JPH06182820A - 射出成形用金型およびその製造方法 - Google Patents

射出成形用金型およびその製造方法

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JPH06182820A
JPH06182820A JP33482892A JP33482892A JPH06182820A JP H06182820 A JPH06182820 A JP H06182820A JP 33482892 A JP33482892 A JP 33482892A JP 33482892 A JP33482892 A JP 33482892A JP H06182820 A JPH06182820 A JP H06182820A
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film
holding layer
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mold
hard
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JP33482892A
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English (en)
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Kiyoto Shibata
清人 柴田
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、キャビティ内に溶融した成形材料
を射出充填され成形品を成形する射出成形用金型および
その製造方法に関し、硬質膜およびその硬質膜を保持す
る保持層を軽合金からなる金型表面に形成することによ
り、その金型の耐摩耗性を向上させ耐久性に優れた射出
成形用金型およびその製造方法を提供することを目的と
する。 【構成】 内部にキャビティ13を形成し、そのキャビテ
ィ13内に溶融した成形材料を射出充填され成形品を成形
する上下型11、12の母材が軽合金からなり、上下型11、
12の少なくとも前記成形材料と接する表面に、窒化膜、
炭化膜あるいはi−C膜からなる硬質膜14と、硬質膜14
を上下型11、12表面に保持する母材の軽合金よりもヤン
グ率の高い保持層15と、を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、キャビティ内に溶融し
た成形材料を射出充填され成形品を成形する射出成形用
金型およびその製造方法に関し、詳しくは前記金型表面
に保護膜を形成して耐久性を向上させた射出成形用金型
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、内部にキャビティを形成する一対
の金型からなり、該キャビティ内に溶融樹脂が射出充填
されて成形品を成形する射出成形用金型が知られてい
る。この種の射出成形用金型としては、昨今、金型の母
材としてJIS5000系あるいはJIS7000系の
アルミニウム合金が用いられている。アルミニウム合金
は、切削等の機械加工性が良いため金型製作コストの軽
減や製品の開発期間短縮には適しているが、摩耗に対し
て耐久性が低いため量産用の射出成形用金型の母材とし
て用いることはできないという不具合があった。特に、
ガラス繊維等の無機物が添加された強化樹脂の成形にお
いては摩耗が著しく1000ショットが限界であった。
【0003】このような不具合を解消するため、例え
ば、特開昭56−115236号公報に、アルミニウム
合金からなる母材表面に硬質アルマイト処理を施して硬
質アルマイト膜を形成し、耐久性を向上させた射出成形
用金型が記載されている。また、特開昭63−1216
52号公報には、アルミニウム合金からなる母材表面
に、イオンプレーティングによりAl23膜あるいはi
−C(アモルファスカーボン)膜を形成し、耐久性を向
上させた射出成形用金型が提案されている。
【0004】なお、他の射出成形用金型の従来例として
は、特開平1−152024号公報および特開平1−2
85320号公報に記載されたものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来の射出成形用金型にあっては、金型表面に硬質ア
