JPH0578735A - 鉄系部材及びその製造方法 - Google Patents

鉄系部材及びその製造方法

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JPH0578735A
JPH0578735A JP24741491A JP24741491A JPH0578735A JP H0578735 A JPH0578735 A JP H0578735A JP 24741491 A JP24741491 A JP 24741491A JP 24741491 A JP24741491 A JP 24741491A JP H0578735 A JPH0578735 A JP H0578735A
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iron
ferrite
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JP24741491A
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English (en)
Inventor
Katsunori Hanakawa
勝則 花川
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Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱膨張率が大きく、アルミ合金に対して高い
耐焼付性を有し、かつ加工性の良い鉄系部材ないしその
製造方法を提供することを目的とする。 【構成】 CとSiとMnとを含む鋼または鋳鉄に、脱炭
処理を施した後オーステンパ処理を施して、またはオー
ステンパ処理時に脱炭処理を施して、表面部にフェライ
トと残留オーステナイトとを含む混在組織、またはフェ
ライトと残留オーステナイトとベイナイトとを含む混在
組織を形成するようにしたことを特徴とする。素材が鋼
の場合は、Cを0.7〜1.2重量%含み、Siを1.5〜
2.5重量%含み、かつMnを0.5〜2.0重量%含み、
鋳鉄の場合は、Cを2.6〜4.0重量%含み、Siを1.
5〜2.5重量%含み、かつMnを0.2〜1.0重量%含
むことを特徴とする。好ましくは、アルミ合金部材を相
手方とする摺動部材であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄系部材及びその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車等においてはその軽量化が
図られ、これらを構成する各種機器の素材としてアルミ
合金が多用されている。しかしながら、一般にアルミ合
金は剛性ないし耐摩耗性が比較的低いので、摺動部を有
する構造体、例えば自動変速機用のオイルポンプ等にお
いては、全体をアルミ合金で形成することはあまり好ま
しくない。そこで、オイルポンプにおいては、通常、一
部の部材例えばハウジングのみがアルミ合金で形成さ
れ、これに対して摺動するロータ等は剛性の高い鉄系素
材で形成される。
【0003】ところで、自動変速機用オイルポンプにお
いては、運転状態に応じてその温度が大きく変化する
が、ハウジングをアルミ合金で形成し、ロータを普通の
鉄系素材で形成すると、アルミ合金の熱膨張率(線膨張
率)が普通の鉄系素材のそれと比べて格段に大きいので
(約2倍)、かかる熱膨張率の違いによって、高温時に
は、ハウジングとロータとの間に隙間が生じ、この隙間
からのオイル漏れによってポンプ効率が低下してしまう
といった問題がある。
【0004】かかる問題は、ロータの熱膨張率をアルミ
合金並に大きくすれば解消できることが明らかであるの
で、従来より熱膨張率の高い鉄系素材の開発が試みられ
ている。例えば、オーステナイト組織の熱膨張率が大き
いことに着目して、所定量のCとSiとMnとを含む鋼素
材ないし鋳鉄素材にオーステンパ処理を施し、残留オー
ステナイトとベイナイトとを含む混在組織を形成して熱
膨張率を大きくした鉄系部材が提案されている(特開昭
55−22444号公報、特開昭55−94461号公
報、本出願人にかかる特願平2−248034号明細書
参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、オース
