JPH0568300U - 微生物検査用微生物捕集器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 空中浮遊微生物だけでなく、衣類等の表面や
繊維内部、さらに医療機器等の細部などに付着している
微生物も捕集することができる器具を提供する。 【構成】 吸引ファンを内蔵した本体部10の前面側に、
培養基が充填される皿状容器16を支持し、本体部の前面
を閉塞するように、多数の小孔44が穿設された有孔覆蓋
部20を取着し、有孔覆蓋部の前面側に、空気導入パイプ
54が固着された先端覆蓋部22を着脱自在に装着する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、病院内や製薬、化粧品、食品等に関わる事業所及び施設内などに 生息する環境微生物等の微生物を培養し、その微生物の種類や環境の汚染度など を調べる際に、空中に浮遊している微生物や衣類、寝具類等に付着している微生 物を捕集するのに使用される微生物捕集器に関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年、病院や製薬、化粧品、食品等に関わる事業所及び施設において、環境微 生物による汚染が大きな問題となってきている。特に最近では、医療機関におけ るメチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌（ＭＲＳＡ）感染症などは、重大な 問題となっている。また、食品製造工場においては、食品の無菌化包装が主流に なってきており、それに伴って食品の製造や包装の施設のバイオクリーンルーム 化が普及してきている。そして、医薬品、化粧品、食品工業分野において、ＧＭ Ｐ（Good Manufacturing Practice；医薬品の製造管理及び品質管理に関する基 準）ということが言われ出してきており、環境管理の指標として空中浮遊微生物 の検査が重要な測定項目となりつつある。

【０００３】 環境微生物、特に空中浮遊微生物による汚染のスクリーニングは、従来、一定 容量の空気を強制的に測定機器（インピンジャー器具）の中に吸引し、その吸引 された空気中の微生物を無菌の液体中に捕捉するインピンジャー法（洗浄法）、 空中浮遊微生物を含んだ空気を高速の噴流状態にして、固体培地の表面に衝突さ せることにより空中浮遊微生物を捕集する各種衝突法、不溶性のフィルターや懸 濁性或いは可溶性フィルターを使用して空気中の浮遊微生物を捕集する各種濾過 法など、種々の方法により微生物を捕集して行なっていた。そして、採取した微 生物を培養し、培養終了後に集落を観察したり集落数を数えたりして検査を行な っていた。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

上記した従来の各方法は、何れも空中浮遊微生物の捕集に際して適用されるも のである。ところで、環境微生物汚染に関する検査対象には、医療機関における 医療従事者の白衣等の衣類、入院患者等の衣類、病室のベッド、シーツ、カーテ ンなど、製薬、化粧品、食品等に関わる事業所における製造従事者の作業衣や無 菌衣等の衣類などがあり、それらの表面や繊維内部に付着した微生物の検査も必 要である。その他、手術台や検査台、ベッド、椅子、或いは各種医療機器などの 細部に付着した微生物を採取する必要がある場合もある。そかし、上記した従来 の方法では、空中に浮遊している微生物を捕集することができるだけであり、衣 類等の表面に付着している微生物を捕集することはできず、表面付着微生物の測 定には、プラスチック成型トレイ等の容器に培養基を平板状に充填して凝固させ たスタンプ式培地を別に用意しておく必要があった。また、上記した洗浄法、衝 突法、濾過法等の従来の何れの方法によっても、衣類等の繊維内部や手術台、ベ ッド、医療機器などの細部に付着している微生物を捕集するのは難しく、一方、 スタンプ式培地では、それらに付着している微生物を採取することは不可能であ る。

【０００５】 この考案は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、空中浮遊微生物 の捕集の他、衣類やベッド、シーツ、カーテンなどの表面及びその繊維内部、さ らには手術台、検査台、ベッド、椅子、医療機器などの細部に付着した微生物を 効果的に捕集することができる器具を提供することを技術的課題とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

この考案では、吸引ファンが内蔵され前面中央部に空気吸入口が開設された本 体部の前面に、培養基が平板状に充填された皿状容器を支持する支持部を、前記 空気吸入口と間隔を設け、かつ、前記培養基の表面が前方を向くように固着し、 さらに、中央部に孔が形成され、その孔に、先端が吸込み口とされた空気導入パ イプが連接固着された先端覆蓋部を、前記本体部の前面を閉塞するように取着す ることにより、微生物捕集器を構成した。

【０００７】 また、別の構成として、上記本体部と先端覆蓋部との間に、多数の小孔が穿設 された有孔覆蓋部を介挿し、その有孔覆蓋部を、本体部の前面を閉塞するように 取着するとともに、有孔覆蓋部の前面側に先端覆蓋部を着脱自在に装着する。

