JPH06128033A - イットリア系耐火性組成物 - Google Patents

イットリア系耐火性組成物

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JPH06128033A
JPH06128033A JP4278501A JP27850192A JPH06128033A JP H06128033 A JPH06128033 A JP H06128033A JP 4278501 A JP4278501 A JP 4278501A JP 27850192 A JP27850192 A JP 27850192A JP H06128033 A JPH06128033 A JP H06128033A
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JP
Japan
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yttria
sol
chelating agent
zirconia
particles
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Application number
JP4278501A
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English (en)
Inventor
Shigemi Osaka
重美 大坂
Kazuo Hata
和男 秦
Tsukasa Takahashi
典 高橋
Koji Motoyama
厚司 本山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 (a)キレート化剤などの表面改質剤で表面
処理したイットリア粒子および(b)イットリアゾルお
よび/またはジルコニアゾルを含有するイットリア系耐
火性組成物。 【効果】 表面処理したイットリア粒子の使用により、
組成物の増粘、ゲル化が防止され、組成物の経時安定性
が改善される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はイットリア系耐火性組成
物に関し、詳しくはキレート化剤などの表面改質剤で表
面処理してなるイットリア粒子とイットリアゾルおよび
/またはジルコニアゾルとを含有するイットリア系耐火
性組成物に関する。
【0002】本発明のイットリア系耐火性組成物は経時
的安定性に優れ、チタンまたはチタン合金などの高活性
な金属の鋳造用鋳型などの耐熱性成形体の製造や、ルツ
ボ、セッターなどの耐熱性成形体へのコーティング剤な
どとして使用される。
【0003】
【従来の技術】近年、技術の高度化にともない使用する
素材が多様化し、高活性な金属あるいはその化合物を高
温で熱処理するための治具、あるいは溶解、鋳造するた
めの耐熱性成形体が必要となってきた。しかし、従来の
アルミナやシリカを主成分とする耐熱性成形体を上記目
的に使用した場合、得られる製品は耐熱性成形体の構成
成分や酸素などで汚染されることがある。このため、熱
力学的に高温でも安定なカルシア、ジルコニア、イット
リアなどを使用した耐熱性成形体が使用されるようにな
ってきている。
【0004】しかし、カルシアの場合、その性質上、ス
ラリーを調製する際に溶媒として水を使用することがで
きないことから、カルシア製の鋳型などの成形体を製造
することが煩雑であり、またカルシア製の成形体は水や
水蒸気に不安定であるという欠点を有している。
【0005】また、ジルコニアは安定な素材であり、チ
タンまたはチタン合金の鋳造用鋳型として実用化されて
いるが、このジルコニア製の鋳型もチタンまたはチタン
合金の鋳造においては金属−鋳型反応を無視することは
できず、鋳物表面に形成された反応層を化学的あるいは
物理的に除去する必要がある。このため、ジルコニア製
の鋳型を高寸法精度が要求されるチタンまたはチタン合
金鋳物などの製造に使用するには問題がある。
【0006】このような事情に鑑み、ジルコニアよりも
安定な素材であるイットリアを使用した鋳型などの耐熱
性成形体が望まれている。そこで、例えば特開昭62−
143864号公報には、耐火性粒子としてのイットリ
ア粉末、ジルコニア粉末などとバインダーとしてのイッ
トリアゾルまたはジルコニアゾルとからなる耐火性組成
物が提案されている。すなわち、イットリア粉末などの
耐火性粒子をイットリアゾルなどのバインダーに分散し
てスラリーを調製し、このスラリーを用いて耐熱性成形
体を製造することが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記スラリー
は安定性が極端に悪く、イットリアゾルにイットリア粉
末を添加した直後からスラリーの増粘が始まり、短時間
にスラリーのゲル化が起こって、工業的規模での目的と
する耐熱性成形体の製造が困難であるという問題があ
る。
【0008】本発明は上記従来技術の問題点を解決し、
上記スラリーの経時的安定性を改善しようとするもので
ある。
【0009】従って、本発明の目的は、イットリア粒子
とイットリアゾルおよび/またはジルコニアゾルとを含
有し、経時安定性に優れたイットリア系耐火性組成物を
提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記スラ
