JPH06117943A - 温度測定方法、該温度測定方法を用いた装置およびエネルギー貯蔵装置 - Google Patents

温度測定方法、該温度測定方法を用いた装置およびエネルギー貯蔵装置

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JPH06117943A
JPH06117943A JP4264792A JP26479292A JPH06117943A JP H06117943 A JPH06117943 A JP H06117943A JP 4264792 A JP4264792 A JP 4264792A JP 26479292 A JP26479292 A JP 26479292A JP H06117943 A JPH06117943 A JP H06117943A
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superconductor
rotor
secondary coil
coil
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Fumio Kishi
文夫 岸
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Abstract

(57)【要約】 【目的】非接触で高精度に超伝導体の温度を測定できる
温度測定方法と、この方法を適用したフライホイール型
のエネルギー貯蔵装置を提供する。 【構成】本発明の温度測定方法では、超伝導体14に近
接してこれをはさむように、相互に対向した1次コイル
16と2次コイル18とを配置する。交流電源17を用
いて1次コイル16に交流電流を印加し、そのとき2次
コイル18に発生する起電力を検出器19で測定して、
超伝導体14の温度を測定する。本発明のエネルギー貯
蔵装置は、回転子を超伝導体で構成しこの超伝導体の温
度を本発明の方法で測定して、回転子の温度制御と緊急
停止を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非接触で超伝導体の温
度を測定する温度測定方法と、該温度測定方法を用いた
装置と、前記温度測定方法が適用され超伝導体および永
久磁石を組み合わせた非接触型の軸受を有するフライホ
イール型のエネルギー貯蔵装置とに関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物高温超伝導体の発見を含む近年の
超伝導材料の進歩や磁束ピン止め技術の向上により、永
久磁石からの磁束に対するマイスナー効果による超伝導
体の反発を利用した非接触軸受の研究・開発が進められ
ている。そしてこの非接触軸受を利用し、回転体の運動
エネルギーの形態でエネルギー貯蔵を行なう装置、すな
わち磁気浮上型フライホイールを利用したエネルギー貯
蔵装置が注目されるようになってきた。このエネルギー
貯蔵装置では、原理的に超伝導体と永久磁石のどちらか
一方を回転子とし他方を固定子とすればよいが、超伝導
体の冷却と温度モニターの容易さから、超伝導体を固定
子とするのが通例である。
【0003】図8は、従来のエネルギー貯蔵装置の構成
を示す模式的断面図である。穴開き円板状の超伝導体2
02は、固定子201の上面に固定され、液体ヘリウム
や液体窒素などの冷媒で所定の動作温度にまで冷却され
るようになっている。また、超伝導体202の温度を測
定するために、熱電対や測温抵抗体などの測温素子20
7が、超伝導体202に接触するように設けられてい
る。回転子204は適当な質量および慣性モーメントを
有する円板状の部材であって、その下面には穴開き円板
状の永久磁石205が回転子204の回転軸に対して軸
対称になるように取り付けられている。
【0004】このエネルギー貯蔵装置では、マイスナー
効果による超伝導体202と永久磁石205間の反発に
よって固定子201から回転子204が浮上し、浮上し
た状態の回転子204に回転を与えることによってエネ
ルギーが回転の慣性エネルギーの形態で貯蔵されるよう
になっている。回転子204への回転エネルギーの入力
方法としては、上下から回転子204を回転駆動軸20
6ではさみ付けこれにより機械的にエネルギーを伝達す
る方法があり、また、回転子204にガスを吹き付けて
エネルギーを伝達する方法がある。一方、回転子204
からエネルギーを取り出す方法としては、回転子204
の回転駆動軸206を押し付け、機械的にエネルギーを
