JPH0591872A - 動物細胞の逐次培養方法 - Google Patents

動物細胞の逐次培養方法

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JPH0591872A
JPH0591872A JP4038123A JP3812392A JPH0591872A JP H0591872 A JPH0591872 A JP H0591872A JP 4038123 A JP4038123 A JP 4038123A JP 3812392 A JP3812392 A JP 3812392A JP H0591872 A JPH0591872 A JP H0591872A
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JP
Japan
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culture
carrier
cells
animal cells
cell
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JP4038123A
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English (en)
Inventor
Hirohisa Kubota
裕久 久保田
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Mitsubishi Kasei Corp
Original Assignee
Mitsubishi Kasei Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 動物細胞を大量に連続増殖する。 【構成】 親水性合成高分子からなる細胞培養担体を用
いて動物細胞を増殖するにあたり、細胞の付着した培養
担体と新しい培養担体とを混合することにより、細胞の
一部を新しい培養担体に移し替えて、動物細胞を連続的
に増殖させる。 【効果】 トリプシン処理工程不要、細胞活性の維持可
能、微生物による汚染防止、等の効果が奏され、動物細
胞を容易かつ効率的に、連続的に大量増殖させることが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は動物細胞の逐次培養方法
に係り、詳しくは、親水性合成高分子からなる細胞培養
担体を用いて動物細胞を大量に増殖させる方法であっ
て、細胞活性を損なうことなく、動物細胞を連続的に増
殖させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、動物細胞を培養するための担体と
して、粒子状担体、多孔性担体、繊維状担体、薄膜状担
体(特開昭64−47372号公報)等、種々の培養担
体が開発されている。とりわけ、微小球体表面に細胞を
付着又は固定化することで動物細胞を擬似浮遊状態で培
養するマイクロキャリア(以下「MC」と略称す
る。)、及び、担体の内部に細胞を付着又は物理的に細
胞を固定化し増殖する多孔性担体(“TIBTECH”
May 1990,Vol.8,131−136)がよ
く知られている。前者のMCの例として、サイトデック
ス(Cytodex(商品名),Pharmacia社
製)、メタクリル酸エステル系担体(特開昭63−71
173号、特開昭63−226282号、特開昭64−
10979号各公報)等が知られている。一方、担体の
内部も付着体として利用している多孔性担体としては、
ベラックス社の担体(特開昭62−502936号公
報)、ニルソン社の担体(特開昭62−169837号
公報)、三菱化成株式会社の担体(特開平2−2912
60号、特開平3−43076号各公報)等の報告があ
る。
【0003】従来、細胞を播種する場合、 約0.25%のトリプシン、その他、ディスパーゼ、
コラゲナーゼ溶液、 約0.02%のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)
又はエチレングリコール−ビス−(β−アミノエチルエ
ーテル)−N,N’−四酢酸(EGTA)等のキレート
剤、 上記,の混合溶液、 の何れかを添加し、担体から一度細胞を剥離、回収した
後、再度細胞を播種し直す方法が一般的である。
【0004】の例として、P, Vretblad、 D, Billing
(World Biotech Rep., 1巻,97−105(198
5))らは、培養担体としてデキストランの架橋重合体
からなるサイトデックスを用いた、Vero細胞(アフ
リカミドリザル腎細胞)及びMRC−5細胞(ヒト胎児
正常二倍体細胞)の例を報告している。それによると、
0.10%トリプシンの0.02%EDTA溶液中(p
H8.0〜8.2)で細胞を回収した後、再度播種し、
逐次培養を行っているが、連続培養する上で、指数増殖
期にある細胞をEDTA溶液中で溶液中の2価イオンを
除去し、pH8.0〜8.2に調節したリン酸緩衝溶液
で細胞を剥離することが重要であることを報告してい
る。更に、FS−4細胞(ヒト包皮細胞)又はBK細胞
(ウシ腎細胞)を用いて、トリプシン処理により一度細
胞を剥離した後、再度細胞を播種し断続的な培養も行っ
ている。
【0005】の例として、例えば、CL. Crespi, WG.
