JPH06159962A - ループ型ヒートパイプの蒸発管の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 蒸発管の内面側に液戻り管を螺旋状に一定間
隔で容易に取り付けることができるループ型ヒートパイ
プの液戻り管の製造方法を提供する。 【構成】 撚り合せ体１７の形成工程により、蒸発管１
２の中心部に蒸気流路を形成するスペーサ１５の外面側
に向かって、液戻り管１３と該液戻り管１３間の隙間を
埋める通気性を有した介装材１４とを同時に送り出し、
液戻り管１３と介装材１４とをスペーサ１５の外面側に
螺旋状に撚り合せて、その外径が蒸発管１２の内径とほ
ぼ等しい撚り合せ体１７を形成する。そして、蒸発管１
２への挿入工程により、この撚り合せ体１７を蒸発管１
２内に挿入すれば、液戻り管１３は螺旋状に一定間隔で
容易に蒸発管１２内に取り付けられる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、複数の液戻り管を内
側に取付けるループ型ヒートパイプの蒸発管の製造方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】周知のようにループ型ヒートパイプは、
その蒸気流路と液流路とが分離されている。例えば図４
に示すループ型ヒートパイプ１は、蒸発管２と図示しな
い凝縮部とを、全体として循環路を形成するよう接続し
た構造となっており、その蒸発管２内には、外周に断熱
被覆３ａが設けられた６本の液戻り管３が、蒸発管２の
内周面に設けられたウィック４の内側に沿って円周方向
にほぼ等間隔に配置されるとともに、中心に配置された
コイルスプリング型のスペーサ５によって外側に押圧さ
れた状態で蒸発管２に取り付けられている。また図示し
てないが、各液戻り管３の下端は閉塞されているととも
に、各液戻り管３の下部側には蒸発管２の内周面に向け
たノズル孔が外周の断熱被覆３ａを貫通して多数形成さ
れている。

【０００３】そして、６本の液戻り管３は、その上端が
蒸発管２の上部側に形成された凝縮部の下端に配設さ
れ、この凝縮部の内周面に結露した作動液を集めて流下
させ、蒸発管の下部側に形成された蒸発部において、こ
の作動液をウィック４が設けられた蒸発管２の内周面に
向かってノズル孔から噴出している。そして、蒸発部に
入力される熱により作動液が蒸発し、その蒸気がこの熱
を蒸発潜熱の形で凝縮部へ熱輸送する。

【０００４】さて、上記ループ型ヒートパイプ１におい
ては、複数の液戻り管３が蒸発管２の内周面に沿ってほ
ぼ等間隔で配設されており、各液戻り管３はスペーサ５
によって蒸発管２の内周面に押圧された状態で、この蒸
発管２の軸方向に沿って直線状に取り付けられている。
したがって、蒸発管２が垂直に設置されると、蒸発部の
隣接する液戻り管３同士の中間部の蒸発管２内面側には
液戻り管３から噴出される作動液が到達しにくいため、
このようなループ型ヒートパイプ１においては、ウィッ
ク４は欠かせないものとなり、このウィック４が充分に
その能力を発揮できなければ、その熱輸送効率が下がっ
てしまうこととなる。

【０００５】一方、液戻り管３を蒸発管２の内面に螺旋
状に取り付けられれば、蒸発管２を垂直に設置した場合
でも、液戻り管３から噴出される作動液を、重力の作用
により蒸発部の蒸発管２内面側に充分に供給することが
でき、ウィック４が無くてもこのループ型ヒートパイプ
１の熱輸送効率を充分に高く維持させることができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、複数の
液戻り管３を螺旋状に形成しつつ、これ等を蒸発管２の
内面に互いにほぼ均等な間隔で取り付けていくのは容易
でない。すなわち、複数の液戻り管３を、ピッチが一定
で、かつ蒸発管２の内面に沿うような螺旋形状に形成す
る必要があり、かつ、螺旋状に形成されたこの複数の液
戻り管３を互いに均等な間隔を保たせた状態で蒸発管２
内に位置決めする必要があるからである。

【０００７】この発明は、上記の事情に鑑みてなされた
もので、内面側に液戻り管を螺旋状に一定間隔で容易に
取り付けることができるループ型ヒートパイプの蒸発管
の製造方法を提供することを目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、ヒートパイプの蒸発管内に作動液を
噴出するノズル孔が多数形成されている複数の液戻り管
を、蒸発管の中心部に軸線方向に沿った蒸気流路が生じ
るよう、この蒸発管の内面に接近させて所定の間隔で螺
旋状に取り付けるループ型ヒートパイプの蒸発管の製造
方法において、前記蒸発管の中心部に蒸気流路を形成さ
せるスペーサの外面側に向かって、液戻り管と、通気性
を有するかあるいは液戻り管との間で蒸発管の半径方向
に向かって通路が形成される介装材とを同時に送り出
し、この介装材がスペーサ外面上の液戻り管間の空間を
埋めるよう、この液戻り管と介装材とをスペーサ外面側
に螺旋状に巻き付けることにより、その外径が蒸発管の
内径とほぼ等しい外径の撚り合せ体を形成する撚り合せ
体の形成工程と、この撚り合せ体を管内に挿入していく
挿入工程とを有することを特徴としている。

