JPH0572653A - 立体写真カメラと立体写真作成方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】専用のフィルムを必要とせずに通常に流通して
いるフィルムが使用できる。また撮影時点で合成像が得
られてこのフィルムが既存の現像プロセスに通るように
し、一般人が撮影して廉価な立体写真が得られるように
する。 【構成】視差の在る二画像を得る左目用レンズ３および
右目用レンズ４と、前記レンズ３，４からの二画像それ
ぞれを所定ピッチで分割圧縮して交互に配列する撮影用
レンチキュラー板７と、前記撮影用レンチキュラー板７
を通して前記二画像が合成された像が結ばれるフィルム
８とを備える立体写真カメラ１により、フィルム８に視
差の在る二画像からの合成像を形成する。そしてこれを
現像処理し、合成像を印画紙シートに形成する。このの
ち観察用レンチキュラー板と、前記印画紙シートとを貼
り合わせる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、撮影用レンチキュラー
板を有する立体写真カメラと観察用レンチキュラー板に
より立体視できる立体写真の作成方法に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、立体写真を作成する場合には、視
差を持った二つの原画またはそれ以上の原画それぞれ
を、レンチキュラー板の作用を用いて、すなわちこのレ
ンチキュラー板のレンズピッチで分解し、分解された右
目用像と左目用像を１レンズピッチごとに圧縮配列して
合成し、この合成像をフィルムに形成している。そして
このフィルムを現像し、焼付けを行って得られた合成画
像に位置合わせしながら観察用レンチキュラー板を貼り
合わせていた。

【０００３】また予めレンチキュラー板と一体となった
フィルムシート（カラー印画紙）を用いる手法がある。
これは複数のレンズからなる専用立体写真カメラから得
られる像または原画を現像処理し、その複数の原画をレ
ンチキュラー板と一体となった前記フィルムシートに専
用の合成機により合成し、現像処理してこれを立体写真
としているものであった。

【０００４】これは図６と図７に示すように、例えば４
眼（四つのレンズが横に並んだもの）方式で市販の３５
ｍｍ判のフィルムを装填したカメラａが用いられてい
て、フィルムｂ上に視差を有する関係にある４像ｃ，
ｄ，ｅ，ｆを一組とし、フィルムの長さを限度として何
組かの像が撮影される。そしてこのフィルムが現像所に
送られ、現像後、専用に作製された引き伸ばし合成機ｇ
によって、上述したレンチキュラー板と一体の上記フィ
ルムシートｈに対して４像の引き伸ばしと合成とが行わ
れる（図８参照）。４像の合成の時点において、この画
像それぞれはレンチキュラー板のレンズカット数に分割
され、かつ１ピッチにおいて１／４の幅に収光され、１
ピッチに四本の縦縞状の像（分割像ｃ′，ｄ′，ｅ′，
ｆ′）が並んで合成されることになる（図９参照）。現
像されたフィルムシートはレンチキュラー板と一体とな
っていることから、これが直ちに立体写真となるもので
あった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このように昨今におい
ては、一般人が自身で撮影した像を立体写真として得た
いとの要望に答えられるようになってきている。しかし
ながら、上述した前者の場合では、予め視差を持った複
数枚の原画の提出を一般の撮影者に要求することにな
り、現実的な方法ではない。またこの方法では原画から
合成像を得るために多大な設備を要していて、そのため
作成コストが高く廉価な立体写真を提供できる状態とは
なっていない。また合成の自動化を図るには多額の投
資、技術の開発が必要である。

【０００６】そして後者の場合には、撮影者は複数のレ
ンズを備えた上述の専用の立体写真カメラで撮影し、現
像所に出すことになるが、現像所側などにおいては、専
用の合成機やレンチキュラー板と一体となったフィルム
シートを作成するための設備が必要で、初期投資が高額
である。このように前者の場合にも後者の場合にも多額
の投資が必要で、多くの開発項目があり、大変複雑なシ
ステムとなるものであった。

【０００７】そこで本発明は上記した事情に鑑み、専用
のフィルムを必要とせずに通常に流通しているフィルム
が使用でき、また撮影時点で合成像が得られるこのフィ
ルムを既存の現像プロセスや既存の引伸機を使えるよう
にすることにより、一般人が撮影して廉価な立体写真が
得られるようにすることを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は上記した課題を
考慮してなされたもので、第一の発明は、視差の在る二
画像を得る２眼レンズと、前記２眼レンズそれぞれに対
応してカメラ本体内に位置し、この２眼レンズからの画
像の光軸をフィルムの中心に向けるプリズムと、フィル
ムの前方に位置し、前記２眼レンズからの二画像それぞ
れを所定ピッチで分割圧縮して交互に配列する撮影用レ
ンチキュラー板と、を有して、前記レンチキュラー板を
通して前記二画像が合成された像がフィルムに結ばれる
構造を備えたことを特徴とする立体写真カメラであり、
この立体写真カメラを提供して、上記課題を解消するも
のである。