ルマイト膜を形成しても硬質アルマイト膜の表面硬度が
Hv450(ビッカース硬度)前後であるためガラス繊
維等が添加された強化樹脂を成形するには充分な耐久性
が得られないという問題があった。
【0006】また、一方の射出成形用金型にあっては、
Al23膜あるいはi−C膜を付着させる下地となるア
ルミニウム合金のヤング率が小さいため、溶融樹脂をキ
ャビティ内に射出する際の射出成形圧によってその膜が
割れ剥離してしまうという問題があった。そこで、本発
明は、硬質膜およびその硬質膜を保持する保持層を軽合
金からなる金型表面に形成することにより、その金型の
耐摩耗性を向上させ耐久性に優れた射出成形用金型およ
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、請
求項1記載の発明は、内部にキャビティを形成し、該キ
ャビティ内に溶融した成形材料を射出充填され成形品を
成形する射出成形用金型において、前記金型の母材が軽
合金からなり、該金型の少なくとも前記成形材料と接す
る表面に、窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜からなる硬
質膜と、該硬質膜を前記母材表面に保持する母材の軽合
金よりもヤング率の高い保持層と、を形成することを特
徴とするものであり、請求項2記載の発明は、前記保持
層が、無電解めっきからなることを特徴とするものであ
る。
【0008】請求項3記載の発明は、内部にキャビティ
を形成し、該キャビティ内に溶融した成形材料を射出充
填され成形品を成形する射出成形用金型において、前記
金型の母材が軽合金からなり、該金型の少なくとも前記
成形材料と接する表面に、窒化膜、炭化膜あるいはi−
C膜からなる硬質膜と、該硬質膜を前記母材表面に保持
する陽極酸化膜からなる保持層と、を形成することを特
徴とするものである。
【0009】請求項4記載の発明は、溶融した成形材料
が射出充填されるキャビティを内部に形成された軽合金
からなる射出成形用金型の母材を準備して、該母材を電
解液中に浸して母材の少なくとも前記成形材料と接する
表面に陽極酸化膜処理により陽極酸化膜を形成し、次い
で、該陽極酸化膜の表面に窒化膜、炭化膜あるいはi−
C膜を形成することを特徴とするものである。
【0010】請求項5記載の発明は、溶融した成形材料
が射出充填されるキャビティを内部に形成された軽合金
からなる射出成形用金型の母材を準備して、該母材の少
なくとも前記成形材料と接する表面に母材の軽合金より
もヤング率の高い保持層を形成し、次いで、H2 ガスを
含むArプラズマで逆スパッタリングすることにより該
保持層表面を洗浄し、次いで、洗浄された保持層表面に
窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜を形成することを特徴
とするものである。
【0011】ここで、軽合金とはアルミニウム合金、窒
化膜とはAlN、TiN、TiAlN、CrN、BN
等、炭化膜とはTiC、ZrC、HfC、SiC、VC
等をいう。また、無電解めっきとは無電解Niめっきを
いい、電解液とは酒石酸あるいはしゅう酸を主成分とす
るpH6.0〜7.0の弱酸性の水溶液、または所定の
低温に冷却された硫酸水溶液をいう。
【0012】
【作用】請求項1記載の発明では、金型の少なくとも成
形材料と接する表面に、その軽合金よりもヤング率の高
い保持層および該保持層の表面に窒化膜、炭化膜あるい
はi−C膜からなる硬質膜が形成される。したがって、
保持層により硬質の硬質膜の割れおよび剥離が防止さ
れ、射出成形用金型の耐久性が向上される。
【0013】請求項2記載の発明では、保持層が無電解
めっきにより形成される。したがって、エッジ部の突起
成長または溶出が防止されるとともに保持層の付き回り
の均一性が向上され、微細加工された金型の形状を損な
うことなく保持層が形成される。請求項3記載の発明で
は、陽極酸化処理により保持層として陽極酸化膜が形成
される。ここで、陽極酸化処理において母材にアルミニ
ウム合金を用い、陽極にアルミニウムまたはアルミニウ
ム合金を用いて、電解液に低温の硫酸水溶液を用いたと
き、保持層として硬質アルマイト膜が形成される。ま
た、電解液に酒石酸あるいはしゅう酸を主成分とするp
H6.0〜7.0の弱酸性の水溶液を用いたとき無孔質
