JPH06179908A - 溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の製造方法 - Google Patents
溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の製造方法Info
- Publication number
- JPH06179908A JPH06179908A JP33469792A JP33469792A JPH06179908A JP H06179908 A JPH06179908 A JP H06179908A JP 33469792 A JP33469792 A JP 33469792A JP 33469792 A JP33469792 A JP 33469792A JP H06179908 A JPH06179908 A JP H06179908A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- point
- temperature
- rolling
- steel
- surface layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 低温における脆性亀裂伝播停止性能を有する
780MPa 級厚肉鋼材の製法を提供する。 【構成】 C:0.03〜0.08%、Cu:0.5〜
2.0%、Ti:0.005〜0.035%、V:0.
005〜0.10%、N:0.0030〜0.010%
の他Si,Mn,Ni,Mo,Alを基本成分として含
有し、選択的にCr,Nb,Caの一種又は二種を含有
し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼を1000〜
1200℃に加熱し、900℃以上から水冷し表層部を
Ar3 点以下に冷却して停止し、該表層部がAc1 点〜
Ac3 点に復熱途中で仕上げ圧延を開始し、仕上げ厚に
対し圧下率50%以上で圧延し表層部をAc3 点−80
℃〜Ac3 点+20℃で圧延終了し、Ar3 点以上より
焼入れした後550℃〜Ac1 点で焼戻し処理する。
780MPa 級厚肉鋼材の製法を提供する。 【構成】 C:0.03〜0.08%、Cu:0.5〜
2.0%、Ti:0.005〜0.035%、V:0.
005〜0.10%、N:0.0030〜0.010%
の他Si,Mn,Ni,Mo,Alを基本成分として含
有し、選択的にCr,Nb,Caの一種又は二種を含有
し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼を1000〜
1200℃に加熱し、900℃以上から水冷し表層部を
Ar3 点以下に冷却して停止し、該表層部がAc1 点〜
Ac3 点に復熱途中で仕上げ圧延を開始し、仕上げ厚に
対し圧下率50%以上で圧延し表層部をAc3 点−80
℃〜Ac3 点+20℃で圧延終了し、Ar3 点以上より
焼入れした後550℃〜Ac1 点で焼戻し処理する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶接性と低温靭性及び
脆性亀裂伝播停止性能に優れた引張強さが780MPa 以
上の厚肉高張力鋼の製造方法に関するものである。
脆性亀裂伝播停止性能に優れた引張強さが780MPa 以
上の厚肉高張力鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、橋梁、圧力容器、水圧鉄管及び海
洋構造物等の各種鋼構造物は大型化の一途をたどってお
り、使用鋼材が厚肉化し、より安全性確保が重要な課題
である。したがって、これらに使用される鋼材には、高
強度に加え、安全性、作業性の面から、高溶接性で、且
つ高靭性が要求されている。従来、引張強さ780MPa
以上の溶接性に優れた高張力鋼(以下HT780と呼
ぶ)の製造方法として、Bを添加して、その焼入性向上
効果を利用する方法がある。
洋構造物等の各種鋼構造物は大型化の一途をたどってお
り、使用鋼材が厚肉化し、より安全性確保が重要な課題
である。したがって、これらに使用される鋼材には、高
強度に加え、安全性、作業性の面から、高溶接性で、且
つ高靭性が要求されている。従来、引張強さ780MPa
以上の溶接性に優れた高張力鋼(以下HT780と呼
ぶ)の製造方法として、Bを添加して、その焼入性向上
効果を利用する方法がある。
【0003】すなわち、溶接性の指標の一つである炭素
当量(Ceq)を低減させるためC,Ni,Mo等の焼
入性増加元素の必要以上の添加をさけ、その代わりBの
焼入性を最大限に発揮させるため、Al−B処理あるい
は低N化処理を施し、再加熱焼入れ・焼戻し法あるいは
圧延後直接焼入れ・焼戻し法によって製造されている。
例えば、特公昭60−25494号公報「ボロン含有低
合金調質型高張力鋼板の製造法」、特公昭60−204
61号公報「高強度高靭性を有する厚肉高張力鋼板」が
ある。これらは焼入れ焼戻し処理により得られた組織が
焼戻しマルテンサイトあるいは焼戻し下部ベイナイト組
織であるため、高強度と高靭性が達成されている。
当量(Ceq)を低減させるためC,Ni,Mo等の焼
入性増加元素の必要以上の添加をさけ、その代わりBの
焼入性を最大限に発揮させるため、Al−B処理あるい
は低N化処理を施し、再加熱焼入れ・焼戻し法あるいは
圧延後直接焼入れ・焼戻し法によって製造されている。
例えば、特公昭60−25494号公報「ボロン含有低
合金調質型高張力鋼板の製造法」、特公昭60−204
61号公報「高強度高靭性を有する厚肉高張力鋼板」が
ある。これらは焼入れ焼戻し処理により得られた組織が
焼戻しマルテンサイトあるいは焼戻し下部ベイナイト組
織であるため、高強度と高靭性が達成されている。
【0004】一方、Bを使用しない高強度鋼を製造する
方法としては、Cuの時効析出硬化作用を利用したNi
−Cu鋼(ASTM規格の710鋼)が知られており、
再加熱焼入れ焼戻し法あるいは再加熱焼準焼戻し法によ
って製造されている。更に、最近のCu鋼の研究では、
制御圧延と時効処理を組合わせた種々の高張力鋼の開発
及び品質改善が行なわれてきている。例えば、特公平2
−47525号公報「溶接部低温靭性の優れたCu添加
鋼の製造法」のように、Ni0.5%以下において、C
u−クラック防止のため極低温加熱し、更に低N化によ
り低温靭性及び溶接部靭性の向上を図っている。
方法としては、Cuの時効析出硬化作用を利用したNi
−Cu鋼(ASTM規格の710鋼)が知られており、
