JPH0617030Y2 - スクロ−ル型圧縮機における潤滑油供給機構 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案はスクロール型圧縮機における潤滑油の供給機
構、特に可動スクロールの軸受け部に対する潤滑油の供
給機構に関する。

従来の技術 一般にスクロール型の圧縮機にあっては、渦巻き部を有
する一対のスクロールをその渦巻部を咬合させて設け、
その一方のスクロール（固定スクロール）をハウジング
に固定する一方、もう一方のスクロール（可動スクロー
ル）をドライブシャフトの一端に形成するクランク軸部
にラジアルベアリングを介して遊転自在に軸架させ、同
スクロール（可動スクロール）をその回転（自転）が規
制された状態にて揺動回転（公転）させる事によって、
両渦巻部間に形成される密閉空間を外周部より中心部に
向けて移動させ乍らその容積を縮減させる作用、即ち冷
媒ガスの圧縮作用が得られる様に設けられる。

そしてこの様なスクロール型の圧縮機において、クラン
ク軸部に軸架する可動スクロールのその軸受け部（ラジ
アルベアリング）を潤滑する方法としては従来下記の様
な方法が提案されている。

第３図に表わす様に電動機軸ａに偏心給油孔ｂを穿設
すると共に同電動機軸ａの下端部を潤滑油溜りｃに浸漬
させて設け、同電動機軸ａの回転により得られる遠心力
の作用を介して電動機軸受に対して給油を行なう方法。
（実開昭５４−１２０７１０号） 第４図に表わす様にバランスウエイトｄにその下端部
をオイル溜りと連通させて偏心孔ｅを穿設し、同バラン
スウエイトｄより得られる遠心力の作用を介して軸受部
に対して給油を行なう方法。（特開昭５６−９６０１
号） 第５図と第６図に表わす様にクランク軸部ｆに軸架す
る可動スクロールｇのその軸受け部（ラジアルベアリン
グ）ｈを吸入室ｉと連通させて設けると共に同軸受け部
（ラジアルベアリング）ｈを導通孔ｊを介して作動室ｋ
と連通させて設け、吸入室ｉと作動室ｋ間に生ずる圧力
差を介して吸入室ｉ内の冷媒ガスを軸受部に導く方法。
（特開昭５７−１７９３０２号） 第７図に表わす様にドライブシャフト１の軸受け部ｍ
とクランク軸部ｎにおける可動スクロールｏの軸受け部
ｐ間を同油通路ｑを介して連通させて設けるに同油通路
ｑはドライブシャフト１の中心線に対して偏心させて設
け、同ドライブシャフト１の遠心力作用によりドライブ
シャフト１の軸受け部ｍを潤滑したオイルを更に可動ス
クロールｏの軸受け部ｐに供給する方法。（特公昭５８
−４９７１５号） しかしてこれら従来方法にあっては、そのいずれの方法
においても細孔及び長孔加工を施さなければならず、そ
の生産性が損なわれることに加えて、この様な細孔及び
長孔はその口径及び長さに比例して圧力損失が増大する
結果、潤滑オイルの供給をスムーズに行うことが出来な
い点に問題点を有する。

考案が解決しようとする問題点 本考案は上記の様な問題点を解決するためにその改善を
試みたものであって、クランク軸部における可動スクロ
ールの軸受け部に対する潤滑油の供給を簡単な構造によ
り確実に行なう事が出来る様にする点にその解決すべき
問題点を有する。そして上記問題点を解決するためのそ
の具体的手段と作用は次の通りである。

問題点を解決するための手段 固定スクロールに対して可動スクロールを咬合させて設
けるに、同可動スクロールの鏡板背面中心部にボスを設
け、同ボスをドライブシャフトの一端に形成するクラン
ク軸部に対してラジアルベアリングを介して軸架させる
と共に、可動スクロールの鏡板には縦方向に延在させて
ガイド凹溝を、又、ハウジング側に固定する仕切り盤に
は水平方向に延在させてガイド凹溝を相互に対面させて
設け、両ガイド凹溝には方形リング状に形成する自転防
止ブロックを遊転自在に嵌挿させる事により、同可動ス
クロールをその自転が規制された状態にて揺動回転する
事が出来る様に設けられるスクロール型圧縮機におい
て、 吸入室の上端近傍部に可動スクロールの鏡板と対面さ
せて吸入口を開口させる。