リーの経時的安定性につき鋭意研究した結果、スラリー
が短時間に増粘、ゲル化する原因はスラリーを調製する
ために使用するバインダーとしてのゾルとイットリア粒
子との間で反応が起こるためであり、この反応により使
用するゾル中のゾルの安定化に寄与している硝酸根、酢
酸根などの酸根が減少、消失するに伴いゾルが不安定に
なり、ひいてはゲル化するため、スラリーも増粘、ひい
てはゲル化するとの知見が得られ、ゾルとイットリア粒
子との反応を防止もしくは抑制することによりスラリー
の経時的安定性が改善されること、また上記反応の防止
もしくは抑制はイットリア粒子を予めキレート化剤など
の表面改質剤で表面処理することにより達成できること
が判明した。本発明はこのような知見に基づいて完成さ
れたものである。
【0011】すなわち、本発明は表面改質剤で表面処理
してなるイットリア粒子とイットリアゾルおよび/また
はジルコニアゾルとを含有することを特徴とするイット
リア系耐火性組成物に関する。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明で使用するイットリア粒子として
は、水酸化イットリウムや各種のイットリウム塩をか焼
して得られる酸化イットリウム粒子および溶融酸化イッ
トリウムを粉砕して得られる溶融酸化イットリウム粒子
を挙げることができる。これらイットリア粒子の平均粒
子径は0.4〜120μmの範囲にあるのが好ましく、
特に1〜60μmの範囲にあるのが好ましい。
【0014】上記イットリア粒子の表面処理に使用する
表面改質剤としては、イットリア粒子とゾルとの反応を
防止もしくは抑制し得るものであれば、いずれも使用で
きるが、最終的に得ようとする耐熱性成形体中にチタン
またはチタン合金などと反応性が高い金属種が残留しな
いように、これらの金属種を含有しないものを選択する
ことが望ましく、例えば各種の高分子化合物、界面活性
剤、有機系試薬などを挙げることができる。これら表面
改質剤のうち、特にキレート化剤が好適に使用される。
【0015】上記キレート化剤としては、カテコール、
ピロガロールなどのオキシフェノール類;ジエタノール
アミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール
類;グリコール酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マンデル
酸、リンゴ酸、ヒドロキシアクリル酸などのオキシ酸お
よびそれらのメチル、エチル、ヒドロキシエチルなどの
低級アルキルまたはヒドロキシアルキルエステル類;グ
リコールアルデヒドなどのオキシアルデヒド類;シュウ
酸、マロン酸などのポリカルボン酸;グリシン、アラニ
ンなどのアミノ酸類;アセチルアセトン、ベンゾイルア
セトン、ステアロイルアセトン、ステアロイルベンゾイ
ルメタン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン類;
アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸などの
β−ケトン酸類およびそれらのメチル、エチル、n−プ
ロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル
などのアルキルエステル類などを挙げることができる。
これらキレート化剤は単独でも、あるいは2種以上組み
合わせて使用することもできる。
【0016】これらキレート化剤のうち、グリコール
酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、
ヒドロキシアクリル酸などのオキシ酸、およびアセチル
アセトンなどのβ−ジケトン類が好適に使用される。特
に、α、βおよびγ−オキシ酸など、α、βおよびγの
炭素原子上に酸素原子を有するカルボニル化合物が好適
に使用される。
【0017】そこで、以下においては、表面改質剤とし
てキレート化剤を用いた場合を例として本発明を説明す
る。
【0018】イットリア粒子をキレート化剤で表面処理
する方法には特に制限はなく通常の液相法が好適に用い
られる。具体的には、キレート化剤を適当な溶媒に溶解
して均一な処理溶液を調製し、次いでこの処理溶液にイ
ットリア粒子を添加して撹拌、混合すればよい。上記溶
媒としては通常純水が用いられるが、キレート化剤の溶
解性、表面処理されたイットリア粒子の凝集などを考慮
して、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1
−ブタノール、1−ヘキサノールなどのアルコール類、
アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、ペンタン、ヘ
キサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、
トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化
水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢
酸エステル類などの有機溶媒も単独または混合して使用
することができる。また、これら有機溶媒と純水との混
合溶液も使用することができる。
【0019】本発明におけるイットリア粒子の表面処理
効果、すなわちイットリア粒子とイットリアゾルおよび
