JP2953546B2 - エレクトレット化ポリプロピレン系スプリット繊維 - Google Patents

エレクトレット化ポリプロピレン系スプリット繊維

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クリーンルーム用フィ
ルター、ビル空調用フィルター、掃除機用フィルター、
空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、OA
機器用フィルターなどに用いることのできる電荷保持性
に優れたエレクトレット化ポリプロピレン系スプリット
繊維に関する。
【0002】
【従来技術】高い表面電荷密度を有するポリオレフィン
(例えばポリプロピレン)エレクトレットは、特開昭6
3−151326号公報、特開平1−287914号公
報では分子量分布の小さなポリプロピレンに安定剤を添
加する方法が提案されている。これらはいずれも長時間
にわたり電荷を安定に保持することを特徴としたエレク
トレット材料とされているが、エレクトレットフィルタ
ーとして使用する場合には、初期の粒子除去効率が低い
とか、耐熱性が不十分という点で必ずしも満足するもの
ではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】エレクトレットにおけ
る電荷保持性がポリマーの分子運動性に関するものと考
え、鋭意検討した結果、ポリプロピレンの分子運動性の
大きさを固体高分解能パルス法13C−NMRにおけるC
2 基炭素核のスピン−格子緩和時間(T1)によって
規定すると、従来品にあっては極めて小さい緩和時間が
観測され、分子運動性の大きな相構造を有し、従って室
温以上の温度でエレクトレットの電荷保持性が悪く、初
期と長期にわたって粒子除去効率が低いという問題が判
った。本発明はかかる問題を解決した、つまりポリプロ
ピレンの分子運動性をおさえた相構造を有する電荷保持
性の優れたエレクトレット化ポリプロピレン系スプリッ
ト繊維及びエレクトレットフィルターを提供せんとする
ものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、固体高分解能
パルス法13C−NMRによるCH2 基炭素核のスピン−
格子緩和時間(T1)が1秒から10秒である成分相が
全成分相中に少なくとも20%含まれてなる相構造を有
するポリプロピレン系スプリット繊維をエレクトレット
化して得られるエレクトレット化ポリプロピレン系スプ
リット繊維に関する。本発明におけるパルス法13C−N
MRにおけるCH2 基炭素核のスピン−格子緩和時間
(T1)の測定とは、ポリマー固体の一定磁場中で電磁
波をかけた状態から、次にそれを取り除いた後のボルツ
マン平衡状態にもどろうとする時の磁化された成分の緩
和現象から、微細構造におけるポリマーの分子運動性を
調べるための相構造分析手段である。この分析手段によ
ると、炭素核のスピン−格子緩和時間(T1)が大きい
程、ポリマーの分子運動性は小さく、反対にスピン−格
子緩和時間(T1)が小さい程、ポリマーの分子運動性
は大きいのである。
【0005】本発明者らは、各種のポリオレフィン材料
について固体高分解能パルス法13C−NMRによる相構
造解析を行った結果、スピン−格子緩和時間(T1 )の
分布をとると、いずれの材料においても0.5秒未満の
スピン−格子緩和時間(T1)を有する成分相と、0.
