JPH06148703A - 非線形光学薄膜 - Google Patents

非線形光学薄膜

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JPH06148703A
JPH06148703A JP31647992A JP31647992A JPH06148703A JP H06148703 A JPH06148703 A JP H06148703A JP 31647992 A JP31647992 A JP 31647992A JP 31647992 A JP31647992 A JP 31647992A JP H06148703 A JPH06148703 A JP H06148703A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 強誘電性または高誘電性のマトリックス中
に、金属微粒子を好ましくは同時スパッタリング法で分
散させた薄膜を成膜する。この後、急昇温して急冷する
フラッシュアニールの工程を含む熱処理を行なって薄膜
を得る。このときの急冷速度を103 ℃/秒以上とす
る。 【効果】 短時間にマトリックスを微結晶化することに
より、分散された金属微粒子が均一分散し、金属微粒子
およびマトリックスの結晶性が向上し、粒度が揃う。こ
の結果χ(3) 値が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非線形光学材料用の微
粒子分散複合薄膜に関し、特に強誘電性材料や高誘電性
材料のマトリックス中に金属の微粒子を分散析出させた
非線形光学材料の薄膜に関する。この微粒子分散複合薄
膜は、光スイッチや光波長変換素子等、光情報分野にお
いて用いられる大きな非線形光学効果を有する材料とし
て利用される。
【0002】
【従来の技術】半導体超微粒子を分散させたガラス等は
高い光学的非線形性を示すことから、その開発が進めら
れている。また、金属微粒子を分散させたガラスやコロ
イド溶液も比較的大きな非線形性を示すことが報告され
ている。これらのうち、微粒子を分散させるマトリック
スとしては、一般に石英ガラス、多成分ガラス、高分子
材料等が用いられている。
【0003】金微粒子を含有したガラスは従来から‘金
赤ガラス’と呼ばれ、赤色ガラスの一つとしてよく知ら
れた材料である。このガラスは0.01wt% 程度の金を
含有させて一旦溶融し、その後、熱処理を施して発色さ
せて造られる。
【0004】報告されている金赤ガラスのχ(3) (3次
の非線形感受率)値は10-11esu程度であり、この値は
必ずしも大きくないが、低い値となる理由はガラス中の
金の体積分率が10-5程度の低濃度分散であるためと考
えられる。従って、非線形感受率を高めるためには金微
粒子を高めることが一つの方法であると考えられるが、
溶融法で作製する場合、溶解度の制限により高濃度化に
は限界がある。
【0005】この問題を解決するために、高濃度化と組
成制御が比較的容易であるスパッタリング法やイオン注
入法についての提案が、次世代産業基盤技術・第2回光
電子材料シンポジウム予稿集p139−148,199
1や、特開平3−294829号公報になされている。
前者はスパッタリングやイオン注入法でSiO2 ガラス
マトリックス中にAu微粒子を分散させたものであり、
後者はSiO2 ガラス薄膜と島状成長させたAu、A
g、Cuの金属微粒子とを交互に積層したものである。
このような金属微粒子分散ガラスは、分散させた金属微
粒子の表面プラズモンの励起と量子サイズ効果で大きな
非線形性が発現し、高いχ(3) 値が得られるものである
と考えられている。
【0006】また、前者の予稿集には、成膜後、700
〜1000℃の温度で熱処理することによって、χ(3)
値が向上することが記載されている。これは、熱処理に
よりAu粒子が生成し成長するためと考えられている。
ただし、例えば前者の予稿集でも、χ(3) が最大でも1
×10-7esu 程度であり、さらにχ(3) を向上させるこ
とが望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、金属