取り出す方法が一般的である。
【0005】ところでこのエネルギー貯蔵装置では、超
伝導体202の温度が上昇してその超伝導状態が破れる
と、回転子204を所定の浮上位置に保持する力が失わ
れることになり、高速回転中の回転子204が固定子2
01に接触したりして重大な事故をひき起こすことにな
る。そのため、装置の安全な動作を確保するために、測
温素子207によって超伝導体202の温度を常時監視
する必要がある。
【0006】ここで超伝導体の温度を測定する方法につ
いて説明する。現在までに知られている超伝導体の超伝
導転移の臨界温度はせいぜい100K程度以下なので、
超伝導体の温度の測定は一般に、熱電対、測温抵抗体、
半導体ダイオードなどの測温素子を超伝導体に接触させ
て行なわれる。この場合、超伝導体と測温素子との熱的
接触を十分に確保することに工夫を要し、超伝導体を用
いた装置の設計上制約を受けることが多かった。また、
測温素子へのリード線からの熱の流入を無視し得ない場
合もあり、超伝導体が回転しあるいは移動する場合に
は、測温素子と外部の計測器との電気的接続を行なうこ
とが困難であって測定自体を行なえない場合もあった。
【0007】一方、低温において非接触で正確に温度を
計測する方法として、本発明者らによる特開平4-143644
号公報に記載された発明にあるように、常磁性体を用い
た方法がある。この方法は、常磁性体をはさんで1次コ
イルと2次コイルを対向させ、1次コイルを交流で励磁
して2次コイルに誘起される電圧を計測することにより
常磁性体の磁化率を求め、求めた磁化率と磁化率の温度
変化曲線とから温度を求める方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のエネル
ギー貯蔵装置では、高速で回転している回転子に回転駆
動軸を機械的に接触させてエネルギーの注入や放出を行
なっているが、このような機械的な接触は故障などの原
因となるため、非接触で回転エネルギーの貯蔵と伝達が
行える方法を確立することが求められていた。非接触で
エネルギーの伝達が行える方法として、磁化の方向を交
互に入れ替えた小型の永久磁石を円周状に回転子に配置
し、回転磁場を印加することによってエネルギー注入を
行ない、電磁誘導によってエネルギーの放出を行なう方
法が考えられる。しかしこの場合には、回転子の回転に
ともなって、固定子側に取り付けられた超伝導体に時間
的に変動する磁場が加わることになり、これが制動力と
なって貯蔵されているエネルギーの損失をひき起こすこ
とになる。変動磁場が超伝導体に加わることを避けるた
めには、固定子側に永久磁石を、回転子側に超伝導体を
それぞれ配置することが考えられるが、通常の使用状態
では超伝導体が高速で回転しているため、熱電対や測温
抵抗体などのリード線を伴った測温素子を用いて超伝導
体の温度を測定することができない。上述の特開平4-14
3644号に示した常磁性体の磁化率を測定する方法を適用
することも考えられるが、この場合には測温用の常磁性
体を別途配置しなければならないので回転子の構成上の
問題点が生じ、さらにこの方法は液体ヘリウム温度近傍
などの低い温度では精度良く測定を行なえるが、イット
リウム系の酸化物高温超伝導体の臨界温度(約90K)
近傍では精度が悪くなることがあり、回転子側の超伝導
体としていわゆる高温超伝導体を使用した場合に十分な
温度測定の精度が得られないという問題点がある。上述
のようにこの種のエネルギー貯蔵装置では超伝導体の温
度を測定することが安全上不可欠であるので、回転子に
対して非接触でエネルギーを注入し放出する方法は、こ
の測温上の問題点のために発展していない。
【0009】本発明の目的は、測温用の常磁性体を使用
することなく非接触で高精度に超伝導体の温度を測定で
きる温度測定方法とこの温度測定方法を用いた装置とを
提供し、さらに、この温度測定方法を適用したエネルギ
ー貯蔵装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の温度測定方法
は、超伝導体の温度を測定する温度測定方法であって、
相互に対向して設けられた1次コイルおよび2次コイル
を使用し、前記1次コイルおよび前記2次コイルにはさ
まれた位置に測定対象の超伝導体を配置し、前記1次コ
イルを交流で励磁して前記2次コイルに誘導される起電
力を測定することにより前記測定対象の超伝導体の温度
を求める。
【0011】本発明の温度測定装置は、測定対象の物体
の温度を測定する温度測定装置であって、前記測定対象