/またはジルコニアゾル(以下、これらを総称して単に
「ゾル」という場合もある)との反応を防止もしくは抑
制する効果を得るためには、表面処理したイットリア粒
子中のキレート化剤の量を0.3〜30重量%とするの
が好ましく、特に10〜30重量%とするのが好まし
い。キレート化剤の担持量が少なすぎると表面処理効果
が低く、低担持量のイットリア粒子とゾルとから調製さ
れるスラリーの経時安定性は悪く、短期間でスラリーの
増粘、ゲル化が起こる。一方、担持量が多すぎてもスラ
リーの経時安定性に格別の効果を得ることはできず、さ
らに多量に担持されたキレート化剤の影響でこのスラリ
ーから製造される耐熱性成形体の強度が低下する。
【0020】上記処理溶液中のキレート化剤の濃度は、
所望のキレート化剤の担持量を確保できるように、イッ
トリア粒子の量およびその性状、例えば粒子径、比表面
積などを勘案して適宜決定することができる。通常、キ
レート化剤の濃度は0.1〜5モル/L(リットル;以
下同様)程度である。
【0021】本発明における表面処理のための処理温度
には特に制限はないが処理温度が低いとイットリア粒子
とキレート化剤との反応速度が遅いため表面処理に長時
間要したり、必要とされる担持量が得られなかったりす
る。本発明においては、30〜100℃に加熱しながら
行うのが好ましく、特に60〜100℃に加熱しながら
表面処理を行うことにより0.2〜3時間程度で表面処
理を完了することができる。なお、上記範囲以上の温度
で表面処理を行っても格別の効果がなく、あまり処理温
度が高いとキレート化剤が分解する恐れがある。
【0022】上記表面処理が終了したら、イットリア粒
子を処理溶液から分離し、さらに必要に応じて純水ある
いはアルコール類などの有機溶媒で洗浄した後、5〜1
00℃で乾燥することによりキレート化剤で表面処理し
たイットリア粒子が得られる。
【0023】なお、本発明のイットリア系耐火性組成物
を調製するに際しては、表面処理したイットリア粒子を
上記のように乾燥処理することなく、そのままゾルと混
合してもよい。
【0024】上記のように表面処理したイットリア粒子
において、キレート化剤はイットリア粒子表面を単に被
覆しているのではなく、その大部分がイットリア粒子表
面でイットリアと反応した反応生成物層を形成している
ものと認められる。このことは表面処理したイットリア
粒子の各種分析法、例えば熱重量分析、示差熱分析、赤
外線吸収スペクトル分析などにより確認することができ
る。このように、キレート化剤がイットリア粒子表面に
反応により固定化されているため、表面処理したイット
リア粒子をゾルと混合してスラリーを調製する際、また
その調製後もキレート化剤がゾル中に再溶解することは
なく、上記反応生成物層がイットリア粒子とゾルとの反
応を防止もしくは抑制することから、得られるスラリー
は長期にわたって良好な安定性を保持するものと考えら
れる。
【0025】なお、上記表面処理によりイットリア粒子
の平均粒子径は表面処理前より通常大きくなる。この原
因の一つとして、表面処理によりイットリア粒子が凝集
することが考えられる。しかし、凝集の程度は、表面処
理するイットリア粒子の粒子径、粒子に担持されるキレ
ート化剤の量などによっても異なり、本発明で使用する
範囲の粒子径や担持量では凝集粒子はあまり大きなもの
にならず、表面処理によって凝集粒子が生成したにして
も、これら凝集イットリア粒子を用いて得られる組成物
スラリーおよびこのスラリーから製造される鋳型などの
耐熱性成形体の性能には特別な問題は生じない。
【0026】本発明で使用するイットリアゾルおよび/
またはジルコニアゾルは、耐熱性成形体、コーティング
剤などのバインダーとして機能するものであり、バイン
ダーとしての機能を有する限りいずれのイットリアゾル
およびジルコニアゾルも使用することができる。しか
し、ゾルの選定にあたっては、ゾル粒子の粒子径、形
状、結晶性などのゾル粒子の性状、ゾル濃度、ゾルの安
定化に寄与している安定化剤の種類、ゾルのpHなどを
考慮し、上記バインダーに要求される特性、例えば接着
強度、乾燥状態での耐水性などをよりよく発揮するゾル
を選定するのが望ましい。この点からして、特に特願平
3−324717号明細書に記載のイットリアゾルおよ
び特願平3−4596号明細書に記載の酸性型、中性型
および塩基性型ジルコニアゾルが好適に使用される。
【0027】これらゾルのうち、中性型および塩基性型
ジルコニアゾルが特に好適に使用される。すなわち、キ
レート化剤で表面処理したイットリア粒子と中性型ジル
コニアゾルまたは塩基性型ジルコニアゾルとからなる組
成物スラリーは経時安定性が特に優れている。
【0028】これら中性型および塩基性型ジルコニアゾ
ルの具体的製造方法を酸性型ジルコニアゾルの製造方法
も含めて以下に具体的に説明する。
【0029】(1)酸性型ジルコニアゾル この酸性型ジルコニアゾルは、ジルコニウム塩水溶液と
尿素とから製造される透明性ジルコニアゾルである。
【0030】先ず、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジル
コニウム、硫酸ジルコニウムあるいは酢酸ジルコニウム
などの水溶性ジルコニウム塩類から選ばれるジルコニウ
ム塩水溶液に尿素を添加し、加熱することによりジルコ
ニアゾルを製造する。
【0031】この反応は下記反応式による尿素の加水分