鏡板の背面には同部に凹設するガイド凹溝の底部に沿
って供給溝を刻設するに、同供給溝はその一端を吸入口
と対峙させて鉛直方向に向けて下向きに刻設する。

ボスには上記供給溝の下端部と対面させて供給孔の上
端部を開口させると共に、同供給孔は上記供給溝の延在
方向と同一延長線上に沿って下向きに延設し、その先端
部をクランク軸部のラジアルベアリングに臨ませる。

作用 圧縮機が高速運転されている状態においては、冷媒ガ
スがその慣性力によって供給溝及び供給孔を経て軸受け
部に供給され、同冷媒ガス中に含有するオイルによって
同軸受け部を潤滑する作用が得られる。

圧縮機が低速運転されている状態においては、冷媒ガ
スより分離して吸入管路内をその内壁面を伝って滴下し
たオイルがその重力により引き続き供給溝及び供給孔を
滴下して軸受け部に供給され、同オイルによって同軸受
け部を潤滑する作用が得られる。

実施例 以下に本考案の具体的な実施例を例示の図面について説
明する。

第１図と第２図の両図面において、１は圧縮機の外殻を
構成するハウジングを示す。同ハウジング１はフロント
ハウジング２とリヤハウジング３により構成され、フロ
ントハウジング２は前壁部２ａと、同前壁部２ａの外周
縁を囲繞する周壁部２ｂを存して有底円筒状に形成され
る。そしてリヤハウジング３も又後壁部３ａと、同後壁
部３ａの外周縁を囲繞する周壁部３ｂを存して有底円筒
状に形成される。即ち、ハウジング１は有底円筒状に形
成する両ハウジング２、３の開口部をボルト１′の締め
付けを介して一体に接合する事により構成される。そし
て両ハウジング２、３の接合部にはボルト４′の締め付
けを介して仕切り盤４が固着され、同仕切り盤４とフロ
ントハウジング２の前壁部２ａ間には吸入室５と後述す
るバランスウエイト６の回転室７が形成される。又、同
フロントハウジング２には前壁部２ａと仕切り盤４間に
亘ってドライブシャフト８が横架され、上記回転室７と
対応する部分にはバランスウエイト６が軸架される。そ
して又、同ドライブシャフト８の一端にはクランク軸部
９が延設され、その先端部は仕切り盤４を貫通して後述
する圧縮作用室１２に臨む如く設けられる。そして同ク
ランク軸部９には可動スクロール１０が、その回転（自
転）を規制された状態にて揺動回転（公転）する事が可
能な如く遊転自在に軸架される。即ち、仕切り盤４には
可動スクロール１０の自転防止用のガイド凹溝２３が水
平方向（後述するガイド凹溝２２とクロスする方向）に
延在させて刻設される一方、可動スクロール１０の鏡板
１０ａには同じく可動スクロール１０の自転防止用のガ
イド凹溝２２が縦方向（上記ガイド凹溝２３とクロスす
る方向）に延在させて刻設される。そして両ガイド凹溝
２２，２３には方形リング状に形成する自転防止ブロッ
ク２４が上下左右方向に摺動自在に遊嵌される。（可動
スクロール１０については後述する。） 一方、リヤハウジング３には固定スクロール１１がボル
ト１１′の締め付けを介して固着され、リヤハウジング
３内はこの固定スクロール１１の鏡板１１ａによって二
室に分割される。即ち固定スクロール１１と仕切り盤４
間には圧縮作用室１２が、又固定スクロール１１とリヤ
ハウジング３の後壁部３ａ間には吐出室１３が設けら
れ、同圧縮作用室１２には固定スクロール１１と可動ス
クロール１０が相互に咬合させて設けられる。即ち、固
定スクロール１１は鏡板１１ａより渦巻状に形成するス
クロール片１１ｂをフロントハウジング２方向に向けて
突設させる事により形成され、鏡板１１ａがリヤハウジ
ング３に固定される一方、可動スクロール１０は同じく
鏡板１０ａより渦巻状に形成するスクロール片１０ｂを
リヤハウジング３の後壁部３ａ方向に向けて突設する事
により形成される。そして両スクロール片１０ｂ，１１
ｂは相互に咬み合う如く設けるに両スクロール片１０
ｂ、１１ｂは少なくとも二箇所以上において摺接する状
態、即ち両スクロール片１０ｂ，１１ｂ間に常時少なく
とも一つ以上の圧縮空間１４を形成する状態にある様に
設けられる。又、同鏡板１０ａにはその背面にボス１０
ｃが突設され、前述の様にラジアルベアリング１５を介
してクランク軸部９に対して遊転自在に嵌挿される。