の物体に熱的に接続された超伝導体と、前記超伝導体を
はさむように相互に対向して設けられた1次コイルおよ
び2次コイルと、前記1次コイルに交流電流を印加する
電源と、前記2次コイルに発生する起電力を測定する検
出器とを有する。
【0012】本発明のエネルギー貯蔵装置は、永久磁石
が取り付けられた固定子と超伝導体を含む回転子とを有
し、前記永久磁石と前記超伝導体との反発力によって前
記回転子を非接触で支持し、前記回転子の回転エネルギ
ーとしてエネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵装置にお
いて、前記超伝導体の両側に前記超伝導体をはさんで相
対する位置に配置された1次コイルおよび2次コイル
と、前記1次コイルに交流電流を印加する電源と、前記
2次コイルに発生する起電力を測定する電圧検出手段
と、前記超伝導体に冷媒を吹き付けて前記超伝導体を冷
却させる冷却手段と、緊急時に前記回転子の回転を停止
させる緊急停止手段と、前記電圧検出手段の測定した起
電力から前記超伝導体の温度を算出し、算出した結果に
応じて前記冷却手段と前記緊急停止手段の少なくとも一
方を作動させる制御手段とを有する。
【0013】
【作用】まず、本発明の温度測定方法の測定原理につい
て説明する。超伝導体をはさんで1次コイルと2次コイ
ルを配置し1次コイルに交流電流を印加した場合、2次
コイルに誘起される起電力の大きさは超伝導体に見かけ
上浸透する磁場の大きさに依存する。ところでこの磁場
の大きさは超伝導体の温度に依存するから、起電力の大
きさを測定することによって、超伝導体の温度がわかる
ことになる。超伝導体への磁場の見かけ上の浸透は、こ
れが主として超伝導体の渦糸現象によるものなので、超
伝導状態と常伝導状態との臨界温度直下の領域で大きく
変化する。したがって本発明の方法は、特に臨界温度直
下の領域の温度を正確に測定することができる。このこ
とは、例えば超伝導を利用した非接触軸受装置やエネル
ギー貯蔵装置など、温度上昇によって超伝導状態が破れ
ることを極力避けなければならない用途において、非接
触で、危険を察知するのに十分な精度が得られることを
意味する。
【0014】本発明のエネルギー貯蔵装置では、本発明
の温度測定方法によって超伝導体の温度を監視するの
で、高速で回転する回転子上の超伝導体の温度を精度良
く測定でき、特に、超伝導状態が破れる恐れのある温度
領域での温度を高い精度で測定でき、そのため非接触で
エネルギーの注入、放出を行なうことが危険なく行なえ
るようになる。
【0015】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して
説明する。
【0016】(実施例1)図1は本発明の温度測定方法
をX線回折装置に適用した実施例を示す模式断面図であ
る。この装置は、半円筒形状であってX線の透過する窓
部10が前面側に設けられた断熱容器9を有し、断熱容
器9の内部には、板状の超伝導体の中央部にくぼみを設
けた構成の試料ホルダー1が設けられている。試料ホル
ダー1のくぼみには試料粉末が充填される。一方、断熱
容器9の外部には、X線管球などのX線源11と比例係
数管などのX線カウンタ12が設けられている。これら
X線源11およびX線カウンタ12は、使用の種類に応
じて試料ホルダー1の位置を中心としてθ−2θの関係
で連動して回転するようになっており、X線源11から
のX線が窓部10を通過して所定の入射角で試料に入射
し、試料からの回折X線が再び窓部10を通過してX線
カウンタ12に入射するようになっている。
【0017】さらに断熱容器9内には、くぼみ部でない
部分の試料ホルダー1に近接しかつこれをはさむように
して、1次コイル2および2次コイル4が相互に対向し
て設けられている。また試料ホルダー1の裏側(くぼみ
部のない方)に低温のヘリウムガスなどの冷媒ガスを吹
き付けるための冷媒ガスノズル8が、断熱容器9に取り
付けられている。冷媒ガスノズル8の根元側は、断熱容
器9の外部に引き出され、温度制御装置7に接続されて
いる。1次コイル2は、断熱容器9外の交流電源3に接
続され、2次コイル4は、断熱容器9外に設けられ交流
電源3からの交流信号が参照信号として入力するロック
インアンプ5の信号入力側に接続されている。ロックイ
ンアンプ5の出力は温度検出装置6の入力側に接続され
ている。温度検出装置6は、超伝導体で構成された試料
ホルダー1の温度をロックインアンプ5の出力から算出
し、算出結果に基づいて試料ホルダー1が所定の温度と