【０００８】 上記したそれぞれの構成の微生物捕集器では、先端覆蓋部の空気導入パイプの 先端吸込み口を空中に向けて本体部の吸引ファンを駆動させると、空気導入パイ プを通して空気が吸入され、その吸入された空気が、支持部に支持された皿状容 器に充填された培養基の表面に衝突し、空気中に含まれた浮遊微生物が培養基に 捕集される。また、空気導入パイプの吸込み口を衣類等の表面に接触させもしく は近接させ、或いは、空気導入パイプの吸込み口を手術台やベッド、医療機器等 の細部に近接させて吸引ファンを駆動させると、空気導入パイプは小径であるた め大きな流速すなわち強い吸引力で空気が吸入され、その空気と一緒に、衣類等 の表面や繊維内部、或いは、手術台やベッド、医療機器等の細部に付着していた 微生物が器具内へ吸い込まれる。そして、吸入された空気が培養基の表面に衝突 することにより、その空気と一緒に吸い込まれた付着微生物が培養基に捕集され る。

【０００９】 また、有孔覆蓋部を具備した上記微生物捕集器では、空中浮遊微生物を捕集す るときは、有孔覆蓋部から先端覆蓋部を取り外し、有孔覆蓋部の多数の小孔を通 して器具内へ空気を吸入し、付着微生物を捕集するときは、有孔覆蓋部に先端覆 蓋部を装着し、空気導入パイプを通して器具内へ空気と一緒に付着微生物を吸入 するように、交換的に使用することができる。

【００１０】

【実施例】

以下、この考案の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。

【００１１】 図１及び図２はこの考案の１実施例を示し、図１は、微生物捕集器を各構成部 品に分解して示す斜視図であり、図２は、この微生物捕集器の要部の、組付け状 態における縦断面図である。

【００１２】 この微生物捕集器は、吸引ファンが内蔵され、前面中央部に空気吸入口12が開 設された本体部10、培養基18が平板状に充填された皿状容器16を支持する支持部 14、本体部10にその前面を閉塞するように取着される有孔覆蓋部20、及び有孔覆 蓋部20の前面側に着脱自在に装着される先端覆蓋部22から構成されている。尚、 有孔覆蓋部20を設けずに、先端覆蓋部22を直接本体部10に、その前面を閉塞する ように取着する構成としてもよいが、以下では、有孔覆蓋部20を本体部10と先端 覆蓋部22との間に介挿した構成の器具について説明する。

【００１３】 本体部10には、片手で持って簡単に微生物の捕集作業を行なえるように、また 、携帯にも便利なように、把手24が設けられている。また、把手24を把持した手 の親指で操作することができる位置にスライド式スイッチ26が設けられており、 このスイッチ26により内蔵の吸引ファンをオン・オフすることができるとともに 、吸引力を、例えば２００ｌ／分と３００ｌ／分との二段階に切り換えられるよ うになっている。また、この器具は、電源が無い場所でも使用可能なように、充 電式となっている。

【００１４】 支持部14は、本体部10の前面段付き部28に後部が密嵌するアルミニウム製のリ ング体30の前面側に、４本の支持ピン32によりアルミニウム製の皿状支持枠34を 連結支持して構成されている。皿状支持枠34には、その中央部に支承ピン36が固 着されている。図中の38は、シール用のゴムパッキングである。

【００１５】 有孔覆蓋部20は、リング体30の前面段付き部40に後部が密嵌するアルミニウム 製の皿状体42の平面部に、多数の小孔44を穿設して形成されている。小孔44は、 皿状体42の平面部の外面側が小径で、途中から平面部内面へ向けてテーパー状に 広がった形状に形成されている。また、皿状体42の平面部には、一対の押えピン 46が後方側に突設されている。

【００１６】 また、先端覆蓋部22もアルミニウム材によって形成されており、先端覆蓋部22 は、皿状体42の前面段付き部48に後部が密嵌する皿状体50の平面部中央に孔52を 形成し、その孔52に空気導入パイプ54の後端部を嵌入し固着して構成されている 。空気導入パイプ54の先端は、軸線方向に対し斜め方向に切断されて吸込み口56 となっている。尚、先端覆蓋部22と有孔覆蓋部20、有孔覆蓋部20と支持部14、支 持部14と本体10とにはそれぞれ、互いに接続したときに簡単に抜脱したりするこ とがないように、着脱自在に係止するための係止手段、例えば係合突起及び係合 溝、ねじ溝、或いは押えねじなどが設けられているが、その図示は省略した。ま た、先端覆蓋部22、有孔覆蓋部20及び支持部14はそれぞれ、軽量化のためにアル ミニウム材によって形成するようにしたが、その材質については特に限定されな い。

