JPH0565943A - 工業用ベルト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 心体コ−ドの位置を安定化させ、耐屈曲性を
高める。 【構成】 平ベルト１は、伸張部ゴム層２，圧縮部ゴム
層３と、該両層２，３の間に介設された補強体層５とを
有する。圧縮部ゴム層３には補強帆布層６が積層されて
いる。上記補強体層４は、心体コ−ド９を有する円筒状
のニット製の丸編物で構成する。丸編物は、ニット糸条
の組織に、丸編物の円周方向に沿ってスパイラル状に交
絡若しくは縫うような状態で心体コ−ドが編み込まれて
いる。よって、丸編物によって心体コ−ド９が拘束さ
れ、加硫中においても心体コ−ド９の位置が安定し、心
体コ−ド９のピッチの乱れがなくなる。よって、耐屈曲
疲労性が著しく向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、伝動用ベルト、搬送用
ベルト等の工業用ベルトに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、例えば歯付ベルト、Ｖベルト
等の伝動用ベルト、及びコンベアベルト等の運搬用ベル
トには、高弾性率、高強力、高寸法安定性及び高接着性
等の特性が要求されることから、これらの特性を満たす
べく、伝動ベルト、運搬ベルトのベルト本体に繊維から
なるいわゆる心体コ−ドが埋設されている。

【０００３】これらの心体コ−ドは、上記目的から、ベ
ルト周方向に対して１本又は２本のコ−ドをスパイラル
状にベルト本体に埋設するのが一般的である。よって、
ベルト成形中にコ−ドをスパイラル状に巻くという工程
が必要となる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、心体コ−ド
をスパイラル状に巻くという工程には多くの時間を要す
るため、この工程がベルト製造における問題点となるこ
とがしばしばあった。また、心体コ−ドの粘着性が弱い
場合には、心体コ−ドの位置が乱れ、ベルト本体中の適
切な位置に配置できなかったりする。

【０００５】また、ベルトの加硫中のゴムの流れが良く
なかった場合には、ベルト高さ方向にコ−ド位置が乱れ
ることもある。このような場合には、耐屈曲疲労性が著
しく損なわれることになる。

【０００６】本発明は、心体コ−ドの位置が安定し、耐
屈曲疲労性に優れる工業用ベルトを提供することを目的
とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、ベルト本体中
に心体コ−ドが埋設されてなる、伝動用ベルト、搬送用
ベルト等の工業用ベルトを前提とする。

【０００８】請求項１の発明は、上記ベルト本体中に補
強体層が設けられ、該補強体層は、心体コ−ドを有する
円筒状のニット製の丸編物で構成されている構成とす
る。

【０００９】請求項２の発明においては、ニット製の丸
編物は、ニット糸条の組織に、丸編物の円周方向に沿っ
てスパイラル状に交絡若しくは縫うような状態で心体コ
−ドが編み込まれている構成とする。

【００１０】

【作用】従来の心体コ−ド層でなく、心体コ−ドを有す
る丸編物で構成される補強体層をベルト本体中に埋設す
るようにしたので、加硫中においても心体コ−ドの位置
が安定し、心体コ−ドのピッチの乱れがなくなる。よっ
て、耐屈曲疲労性が著しく向上する。また、丸編物（ニ
ット糸条の組織）によって心体コ−ドが包まれているの
で、心体コ−ドが丸編物（ニット糸条の組織）によって
保護され、このことが耐屈曲疲労性の向上に有利に作用
する。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に沿って詳細に
説明する。

【００１２】工業用ベルトとしての平ベルトの全体構成
を示す図１において、１は平ベルトで、伸張部ゴム層
２，圧縮部ゴム層３と、該両層２，３の間に介設された
補強体層４とを有し、これらの層２，３，４によってベ
ルト本体５が構成されている。ベルト本体５の圧縮部ゴ
ム層３の下側には補強帆布層６が積層されている。

【００１３】上記補強体層４は、図２及び図３に示すよ
うに、円筒状のニット製の丸編物７で構成され、該丸編
物７は横編みで、ニット糸条８の組織に、丸編物の円周
方向に沿ってスパイラル状に交絡若しくは縫うような状
態で心体コ−ド９となる芯糸が編み込まれている。丸編
物７の組織は、加工上、円周上に配設されるため、上記
心体コ−ド９となる芯糸は、丸編物７を円筒状の未加硫
ベルト素材の外周に設けるだけで、従来のベルトにおけ
る心体コ−ドと同様に円周方向にスパイラル状に配設さ
れることになる。

【００１４】なお、比較例として、芯糸の入らない、ニ
ット糸条ａのみからなる丸編物ｂの組織を図６に示す。

【００１５】上記のように構成すれば、ベルトを製造す
る際、従来のように心体コ−ドをスパイラル状に順次巻
く工程が必要なくなり、図４に示すように、丸編物７
を、ベルト本体５を構成する円筒状の未加硫ベルト素材
１１の外側に挿入するだけで容易に心体コ−ド９をスパ
イラル状に配置することができ、ベルト成形時間の大幅
な短縮化が図れる。

【００１６】そして、芯糸（心体コ−ド９）が丸編物７
のニット糸条８の組織によって自由な動きを拘束される
ため、ベルト中での高さ方向及び幅方向への心体コ−ド
９の乱れが少なくなり、要求通りの位置に心体コ−ド９
を配置した構造の平ベルト１を製造し易くなる。そし
て、このように製造された、心体コ−ド９の位置の乱れ
が少ない平ベルト１は、耐屈曲疲労性が大幅に向上す
る。