解によって生じるアンモニアの濃度が水溶液内できわめ
て均一であることから、このアンモニアとジルコニウム
塩とから生じるジルコニアゾルは、その粒子径がきわめ
て小さく、均一であるとの特徴を有する。
【0032】(NH22CO+H2O→2NH3+CO2 このようにして得られるゾルが透明性を保った状態で反
応を停止する。反応後のゾルはpHが1.2〜2.9の
範囲にある。
【0033】ゾルは冷却した後、限外ろ過膜を用いて洗
浄、濃縮して、水とともにゾル中のイオン類を系外に排
出する。濃縮後のゾル中のイオン濃度が高い場合は、ゾ
ルに純水を加えて洗浄、濃縮する工程を繰り返して、所
望イオン濃度になるようにする。なお、イオン類の除去
方法として、一定レベルのイオン濃度となるまで限外ろ
過で洗浄し、それ以降はイオン交換樹脂を用いてイオン
類を除去することも有効である。
【0034】限外ろ過膜による濃縮は、限外ろ過膜から
の制約があるが、ZrO2として20重量%まで可能で
ある。これ以上高濃度にする場合は、ゾルを加熱するこ
とにより濃縮する。この濃縮は、ゾルの温度が80℃以
下、好ましくは60℃以下、更に好ましくは40℃以下
で行う必要があり、減圧下に撹拌することにより効率よ
く行うことができる。このようにして得られる透明性ジ
ルコニアゾルは、濃度がZrO2として50重量%まで
濃縮可能であり、また長期に安定である。
【0035】高強度の生鋳型を得るにはジルコニアゾル
の濃度は高いほうが望ましく、通常、ZrO2として2
0重量%以上のゾルを使用するのがよい。しかし、20
重量%以上の濃度を有するジルコニアゾルは、粘度が高
いため、硝酸、塩酸、硫酸などの鉱酸、酢酸、ギ酸など
の有機酸、さらにはジルコニアゾルの出発原料として使
用される前述のジルコニウム塩水溶液などをジルコニア
ゾルの限外ろ過後あるいはジルコニアゾルの加熱濃縮後
に添加して、ジルコニアゾルの粘度を3〜80cpの範
囲に調製するのがよい。この時のジルコニアゾルのpH
は約1〜3である。
【0036】上記反応における尿素の使用量は、通常、
尿素(モル数)/ジルコニア(モル数)が0.5〜2で
あり、また加熱温度は80〜120℃である。
【0037】(2)中性型ジルコニアゾル この中性型ジルコニアゾルは、炭酸ジルコニルアンモニ
ウム水溶液とキレート化剤とを混合して得られる反応生
成物を加水分解することにより得られる。
【0038】上記炭酸ジルコニルアンモニウムは、通
常、炭酸ジルコニルと炭酸アンモニウムまたは炭酸水素
アンモニウムなどの炭酸アルカリとから下記反応式に従
って得られる。
【0039】 2ZrOCO3・8H2O+4NH4HCO3+(NH42CO3→ 2(NH43ZrOH(CO3)3・2H2O+5H2O 上記反応においては、炭酸アルカリが過剰に使用される
こと、炭酸ジルコニルアンモニウムの構造が複雑なこ
と、また炭酸ジルコニルアンモニウムの水溶液中での挙
動について不明な点が多いことなどから炭酸ジルコニル
アンモニウム水溶液を一義的に定義づけることは困難で
あり、ここにおける炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液
とは、一般に炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液と呼ば
れているものをすべて包含するものである。炭酸ジルコ
ニルアンモニウムの製造に使用する上記原料中には不純
物類が比較的多く含有されている場合もあることから、
高純度のジルコニアゾルを得るためには吟味された原料
から調製された炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液を使
用することも必要である。本発明においては、pHが8
〜10で、濃度がZrO2として10〜20重量%程度
の炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液が好適に使用され
る。
【0040】中性型ジルコニアゾルは、上記炭酸ジルコ
ニルアンモニウム水溶液とキレート化剤とを混合し、次
いで得られた反応生成物を加水分解することにより得ら
れる。具体的には、例えば撹拌槽型反応器に炭酸ジルコ
ニルアンモニウム水溶液を入れ、次いで撹拌下にキレー
ト化剤を添加すると室温で迅速に炭酸ジルコニルアンモ
ニウムとキレート化剤とが反応する。反応後、反応液を
60℃以上に加熱すると二酸化炭素とアンモニアを主体
とするガスが発生しながら炭酸ジルコニルアンモニウム
とキレート化剤との反応生成物の加水分解反応が進行す
る。この反応中には、反応液が増粘することもなく、反
応液の透明性を保持したまま反応を完了させることがで
きる。この反応液にアルカリ性物質を添加することによ
り、反応液の増粘、ゲル化を起こすことなく、中性ある
いはアルカリ性領域において安定な中性型ジルコニアゾ
ルが得られる。
【0041】上記中性型ジルコニアゾルの調製方法の特
徴の一つは、上記加水分解反応中に、ゾルにとって不純
物イオン類であるアンモニウムイオンや炭酸イオンがア
ンモニアや二酸化炭素として系外に排出されるため、炭
酸ジルコニルアンモニウムとキレート化剤との反応生成
物の加水分解による反応液を、特に洗浄することなくそ
のままジルコニアゾルとして使用できることである。ま
た、この反応液は、通常の加熱蒸発によって濃縮して高
濃度とすることもできる。しかしながら、反応液中に残