Thilly(Biotechnol. Bioeng., 23巻,983(198
1))らは、培養担体としてサイトデックスを用いた例
を報告している。彼らは、通常のCa2+の濃度範囲では
逐次培養が不可能なCHO−Kl細胞(チャイニーズハ
ムスター子宮卵巣細胞)、LLC−MK2 細胞(アカゲ
ザル腎細胞)を用い、Ca2+濃度を下げることにより、
逐次培養が可能であることを報告している。T-Y, Tao,
W.S. Hu(Biotech. Bioeng., 32巻,1037(198
8))らは、TCL−598(ヒト腎細胞)、FS−4
細胞、BK細胞を用いてサイトデックス−3でトリプシ
ン処理によって連続培養ができることを報告している。
また、TCL−598細胞を0.5mMのEDTA又は
EGTA処理で、それぞれ91%及び93%の収率で細
胞が回収できることを報告している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたように、従
来の天然系の培養担体を用いる方法では、何らかの方法
で細胞を担体から剥離し回収した後、改めて播種する方
法が採用されていた。即ち、トリプシン溶液、キレート
剤溶液又は両者の混合溶液を添加し、一度細胞を担体上
から剥離した後、再度、新しい培養担体に回収した細胞
を播種していた。この方法の特徴は、細胞を培養担体に
均一に付着させることができる点にある。しかしなが
ら、トリプシン或いはキレート剤等で細胞を回収する逐
次培養方法は、以下に述べるような欠点が挙げられる。 細胞の剥離工程が煩雑で、細胞によっては、剥離する
のに長時間を要する。 細胞を剥離及び回収するための付帯装置が必要であ
る。 トリプシン処理の場合は、特に、細胞に大きなダメー
ジを与えるため、播種直後の細胞の伸展、増殖性が低下
する。又は、死細胞の割合が増加する。 酵素の活性が強い場合には回収した細胞溶液がゲル状
となり、細胞が均一に分散し難い。この結果、担体に細
胞が一様に付着しない。 微生物による汚染の危険性が増加する。特に、大量培
養の場合、及びの問題点が顕在化する。
【0007】本発明は上記従来の問題点を解決し、動物
細胞の大量培養の際、上述の細胞の剥離操作及び回収工
程を経ることなく、細胞活性を高く維持して、連続的
に、かつ効率的に細胞培養を行うことができる動物細胞
の逐次培養方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】請求項1の動物
細胞の逐次培養方法は、動物細胞を細胞培養担体を用い
て培養液中にて培養する方法において、親水性合成高分
子からなる細胞培養担体を用い、動物細胞が付着した古
い細胞培養担体を新しい細胞培養担体と混合することに
より、古い培養担体から新しい培養担体へ移し替え、動
物細胞を連続的に増殖させることを特徴とする。請求項
2の動物細胞の逐次培養方法は、請求項1の方法におい
て、下記式で求められる細胞培養担体の移し替え比が、
1.1〜15倍であることを特徴とする。
【0009】
【数2】
【0010】請求項3の動物細胞の逐次培養方法は、請
求項1又は2の方法において、培養液を懸濁状態又は擬
似浮遊状態で、古い培養担体から新しい培養担体へ移し
替えることを特徴とする。請求項4の動物細胞の逐次培
養方法は、請求項1〜3の方法において、動物細胞が付
着依存性細胞であることを特徴とする。請求項5の動物
細胞の逐次培養方法は、請求項1〜4の方法において、
移し替え時の培養液中の血清濃度が5〜10%であるこ
とを特徴とする。請求項6の動物細胞の逐次培養方法
は、請求項1〜5の方法において、親水性合成高分子
が、(メタ)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エス
テルを構成単位とすることを特徴とする。請求項7の動
物細胞の逐次培養方法は、請求項6の方法において、細
胞培養担体が、正に荷電し得る化学残基を、乾燥細胞培
養担体1グラム当り0.5〜2.0ミリ当量含有し、該
正に荷電し得る構成モノマー単位のCLOGP値の範囲
が、−1.5〜+2.0であることを特徴とする。請求
項8の動物細胞の逐次培養方法は、請求項6又は7の方
法において、親水性合成高分子が疎水性残基を有する重
合性モノマー単位を1〜40重量%含有し、該疎水性モ
ノマー単位のCLOGP値が+1.5〜+4.0である
ことを特徴とする。請求項9の動物細胞の逐次培養方法
は、請求項1〜8の方法において、細胞培養担体の形状
が粒子状であり、その平均粒径が50〜1000μmで
あることを特徴とする。請求項10の動物細胞の逐次培
養方法は、請求項1〜9の方法において、培養担体の膨
潤度が、pH7.4のリン酸緩衝溶液中で10〜30m
l/gであることを特徴とする。
【0011】即ち、本発明者は、前記の問題を解決すべ
く鋭意検討を行った結果、細胞を連続的に良好に移し替
えするためには、特定の細胞培養担体を用いること、そ
してそれにより、細胞を培養担体から剥離する操作が不
用となることを見出し、本発明を完成させた。従来、サ
イトデックス等の天然系の培養担体では、何らかの方法
で細胞を担体から剥離し回収した後、改めて播種する方
法が用いられていた。しかし、本発明は、親水性合成高
分子からなる細胞培養担体を用いるものであって、動物
細胞の培養、特に大量培養を行う際に有用な培養方法で
ある。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
は、細胞培養担体として、蛋白質等に対して非特異的吸
着の少ない素材、即ち親水性合成高分子材料からなるも
のを用いる。ただし、当該高分子材料は、正に荷電しう
る化学的残基を付与するため、素材自身は電荷的に中性
状態であることが好ましい。使用される親水性合成高分
子としては、従来よく知られているもの、例えば、アク
リル酸エステル又はメタクリル酸エステル(以下、「ア
クリル又はメタクリル」を「(メタ)アクリル」と記載
する。)、(メタ)アクリルアミド、ポリビニルアルコ
ール、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポ
リアミノ酸、ポリウレタン等が挙げられる。とりわけ好
ましい親水性合成高分子材料としては、(メタ)アクリ
ル酸エステルが挙げられる。
【0013】本発明においては、このような高分子材料
の親水性−疎水性の指標として、CLOGP値を用い
る。このCLOGP値(ポモナ大学が作成;詳細につい
ては、特開昭64−10979号の中で記載されてあ
る。)は、溶質の1−オクタノール−水系における分配
係数の対数値を示したものである。この値は、溶液に溶
解した溶質に適用されるものである。しかし、本発明で
は高分子にも応用するため、ポリマーの相当するモノマ
ー単位のCLOGP値を指標とした。この手法により、
高分子の疎水性を半定量的に表現することができる。
【0014】材料を親水性にするためには、CLOGP
値が低いモノマー単位が好適であり、そのモノマーのC
LOGP値は、−1.5〜+2.0の範囲であることが
好ましい。このようなCLOGP値を有する代表的な
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコー
ル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレー
ト、グリシジル(メタ)アクリレート、及び、下記表1
〜表3に記載したモノマー単位等が挙げられる。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】このような親水性合成高分子からなる本発
明に係る細胞培養担体は、正に荷電しうる化学的残基に
相当するモノマー単位を乾燥培養担体1グラム当り0.