微粒子分散系において、短時間にマトリックスを微結晶
化することにより、金属微粒子を均一分散し、金属微粒
子およびマトリックスの結晶性を向上させ、これらの粒
度を揃え、この結果χ(3) 値を向上させた非線形光学薄
膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(7)の本発明により達成される。 (1)強誘電性または高誘電性のマトリックス中に金属
の微粒子を少なくとも1種分散させた薄膜を成膜した
後、これを昇温し、103 ℃/秒以上の急冷速度で急冷
した非線形光学薄膜。 (2)前記熱処理を活性エネルギー線を照射することに
より行なう上記(1)の非線形光学薄膜。 (3)前記マトリックスは酸化チタンまたは酸化チタン
を含む複合酸化物である上記(1)または(2)の非線
形光学薄膜。 (4)前記マトリックス中のグレインの平均粒径が、4
0〜1000nmの範囲にある上記(1)ないし(3)の
いずれかの非線形光学薄膜。 (5)前記微粒子の平均粒径が1〜100nmである上記
(1)ないし(4)のいずれかの非線形光学薄膜。 (6)前記微粒子の含有量が1〜80vol%である上記
(1)ないし(5)のいずれかの非線形光学薄膜。 (7)前記成膜を同時スパッタリング法によって行なう
上記(1)ないし(6)のいずれかの非線形光学薄膜。
【0009】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0010】本発明の非線形光学薄膜は、強誘電性また
は高誘電性のマトリックス中に金属微粒子を分散させた
微粒子分散複合薄膜であり、成膜後に所定の熱処理を施
して得られるものである。
【0011】この場合の熱処理は、急速に昇温したのち
急冷する工程を含むのであり、急冷の際の急冷速度が1
3 ℃/秒以上のフラッシュアニールを含むものであ
る。
【0012】成膜直後のアモルファス状態のマトリック
スは、上記のフラッシュアニールにより微結晶化する。
この状態変化は、マトリックスの液相ないし固相での再
結晶により起きるものであると考えられる。この際、マ
トリックスの結晶化に伴い、金属微粒子はマトリックス
粒子の三重点の位置に移動してくると考えられる。この
移動に従い、薄膜中における金属微粒子の分散が均一化
し、金属微粒子の結晶性が向上し、金属微粒子、マトリ
ックス粒子ともに、粒度の揃ったものとなる。
【0013】従って、金属微粒子が3次元的に閉じ込め
られた結果、例えば金属微粒子の表面プラズモンの励起
と量子サイズ効果とで発現する非線形性が向上し、縮退
四波混合法により測定した非線形感受率χ(3) は、後述
のように、10-7esu をこえる高いものとなる。また、
非線形性の向上に寄与すると考えられる、金属微粒子が
誘電率の高いマトリックス中に分散されて生じる何らか
の相互作用もこのχ(3 ) の向上に寄与する。この結果、
光双安定性とpsオーダーの光緩和時間をもつ非線形光学
材料が実現し、光スイッチやTHG等の光波長変換素子
に適用できる。
【0014】また、上記の熱処理条件を変えることによ
り、プラズマ共鳴吸収ピーク位置をシフトさせることが
でき、使用レーザーの選択の巾が広がる。
【0015】なお、次世代産業基盤技術・第2回光電子
材料シンポジウム予稿集p139−148,1991に
は、700〜1000℃の温度で熱処理し、χ(3) を向
上させることが記載されている。
【0016】しかし、上記予稿集における熱処理は、本
発明のようなフラッシュアニールではなく、熱処理時間
は1時間〜10時間程度の長いものであり、昇温、冷却
速度とともに明らかに103 ℃/秒未満であると考えら
れる。従って、本発明の熱処理方法は従来行なわれてい
ない。
【0017】実際、後記実施例に示されるように、上記
予稿集におけるような熱処理方法では、本発明の効果は
得られない。また、上記予稿集でマトリックスとして用
いているSiO2 ガラスはアモルファス状態のままで結
晶化を伴わず、フラッシュアニールによるχ(3) 値向上
の効果は得られない。このことから、本発明の効果は、
マトリックスの結晶化によってはじめて得られると考え
られる。