しかしてリヤハウジング３周壁部３ｂには吸入室５に連
通させて吸入口１６を設けるに同吸入口１６は上記可動
スクロール１０の鏡板１０ａと相対応する位置に開口す
る如く設けられる。そして鏡板１０ａの背面には上記吸
入口１６の開口部と対面させて供給溝１７を刻設するに
同供給溝１７は外周縁部よりボス１０ｃに至る如く半径
方向に延在させて設けられる。更に具体的には同供給溝
１７はガイド凹溝２２の底部に同ガイド凹溝２２と平行
する方向（縦方向）に延在させて刻設される。又、ボス
１０ｃには同供給溝１７に連続させて供給孔１８が穿設
されその先端部はラジアルベアリング１５に臨む如く設
けられる。

一方、吐出室１３にはリヤハウジング３の周壁部３ｂに
吐出口１９が開口されると共に固定スクロール１１の鏡
板１１ａにはその中心部に位置して吐出孔２０が開口さ
れ、両スクロール片１０ａ，１１ａによって形成される
渦巻の中心部に対して吐出弁２１の開閉を介して連通す
る如く設けられる。

次にその作用について説明する。

ドライブシャフト８の一端に設けられる電磁クラッチ
（図示省略）の接続操作を介してエンジンの駆動力を同
ドライブシャフト８に伝える事によりクランク軸部９に
軸架する可動スクロール１０がその回転（自転）を規制
された状態にて揺動回転（公転）する状態が得られる。
即ち可動スクロール１０のスクロール片１０ｂが固定ス
クロール１１のスクロール片１１ｂに対して摺接し、同
摺接部を渦巻の中心方向に移動させ乍ら揺動回転する状
態が得られる。そしてこの様に可動スクロール１０のス
クロール片１０ｂが固定スクロール１１のスクロール片
１１ｂに摺接し乍ら揺動回転する事により、両スクロー
ル片１０ｂ，１１ｂ間に形成される圧縮空間１４がその
位置を中心部方向に移動させ乍らその容積を次第に縮少
する作用、即ち冷媒ガスの圧縮作用が得られる。そして
この様に圧縮作用が得られ、渦巻の中心部迄圧送された
冷媒ガスはその圧縮圧力を介して吐出弁２１を押し開い
て吐出室１３に送り込まれると共に同吐出室１３におい
て同冷媒ガス中に混入するオイルが分離された後、吐出
口１９より冷凍回路に向けて送り出される。そしてこの
様に冷凍回路に向けて送り出された冷媒ガスは同冷凍回
路内を巡回した後再び吸入口１６より吸入室５内に送り
込まれるのであるが、この場合において圧縮機が高速運
転されている状態にあっては、冷媒ガスは速い速度で吸
入室５内に送り込まれる事により同冷媒ガス（オイル）
の一部をその慣性力により供給溝１７、供給孔１８を経
てラジアルベアリング１５部分に送り込む作用、即ち冷
媒ガス中に混入するオイルによって可動スクロール１０
の軸受け部を潤滑する作用が得られる。又、圧縮機が低
速運転されている状態にあっては、冷凍回路において冷
媒ガスより分離して吸入口付近における管路の内壁面に
付着すると共に同内壁面を伝って吸入口１６迄流れ落ち
たオイルが、同吸入口１６より供給溝１７、供給孔１８
を経てラジアルベアリング１５（軸受け部）に滴下する
作用、即ち、同分離オイルによって可動スクロール１０
の軸受け部を潤滑する作用が得られる。