のAl23膜が形成される。したがって、母材表面が直
接改質されて保持層が形成されるので、膜を堆積させて
形成する他の方法よりも母材との密着性が高い保持層が
形成され、射出成形用金型の耐久性がより向上される。
【0014】請求項4記載の発明では、軽合金からなる
射出成形用金型の母材が準備され、該母材が電解液中に
浸されて母材表面に陽極酸化膜処理により保持層として
陽極酸化膜が形成され、保持層表面に窒化膜、炭化膜あ
るいはi−C膜の硬質膜が形成される。ここで、母材と
してアルミニウム合金が準備され、陽極酸化処理の陽極
にアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられ、電
解液に低温の硫酸水溶液が用いられたとき保持層として
硬質アルマイト膜が形成される。また、電解液に酒石酸
あるいはしゅう酸を主成分とするpH6.0〜7.0の
弱酸性の水溶液が用いられたとき無孔質のAl23膜が
形成される。したがって、膜を堆積させて形成する他の
方法よりも母材との密着性が高い、母材表面が直接改質
された保持層が形成されるので、硬質膜の割れおよび剥
離が防止され、耐久性がより向上された射出成形用金型
を提供することができる。さらに、保持層として無孔質
のAl23膜が形成されたとき、保持層表面平滑度を得
るための加工工程を省略することができる。
【0015】請求項5記載の発明では、軽合金からなる
射出成形用金型の母材を準備され、該母材表面に母材よ
りもヤング率の高い保持層が形成され、次いで、H2
スを含むArプラズマで逆スパッタリングされることに
より該保持層表面が洗浄され、次いで、洗浄された保持
層表面に窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜が形成され
る。したがって、硬質膜を形成する前に保持層表面に残
留する水分や有機物が効果的に除去されて保持層と硬質
膜との密着性が向上され、耐久性がより向上された射出
成形用金型を提供することができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図
1は本発明に係る射出成形用金型およびその製造方法の
第1実施例を示す断面図である。まず、構成を説明す
る。
【0017】図1において、11は上型、12は下型であ
り、上下型11、12はともにアルミニウム合金からなり、
上下型11、12は互いに対向する面側で溶融樹脂(成形材
料)が射出充填されるキャビティ(成形空間)13を画成
する。この上下型11、12の互いに対向する面側の表面に
は耐摩耗性に優れ耐久性の高い硬質膜14が形成されてお
り、硬質膜14の下層には硬質膜14を上下型11、12の表面
に保持する上下型11、12の母材であるアルミニウム合金
よりもヤング率の高い保持層15が形成されている。ま
た、この上下型11、12の互いに対向する面側には、キャ
ビティ13に連通するライナー16およびゲート17が設けら
れており、このライナー16からゲート17を経て前記溶融
樹脂がキャビティ13内に射出充填される。
【0018】硬質膜14は、保持層15の表面にイオンプレ
ーティング法により膜厚3μmに形成された窒化膜(例
えば、窒化アルミニウム等)であり、この硬質膜14は非
常に硬いので、キャビティ13内に前記溶融樹脂が射出充
填される際の射出成形圧による損傷や溶融樹脂として強
化樹脂(例えば、ガラス繊維が添加された樹脂)を用い
た際の劣化が少なく耐摩耗性が優れたものである。
【0019】保持層15は、上下型11、12の表面に無電解
めっき法により膜厚10μmに形成された無電解Niめ
っきであり、この保持層15は上下型11、12の母材である
アルミニウム合金よりもヤング率が高く残留応力が少な
いので、硬質膜14をイオンプレーティング(例えば、プ
ラズマ気相法)により形成したことによる残留応力でそ
の硬質膜14が割れたり剥離してしまうことを防止して保
持する。また、この保持層15は無電解めっき法により形
成されているので、上下型11、12表面に均一な厚さで形
成されている。
【0020】次に、第1実施例の製造方法を説明する。
まず、対向する面側にキャビティ13が形成されアルミニ
ウム合金からなる上下型11、12を準備して、無電解めっ
き法により膜厚10μmの無電解Niめっきからなる保
持層15を形成する。次いで、図示しない排気系に窒素ト