5〜10秒のスピン−格子緩和時間(T1 )を有する成
分相、および10秒以上のスピン−格子緩和時間
(T1 )を有する成分相の3成分相に分けられることが
判った。そして、0.5秒未満のスピン−格子緩和時間
(T1 )を有する成分相がランダムなコンフォメーショ
ンをとる非晶相であり、10秒以上のスピン−格子緩和
時間(T1 )を有する成分相が規則正しいコンフォメー
ションをとる結晶相であることはすでに知られていた
が、0.5〜10秒のスピン−格子緩和時間(T1 )を
有する成分相が非晶相と結晶相とは異なる凝集状態を持
つ相として存在し、この成分相のスピン−格子緩和時間
(T1 )が大きくなる程、またその成分相の量が大きく
なる程、ポリオレフィンエレクトレット(特に、ポリプ
ロピレンエレクトレット)の電荷保持性が優れるという
ことを見い出したのである。
【0006】本発明において、スピン−格子緩和時間
(T1 )が1秒から10秒である成分相が成分相中(該
緩和時間が0.1秒以上の総成分相中)に少なくとも2
0%含まれてなることが重要であり、この量が20%未
満であると初期のエレクトレット化効率が低くエレクト
レット化後の電荷保持性が好ましくないのである。加え
て、この成分相のスピン−格子緩和時間(T1 )が10
秒より近い方が優れた電荷保持性のエレクトレットとな
るのである。本発明者らはスピン−格子緩和時間
(T1 )が0.5秒から10秒である成分相を、非晶相
と結晶相の中間に存在する相ということから中間相と記
す。本発明において、この中間相がエレクトレットの電
荷保持性にどのような機構で関与しているか、今のとこ
ろ明確に判っていない。加えてエレクトレットの表面電
荷密度の値が1cm2 あたり+1ナノクーロンのオーダ
ーであることから、かかる電荷のトラップサイトの密度
では高精度にそのトラップサイトの構造を解明すること
も容易ではない。かかる相構造を有するエレクトレット
を得るためには、次に例示する樹脂改質剤、抗酸化剤、
重金属不活性剤、光安定剤や滑剤などの添加剤を1種ま
たは数種混合し、その総添加量が0.5〜5%のポリプ
ロピレン樹脂をTダイ法やインフレーション法で成膜し
てキャストフィルムを作製し、次いで多段熱延伸をする
ことによって達成される。本発明において多段熱延伸と
は二段、より好ましくは三段以上であり、延伸倍率はキ
ャストフィルムの複屈折率の大きさにより異なるが6〜
10倍が好ましい範囲である。これらの条件で熱延伸を
行うと、添加された添加物の周辺に生じると推定される
中間相が高度に配向した分子鎖に囲まれることによって
緩和時間の大きい安定な中間相として存在することにな
ると推測される。
【0007】
【0008】本発明におけるポリプロピレンに添加する
添加剤は、その融点が100℃以上、より好ましくは1
20℃以上であることが重要である。いかなる理由で添
加剤の融点がポリプロピレンの中間相の形成に寄与して
いるかは定かでない。しかし、ポリプロピレンの溶融状
態からの結晶化過程を考えると、たとえば示差熱分析器
で測定される結晶化開始温度はおおよそ120℃あたり
にあるが、溶融状態からの冷却速度がより速いとポリプ
ロピレンの溶融体の過冷却度も増すことになり、結晶化
開始温度は120℃より一層下がるだろう。100℃以
上の融点を有する添加剤のみポリプロピレンの中間相の
形成に作用するということは、ポリプロピレンの結晶化
が開始する前に添加剤の分子運動が固定化されているこ
とが重要であると考えられる。
【0009】本発明で用いることのできる添加剤にはリ
ン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ソデ
ィウム2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブ
チルフェニル)ホスフェートのごとき樹脂改質剤や、ト
リス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジ
ル)イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチ
ル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタ
ン、1,1−ビス(2’−メイツ−4’−ヒドロキシ−
5’−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2−チオ−ジ
エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス
[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−
メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメ
チルエチル]−2,8,10−テトラオキサスピロ
[5,5]ウンデカン、ビス(2,4−ジ−t−ブチル
フェニル)ペンタエリスリトールジオスファイト、ビス
(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペン
タエリスリトールジホスファイト、エチリデンビス8
4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイ
ト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホス
ファイトのごとき抗酸化剤や、3−(N−サリチロイ
ル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカンジカル
ボン酸ジサリチロイルヒドラジドのごとき重金属不活性
剤や、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニ
ル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−
3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロ
ロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−
(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N
−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、ビス
(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェ
ニル)メタン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメ
チル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテト
ラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチ
ル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチ
ル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ
(5,5)ウンデカン]ジエチル(混合)−1,2,
3,4−ブタンテトラカルボキシレートのごとき光安定
剤やリチウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウ
ム、バリウム等の脂肪酸塩の金属セッケン、ステアリン
酸、セバチン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、カルナ
ウバワックス等の天然ワックス、酸化硅素、酸化チタ
ン、炭酸カルシウム、アルミナ、カオリン等の無機粉体
等の滑剤が挙げられる。これら添加剤のうち、より好ま
しい添加剤としてリン酸ビス(4−t−ブチルフェニ
ル)ナトリウム、ソディウム2,2’−エチリデンビス
(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ト
リス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイ
ト、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’
−メチルフェニル9−5−クロロベンゾトリアゾール、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/
β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,
4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカ
ン]ジエチル(混合)−1,2,3,4−ブタンテトラ
カルボキシレートが挙げられる。本発明におけるポリプ
ロピレンに添加する添加剤はポリ−4−メチル−1−ペ
ンテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリエチレン
テレフタレート、ポリカーボネート等のポリプロピレン
よりも融点の高い高分子化合物も好ましい添加剤として
挙げられる。
【0010】本発明において、上述の添加剤の総添加量
は、添加剤の種類によっても異なるが0.5%から5%
の範囲である場合、中間相の相形成に効果的である。
【0011】本発明において多段熱延伸の方法には、速
度差をつけた熱ロール間での延伸、速度差をつけた熱ロ
ール間での熱板上加熱延伸、レーザーや遠赤外線加熱に
よる延伸、熱板エッジでの熱延伸、加熱ピンでの熱延伸
等があり、これらの単一あるいは複合により、連続的に
多段に熱延伸する手段が挙げられる。本発明における多
段熱延伸の熱ロール、熱板、加熱ピン等の表面は鏡面、
粗面いずれでも構わないが、フィルムのスプリット性を
向上させるには粗面が好ましい。本発明においてスプリ
ット繊維とは一軸熱延伸フィルムを延伸方向に微細に割
った繊維であり、連続繊維であっても不連続繊維であっ
ても構わない。またスプリット繊維の巾は数μmから数
100μmであり、その分布は特に限定するものではな
いが、好ましい範囲を例示すると20μm未満の繊維が
20%以上、20〜40μm未満の繊維が30%以下、
40μm以上の繊維が30%以上が挙げられる。ここで
20μm未満の細い繊維と40μm以上の太い繊維の含
有率が特に重要である。本発明において、ポリプロピレ
ンの繊維をエレクトレット化する方法は、ポリプロピレ
ンの繊維の成型前でも後でもいずれでもよく、具体的な
エレクトレット化の方法にはコロナ放電による荷電、電