【０００９】また第二の発明は、視差の在る二画像を得
る２眼レンズと、前記２眼レンズからの二画像それぞれ
を所定ピッチで分割圧縮して交互に配列する撮影用レン
チキュラー板と、前記レンチキュラー板を通して前記二
画像が合成された像が結ばれるように装填されたフィル
ムとを備える立体写真カメラにより、前記フィルムに視
差の在る二画像からの合成像を形成する工程と、前記合
成像が撮影されたフィルムを現像処理する工程と、現像
されたフィルムの合成像を、印画紙シートに形成する工
程と、前記工程の拡大倍率に対応し、かつ分割数が前記
撮影用レンチキュラー板の分割数と同一の観察用レンチ
キュラー板と、前記印画紙シートとを貼り合わせる工程
とを備えることを特徴とする立体写真作成方法であり、
この立体写真作成方法を提供して、上記課題を解消する
ものである。

【００１０】

【作用】本発明においては、まず２眼レンズと撮影用レ
ンチキュラー板とを有する立体写真カメラにて、装填さ
れたフィルムに視差を持った二画像が合成像として露光
形成される。そしてこの合成像を形成したフィルムを現
像処理して、このフィルムの合成像を印画紙シートに形
成し、これに観察用レンチキュラー板を重ねて、観察用
レンチキュラー板の作用により合成像から立体視できる
ようになる。

【００１１】

【実施例】つぎに本発明を図１から図５に示す実施例に
基づいて詳細に説明する。図中１は立体写真カメラで、
この立体写真カメラ１は、視差を持つ二画像が撮影でき
るように函体２の前面に、左目用レンズ３と右目用レン
ズ４とが設けられている。

【００１２】そしてこの左目用レンズ３と右目用レンズ
４とのそれぞれの背部には光軸をフィルム（後述）の中
心に向けるためのプリズム５，６が配置されている。ま
た符号７は撮影用レンチキュラー板で、この背部に前記
レンズ３，４からの光を受けるフィルム８が位置して、
このフィルム８は通常の送り出し機構によって所定量ご
とパトレーネ９から送り出され、前記撮影用レンチキュ
ラー板７の背部を通り、巻取り部１０で巻き取られる。
符号１１はフィルム圧板である。なお、図中の立体写真
カメラは、絞り、シャッターなどを省略した概略を示し
ている。

【００１３】上記立体写真カメラ１においては、視差を
持った二画像がレンズ３，４とプリズム５，６を経て撮
影用レンチキュラー板７に達すると、撮影用レンチキュ
ラー板の作用により二画像それぞれが、このレンチキュ
ラー板のレンズピッチで分割され、そして分割像が１／
２ピッチに圧縮された状態でレンズ３からの分割像とレ
ンズ４からの分割像とが交互に配列した状態で合成さ
れ、この合成像がフィルム８に形成される。

【００１４】これを図２に示す右目用レンズ４に基づい
て説明すると、このレンズ４とプリズム６を経た像は、
撮影用レンチキュラー板７によってレンズピッチで分割
され、分割像それぞれが１／２のレンズピッチに圧縮さ
れた状態でフィルム８に露光される。この分割圧縮が左
目用レンズ３とプリズム５を経た像によっても行われ、
分割圧縮された像が交互に並んで合成される。この合成
によって図５に示すようにフィルム８には、分割圧縮さ
れた右目用分割像Ｒと左目用分割像Ｌ（それぞれが縦筋
状態となる）が交互に並んだ合成像が形成されることに
なる。

【００１５】この立体写真カメラ１においての各種の設
定は、例えばつぎの通りのものとすることかできる。左
目用レンズ３と右目用レンズ４はｆ＝５０ｍｍであり、
Ｆ＝９．５とした。左目用レンズ３と右目用レンズ４の
レンズ間隔は３０ｍｍとした。被写体条件としては、距
離 ３ｍを中心に前後に立体感を出すように設定した。
そしてこの上記条件に合うような撮影用レンチキュラー
板を設計すると、材料をアクリル板（ｎ＝１．４９）と
し、Ｒ（レンズの曲率）＝０．１１ｍｍ、Ｐ（レンズピ
ッチ）＝０．１０ｍｍ、ｔ（厚さ）＝０．１９ｍｍとす
ることが良好である。

【００１６】上記フィルム８は通常の現像プロセスによ
って現像処理され、これが原画となる。つぎに現像処理
され合成像を有するフィルムから引き伸ばしが行われ
る。この引き伸ばしも通常の引き伸ばし装置１２を使用
する。この引き伸ばしにより拡大された倍率で合成像が
印画紙シート１３に形成される。なお、この引き伸ばし
装置を使用せずに１倍の拡大倍率で印画紙シートに形成
させることもある。