再加熱焼入れ焼戻し法あるいは再加熱焼準焼戻し法によ
って製造されている。更に、最近のCu鋼の研究では、
制御圧延と時効処理を組合わせた種々の高張力鋼の開発
及び品質改善が行なわれてきている。例えば、特公平2
−47525号公報「溶接部低温靭性の優れたCu添加
鋼の製造法」のように、Ni0.5%以下において、C
u−クラック防止のため極低温加熱し、更に低N化によ
り低温靭性及び溶接部靭性の向上を図っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、Bの焼入性向
上効果を利用する方法は、確かに合金元素が低減でき、
溶接予熱温度を下げることができ溶接性は向上するが、
溶接時の予熱温度を完全に省略するまでは至っていな
い。更に、厚肉材においては、表層下から1/4t部は
Bの焼入性向上によりマルテンサイトあるいは下部ベイ
ナイト組織が得られ靭性が確保されるが、板厚中心部に
おいては、上部ベイナイト組織の生成により十分な靭性
が得られているとは言えない。一方、Cuの析出硬化を
利用する前述の製造法によって得られた鋼板は、C量も
低く溶接性に優れ、引張強さ590MPa 級の高張力鋼に
適用されているが、780MPa 級の高張力鋼において
は、上部ベイナイト組織の生成により強度及び靭性が不
十分であった。
上効果を利用する方法は、確かに合金元素が低減でき、
溶接予熱温度を下げることができ溶接性は向上するが、
溶接時の予熱温度を完全に省略するまでは至っていな
い。更に、厚肉材においては、表層下から1/4t部は
Bの焼入性向上によりマルテンサイトあるいは下部ベイ
ナイト組織が得られ靭性が確保されるが、板厚中心部に
おいては、上部ベイナイト組織の生成により十分な靭性
が得られているとは言えない。一方、Cuの析出硬化を
利用する前述の製造法によって得られた鋼板は、C量も
低く溶接性に優れ、引張強さ590MPa 級の高張力鋼に
適用されているが、780MPa 級の高張力鋼において
は、上部ベイナイト組織の生成により強度及び靭性が不
十分であった。
【0006】本発明者らはこの解決のためにすでに特願
平1−77097号において、溶接性及び低温靭性に優
れた高張力鋼の製造方法を提案し、予熱温度省略には低
炭素でB無添加により高いレベルに到達したが、更に、
使用環境の苛酷な条件における安全性の確保から、構造
物は変形もしくは破壊してはならず、特に鋼材に対して
は、より低温における脆性亀裂伝播停止性能を有する厚
肉高張力鋼材の開発が望まれている。
平1−77097号において、溶接性及び低温靭性に優
れた高張力鋼の製造方法を提案し、予熱温度省略には低
炭素でB無添加により高いレベルに到達したが、更に、
使用環境の苛酷な条件における安全性の確保から、構造
物は変形もしくは破壊してはならず、特に鋼材に対して
は、より低温における脆性亀裂伝播停止性能を有する厚
肉高張力鋼材の開発が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高溶接
性、低温靭性及び脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉H
T780鋼を開発することを目的に、鋼成分及びその製
造方法について種々検討した結果、先に提案したごと
く、溶接予熱温度の低下には、溶接熱影響部(以下HA
Zと言う)の硬さ低下が重要であり、それにはB無添加
で、且つCを0.08%以下とすることにより、著しく
HAZ硬さが低減され、溶接予熱が省略できること、
又、低C−B無添加を基本成分にした鋼の高強度化には
制御圧延−直接焼入れ焼戻し処理でCu−Ti−Vの複
合析出強化を利用することが有効であることが分かっ
た。
性、低温靭性及び脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉H
T780鋼を開発することを目的に、鋼成分及びその製
造方法について種々検討した結果、先に提案したごと
く、溶接予熱温度の低下には、溶接熱影響部(以下HA
Zと言う)の硬さ低下が重要であり、それにはB無添加
で、且つCを0.08%以下とすることにより、著しく
HAZ硬さが低減され、溶接予熱が省略できること、
又、低C−B無添加を基本成分にした鋼の高強度化には
制御圧延−直接焼入れ焼戻し処理でCu−Ti−Vの複
合析出強化を利用することが有効であることが分かっ
た。
【0008】更に低温靭性及び脆性亀裂伝播停止性能を
付与するため、圧延工程における結晶粒の微細化につい
て詳細調査した。その結果、低C−B無添加の低合金鋼
片の厚板圧延−直接焼入れ処理工程において、高温加熱
された鋼片を、鋼片ままあるいは粗圧延後、鋼片表裏面
を水冷した後、続いて表層部を復熱させつつ仕上げ圧延
を行なった後、直接焼入れを行なうことにより、焼入れ
組織は、表層部はγ→α+γ→加工歪導入+急速復熱に
よって、微細なオーステナイト粒が生成し、それを焼入
れ処理することにより微細なフェライトとベイナイト組
織が生成し、又、板厚中心部は表層部との温度差がある
状態での圧延により圧下歪が中心部に集中し、大圧下に
より細粒のオーステナイト粒からなるベイナイト組織が
得られ、それを焼戻し処理することで板厚内全位置にお
いて高靭性が得られ、更に表層部が極細粒化されること
でより脆性亀裂伝播停止性能が著しく向上し、目的の鋼
が製造できることを知見した。
付与するため、圧延工程における結晶粒の微細化につい
て詳細調査した。その結果、低C−B無添加の低合金鋼
片の厚板圧延−直接焼入れ処理工程において、高温加熱
された鋼片を、鋼片ままあるいは粗圧延後、鋼片表裏面
を水冷した後、続いて表層部を復熱させつつ仕上げ圧延
を行なった後、直接焼入れを行なうことにより、焼入れ
組織は、表層部はγ→α+γ→加工歪導入+急速復熱に
よって、微細なオーステナイト粒が生成し、それを焼入
れ処理することにより微細なフェライトとベイナイト組
織が生成し、又、板厚中心部は表層部との温度差がある
状態での圧延により圧下歪が中心部に集中し、大圧下に
より細粒のオーステナイト粒からなるベイナイト組織が
得られ、それを焼戻し処理することで板厚内全位置にお
いて高靭性が得られ、更に表層部が極細粒化されること
でより脆性亀裂伝播停止性能が著しく向上し、目的の鋼
が製造できることを知見した。
【0009】本発明は、このような知見に基づいて構成
したもので、その要旨は重量%でC:0.03〜0.0
8%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.4〜
