JPH057712A - エレクトレツト化ポリオレフイン繊維 - Google Patents

エレクトレツト化ポリオレフイン繊維

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JPH057712A
JPH057712A JP3185706A JP18570691A JPH057712A JP H057712 A JPH057712 A JP H057712A JP 3185706 A JP3185706 A JP 3185706A JP 18570691 A JP18570691 A JP 18570691A JP H057712 A JPH057712 A JP H057712A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 分子運動性の小さな相構造を有する、初期お
よび長期にわたって電荷保持性に優れたポリオレフィン
エレクトレット繊維フィルターを得る。 【構成】 固体高分解能パルス法13C−NMRによるC
2 基炭素核のスピン−格子緩和時間(T1 )が1秒か
ら10秒である成分相を、全成分相中に少なくとも20
%含まれてなるポリオレフィンエレクトレット繊維フィ
ルターである。 【効果】 分子運動性の小さな中間相を有することで、
エレクトレット化後の初期および長期の粒子除去効率が
高く、電荷保持性に優れたポリオレフィン繊維からなる
エレクトレットフィルターを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クリーンルーム用フィ
ルター、ビル空調用フィルター、掃除機用フィルター、
空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、OA
機器用フィルターなどに用いることのできる電荷保持性
に優れたポリオレフィンエレクトレット繊維及び該繊維
を用いたエレクトレットフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】高い表面電荷密度を有するポリオレフィ
ン(ポリプロピレン)エレクトレットは、特開昭63−
151326号公報、特開平1−287914号公報で
は、分子量分布の小さなポリプロピレンに安定剤を添加
する方法が提案されている。これらはいずれも長時間に
わたり電荷を安定に保持することを特徴としたエレクト
レット材料とされているが、エレクトレットフィルター
として使用する場合には、初期の粒子除去効率が低いと
か、耐熱性が不十分という点で必ずしも満足ゆくもので
はなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】エレクトレットにおけ
る電荷保持性がポリマーの分子運動性に関連するものと
考え、鋭意検討した結果、ポリプロピレンの分子運動性
の大きさを固体分解能パルス法13C−NMRにおけるC
2 基炭素核のスピン−格子緩和時間(T1 )によって
規定すると、従来品にあっては極めて小さい緩和時間が
観測され、分子運動性の大きな相構造を有し、従って室
温以上の温度でエレクトレットの電荷保持性が悪く、初
期と長期にわたって粒子除去効率が低いという問題が判
った。本発明はかかる問題を解決した、つまりオレフィ
ンの分子運動性をおさえた相構造を有する電荷保持性の
優れたエレクトレット繊維及びエレクトレットフィルタ
ーを提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、固体高分解能
パルス13C−NMRにおけるCH2 基炭素核のスピン−
格子緩和時間(T1 )が1秒から10秒である成分相が
全成分相に少なくとも20%含まれてなる相構造を有す
るポリオレフィン繊維をエレクトレット化して得られる
エレクトレット化ポリオレフィン繊維及び該ポリオレフ
ィン繊維を用いたエレクトレットフィルターに関する。
本発明におけるパルス法13C−NMRにおけるCH2
炭素核のスピン−格子緩和時間(T1 )の測定とは、ポ
リマー固体の一定磁場中で電磁波をかけた状態から、次
にそれを取り除いた後のボルツマン平衡状態にもどろう
とする時の磁化された成分の緩和現象から、微細構造に
おけるポリマーの分子運動性を調べるための相構造分析
手段である。この分析手段によると、炭素核のスピン−
格子緩和時間(T1 )が大きい程、ポリマーの分子運動
性は小さく、反対にスピン−格子緩和時間(T1 )が小
さい程、ポリマーの分子運動性は大きいのである。
【0005】本発明者らは、各種のポリプロピレン材料
について固体高分解能パルス法13C−NMRによる相構
造分析を行った結果、スピン−格子緩和時間(T1 )の
分布をとると、いずれの材料においても0.5秒未満の
スピン−格子緩和時間(T1 )を有する成分相と、0.