子線照射による荷電、高電界下での荷電などが挙げられ
る。本発明においてスプリット繊維をつくる方法として
はヤスリ、針、刃を植え込んだロールを高速度で回転さ
せ、一軸熱延伸フィルムを傷つけ、あるいは切り目を入
れ微細に割る手法が挙げられる。本発明において得られ
るエレクトレット化ポリプロピレン系スプリット繊維は
カーディング加工による不織布状にシート化され、次い
でニードルパンチ加工あるいは熱エンボスカレンダー加
工によってエレクトレットフィルターとなる。本発明の
エレクトレットフィルターは単一材として用いることが
できるが、必要によってはネット、不織布、織布などと
貼り合わせて用いることもできる。
【0012】(各種測定法) エレクトレットフィルターの粒子除去効率は、0.3μ
mのNaCl粒子を用いてフィルター通過風速5.3c
m/秒において、フィルターの上、下流側の粒子濃度を
それぞれレーザーパーティクルカウンター(リオン製、
KC−14)で測定し、上流側の粒子濃度から下流側の
粒子濃度を減じた値を上流側の粒子濃度で除した値の百
分率で示した。エレクトレットフィルターの圧力損失は
フィルターの上、下流の圧損差をマノスターゲージで測
定した。図1に粒子除去効率測定用の装置を示す。エレ
クトレット化された一軸熱延伸フィルムの表面電位は表
面電位計(川口電気製、S−01)で8cm2 の面積に
わたって表面電位分布を測定し、その値を算術平均して
求めた。エレクトレットフィルターの繊維幅は光学顕微
鏡により任意に選んだ100本のスプリット繊維の幅を
測定し、その本数から求めた。エレクトレットフィルタ
ーの表面電荷密度は、粒子除去効率の値より次の原理に
よって推算することができる。エレクトレット繊維フィ
ルターの場合、粒子の支配的捕集機構は静電気力であ
り、したがってフィルターの粒子除去効率は次式で近似
される。
【0013】
【数1】 上記数1において、 Et:フィルターの粒子除去効率 Ee:静電気力による粒子除去効率 数1は対数透過則より、次式で与えられる。
【0014】
【数2】
【0015】
【数3】 数2、数3において、 ηe :静電気力に寄因する単繊維捕集効率 α:充填率 L:厚さ df :繊維径 ところで静電気力に寄因する単繊維捕集効率はクーロン
力と誘起力にわけて次式で与えられる。
【0016】
【数4】 数4において、 ηc :クーロン力に寄因する単繊維捕集効率 ηin:誘起力に寄因する単繊維捕集効率 さらに、ηc 、ηinは次式で与えられる。
【0017】
【数5】
【0018】
【数6】 ここで、 Cm :カニンガムの補正係数 q:粒子帯電量 ρ:表面電荷密度 μ:空気の粘度 ε0 :真空の誘電率 εp :粒子の誘電率 u:濾過速度 dp :粒子の直径 つまり、無帯電粒子に対する誘起力の寄与と帯電粒子に
対するクーロン力の寄与を考慮すると、ηe は誘起力に
寄因する単繊維捕集効率と、1個帯電粒子に働くクーロ
ン力に寄因する単繊維捕集効率からn個帯電粒子に働く
クーロンに寄因する単繊維捕集効率までの和である次式
で示される。
【0019】
【数7】 ηci:i個の電荷を持つ帯電粒子に対して働くクーロン
に寄因する単繊維捕集効率 N i:i個の電荷を持つ帯電粒子の分率 実測されたフィルターの粒子除去効率と数2〜6を用い
て、数7の左辺と右辺が等しくなるような表面電荷密度
ρをコンピュータ処理により求めることによって、その
フィルターを構成する繊維の表面電荷密度を推算するこ
とができる。電荷保持性の評価は、エレクトレット化1
日後の粒子除去効率(E0 )より推算した表面電荷密度
(ρ0 )に対する、40℃で24時間熱処理後の粒子除
去効率(E1 )より推算した表面電荷密度(ρ1 )か
ら、次式を用いて計算した。
【0020】
【数8】 固体高分解能パルス法13C−NMRの測定は、バリアン
社XL−300(13C;75.5MHz)を用い、CP
/MAS(Cross Polarization/Magic AngleSpinnin
g)法により室温下で行った。スピン−格子緩和時間
(T1)の測定にはTorchia の開発したパルス系列を用
いた。このパルス系列は2つの部分からなり、第一系列
ではCPで得られた13C磁化を+Z方向に倒して適当な
待ち時間を設定し、その後の緩和を観測する。第二系列
ではその磁化を−Z方向に倒して以下同様の観測をす
る。したがって得られるスペクトルは両系列で得られた
差としてあらわれる。上述の待ち時間を何段階か変化さ
せると、その待ち時間に対応したスペクトルが得られ
る。図2、3にはこのように待ち時間を変化させて測定
したスペクトルの一例を示した。これらのスペクトルに
おけるCH2 基の積分強度を待ち時間に対してプロット
すると図4のような緩和曲線が得られる。観測に供した
試料が種々のスピン−格子緩和時間(T1)を有するn
個の相成分から構成されている多成分系ならば、緩和曲
線は次式で示される。
【0021】
【数9】 ここで、 〈X0 j :j番目のデータ(スペクトル)の積分強度 n:成分数 Ai:i番目の成分の積分強度 t:待ち時間 T1 i:i番目の成分のスピン−格子緩和時間 したがってn、Ai、T1 iを決定するために、待ち時
間と積分強度のプロットをシンプレックス法による非線
型最適化を行う。その方法として、(1)スピン−格子
緩和時間には分布があり、それの決まった多くの成分の