なるように温度制御装置7を制御するものである。温度
制御装置7は、例えば図示しない液体ヘリウムタンク
と、液体ヘリウムタンク中の液体ヘリウムを加熱するヒ
ーター(不図示)によって構成されるものであり、温度
検出装置6からの信号に基づいて、冷媒ガスノズル8を
介して冷媒ガスを試料ホルダー1の裏側に吹き付けるよ
う構成されている。
【0018】ここで試料ホルダー1の作成方法について
説明する。試料ホルダー1を構成する超伝導体の原料
は、Y23,BaCO3,CuOであり、これらをY:
Ba:Cuの比が原子比で1.5:2:3となるように
混合し、大気中950℃で10時間反応させる。そのの
ち反応させたもの乳鉢で粉砕し、重量比で5%のAg2
Oを混合する。そしてこれをプレスして整形したのち、
大気中で1080℃20分間の熱処理を行ない、続いて
1000℃から950℃の温度領域を毎時5℃の速さで
徐冷する。さらに酸素気流中で500℃50時間の処理
を行なう。こうして得られた板状の超伝導体を厚さ4m
mに研磨し、さらにくぼみ部を形成することによって、
試料ホルダー1が完成する。
【0019】次に、本実施例の動作を説明する。
【0020】試料ホルダー1を冷却して予め超伝導状態
しておき、交流電源3によって1次コイル2に300H
z0.2Aの交流電流を印加する。すると1次コイル2
に交流磁場が発生し、この交流磁場に誘起されて2次コ
イル4の両端に交流の起電力が生じる。2次コイル4の
両端に生じた起電力は、ロックインアンプ5で検出され
る。上記の[作用]欄で述べたように、2次コイル4の
両端に発生する起電力は超伝導体すなわち試料ホルダー
1の温度に依存するから、1次コイルの励磁条件が同じ
ときに2次コイル4に発生する起電力の温度依存性を予
め求めておくことによって、試料ホルダー1の温度を求
めることができる。図2は、このようにして求めた起電
力の温度依存性を示す特性図である。
【0021】ロックインアンプ5の出力は温度検出装置
6に入力し、予め求めた温度依存性に基づいて、試料ホ
ルダー1の実際の温度値に変換される。そして温度検出
装置6は、試料ホルダー1の温度の設定値と実際の温度
とを比較し、設定値の方が高い場合には温度制御装置7
で発生する冷媒ガスの量を減らしあるいは冷媒ガスの温
度を高めるように温度制御装置7を制御し、設定値の方
が低い場合には冷媒ガスの量を増やしあるいは冷媒ガス
の温度を低めるように温度制御装置7を制御する。その
結果、試料ホルダー1は、設定値に温度が維持されるよ
うになる。このようにして試料ホルダー1の温度はその
超伝導転移の臨界温度以下の任意の温度に設定でき、こ
れによって所望の温度でのX線回折図形を正確に測定で
きるようになる。
【0022】以上、本発明の最初の実施例についてX線
回折装置を例に挙げて説明したが、X線回折に限らず、
反射分光測定、音速測定、比熱測定などの種々の物性値
の測定に本実施例は応用することができる。
【0023】(実施例2)次に、本発明の温度測定方法
を非接触軸受装置に応用した例について図3を用いて説
明する。
【0024】この非接触軸受装置は、回転軸13を非接
触で軸受けしようとするものであり、回転軸13には円
板状の超伝導体14が取り付けられている。一方、軸受
箱24の内部には、断面がコの字形の永久磁石15が設
けられ、超伝導体の外周部がこのコの字形の永久磁石1
5の上側内面と下側内面との間に挿入されるようになっ
ている。超伝導体14に近接しかつこれをはさむように
して、1次コイル16および2次コイル18が相互に対
向するように設けられている。1次コイル16は、軸受
箱24外の交流電源17に接続され、2次コイル18
は、起電力を測定するために軸受箱24外に設けられた
検出器19に接続されている。さらに軸受箱24には、
超伝導体14に冷媒ガスを吹き付けるための冷媒ガスノ
ズル22が設けられ、この冷媒ガスノズル22の根元側
は冷媒ガスを供給する温度制御装置21に接続されてい
る。また、緊急時に回転軸13を締め付け、回転軸13
の回転を停止させる緊急停止装置23が設けられてい
る。
【0025】検出器19の出力は温度検出装置20に入
力する。この温度検出装置20は、検出器19の出力か
ら超伝導体14の温度を算出し、算出した温度値に応じ
て温度制御装置21や緊急停止装置23を作動させるも
のである。具体的には温度検出装置20は、超伝導体1
4の温度が所定の値より少し高いときには温度制御装置
21からの冷媒ガスの量を増やしたり冷媒ガスの温度を
下げたりするように温度制御装置21を制御し、超伝導