テンパ処理によって得られる残留オーステナイトとベイ
ナイトとを含む混在組織は、熱膨張率は大きいものの、
粘着性(ねばさ)が強くなるので、これをアルミ合金製ハ
ウジングを備えたオイルポンプのロータの素材として用
いると、焼き付きが生じやすくなるといった問題があ
る。また、上記粘着性のため、表面加工性が悪くなると
いった問題がある。本発明は、上記従来の問題点を解決
するためになされたものであって、熱膨張率が大きく、
アルミ合金に対して高い耐焼付性を有し、かつ加工性の
良い鉄系部材ないしその製造方法を提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達するた
め、第1の発明は、C(炭素)とSi(珪素)とMn(マンガ
ン)とを含む鋼または鋳鉄に脱炭処理を施し、次にオー
ステンパ処理を施して、表面部に、フェライトと残留オ
ーステナイトとを含む混在組織、またはフェライトと残
留オーステナイトとベイナイトとを含む混在組織を形成
するようにしたことを特徴とする鉄系部材の製造方法を
提供する。
【0007】第2の発明は、CとSiとMnとを含む鋼ま
たは鋳鉄に、オーステナイト化処理とベイナイト化処理
とからなるオーステンパ処理を施すようにした鉄系部材
の製造方法であって、オーステナイト化処理と同時に脱
炭処理を施し、続いてベイナイト化処理を施して、表面
部に、フェライトと残留オーステナイトとを含む混在組
織、またはフェライトと残留オーステナイトとベイナイ
トとを含む混在組織を形成するようにしたことを特徴と
する鉄系部材の製造方法を提供する。
【0008】第3の発明は、Cを0.7〜1.2重量%含
み、Siを1.5〜2.5重量%含み、かつMnを0.5〜
2.0重量%含む鋼部材であって、脱炭処理とオーステ
ンパ処理とによって、表面部に、フェライトと残留オー
ステナイトとを含む混在組織、またはフェライトと残留
オーステナイトとベイナイトとを含む混在組織が形成さ
れていることを特徴とする鉄系部材を提供する。
【0009】第4の発明は、Cを2.6〜4.0重量%含
み、Siを1.5〜2.5重量%含み、かつMnを0.2〜
1.0重量%含む鋳鉄部材であって、脱炭処理とオース
テンパ処理とによって、表面部に、フェライトと残留オ
ーステナイトとを含む混在組織、またはフェライトと残
留オーステナイトとベイナイトとを含む混在組織が形成
されていることを特徴とする鉄系部材を提供する。
【0010】第5の発明は、第3または第4の発明にか
かる鉄系部材において、アルミ合金部材を相手方とする
摺動部材であることを特徴とする鉄系部材を提供する。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明する。 <第1実施例>以下、第1,第2,第3,第5の発明にか
かる第1実施例を説明する。第1実施例では、基本的に
は、鋼素材に対して、脱炭処理とオーステンパ処理とを
施して、熱膨張率が大きく、アルミ合金に対して高い耐
焼付性を有し、かつする加工性の良い鉄系部材を製造す
るようにしている。以下、かかる鉄系部材の製造方法
を、図1に示すフローチャートにしたがって説明する。
ステップ#1では、鋼素材が調製される。かかる鋼素材
の好ましいC含有率、Si含有率及びMn含有率は、夫
々、次のとおりである。
【0012】(1)好ましいC含有率は、0.7〜1.2重
量%である。Cは、焼入性を向上させ、残留オーステナ
イトを安定させ、さらにはベイナイト変態を遅延させる
ために必要とされる成分であるが、C含有率が、0.7
重量%未満では残留オーステナイトが不安定となり、か
つ焼入性が不十分となるからであり、他方1.2重量%
を超えると遊離炭素が析出する恐れがあるからである。
とくに好ましいC含有率は、0.8〜1.1重量%であ
る。なお、本明細書において「A〜B」はA以上でありか
つB以下であるということを意味するものとする。した
がって、例えば「0.7〜1.2重量%」は、0.7重量%
以上でありかつ1.2重量%以下であることを意味す
る。
【0013】(2)好ましいSi含有率は、1.5〜2.5
重量%である。Siは、ベイナイト化処理(恒温変態処
理)でのベイナイト変態時に炭化物の析出を抑える効果
があり、かつ安定した残留オーステナイトを生成させる
ために必要な成分であるが、Si含有率が1.5重量%未