【０００９】また、前記撚り合せ体の形成工程の後に、
この撚り合せ体の外面に固定用の線材またはテープ材を
螺旋状に巻いていく撚り合せ体の一体化工程を行なうよ
うにしてもよい。

【００１０】

【作用】撚り合せ体を形成する工程により、スペーサの
外面側に液戻り管と介装材とを同時に送り出し、この液
戻り管と介装材とをスペーサ外面側に撚り合せつつ巻き
付けて、これらで撚り合せ体を形成する。この場合、介
装材がスペーサ外面上の液戻り管間の隙間を埋めるよう
液戻り管と撚り合わされるため、液戻り管は互いに一定
の間隔をおいて、蒸発管内面に沿うよう、かつ所定のピ
ッチでスペーサ周りに螺旋状に巻き付けられる。したが
って、挿入工程により、この撚り合せ体を蒸発管内に挿
入すれば、液戻り管は所定の状態で螺旋状に蒸発管内面
側に取り付けられることとなる。

【００１１】なお、スペーサは蒸発管内でその中心部に
蒸気流路を形成し、かつ介装材は通気性を有するか、ま
たは液戻り管との間で蒸発管の半径方向に通じる通路を
形成するため、このループ型ヒートパイプの機能が損な
われることはない。

【００１２】

【実施例】つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説
明する。図２はこの発明の対象となる大容量ループ型ヒ
ートパイプの蒸発管内の構造を示している。このループ
型ヒートパイプ１１は、上下方向に向かって配設される
蒸発管１２と図示しない凝縮部とが、全体として循環路
を形成するように接続される構造となっており、蒸発管
１２の内面には例えば６本の液戻り管１３が、この蒸発
管１２の内周面に接触した状態で螺旋状に等分配置され
ているとともに、互いに隣接する液戻り管１３，１３間
の空間には断面円弧形で帯状の介装材１４が同様に螺旋
状に配置されている。

【００１３】この帯状の介装材１４は連通気泡で発泡さ
れることによって通気性を確保した耐熱性の発泡樹脂製
で、液戻り管１３の直径とほぼ同じ厚みの帯状に形成さ
れ、隣接する液戻り管１３，１３間の空間を埋めるよう
に配置されている。そして、これ等の液戻り管１３およ
び介装材１４は、その中心部に蒸気流路が生じるように
配置されているコイルスプリング型のスペーサ１５によ
って外側に押圧された状態で蒸発管１２側の内面に取り
付けられている。なお、１６はスペーサ１５に液戻り管
１３および介装材１４を固定するための細い線材であ
る。

【００１４】また図示してないが、蒸発管１２の下部の
蒸発部内に配設された６本の液戻り管１３には、その下
端と閉塞した状態で発管１２の内面側に多数のノズル孔
が形成されておりこの液戻り管１３はノズル孔を介し
て、蒸発管１２の内面に向けて作動液を噴出できるよう
になっている。なお、各液戻り管１３のそれぞれの上端
は、蒸発管１２の上部に形成された凝縮部の下端に取り
付けられている。

【００１５】したがって、蒸発部において各液戻り管１
３のノズル孔から蒸発管１２の内面に向かって噴出され
た作動液は、直接蒸発管１２の内面に到達するか、また
は介装材１４中の空隙を介して蒸発管１２の内面に到達
し、重力の作用によって蒸発管１２の内面に沿いつつ下
方に移動する。この場合、液戻り管１３は蒸発管１２内
面側に螺旋状に取り付けられているため、作動液の下方
への移動により蒸発部における蒸発管１２の内面はその
全面がウィックが無くても作動液によって湿潤され、蒸
発部外方に生じている熱を、この作動液の蒸発によって
吸収する。なお、介装材１４は、その空隙中に作動液の
保持が可能であるため、ウィックとしての作用も有して
いる。

【００１６】そして、蒸発した作動液は介装材１４の空
隙を通ってスペーサ１５のある蒸発管１２の中心部に集
まり、この蒸発管１２中を上昇して凝縮部に達した後、
ここで放熱して液化され、液戻り管１３内を下降して蒸
発部に達する。なお、介装材１４は断熱効果も有するた
め、液戻り管１３の外面に断熱材は不要となる。