状態が破れる恐れがある程度にまで超伝導体14の温度
が高い場合には緊急停止装置23を作動させ、超伝導体
14の温度が所定の値より低い場合には冷媒ガスの量を
減らしたり冷媒ガスの温度を上昇させるように温度制御
装置21を制御する。
【0026】次にこの非接触軸受装置の動作を説明す
る。超伝導体14を冷却して超伝導状態にすると、超伝
導体14と永久磁石15との間の反発力によって、超伝
導体14が永久磁石15から離れ、回転軸13が非接触
で保持された状態となる。このとき1次コイル16に交
流電源17によって交流電流を印加することにより、上
述の実施例1と同様に、超伝導体14の温度に応じた起
電力が2次コイル18に発生し、この起電力は検出器1
9で検出され、温度検出装置20で温度値に変化されて
必要な制御動作が行なわれる。これにより、超伝導体1
4の温度は一定に維持され、超伝導状態が破れる恐れが
あるような状態に至った場合には緊急停止装置23が作
動することになる。
【0027】(実施例3)次に、本発明の3番目の実施
例であるエネルギー貯蔵装置について説明する。このエ
ネルギー貯蔵装置は、適当な質量及び慣性モーメントを
有する回転子を非接触で保持し、回転子の回転エネルギ
ーの形態でエネルギーを貯蔵しようとするものであり、
エネルギーの注入および放出も非接触で行なわれるよう
に構成されている。図4はこのエネルギー貯蔵装置の構
成を示す模式断面図であり、図5はこのエネルギー貯蔵
装置における回転子とコイルの配置を示す上面図であ
る。
【0028】まず、回転子30の構成について説明す
る。回転子30は主として円板状の超伝導体31からな
り、その表面および裏面のそれぞれ中心部には回転子ハ
ブ32が取り付けられている。回転子ハブ32は、後述
する制動軸40に対応している。超伝導体31の外周部
に沿って円環状の取り付け台5が取り付けられている。
取り付け台5には、その外周にそって多数の小さな永久
磁石33が並んで設けられている。各永久磁石33の磁
化は、回転子30の半径方向に平行であり、隣接する永
久磁石33相互で磁化の方向が反転している。すなわち
回転子30の半径方向の外側からみたとき、S極とN極
とが交互に配置していることなる。また、円環状に並ん
でいる永久磁石33の内側に沿って、パーマロイリング
34が設けられている。パーマロイリング34は、永久
磁石33の内部の磁束を還流させ、超伝導体31の内部
に余計な磁束が侵入しないようにするためのものであ
る。
【0029】以上説明した回転子30は、保冷容器41
の内部に格納される。保冷容器41の内底面には、回転
子30を浮上させるための永久磁石38が取り付けられ
ている。回転子30に近接して回転子30の超伝導体3
1の部分を上下からはさむように、相互に対向する1次
コイル37および2次コイル38が保冷容器41に設け
られている。1次コイル37は図示しない交流電源に接
続され、2次コイル38は起電力を測定するための図示
しない検出器に接続されている。保冷容器41にはさら
に、低温のヘリウムガスなどの冷媒ガスを回転子30に
吹き付けるための冷媒ガスノズル39と、緊急時に回転
子30の回転を停止するための2本の制動軸40が設け
られている。冷媒ガスノズル39は、冷媒ガスを発生す
る図示しない温度制御装置に接続されている。制動軸4
0は、回転子30の上面と下面のそれぞれに対応して設
けられており、先端に円板状の部材が取り付けられた棒
状のものであって、緊急時には図示しない緊急停止装置
によって円板状の部材が回転子30の回転子ハブ31に
押し付けられるようになっている。これにより、回転子
30が2本の制動軸40ではさみ付けられことになっ
て、回転子30が緊急停止する。またこの制動軸40
は、装置の始動時に室温から回転子30を冷却する際、
回転子30の位置を設定するためにも使用される。
【0030】図5に示すように、回転子30を取り囲み
回転子30側の永久磁石33に近接するようにして、回
転数検出用コイル42、複数の回転磁場発生用コイル4
3、出力用コイル44が設けられている。回転数検出用
コイル42は、回転子30の回転に伴って永久磁石33
の発生する磁場が見かけ上周期的に変化することを検出
することにより回転子30の回転数を検出するものであ
って、図示しない回転数判別装置に接続されている。回
転磁場発生用コイル43は、隣接する永久磁石33間の
ピッチと同じピッチでコイル軸が永久磁石33の方を向
くように設けられ、図示しないドライバーで順次駆動さ
れるようになっている。出力用コイル44は、回転子3