5〜2.0ミリ当量含有することが好ましい。この含有
量が0.5ミリ当量未満の場合は、付着率及び増殖性が
低下し、一方、2.0ミリ当量を超える場合には電荷阻
害により増殖性が低下する。なお、細胞の付着性や増殖
性に影響を与える因子として、本発明に係る水不溶性培
養担体中の正に荷電しうる化学的残基に相当するモノマ
ー単位のCLOGP値も重要である。水不溶性の培養担
体表面に細胞が付着し増殖するためには、含有される正
に荷電しうる化学的残基に相当するモノマー単位のCL
OGP値の範囲は、−1.5〜+2.0であることが好
ましい。
【0019】また、細胞が良好な伸展増殖を示すために
は、培養担体の親水性合成高分子中に、疎水性残基を有
する重合性モノマー単位を1〜40重量%含有し、該モ
ノマー単位のCLOGP値が、+1.5〜+4.0の範
囲にあることが好ましい。疎水性残基を有する重合性モ
ノマーの具体的な例としては、スチレン(2.87)、
フェニル(メタ)アクリレート(2.06、2.3
7)、ベンジル(メタ)アクリレート(2.52、2.
83)、フェネチル(メタ)アクリレート(2.84、
3.15)、フェノキシエチル(メタ)アクリレート
(2.50、2.81)、フェノキシジエチレングリコ
ール(メタ)アクリレート(2.56、2.87)、フ
ェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、ヘキシル(メタ)アクリレート(3.39、3.7
0)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げら
れる。ただし、ここに記載されていない重合性モノマー
であっても、本発明の要旨を超えない限り好適に使用さ
れる。なお、上記カッコ内の数値はCLOGP値であ
り、2つの値が記載されている場合、前者はアクリレー
トの値、後者はメタクリレートの値である。
【0020】上記のモノマー単位を構成成分とする細胞
培養担体は、水不溶性高分子からの可溶性成分の溶出を
できる限り抑えるため、架橋剤成分を添加することが好
ましい。架橋剤成分としては、前述のモノマー成分と共
重合性を有する多官能性のビニルモノマーが好適であ
り、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリ
セロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】本発明に係る水不溶性の細胞培養担体の製
造は、従来提案されている培養担体の製造方法に従って
行えば良い。
【0022】本発明に係る細胞培養担体の膨潤度は、p
H7.4のリン酸緩衝溶液(以下、「PBS」と略
す。)中で乾燥培養担体1グラム当たり10〜30ml
/gであることが好ましい。担体の膨潤度は、通常の担
体表面のみを付着面とする培養担体では、担体の架橋
度、重合の際に添加する希釈剤により制御することが可
能である。膨潤度が大き過ぎる場合には、培養担体の沈
降速度が遅すぎる。逆に膨潤度が小さ過ぎる場合には、
沈降速度が大きすぎるため細胞に与える剪断力が大きく
なる。更に、一般的な傾向として、膨潤度が大きい方が
細胞の移し替えが容易であることが観察された。
【0023】本発明に係る細胞培養担体の形状は、粒子
状、平膜状、繊維状のいずれであっても良い。培養担体
が粒子状である場合には、その大きさは、平均粒径で5
0〜1000μmであることが好ましい。また、その担
体は、その担体内部に10μm〜500μmの平均細孔
径を有する多孔性担体であっても良い。
【0024】本発明の方法においては、動物細胞を培養
液中にて培養するにあたり、培養液を懸濁状態又は擬似
浮遊状態にて培養担体の移し替えを行なうのが好まし
い。この場合、培養液を懸濁状態又は擬似浮遊状態とす
るために、培養液を撹拌する際動物細胞は撹拌等による
剪断力に弱いため、穏やかに撹拌しなければならない。
しかし、懸濁状態を維持するためのある程度の剪断力は
必要である。懸濁状態を維持するための剪断力をできる
限り小さくするためには、培養担体の比重を小さくする
ことが好ましい。従って、良好な懸濁状態又は擬似浮遊
状態で培養するためには、細胞培養担体の比重は1.0
0〜1.15g/mlであることが好ましい。
【0025】本発明において、培養液中における細胞培
養担体の占める容積は、培養目的、培養担体、培養方法
により異なり、これらにより担体の投入量は大きく異な
る。一般に、細胞培養担体は培養液に対して2〜40容
量%、より好ましくは5〜20容量%の範囲で加える。
細胞培養担体の投入量が少ない場合には、細胞密度が低
く、培養効率が悪い。一方、多すぎる場合には、培地、
酸素、老廃物の除去が律速となり、細胞密度が低くとど
まる他、細胞培養担体間の衝突頻度が高くなり、細胞が