【0018】なお、マトリックスが結晶化することは、
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により確認する
ことができる。すなわち、成膜後においてマトリックス
がアモルファス状態にあるのが観察されるのに対し、フ
ラッシュアニール後にはマトリックスのグレインが観察
される。また、金属微粒子がマトリックスグレインの三
重点に位置することも観察される。さらに、金属微粒子
の結晶性が向上することはX線回折(XRD)の結果か
ら確認することができる。すなわち、そのスペクトルに
おいて、成膜後の金属のブロードなピークが、熱処理後
にはシャープなものとなる。
【0019】本発明のフラッシュアニールは、前述のよ
うに、急冷速度を103 ℃/秒以上、として行なうもの
である。急冷速度を103 ℃/秒以上とするのは、急冷
速度が103 ℃/秒未満となると、マトリックスの結晶
化が不均一になり、生成した微結晶の大きさにバラツキ
が生じてしまう。また、急冷速度の上限には特に制限は
ないが、一般に107 ℃/秒程度である。なお、フラッ
シュアニールにおける昇温速度は、通常、上記の急冷速
度と同じである。
【0020】フラッシュアニールは、上記の急冷速度を
実現できる方法であれば、いずれによってもよいが、通
常は薄膜の急速な昇温および急冷を可能とする活性エネ
ルギー線を用いて行なう。
【0021】活性エネルギー線源としては、実用上、レ
ーザーを用いることが好ましい。また、ハロゲン集光
炉、赤外集光炉、電子線等を用いることもできる。この
なかで、好ましいとされるレーザーを用いるとき、照射
により昇温が生じるものであれば制限はなく、レーザー
の発振波長領域には限定されない。例えば、固体レーザ
ー、色素レーザー、エキシマレーザー、自由電子レーザ
ーなどのいずれであってもよく、パルス照射によっても
よく、CWレーザー(continuous wave laser )を照射
してもよい。
【0022】例えば、エキシマレーザーのパルス照射に
よるときの照射条件は1ショット当り10mJ〜1000
mJとし、1〜10ショット照射程度とすることができ
る。この際、1ショット開始時から2ショット開始時ま
でを昇温したのち急冷する工程の1サイクルとすると、
この時間は10ナノ秒(ns)〜10ミリ秒(ms)、好ましく
は10ナノ秒(ns)〜100ナノ秒(ns)とすればよい。
【0023】本発明においては、短時間に高い熱エネル
ギーを付与して熱処理するところに特徴があり、他のレ
ーザー等を用いても、昇温したのち急冷する工程の1サ
イクルの時間は10ns〜1秒、好ましくは10ns〜10
0msとすることが好ましい。従って、本発明による熱処
理時間は、用いるレーザー等によっても異なるが、上記
の1サイクルの時間が1秒以内、好ましくは10ns〜1
00msとすることが好ましい。
【0024】本発明では、昇温したのち急冷する工程を
1回のみとしても、前述のエキシマレーザーのパルス照
射のように複数回繰り返してもよい。複数回とするとき
は、用いるレーザー、被照射体等に応じて回数を適宜選
択することができる。また、本発明によるフラッシュア
ニールと前記予稿集に記載の熱処理と組み合わせて併用
してもよい。このように、適宜組み合わせた熱処理とし
てもプラズマ共鳴吸収ピーク位置のシフトが可能とな
る。
【0025】本発明におけるフラッシュアニールでの薄
膜の最高温度は1000℃以上と考えられる。また、上
限は通常107 ℃程度と考えられる。
【0026】また、熱処理雰囲気には特に制限はない
が、通常は大気中とする。
【0027】本発明の微粒子分散複合薄膜は、前述のよ
うに、金属の微粒子を含有する。用いる金属としては、
Au(共鳴吸収ピーク位置約520nm)、Ag(同約3
70nm)、Cu(同約630nm)を用いることが好まし
いが、各種単一金属や合金が使用でき、特に制限される
ものではない。これらは、いずれも本発明に従う、熱処
理によりプラズマ共鳴吸収位置をシフトさせることがで
きる。
【0028】このような微粒子の平均粒径は1〜100
nm、好ましくは2〜30nmである。このような平均粒径
で量子サイズ効果が実現する。微粒子の含有量は、全体