存する微少量の未反応物や炭酸イオン、アンモニウムイ
オンなどを除去して、より高純度のジルコニアゾルを得
る場合には、限外ろ過膜を使用し、上記酸性型ジルコニ
アゾルの調製方法で述べたと同様の手法により洗浄すれ
ばよい。上記キレート化剤としては、前記の表面改質剤
として例示したキレート化剤を使用することができる。
【0042】キレート化剤の使用量は、使用するキレー
ト化剤の種類により異なるが、キレート化剤(モル数)
/ジルコニア(モル数)が0.02/1〜4/1、好ま
しくは0.1/1〜3/1、更に好ましくは0.5/1
〜2/1の範囲になるように選択するのがよい。
【0043】キレート化剤の使用量が少なすぎると、キ
レート化剤と炭酸ジルコニルアンモニウムとの反応で生
成するある種の有機ジルコニウム塩が、上記加水分解反
応において、炭酸ジルコニルアンモニウム単独の場合と
同様な挙動を示し、加水分解反応を継続することができ
ず、キレート化剤の効果が得られない。一方、キレート
化剤をキレート化剤/ジルコニア=4/1をこえるよう
な多量に使用しても、それ以上の特別な効果は得られず
経済的でない。
【0044】上記加水分解反応は、60℃以上で行えば
よく、反応を促進するためには反応を加圧雰囲気下で行
うのが望ましい。実際的な反応温度は60〜300℃で
ある。
【0045】上記加水分解反応後の反応液は、外観が透
明性で、そのpHがほぼ7であり、中性型ジルコニアゾ
ルとして使用される。この中性型ジルコニアゾルは、そ
の調製工程においてキレート化剤を使用しているため、
ゾルの安定性がきわめて高いとの特徴を有している。ま
た、高濃度にした場合でも、ゾルの粘度は低く、また経
時的に安定であり、さらにジルコニウム以外の金属の化
合物を配合したジルコニア系ゾルの調製もきわめて容易
である。
【0046】上記ジルコニア系ゾルとしては、例えばジ
ルコニアの安定化剤として知られた酸化イットリウム
(Y23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシ
ウム(MgO)などの出発原料としての化合物またはそ
のゾルを中性型ジルコニアゾルに混合することにより得
られる安定化あるいは部分安定化ジルコニアゾルも使用
することができる。すなわち、ここにいう中性型ジルコ
ニアゾルとは、このような安定化あるいは部分安定化ジ
ルコニアゾルも包含するものである。
【0047】(3)塩基性型ジルコニアゾル 上記中性型ジルコニアゾルを用いて調製されたスラリー
を用いて鋳型を製造する場合、ワックス模型にスラリー
のコーティングを繰り返し、その表面にコーティング層
を形成していく工程で、コーティング層を設けたワック
ス模型をスラリーに浸漬すると、コーティング層が軟化
しワックス模型からずれたり、あるいは均一なコーティ
ング層を形成できなくなることもある。
【0048】このような中性型ジルコニアゾルの耐水性
は、その製造に使用するキレート化剤/ジルコニアのモ
ル比を小さくすると改善できる。しかしながら、上記モ
ル比が小さくなるように炭酸ジルコニルアンモニウム水
溶液とキレート化剤とを混合し、中性型ジルコニアゾル
の場合と同様に加熱して加水分解を行わせると反応途中
で反応液の増粘およびゲル化が起こりやすく、加水分解
反応の制御が困難となる。そこで、一旦キレート化剤と
炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液とから中性型ジルコ
ニアゾルを調製し、これにさらに炭酸ジルコニルアンモ
ニウム水溶液を加え、加水分解を行うことにより、増
粘、ゲル化などの問題を生じることなくキレート化剤/
ジルコニアのモル比が小さい、塩基性型ジルコニアゾル
が得られる。
【0049】すなわち、ここで使用する塩基性型ジルコ
ニアゾルは、上記(2)の中性型ジルコニアゾルに炭酸
ジルコニルアンモニウムを加え、次いで加水分解するこ
とにより得られるものである。この中性型ジルコニアゾ
ルは、上記(2)で説明した方法と全く同様の方法で調
製されるものであり、その調製方法の説明は省略する。
また、ここで使用する炭酸ジルコニルアンモニウムとし
ては、上記(2)の中性型ジルコニアゾルの調製に使用
したものが使用できる。
【0050】上記中性型ジルコニアゾルに炭酸ジルコニ
ルアンモニウム水溶液を添加し、得られる溶液を、その
ままあるいは60℃以下で加熱、濃縮した後、中性型ジ
ルコニアゾルの調製の場合と同様、60℃以上に加熱し
て加水分解を行い、必要に応じて、更に濃縮することに
よりpHが7〜11で、濃度がZrO2として45重量
%までの塩基性型ジルコニアゾルが得られる。また、中
性型ジルコニアゾルの場合と同様、加水分解後の反応液
を限外ろ過膜によりろ過、洗浄を行い、アンモニウムイ
オン、炭酸イオンなどの含有量がより少ない、高純度の
塩基性型ジルコニアゾルを得ることもできる。
【0051】上記中性型ジルコニアゾルに添加する炭酸
ジルコニルアンモニウムの量は、ZrO2として、塩基
性ジルコニアゾル中の全ZrO2量の10〜90重量
%、好ましくは30〜50重量%の範囲になるようにす
るのがよい。90重量%を超える量を添加すると上記加
水分解反応を継続できなくなり、また10重量%未満の
量を添加すると塩基性型ジルコニアゾルは得られるもの
の上記の耐水性の改善は実質的に認められなくなる。
【0052】一般に、塩基性型ジルコニアゾルにおける
キレート化剤(モル数)/ジルコニア(モル数)は0.