ラップ付きターボ分子ポンプを備える真空装置のチャン
バー内にその上下型11、12をセットして所定時間排気し
た後、10%H2 ガスを含むArガスを前記チャンバー
内に導入し、逆スパッタリングして無電解Niめっきか
らなる保持層15表面を洗浄する。次いで、イオンプレー
ティング法により窒化アルミニウムからなる硬質膜14を
形成する。
【0021】本実施例では、上下型11、12の対向する面
側の表面に、その上下型11、12の母材であるアルミニウ
ム合金よりもヤング率の高い無電解Niめっきからなる
保持層15が形成され、その保持層15表面に非常に硬い窒
化アルミニウムからなる硬質膜14が形成される。したが
って、保持層15により硬質膜14の割れおよび剥離が防止
され、耐摩耗性が向上されて耐久性が向上される。ま
た、無電解めっき法を用いて保持層15を形成しているの
で電解めっきのような電界の集中によるエッジ部の突起
成長および溶出が防止されるとともに保持層15の付き回
りの均一性が向上され、金型の形状を損なうことなく保
持層15が形成される。
【0022】また、無電解めっきのようにウエットな工
程により保持層15を形成すると表面に水分や有機物が残
留し密着力の低下となってしまい、例えば上下型11、12
の母材として7075系アルミニウム合金を用いた場
合、略150℃以上に加熱すると機械的特性を損なうた
め加熱による脱ガス処理をすることができない。そのた
め、本実施例では、ターボ分子ポンプにより水分の排気
速度を高め、10%H2ガスを含むArガスで逆スパッ
タリングし硬質膜14を形成する前に物理的洗浄作用に加
えて有機物に対する化学的洗浄作用により保持層15表面
を洗浄しているので、保持層15に対する硬質膜14の密着
性が向上されてより耐久性が向上される。
【0023】具体的には、本実施例で実際に射出成形を
行なったところ、硬質膜14の割れおよび剥離は発生せ
ず、前記溶融樹脂としてガラス繊維が20%添加された
ABS樹脂(強化樹脂)を射出成形しても20,000
ショット以上成形することができた。図2は本発明に係
る射出成形用金型およびその製造方法の第2実施例を示
す断面図である。なお、本実施例では、上述実施例と同
様の構成には、同一の符合を付してその説明を省略す
る。
【0024】まず、構成を説明する。図2において、24
は硬質膜であり、硬質膜24は上下型11、12の互いに対向
する面側の表面に形成された耐摩耗性に優れ耐久性の高
いiーC(アモルファスカーボン)膜である。この硬質
膜24の下層には、硬質膜24を上下型11、12の表面に保持
する上下型11、12の母材であるアルミニウム合金が改質
された陽極酸化膜からなる保持層25が形成されている。
【0025】硬質膜24のiーC膜は、保持層25の表面に
熱フィラメントイオン化法により膜厚1μmに形成され
ており、このiーC膜からなる硬質膜24は非常に硬い
(ビッカース硬度、3,000〜5,000)ため前記射出成形圧
による損傷や強化樹脂を用いた際の劣化が少なく耐摩耗
性が優れたものである。保持層25は、上下型11、12の表
面に陽極酸化処理により膜厚20μmに形成された陽極
酸化膜であり、この保持層25は上下型11、12の母材であ
るアルミニウム合金が陽極酸化処理により直接改質され
た硬質アルマイト膜であるので、他の膜堆積方法により
形成された被膜に較べ密着性が高い。また、この保持層
25は多孔質である硬質アルマイト膜からなるため硬質膜
24を形成する前にラッピング加工されている。
【0026】次に、第2実施例の製造方法を説明する。
まず、対向する面側にキャビティ13が形成されアルミニ
ウム合金からなる上下型11、12を準備して、略3℃の液
温に保持された硫酸浴に浸して陽極をアルミニウムまた
はアルミニウム合金とした陽極酸化処理により膜厚20
μmの硬質アルマイト膜からなる保持層25を形成する。
次いで、保持層25は多孔質である硬質アルマイト膜から
なるためラッピング加工して保持層25表面を平滑にす
る。次いで、熱フィラメントイオン化法により膜厚1μ
mのiーC膜からなる硬質膜24を形成する。
【0027】本実施例では、上下型11、12の対向する面
側の表面に、その上下型11、12の母材であるアルミニウ
ム合金が直接改質された硬質アルマイト膜からなる保持
層25が形成され、その保持層25表面がラッピング加工に
より平滑にされて非常に硬いiーC膜からなる硬質膜24