の1〜80vol%、特に5〜60vol%であることが好まし
い。含有量が少なすぎると、非線形光学材料としての有
用性がうすれ、多すぎると、バルク的な性質が大きくな
るために光学的非線形性が小さくなる。なお、微粒子結
晶の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像から
求めるか、あるいはX線回析スペクトルから、シェラー
の式によって求めることができる。また含有量は、化学
分析あるいはESCA等から求めればよい。
【0029】本発明の微粒子分散複合薄膜のマトリック
スは、強誘電性材料あるいは高誘電性材料である。強誘
電性材料は、バルクの多結晶体の常温での誘電率が15
0程度以上のものであり、また高誘電性材料は、バルク
の多結晶体の常温での誘電率が10以上150未満程度
のものである。これらは、前述のように、成膜直後には
アモルファス状態であるが、本発明に従う、熱処理によ
り微結晶化するものである。また、これらは、成膜後の
熱処理により誘電率が変化し、この結果共鳴吸収位置が
シフトするものと考えられる。
【0030】このような強誘電性材料としては、ペロブ
スカイト型化合物が好適である。ペロブスカイト型化合
物としては、A1+5+3 、A2+4+3 、A3+3+
3 、AX BO3 、A(B′0.67B″0.33)O3 、A
(B′0.33B″0.67)O3 、A(B0.5 +30.5 +5 )O
3 、A(B0.5 2+0.5 6+ )O3 、A(B0.5 1+0.5
7+)O3 、A3+(B0.5 2+0.5 4+ )O3 、A(B0.25
1+0.75 5+)O3 、A(B0.5 3+0.5 4+ )O2.75、A
(B0.5 2+0.5 5+ )O2.75等いずれであってもよい。
例えば、BaTiO3 、PbTiO3 、KTaO3 、N
aTaO3 、SrTiO3 、CdTiO3 、LiTaO
3 、KNbO3 、LiNbO3 、PZT(PbZrO3
−PbTiO3 )、PLZT(PbZrO3 −PbTi
3 :La23 )等である。
【0031】また高誘電性材料としては、TiO2 、2
MgO・TiO2 、MgO・TiO2 、MgO・2Ti
2 、ZnO−TiO2 、CaTiO3 等が好適であ
る。
【0032】これら強誘電性ないし高誘電性材料として
は、酸化チタン、あるいは酸化チタンを含む複合酸化物
(チタン酸塩)が好適であり、特にバルクの多結晶体の
常温での誘電率が100〜300程度のチタン酸塩ペロ
ブスカイト型化合物、例えばBaTiO3 、SrTiO
3 、CaTiO3 、PbTiO3 等が好ましい。
【0033】このようなマトリックスは、前述のよう
に、熱処理により微結晶化するが、このときのグレイン
の平均粒径は40〜1000nm、好ましくは45〜50
0nmである。この粒径は、TEM画像から求めることが
できる。また、平均粒径の±30%以内の粒径の粒子数
が全体の80%以上であることが好ましい。この値は1
00%であることが好ましいが、上限値は通常95%程
度である。
【0034】このようなマトリックス中に微粒子を分散
した薄膜の厚さは、一般に0.01〜5μm 程度とす
る。また、微粒子材料や、場合によってはマトリックス
材料を2種以上用いることもできる。
【0035】本発明の薄膜を製造するには、マトリック
ス材料と微粒子材料とを同時スパッタすることが好まし
い。スパッタリングの方式はいずれであってもよいが、
成膜速度の点ではRFマグネトロンスパッタが好適であ
る。この際、動作圧力は10-3〜10-2Torr程度、基板
温度は常温〜300℃程度とする。そして、両者の成膜
スピードやターゲット面積を変更することにより、容易
に前記の含有量にて微粒子と分散することができる。ま
た、用いる基板材料には特に制限はないが、合成石英ガ
ラスなどを用いることができる。
【0036】なお、同時スパッタリング法にかえ、前記
の光電子材料シンポジウム予稿集に記載のイオン注入法
や、特開平3−294829号公報記載の交互積層スパ
ッタリングを用いることもできる。
【0037】このような成膜直後の薄膜は、マトリック
