または空気圧シリンダー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 圧延中の熱延鋼材まで所定の距離を置い
   て配置した固定高圧水噴射ヘッダーと、圧延中の熱延鋼
   材に近接離間可能な可動高圧水噴射ヘッダーとから構成
   されたことを特徴とする熱延鋼材のデスケーリング装
   置。