5〜10秒のスピン−格子緩和時間(T1 )を有する成
分相、および10秒以上のスピン−格子緩和時間
(T1 )を有する成分相の3成分相に分けられることが
判った。そして、0.5秒未満のスピン−格子緩和時間
(T1 )を有する成分相がランダムなコンフォメーショ
ンをとる非晶相であり、10秒以上のスピン−格子緩和
時間(T1 )を有する成分相が規則正しいコンフォメー
ションをとる結晶相であることはすでに知られていた
が、0.5〜10秒のスピン−格子緩和時間(T1 )を
有する成分相が非晶相と結晶相とは異なる凝集状態を持
つ相として存在し、この成分相のスピン−格子緩和時間
(T1 )が大なる程、またその成分相の量が大なる程、
ポリプロピレンエレクトレットの電荷保持性が優れると
いることを見い出したのである。
【0006】本発明において、スピン−格子緩和時間
(T1 )が1秒から10秒である成分相が全成分相中
(該緩和時間が0.1秒以上の総成分相中)に少なくと
も20%含まれてなることが重要であり、この量が20
%未満であると初期のエレクトレット化効率が低くエレ
クトレット化後の電荷保持性が好ましくないのである。
加えて、この成分相のスピン−格子緩和時間(T1 )が
10秒により近い方が、優れた電荷保持性のエレクトレ
ットとなるのである。本発明者らはスピン−格子緩和時
間(T1 )が1秒から10秒である成分相を、非晶相と
結晶相の中間に存在する相ということから中間相と記
す。本発明において、この中間相がエレクトレットの電
荷保持性にどのような機構で関与しているか、今のとこ
ろ明確には判っていない。加えて、エレクトレットの表
面電荷密度の値が1cm2 あたり1ナノクーロンのオー
ダーであることから、かかる電荷のトラップサイトの密
度では高精度にそのトラップサイトの構造を解明するこ
とも容易ではない。しかしながら、かかる相構造を有す
るエレクトレットを得るためには、メルトブロー法で繊
維形成後加熱状態で長時間エージングする方法やポリプ
ロピレン中に凝集状態の異なる相形成を促進する添加剤
を加えることが効果的であり、ポリプロピレンの溶融状
態から熱力学的に安定な平衡状態へ移行する過程で中間
相が形成され、添加剤の場合は添加剤が結晶一次核の原
始核となり得るのかも知れないが、原始核となり得えな
い添加剤であっても、本発明の中間相の形成には有効と
なり得るのである。
【0007】本発明でいうポリオレフィンとはポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリ4メチル1ペンテン、ポリ
3メチル1ブテン等をいい、好ましくはポリプロピレン
である。また本発明の成形体とはフィルム、繊維、繊維
で構成される不織布等のウエブを示している。
【0008】本発明におけるポリプロピレンに添加する
添加剤は、その融点が100℃以上、より好ましくは1
20℃以上であることが重要である。いかなる理由で添
加剤の融点がポリプロピレンの中間相の形成に寄与して
いるかは定かではない。しかし、ポリプロピレンの溶融
状態からの結晶化過程を考えると、たとえば示差熱分析
器で測定される結晶化開始温度はおよそ120℃あたり
にあるが、溶融状態から冷却速度がより速いとポリプロ
ピレンの溶融体の過冷却度も増すことになり、結晶化開
始温度は120℃より一層下るだろう。100℃以上の
融点を有する添加剤のみポリプロピレンの中間相の形成
に作用するということは、ポリプロピレン結晶化が開始
する前に添加剤の分子運動が固定化されていることが重
要であると考えられる。
【0009】本発明で用いることのできる添加剤にはリ
ン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ソデ
ィウム2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブ
チルフェニル)ホスフェートのごとき樹脂改質剤や、ト
リス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジ
ル)イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチ
ル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタ
ン、1,1ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−
5’−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2−チオ−ジ
エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス
[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−
メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメ
チルエチル]−2,8,10−テトラオキサスピロ
[5,5]ウンデカン、ビス(2,4−ジ−t−ブチル
フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス
(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペン
タエリスリトールジホスファイト、エチリデンビス
(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファ
イト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホ
スファイトのごとき抗酸化剤や、3−(N−サリチロイ
ル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカンジカル
ボン酸ジサリチロイルヒドラジドのごとき重金属不活性
剤や、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニ
ル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−
3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロ
ロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−
(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N
−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、ビス
(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェ
ニル)メタン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメ
チル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテト
ラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチ
ル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチ
ル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ
(5,5)ウンデカン]ジエチル(混合)−1,2,
3,4−ブタンテトラカルボキシレートのごとき光安定
剤が挙げられる。これら添加剤のうち、より好ましい添
加剤としてリン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナト
リウム、ソディウム2,2’−エチリデンビス(4,6
−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)
イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−
4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ト
リス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイ
ト、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’
−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/
β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,
4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカ
ン]ジエチル(混合)−1,2,3,4−ブタンテトラ
カルボキシレートが挙げられる。
【0010】本発明において、上述の添加剤の添加量
は、添加剤の種類によっても異なるが0.05%から5
%の範囲である場合、中間相の相形成に効果的である
【0011】本発明において、中間相の相形成はフィル
ム、繊維等の厚さが薄いほど有効に発現し、繊維の成型
にあってはメルトブロー紡糸、フラッシュ紡糸、静電場
紡糸などが挙げられ、なかでもメルトブロー紡糸が最も
好ましい例であるが、これに限定するものではない。本
発明において、エレクトレット繊維フィルターのポリプ
ロピレン繊維がメルトブロー不織布から作製される場合
には、そのメルトブロー紡糸条件の範囲は、ノズル孔径
が0.1〜0.5mm、ノズル温度が200〜300
℃、ポリマー吐出量がノズル孔1ホールあたり0.02
5〜2.0g/分、牽引空気温度が230〜400℃、
牽引空気圧0.2〜5kg/cm2 、ポリプロピレンの
メルトフローインデックスが300〜1000であるこ
とが好ましい。ポリプロピレンの分子量分布は特に限定
するものではない。かかる紡糸条件の範囲では、走査型
電子顕微鏡写真による算術平均繊維径は1〜3μmのも
のが得られる。
【0012】本発明において、エレクトレット繊維フィ
ルターがメルトブロー不織布から作成される場合には、
中間相の相形成に効果的な方法は先に述べた添加剤の添
加に限定するものではない。添加剤以外の方法の1つと
しては、メルトブロー不織布作製後の熱処理あるいは4
0℃〜90℃雰囲気での約2ヶ月間のエージングを行う
ことが効果的である。上述のような添加剤を添加してい
ないメルトブロー不織布では紡糸直後の結晶以外の相構
造は非常に不安定であるが、このような処理により熱的