担体から剥離、脱落しやすくなる。
【0026】本発明に係る逐次培養は、例えば、以下に
述べる方法で実施される。まず、スケールアップ培養に
用いられる。通常の培養を行い飽和状態に達した培養担
体を、新たに準備した培養液中に加えることで逐次培養
を行うことができる。その他、継代培養に用いられる。
この場合には、飽和状態に達した培養担体の一部を抜き
出し、新たに準備した培養液中に加えることで逐次培養
を行うことができる。
【0027】飽和状態に達した培養担体中に、更に新し
い培養担体を追加し、逐次培養する方法も挙げられる。
例えば、培養担体に対する播種密度が低い場合、特に平
板効率が低いため、細胞が成長しないことがよくある。
この場合、初期培養は、できる限り、確実に培養できる
播種細胞密度で培養を行い、その後、新しい培養担体を
追加して逐次培養を行うことにより目的とする細胞数を
得ることができる。更に、この培養方法を用いるなら
ば、極端な例として、断続的に数回逐次培養を繰り返す
ことで、一つの培養器内で細胞数、或いは、細胞培養を
大きくすることが可能である。本発明において、以下に
定義される移し替え比、即ち、
【0028】
【数3】
【0029】は、細胞によって大きく異なる。移し替え
比が比較的大きい細胞種としては、HeLa(ヒト子宮
卵巣)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、C6
(ラットグリオーマ)細胞等が挙げられる。これに対
し、移し替え比が小さい細胞種としては、WI38(ヒ
ト胎児正常二倍体)、Vero(アフリカミドリザル
腎)、COS−1(アフリカミドリザル腎)、L−92
9(マウス皮下脂肪組織)、BHK−21(シリアンハ
ムスター腎)、MDCK(イヌ腎)等の細胞が挙げられ
る。
【0030】本発明は動物細胞を大量培養する際に有用
であるが、通常、大量培養に移行する場合、スケールア
ップの倍率は、移し替え比で1.1〜15倍、特に2〜
15倍が良い。この移し替え比が小さ過ぎる場合、スケ
ールアップの効率が悪く実用的ではない。一方、移し替
え比が大き過ぎる場合、新しく加えた培養担体に均一に
細胞が付着し難い。この場合、特に大きな悪影響はない
が、加えた培養担体が有効に使用されないため、効率が
悪い。本発明において、以下に定義される増殖比、即
ち、
【0031】
【数4】
【0032】は、細胞種、培養条件(血清濃度、培養容
積)、培養担体等によって異なる。ただし、細胞の平板
効率を考慮しなければならないため、この値は大きくは
できない。
【0033】細胞を移し替える際には、新たに加えた培
養担体に細胞を均一に付着させるため、培養担体が滞留
しないよう、流動させることが好ましい。流動状態は、
担体間の衝突や、担体から細胞が剥離しない状態を維持
しなければならない。なお、前述した懸濁状態又は擬似
浮遊状態で培養可能な細胞培養担体としては、従来技術
で記述した具体例が挙げられる。例えば、粒子状担体、
多孔性担体、繊維状担体、薄膜状担体等、種々の培養担
体が開発されている。これらの培養担体は、撹拌羽根に
よる懸濁培養又は培養液の上方向流による擬似浮遊培養
等のいずれの培養方法に対しても、本発明を適用するこ
とができる。培養担体を移し替えした後は、細胞は指数
増殖期にあるため、血清を添加することが好ましい。培
養液中の血清濃度は5〜10%であることが好ましい。
【0034】このような本発明により、細胞培養担体を
用いて動物細胞を大量に増殖させる際、担体に付着した
細胞を新たに担体と混合することにより、細胞を連続的
に増殖させることが可能になった。なお、本発明の方法
は、動物細胞を対象としている。動物細胞は付着依存性
細胞と浮遊性細胞に大別され、本発明は、両者とも適用
は可能である。しかし、一般的には、浮遊性細胞は培養
担体を用いた培養には使用されない傾向にあるため、本
発明は付着依存性細胞に多く適用されるものと考えられ
る。
【0035】
【実施例】以下に製造例、実施例及び比較例を挙げて本
発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超
えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、移し替え実験に使用した細胞は、 Vero(アフリカミドリザル腎)細胞 CHO−Kl(チャイニーズハムスター)子宮卵巣細胞 HeLa(ヒト子宮卵巣)細胞 C6(ラットグリオーマ)細胞 であり、いずれの細胞も大日本製薬株式会社から購入し
たものである。
【0036】製造例1 細胞培養担体を、以下に述べる方法により製造した。3
00mlの四ツ口フラスコに温度計、冷却管、窒素導入
管、撹拌羽根を取り付け、この中へ塩化カルシウム・2