満では炭化物の析出を抑制する力が不十分となるからで
あり、他方2.5重量%を超えると、上記効果が飽和
し、かつ熱処理時に遊離炭素が析出する恐れがあるから
である。なお、Siは脱炭時には酸化し、脱炭を妨げな
い。
【0014】(3)好ましいMn含有率は、0.5〜2.0
重量%である。Mnは、焼入性を向上させ、かつ残留オ
ーステナイトを安定させる効果があり、またCと同様ベ
イナイト変態を遅延させる効果がある成分であるが、M
n含有率が0.5重量%未満では、部材強度および焼入性
が不十分となり、かつベイナイト変態の時間が短くなり
恒温変態処理が困難となるからであり、他方2.0重量
%を超えると、上記効果が飽和し、かつ靭性が低下する
からである。なお、好ましく上記鋼素材のMo(モリブデ
ン)含有率を0.1〜0.5重量%とし、Ni(ニッケル)含
有率を0.5〜2.5重量%とすれば、さらに焼入性を向
上させることができる。
【0015】ステップ#2では、鋼素材に所定の加工、
例えば機械加工が施される。なお、加工する必要がない
場合は、このステップ#2をスキップする。ステップ#
3では、鋼素材に脱炭処理が施される。好ましい脱炭処
理条件は、次のとおりである。 (1)好ましい処理温度は、850〜1000℃である。
処理温度が850℃より低いと、脱炭処理に長時間を要
し、生産性の低下を招くからであり、他方1000℃を
超えると結晶粒の粗大化が生じ、かつ生産性が悪くなる
からである。 (2)好ましい処理時間は、80min〜600minである。
処理時間が80minより短いと、最低限必要な脱炭層厚
さ(0.1mm)が確保できなくなるからであり、他方60
0minより長くなると生産性が低下してしまうからであ
る。 (3)好ましい脱炭層厚さは、0.1mm〜0.5mmである。
脱炭層厚さが0.1mm未満では、耐焼付性向上効果が実
質的になくなってしまうからであり、他方0.5mmを超
えると処理時間が長くなり、生産性が低下するからであ
る。
【0016】かかる脱炭処理によって、鋼素材の表面部
に形成される脱炭層にはフェライト組織が生成される。
このフェライト組織は、後で説明するように、残留オー
ステナイトの粘着性(ねばさ)を低減する。図2は、90
0℃×240minでかかる脱炭処理が施された後の鋼素
材(後で説明する本案4に該当する)を、表面に垂直な平
面で切断した断面の顕微鏡写真(100倍)である。図2
において白い部分はフェライト組織であり、黒い部分は
パーライト組織である。図2から明らかなように鋼素材
の表面部にフェライト組織が形成されている。
【0017】ステップ#4では、脱炭処理が施された鋼
素材にオーステンパ処理が施される。ここで、オーステ
ンパ処理は、鋼素材を、所定時間(例えば2hr)だけ比較
的高温(例えば920℃)に保持するオーステナイト化処
理と、これに続いて鋼素材を所定時間(例えば2hr)だけ
比較的低温(例えば380℃)に保持するベイナイト化処
理(恒温変態処理)とからなる普通のオーステンパ処理で
あって、鋼素材内に残留オーステナイトとベイナイトと
を含む混在組織を生成させる。
【0018】かかるオーステンパ処理が施されると、表
面部には、実質的にフェライトと残留オーステナイトと
ベイナイトとからなる混在組織が形成され、内部には実
質的に残留オーステナイトとベイナイトとからなる混在
組織が形成される。ここで、表面部のフェライトと残留
オーステナイトとベイナイトとからなる混在組織は、フ
ェライトによって残留オーステナイトの粘着性(ねばさ)
が低減されるので、とくにアルミ合金部材を相手方とす
る場合の摺動特性が良好となり、かつ表面加工性が良好
となる。また、残留オーステナイトによって鋼部材全体
の熱膨張率が大きくなる。
【0019】図3は、大気中で900℃×180minの
脱炭処理が施された後、920℃×2hrのオーステナイ
ト化処理と380℃×2hrのベイナイト化処理とが施さ
れた鋼素材を、表面に垂直な平面で切断した断面の顕微
鏡写真(400倍)である。ここで、表面部の、粒径の大
きい白い部分はフェライトである。また、針状の黒い部
分はベイナイトであり、これを取り巻いている白い部分
は残留オーステナイトである。図4〜図6は、夫々上記
鋼素材の内部の金属組織の顕微鏡写真である。図4〜図
6において針状の黒い部分はベイナイトであり、これを