05〜2である。
【0053】上記酸性型、中性型および塩基性型ジルコ
ニアゾルは、いずれもその外観が透明性であり、このこ
とは、ジルコニアゾル中のゾル粒子の粒子径が極微小で
あることを意味している。また、これらジルコニアゾル
は、いずれも高濃度で得ることができる。
【0054】本発明のイットリア系耐火性組成物におけ
るゾルに対する表面処理したイットリア粒子の重量比
(表面処理イットリア粒子/ゾル)は使用目的に応じて
適宜決定することができるが、通常、1/1〜5/1で
ある。また、その調製法には特に制限はなくゾルと表面
処理イットリア粒子とを混合、撹拌することにより調製
することができる。
【0055】本発明のイットリア系耐火性組成物を用い
て高強度の耐熱性成形体を製造する場合には、ゾルの濃
度がY23またはZrO2の酸化物換算で15〜35重
量%のゾルを使用するのが望ましい。
【0056】本発明のイットリア系耐火性組成物は無機
バインダーとしても使用することができるが、例えば精
密鋳造法による鋳型の製造の場合、焼成前の生鋳型も焼
成前の低温処理時に十分な強度、耐水性などを有するこ
とが要求されるが、ゾルの種類によってはこのような性
能が劣る場合がある。このような場合には、組成物に有
機バインダーを添加してゾルの欠点を補完するのが望ま
しい。
【0057】上記有機バインダーとしては、メチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセル
ロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコール、ポ
リ酢酸ビニルなどのビニル系ポリマー類;ポリエチレン
グリコールなどのポリオレフィングリコール類;(メ
タ)アクリル酸および/またはそのエステルを含有する
アクリル系ポリマー類;イソブチレン−無水マレイン酸
共重合体;ポリアクリル酸アンモニウムなどを挙げるこ
とができる。そのほか、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、
酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョ
ン、酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルジョン、酢酸
ビニル−マレイン酸エステル共重合体エマルジョン、酢
酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニ
ル−プロピオン酸ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビ
ニル−エチレン−塩化ビニル共重合体エマルジョン、酢
酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合体エマルジョ
ン、酢酸ビニル−エチレン−アクリル酸共重合体エマル
ジョンなどの酢酸ビニル系重合体エマルジョン類;ポリ
アクリル酸エステルエマルジョン、アクリル酸エステル
−スチレン共重合体エマルジョンなどのアクリル酸系重
合体エマルジョン類;塩化ビニル共重合体エマルジョン
などの塩化ビニル系重合体エマルジョン類;塩化ビニリ
デン共重合体エマルジョンなどのビニリデン系重合体エ
マルジョン類なども使用することができる。これらは単
独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用すること
もできる。
【0058】これらのうち、セルロース類、ポリビニル
アルコールおよび酢酸ビニル系重合体エマルジョン類が
好適に使用される。上記有機バインダーは、そのまま、
あるいはアルコール類などの有機溶媒に溶解して使用す
る。
【0059】有機バインダーの添加量は、固形分基準
で、ゾル100重量部当り0.5〜20重量部が好まし
く、特に1〜10重量部が好ましい。
【0060】本発明のイットリア系耐火性組成物には、
通常のセラミックススラリーにおいて一般に使用されて
いる界面活性剤、解膠剤、消泡剤などを必要により添加
することもできる。
【0061】本発明のイットリア系耐火性組成物は、通
常その調製後3日以上安定であり、キレート化剤とゾル
との最適な組合せによっては2週間以上安定である。従
って、比較的高価なイットリア系スラリーを経済的に有
利に使用することができる。本発明のイットリア系耐火
性組成物を用いて耐熱性成形体を製造する方法やコーテ
ィング方法には特に制限はなく、各種成形体やコーティ
ング材の製造に応じた通常の方法を採用することができ
る。但し、イットリアは比較的高価であるため、例えば
イットリア系の鋳型の製造においては溶融金属と接触す
る近傍のみに本発明の組成物スラリーを使用し、他の部
分には従来からの素材からなるスラリーを使用するな
ど、本発明の組成物スラリーを用いて他の素材と複合化
ないし他の素材にバックアップされた耐熱性成形体を製
造することも望ましい。
【0062】本発明のイットリア系耐火性組成物を用い