が形成される。したがって、堆積法により形成されたも
のよりも密着性が高い保持層25が形成され、この保持層
25が直接アルミニウム合金からなる上下型11、12表面上
に形成すると前記射出成形圧により容易に割れたり剥離
してしまうiーC膜からなる硬質膜24が保持されて射出
成形用金型の耐久性がより向上される。
【0028】具体的には、本実施例で実際に射出成形を
行なったところ、硬質膜24の割れおよび剥離は発生せ
ず、前記溶融樹脂としてガラス繊維が添加された強化樹
脂を射出成形しても数万ショット以上成形することがで
きた。図3は本発明に係る射出成形用金型およびその製
造方法の第3実施例を示す断面図である。なお、本実施
例では、上述実施例と同様の構成には、同一の符合を付
してその説明を省略する。
【0029】図3において、35は保持層であり、保持層
35は上下型11、12の表面に陽極酸化処理において、例え
ば、3%の酒石酸を用いたpH6.0〜7.0の弱酸性
の電解液より形成された無孔質Al23である。この保
持層35は硬質アルマイト膜が多孔質であるのに対して無
孔質であるため硬質膜24を形成する前に前記ラッピング
加工することなく硬質膜24を形成することができる。
【0030】本実施例では、上述従来例の効果に加え、
保持層35として無孔質のAl23膜が形成されるので、
保持層35の表面平滑度を得るための加工工程を省略する
ことができる。なお、本実施例の硬質膜の窒化膜とし
て、窒化アルミニウム(AlN)の他にTiN、TiA
lN、CrN、BN等を形成してもよい。また、硬質膜
として炭化膜を用いてもよくTiC、ZrC、HfC、
SiC、VC等を形成してもよい。また、Al23を形
成する電解液として、しゅう酸を主成分とする弱酸性の
水溶液を用いてもよい。さらに、硬質膜としての窒化
膜、炭化膜、またはiーC膜と、保持層としての無電解
Niめっき、硬質アルマイト膜、またはAl23との組
み合せは何れの組み合せでもよいことはいうまでもな
い。
【0031】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、金型の少
なくとも成形材料と接する表面に、その軽合金よりもヤ
ング率の高い保持層および該保持層の表面に窒化膜、炭
化膜あるいはi−C膜からなる硬質膜を形成するので、
硬質膜の割れおよび剥離を防止することができ、射出成
形用金型の耐摩耗性を向上させ耐久性を向上させること
ができる。
【0032】請求項2記載の発明によれば、保持層を無
電解めっきにより形成するので、エッジ部の突起成長ま
たは溶出を防止するとともに保持層の付き回りの均一性
を向上させることができ、微細加工された金型の形状を
損なうことなく保持層を形成することができる。請求項
3記載の発明によれば、軽合金としてアルミニウム合金
が用い、陽極酸化処理により保持層として母材表面を直
接改質して陽極酸化膜の硬質アルマイト膜あるいはAl
23膜を形成するので、膜を堆積させて形成する他の方
法よりも母材との密着性が高い保持層を形成することが
でき、射出成形用金型の耐久性をより向上させることが
できる。
【0033】請求項4記載の発明によれば、軽合金から
なる射出成形用金型の母材を準備し、該母材を電解液中
に浸して母材表面に陽極酸化膜処理により保持層として
陽極酸化膜を形成する。次いで、保持層表面に窒化膜、
炭化膜あるいはi−C膜からなる硬質膜を形成する。こ
こで、母材としてアルミニウム合金を用い、陽極酸化処
理の陽極にアルミニウムまたはアルミニウム合金、電解
液に低温の硫酸水溶液を用いて保持層に硬質アルマイト
膜を形成する。または、電解液に酒石酸あるいはしゅう
酸を主成分とするpH6.0〜7.0の弱酸性の水溶液
を用いたとき無孔質のAl23膜を形成する。そのた
め、母材表面を直接改質して保持層を形成するので、膜
を堆積させて形成する他の方法よりも母材との密着性の
高い保持層を形成して、硬質膜の割れおよび剥離を防止
することができ、射出成形用金型の耐久性を向上させる
ことができる。さらに、保持層として無孔質のAl23
膜を形成したとき、保持層表面の平滑度を得るための加
工工程を省略することができ、金型作製時間が短縮され
た低コストで耐久性が高い射出成形用金型を提供するこ
とができる。
【0034】請求項5記載の発明によれば、軽合金から
なる射出成形用金型の母材を準備し、該母材表面にヤン