1.5%、Cu:0.5〜2.0%、Ni:0.3〜
3.5%、Mo:0.20〜1.00%、Ti:0.0
05〜0.035%、V:0.005〜0.10%、A
l:0.01〜0.08%、B:0.0004%以下、
N:0.0030〜0.010%、を含有し、残部が鉄
及び不可避的不純物からなる鋼片、あるいは、更にC
r:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.05
%の強度改善元素群、又は、介在物形態制御作用のある
Ca:0.0005〜0.0050%の一種又は二種以
上を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼片
を1000〜1200℃に加熱して、鋼片ままあるいは
粗圧延後900℃以上の温度から水冷し、鋼片両表面か
ら厚みの1/10〜3/10までの表層部をAr3 点以
下に冷却した後、冷却を停止し、引き続き、鋼片表層部
がAc1 点以上Ac3 点以下の温度にまで復熱途中で仕
上げ圧延を開始し、仕上げ厚に対し圧下率50%以上で
圧延し、且つ、表層部をAc3 点−80℃以上Ac3 点
+20℃以下の温度で仕上げ圧延を終了させ、Ar3 点
以上の温度から水冷を開始する焼入れ処理を行ない、続
いて550℃以上Ac1 点以下の温度で焼戻し処理する
ことを特徴とする溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れ
た厚肉高張力鋼の製造方法である。
したもので、その要旨は重量%でC:0.03〜0.0
8%、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.4〜
1.5%、Cu:0.5〜2.0%、Ni:0.3〜
3.5%、Mo:0.20〜1.00%、Ti:0.0
05〜0.035%、V:0.005〜0.10%、A
l:0.01〜0.08%、B:0.0004%以下、
N:0.0030〜0.010%、を含有し、残部が鉄
及び不可避的不純物からなる鋼片、あるいは、更にC
r:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.05
%の強度改善元素群、又は、介在物形態制御作用のある
Ca:0.0005〜0.0050%の一種又は二種以
上を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼片
を1000〜1200℃に加熱して、鋼片ままあるいは
粗圧延後900℃以上の温度から水冷し、鋼片両表面か
ら厚みの1/10〜3/10までの表層部をAr3 点以
下に冷却した後、冷却を停止し、引き続き、鋼片表層部
がAc1 点以上Ac3 点以下の温度にまで復熱途中で仕
上げ圧延を開始し、仕上げ厚に対し圧下率50%以上で
圧延し、且つ、表層部をAc3 点−80℃以上Ac3 点
+20℃以下の温度で仕上げ圧延を終了させ、Ar3 点
以上の温度から水冷を開始する焼入れ処理を行ない、続
いて550℃以上Ac1 点以下の温度で焼戻し処理する
ことを特徴とする溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れ
た厚肉高張力鋼の製造方法である。
【0010】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。まず、
本発明を上記のような鋼成分に限定した理由を述べる。 C:Cは焼入性を向上させ強度を容易に上昇させるのに
有効な元素である。しかし、本発明の目的である、溶接
予熱温度の低下や予熱省略に対しては、最も影響を与え
る元素である。0.08%を超えると溶接HAZが著し
く硬化し、溶接性が低下する。又、0.03%未満であ
ると強度が得られない。従って、C含有量を0.03〜
0.08%とした。
本発明を上記のような鋼成分に限定した理由を述べる。 C:Cは焼入性を向上させ強度を容易に上昇させるのに
有効な元素である。しかし、本発明の目的である、溶接
予熱温度の低下や予熱省略に対しては、最も影響を与え
る元素である。0.08%を超えると溶接HAZが著し
く硬化し、溶接性が低下する。又、0.03%未満であ
ると強度が得られない。従って、C含有量を0.03〜
0.08%とした。
【0011】Si:Siは製鋼上不可避的な元素であ
り、0.02%は鋼中に含まれることになるが、0.5
0%超になると焼戻し脆性が大きくなり、低温靭性を低
下させる。従って、Si含有量を0.02〜0.50%
とした。 Mn:Mnは焼入性を向上させ、強度、靭性確保に有効
であり、このため0.4%以上必要であるが、Mnが高
いとSiと同様に焼戻し脆性が大きくなるので1.5%
以下にする必要がある。従って、Mnの含有量を0.4
〜1.5%とした。
り、0.02%は鋼中に含まれることになるが、0.5
0%超になると焼戻し脆性が大きくなり、低温靭性を低
下させる。従って、Si含有量を0.02〜0.50%
とした。 Mn:Mnは焼入性を向上させ、強度、靭性確保に有効
であり、このため0.4%以上必要であるが、Mnが高
いとSiと同様に焼戻し脆性が大きくなるので1.5%
以下にする必要がある。従って、Mnの含有量を0.4
〜1.5%とした。
【0012】Cu:CuはHAZ靭性を損なわずに強度
を向上させることが可能で本発明の重要な元素である。
低C−B無添加を基本にした本発明鋼においては、焼入
性の低下を補うため、制御圧延後直接焼入れし、その後
の焼戻し処理においてCuの析出硬化による強度確保の
ため0.5%以上必要である。しかし、2.0%超含有
しても強度は飽和し、かえって靭性の低下をきたす。従
って、Cuの含有量を0.5〜2.0%とした。
を向上させることが可能で本発明の重要な元素である。
低C−B無添加を基本にした本発明鋼においては、焼入
性の低下を補うため、制御圧延後直接焼入れし、その後
の焼戻し処理においてCuの析出硬化による強度確保の
ため0.5%以上必要である。しかし、2.0%超含有
しても強度は飽和し、かえって靭性の低下をきたす。従
って、Cuの含有量を0.5〜2.0%とした。
【0013】Ni:Niは鋼の焼入性を高めて強度向上
及び低温靭性を向上させるのに有効な元素である。又、
本発明鋼ではCuによる熱間割れ及び溶接高温割れの防
止にも効果がある。特に本発明においては、Niはベイ
ナイトラスを微細化させ低温靭性向上の面から0.3%
以上必要である。しかし、3.5%を超えると強度の割
には靭性改善の効果が小さく、経済性で不利である。従