取り巻いている白い部分はベイナイトである。また図7
は、上記鋼素材の表面部の組織の顕微鏡写真である。図
3〜図7から、鋼素材の表面部にはフェライトと残留オ
ーステナイトとベイナイトとからなる混在組織が形成さ
れ、内部には残留オーステナイトとベイナイトとからな
る混在組織が形成されているのがわかる。
【0020】なお、上記のように脱炭処理(ステップ#
3)とオーステンパ処理(ステップ#4)とを個別的に施
すのではなく、オーステンパ処理と脱炭処理とを一括し
て施すようにしても同様の効果が得られる。この場合
は、ステップ#3〜ステップ#4にかえて、ステップ#
6〜ステップ#7を実行する。すなわち、ステップ#6
では、脱炭処理雰囲気下でオーステナイト化処理が行わ
れ、続いてステップ#7でベイナイト化処理が行われ
る。
【0021】ステップ#5では、所定の仕上げ加工等が
施され、鋼部材(製品)が完成する。なお、表面部に酸化
スケールが生成されていれば、これを削除する必要があ
る。ここで、表面部に仕上げ加工する際には、前記した
とおり、表面部にフェライトが生成されこのフェライト
によって残留オーステナイトの粘着性(ねばさ)が低減さ
れ、また表面部が軟化させられているので、加工性が非
常に良好となる。かかる鋼部材においては、オーステン
パ処理によって十分な量の残留オーステナイトが生成さ
れるので(30〜60容量%)、鋼部材の熱膨張率が大き
くなる。本願発明者らのテストによれば、後で説明する
ように、熱膨張率は15.3×10-6〜17.9×10-6
/℃となっている。なお、通常の鉄系部材、例えば鋼S
48Cでは熱膨張率が11×10-6/℃程度である。ま
た、普通のアルミ合金、例えばAC4C材では熱膨張率
が21×10-6/℃程度である。
【0022】また、上記鋼部材では、表面部のフェライ
トによって残留オーステナイトの粘着性(ねばさ)が低減
されているので、摺動特性が良好となり、これをアルミ
合金部材を相手方とする摺動部材として用いた場合で
も、焼き付きが生じない。
【0023】第1実施例にかかる製造方法で、製造条件
を種々変えて、鋼素材から外径60〜80mm程度の9種
のロータを製作し、これらの熱膨張率を測定するととも
に、各ロータを夫々アルミ合金ハウジング(AC4C材)
を備えたオイルポンプに装着して、該オイルポンプの耐
焼付性とポンプ効率とをテストした結果を表1に示す
(本案1〜本案9)。なお、比較のため、従来の製造方法
で4種のロータを製作し、同様のテストを行った結果も
表1示す(比較例1〜比較例4)。なお、この場合ロータ
の外径が比較的大きいので、脱炭層の存在は、ロータの
熱膨張率にほとんど影響を与えていない。
【0024】
【表1】
【0025】本案1〜本案9及び比較例1〜比較例4に
おける各ロータの製造条件は次のとおりである。 (1)鋼素材の組成 表1中に記載(C,Si,Mnのほかは実質的にFe) (2)脱炭処理 処理温度………………大気中で900℃ 処理時間………………表1中に記載 但し、本案8ではオーステナイト化処理の際脱炭処理が
行われている。また比較例1では脱炭処理が行われてい
ない。 (3)オーステンパ処理 オーステナイト化処理…920℃×2hr(本案8のみ3h
r) ベイナイト化処理………380℃×2hr(本案9のみ6h
r) なお、酸化スケールの削除を行っている。
【0026】オイルポンプの性能テスト条件は次のとお
りである。 (1)耐焼付性 油温を90℃に保持した上で、ロータ回転数を2500
r.p.mとし、かつ油圧を21kg/cm2として15秒間運転
した後、ロータ回転数を4500r.p.m.とし、かつ油圧
を5kg/cm2として15秒間運転するといったサイクル
を500回繰り返し、500サイクル内に、焼き付きあ
るいはロータ外周部の損傷が生じた場合は耐焼付性不良
(×)とし、異常が生じない場合は耐焼き付き性良(○)と
した。 (2)ポンプ効率 ロータ回転数を700r.p.m.とし、油温を100℃と
し、油圧を6kg/cm2として、油流量が7リットル/min
以上の場合はポンプ効率良(○)とし、7リットル/min
未満の場合は、異常なオイル漏れが生じているものと考
えられるので、ポンプ効率不良(×)とした。
【0027】表1からわかるように、第1実施例にかか
る本案1〜本案9では、すべてポンプ効率が良好(○)で