水塩25g、3%ポリビニルアルコール水溶液30m
l、イオン交換水85mlを入れ撹拌した。別に、1−
ヘキサノール27g、シクロヘキサノール35g、ポリ
エチレングリコールメタクリレート(商品名「ブレンマ
ーPE−350」日本油脂製)11.2g、グリシジル
メタクリレート6.5g、フェノキシジエチレングリコ
ールアクリレート(商品名「AMP−20G」新中村化
学製)4.4g、ポリエチレングリコールジメタクリレ
ート(商品名「4G」新中村化学製)1.3g、及び重
合開始剤として2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチ
ルバレロニトリル)30mgを溶解したモノマー溶液を
調製し、この溶液を前記四ツ口フラスコに滴下した後、
窒素雰囲気下で重合反応を行うため、窒素を通気し溶存
酸素を除去した。室温から徐々に昇温し、60℃で5時
間重合反応を行った。重合終了後、該ポリマーをブッフ
ナー漏斗上にあけ、水洗後、50%メタノール水溶液で
ポリマーを洗浄した。ポリマーを再度フラスコ内へ戻し
た。この操作を繰り返し、1−ヘキサノール及びシクロ
ヘキサノール臭がしなくなるまでポリマーを洗浄した。
得られたポリマーは、少々撥水性を示し、無色透明球状
体であった。重合収率は77%であった。
【0037】該ポリマーを用いてアミノ化反応を行っ
た。水中で30mlのポリマーを80%1,4−ジオキ
サン水溶液で充分に洗浄し置換した。これを300ml
のフラスコ内に入れ、更にジオキサンを30ml追加し
た。この中へエタノールアミン10gのジオキサン溶液
30mlを滴下し、75℃で4時間アミノ化反応を行っ
た。反応終了後、アミン臭がしなくなるまで充分にポリ
マーを水洗した。得られたポリマーを標準篩を用いて、
210μm〜250μmの範囲で分級した。
【0038】元素分析より、アミンの官能基量は1.2
8ミリ当量/g、であった。PBS溶液(日水製薬製)
(以下、同種の溶液を使用。)中における該ポリマーの
膨潤度は14.8ml/g、平均粒径は175μm、比
重は1.03g/mlであった。本製造例の場合、正に
荷電するモノマー単位は、メタクリル酸ヒドロキシエチ
ルアミノ−2−ヒドロキシエチルでありそのCLOGP
値は−0.67である。また、相当する疎水性残基を有
するモノマー単位はフェノキシエチルアクリレートであ
り、そのCLOGP値は2.81である。
【0039】製造例2 細胞培養担体を、以下に述べる方法により製造した。3
00mlの四ツ口フラスコに温度計、冷却管、窒素導入
管、撹拌羽根を取り付け、この中へ塩化カルシウム・2
水塩25g、3%ポリビニルアルコール水溶液30m
l、イオン交換水85mlを入れ撹拌した。別に、1−
ヘキサノール35g、1−オクタノール35g、ポリエ
チレングリコールメタクリレート(ブレンマーPE−3
50)12.7g、ジエチルアミノエチルメタクリレー
ト(商品名「アクリルエステルDE」三菱レーヨン製)
4.4g、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェ
ンサクシネート(商品名「NKエステルA−SA」新中
村化学製)0.7g、2−ヒドロキシ−3−フェニルオ
キシプロピルアクリレート3.5g、ポリエチレングリ
コールジメタクリレート(商品名「NKエステル9G」
新中村化学製)0.8g、及び、重合開始剤として2,
2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8
0mgを溶解したモノマー溶液を調製した。この溶液を
前記四ツ口フラスコ内へ滴下した。窒素雰囲気下で重合
反応を行うため、窒素を通気し溶存酸素を除去した。室
温から徐々に昇温し、55℃で7時間、重合反応を行っ
た。重合終了後の後処理は、製造例1と同様に行った。
得られたポリマーは、無色透明球状体で撥水性を示し、
重合収率は75%であった。このポリマーを標準篩を用
いて、180μm〜210μmの範囲で分級した。次い
で、分級ポリマーを用いてアミノ化反応を行った。エタ
ノールアミンの代わりにN,N−ジエチルエチレンジア
ミンを使用したこと以外は、製造例1と同様に行った。
【0040】元素分析より、アミンの官能基量は1.4
4ミリ当量/gであった。PBS溶液中におけるポリマ
ーの膨潤度は16.3ml/g、平均粒径は240μ
m、比重は1.03g/mlであった。
【0041】製造例3 細胞培養担体を、以下に述べる方法により製造した。ポ
リエチレングリコールメタクリレート(ブレンマーPE
−350)5.10g、グリシジルメタクリレート2.
50g、フェノキシジエチレングリコールアクリレート
(AMP−20G)4.4g、ポリエチレングリコール
ジメタクリレート(4G)2.4g、ジオキサン20.