【００１７】つぎに、液戻り管１３を、介装材１４を介
して、互いに一定の隙間をおいて蒸発管１２の内面に螺
旋状に取り付けていく液戻り管１３の取り付け方法につ
いて説明する。この製造方法は撚り合せ体１７の形成工
程と、撚り合せ体１７の一体化工程と、蒸発管１２への
撚り合せ体１７の挿入工程とから構成される。なお、撚
り合せ体１７とはスペーサ１５の外面側に１本または複
数本の液戻り管１３とこの液戻り管１３，１３間の隙間
を埋める介装材１４とが、螺旋状に撚り合されて巻き付
けられたものを言い、例えば図２において蒸発管１２等
を除いた、液戻り管１３、介装材１４およびスペーサ１
５から構成されるものを言う。

【００１８】撚り合せ体１７の形成工程は図１の左側に
示されている。撚り合せ体１７はケーブル用の導体を形
成する場合に用いられると同様な撚り線機２１により、
前方に移動するスペーサ１５の外面側に液戻り管１３と
介装材１４とを隙間なく撚り合せることにより形成され
る。すなわち、複数のボビン２３が回転自在に取り付け
られる回転ケージ２２のパイプ２２ａ中に長いスペーサ
１５を矢印方向に移動させるとともに、各ボビン２３に
巻き取られている液戻り管１３および介装材１４の先端
をパイプ２２ａの前端に取り付けられた配線板２４を介
してスペーサ１５に位置決め固定した状態で、スペーサ
１５周りに回転ケージ２２および配線板２４等を回転さ
せることにより、ボビン２３を介してスペーサ１５の外
面に向かって送り出された液戻り管１３および介装材１
４は、スペーサ１５の外面側に撚り合わされつつ巻き付
けられて撚り合せ体１７が形成される。

【００１９】この場合、液戻り管１３は一定方向にノズ
ル孔を有していて蒸発管１２に対する向きが決まってお
り、かつ介装材１４も蒸発管１２に対する向きが決まっ
ているため、各ボビン２３は回転ケージ２２の回転方向
に対しては自ら自転することなく回転ケージ２２ととも
に公転するのみである。したがって、液戻り管１３およ
び介装材１４には全体としてひねりが形成される。

【００２０】なお、液戻り管１３のピッチ（スペーサ１
５の同一稜線上における同一液戻り管１３間の最短中心
間距離）は液戻り管１３の本数およびその間に配設され
る介装材１４の大きさや本数によって決定される。

【００２１】撚り合せ体１７の一体化工程は図１の中央
に示されている。撚り合せ体１７の液戻り管１３や介装
材１４のスペーサ１５への固定は、撚り線機２１と同様
な巻き線機３１により、線材１６を撚り合せ体１７の外
面に螺旋状に巻き付けることによってなされる。すなわ
ち、ボビン３３が取り付けられた回転ケージ３２のパイ
プ３２ａ中に長い撚り合せ体１７を矢印方向に移動させ
るとともに、ボビン３３に巻き取られている線材１６の
先端を配線板３４を介して撚り合せ体１７に連結し、撚
り合せ体１７周りに回転ケージ３２および配線板３４等
を回転させることにより、線材１６は撚り合せ体１７の
外面に所定ピッチで螺旋状に巻き付けられ、液戻り管１
３および介装材１４はスペーサ１５を束ねるように固定
され、この撚り合せ体１７は一体化される。そして、線
材１６で一体化された撚り合せ体１７は必要によりドラ
ム（図示せず）に巻き取られる。

【００２２】ここで、巻き線機３１の回転ケージ３２等
の回転方向と撚り線機２１の回転ケージ２２等の回転方
向は逆となっているため、線材１６は液戻り管１３等の
螺旋方向とは逆向きに巻き付けられてタガの役割りを果
す。なお、上記線材１６の代りに薄い小幅なテープを使
用してもよいのは勿論である。

【００２３】線材１６によって互いに一体化された撚り
合せ体１７は、図１の右側に示される蒸発管１２への挿
入工程によって蒸発管１２の内面に取り付けられる。撚
り合せ体１７はその外径が蒸発管１２の内径よりやや大
きいため、そのままの状態では蒸発管１２内に挿入しに
くいが、撚り合せ体１７に張力をかければ、スペーサ１
５がやや伸びて小径となり、撚り合せ体１７もややその
径が小さくなる。したがって、この撚り合せ体１７をや
や引き伸ばした状態で蒸発管１２に挿入し、その後この
撚り合せ体１７の引き伸しを止めれば、撚り合せ体１７
はスペーサ１５の弾圧力で蒸発管１２の内面に加圧され
た状態で取り付けられる。