考案の効果 本考案は以上の様に構成されるものであって、上記の様
に可動スクロールの鏡板部分と対応させて吸入口を開口
する一方、鏡板の背面には上記吸入口と対面させて供給
溝を刻設すると共にボスには同供給溝に連続させて供給
孔を穿設し、高速運転時においては冷媒ガスをその慣性
力を介して供給溝、供給孔を経てラジアルベアリング部
分に送り込む事によって、又低速運転時にあっては冷媒
ガスより分離したオイルの滴下を介して供給溝、供給孔
を経てラジアルベアリング部分に送り込む事によって可
動スクロールの軸受部を潤滑する様にした事により、簡
単な構造により確実に潤滑を行なう事が出来るに至っ
た。特に従来構造と比較して加工性、生産性を高める事
が出来ると共にコストを低減させる事が出来るに至っ
た。そして又、本考案にあっては可動スクロールの背面
に形成するガイド凹溝の底部に供給溝を刻設し、同供給
溝によって吸入口とボスに穿設する供給孔とをつなぐ様
にした事により、仕切り盤と可動スクロールの鏡板に刻
設するガイド凹溝と、同ガイド凹溝に遊嵌する自転防止
ブロックにより構成される可動スクロールの自転防止機
構に対して何等の支障を与える事なく上記吸入口と供給
孔間を最短距離にてつなぐ事が出来るに至った。加えて
本考案にあっては上記の様に吸入口とラジアルベアリン
グ間を供給溝と供給孔によってつなぎ、供給孔の長さを
可及的に短くする様にした事により、同供給孔内を通過
する冷媒ガスの圧力損失を最小限にくい止める事が可能
となり、その結果、可動スクロールの軸受部に対する潤
滑効果を従来の供給孔のみによってオイルを送り込む方
法と比較して著しく向上させる事が出来るに至った。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るスクロール型圧縮機の全体を表わ
す断面図、第２図は可動スクロールの拡大斜視図であ
る。第３図、第４図、第５図と第６図、そして第７図は
夫々従来の潤滑構造を表わす図面である。 １…ハウジング、２…フロントハウジング、３…リヤハ
ウジング、４…仕切り盤、５…吸入室、６…バランスウ
エイト、７…回転室、８…ドライブシャフト、９…クラ
ンク軸部、１０…可動スクロール、１０ａ…鏡板、１０
ｂ…スクロール片、１１…固定スクロール、１１ａ…鏡
板、１１ｂ…スクロール片、１２…圧縮作用室、１３…
吐出室、１４…圧縮空間、１５…ラジアルベアリング、
１６…吸入口、１７…供給溝、１８…供給孔、１９…吐
出口、２０…吐出孔、２１…吐出弁、２２…ガイド凹
溝、２３…ガイド凹溝、２４…自転防止ブロック。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 道端 孝 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (56)参考文献 実開 昭59−24992（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】固定スクロールに対して可動スクロールを
   咬合させて設けるに同可動スクロールの鏡板背面中心部
   にボスを設け、同ボスをドライブシャフトの一端に形成
   するクランク軸部に対してラジアルベアリングを介して
   軸架させると共に、可動スクロールの鏡板には縦方向に
   延在させてガイド凹溝を、又、ハウジング側に固定する
   仕切り盤には水平方向に延在させてガイド凹溝を相互に
   対面させて設け、両ガイド凹溝には方形リング状に形成
   する自転防止ブロックを遊転自在に嵌挿させる事によ
   り、同可動スクロールをその自転が規制された状態にて
   揺動回転する事が出来る様に設けられるスクロール型圧
   縮機において、吸入室の上端近傍部に可動スクロールの
   鏡板と対面させて吸入口を開口させる一方、同鏡板の背
   面には同部に凹設するガイド凹溝の底部に沿って供給溝
   を刻設するに、同供給溝はその一端を吸入口と対峙させ
   て鉛直方向に向けて下向きに刻設し、ボスには上記供給
   溝の下端部と対面させて供給孔の上端部を開口させると
   共に、同供給孔は上記供給溝の延在方向と同一延長線上
   に沿って下向きに延設し、その先端部をラジアルベアリ
   ングに臨ませて成るスクロール型圧縮機における潤滑油
   供給機構。