JPH0614921Y2 - 連続鋳造用鋳片引抜き装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案はタンディッシュとモールドが密閉接合された
連続鋳造設備に使用される鋳片引抜き装置に関する。

〔従来技術〕

通常の連続鋳造設備では、モールドと溶融金属（単に溶
鋼という）の固着を防止し、熱伝導を促進して凝固を早
めるためにモールドを振動させる手法が採られる。

更に、モールドと溶鋼との間には潤滑材を入れて摩擦を
減らし、凝固シェルが破損して所謂ブレークアウトが生
じるのを防止している。

ところが、タンディッシュとモールドが密閉接合された
連続鋳造設備、例えば、水平連続鋳造設備では、タンデ
ッシュと所定の断面形状をもったモールドが供給ノズル
を介して固定的に接続されるところから、モールド後方
に配備した引抜き装置による鋳片の引抜きを間欠的に行
って、前記モールドに対する振動を付与するのと同様の
効果を得ている。

タンデッシュから供給ノズルを通じてモールド内に流出
する溶鋼は、モールド内ではその内部に未凝固の溶鋼を
残しており、漸次全体が凝固していくもので、モールド
内における冷却速度や引抜き速度等、所謂鋳造条件を最
適に選んで良好な鋳片を得るためには、鋳片を間欠的に
引抜く際の引抜き駆動制御は極めて重要とされる。

第１図は従来のタンディッシュとモールドが密閉接合さ
れた水平連続鋳造設備の要部を示す概略構成図である。

１はタンデッシュ、２は供給ノズル３を介してタンデッ
シュ１に固定的に接続したモールドで、タンデッシュ１
から供給ノズル３を通じてモールド２内に流入した溶鋼
は、モールド２内にて冷却されて外側から漸次凝固して
鋳片Ａとしてモールド２外に引き抜かれる。

４はモールド２の後方に配備され、鋳片Ａを引抜く鋳片
引抜き装置で、上下一対のロール4a,4bよりなり、その
下位ロール4aを駆動機構に連結して間欠回転をなすよう
にし、上位ロール4bは適宜の圧下機構に連結したこの上
下ロール4a,4b間に鋳片Ａを挟持してこれを引抜き方向
に駆動するものである。

尚、図中５はモールド２とノズル３との接続部に装着し
たブレークリングである。

上記構成において、鋳片Ａの間欠的な引抜きは、一般
に、引抜き−停止−押戻し（鋳片はタンデッシュ側へ押
戻される）−停止−を１サイクルの引抜きパターンで行
われる。この引抜きパターンにおいて、モールド２内に
流入した溶鋼は既に凝固したシェルとブレークリング５
との間で圧縮されるようになる。

従って、この作用を繰り返し行わしめモールド内での凝
固シェルと冷却壁との接触圧を充分保って凝固シェルの
成長を進め、引抜き時に発生する引張応力を極力小さく
して凝固シェルの破損を防ぐようにしている。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記するように、鋳片の引抜きが、引抜き−停止−押戻
し−停止を１サイクルとする間欠引抜きとする水平連続
鋳造設備の引抜き装置には次のようなことが要求され
る。

(1)高サイクル、高引抜き精度が鋳片の表面品質を左右
するので、駆動系の中に機械的、電気的なガタがないこ
とが望まれる。

(2)押戻し時の鋳片は、セラミック製のブレークリング
をストッパーとして位置決めされることと、鋳造鋼種、
鋳造速度、鋳造温度等の操業条件により鋳片に要求され
る押戻し量と力（力によって押戻し量が決まる）が異な
る。

(3)鋳造ストランドの多い水平連続鋳造設備では、スト
ランド間隔を小さくすることは、タンディッシュが小さ
くなり、耐火物コストが安くなるメリットがある。

これ等の要求からして、引抜き駆動源の制御装置にはサ
ーボ系を使用し、引抜きと押戻しには別々の駆動源を持
つことが有利であり、また、引抜き装置は幅の狭いもの
がコンパクトに納まって有利とされる。