あるいは経時的に相構造の安定化、すなわち中間相の相
形成が進行することがわかった。中間相の相形成のため
のもう1つの方法は、メルトブロー紡糸条件によって制
御することである。具体的には前述の紡糸条件のうち紡
糸ドラフト(繊維径に対するノズル孔径の比)が150
以上において効果があることがわかった。紡糸ドラフト
が大きいと繊維の配向度が大きくなり、ポリプロピレン
の結晶以外の領域においても配向による分子鎖の緊張が
起こる。このようにして形成された中間相は、固体高分
解能パルス法13C−NMRによるCH2 基炭素核のスピ
ン−格子緩和時間(T1 )は1〜10秒の範囲にある。
本発明において、ポリプロピレンの繊維をエレクトレッ
ト化する方法は、ポリプロピレンの繊維の成型前でも後
でもいずれでもよく、具体的なエレクトレット化の方法
にはコロナ放電による荷電、電子線照射による荷電、高
電界下での荷電などが挙げられる。以下に実施例をもっ
て詳細に説明する。
【0013】
【各種測定法】エレクトレット繊維フィルターの粒子除
去効率は、0.3μmのNaCl粒子を用いてフィルタ
ー通過風速5.3cm/秒において、フィルターの上、
下流の粒子濃度をそれぞれレーザーパーティクルカウン
ター(リオン製、KC−14)で測定し、上流側の粒子
濃度から下流側の粒子濃度を減じた値を上流側の粒子濃
度で除した値の百分率で示した。図1に粒子除去効率測
定用の装置を示す。 エレクトレット繊維フィルターの
表面電荷密度は、粒子除去効率の値より次の原理によっ
て推算することができる。エレクトレット繊維フィルタ
ーの場合、粒子の支配的捕集機構は静電気力であり、し
たがってフィルターの粒子除去効率は次式で近似され
る。
【0014】
【数1】 上記数1において Et :フィルターの粒子除去効率 Ee :静電気力による粒子除去効率 数1は対数透過則より、次式で与えられる。
【0015】
【数2】 数2、数3において ηe :静電気力に起因する単繊維捕集効率 α :充填率 L :厚さ df :繊維径 ところで静電気力に起因する単繊維捕集効率はクーロン
力と誘起力に分けて次式で与えられる。
【0016】
【数4】 数4において ηc :クーロン力に起因する単繊維捕集効率 ηin:誘起力に起因する単繊維捕集効率 さらに、ηc 、ηinは次式で与えられる。
【0017】
【数5】
【0018】
【数6】 ここで Cm :カニンガムの補正係数 q :粒子帯電量 ρ :表面電荷密度 μ :空気の粘度 ε0 :真空の誘電率 εp :粒子の誘電率 u :濾過速度 dp :粒子の直径 つまり、無帯電粒子に対する誘起力の寄与と帯電粒子に
対するクーロン力の寄与を考慮すると、ηe は誘起力に
起因する単繊維捕集効率と、1個帯電粒子に働くクーロ
ン力に起因する単繊維捕集効率からn個帯電粒子に働く
クーロン力に起因する単繊維捕集効率までの和である次
式で示される。
【0019】
【数7】 ηci:i個の電荷を持つ帯電粒子に対して働くクーロン
力に起因する単繊維捕集効率 Ni :i個の電荷を持つ帯電粒子の分率 実測されたフィルターの粒子除去効率と数2〜6を用い
て、数7の左辺と右辺が等しくなるようは表面電荷密度
ρをコンピュータ処理により求めることによって、その
フィルターを構成する繊維の表面電荷密度を推算するこ
とができる。電荷保持性の評価は、エレクトレット化1
日後の粒子除去効率(E0 )より推算した表面電荷密度
(ρ0 )に対する、40℃で24時間熱処理後の粒子除
去効率(E1 )より推算した表面電荷密度(ρ1 )か
ら、次式を用いて計算した。
【0020】
【数8】 固体高分解能パルス法13C−NMRの測定は、バリアン
社XL−300(13C;75.5MHz)を用い、CP
/MAS( Cross Polarization / Magic AngleSpinning
) 法により行った。スピン−格子緩和時間(T1 )の
測定には Torchiaの開発したパルス系列を用いた。この
パルス系列は2つの部分からなり、第一系列ではCPで
得られた13Cスピンを+Z方向に倒して適当な待ち時間
を設定し、その後の緩和を観測する。第二系列では13
スピンを−Z方向に倒して以下同様の観測をする。した
がって得られるスペクトルは両系列で得られた差として
あらわれる。上述の待ち時間を何段階か変化させると、
その待ち時間に対応したスペクトルが得られる。図2、
3にはこのように待ち時間を変化させて測定したスペク
トルの一例を示した。これらのスペクトルにおけるCH
2 基の積分強度を待ち時間に対してプロットすると図4
のような緩和曲線が得られる。観測に供した試料が種々
のスピン−格子緩和時間(T1 )を有するn個の相成分
から構成されている多成分系ならば、緩和曲線は次式で
示される。
【数9】 ここで、 X0 j:j番目のデータ(スペクトル)の積分強度 n:成分数 Ai:i番目の成分の積分強度 t:待ち時間 T1 i:i番目の成分のスピン−格子緩和時間 したがってn、Ai、T1 iを決定するために、待ち時
間と積分強度のプロットをシンプレックス法による非線
型最適化を行う。その方法として、(1)スピン−格子
緩和時間には分布があり、それの決まった多くの成分の
相対割合が異なるとして解析する方法(分布による解
析)、(2)数個の成分数を仮定し、各成分のスピン−
格子緩和時間の値とその相対量を変数とする方法(ヒス