って、Niの含有量を0.3〜3.5%とした。
及び低温靭性を向上させるのに有効な元素である。又、
本発明鋼ではCuによる熱間割れ及び溶接高温割れの防
止にも効果がある。特に本発明においては、Niはベイ
ナイトラスを微細化させ低温靭性向上の面から0.3%
以上必要である。しかし、3.5%を超えると強度の割
には靭性改善の効果が小さく、経済性で不利である。従
って、Niの含有量を0.3〜3.5%とした。
【0014】Mo:Moは焼入性向上による強度確保、
及び焼戻し脆性を防止するために有効な元素である。更
に、本発明の圧延時においてMoは未再結晶温度域を拡
大するため、未再結晶温度域で十分な圧下を加えること
によりオーステナイト粒の細粒化が図れる。すなわち、
粗圧延後鋼片表層部を水冷−復熱途中で仕上げ圧延を行
なう工程において、鋼片厚方向に温度差をつけたまま圧
延するため、圧下歪が中心部に集中でき、未再結晶温度
域で十分な圧下を加えることができ、細粒化による高靭
性確保に効果的である。0.20%未満では、未再結晶
温度域の拡大効果が小さく、目標とする強度、靭性が得
られず、又、1.00%を超えると強度向上効果が飽和
し、かえって低温靭性及び溶接性が低下する。従って、
Moの含有量を0.20〜1.00%とした。
及び焼戻し脆性を防止するために有効な元素である。更
に、本発明の圧延時においてMoは未再結晶温度域を拡
大するため、未再結晶温度域で十分な圧下を加えること
によりオーステナイト粒の細粒化が図れる。すなわち、
粗圧延後鋼片表層部を水冷−復熱途中で仕上げ圧延を行
なう工程において、鋼片厚方向に温度差をつけたまま圧
延するため、圧下歪が中心部に集中でき、未再結晶温度
域で十分な圧下を加えることができ、細粒化による高靭
性確保に効果的である。0.20%未満では、未再結晶
温度域の拡大効果が小さく、目標とする強度、靭性が得
られず、又、1.00%を超えると強度向上効果が飽和
し、かえって低温靭性及び溶接性が低下する。従って、
Moの含有量を0.20〜1.00%とした。
【0015】Ti:Tiは鋼片加熱時のオーステナイト
粒及び溶接HAZ組織を細粒化させる効果がある。本発
明では加熱オーステナイト粒の細粒化に加え、焼戻し処
理時においてCu−Ti−Vの複合析出物を生成させ、
高温焼戻し温度まで安定化させ強度と靭性を得るため
で、加熱・圧延時においてTi(CN)を微細析出させ
ることが必要である。0.005%未満ではその効果が
小さく、又、0.035%を超えるとTi(CN)が粗
大化し、母材及び溶接HAZ靭性を低下させる。従っ
て、Tiの含有量を0.005〜0.035%とした。
粒及び溶接HAZ組織を細粒化させる効果がある。本発
明では加熱オーステナイト粒の細粒化に加え、焼戻し処
理時においてCu−Ti−Vの複合析出物を生成させ、
高温焼戻し温度まで安定化させ強度と靭性を得るため
で、加熱・圧延時においてTi(CN)を微細析出させ
ることが必要である。0.005%未満ではその効果が
小さく、又、0.035%を超えるとTi(CN)が粗
大化し、母材及び溶接HAZ靭性を低下させる。従っ
て、Tiの含有量を0.005〜0.035%とした。
【0016】V:Vは焼戻し処理時、炭窒化物を生成し
析出硬化により強度確保に有効である。本発明において
は、特にVはCu及びTiとの複合析出物を生成させ、
それによる強化を高温焼戻し温度まで保持し、高強度と
高靭性を確保するために有効であり、0.005%未満
では目標の強度が得られず、又、0.10%を超えると
靭性が低下する。従って、Vの含有量を0.005〜
0.10%とした。 Al:Alは脱酸のために必要であると同時に鋼片加熱
時に窒化物を形成し、オーステナイト粒の細粒化に有効
である。しかし、0.01%未満ではその効果が小さ
く、又、0.08%を超えるとアルミナ系介在物が増加
し、靭性を阻害する。従って、Alの含有量を0.01
〜0.08%とした。
析出硬化により強度確保に有効である。本発明において
は、特にVはCu及びTiとの複合析出物を生成させ、
それによる強化を高温焼戻し温度まで保持し、高強度と
高靭性を確保するために有効であり、0.005%未満
では目標の強度が得られず、又、0.10%を超えると
靭性が低下する。従って、Vの含有量を0.005〜
0.10%とした。 Al:Alは脱酸のために必要であると同時に鋼片加熱
時に窒化物を形成し、オーステナイト粒の細粒化に有効
である。しかし、0.01%未満ではその効果が小さ
く、又、0.08%を超えるとアルミナ系介在物が増加
し、靭性を阻害する。従って、Alの含有量を0.01
〜0.08%とした。
【0017】B:Bは溶接HAZを硬化させ、溶接割れ
性を低下させるため、本発明においては最も有害な元素
である。特に小入熱(17kJ/cm以下)においては、
0.0004%を超えるとHAZ部を著しく硬化させ
る。従って、その含有量を0.0004%以下とした。 N:NはTiとともにTiNの微細析出による低温靭性
の改善に効果があり、このためには0.0030%以上
の添加が必要である。しかしながら過度の添加は靭性を
低下させるため、上限を0.010%に抑える必要があ
る。従って、Nの含有量を0.0030〜0.010%
とした。
性を低下させるため、本発明においては最も有害な元素
である。特に小入熱(17kJ/cm以下)においては、
0.0004%を超えるとHAZ部を著しく硬化させ
る。従って、その含有量を0.0004%以下とした。 N:NはTiとともにTiNの微細析出による低温靭性
の改善に効果があり、このためには0.0030%以上
の添加が必要である。しかしながら過度の添加は靭性を
低下させるため、上限を0.010%に抑える必要があ
る。従って、Nの含有量を0.0030〜0.010%
とした。
【0018】本発明では上記基本成分の他に(Cr,N
b)及びCaの一種又は二種以上添加する。Cr,Nb
成分は鋼の強度を向上させるという均等的作用をもつも
ので、所望の効果を確保するためにはそれぞれ含有下限
量をCr:0.05%、Nb:0.005%とする必要
がある。しかし、それぞれCr:1.0%、Nb:0.
05%を超えて含有させると、溶接HAZが著しく硬化
し溶接割れ性及びHAZ靭性が低下する。
b)及びCaの一種又は二種以上添加する。Cr,Nb
成分は鋼の強度を向上させるという均等的作用をもつも
ので、所望の効果を確保するためにはそれぞれ含有下限
量をCr:0.05%、Nb:0.005%とする必要
がある。しかし、それぞれCr:1.0%、Nb:0.