相対割合が異なるとして解析する方法(分布による解
析)、(2)数個の成分数を仮定し、各成分のスピン−
格子緩和時間の値とその相対量を変数とする方法(ヒス
トグラムによる解析)の2つがある。図5、6には、得
られたスペクトルについて、上述の2つの方法を用いた
場合の解析結果を示した。2つの方法での結果はよい一
致を示している。以下に実施例でもって詳細に説明す
る。
【0022】
【実施例】メルトフローインディックスが4、Mw/M
nが6のアイソタクティックポリプロピレンに表1に示
した添加剤をそれぞれ添加し、幅300mmで厚さ50
μmのキャストフィルムをTダイで成膜し、次いでこの
キャストフィルムを三段熱ロール延伸方式で一段目、1
00℃で2.5倍延伸、二段目、120℃で2倍延伸、
三段目、135℃で1.3倍延伸を連続的に行い、その
後針電極によりプラス15kVの直流高電圧を印加しつ
つ針ロールでフィルムを割り、スプリット繊維を得た。
次にこのスプリット繊維を75mmにカットした後、カ
ードに供給しカーディング加工して、ニードルパンチ加
工を施してエレクトレットフィルターの実施例1〜4を
作製した。
【0023】
【比較例】比較のため、実施例1と同じ添加物組成のポ
リプロピレンを実施例1と同様に成膜し、次いで、この
キャストフィルムを一軸延伸方式で110℃で7倍熱延
伸後、ただちに実施例1と同一条件で荷電、スプリッ
ト、不織布化によりエレクトレットフィルターの比較例
1を作製した。また添加剤組成が表1の比較例2につい
ては添加量を本発明で例示した範囲より少なくし、実施
例1と全く同様に成膜から三段熱延伸、荷電、スプリッ
ト、不織布化によりエレクトレットフィルターを作製し
た。表1にポリプロピレンの添加剤組成を示し、表2に
それぞれのエレクトレットフィルターの測定結果をまと
めた。表2の結果から、実施例の中間相成分量は比較例
に比べて大きく20%以上を示し、そのT1 も7〜8秒
と比較例よりも大きい緩和時間を示した。エレクトレッ
トフィルターの濾過性能を見ると実施例の粒子除去効率
は比較例に比べて十分高く、電荷保持率も比較例を超え
る値となっている。目付、圧力損失と繊維幅の分布が実
施例、比較例共に大差ないことから、この濾過性能の原
因は中間相成分量と中間層の緩和時間T1 の大なる効果
と考えられる。
【0024】
【発明の効果】本発明は、上述のごとく分子運動性の小
さな中間相を有することで、エレクトレット化後の初期
および長期の粒子除去効率が高く、電荷保持性に優れた
ポリプロピレン系スプリット繊維からなるエレクトレッ
トフィルターを提供する。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はエレクトレットフィルターの粒子除去効
率の測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1:ダクト 2:上流側サンプリング管 3:下流側サンプリング管 4:差圧計 5:レーザーパーティクルカウンター 6:流量計 7:バルブ 8:ブロアー 9:エレクトレット繊維フィルター 10:NaCl粒子発生装置 11:アメリシウム中和器
【図2】図2(A,B)は待ち時間を変化させて測定し
たポリプロピレン繊維の固体高分解能13C−NMRスペ
クトルの一例である。図において縦軸はピーク強度、横
軸はケミカルシフトを示している。 A:CH2 B:CH C:CH3 1:待ち時間0.04秒 8:待ち時間6.
4秒 2:待ち時間0.1秒 9:待ち時間1
2.8秒 3:待ち時間0.2秒 10:待ち時間2
5.6秒 4:待ち時間0.4秒 11:待ち時間3
6.0秒 5:待ち時間0.8秒 12:待ち時間5
1.2秒 6:待ち時間1.6秒 13:待ち時間7
2.0秒 7:待ち時間3.2秒 14:待ち時間10
2.0秒 イ:積分曲線 ロ:積分曲線から求めた積分強度で一対の数値のうち、
左側の値はピークAの、右側の数値はピークBプラスピ
ークCの積分強度を示す。
【図3】 図3は図2のスペクトルより得られた緩和曲
線である。縦軸はCH2基の積分強度、横軸は待ち時間
(秒)を示している。 1:測定データ 2:最適化による解析結果(分布による解析) 3:2と3の誤差
【図4】図4は図2(A,B)のスペクトルを分布によ
る解析法により求めた相構造の解析の結果(各成分のベ
ースラインからベースラインの積分値の合計は1、横軸
はスピン−格子緩和時間(秒))を示している。
【図5】図5は図2(A,B)のスペクトルをヒストグ
ラム解析により求めた相構造の解析結果を示しており、
縦軸は各成分の相対量(合計すると1となる)を示し、
横軸はスピン−格子緩和時間(秒)を示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エレクトレット化ポリプロピレン系スプ
    リット繊維であって、該ポリプロピレン系スプリット繊
    維が、固体高分解能パルス法13C−NMRによるCH2
    基炭素核のスピン−格子緩和時間(T1)が1秒から1
    0秒である成分相が、全成分相中に少なくとも20%含
    まれてなる相構造を有することを特徴とするエレクトレ
    ット化プロピレン系スプリット繊維。
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