トグラムによる解析)の2つがある。図4には、得られ
たスペクトルについて、上述の2つの方法を用いた場合
の解析結果を示した。2つの方法での結果はよい一致を
示している。
【0023】
【実施例】
実施例1〜8 メルトフローインデックスが500、分子量分布がMw
/Mnにおいて4であるアイソタクティックポリプロピ
レンに表1に示した添加剤をそれぞれ、表1に示す量を
添加しノズル孔径0.2mm、ノズル温度270〜29
0℃、ポリマー吐出量ノズルノズル孔1ホールあたり
0.2g/分、牽引空気温度350℃、牽引空気圧3k
g/cm2 の条件で幅10cm、目付30g/m2 のメ
ルトブロー不織布(走査型電子顕微鏡写真による平均繊
維径2.0μm、紡糸ドラフト100)を作製した。次
いで、直後にこの不織布を半導体シートを敷いたアース
電極上に置きコロナ電極で+17kV/cmの電界で直
流高電圧を5秒間印加してエレクトレット繊維フィルタ
ーを得た。これらの結果を表1に示した。
【0024】
【表1】 添加剤種 A:ソディウム2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ
−t−ブチルフェニル)ホスフェート B:リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム C:トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
ベンジル)イソシアヌレート D:1,1,3−トリス(2−メチル−4’−ヒドロキ
シ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン E:1,1ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−
5’−t−ブチルフェニル)ブタン F:トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホス
ファイト G:2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’
−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール H:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジ
ル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−
[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウ
ンデカン]ジエチル(混合)−1,2,3,4−ブタン
テトラカルボキシレート
【0025】比較例1〜5 実施例1〜8と同様のアイソタクティックポリプロピレ
ンを用い、融点が100℃以下の添加剤を添加した場合
と、無添加の場合について実施例1〜8同様の条件でメ
ルトブロー不織布を作製、荷電してエレクトレット繊維
フィルターを得た。これらの結果を表2に示した。
【0026】
【表2】 I:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート J:ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エス
テル K:ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリル−チオ
プロピオネート)エステル L:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリ
ジニル)セバケート
【0027】実施例9〜10 融点が50℃の添加剤であるオクタデシル−3−(3,
5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ートが0.03%配合された、メルトフローインデック
ス300、分子量分布がMw/Mnにおいて3であるア
イソタクティックポリプロピレンを用いて、実施例1〜
8と同様の条件でメルトブロー不織布を作製し、直後に
140℃で24時間熱処理を行ってから実施例1〜8と
同様の条件で荷電(実施例9)、および紡糸後約2ヶ月
経過後に荷電(実施例10)してエレクトレット繊維フ
ィルターを得た。これらの結果を表3に示した。
【0028】実施例11 実施例9〜10と同様のアイソタクティックポリプロピ
レンより、ノズル孔径0.3mm、ノズル温度270〜
290℃、ポリマー吐出量ノズル孔1ホールあたり0.
3g/分、牽引空気温度350℃、牽引空気圧3kg/
cm2 の条件で平均繊維径2.0μm(紡糸ドラフド1
50)、目付30g/m2 のメルトブロー不織布を作製
し、直後に実施例1〜8と同様の条件で荷電してエレク
トレット繊維フィルターを得た。この結果を表3に示し
た。
【0029】
【表3】 実施例12〜13 メルトフローインデクスが300で分子量分布がMw/
Mnにおいてそれぞれ2、8、6であるアイソタクティ
ックポリプロピレンに、融点が186℃の添加剤である
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5
−t−ブチルフェニル)ブタンを0.3%添加し、実施
例1〜8と同様の条件でメルトブロー不織布(紡糸ドラ