0の回転に伴って発生する交流磁場によって生じる起電
力を電気エネルギーとして取り出すためのものであり、
全波整流を行なうための整流素子45が接続されてい
る。
【0031】次にこのエネルギー貯蔵装置の動作につい
て説明する。起動前の室温の状態では、回転子30は下
側の制動軸40の上に保持されている。温度制御装置
(不図示)から冷媒ガスノズル39を介して冷媒ガスを
回転子30に吹き付け回転子30を冷却すると超伝導体
31が超伝導状態となり、超伝導体31と固定子側の永
久磁石38との反発力によって回転子30が浮上し、回
転子30は非接触状態となる。ここで各回転磁場発生用
コイル43を順次駆動して回転磁場を発生させることに
より、この回転磁場と回転子30側の永久磁石33との
相互作用によって(同期電動機の原理によって)、回転
子30が回転し始める。このとき回転子30の回転と同
期して回転磁場を与えないと脱調するので、回転数検出
用コイル42の出力信号を監視し、この出力信号と同期
して各回転磁場発生用コイル43が駆動されるように、
不図示のドライバーを制御する。ここでは回転数検出用
コイル42を用いて回転子30の回転数を検出している
が、このほか、回転子30の一部に反射率が異なる部材
を使用して光学的に回転数を検出するようにしてもよ
い。このように回転磁場発生用コイル43を駆動するこ
とによって、回転エネルギーの形態で回転子30にエネ
ルギーが貯蔵されることになる。
【0032】一方、この回転子30に貯えられたエネル
ギーは、同期発電機の原理により、出力用コイル44を
介して交流の電気エネルギーとして取り出され、整流素
子45によって整流され、直流の電気エネルギーとして
外部に供給される。
【0033】1次コイル47に交流電流を印加すると、
上述の各実施例と同様に、超伝導体31の温度に応じ
て、2次コイル48に起電力が生じる。超伝導体31と
してY-Ba-Cu-O系酸化物高温超伝導体(臨界温度
cが約90K)を用いた場合の超伝導体31の温度と
2次コイル48の起電力との関係が、図6に示されてい
る。この図から明らかなように超伝導体の臨界温度直下
の領域では、温度の上昇に伴って急激に起電力が増加し
ており、温度上昇に伴う超伝導状態の破れのおそれを容
易に知ることができる。
【0034】2次コイル48の起電力は検出器(不図
示)によって検出され、検出結果に基づいて、図示しな
い温度検出装置は超伝導体31の温度を算出する。そし
て温度検出装置は、超伝導体31の温度が高いときには
温度制御装置(不図示)を制御して冷媒ガスの回転子3
0への吹き付け量を増加させ、回転子30の温度を下げ
るようにするとともに、回転子30の冷却が間に合わな
いときには、図示しない緊急停止装置を作動させること
によって制動軸40を回転子ハブ32に押し付け、回転
子30を緊急かつ安全に停止させる。
【0035】本実施例のエネルギー貯蔵装置は、本発明
の温度測定方法を適用して非接触で精度良く回転子側の
超伝導体の温度を測定するので、安全かつ非接触でエネ
ルギーの注入、放出を行なうことができる。
【0036】(実施例4)実施例3のエネルギー貯蔵装
置は同期電動機の原理で回転子30を回転させるが、誘
導電動機の原理で回転子30を回転させエネルギーを注
入するようにすることもできる。図7は、誘導電動機の
原理で回転子30に非接触でエネルギーを注入するエネ
ルギー貯蔵装置の構成を示す模式断面図である。
【0037】このエネルギー貯蔵装置は、実施例3のエ
ネルギー貯蔵装置とほぼ同様の構成であるが、回転子3
0にその回転軸と同軸のアルミニウム円筒46が取り付
けられ、回転磁場発生用コイル43の取り付け位置がこ
のアルミニウム円筒46の外周面に近接する位置であ
り、さらに回転数検出用コイルや回転数判別装置が設け
られていない点で相違する。このエネルギー貯蔵装置で
は、回転磁場発生用コイル43を順次駆動してアルミニ
ウム円筒46の周りに回転磁場を発生させると、アルミ
ニウム円筒46に渦電流が流れ、この渦電流と回転磁場
との相互作用により回転子30に対する回転力が発生す
る。この実施例の装置では、回転磁場と回転子30の回
転数を同期させる必要がないので回転数を検出する必要
がなく、実施例3の装置に比べて構造を簡単にすること
ができる。なお、エネルギーの放出の動作、超伝導体3
1の温度測定および温度制御の動作、回転子30の緊急
停止の動作については、上述の実施例3に示したものと
同一である。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように本発明の温度測定方