【００２４】なお、撚り合せ体１７の外径が蒸発管１２
の内径より小さい場合でも、撚り合せ体１７を蒸発管１
２内に挿入後、この撚り合せ体１７の一部を何らかの形
で蒸発管１２に固定するようにすればよい。

【００２５】以上のように、撚り合せ体１７の形成工程
により、複数の液戻り管１３と複数の介装材１４とをス
ペーサ１５周りに撚り合せるようにしているため、液戻
り管１３は蒸発管１２の内面に沿うとともに、所定ピッ
チの螺旋状に容易に形成され、かつこれらが介装材１４
を介して所定隙間を有するように容易に位置決めされ
る。そして撚り合せ体１７の一体化工程と撚り合せ体１
７の蒸発管１２への挿入工程を介して、螺旋状の複数の
液戻り管１３が互いに所定の隙間を有した状態で蒸発管
１２内に容易に取り付けられる。また、スペーサ１５周
りに液戻り管１３と介装材１４とをしっかり撚り合せる
ことができ、その撚り戻し等が生じない状態であれば、
撚り合せ体１７の一体化工程は設けなくてもよい。

【００２６】なお、このループ型ヒートパイプ１１の場
合、その蒸発部にウィックは不要であるが、必要により
取り付けてもよい。この場合、ウィックが取り付けられ
た蒸発管１２に撚り合せ体１７を挿入するか、または撚
り合せ体１７の外面にウィックを取り付けた後、これ等
を蒸発管１２内に挿入すればよい。

【００２７】また、通気性を有しないものであっても、
図３で示されるよう、液戻り管１３との間に蒸発管１２
の径方向に蒸気流路１８ａが形成される形状の介装材１
８であれば、前記介装材１４に替えて用いることができ
る。

【００２８】

【発明の効果】以上の説明から明らかなようにこの発明
の製造方法によれば、撚り合せ体を形成する工程によ
り、液戻り管は、介装材を介して容易に、互いに一定の
隙間をおいて、蒸発管内面に沿うよう、かつ所定のピッ
チで螺旋状にスペーサ外面側に巻き付けられるため、挿
入工程により撚り合せ体を蒸発管内に挿入することによ
り、液戻り管は所定の状態で螺旋状に蒸発管内面側に容
易に取り付けられる。なお、この場合、介装材やスペー
サはこのループ型ヒートパイプの機能を損じることはな
い。

【００２９】また、撚り合せ体を線材等で螺旋状に巻く
一体化工程を設ければ、撚り戻し等が生じない状態で、
この撚り合せ体を挿入して蒸発管を製造することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】液戻り管の蒸発管内面への取り付け方法を説明
する図である。

【図２】ループ型ヒートパイプの蒸発管内部の斜視断面
図である。

【図３】蒸発管内に取り付けられる別の介装材等を示す
図である。

【図４】従来のループ型ヒートパイプの蒸発管内部を示
す断面図である。

【符号の説明】

１２ 蒸発管 １３ 液戻り管 １４ 介装材 １５ スペーサ １６ 線材 １７ 撚り合せ体 １８ 介装材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白石 正夫 茨城県つくば市並木一丁目２番地 工業技 術院機械技術研究所内 (72)発明者 望月 正孝 東京都江東区木場一丁目５番１号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 青山 文明 東京都江東区木場一丁目５番１号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 大橋 一彦 東京都江東区木場一丁目５番１号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 片岡 吉男 東京都江東区木場一丁目５番１号 株式会 社フジクラ内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ヒートパイプの蒸発管内に作動液を噴出
   するノズル孔が多数形成されている複数の液戻り管を、
   蒸発管の中心部に軸線方向に沿った蒸気流路が生じるよ
   う、この蒸発管の内面に接近させて所定の間隔で螺旋状
   に取り付けるループ型ヒートパイプの蒸発管の製造方法
   において、 前記蒸発管の中心部に蒸気流路を形成させるスペーサの
   外面側に向かって、液戻り管と、通気性を有するかある
   いは液戻り管との間で蒸発管の半径方向に向かって通路
   が形成される介装材とを同時に送り出し、この介装材が
   スペーサ外面上の液戻り管間の空間を埋めるよう、この
   液戻り管と介装材とをスペーサ外面側に螺旋状に巻き付
   けることにより、その外径が蒸発管の内径とほぼ等しい
   外径の撚り合せ体を形成する撚り合せ体の形成工程と、
   この撚り合せ体を管内に挿入していく挿入工程とを有す
   ることを特徴とするループ型ヒートパイプの蒸発管の製
   造方法。
2. 【請求項２】 前記撚り合せ体の形成工程の後に、この
   撚り合せ体の外面に固定用の線材またはテープ材を螺旋
   状に巻いていく撚り合せ体の一体化工程を有することを
   特徴とする請求項１記載のループ型ヒートパイプの蒸発
   管の製造方法。