フト100)を作製し、次いで直後に実施例1〜8と同
様の条件で荷電してエレクトレット繊維フィルターを得
た。これらの結果を表4に示した。
【0030】
【表4】
【0031】比較例6〜7 メルトフローインディックスが500で分子量分布がM
w/Mnにおいてそれぞれ3、7であるアイソタクティ
ックポリプロピレンに、融点が50℃の添加剤であるオ
クタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネートを0.3%添加し、実
施例1〜8と同様の条件でメルトブロー不織布(紡糸ド
ラフト100)を作製し、次いで直後に実施例1〜8と
同様の条件で荷電してエレクトレット繊維フィルターを
得た。これらの結果を表5に示した。
【0032】
【表5】
【0033】実施例1〜8のメルトブロー不織布におけ
るスピン−格子緩和時間(T1 )はすべて1.5秒以上
の値を示し、なかでも実施例1と3は3秒以上の高い値
を示したが、同一条件で作製した比較例1〜5のメルト
ブロー不織布は全て1秒以下であった。また中間相の成
分量もスピン−格子緩和時間(T1 )と同じ傾向を示
し、実施例1〜8のメルトブロー不織布は20%以上を
示した。これらメルトブロー不織布をエレクトレット化
した実施例1〜8は、初期の粒子除去効率が99.5%
以上の高い値を示しているのに対し、比較例1〜5は9
7〜98%と低い値であった。また、電荷保持率に関し
ても実施例1〜8は90%以上の高保持率を示し、なか
でも実施例1はその低下が認められなかった。一方比較
例1〜5は70〜80%の電荷保持率であった。実施例
9〜11のメルトブロー不織布におけるスピン−格子緩
和時間(T1 )は4秒以上であり、また初期の粒子除去
効率、および電荷保持率に関しても比較例1に比べて高
い値を示している。実施例12〜13および比較例6〜
7ではポリプロピレンの分子量分布がスピン−格子緩和
時間(T1 )、初期の粒子除去効率、および電荷保持率
と相関がないことが確認された。実施例12〜13では
いずれも実施例4とほぼ同様の結果が、また比較例6〜
7では比較例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0034】
【発明の効果】本発明は、上述のごとく分子運動性の小
さな中間相を有することで、エレクトレット化後の初期
および長期の粒子除去効率が高く、電荷保持性に優れた
ポリオレフィン繊維からなるエレクトレットフィルター
を提供する。
【0035】
【図面の簡単な説明】
図1はエレクトレット繊維フィルターの粒子除去効率の
測定方法を示す概略図である。 1:ダクト 2:上流側サンプリング管 3:下流側サンプリング管 4:差圧計 5:レーザーパーティクルカウンター 6:流量計 7:バルブ 8:ブロアー 9:エレクトレット繊維フィルター 10:NaCl粒子発生装置 11:アメリシウム中和器 図2、図3は待ち時間を変化させて測定したポリプロピ
レンのメルトブロー繊維の固体高分解能13C−NMRス
ペクトルの一例である。図において縦軸はピーク強度、
横軸はケミカルシフトを示している。 A:CH2 B:CH C:CH3 1:待ち時間0.04秒 8:待ち時
間6.4秒 2:待ち時間0.1秒 9:待ち時間1
2.8秒 3:待ち時間0.2秒 10:待ち時間2
5.6秒 4:待ち時間0.4秒 11:待ち時間3
6.0秒 5:待ち時間0.8秒 12:待ち時間5
1.2秒 6:待ち時間1.6秒 13:待ち時間7
2.0秒 7:待ち時間3.2秒 14:待ち時間10
2.0秒 イ:積分曲線 ロ:積分曲線から求めた積分強度で一対の数値のうち、
左側の値はピークAの、右側の数値はピークBプラスピ
ークCの積分強度を示す。 図4は図3のスペクトルより得られた緩和曲線である。
縦軸はCH2 基の積分強度、横軸は待ち時間(秒)を示
している。 1:測定データ 2:最適化による解析結果(分布による解析) 3:2と3の差 図5は図2、3のスペクトルを分布による解析法により
求めた相構造の解析の結果を示している。(各成分のベ
ースラインからベースラインの積分値の合計は1とな
る)を示し、横軸はスピン−格子緩和時間(単位:秒)
を示している。図6は図2、3のスペクトルをヒストグ
ラム解析により求めた相構造の解析結果を示しており、
縦軸は各成分相の相対量(合計すると1となる)を示
し、横軸はスピン−格子緩和時間(秒)を示す。
【数3】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エレクトレット化ポリオレフィン繊維で
    あって、該ポリオレフィン繊維が、固体高分解能パルス
    13C−NMRによるCH2 基炭素核のスピン−格子緩
    和時間(T1 )が1秒から10秒である成分相が、全成
    分相中に少なくとも20%含まれてなる相構造を有する
    ことを特徴とするエレクトレット化ポリオレフィン繊
    維。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の相構造を有するエレク
    トレット化ポリオレフィン繊維で構成されているエレク
    トレットフィルター。
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