て成形された耐熱性成形体やコーティング材は最終的に
1200〜1800℃、好ましくは1400〜1700
℃で0.5〜6時間程度焼成することにより高強度のイ
ットリア系耐熱成形体を得ることができる。
【0063】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。
【0064】参考例1 (イットリアゾルの調製)Y23として31.12重量
%含有の酢酸イットリウム1451.8g(酢酸イット
リウムとして4モル)を20Lのポリエチレン容器に仕
込み、脱イオン水15000gに溶解した。この溶液を
45℃に加温し、またウルトラディスパーサーで激しく
撹拌しながら、撹拌機撹拌部に直接アンモニア水を少量
づつ定量的に導入した。このアンモニア水は1モル/k
gの濃度に希釈したものを全量で4400g(アンモニ
アとして4.4モル)使用した。アンモニア水の導入は
チューブポンプを用い平均16g/分(0.016モル
/分)の速度で行った。
【0065】反応終了後、この反応液を、これに脱イオ
ン水を加えつつ、限外ろ過膜を用いて洗浄し、次いで減
圧下で濃縮しゾル中の粒子濃度がY23として25重量
%の透明性イットリアゾルを得た。このゾルはpHが
8.1であり、室温で3ヶ月間保存しても特に増粘は認
められないものであった。
【0066】参考例2 (ジルコニアゾルの調製)15LのフラスコにZrO2
として13重量%の市販の炭酸ジルコニルアンモニウム
水溶液(pH8.6)13000gを入れた。これに撹
拌下グリコール酸1040gを徐々に添加した。次い
で、マントルヒーターによりフラスコを加熱し、加水分
解を行った。反応液温度が50〜60℃からアンモニア
臭のガスが発生し始め、昇温するにつれて激しく発泡
し、アンモニアや炭酸ガスなどのガス類を系外に排出し
ながら反応を進行させた。反応液温度約100℃で3時
間反応させることにより発泡が鎮静し、フラスコ中に適
宜純水を追加しながら12時間加熱を継続し、ZrO2
として25重量%で、pHが7の透明性中性型ジルコニ
アゾルを得た。
【0067】この中性型ジルコニアゾル5000gに上
記と同じ炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液9600g
を加え、撹拌混合した。次いで、この混合液を減圧下6
0℃以下で濃度がZrO2として約30重量%となるま
で濃縮した後、常圧下95℃で熱処理した。この熱処理
中は炭酸ジルコニルアンモニウムの加水分解による発泡
を伴った。約1時間熱処理を行った後、冷却し、次いで
純水を加えることによりpHが8.9で濃度がZrO2
として27重量%の透明性塩基性型ジルコニアゾルを得
た。このゾルは室温で3ヶ月間保存しても特に増粘は認
められものであった。
【0068】実施例1 脱イオン水1000mlに濃度が70重量%のグリコー
ル酸水溶液36.9gを加えて調製した処理溶液をビー
カーに入れ、これをウォーターバス上にて加温、撹拌し
ながら平均粒子径5μmの溶融イットリア粉末(日本研
磨材工業(株)製)339gを添加した。得られたスラ
リーを約70℃で撹拌しながら1時間加熱することによ
りイットリア粒子の表面処理を行った。次いで、表面処
理したイットリア粒子を吸引ろ過で処理溶液から分離
し、脱イオン水で洗浄した。最後に、洗浄後の粒子を6
0℃で乾燥することにより、グリコール酸で表面処理し
たイットリア粒子を得た。この粒子の熱重量分析の結
果、粒子にはグリコール酸が3.4重量%担持されてい
た。
【0069】参考例2で調製した塩基性型ジルコニアゾ
ル1重量部をポリエチレンビーカーに入れ、撹拌機で撹
拌しながら、これに上記表面処理したイットリア粒子
2.5重量部を添加してスラリーを調製した。このスラ
リーは撹拌下4日間以上安定であった。
【0070】比較例1 参考例2で調製した塩基性型ジルコニアゾル1重量部を
ポリエチレンビーカーに入れ、撹拌機で撹拌しながら、
これに実施例1で使用したと同じ(但し、表面処理前
の)溶融イットリア粉末2重量部を添加してスラリーを
調製した。このスラリーは調製後の初期は安定であった
が、調製後約20時間でスラリーはゲル化し、スラリー
の撹拌は不可能となった。
【0071】実施例2 脱イオン水3Lに濃度70重量%のグリコール酸水溶液
1108gを加えて調製した処理溶液をフラスコに入
れ、これをマントルヒーターにて加熱、撹拌しながら実
施例1で使用したと同じ(但し、表面処理前の)溶融イ
ットリア粉末(日本研磨材工業(株)製)1016gを
添加した。このスラリーを約70℃で撹拌しながら1時
間加熱することによりイットリア粒子の表面処理を行っ
た。次いで、表面処理したイットリア粒子を吸引ろ過で
処理溶液から分離し脱イオン水で洗浄した。最後に、洗
浄後の粒子を60℃で乾燥することによりグリコール酸
で表面処理したイットリア粒子を得た。この粒子の熱重
量分析の結果、粒子にはグリコール酸が24重量%担持
されていた。また、表面処理したイットリア粒子の平均
粒子径は15μmであった。