ス中に微粒子が分散されており、マトリックスはアモル
ファス状態にある。そして、前記のようなフラッシュア
ニールを含む熱処理により微結晶化し、非線形光学効果
の向上した薄膜となる。
【0038】本発明の薄膜の誘電率εを測定すると、一
般に10以上を示し、特に100以上、さらに150以
上、さらには200以上とすることができる。このよう
な薄膜の誘電率を測定するには、合成石英ガラス基板上
に、スパッタリング法にて白金薄膜下部電極を形成し、
その上に被測定薄膜を形成して、さらにその上に白金製
の1mmφのパッド上部電極を形成し、本発明に従う、前
述の熱処理と同一条件で熱処理を行なう。そして、LF
インピーダンスアナライザーを用いてCおよびQを測定
し、これから計算によりεを求めればよい。なお、εは
成膜直後でも一般に10以上を示す。
【0039】また、本発明の薄膜のχ(3) 値は、10-7
esu をこえるものとなる。このような高いχ(3) 値が得
られるのは、前記の熱処理による効果も含め、マトリッ
クス中に分散されている金属微粒子が高濃度であるこ
と、および通常マトリックスに使用されるSiO2 に比
べ、本発明で使用するマトリックス物質の誘電率が高い
ためであると考えられる。なお、χ(3) 値は次世代産業
基盤技術・第2回光電子材料シンポジウム予稿集P13
9−148,1991に記載の位相共役型の縮退四光波
混合法(DFWM)に準じて測定することができる。ま
た、上記のχ(3)値は、Nd:YAGレーザの第2高調
波(532nm)を用いたときの値であり、プラズマ共鳴
吸収ピーク位置での値ではないので、このプラズマ共鳴
吸収ピーク波長でのχ(3) は10-7esu をこえる範囲で
さらに一層高いものとなる。
【0040】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0041】実施例1 RFマグネトロンスパッタ装置を用い、BaTiO3
ーゲットにAuチップを乗せ、同時スパッタを行った。
基板としては合成石英ガラスを用いた。薄膜作製条件
は、アルゴン雰囲気中でガス圧5×10-3Torr、基板温
度150℃、RFパワーは100W とした。Au濃度は
チップの量で制御し、膜厚はスパッタ時間で制御して薄
膜を作製した。これを薄膜Aとする。
【0042】薄膜Aをエキシマレーザーを用い、波長1
93nmで200mJ/1ショットの条件で5ショット照射
し、大気中でフラッシュアニールを行なった。これを薄
膜A1とする。このフラッシュアニールにおける1ショ
ット開始時から2ショット開始時までの時間は50ms程
度であった。また、フラッシュアニール中の薄膜の温度
は103 〜107 ℃程度の温度範囲にあると考えられ
る。また、レーザーによる昇温、急冷速度は、ともに、
103 〜107 ℃/秒程度であり、薄膜は、室温(25
℃程度)から昇温して室温(25℃程度)まで急冷する
ものとした。
【0043】薄膜Aを電気炉を用い100℃/hrで昇温
し900℃で1時間保持後、放冷する熱処理を行なっ
た。これを薄膜A2とする。このときの放冷速度は10
0℃/hrであり室温(25℃程度)まで冷却した。
【0044】薄膜A、A1、A2の透過スペクトルを測
定した。結果を図1に示す。この透過スペクトルからプ
ラズマ共鳴吸収ピーク位置を求めた。結果を表1に示
す。表1には、熱処理条件、Auの分散量(vol%)およ
び膜厚を併記する。
【0045】
【表1】
【0046】図1および表1から、レーザーアニールし
た薄膜A1において吸収ピーク波長が最も長波長にシフ
トしており、吸収ピークもシャープであることがわか
る。
【0047】また、薄膜A、A1、A2のX線回折スペ
クトルを図2に示す。成膜後の薄膜AではAu(11
1)面のブロードなピークしか観察されず、またマトリ
ックスもアモルファス状態であることがわかる。電気炉
を用いた熱処理を行なった薄膜A2ではAu(111)
面のピークが観察され、レーザーアニールを行なった薄
膜A1ではさらにこのピークが鋭いものとなり、結晶性
が良好となっていることがわかる。また、TEM像によ
ると、薄膜Aではマトリックスがアモルファス状態であ
り、Au微粒子の結晶性もよくない。また、薄膜A2で