0g、及び、塩化メチレンに溶解したアゾ系重合開始剤
(2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−バレ
ロニトリル)20mgを溶解したモノマー溶液を調製
し、室温で窒素ガスを通じ、モノマー溶液中の溶存酸素
を除去した。発泡ポリウレタン(平均細孔径;約200
μm、半連続発泡体、三菱化成ダウ社製)(5cm×5
cm×5cm)に、上記で調製したモノマー溶液を含浸
し、過剰のモノマー溶液を圧縮し、絞り出した。該ポリ
ウレタン片をガラス溶液内に入れ、窒素雰囲気下50℃
に加温し、2時間重合反応を行った。重合反応終了後、
残留モノマー及びジオキサンを除去するため、50℃に
加温したアセトン水溶液で洗浄し、最後に蒸留水で洗浄
した。更に、このポリウレタン片をジオキサンで置換し
た後、この中へ3−プロパノール・1−アミン2.0g
のジオキサン溶液10mlを滴下し、75℃で4時間ア
ミノ化を行った。反応終了後、ポリウレタン片を50%
アセトン水溶液で充分洗浄した後、アミン臭がしなくな
るまで充分にポリマーを水洗した。被覆されたポリマー
の量は12.5%であった。
【0042】PBS溶液中における該ポリマーの膨潤度
は32.2ml/g、平均細孔径はおおよそ200μ
m、比重は1.02g/mlであった。細胞培養を行う
ため、含水ポリウレタン片を液体窒素で固化し、ポリウ
レタン片を裁断し、約500〜800μmのポリウレタ
ン片を培養に用いた。
【0043】実施例1 e−RDF培地で置換した培養担体(製造例1で得られ
たもの)12.5ml(PBS中)を1000mlのス
ピンナーフラスコ(ベルコ社製)に入れ、121℃で2
0分間オートクレーブ滅菌した。フラスコに牛胎児血清
(以下「FCS」と略す。)(三菱化成株式会社製)を
20ml、及び、e−RDF培地を加え295mlとし
た。この中へCHO−Kl細胞3.3×107 cell
sを入れ、25rpmで連続撹拌状態で培養を開始し
た。培養環境は、5%炭酸インキュベーター内で温度3
6.5℃とした。4日目より急激にpH、グルコース濃
度が低下、乳酸が増加し始めたため、必要に応じ該培地
を増殖培地で交換した。また、細胞数の増加とともに徐
々に血清濃度を下げ、培養を継続した。CHO−Kl細
胞は、7日間で新しい培養担体に移り、その細胞は担体
の表面を覆い尽くした。細胞密度は2.1×106 ce
lls/ml(6.3×108 cells)に達した。
増殖比(=飽和細胞数/播種細胞数)は19倍であっ
た。次に飽和状態に達した担体を用いて、本発明の移し
替えの実験を行った。
【0044】移し替えをするため、最初の培養と同様
に、e−RDF培地で洗浄、置換した担体(製造例1で
得られたもの)110ml(PBS中)を5000ml
の通気装置を備えたスピンナーフラスコに入れ、121
℃で20分間オートクレーブ滅菌した。フラスコにFC
Sを200ml及びe−RDF培地を加え2700ml
とした。この中へ、先の担体を含む培養液を全量(培養
担体12.5ml含有)移し、10rpmで連続撹拌を
した。3日目より急激にpH及びグルコース濃度が低下
し始めたため、必要に応じ該培地と増殖培地で交換し
た。播種後7日間で新しい培養担体に移った細胞は培養
担体の表面を覆い尽くした。細胞密度は3.7×106
cells/ml(1.1×1010cells)に達し
た。移し替え比は9.8倍、増殖比(=飽和細胞数/播
種細胞数)は17倍であった。
【0045】更に、2回目の移し替えをするため、最初
の培養と同様に、e−RDF培地で洗浄、置換した担体
(製造例2で得られたもの)12.5ml(PBS中)
を1000mlのスピンナーフラスコに入れ、121℃
で20分間オートクレーブ滅菌した。フラスコにFCS
を20ml及びe−RDF培地を加え295mlとし
た。ここで飽和状態の培養液を均一になるように撹拌
し、担体を含む培養液30ml(培養担体1.22ml
含有)(細胞数は1.1×108 cells)を100
0mlのスピンナーフラスコ内に加え、25rpmで連
続撹拌状態で培養を開始した。3日目より急激にpH、
グルコース濃度が低下、乳酸が増加し始めたため、必要
に応じ該培地と増殖培地で交換した。また、細胞数の増
加とともに徐々に血清濃度を下げ、培養を継続した。C
HO−Kl細胞は、6日間で全ての培養担体の表面を覆
い尽くした。細胞密度は2.4×106 cells/m
l(7.2×106 cells)に達した。移し替え比
は11.2倍、増殖比(=飽和細胞数/播種細胞数)は
6.5倍であった。
【0046】実施例2 e−RDF培地で交換した培養担体(製造例2で得られ
たもの)15.0ml(PBS中)を1000mlのス
ピンナーフラスコに入れ、121℃で20分間オートク
レーブ滅菌した。フラスコにFCSを20ml及びe−
RDF培地を加え295mlとした。この中へVero
細胞3.3×107 cellsを加え、25rpmで連
続撹拌で培養を開始した。4日目よりpHが低下し、ま
たグルコース濃度も低下、乳酸が増加し始めたため、必
要に応じて培地交換した。また、細胞全ての増殖ともに
徐々に血清濃度を下げ、培養を継続した。Vero細胞
は、8日間で全ての培養担体の表面上を覆い尽くした。
細胞密度は1.6×106cells/ml(4.8×
108 cells)に達した。増殖比は14.5倍であ
った。次に、飽和状態に達した担体を用いて、本発明の
移し替えの実験を行った。
【0047】移し替えをするため、最初の培養と同様
に、e−RDF培地で洗浄、置換した担体(製造例2で
得られたもの)12.5ml(PBS中)を1000m
lのスピンナーフラスコに入れ、121℃で15分間オ
ートクレーブ滅菌した。フラスコにFCSを20ml及
びe−RDF培地を加え260mlとした。この中へ、
細胞培養担体を含む培養液のうち、50ml(培養担体
2.5ml含有)(8.0×107 cells)を移