ある。これは、前記したとおり、残留オーステナイトが
十分に生成されており(30〜60容量%)、ロータの熱
膨張率が大きくなる結果、ハウジングとロータとの間の
隙間が小さくなり、隙間からのオイル漏れが少なくなる
からであると考えられる。また、耐焼付性もすべて良好
(○)である。これは、表面部に、フェライトを含む脱炭
層が形成され、残留オーステナイトの粘着性(ねばさ)が
低減され、アルミ合金に対する摺動特性が向上する結
果、焼き付きの発生が防止されるからであると考えられ
る。
【0028】これに対して、脱炭処理が施されていない
比較例1では、ロータの熱膨張率が大きくしたがってポ
ンプ効率は良好となっているものの、耐焼付性が不良と
なっている。これは、残留オーステナイトの粘着性によ
って焼き付きが生じるからであると考えられる。脱炭処
理時間が短く(60min)、このため脱炭層厚さが非常に
薄い(0.04mm)比較例2でも、比較例1と同様の結果
となっている。これらのテスト結果から、脱炭層厚さ
は、0.1mm以上必要であると考えられる。鋼素材の組
成が本発明の範囲から外れている比較例3,4では、熱
膨張率が比較的低く(14.3×10-6/℃,14.8×1
-6/℃)、このためポンプ効率が不良となっている。
これは、C,Siの含有率が低いので、残留オーステナイ
トの生成が不十分であるためであると考えられる。な
お、上記テスト結果から、ポンプ効率を良好にするに
は、ロータの熱膨張率を15×10-6/℃以上にする必
要があることがわかる。
【0029】<第2実施例>以下、第1,第2,第4,第
5の発明にかかる第2実施例を説明する。第2実施例で
は、基本的には、鋳鉄素材に対して、脱炭処理とオース
テンパ処理とを施して、熱膨張率が大きく、アルミ合金
に対して高い耐焼付性を有し、かつ加工性の良い鉄系部
材を製造するようになっているが、素材として鋳鉄素材
を用いる点(第1実施例では鋼素材)と、オーステナイト
化処理条件を若干変える点とを除けば、その製造方法は
第1実施例の場合と同様である。そこで、説明の重複を
避けるため、以下では第1実施例と異なる点についての
み説明する。
【0030】第2実施例では素材として、基本的には元
素C,Si,Mn,Mg,Mo,Cu,Niを含む鋳鉄素材が用いら
れる。具体的には、オーステンパ処理によって残留オー
ステナイトが30〜60容量%程度生成されるような球
状黒鉛鋳鉄あるいはMgを含まない片状黒鉛鋳鉄等が用
いられる。ここで、Mg,Mo,Cu,Niは必要に応じて添
加すれば足りる。鋳鉄素材が球状黒鉛鋳鉄である場合
の、その好ましい組成は次のとおりである。なお、この
好ましい組成を一括して表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】(1)好ましいC含有率は、2.6〜4.0重
量%である。C含有率が、2.6重量%未満では、鋳造
性が悪化して健全な製品の製造が困難となるからであ
り、他方4.0重量%を超えると、ドロスが発生しやす
くなり耐摩耗性が低下するからである。 (2)好ましいSi含有率は、1.5〜2.5重量%であ
る。この範囲外では鋳造性が悪化するからである。 (3)好ましいMn含有率は、0.2〜1.0重量%であ
る。Mn含有率が、0.2重量%未満では、焼入性が不十
分となり、かつパーライトの析出によって熱膨張率が小
さくなるからであり、他方1.0重量%を超えると、炭
化物が晶出しやすくなり、疲労強度特性が悪化するから
である。
【0033】(4)好ましいMg含有率は、0.005〜
0.08重量%である。この範囲が黒鉛の球状化に好都
合であるからである。 (5)好ましいMo含有率は、0.03〜0.40重量%で
ある。Moは、焼入性を高め、かつ位置の違いによる残
留オーステナイトの不均一な分布の発生を防止する効果
があり、適正な熱膨張率を得るために必要とされる成分
であるが、0.03重量%未満では上記の効果が得られ
ず、他方0.4重量%を超えると、炭化物として粒界に
偏析して強度低下を招くからである。 (6)好ましいCu含有率は、0.60〜1.50重量%で
ある。Cuは、焼入性を向上させ、さらに残留オーステ
ナイトの生成を促進させる効果がある成分であるが、
0.60重量%未満では上記効果が得られず、熱膨張率
が小さくなるからであり、他方1.50重量%を超える