は、マトリックスはほぼ結晶化していたが、マトリック
スの結晶粒径にバラツキが多かった。実際、マトリック
スの結晶粒径は10〜1000nmの範囲にあり、平均粒
径を求めると200nmと本発明の範囲内に入っていた
が、この平均粒径の±30%以内の粒径のグレイン数が
全体の50%程度であった。また、Au微粒子の結晶性
もよくない。これに対し、薄膜A1では、マトリックス
は微結晶化しており、Au微粒子の結晶性も良好であ
る。マトリックスの結晶粒径は50〜100nmの範囲に
あり、平均粒径は70nmであった。さらに、70nmの±
30%以内の粒径のグレイン数が全体の90%程度であ
った。また、Au微粒子の平均粒径は10nmであった。
そしてマトリックスのグレインの3重点にAu微粒子が
位置する構造を採っていることも確認された。
【0048】次に、前記の光電子材料シンポジウム予稿
集に記載の縮退四光波混合法に従い、薄膜A、A1、A
2のレーザー波長532nmにおけるχ(3) 値を求めた。
レーザーアニールした薄膜A1は10-7esu をこえる高
いχ(3) 値が得られた。また、電気炉を用いた熱処理を
行なった薄膜A2は、薄膜A1に比べて低いχ(3) 値と
なった。薄膜Aは、薄膜A2に比べて、さらに低いχ
(3) 値となった。このようなχ(3) 値の傾向は、上述の
透過スペクトル、XRD、TEM観察の結果からの推察
と一致するものである。
【0049】また、前記の方法に従い、薄膜A、A1、
A2の誘電率を測定した。薄膜A1は150以上の高い
値を示し、薄膜A2は、これより低いもの、薄膜Aは薄
膜A2よりさらに低い値となった。
【0050】比較例 薄膜Aの作製において、BaTiO3 をSiO2 ターゲ
ットに変更し、RFパワーを200W とした他は同様に
して、マトリックスをSiO2 ガラスとしたAu微粒子
分散薄膜を作製した。これを薄膜Bとする。この薄膜B
について薄膜A1におけるものと同様のレーザーアニー
ルによる熱処理を行なった。これを薄膜B1とする。
【0051】薄膜B、B1について透過スペクトルを測
定した。結果を図3に示す。これより、レーザーアニー
ルを行なっても、吸収ピーク位置のシフトや吸収ピーク
のシャープ化は明確に観察されなかった。
【0052】また、薄膜B、B1について、X線回折ス
ペクトルの測定を行なった。薄膜Bでは明確なAu(1
11)面ピークが観察されなかった。また、薄膜B1で
のAu(111)面ピークは、薄膜Bより少しシャープ
になっていたが、実施例1の薄膜Aと薄膜A1とを比較
した場合に比べ、その変化は極めて小さいものであるこ
とがわかる。さらに、マトリックスは薄膜B、B1のい
ずれもアモルファス状態であることがわかった。
【0053】薄膜B、B1について、TEM観察を行な
ったところ、いずれもマトリックスはアモルファス状態
であり、レーザーアニールによるAu微粒子の結晶性の
変化は、実施例1の薄膜A、A1における結晶性の変化
に比較すると、ほとんどないといってよい。また、薄膜
B1の実施例1と同様にして求めたχ(3) 値は、薄膜A
1のものに比べ明らかに低いものであった。
【0054】従って、レーザーアニールによる特性向上
の効果は、マトリックスの微結晶化によるものであるこ
とが裏づけられる。
【0055】実施例2 実施例1において、BaTiO3 ターゲットのかわり
に、SrTiO3 ターゲットを用いるほかは、同様にし
て薄膜を作製した。ただし、この場合、膜厚は表2に示
すように1000Aとした。また、熱処理を行なわない
薄膜C、レーザーアニールを行なった薄膜C1を作製し
た。
【0056】薄膜C、C1の透過スペクトルを測定し
た。結果を図5に示す。また、これより求めたプラズマ
共鳴吸収ピーク位置を表2に示す。表2には熱処理条
件、Auの分散量(vol%)および膜厚を併記する。
【0057】
【表2】
【0058】図5および表2から、レーザーアニールに
より吸収ピーク波長が長波長にシフトし、吸収ピークも
シャープになることがわかる。
【0059】また、薄膜C、C1のX線回折スペクトル
を図6に示す。成膜後の薄膜CではAu(111)面の
シャープなピークが観察されず、マトリックスもアモル