05%を超えて含有させると、溶接HAZが著しく硬化
し溶接割れ性及びHAZ靭性が低下する。
【0019】Ca:Caは非金属介在物の球状化に有効
であり、靭性の異方性を小さくする効果がある。又、溶
接残留応力除去焼鈍による割れ防止に効果を発揮する。
しかし、0.005%を超えると介在物増加により靭性
を低下させる。上記の成分の他に不可避的不純物として
P,S等は、本発明の特性である靭性を低下させる有害
な元素であるから、その量は少ない方がよい。好ましく
はP≦0.010%、S≦0.005%である。
であり、靭性の異方性を小さくする効果がある。又、溶
接残留応力除去焼鈍による割れ防止に効果を発揮する。
しかし、0.005%を超えると介在物増加により靭性
を低下させる。上記の成分の他に不可避的不純物として
P,S等は、本発明の特性である靭性を低下させる有害
な元素であるから、その量は少ない方がよい。好ましく
はP≦0.010%、S≦0.005%である。
【0020】次に本発明のもう一つの骨子である製造法
について述べる。上記のような鋼成分組成であってもC
u,V等の析出硬化を十分に発揮させ、更に厚肉材の板
厚内各位置の靭性を高靭化させ、且つ、脆性亀裂伝播停
止特性を向上させるためには、製造法が適切でなければ
ならない。ここで鋼片の加熱、鋼片冷却、復熱・圧延、
冷却及び焼戻し条件の限定理由について説明する。
について述べる。上記のような鋼成分組成であってもC
u,V等の析出硬化を十分に発揮させ、更に厚肉材の板
厚内各位置の靭性を高靭化させ、且つ、脆性亀裂伝播停
止特性を向上させるためには、製造法が適切でなければ
ならない。ここで鋼片の加熱、鋼片冷却、復熱・圧延、
冷却及び焼戻し条件の限定理由について説明する。
【0021】まず、上記成分の鋼片を、1000〜12
00℃に加熱し熱間圧延を行なう。この加熱は、加熱オ
ーステナイト粒を細粒化し、更にこの加熱温度において
Cu,V,Nb等の溶体化を十分に図り、焼戻し処理で
これら元素の析出強化が十分に行なわれる必要がある。
1000℃未満の低い温度ではこの固溶化作用が十分で
なく、焼戻し処理において十分な析出強化が期待できな
い。又、1200℃を超える加熱温度では、必須元素と
して添加されているTi及びNの効能と相まって、圧延
前のオーステナイト粒を細粒かつ整粒に保つことができ
なくなり、その後の圧延において、特に板厚中心部のオ
ーステナイト粒が均一細粒化しにくい。従って、鋼片の
加熱温度を1000〜1200℃とした。
00℃に加熱し熱間圧延を行なう。この加熱は、加熱オ
ーステナイト粒を細粒化し、更にこの加熱温度において
Cu,V,Nb等の溶体化を十分に図り、焼戻し処理で
これら元素の析出強化が十分に行なわれる必要がある。
1000℃未満の低い温度ではこの固溶化作用が十分で
なく、焼戻し処理において十分な析出強化が期待できな
い。又、1200℃を超える加熱温度では、必須元素と
して添加されているTi及びNの効能と相まって、圧延
前のオーステナイト粒を細粒かつ整粒に保つことができ
なくなり、その後の圧延において、特に板厚中心部のオ
ーステナイト粒が均一細粒化しにくい。従って、鋼片の
加熱温度を1000〜1200℃とした。
【0022】次に、このように加熱された鋼片を、鋼片
ままあるいは粗圧延後900℃以上の温度から水冷し、
鋼片両表面から厚みの1/10〜3/10までの表層部
をAr3 点以下に冷却する(図1の(a)に本発明の鋼
片水冷直後の厚み方向の温度曲線を示す)。ここで、鋼
片ままあるいは粗圧延後の鋼片の水冷開始温度を900
℃以上に限定した理由は、その後の復熱圧延において中
心部をより細粒化させるためである。すなわち、900
℃未満の温度では復熱圧延において、表面部と中心部の
温度差が保てなく中心部への圧下歪が減少し中心部が細
粒化しにくく靭性低下の原因となる。
ままあるいは粗圧延後900℃以上の温度から水冷し、
鋼片両表面から厚みの1/10〜3/10までの表層部
をAr3 点以下に冷却する(図1の(a)に本発明の鋼
片水冷直後の厚み方向の温度曲線を示す)。ここで、鋼
片ままあるいは粗圧延後の鋼片の水冷開始温度を900
℃以上に限定した理由は、その後の復熱圧延において中
心部をより細粒化させるためである。すなわち、900
℃未満の温度では復熱圧延において、表面部と中心部の
温度差が保てなく中心部への圧下歪が減少し中心部が細
粒化しにくく靭性低下の原因となる。
【0023】又、鋼片両表面から厚みの1/10〜3/
10までの表層部をAr3 点以下に冷却する理由は、表
層下部をγ→α+γ変態させ、その後、α→γ逆変態急
速復熱と圧延歪とにより表層部が著しく細粒化できる。
しかし、厚み比率が1/10未満の表層部がAr3 点以
下となると、表層下細粒層が薄くなり、低温靭性及び脆
性亀裂伝播停止性能が低下する。又、厚み比率が3/1
0超の表層部がAr3点以下となると、仕上げ圧延にお
いて表層部をAc1 点以上の温度に復熱させることがで
きず、又、板厚中心部の温度も同時に低下し、共に細粒
化が不十分で伸長粗大粒が形成し、靭性低下の原因とな
る。
10までの表層部をAr3 点以下に冷却する理由は、表
層下部をγ→α+γ変態させ、その後、α→γ逆変態急
速復熱と圧延歪とにより表層部が著しく細粒化できる。
しかし、厚み比率が1/10未満の表層部がAr3 点以
下となると、表層下細粒層が薄くなり、低温靭性及び脆
性亀裂伝播停止性能が低下する。又、厚み比率が3/1
0超の表層部がAr3点以下となると、仕上げ圧延にお
いて表層部をAc1 点以上の温度に復熱させることがで
きず、又、板厚中心部の温度も同時に低下し、共に細粒
化が不十分で伸長粗大粒が形成し、靭性低下の原因とな
る。
【0024】次に、このように鋼片表層部がAr3 点以
下に冷却された鋼片を、鋼片表層部がAc1 点以上Ac
3 点以下の温度にまで復熱途中で仕上げ圧延を開始す
る。この理由は、表層部をα+γ二相温度域から復熱し
つつ圧延すると、変形帯形成と急速復熱α→γ逆変態に
よりオーステナイト粒が著しく細粒化されるからであ
る。しかし、Ac1 点未満から圧延開始した場合は、表
層部は復熱後の微細オーステナイト粒の生成が少なく、
混粒となり十分な低温靭性が望めない。又、Ac3点超
に復熱させた後圧延開始した場合は、オーステナイトの
微細化が不十分となり、低温靭性及び脆性亀裂伝播停止
特性が低下する。
下に冷却された鋼片を、鋼片表層部がAc1 点以上Ac
3 点以下の温度にまで復熱途中で仕上げ圧延を開始す
る。この理由は、表層部をα+γ二相温度域から復熱し
つつ圧延すると、変形帯形成と急速復熱α→γ逆変態に
よりオーステナイト粒が著しく細粒化されるからであ
る。しかし、Ac1 点未満から圧延開始した場合は、表
層部は復熱後の微細オーステナイト粒の生成が少なく、
混粒となり十分な低温靭性が望めない。又、Ac3点超
に復熱させた後圧延開始した場合は、オーステナイトの
微細化が不十分となり、低温靭性及び脆性亀裂伝播停止
特性が低下する。
【0025】このような温度域に表層部が復熱された鋼
片を仕上げ厚に対し圧下率50%以上で圧延を行なう。
これは板厚方向の温度差を利用して圧下歪を中心部に集
中させ、大圧下により中心部のオーステナイト粒を細粒