グ率の高い保持層を形成する。次いで、H2 ガスを含む
Arプラズマで逆スパッタリングして該保持層表面を洗
浄し、次いで、洗浄された保持層表面に窒化膜、炭化膜
あるいはi−C膜を形成するので、硬質膜を形成する前
に保持層表面に残留する水分や有機物を効果的に除去し
て保持層と硬質膜との密着性を向上させることができ、
射出成形用金型の耐久性をより向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る射出成形用金型およびその製造方
法の第1実施例を示す断面図である。
【図2】その第2実施例を示す断面図である。
【図3】その第3実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 上型 12 下型 13 キャビティ 14、24 硬質膜 15、25、35 保持層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】請求項4記載の発明は、溶融した成形材料
が射出充填されるキャビティを内部に形成された軽合金
からなる射出成形用金型の母材を準備して、該母材を電
解液中に浸して母材の少なくとも前記成形材料と接する
表面に陽極酸化膜処理により陽極酸化膜を形成し、次い
で、該陽極酸化膜の表面に窒化膜、炭化膜あるいはi−
C膜を形成することを特徴とするものであり、請求項5
記載の発明は、前記電解液として酒石酸あるいはしゅう
酸を主成分とするpH6.0〜7.0の弱酸性の水溶液
を用いることを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正内容】
【0010】請求項6記載の発明は、溶融した成形材料
が射出充填されるキャビティを内部に形成された軽合金
からなる射出成形用金型の母材を準備して、該母材の少
なくとも前記成形材料と接する表面に母材の軽合金より
もヤング率の高い保持層を形成し、次いで、H2 ガスを
含むArプラズマで逆スパッタリングすることにより該
保持層表面を洗浄し、次いで、洗浄された保持層表面に
窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜を形成することを特徴
とするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】ここで、軽合金とはアルミニウム合金、窒
化膜とはAlN、TiN、TiAlN、CrN、BN
等、炭化膜とはTiC、ZrC、HfC、SiC、VC
等をいう。また、無電解めっきとは、例えば無電解Ni
めっきをいい、電解液として好ましくは酒石酸あるいは
しゅう酸を主成分とするpH6.0〜7.0の弱酸性の
水溶液、または所定の低温に冷却された硫酸水溶液をい
う。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】請求項4または5記載の発明では、軽合金
からなる射出成形用金型の母材が準備され、該母材が電
解液中に浸されて母材表面に陽極酸化膜処理により保持
層として陽極酸化膜が形成され、保持層表面に窒化膜、
炭化膜あるいはi−C膜の硬質膜が形成される。ここ
で、母材としてアルミニウム合金が準備され、陽極酸化
処理の陽極にアルミニウムまたはアルミニウム合金が用
いられ、電解液に低温の硫酸水溶液が用いられたとき保
持層として硬質アルマイト膜が形成される。また、電解
液に酒石酸あるいはしゅう酸を主成分とするpH6.0
〜7.0の弱酸性の水溶液が用いられたとき無孔質のA
23膜が形成される。したがって、膜を堆積させて形
成する他の方法よりも母材との密着性が高い、母材表面
が直接改質された保持層が形成されるので、硬質膜の割
れおよび剥離が防止され、耐久性がより向上された射出
成形用金型を提供することができる。さらに、保持層と
して無孔質のAl23膜が形成されたとき、保持層表面
平滑度を得るための加工工程を省略することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】請求項6記載の発明では、軽合金からなる
射出成形用金型の母材を準備され、該母材表面に母材よ
りもヤング率の高い保持層が形成され、次いで、H2
スを含むArプラズマで逆スパッタリングされることに
より該保持層表面が洗浄され、次いで、洗浄された保持