し、25rpmで連続撹拌で培養を継続した。4日目よ
り急激にpH及びグルコース濃度が低下し始めたため、
必要に応じ培地交換した。Vero細胞は、培養担体添
加後7日間で全ての培養担体の表面上を覆い尽くした。
細胞密度は1.4×106 cells/ml(4.2×
108 cells)に達した。移し替え比は6倍、増殖
比は5.3倍であった。
【0048】実施例3 e−RDF培地で置換した培養担体(製造例1で得られ
たもの)15.0ml(PBS中)を1000mlのス
ピンナーフラスコに入れ、121℃で20分間オートク
レーブ滅菌した。フラスコにFCSを20ml及びe−
RDF培地を加え295mlとした。この中へHeLa
細胞4.5×107 cellsを加え、25rpmの連
続撹拌で培養を開始した。3日目よりpHが低下し、ま
たグルコース濃度も低下し始めたため、必要に応じて培
地交換した。また、細胞数の増殖ともに徐々に血清濃度
を下げ、培養を継続した。HeLa細胞は、6日間で全
ての培養担体の表面を覆い尽くした。細胞密度は2.8
×106 cells/ml(8.4×108 cell
s)に達した。増殖比(=飽和細胞数/播種細胞数)は
19倍であった。次に、飽和状態に達した担体を用い
て、本発明の移し替えの実験を行った。
【0049】移し替えを行うため、最初の培養と同様
に、e−RDF培地で洗浄、置換した新たな担体(製造
例2で得られたもの)12.5ml(PBS中)を10
00mlのスピンナーフラスコに入れ、121℃で15
分間オートクレーブ滅菌した。フラスコにFCSを20
ml及びe−RDF培地を加え280mlとした。この
中へ、担体を含む培養液20ml(培養担体1.0ml
含有)(5.6×107cells)を移し、25rp
mで連続撹拌状態で培養を継続した。3日目より急激に
pH及びグルコース濃度が低下し始めたため、必要に応
じ培地交換した。HeLa細胞は、播種後5日間で全て
の培養担体の表面を覆い尽くした。細胞密度は2.9×
106 cells/ml(8.7×108 cells)
に達した。移し替え比は13.5倍、増殖比(=飽和細
胞数/播種細胞数)は15.5倍であった。
【0050】実施例4 e−RDF培地で置換した培養担体(製造例3で得られ
たもの)8.0ml(PBS中)を1000mlのスピ
ンナーフラスコに入れ、121℃で20分間オートクレ
ーブ滅菌した。フラスコにFCSを20ml及びe−R
DF培地を加え295mlとした。この中へC6細胞
2.7×107 cellsを入れ、15rpmの連続撹
拌で培養を開始した。3日目よりpHが低下し、またグ
ルコース濃度も低下し始めたため、必要に応じて培地交
換した。また、細胞数の増殖ともに徐々に血清濃度を下
げ、培養を継続した。C6細胞は、6日間で全ての培養
担体の表面を覆い尽くした。細胞密度は7.6×106
cells/ml(2.3×109 cells)に達し
た。増殖比(=飽和細胞数/播種細胞数)は85倍であ
った。次に、飽和状態に達した担体を用いて、本発明の
移し替えの実験を行った。
【0051】移し替えを行うため、最初の培養と同様
に、e−RDF培地で洗浄、置換した新たな培養担体
(製造例3で得られたもの)8.0ml(PBS中)を
1000mlのスピンナーフラスコに入れ、121℃で
15分間オートクレーブ滅菌した。スピンナーフラスコ
にFCSを20ml及びe−RDF培地を加え280m
lとした。この中へ、担体を含む培養液25ml(培養
担体0.66ml含有)(5.0×107 cells)
を移し、15rpmで連続撹拌状態で培養を継続した。
3日目より急激にpH及びグルコース濃度が低下し始め
たため、必要に応じ培地交換した。C6細胞は、播種後
7日間で全ての培養担体の表面を覆い尽くした。細胞密
度は8.5×106 cells/ml(2.6×109
cells)に達した。移し替え比は13.1倍、増殖
比(=飽和細胞数/播種細胞数)は14倍であった。
【0052】比較例1 細胞培養担体としてサイトデックス−3(Pharma
cia社製)を用いて、比較実験を行った。e−RDF
培地で置換したサイトデックス−3を15.0ml(P
BS中)、1000mlのスピンナーフラスコに入れ、
121℃で20分間オートクレーブ滅菌した。フラスコ
に牛胎児血清を20ml及びe−RDF培地を加え29
5mlとした。この中へVero細胞3.5×107
ellsを加え、25rpmで連続撹拌で培養を開始し
た。4日目よりpHが低下し、またグルコース濃度も低
下、乳酸が増加し始めたため、必要に応じて培地交換し
た。また、細胞全ての増殖ともに徐々に血清濃度を下
げ、培養を継続した。Vero細胞は、8日間で全ての
培養担体の表面上を覆い尽くした。細胞密度は1.7×
106 cells/ml(5.1×108 cells)
に達した。増殖比は14.6倍であった。次に、飽和状
態に達した担体を用いて、移し替えの実験を行った。
【0053】移し替えをするため、最初の培養と同様
に、e−RDF培地で洗浄、置換した12.5ml(P
BS中)のサイトデックス−3を1000mlのスピン
ナーフラスコに入れ、121℃で15分間オートクレー
ブ滅菌した。フラスコにFCSを20ml及びe−RD
F培地を加え260mlとした。この中へ、細胞培養担
体を含む培養液のうち、50ml(8.0×107 ce
lls)を抜き出し、25rpmで連続撹拌で培養を継
続した。移し替え比は5倍であった。しかし、5日間経
過後も細胞の移動は観察されなかった。
【0054】実施例5 実施例1における最初の培養と同様にして、CHO−K
1細胞の密度が飽和状態である2.1×106cell
s/ml(6.3×108cells)に達した培養担
体を得た。この培養担体(12.5ml)を用いて、次
の逐次培養の実験を行った。上記の飽和状態に達した担
体懸濁溶液の上澄み液を抜き出した。血清を30ml、