化させる必要からである。更に、表層部においては、加
工歪を導入し、それにより微細オーステナイト粒生成の
ための核サイトを増加させ、復熱によりオーステナイト
粒を微細化させるためである。しかし、圧下率50%未
満では表層部と中心部への加工歪の導入が小さく、オー
ステナイト粒の細粒化が不十分となる。以上の理由か
ら、圧下率を50%以上とした。好ましい圧下率の上限
は95%である。
片を仕上げ厚に対し圧下率50%以上で圧延を行なう。
これは板厚方向の温度差を利用して圧下歪を中心部に集
中させ、大圧下により中心部のオーステナイト粒を細粒
化させる必要からである。更に、表層部においては、加
工歪を導入し、それにより微細オーステナイト粒生成の
ための核サイトを増加させ、復熱によりオーステナイト
粒を微細化させるためである。しかし、圧下率50%未
満では表層部と中心部への加工歪の導入が小さく、オー
ステナイト粒の細粒化が不十分となる。以上の理由か
ら、圧下率を50%以上とした。好ましい圧下率の上限
は95%である。
【0026】このように熱間圧延された鋼は、表層部を
Ac3 点−80℃以上Ac3 点+20℃以下の温度で仕
上げ圧延を終了させる必要がある(図1(b)に本発明
の復熱圧延仕上げ後の鋼板厚み方向の温度曲線を示
す)。この理由は、表層部の焼入れ組織を主として微細
なオーステナイト粒からなるベイナイト組織と微細なフ
ェライト粒との混合組織を生成させ、高靭性化を得るた
めである。又、本発明鋼においては焼入性が低下した本
組織でもCu−Ti−Vの複合析出強化により十分に強
度確保が達成できる。
Ac3 点−80℃以上Ac3 点+20℃以下の温度で仕
上げ圧延を終了させる必要がある(図1(b)に本発明
の復熱圧延仕上げ後の鋼板厚み方向の温度曲線を示
す)。この理由は、表層部の焼入れ組織を主として微細
なオーステナイト粒からなるベイナイト組織と微細なフ
ェライト粒との混合組織を生成させ、高靭性化を得るた
めである。又、本発明鋼においては焼入性が低下した本
組織でもCu−Ti−Vの複合析出強化により十分に強
度確保が達成できる。
【0027】しかし、表層部がAc3 点−80℃未満の
温度では、微細オーステナイト粒の生成が小さく、又、
Ac3 点+20℃超の温度では、生成された微細オース
テナイト粒の成長が起こり、中心部においても細粒化が
不十分となり粗大上部ベイナイト組織が生成され、靭性
低下が生じる。図2は、表1の鋼Hについて、仕上げ圧
延開始までは本発明法の範囲で製造し、その後仕上げ圧
延終了温度を変化させたときの靭性の影響について調査
したものである。本発明範囲内の温度で仕上げ圧延終了
した鋼板は、表層部及び中心部共高靭性が得られる。し
かし、本発明範囲を逸脱した仕上げ圧延終了温度材は、
表層部と中心部の靭性が低下することが分かる。
温度では、微細オーステナイト粒の生成が小さく、又、
Ac3 点+20℃超の温度では、生成された微細オース
テナイト粒の成長が起こり、中心部においても細粒化が
不十分となり粗大上部ベイナイト組織が生成され、靭性
低下が生じる。図2は、表1の鋼Hについて、仕上げ圧
延開始までは本発明法の範囲で製造し、その後仕上げ圧
延終了温度を変化させたときの靭性の影響について調査
したものである。本発明範囲内の温度で仕上げ圧延終了
した鋼板は、表層部及び中心部共高靭性が得られる。し
かし、本発明範囲を逸脱した仕上げ圧延終了温度材は、
表層部と中心部の靭性が低下することが分かる。
【0028】次に、仕上げ圧延された鋼は、その後Ar
3 点以上の温度から水冷する焼入れ処理を行なう必要が
ある。これは、細粒化と加工を受けたオーステナイトを
転位密度の高い微細ベイナイト組織に変態させるためで
ある。しかし、Ar3 点未満の温度からの水冷、あるい
は冷却が空冷の場合は、フェライトの生成及び加工歪の
消失が起こり、強度・靭性低下の原因となる。
3 点以上の温度から水冷する焼入れ処理を行なう必要が
ある。これは、細粒化と加工を受けたオーステナイトを
転位密度の高い微細ベイナイト組織に変態させるためで
ある。しかし、Ar3 点未満の温度からの水冷、あるい
は冷却が空冷の場合は、フェライトの生成及び加工歪の
消失が起こり、強度・靭性低下の原因となる。
【0029】次に熱間圧延後水冷された鋼は、その後5
50℃以上Ac1 点以下の温度で焼戻し処理を行なう必
要がある。この焼戻し処理は、Cu,V(Nb)等の析
出物を十分に析出硬化させ、高強度を得ることと同時に
高靭性を確保するためである。従来のCu析出硬化型鋼
は焼戻し処理温度が500〜530℃で最も高強度が得
られるが、反面、靭性は最も低下する。従って、焼戻し
温度を高くし、靭性を確保する対策を図っているが、強
度が著しく低下し、析出強化が有効に生かされない。本
発明鋼においては、550℃以上の焼戻しでも強度低下
は小さく、且つ強度が高い割には細粒化により著しく高
靭性が得られる。しかし、Ac1 点を超えた温度では強
度が著しく低下する。
50℃以上Ac1 点以下の温度で焼戻し処理を行なう必
要がある。この焼戻し処理は、Cu,V(Nb)等の析
出物を十分に析出硬化させ、高強度を得ることと同時に
高靭性を確保するためである。従来のCu析出硬化型鋼
は焼戻し処理温度が500〜530℃で最も高強度が得
られるが、反面、靭性は最も低下する。従って、焼戻し
温度を高くし、靭性を確保する対策を図っているが、強
度が著しく低下し、析出強化が有効に生かされない。本
発明鋼においては、550℃以上の焼戻しでも強度低下
は小さく、且つ強度が高い割には細粒化により著しく高
靭性が得られる。しかし、Ac1 点を超えた温度では強
度が著しく低下する。
【0030】一方、溶接された鋼は、応力除去焼鈍処理
(SR処理)を施す場合がある。一般的にSR温度は5
80℃前後で行なうが、SR処理による軟化防止の必要
からも本発明鋼は軟化抑制に有効であると言える。この
ような製造工程で得られた鋼板は、板厚中心部が細粒ベ
イナイト組織で、表層部は更に超細粒ベイナイト組織
(一部微細フェライト組織含む)が得られ、板厚内全位
置において高強度、高靭性が得られ、且つ、脆性亀裂伝
播停止性能が著しく改善される。又、溶接HAZ部の硬
化性が著しく減少するため常温溶接が可能である。
(SR処理)を施す場合がある。一般的にSR温度は5
80℃前後で行なうが、SR処理による軟化防止の必要
からも本発明鋼は軟化抑制に有効であると言える。この
ような製造工程で得られた鋼板は、板厚中心部が細粒ベ
イナイト組織で、表層部は更に超細粒ベイナイト組織
(一部微細フェライト組織含む)が得られ、板厚内全位
置において高強度、高靭性が得られ、且つ、脆性亀裂伝
播停止性能が著しく改善される。又、溶接HAZ部の硬
化性が著しく減少するため常温溶接が可能である。
【0031】
【実施例】表1に示す組成を有する鋼を溶製して得た鋼
片を、表2に示す本発明法と比較法の各々の製造条件に
基づいて板厚30〜100mm鋼板を製造した。これらに
ついて母材の機械的性質と温度勾配型ESSO試験によ
る脆性亀裂伝播停止特性、及び溶接性についてはy型拘
束割れ試験(鉄研式)により溶接割れ停止予熱温度を調
査した。
片を、表2に示す本発明法と比較法の各々の製造条件に
基づいて板厚30〜100mm鋼板を製造した。これらに