法は、超伝導体をはさんで1次コイルと2次コイルを配
置し、1次コイルを交流で励磁したときに2次コイルに
発生する起電力を測定することにより、特に臨界温度直
下の領域で、超伝導体の温度を非接触で精度良く測定で
きるという効果がある。
【0039】本発明のエネルギー貯蔵装置は、高速で回
転する回転子上の超伝導体の温度を本発明の温度測定方
法によって監視することにより、超伝導状態が破れる恐
れのある温度領域での超伝導体の温度を高い精度で測定
できるので、非接触でエネルギーの注入、放出を行なう
ことが危険なく行なえ、エネルギー貯蔵装置としての効
率が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の温度測定方法を適用したX線回折装置
の構成を示す模式断面図である。
【図2】超伝導体の温度と2次コイルの起電力との関係
を示す特性図である。
【図3】本発明の温度測定方法を適用した非接触軸受装
置の構成を示す模式断面図である。
【図4】実施例3でのエネルギー貯蔵装置の構成を示す
模式断面図である。
【図5】図4のエネルギー貯蔵装置における回転子とコ
イルの配置を示す上面図である。
【図6】超伝導体の温度と2次コイルの起電力との関係
を示す特性図である。
【図7】実施例4でのエネルギー貯蔵装置の構成を示す
模式断面図である。
【図8】従来のエネルギー貯蔵装置の構成を示す模式的
断面図である。
【符号の説明】
1 試料ホルダー 2,16,36 1次コイル 3,17 交流電源 4,18,37 2次コイル 5 ロックインアンプ 6,20 温度検出装置 7,21 温度制御装置 8,22,39 冷媒ガスノズル 9 断熱容器 10 窓部 11 X線源 12 X線カウンタ 13 回転軸 14,31 超伝導体 15,33,38 永久磁石 19 検出器 23 緊急停止装置 24 軸受箱 30 回転子 32 回転子ハブ 34 パーマロイリング 35 取り付け台 40 制動軸 41 保冷容器 42 回転数検出用コイル 43 回転磁場発生用コイル 44 出力用コイル 45 整流素子 46 アルミニウム円筒

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超伝導体の温度を測定する温度測定方法
    であって、相互に対向して設けられた1次コイルおよび
    2次コイルを使用し、前記1次コイルおよび前記2次コ
    イルにはさまれた位置に測定対象の超伝導体を配置し、
    前記1次コイルを交流で励磁して前記2次コイルに誘導
    される起電力を測定することにより前記測定対象の超伝
    導体の温度を求める温度測定方法。
  2. 【請求項2】 測定対象の物体の温度を測定する温度測
    定装置であって、前記測定対象の物体に熱的に接続され
    た超伝導体と、前記超伝導体をはさむように相互に対向
    して設けられた1次コイルおよび2次コイルと、前記1
    次コイルに交流電流を印加する電源と、前記2次コイル
    に発生する起電力を測定する検出器とを有する温度測定
    装置。
  3. 【請求項3】 試料の物理的および/または化学的特性
    を測定する特性測定装置において、前記試料を保持し少
    なくとも一部が超伝導体から構成された試料ホルダー
    と、前記試料ホルダーのうち前記超伝導体の部分をはさ
    むように相互に対向して設けられた1次コイルおよび2
    次コイルと、前記1次コイルに交流電流を印加する電源
    と、前記2次コイルに発生する起電力を測定する検出器
    と、前記検出器の検出した起電力の値から前記超伝導体
    の温度を算出し算出した温度と予め設定された温度とを
    比較して前記試料ホルダーの温度を前記予め設定された
    温度に維持する温度維持手段とを有することを特徴とす
    る特性測定装置。
  4. 【請求項4】 永久磁石が配置された固定子と超伝導体
    が配置された回転子とを有し、前記永久磁石と前記超伝
    導体との反発力によって前記回転子を前記固定子から浮
    上させる非接触軸受装置において、前記超伝導体をはさ
    むように相互に対向して設けられた1次コイルおよび2
    次コイルと、前記1次コイルに交流電圧を印加する電源
    と、前記2次コイルに発生する起電力を検出する検出器
    と、前記回転子の温度を制御する温度制御手段と、前記
    検出器の検出した起電力の値から前記超伝導体の温度を