【0072】参考例1で調製したイットリアゾル1重量
部をポリエチレンビーカーに入れ、撹拌機で撹拌しなが
ら、これに上記表面処理したイットリア粒子2.5重量
部を添加してスラリーを調製した。このスラリーは撹拌
下2週間以上安定であった。なお、上記表面処理したイ
ットリア粒子の熱重量分析および示差熱分析を行い得ら
れたTG−DTA曲線を図1に、また赤外吸収スペクト
ルを図2に示す。これらから、グリコール酸はイットリ
ア粒子表面に単に担持されているのではなく、イットリ
ア粒子表面と反応して、グリコール酸反応物層を形成し
ていることが分かる。すなわち、図1のTG−DTA曲
線において吸収ピークが約190℃で認められ、これは
グリコール酸単味の場合の約80℃より高温側に移行し
ており、また図2の赤外吸収スペクトルにおいてグリコ
ール酸中のカルボニル基の吸収波数1730cm-1が1
590cm-1にシフトしている。
【0073】比較例2 参考例1で調製したイットリアゾル1重量部をポリエチ
レンビーカーに入れ、撹拌機で撹拌しながら、これに実
施例2で使用したと同じ(但し、表面処理前の)溶融イ
ットリア粉末2重量部を添加してスラリーを調製した。
このスラリーは調製後の初期は安定であったが、調製後
約6時間でスラリーはゲル化し、スラリーの撹拌は不可
能となった。
【0074】実施例3 参考例2で調製した塩基性型ジルコニアゾル、実施例2
で得られた表面処理したイットリア粒子、ならびに下記
の有機バインダー、界面活性剤剤および消泡剤を使用し
てスラリーを調製した。
【0075】 重量部 塩基性型ジルコニアゾル 100 表面処理イットリア粒子 250 ポリビニルアルコール 6 (商品名:ポバール、クラレ(株)製) 界面活性剤 2 (商品名:アンヒトール、花王(株)製) 消泡剤 0.4 (商品名:フォーマスターP、サンノプコ(株)製) このスラリーは撹拌下2週間以上安定であった。なお、
1昼夜撹拌後のスラリー中のイットリア粒子の平均粒子
径は9μmであった。
【0076】実施例4 実施例3で調製した、粘度がザーンカップ#5で測定し
て約65秒のイットリア系スラリーおよび下記のジルコ
ニア系スラリーを使用して鋳型のテストピースを作成し
た。
【0077】 ワックスを薄く塗布した幅60mm、長さ180mm、
厚さ2mmのしんちゅう板を、実施例3で調製したイッ
トリア系スラリーに浸漬し、次いでこれに42〜100
メッシュの電融カルシア安定化ジルコニア粉末をふりか
けた後、室温で乾燥する操作を繰り返して2層のコーテ
ィング層を形成した。引続き、上記ジルコニア系スラリ
ーおよび24〜70メッシュの電融カルシア安定化ジル
コニア粉末を使用した以外は上記と同様にして、さらに
3層のコーティング層を形成し、合計5層のコーティン
グ層を形成した。次に、しんちゅう板の一端を加熱しワ
ックスを融解させながら、しんちゅう板をコーティング
層から抜取り生鋳型を得た。この生鋳型内に残留したワ
ックスは灯油により洗浄、除去した。
【0078】このようにして複数個の生鋳型を製作し、
焼成温度を変えて焼成することにより得られた鋳型をダ
イヤモンドカッターで切り出して鋳型内部の観察を行っ
た。その結果、いずれも鋳肌面はクラックもなく滑らか
なものであったが、焼成温度が低い場合は、鋳肌の強度
が低くもろい傾向にあり、1400℃以上で焼成するこ
とにより高強度のイットリア系鋳肌を有する鋳型を得る
ことができた。
【0079】
【発明の効果】本発明のイットリア系耐火性組成物にお
いては、キレート化剤などの表面改質剤で表面処理した
イットリア粒子を使用するため、イットリア粒子とゾル
との反応が防止もしくは抑制され、その結果、組成物ス
ラリーの経時安定性が改善される。すなわち、本発明の
イットリア系耐火性組成物は、経時的な安定性に優れ、
長期間保存しても増粘、ゲル化を起こさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた表面処理化イットリア粒子
のTG−DTA曲線である。
【図2】実施例2で得られた表面処理化イットリア粒子
の赤外吸収スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本山 厚司 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の 1 株式会社日本触媒触媒研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面改質剤で表面処理してなるイットリ
    ア粒子とイットリアゾルおよび/またはジルコニアゾル
    とを含有することを特徴とするイットリア系耐火性組成
    物。
  2. 【請求項2】 表面改質剤がキレート化剤である請求項
    1のイットリア系耐火性組成物。
  3. 【請求項3】 表面改質剤で表面処理してなるイットリ
    ア粒子。
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