ついて母材の機械的性質と温度勾配型ESSO試験によ
る脆性亀裂伝播停止特性、及び溶接性についてはy型拘
束割れ試験(鉄研式)により溶接割れ停止予熱温度を調
査した。
【0032】溶接試験における溶接条件は、標準条件の
小入熱17kJ/cmで被覆アーク溶接で行なった。これら
表1の化学組成を有する鋼と、表2で示す製造条件とに
よって得られた母材の板厚内各部の機械的性質と、全厚
による脆性亀裂伝播停止特性のKca試験結果、及びy
型拘束割れ試験の結果を表3に示す。表中の太い下線の
部分は、発明範囲を外れる箇所及び特性が不十分なもの
を示す。
小入熱17kJ/cmで被覆アーク溶接で行なった。これら
表1の化学組成を有する鋼と、表2で示す製造条件とに
よって得られた母材の板厚内各部の機械的性質と、全厚
による脆性亀裂伝播停止特性のKca試験結果、及びy
型拘束割れ試験の結果を表3に示す。表中の太い下線の
部分は、発明範囲を外れる箇所及び特性が不十分なもの
を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】本発明例(本発明鋼と本発明法とを組合わ
せた1−A〜10−J)においては、母材の強度、靭性
は板厚方向差も小さく、且つ十分に高い値である。又、
本発明の特徴であるESSO試験のKca値も十分に高
く、更に、溶接性も溶接割れ停止予熱温度が50℃以下
と著しく低減されている。
せた1−A〜10−J)においては、母材の強度、靭性
は板厚方向差も小さく、且つ十分に高い値である。又、
本発明の特徴であるESSO試験のKca値も十分に高
く、更に、溶接性も溶接割れ停止予熱温度が50℃以下
と著しく低減されている。
【0039】これに対し、製造条件が本発明であっても
本発明により規定された化学組成範囲を逸脱した比較鋼
(K,L,M,N)との組合わせた比較例においては、
例11−KではC量が多く、溶接割れ停止予熱温度も高
く改善されていない。更に、Niが低いため、ベイナイ
トラスが粗くなり特に中心部の強度及び靭性不足であ
る。例12−Lでは、Bが添加されているために、溶接
HAZ硬さが高く、溶接割れ停止予熱温度も高くなって
いる。例13−Mでは、Tiが添加されておらず、又、
N量も低いため、オーステナイト粒の細粒化が不十分と
なり母材靭性及び脆性亀裂伝播停止特性も低下してい
る。例14−Nでは、Cu及びVが添加されておらず、
析出強化が不十分となり強度が低下している。
本発明により規定された化学組成範囲を逸脱した比較鋼
(K,L,M,N)との組合わせた比較例においては、
例11−KではC量が多く、溶接割れ停止予熱温度も高
く改善されていない。更に、Niが低いため、ベイナイ
トラスが粗くなり特に中心部の強度及び靭性不足であ
る。例12−Lでは、Bが添加されているために、溶接
HAZ硬さが高く、溶接割れ停止予熱温度も高くなって
いる。例13−Mでは、Tiが添加されておらず、又、
N量も低いため、オーステナイト粒の細粒化が不十分と
なり母材靭性及び脆性亀裂伝播停止特性も低下してい
る。例14−Nでは、Cu及びVが添加されておらず、
析出強化が不十分となり強度が低下している。
【0040】次に、成分が本発明内であっても製造条件
が本発明法の範囲を逸脱した比較法(15〜20)と組
合わせた比較例においては、例15−Eでは、鋼片加熱
温度が高く、その後の圧延において、特に中心部のオー
ステナイト粒が細粒化されず靭性不足である。例16−
Eでは、鋼片の水冷開始温度が低いため、その後の復熱
圧延において表面部と中心部との温度差が保てなく中心
部への圧下歪が減少し、細粒化しにくく、靭性が低下し
ている。例17−Eでは、鋼片両表面から厚み比率4/
10までの表層部をAr3 点以下に冷却したため、仕上
げ圧延において表層部をAc1 点以上に復熱させること
ができず、又、中心部の温度も低下し、共に細粒化が不
十分となり靭性が低下し、脆性亀裂伝播停止特性も低下
している。
が本発明法の範囲を逸脱した比較法(15〜20)と組
合わせた比較例においては、例15−Eでは、鋼片加熱
温度が高く、その後の圧延において、特に中心部のオー
ステナイト粒が細粒化されず靭性不足である。例16−
Eでは、鋼片の水冷開始温度が低いため、その後の復熱
圧延において表面部と中心部との温度差が保てなく中心
部への圧下歪が減少し、細粒化しにくく、靭性が低下し
ている。例17−Eでは、鋼片両表面から厚み比率4/
10までの表層部をAr3 点以下に冷却したため、仕上
げ圧延において表層部をAc1 点以上に復熱させること
ができず、又、中心部の温度も低下し、共に細粒化が不
十分となり靭性が低下し、脆性亀裂伝播停止特性も低下
している。
【0041】例18−Hでは、仕上げ圧延における圧下
率が小さいため、表層部と中心部への加工歪の導入が小
さく、オーステナイト粒の細粒化が不十分となり靭性が
低下し、脆性亀裂伝播停止特性も低下している。例19
−Hでは、表層部の仕上げ温度がAc3 点+20℃より
高いため、表層部の微細オーステナイト粒が成長し、更
に中心部においてもオーステナイト粒が粗大化し、共に
粗大上部ベイナイトが生成し、靭性が低下している。従
って、脆性亀裂伝播停止性能も低下している。20−H
では、圧延仕上げ後、水冷処理の焼入れ温度がAr3 点
より低かったためフェライトの生成が増加し、更に加工
歪が消失し、強度が低下している。
率が小さいため、表層部と中心部への加工歪の導入が小
さく、オーステナイト粒の細粒化が不十分となり靭性が
低下し、脆性亀裂伝播停止特性も低下している。例19
−Hでは、表層部の仕上げ温度がAc3 点+20℃より
高いため、表層部の微細オーステナイト粒が成長し、更
に中心部においてもオーステナイト粒が粗大化し、共に
粗大上部ベイナイトが生成し、靭性が低下している。従
って、脆性亀裂伝播停止性能も低下している。20−H
では、圧延仕上げ後、水冷処理の焼入れ温度がAr3 点
より低かったためフェライトの生成が増加し、更に加工
歪が消失し、強度が低下している。
【0042】
【発明の効果】本発明の成分範囲及び製造法により、溶
接性及び低温靭性、更に脆性亀裂伝播停止性能の優れた
780MPa 級高張力鋼の製造が可能となった。その結
果、現場溶接施工能率や安全性が著しく向上した。
接性及び低温靭性、更に脆性亀裂伝播停止性能の優れた
780MPa 級高張力鋼の製造が可能となった。その結
果、現場溶接施工能率や安全性が著しく向上した。
【図1】本発明の鋼片水冷直後の厚み方向の温度曲線
(a)及び復熱圧延仕上げ後の鋼板厚み方向の温度曲線
(b)を示す図表である。
(a)及び復熱圧延仕上げ後の鋼板厚み方向の温度曲線
(b)を示す図表である。
【図2】鋼Hについて板厚内各位置の靭性と鋼板表面部
の仕上げ圧延終了温度との関係を示す図表である。
の仕上げ圧延終了温度との関係を示す図表である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で C :0.03〜0.08%、 Si:0.02〜0.50%、 Mn:0.4〜1.5%、 Cu:0.5〜2.0%、 Ni:0.3〜3.5%、 Mo:0.20〜1.00%、 Ti:0.005〜0.035%、 V :0.005〜0.10%、 Al:0.01〜0.08%、 B :0.0004%以下、 N :0.0030〜0.010%、 残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼片を1000〜