従来より、一組のロール対を、引抜き押戻しに兼用して
用いる連続鋳造用鋳片の引抜き装置として各種装置が提
案されているが、水平連続鋳造の引抜きサイクルは、一
般に、１２０〜２００サイクル／分で運転され、電磁ク
ラッチの作動時間が問題となり、例えば、特開昭５８−
１２２１５５号、特開昭５４−７５４２９号、特開昭５
４−２４２２４号、特開昭５７−９７８５５号に見られ
るように、クラッチに電磁クラッチ式の入・切の形式を
採用したものは、ＯＮ−ＯＦＦの作動時間、ＯＮしてか
らの定格伝達トルクに達成するまでの時間がおおよそ
０．１秒を必要とするため、高サイクル、高精度引抜き
装置としては適さない。

また、水平連続鋳造では、引抜きと押戻しを間欠的に行
うに当たって、特に、押戻しは押戻し量（位置精度）と
セラミック製のブレークリングと凝固シェルとの衝撃か
ら押戻し力のコントロールが必要であり、この点から引
抜き用とは別の駆動源を持っていることが有利とされる
が、一般には、位置精度の確かな大容量のサーボモータ
がなく、例えば、特開昭５８−１２２１５５号、特開昭
５７−１８７１４６号、特開昭５４−７５４２９号、特
開昭５４−２４２２４号、特開昭５７−９７８５５号に
見られるように、引抜き装置にはモータとピンチローラ
ー間に歯車式の減速機が使用されるため、この歯車には
必ずバックラッシュがあって機械系のガタを大きくし、
これが引抜き装置の位置精度を低下させており、種々の
操業条件に対応することが困難で、高精度引抜き駆動に
おいて減速機の使用は好ましくない。

上記のように鋳片の間欠的な引抜きにおいては、瞬間的
な引抜き速度の上昇、並びに瞬間的な停止、および押戻
しが繰り返し求められるが、従来の引抜き装置のよう
に、駆動源に減速機等を連結した構成からすると、減速
機内のバックラッシュによるガタや、減速機や鋳片の大
きな慣性により、大型の鋳片の高サイクルの間欠的な引
抜きになると適確な駆動制御が出来なくなる。

この考案は上記の点に鑑みなされたものであって、間欠
的な引抜きを実施するに当たって鋳片の引抜き方向への
慣性による動きを相殺するようにして引抜き駆動を行
い、高サイクルの引抜き時においても常に鋳造条件を最
適にする鋳片の引抜き駆動制御を可能とした連続鋳造用
鋳片引抜き装置を提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するためのこの考案の要旨とするとこ
ろは、タンデッシュとモールドがブレークリングを介し
て密閉接合された連続鋳造装置において、モールド後方
に配置され、鋳片を挟みこれを引抜き−停止−押戻−停
止を１サイクルとする間欠引抜きを行う装置であって、
ロール軸の一端を、一方向クラッチを介装して揺動腕を
介して油圧の圧力および油量を調整可能にし、ロール軸
芯に垂直で、かつ、該揺動腕にほぼ垂直方向に配設した
引抜き駆動用油圧シリンダーに直結し、ロール軸の他端
を押戻し駆動用の油圧モーターに直結した駆動ロール
と、該駆動ロールに対向して設置され、駆動ロールの摩
擦力を得るために鋳片にロールを押しつける油圧シリン
ダー等からなる圧下機構に連結した圧下ロールとを対に
してロールユニットを構成し、該ロールユニットの少な
くとも二ユニットを配置してロッドにより同時作動可能
に連結したことを特徴とする連続鋳造用鋳片引抜き装置
にある。

〔作用〕

ダミーバを用いて常法によりつくられ、モールド後方に
おいて駆動ロールと圧下ロールとの間に挟まれる鋳片
は、油圧シリンダーの作動によって揺動腕が往復回動す
る度に、間欠的に引抜き方向に駆動力が作用する。