    算出し算出した温度に応じて前記温度制御手段を駆動し
    て前記回転子の温度を所定の温度に維持する温度検出手
    段とを有することを特徴とする非接触軸受装置。
  5. 【請求項5】 永久磁石が配置された固定子と超伝導体
    が配置された回転子とを有し、前記永久磁石と前記超伝
    導体との反発力によって前記回転子を前記固定子から浮
    上させる非接触軸受装置において、前記超伝導体をはさ
    むように相互に対向して設けられた1次コイルおよび2
    次コイルと、前記1次コイルに交流電圧を印加する電源
    と、前記2次コイルに発生する起電力を検出する検出器
    と、緊急時に前記回転子の回転を停止させる緊急停止手
    段と、前記検出器の検出した起電力の値から前記超伝導
    体の温度を算出し算出した温度が所定の温度を越えた場
    合に前記緊急停止手段を作動させる温度検出手段とを有
    することを特徴とする非接触軸受装置。
  6. 【請求項6】 永久磁石が取り付けられた固定子と超伝
    導体を含む回転子とを有し、前記永久磁石と前記超伝導
    体との反発力によって前記回転子を非接触で支持し、前
    記回転子の回転エネルギーとしてエネルギーを貯蔵する
    エネルギー貯蔵装置において、前記超伝導体の両側に前
    記超伝導体をはさんで相対する位置に配置された1次コ
    イルおよび2次コイルと、前記1次コイルに交流電流を
    印加する電源と、前記2次コイルに発生する起電力を測
    定する電圧検出手段と、前記超伝導体に冷媒を吹き付け
    て前記超伝導体を冷却させる冷却手段と、緊急時に前記
    回転子の回転を停止させる緊急停止手段と、前記電圧検
    出手段の測定した起電力から前記超伝導体の温度を算出
    し、算出した結果に応じて前記冷却手段と前記緊急停止
    手段の少なくとも一方を作動させる制御手段とを有する
    ことを特徴とするエネルギー貯蔵装置。
  7. 【請求項7】 回転子にはその回転軸を中心とする円周
    上に複数の永久磁石が並んで配列され、並んで配列され
    た前記複数の永久磁石の磁化方向は交互に反転してお
    り、前記複数の永久磁石に近接するように前記固定子に
    固定された出力用コイルが設けられ、前記回転子の回転
    にともなって前記出力用コイルに誘導される電力を外部
    に取り出すことによって前記回転子の回転エネルギーを
    取り出す請求項6に記載のエネルギー貯蔵装置。
  8. 【請求項8】 回転子に配置された複数の永久磁石の内
    側に近接して軟磁性体からなるリングが前記回転子上に
    配置されている請求項7に記載のエネルギー貯蔵装置。
  9. 【請求項9】 回転子の回転数を測定する回転数検出手
    段と、前記回転子上に配置された複数の永久磁石に近接
    するように固定子に固定された複数の回転磁場発生用コ
    イルと、前記回転数検出手段で測定された前記回転子の
    回転速度に同期して前記各回転磁場発生用コイルに順次
    電流を印加する回転磁場発生用駆動手段とを有し、前記
    各回転磁場発生用コイルによって回転磁場を発生させる
    ことにより外部からエネルギーが注入される請求項7ま
    たは8に記載のエネルギー貯蔵装置。
  10. 【請求項10】 回転子に取り付けられ前記回転子の回
    転軸と同軸の金属円筒と、前記金属円筒に近接するよう
    に固定子に固定された複数の回転磁場発生用コイルと、
    前記各回転磁場発生用コイルに順次電流を印加する回転
    磁場発生用駆動手段とを有し、前記各回転磁場発生用コ
    イルによって回転磁場を発生させることにより外部から
    エネルギーが注入される請求項7または8に記載のエネ
    ルギー貯蔵装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10768134B2 (en) 2016-07-07 2020-09-08 State Atomic Energy Corporation “Rosatom” On Behalf Of The Russian Federation Device for determining the parameters of strip-type superconductors

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