1200℃に加熱して、鋼片ままあるいは粗圧延後90
0℃以上の温度から水冷し、鋼片両表面から厚みの1/
10〜3/10までの表層部をAr3 点以下に冷却した
後、冷却を停止し、引き続き、鋼片表層部がAc1 点以
上Ac3 点以下の温度にまで復熱途中で仕上げ圧延を開
始し、仕上げ厚に対し圧下率50%以上で圧延し、且
つ、表層部をAc3 点−80℃以上Ac3 点+20℃以
下の温度で仕上げ圧延を終了させ、Ar3 点以上の温度
から水冷する焼入れ処理を行ない、続いて550℃以上
Ac1 点以下の温度で焼戻し処理することを特徴とする
溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の
製造方法。 - 【請求項2】 重量%で Cr:0.05〜1.0%、 Nb:0.005〜0.05% からなる強度改善元素群、又は介在物形態制御作用のあ
る Ca:0.0005〜0.0050% の一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項
1記載の溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高
張力鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33469792A JPH06179908A (ja) | 1992-12-15 | 1992-12-15 | 溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33469792A JPH06179908A (ja) | 1992-12-15 | 1992-12-15 | 溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06179908A true JPH06179908A (ja) | 1994-06-28 |
Family
ID=18280211
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33469792A Withdrawn JPH06179908A (ja) | 1992-12-15 | 1992-12-15 | 溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06179908A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109563599A (zh) * | 2016-08-08 | 2019-04-02 | 株式会社Posco | 耐脆性裂纹扩展性优异的超厚钢材及其制造方法 |
CN114395691A (zh) * | 2021-12-16 | 2022-04-26 | 南阳汉冶特钢有限公司 | 一种水电工程用低焊接裂纹敏感性止裂钢sx780cf的生产方法 |
-
1992
- 1992-12-15 JP JP33469792A patent/JPH06179908A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109563599A (zh) * | 2016-08-08 | 2019-04-02 | 株式会社Posco | 耐脆性裂纹扩展性优异的超厚钢材及其制造方法 |
CN109563599B (zh) * | 2016-08-08 | 2021-01-26 | 株式会社Posco | 耐脆性裂纹扩展性优异的超厚钢材及其制造方法 |
CN114395691A (zh) * | 2021-12-16 | 2022-04-26 | 南阳汉冶特钢有限公司 | 一种水电工程用低焊接裂纹敏感性止裂钢sx780cf的生产方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7411072B2 (ja) | 低温衝撃靭性に優れた高強度極厚物鋼材及びその製造方法 | |
JP4379085B2 (ja) | 高強度高靭性厚鋼板の製造方法 | |
JPH08295982A (ja) | 低温靱性に優れた厚鋼板およびその製造方法 | |
JPH10306316A (ja) | 低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼材の製造方法 | |
JP2913426B2 (ja) | 低温靱性の優れた厚肉高張力鋼板の製造法 | |
JPH08176659A (ja) | 低降伏比高張力鋼の製造方法 | |
JP3247908B2 (ja) | 延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP4096839B2 (ja) | 超大入熱溶接熱影響部靱性に優れた低降伏比高張力厚鋼板の製造方法 | |
JPH0794687B2 (ja) | 高溶接性、耐応力腐食割れ性および低温靭性にすぐれたht80鋼の製造方法 | |
JP2776174B2 (ja) | 高張力・高靱性微細ベイナイト鋼の製造法 | |
JPH09256037A (ja) | 応力除去焼鈍処理用の厚肉高張力鋼板の製造方法 | |
JPH06128631A (ja) | 低温靱性の優れた高マンガン超高張力鋼の製造方法 | |
JP4038166B2 (ja) | 耐震性と溶接性に優れた鋼板およびその製造方法 | |
JP7265008B2 (ja) | 水素誘起割れ抵抗性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法 | |
JP7197699B2 (ja) | 水素誘起割れ抵抗性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法 | |
JP4250113B2 (ja) | 耐震性と溶接性に優れた鋼板の製造方法 | |
JP2532176B2 (ja) | 溶接性および脆性亀裂伝播停止特性の優れた高張力鋼の製造方法 | |
JP3327065B2 (ja) | 脆性亀裂伝播停止特性に優れた調質型高張力鋼板の製造方法 | |
JPH059570A (ja) | 高溶接性高強度鋼の製造法 | |
JPH06179908A (ja) | 溶接性と脆性亀裂伝播停止性能に優れた厚肉高張力鋼の製造方法 | |
JPH05148544A (ja) | 板厚方向の硬さ分布が均一な高強度高靭性鋼板の製造法 | |
JP2652538B2 (ja) | 溶接性及び低温靭性にすぐれる高強度鋼の製造方法 | |
JP3255004B2 (ja) | 靱性およびアレスト性に優れる溶接用高張力鋼材およびその製造方法 | |
JPH06145787A (ja) | 溶接性に優れた高張力鋼の製造方法 | |
JPH08225883A (ja) | 強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20000307 |