一方、ロール軸には常に油圧モータによって鋳片を押戻
す方向に駆動力が作用しており、この押戻し駆動力は予
め、引抜き駆動力に比べて小さく設定してあるところか
ら、引抜き駆動力が鋳片に作用する間は、押戻し駆動力
に抗して鋳片は引抜かれる。

そして、引抜き駆動力の作用が停止した瞬間に鋳片は慣
性による動きがなくなって停止し、次の引抜き駆動力が
作用する迄の間、押戻し駆動力により押戻し方向に押圧
力を作用させる。

〔実施例〕

以下、この考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第２図(a),(b)はこの考案の基本構成図、第３図はこの
考案の鋳片引抜き装置の全体側面図、第４図はロールユ
ニットの正面図である。

図において、６は駆動ロールで、この駆動ロール６のロ
ール軸７の一端を、一方向クラッチ８を介装して揺動腕
９を介して油圧の圧力および油量を調整可能にし、ロー
ル軸芯に垂直で、かつ、該揺動腕９にほぼ垂直方向に配
設した引抜き駆動用油圧シリンダー10に直結し、ロール
軸７の他端は押戻し駆動用の油圧モーター11に直結す
る。

12は上記駆動ロール６に対向して設置した圧下ロール
で、前記駆動ロール６の摩擦力を得るために鋳片Ａにロ
ールを押しつける油圧シリンダー等からなる圧下機構13
に連結している。

上記する駆動ロール６と圧下ロール12とを対にしてロー
ルユニット14を構成し、第３図に示すようにロールユニ
ット14の少なくとも二ユニットを配置してロッド15によ
り同時作動可能に連結する。

上記実施例において、一方向クラッチ８としてはラチェ
ット機構を使用している。これはロール軸７に回転自在
に取着した爪車16と、ロール端面に軸着されてばね17の
付勢下に爪車16に係合する爪18と、爪車16に連設した揺
動腕９とよりなり、油圧シリンダー10のロッド19と揺動
腕９の先端をピン20を以て連結し、揺動腕９の往復回動
によってその一方の回動時のみ爪18が爪車16に係合して
駆動ロール６を鋳片Ａの引抜き方向に回動させるもの
で、引抜き駆動力としてロール軸７には、揺動腕９の長
さと、シリンダーロッド19を介して揺動腕９先端に働く
油圧力から求まる回転トルクが加えられる。

尚、図中21は油圧シリンダー10の同一作動量に対して駆
動ロール６の回転角が変えられるように、シリンダーロ
ッド19と揺動腕９との連結点を変更するために揺動腕９
に設けたピン孔である。

上記実施例において、駆動ロール６に対して押戻し駆動
力を加えるための、ロール軸７と押戻し駆動用の油圧モ
ーター11との連結には、それぞれの軸7,22にスプロケッ
ト23,24を取着して伝動チェン25を掛け渡したもので、
押戻し駆動力としてロール軸７には、油圧モータ11の発
生トルクと、ロール軸７のチェーンスプロケット23径と
モータ軸22のチェーンスプロケット24径の比から求まる
回転トルクが加えられる。

然して、ロール軸７に加えられる引抜き駆動力は常に押
戻し駆動力を上回るように予め設定されるもので、この
ために油圧シリンダー10に供給される圧油の圧力及び油
量を調整可能にしている。

また、ロール軸７と油圧モーター11との回転伝達系適所
にクラッチ機構を組合せて必要に応じて引抜き駆動力を
切り離し可能に構成すると、押戻し駆動力にかえて油圧
モーター11によるダミーバの挿入、引抜時等に便利であ
る。