層表面に窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜が形成され
る。したがって、硬質膜を形成する前に保持層表面に残
留する水分や有機物が効果的に除去されて保持層と硬質
膜との密着性が向上され、耐久性がより向上された射出
成形用金型を提供することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】保持層15は、上下型11、12の表面に無電解
めっき法により膜厚10μmに形成された無電解Niめ
っきであり、この保持層15は上下型11、12の母材である
アルミニウム合金よりもヤング率が高く残留応力が少な
いので、硬質膜14をイオンプレーティングにより形成し
たことによる残留応力でその硬質膜14が割れたり剥離し
てしまうことを防止して保持する。また、この保持層15
は無電解めっき法により形成されているので、上下型1
1、12表面に均一な厚さで形成されている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】硬質膜24のiーC膜は、保持層25の表面に
熱フィラメントイオン化法により膜厚1μmに形成され
ており、このiーC膜からなる硬質膜24は非常に硬い
(ビッカース硬度、3,000〜5,000)ため前記射出成形圧
による損傷や強化樹脂を用いた際の劣化が少なく耐摩耗
性が優れたものである。保持層25は、上下型11、12の表
面に陽極酸化処理により膜厚20μmに形成された陽極
酸化膜であり、この保持層25は上下型11、12の母材であ
るアルミニウム合金が陽極酸化処理により直接改質され
た硬質アルマイト膜であるので、他の膜堆積方法により
形成された被膜に較べ密着性が高い。また、この保持層
25は多孔質である硬質アルマイト膜からなるため硬質膜
24を形成する前に所定の表面粗さに研磨されている。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正内容】
【0026】次に、第2実施例の製造方法を説明する。
まず、対向する面側にキャビティ13が形成されアルミニ
ウム合金からなる上下型11、12を準備して、略3℃の液
温に保持された硫酸浴に浸して陽極をアルミニウムまた
はアルミニウム合金とした陽極酸化処理により膜厚20
μmの硬質アルマイト膜からなる保持層25を形成する。
次いで、保持層25は多孔質である硬質アルマイト膜から
なるため研磨により保持層25表面を平滑にする。次い
で、熱フィラメントイオン化法により膜厚1μmのiー
C膜からなる硬質膜24を形成する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】本実施例では、上下型11、12の対向する面
側の表面に、その上下型11、12の母材であるアルミニウ
ム合金が直接改質された硬質アルマイト膜からなる保持
層25が形成され、その保持層25表面が研磨により平滑に
されて非常に硬いiーC膜からなる硬質膜24が形成され
る。したがって、堆積法により形成されたものよりも密
着性が高い保持層25が形成され、この保持層25が直接ア
ルミニウム合金からなる上下型11、12表面上に形成する
と前記射出成形圧により容易に割れたり剥離してしまう
iーC膜からなる硬質膜24が保持されて射出成形用金型
の耐久性がより向上される。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】図3において、35は保持層であり、保持層
35は上下型11、12の表面に陽極酸化処理において、例え
ば、3%の酒石酸を用いたpH6.0〜7.0の弱酸性
の電解液より形成された無孔質Al23である。この保
持層35は硬質アルマイト膜が多孔質であるのに対して無
孔質であるため硬質膜24を形成する前に研磨することな
く硬質膜24を形成することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正内容】
【0033】請求項4または5記載の発明によれば、
合金からなる射出成形用金型の母材を準備し、該母材を
電解液中に浸して母材表面に陽極酸化膜処理により保持
層として陽極酸化膜を形成する。次いで、保持層表面に
窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜からなる硬質膜を形成