と、黒鉛の球状化を妨げるからである。 (7)好ましいNi含有率は、0.30〜1.50重量%で
ある。Niは、Cuと同様の効果があり、製造される鋳鉄
部材の肉厚に応じて添加するのが好ましい成分である
が、0.30重量%未満では、焼入性向上効果あるいは
残留オーステナイト生成促進効果が得られないからであ
り、他方1.5重量%を超えるとその効果が飽和し、コ
スト高となるからである。
【0034】第2実施例にかかる製造方法で、表3に示
すような組成の球状黒鉛鋳鉄からなる鋳鉄素材から、第
1実施例の場合と同様のロータを製作し、この熱膨張率
を測定するとともに、該ロータをアルミ合金ハウジング
(AC4C材)を備えたオイルポンプに装着して、該オイ
ルポンプの耐焼付性とポンプ効率とをテストした結果を
表4に示す(本案10)。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】ロータの製造条件は次のとおりである。な
お、本案10では脱炭処理はオーステナイト化処理時に
行われている。また、オイルポンプの耐焼付性及びポン
プ効率のテスト条件は、第1実施例の場合と同様であ
る。 (1)鋳鉄素材の組成 表3のとおり (2)オーステンパ処理(脱炭処理を含む) オーステナイト化処理…890℃×5hr(0.4%C雰囲
気) ベイナイト化処理………380℃×2hr
【0038】表4に示すように本案10ではポンプ効率
と耐焼付性とがともに良好(○)であり、第2実施例によ
っても第1実施例と同様の効果が得られることがわか
る。
【0039】
【発明の作用・効果】第1の発明によれば、オーステン
パ処理によって残留オーステナイトが生成されるので、
製造される鉄系部材の熱膨張率が大きくなる。このた
め、上記鉄系部材が、熱膨張率の大きい部材と組み合わ
された場合でも、熱膨張差に起因する不具合が生じな
い。また、脱炭処理によって表面部にフェライトが生成
され、これによって残留オーステナイトの粘着性(ねば
さ)が低くなるので、製造された鉄系部材が摺動部材と
して用いられる場合、とくにアルミ合金部材を相手方と
する場合には、その摺動特性が良好となり、焼き付きが
生じない。また、表面部が軟化するので、表面加工が容
易となる。
【0040】第2の発明によれば、基本的には第1の発
明と同様の作用・効果が得られる。さらに脱炭処理がオ
ーステナイト化処理と同時に施されるので、生産性が高
められる。
【0041】第3の発明によれば、鋼部材中に、オース
テンパ処理によって残留オーステナイトが生成されてい
るので、その熱膨張率が大きくなる。このため、上記鋼
部材が、熱膨張率の大きい部材と組み合わされた場合で
も、熱膨張差に起因する不具合が生じない。また、脱炭
処理によって表面部にフェライトが生成され、これによ
って残留オーステナイトの粘着性(ねばさ)が低くなって
いるので、該鋼部材が摺動部材として用いられる場合、
とくにアルミ合金部材を相手方とする場合には、その摺
動特性が良好となり、焼き付きが生じない。また、表面
部が軟化しているので表面加工が容易である。
【0042】第4の発明によれば、鋳鉄部材中に、オー
ステンパ処理によって残留オーステナイトが生成されて
いるので、その熱膨張率が大きくなる。このため、上記
鋳鉄部材が、熱膨張率の大きい部材と組み合わされた場
合でも、熱膨張差に起因する不具合が生じない。また、
脱炭処理によって表面部にフェライトが生成され、これ
によって残留オーステナイトの粘着性(ねばさ)が低くな
っているので、該鋳鉄部材が摺動部材として用いられる
場合、とくにアルミ合金部材を相手方とする場合には、
その摺動特性が良好となり、焼き付きが生じない。ま
た、表面部が軟化しているので、表面加工が容易であ
る。
【0043】第5の発明によれば、基本的には第3また
は第4の発明と同様の作用・効果が得られる。さらに、
該鉄系部材がアルミ合金を相手方とする摺動部材である
ので、焼き付きの発生が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鉄系部材の製造方法を示すフローチャートで
ある。
【図2】 脱炭処理後の鋼素材の、素材表面に垂直な平
面で切断した断面の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図3】 オーステンパ処理後の鋼部材の、素材表面に