【００１７】こののち図４に示すように、引き伸ばされ
た合成像を有する印画紙シート１３と、上記引き伸ばし
時の拡大倍率に対応する観察用レンチキュラー板１４と
をピッチ合わせして薄い無色透明の粘着材１５を介して
貼り合わせる（例えばドライラミネーション手法を採
る）ことにより、観察用レンチキュラー板から見て立体
像が観視できる立体写真が得られる。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の立体写真
カメラは、視差の在る二画像を得る２眼レンズと、前記
２眼レンズそれぞれに対応してカメラ本体内に位置し、
この２眼レンズからの画像の光軸をフィルムの中心に向
けるプリズムと、フィルムの前方に位置し、前記２眼レ
ンズからの二画像それぞれを所定ピッチで分割圧縮して
交互に配列する撮影用レンチキュラー板と、を有して、
前記レンチキュラー板を通して前記二画像が合成された
像がフィルムに結ばれる構造を備えたことを特徴として
いる。このため従来の３眼や４眼のカメラに比べてその
構造が簡単であり、安価に立体写真カメラを製造するこ
とかできるようになる。そして被写体の撮影と同時に２
画像の合成が行われるので、画像合成に対して、高額な
専用合成機を必要とすることがない。

【００１９】また本発明の立体写真作成方法は、視差の
在る二画像を得る２眼レンズと、前記２眼レンズからの
二画像それぞれを所定ピッチで分割圧縮して交互に配列
する撮影用レンチキュラー板と、前記撮影用レンチキュ
ラー板を通して前記二画像が合成された像が得られる構
造を備える立体写真カメラにより、装填されたフィルム
に視差の在る二画像からの合成像を形成する工程と、前
記合成像が撮影されたフィルムを現像処理する工程と、
現像されたフィルムの合成像を、印画紙シートに形成す
る工程と、前記工程の拡大倍率に対応し、かつ分割数が
前記撮影用レンチキュラー板の分割数と同一の観察用レ
ンチキュラー板と、前記印画紙シートとを貼り合わせる
工程とを備えることを特徴とするものである。これによ
って、一般使用者へ２眼レンズ、撮影用レンチキュラー
板を有した立体写真カメラを提供することによって、一
般使用者は専用のフィルムを用いることなく通常に流通
して入手し易いフィルムを用いることができるようにな
り、そして撮影時に合成像が形成されることから、既存
の現像プロセスにより現像処理することができて、現像
所などに多大の設備を要することがない。さらには合成
像を写し込んだフィルムからの引き伸ばし作業も既存の
機器で行え、複製の作成も容易なものとなるなど、実用
性に優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る立体写真カメラを概略的に示す説
明図である。

【図２】撮影用レンチキュラー板による像の分割圧縮の
状態を示す説明図である。

【図３】引き伸ばしの状態を示す説明図である。

【図４】観察用レンチキュラー板と印画紙シートの貼り
合わせを示す説明図である。

【図５】合成像が形成されるフィルムを示す説明図であ
る。

【図６】従来の立体写真カメラを示す説明図である。

【図７】従来の立体写真カメラにて４像を形成したフィ
ルムを示す説明図である。

【図８】従来の専用合成機を示す説明図である。

【図９】従来用いられていたフィルムシートを示す説明
図である。

【符号の説明】

１…立体写真カメラ ２…函体 ３…左目用レンズ ４…右目用レンズ ５，６…プリズム ７…撮影用レンチキュラー板 ８…フィルム ９…パトレーネ １０…巻取り部 １１…フィルム圧板 １２…引き伸ばし装置 １３…印画紙シート １４…観察用レンチキュラー板 １５…粘着材 Ｒ…右目用分割像 Ｌ…左目用分割像

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野沢 弘直 東京都台東区台東一丁目５番１号 凸版印 刷株式会社内 (72)発明者 日詰 重男 東京都台東区台東一丁目５番１号 凸版印 刷株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】視差の在る二画像を得る２眼レンズと、 前記２眼レンズそれぞれに対応してカメラ本体内に位置
   し、この２眼レンズからの画像の光軸をフィルムの中心
   に向けるプリズムと、 フィルムの前方に位置し、前記２眼レンズからの二画像
   それぞれを所定ピッチで分割圧縮して交互に配列する撮
   影用レンチキュラー板と、 を有して、前記レンチキュラー板を通して前記二画像が
   合成された像がフィルムに結ばれる構造を備えたことを
   特徴とする立体写真カメラ。
2. 【請求項２】視差の在る二画像を得る２眼レンズと、前
   記２眼レンズからの二画像それぞれを所定ピッチで分割
   圧縮して交互に配列する撮影用レンチキュラー板と、前
   記レンチキュラー板を通して前記二画像が合成された像
   がフィルムに結ばれる構造を備えた立体写真カメラによ
   り、装填されたフィルムに視差の在る二画像からの合成
   像を形成する工程と、 前記合成像が撮影されたフィルムを現像処理する工程
   と、 現像されたフィルムの合成像を、印画紙シートに形成す
   る工程と、 前記工程の拡大倍率に対応し、かつ分割数が前記レンチ
   キュラー板の分割数と同一の観察用レンチキュラー板
   と、前記印画紙シートとを貼り合わせる工程とを備える
   ことを特徴とする立体写真作成方法。