する。ここで、母材としてアルミニウム合金を用い、陽
極酸化処理の陽極にアルミニウムまたはアルミニウム合
金、電解液に低温の硫酸水溶液を用いて保持層に硬質ア
ルマイト膜を形成する。または、電解液に酒石酸あるい
はしゅう酸を主成分とするpH6.0〜7.0の弱酸性
の水溶液を用いたとき無孔質のAl23膜を形成する。
そのため、母材表面を直接改質して保持層を形成するの
で、膜を堆積させて形成する他の方法よりも母材との密
着性の高い保持層を形成して、硬質膜の割れおよび剥離
を防止することができ、射出成形用金型の耐久性を向上
させることができる。さらに、保持層として無孔質のA
23膜を形成したとき、保持層表面の平滑度を得るた
めの加工工程を省略することができ、金型作製時間が短
縮された低コストで耐久性が高い射出成形用金型を提供
することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正内容】
【0034】請求項6記載の発明によれば、軽合金から
なる射出成形用金型の母材を準備し、該母材表面にヤン
グ率の高い保持層を形成する。次いで、H2 ガスを含む
Arプラズマで逆スパッタリングして該保持層表面を洗
浄し、次いで、洗浄された保持層表面に窒化膜、炭化膜
あるいはi−C膜を形成するので、硬質膜を形成する前
に保持層表面に残留する水分や有機物を効果的に除去し
て保持層と硬質膜との密着性を向上させることができ、
射出成形用金型の耐久性をより向上させることができ
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部にキャビティを形成し、該キャビティ
    内に溶融した成形材料を射出充填され成形品を成形する
    射出成形用金型において、 前記金型の母材が軽合金からなり、 該金型の少なくとも前記成形材料と接する表面に、窒化
    膜、炭化膜あるいはi−C膜からなる硬質膜と、該硬質
    膜を前記母材表面に保持する母材の軽合金よりもヤング
    率の高い保持層と、を形成することを特徴とする射出成
    形用金型。
  2. 【請求項2】前記保持層が、無電解めっきからなること
    を特徴とする請求項1記載の射出成形用金型。
  3. 【請求項3】内部にキャビティを形成し、該キャビティ
    内に溶融した成形材料を射出充填され成形品を成形する
    射出成形用金型において、 前記金型の母材が軽合金からなり、 該金型の少なくとも前記成形材料と接する表面に、窒化
    膜、炭化膜あるいはi−C膜からなる硬質膜と、該硬質
    膜を前記母材表面に保持する陽極酸化膜からなる保持層
    と、を形成することを特徴とする射出成形用金型。
  4. 【請求項4】溶融した成形材料が射出充填されるキャビ
    ティを内部に形成された軽合金からなる射出成形用金型
    の母材を準備して、該母材を電解液中に浸して母材の少
    なくとも前記成形材料と接する表面に陽極酸化膜処理に
    より陽極酸化膜を形成し、次いで、該陽極酸化膜の表面
    に窒化膜、炭化膜あるいはi−C膜を形成することを特
    徴とする射出成形用金型の製造方法。
  5. 【請求項5】溶融した成形材料が射出充填されるキャビ
    ティを内部に形成された軽合金からなる射出成形用金型
    の母材を準備して、該母材の少なくとも前記成形材料と
    接する表面に母材の軽合金よりもヤング率の高い保持層
    を形成し、次いで、H2 ガスを含むArプラズマで逆ス
    パッタリングすることにより該保持層表面を洗浄し、次
    いで、洗浄された保持層表面に窒化膜、炭化膜あるいは
    i−C膜を形成することを特徴とする射出成形用金型の
    製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007307606A (ja) * 2006-05-22 2007-11-29 Mazda Motor Corp 成形金型の段替え方法

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JP2007307606A (ja) * 2006-05-22 2007-11-29 Mazda Motor Corp 成形金型の段替え方法

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