培地を200ml加えた。この中へ、滅菌し、e−RD
F培地で置換した新しい培養担体(製造例1で得られた
もの)10.0mlを加えた。20rpmで培養を継続
した。5日後には、新たに加えた培養担体に表面を覆
い、細胞密度は飽和状態に達した。到達細胞密度は、
3.3×106cells/ml(1.1×1010ce
lls)であった。移し替え比は1.8倍、増殖比(=
飽和細胞数/播種細胞数)は1.6倍であった。
【0055】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の動物細胞の
逐次培養方法は細胞培養担体を用いて動物細胞を大量に
増殖させる際、トリプシン等の酵素又はキレート剤を添
加して細胞を剥離する方法を使用しないで、細胞が付着
した培養担体に新たに培養担体を投入することにより、
細胞の一部を新しい培養担体に移し替えて、容易かつ効
率的に、連続的に細胞を増殖する方法であって、本発明
の方法によれば、 トリプシン処理工程が不要になる。 細胞の活性が維持できる。 微生物による汚染の危険性が低下する。 等の優れた効果が奏される。本発明の方法は、動物細胞
の大量培養法として、細胞を継代する際に工業的に極め
て有用な方法である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年4月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】本発明は動物細胞を大量培養する際に有用
であるが、通常、大量培養に移行する場合、スケールア
ップの倍率は、移し替え比で1.1〜15倍、特に2〜
15倍が良い。この移し替え比が小さ過ぎる場合、スケ
ールアップの効率が悪く実用的ではない。一方、移し替
え比が大き過ぎる場合、新しく加えた培養担体に均一に
細胞が付着し難い。この場合、特に大きな悪影響はない
が、加えた培養担体が有効に使用されないため、効率が
悪い。なお、培養担体の付着表面積は以下の方法により
測定する。本発明においては、細胞が培養担体に付着す
る場合は、担体全体に付着する(部分的に付着すること
はない)と考え、培養担体の付着表面積は培養担体の表
面積に等しいとみなす。使用する担体をPBS溶液(p
H7.4)中で膨潤させて、その粒径をProfile
projectorV−12型(ニコン社製、200
倍)により測定する。この方法により約500個の担体
の平均粒径(r)を求める。また、担体1個の体積
(v)及び表面積(S)は以下のように示される。
【数4】 担体1gあたりの膨潤度(前述:P)を加味し、担体が
剛体球であると仮定すると担体1gあたりの表面積Vは
【数5】 で示される。本発明において、以下に定義される増殖
比、即ち、
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】
【数6】

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物細胞を細胞培養担体を用いて培養液
    中にて培養する方法において、親水性合成高分子からな
    る細胞培養担体を用い、動物細胞が付着した古い細胞培
    養担体を新しい細胞培養担体と混合することにより、古
    い培養担体から新しい培養担体へ移し替え、動物細胞を
    連続的に増殖させることを特徴とする動物細胞の逐次培
    養方法。
  2. 【請求項2】 下記式で求められる細胞培養担体の移し
    替え比が、1.1〜15倍であることを特徴とする請求
    項1に記載の動物細胞の逐次培養方法。 【数1】
  3. 【請求項3】 培養液を懸濁状態又は擬似浮遊状態で、
    古い培養担体から新しい培養担体へ移し替えることを特
    徴とする請求項1又は2に記載の動物細胞の逐次培養方
    法。
  4. 【請求項4】 動物細胞が付着依存性細胞であることを
    特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の動
    物細胞の逐次培養方法。
  5. 【請求項5】 移し替え時の培養液中の血清濃度が5〜
    10%であることを特徴とする請求項1ないし4のいず
    れか1項に記載の動物細胞の逐次培養方法。
  6. 【請求項6】 親水性合成高分子が、アクリル酸エステ
    ル又はメタクリル酸エステルを構成単位とすることを特
    徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の動物
    細胞の逐次培養方法。
  7. 【請求項7】 細胞培養担体が、正に荷電し得る化学残
    基を、乾燥細胞培養担体1グラム当り0.5〜2.0ミ
    リ当量含有し、該正に荷電し得る構成モノマー単位のC
    LOGP値の範囲が、−1.5〜+2.0であることを
    特徴とする請求項6に記載の動物細胞の逐次培養方法。
  8. 【請求項8】 親水性合成高分子が疎水性残基を有する
    重合性モノマー単位を1〜40重量%含有し、該モノマ
    ー単位のCLOGP値が+1.5〜+4.0であること
    を特徴とする請求項6又は7記載の動物細胞の逐次培養
    方法。
  9. 【請求項9】 細胞培養担体の形状が粒子状であり、そ
    の平均粒径が50〜1000μmであることを特徴とす
    る請求項1ないし8のいずれか1項に記載の動物細胞の
    逐次培養方法。
  10. 【請求項10】 培養担体の膨潤度が、pH7.4のリ
    ン酸緩衝溶液中で10〜30ml/gであることを特徴
    とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の動物細
    胞の逐次培養方法。
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