【００１７】 この微生物捕集器の内部にセットされる皿状容器16は、プラスチック素材によ り成型され、可撓性を有しており、培養基収容部58と環状係合枠部60と環状平枠 部62とが一体形成されている。皿状容器16の収容部58に充填される培養基18とし ては、目的に応じた組成のものを調製して使用する。培養基18は、皿状容器16の 収容部58に、環状係合枠部60の上面と同一面をなすか、もしくは液状培養基の表 面張力を利用して環状係合枠部60の上面より僅かに突出する程度の量を分注し、 それを凝固させた後使用する。そして、図２に示すように、この皿状容器16を、 培養基18の表面が前方を向くように、環状係合枠部60の凹面側を皿状支持枠34の 周縁部に係合させ、収容部58の外底面を支承ピン36の先端面に当接させて支承さ せるとともに、環状平枠部62を有孔覆蓋部20の押えピン46の先端によって押さえ 付けることにより、器具内部に固定する。

【００１８】 上記構成の微生物捕集器を使用して空中浮遊微生物を捕集しようとするときは 、図２に示した形態に組み付け、或いは図２に示した形態から先端覆蓋部22を取 り外し、手術室、検査室、病室、無菌室、バイオクリーンルームなどにおいて、 本体部10の把手24を片手で持って空気導入パイプ54の先端吸込み口56或いは有孔 覆蓋部20の小孔44を空中に向け、本体部10のスイッチ26を入れて吸引ファンを駆 動させると、空気導入パイプ54を通して或いは直接に、有孔覆蓋部20の小孔44を 通って空気が吸入され、その吸入された空気が培養基18の表面に衝突し、空気中 に含まれた浮遊微生物が培養基18に捕集される。このとき、有孔覆蓋部20の小孔 44は、ほぼ平面部全面に分散して穿設されており、かつ、各小孔44は、培養基18 と対向する側がテーパー状に広がっているため、吸入された空気は、培養基18の 全面に均一に衝突することになり、その空気に含まれた浮遊微生物は、培養基18 の全面に分散して捕集される。

【００１９】 次に、白衣、寝間着、作業衣、無菌衣等の衣類やベッド、シーツ、カーテンな どの表面や繊維内部、或いは、手術台、検査台、ベッド、椅子、各種医療機器な どの細部に付着した微生物を捕集しようとするときは、図２に示すように先端覆 蓋部22を有孔覆蓋部20に装着した状態で、空気導入パイプ54の吸込み口56を衣類 等の表面に接触もしくは近接させ、或いは、吸込み口56を医療機器等の細部に近 接させて、吸引ファンを駆動させるようにする。すると、空気導入パイプ54を通 して空気が強い吸引力で吸入されることにより、衣類等の表面や繊維内部或いは 医療機器等の細部に付着していた微生物が空気と一緒に吸入される。そして、吸 入された空気が培養基18の表面に衝突することにより、空気と一緒に吸い込まれ た付着微生物が培養基18に捕集される。

【００２０】

【考案の効果】

この考案は以上説明したように構成されかつ作用するので、この考案に係る微 生物捕集器を使用すると、空中浮遊微生物だけでなく、各種衣類やベッド、シー ツ、カーテンなどの表面及びその繊維内部、さらには手術台、検査台、ベッド、 椅子、医療機器などの細部に付着している微生物も簡単にかつ効果的に捕集する ことができ、極めて便利であるとともに、従来の方法では採取が難しかったよう な付着微生物の捕集も行なうことができ、この考案は、環境微生物等の微生物の 検査作業に大いに寄与し得る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の１実施例に係る微生物捕集器を各構
成部品に分解して示す斜視図である。

【図２】この微生物捕集器の要部を示す縦断面図であ
る。

【符号の説明】

10 本体部 12 空気吸入口 14 支持部 16 皿状容器 18 培養基 20 有孔覆蓋部 22 先端覆蓋部 30 リング体 34 皿状支持枠 42 皿状体 44 小孔 50 皿状体 52 孔 54 空気導入パイプ 56 吸込み口

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 吸引ファンが内蔵され、前面中央部に空
   気吸入口が開設された本体部と、この本体部の前面に前
   記空気吸入口と間隔を設けて固着され、培養基が平板状
   に充填された皿状容器を、培養基表面が前方を向くよう
   に支持する支持部と、前記本体部にその前面を閉塞する
   ように取着され、中央部に孔が形成されて、その孔に、
   先端が吸込み口とされた空気導入パイプが連接固着され
   た先端覆蓋部とからなる微生物検査用微生物捕集器。
2. 【請求項２】 吸引ファンが内蔵され、前面中央部に空
   気吸入口が開設された本体部と、この本体部の前面に前
   記空気吸入口と間隔を設けて固着され、培養基が平板状
   に充填された皿状容器を、培養基表面が前方を向くよう
   に支持する支持部と、前記本体部にその前面を閉塞する
   ように取着され、多数の小孔が穿設された有孔覆蓋部
   と、この有孔覆蓋部の前面側に着脱自在に装着され、中
   央部に孔が形成されて、その孔に、先端が吸込み口とさ
   れた空気導入パイプが連接固着された先端覆蓋部とから
   なる微生物検査用微生物捕集器。