ファス状態であることがわかる。これに対し、レーザー
アニールを行なった薄膜C1ではAu(111)面のシ
ャープなピークが観察され、Au微粒子の結晶性が向上
していることがわかる。また、TEM像からも、Au微
粒子の結晶性が向上することが裏づけられた。さらに、
TEM像によれば、マトリックスは微結晶化しているこ
とがわかった。このときのマトリックスの平均粒径は7
0nmであり、粒径は50〜90nmの範囲にあり、実施例
1の薄膜A1と同等の水準で粒径のバラツキが少なかっ
た。そして、マトリックスのグレインの3重点にAu微
粒子が位置する構造を採っていることが確認された。
【0060】実施例1と同様に、薄膜C、C1について
χ(3) 値を求めた。薄膜C1では10-7esu をこえる高
い値を示し、薄膜Cはこれより明らかに低いものであっ
た。また、薄膜C、C1について実施例1と同様にして
誘電率を求めたところ、薄膜C1は80以上の値を示
し、薄膜Cはこれより明らかに低いものであった。
【0061】実施例3 実施例1、2において、AuのかわりにAgを用いるほ
かは、同様にして薄膜を得たところ、熱処理条件に応
じ、透過スペクトル、XRD、TEM観察、χ(3 ) 値、
誘電率の結果に、同様の傾向がみられた。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、急昇温し急冷する熱処
理により、短時間にマトリックスが微結晶化し、それと
ともに分散された金属微粒子が均一分散し、金属微粒子
およびマトリックスの結晶性が向上し、粒度が揃う。こ
の結果、χ(3) 値が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および比較の非線形光学薄膜の透過スペ
クトルを示すグラフである。
【図2】本発明および比較の非線形光学薄膜のX線回折
スペクトルを示すグラフである。
【図3】従来の非線形光学薄膜の透過スペクトルを示す
グラフである。
【図4】従来の非線形光学薄膜のX線回折スペクトルを
示すグラフである。
【図5】本発明および比較の非線形光学薄膜の透過スペ
クトルを示すグラフである。
【図6】本発明および比較の非線形光学薄膜のX線回折
スペクトルを示すグラフである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 強誘電性または高誘電性のマトリックス
    中に金属の微粒子を少なくとも1種分散させた薄膜を成
    膜した後、これを昇温し、103 ℃/秒以上の急冷速度
    で急冷した非線形光学薄膜。
  2. 【請求項2】 前記熱処理を活性エネルギー線を照射す
    ることにより行なう請求項1の非線形光学薄膜。
  3. 【請求項3】 前記マトリックスは酸化チタンまたは酸
    化チタンを含む複合酸化物である請求項1または2の非
    線形光学薄膜。
  4. 【請求項4】 前記マトリックス中のグレインの平均粒
    径が、40〜1000nmの範囲にある請求項1ないし3
    のいずれかの非線形光学薄膜。
  5. 【請求項5】 前記微粒子の平均粒径が1〜100nmで
    ある請求項1ないし4のいずれかの非線形光学薄膜。
  6. 【請求項6】 前記微粒子の含有量が1〜80vol%であ
    る請求項1ないし5のいずれかの非線形光学薄膜。
  7. 【請求項7】 前記成膜を同時スパッタリング法によっ
    て行なう請求項1ないし6のいずれかの非線形光学薄
    膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US11616081B2 (en) 2021-06-04 2023-03-28 Samsung Electronics Co., Ltd. Three-dimensional semiconductor memory device including ferroelectric thin film and manufacturing method of the same

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