垂直な平面で切断した断面の金属組織を示す顕微鏡写真
である。
【図4】 図1に示す製造方法で製造された鋼部材の金
属組織を示す顕微鏡写真である。
【図5】 図1に示す製造方法で製造された鋼部材の金
属組織を示す顕微鏡写真である。
【図6】 図1に示す製造方法で製造された鋼部材の金
属組織を示す顕微鏡写真である。
【図7】 図1に示す製造方法で製造された鋼部材の金
属組織を示す顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/00 301 Z 7217−4K

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C(炭素)とSi(珪素)とMn(マンガン)と
    を含む鋼または鋳鉄に脱炭処理を施し、次にオーステン
    パ処理を施して、表面部に、フェライトと残留オーステ
    ナイトとを含む混在組織、またはフェライトと残留オー
    ステナイトとベイナイトとを含む混在組織を形成するよ
    うにしたことを特徴とする鉄系部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 CとSiとMnとを含む鋼または鋳鉄に、
    オーステナイト化処理とベイナイト化処理とからなるオ
    ーステンパ処理を施すようにした鉄系部材の製造方法で
    あって、オーステナイト化処理と同時に脱炭処理を施
    し、続いてベイナイト化処理を施して、表面部に、フェ
    ライトと残留オーステナイトとを含む混在組織、または
    フェライトと残留オーステナイトとベイナイトとを含む
    混在組織を形成するようにしたことを特徴とする鉄系部
    材の製造方法。
  3. 【請求項3】 Cを0.7〜1.2重量%含み、Siを1.
    5〜2.5重量%含み、かつMnを0.5〜2.0重量%含
    む鋼部材であって、脱炭処理とオーステンパ処理とによ
    って、表面部に、フェライトと残留オーステナイトとを
    含む混在組織、またはフェライトと残留オーステナイト
    とベイナイトとを含む混在組織が形成されていることを
    特徴とする鉄系部材。
  4. 【請求項4】 Cを2.6〜4.0重量%含み、Siを1.
    5〜2.5重量%含み、かつMnを0.2〜1.0重量%含
    む鋳鉄部材であって、脱炭処理とオーステンパ処理とに
    よって、表面部に、フェライトと残留オーステナイトと
    を含む混在組織、またはフェライトと残留オーステナイ
    トとベイナイトとを含む混在組織が形成されていること
    を特徴とする鉄系部材。
  5. 【請求項5】 請求項3または請求項4に記載された鉄
    系部材において、アルミ合金部材を相手方とする摺動部
    材であることを特徴とする鉄系部材。
JP24741491A 1991-09-26 1991-09-26 鉄系部材及びその製造方法 Pending JPH0578735A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1293689A1 (de) * 2001-09-18 2003-03-19 Ford Global Technologies, Inc., A subsidiary of Ford Motor Company Kurbelwellenlager für ein Kraftfahrzeug

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1293689A1 (de) * 2001-09-18 2003-03-19 Ford Global Technologies, Inc., A subsidiary of Ford Motor Company Kurbelwellenlager für ein Kraftfahrzeug
US6761484B2 (en) 2001-09-18 2004-07-13 Ford Global Technologies, Llc Crankshaft for an internal combustion engine disposed in a motor vehicle

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