〔効果〕

この考案は、ロール軸の一端を、一方向クラッチを介装
して揺動腕を介して油圧の圧力および油量を調整可能に
し、鋳造方向に配設した引抜き駆動用油圧シリンダーに
連結し、ロール軸の他端を押戻し駆動用の油圧モーター
に直結した駆動ロールと、該駆動ロールに対向して設置
され、駆動ロールの摩擦力を得るために鋳片にロールを
押しつける油圧シリンダー等からなる圧下機構に連結し
た圧下ロールとを対とするロールユニットを、少なくと
も二ユニットを配置してロッドにより同時作動可能に連
結してなり、常に引抜き駆動力が押戻し駆動力を上回る
ように予め設定して鋳片の引抜きを行うようにしたか
ら、鋳片に対する間欠的に掛かる引抜き駆動力が停止す
る瞬間には鋳片の慣性による動きがなくなって鋳片を停
止させ、この後に次の引抜き駆動力が作用する迄の間は
鋳片に対して押戻し方向に押圧力が加えられてモールド
内における溶鋼の冷却速度や引抜き速度等、所謂鋳造条
件を最適にする引抜き駆動制御が出来、また、鋳片とダ
ミーバ間、若しくはダミーバの途中に歪ゲージ等を用い
て押戻し時の引抜き方向の負荷を検出し、更に、ロール
軸にパルス発生器等を設けて押戻し変位量を検出して、
押戻し力と押戻し変位量の両方から押戻し駆動用油圧モ
ータを制御してやれば、モールド内の凝固シェルの形成
は更に良好なものとなり、更に、ロールユニットを、少
なくとも二ユニット以上を配置してロッドにより同時作
動可能に連結したことによって、鋳片に対する引抜き駆
動力の作用点が分散させられてロール１箇所当たりの駆
動のための圧下力を小さくすることが出来て圧下力によ
る鋳片の内部割れ、表面の圧下マーク等をなくすること
が出来、あらゆる鋼種に対応して鋳造条件を最適にする
引抜き駆動制御が慣性等に左右されず広汎に変更出来、
高サイクル作動を実現して能率向上が図られ、更に、シ
リンダーを使用しているため、装置をコンパクトに出来
る等、その実用的効果は多大な技術考案である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の水平連鋳設備の要部を示す概略構成図、
第２図(a),(b)はこの考案の基本構成図、第３図はこの
考案の鋳片引抜き装置の概略構成図、第４図はロールユ
ニットの正面図である。 １……タンディッシュ、２……モールド、３……供給ノ
ズル、４……引抜き装置、５……ブレークリング、６…
…駆動ロール、７……ロール軸、８……一方向クラッ
チ、９……揺動腕、１０……引抜き駆動用油圧シリンダ
ー、１１……押戻し駆動用の油圧モーター、12……圧下
ロール、13……圧下機構、14……ロールユニット、15…
…ロッド、16……爪車、17……ばね、18……爪、19……
シリンダーロッド、20……ピン、21……ピン孔、22……
モータ軸、23,24……スプロケット、25……伝動チェ
ン。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 金子 英夫 兵庫県神戸市中央区東川崎町３丁目１番１ 号 川崎重工業株式会社神戸工場内 (56)参考文献 特開 昭60−68148（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】タンデッシュとモールドがブレークリング
   を介して密閉接合された連続鋳造装置において、モール
   ド後方に配置され、鋳片を挟みこれを引抜き−停止−押
   戻し−停止を１サイクルとする間欠引抜きを行う装置で
   あって、ロール軸の一端を、一方向クラッチを介装して
   揺動腕を介して油圧の圧力および油量を調整可能にし、
   ロール軸芯に垂直で、かつ、該揺動腕にほぼ垂直方向に
   配設した引抜き駆動用油圧シリンダーに直結し、ロール
   軸の他端を、引抜き駆動力に比べて小さく設定した押戻
   し駆動力を発生させる押戻し駆動用の油圧モーターに直
   結した駆動ロールと、該駆動ロールに対向して設置さ
   れ、駆動ロールの摩擦力を得るために鋳片にロールを押
   しつける油圧シリンダー等からなる圧下機構に連結した
   圧下ロールとを対にしてロールユニットを構成し、該ロ
   ールユニットの少なくとも二ユニットを配置してロッド
   により同時作動可能に連結したことを特徴とする連続鋳
   造用鋳片引抜き装置。