【００１７】また、心体コ−ド９となる芯糸がニット製
の丸編物７のニット糸条８の組織に包まれて保護されて
いるために、心体コ−ド９（芯糸）の損傷を防止するこ
とができ、この点においても耐屈曲疲労性の向上の点で
有利となる。。

【００１８】そして、上記心体コ−ド９となる芯糸の、
丸編物７のニット糸条８の組織による保護と、ベルト中
での高さ方向及び幅方向への乱れが少なくなることとが
相俟って、耐屈曲疲労性が向上する。

【００１９】続いて、上記平ベルトについて行った試験
について説明する。

【００２０】＜本発明例のベルト＞接着加工処理を施し
た、上述したニット製丸編物を用いて本発明例の平ベル
トを製造した。このとき、丸編物の芯糸（心体コ−ド）
には、パラ系アラミド繊維であるデュポン社製のケブラ
−２９（1500de/1×3 ）を用い、ニット製丸編物にはナ
イロン（７０ｄｅ/1) を用いた。心体コ−ドのピッチ間
隔は１．５mmとなるように調節して丸編物を作成した。
伸張部ゴム層としては水素化ＮＢＲを、補強帆布層に
は、メタ系アラミド繊維である帝人製のコ−ネックスを
利用した帆布を用いた。

【００２１】＜比較例のベルト＞丸編物を用いる代わり
に、上記ケブラ−２９(1500de/1 ×3)を周知の方法で心
体コ−ドとして用い、周知の方法で平ベルトを成形し
た。他の構成は本発明例と同一である。

【００２２】＜屈曲疲労試験の要領＞図５に示すよう
に、４つの大プ−リ２１，，２１，２１，２１と、相隣
り合うる大プ−リ２１，２１間に配置された４つの小プ
−リ２２，２２，２２，２２とを備えたベルト屈曲試験
機を用意し、平ベルト２３を該ベルト屈曲試験機の大小
のプ−リ２１，２１，２１，２１，２２，２２，２２，
２２に掛け渡してウェイト２４にて平ベルト２３に所定
のテンションを掛けた状態で走行させた。

【００２３】そして、このときのベルト２３の強力維持
率を調べた。なお、上記各小プ−リ２２の直径は３０mm
である。また、平ベルト２３が一巡して上記４つの小プ
−リ２２を各々１回ずつ通過すること、つまり各小プ−
リ２２によるベルト屈曲回数１回を持って１サイクルと
した。

【００２４】

【表１】

【００２５】表１は、屈曲サイクルに対する各ベルトの
強力維持率を示す。この試験結果から明らかなように、
本発明例のベルトが１×１０⁸ サイクルの屈曲走行時に
おいても７１％の強力を維持しているにも拘らず、比較
例のベルトは５４．９％しか強力を維持しておらず、本
発明例が、強力維持率の点で著しく優れ、耐屈曲疲労性
に優れていることが判る。

【００２６】上記実施例では、横編みの丸編物を用いた
ものについて説明したが、縦編みその他でもよく、心体
コ−ドとなる芯糸が丸編物の円周方向に沿ってスパイラ
ル状になっていればよい。また、丸編物のニット糸条、
芯糸（心体コ−ド）の材料種、構成、組合せは、ベルト
要求特性に併せて適時に選択することができ、また、異
種複数の材料の組合せることもできる。

【００２７】さらに、蛇行防止のために、芯糸（心体コ
−ド）をＳ撚り、Ｚ撚りが交互になるように丸編物のニ
ット糸条の組織に対して設けることもできるし、また、
Ｓ撚りの芯糸とＺ撚りの芯糸とが同一箇所に隣接するよ
うに丸編物のニット糸条の組織に設けるようにすること
もできる。

【００２８】

【発明の効果】請求項１及び請求項２の発明は、上記の
ように、心体コ−ドを有する円筒状のニット製の丸編物
を用いたので、ベルト成形に要する時間の大幅な短縮化
が図れる。それに加えて、加硫成形後における心体コ−
ドの位置が安定する上に、丸編物によって心体コ−ドが
保護されることとなるので、耐屈曲疲労性が著しく向上
し、長寿命化が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】平ベルトの一部断面で示す斜視図である。

【図２】本発明に用いられる、芯糸（心体コ−ド）を有
するニット製の丸編物を示す説明図である。

【図３】ニット製の丸編物を用いた、平ベルトの製造方
法の説明図である。

【図４】丸編物の芯糸（心体コ−ド）の配置を示す概略
図である。

【図５】試験装置の概略説明図である。

【図６】従来の一般的な丸編物を示す、図２と同様の図
である。

【符号の説明】

1 平ベルト（工業用ベルト） 4 補強体層 5 ベルト本体 7 丸編物 8 ニット糸条 9 心体コ−ド

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ベルト本体中に心体コ−ドが埋設されて
   なる工業用ベルトであって、 上記ベルト本体中に補強体層が設けられ、 該補強体層は、心体コ−ドを有する円筒状のニット製の
   丸編物で構成されていることを特徴とする工業用ベル
   ト。
2. 【請求項２】 ニット製の丸編物は、ニット糸条の組織
   に、丸編物の円周方向に沿ってスパイラル状に交絡若し
   くは縫うような状態で心体コ−ドが編み込まれていると
   ころの請求項１記載の工業用ベルト。