JPH0564533U - ユニバーサルジョイント - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】このユニバーサルジョイントでは、潤滑剤溜め
部７の潤滑剤が、供給孔８を介して軸受Ｂの内部へ供給
される。十字軸１に、軸受Ｂ内部の潤滑剤を潤滑剤溜め
部７に戻して循環させる循環路１０を設けた。 【効果】潤滑剤溜め部７に充填された潤滑剤全体を、軸
受Ｂの潤滑に有効に利用できる。潤滑剤の供給経路の局
所が高圧となることがなく、潤滑剤漏れを回避できる。
潤滑剤の補給作業を長期にわたって行う必要がなく、メ
ンテナンスが非常に容易になる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、十字軸の軸部に嵌挿された軸受に潤滑剤を供給する、高速回転用の ユニバーサルジョイントに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、ユニバーサルジョイントにおいては、十字軸の各軸部が、軸受を介し て一対のヨークによって支持されている。通常、上記の軸受としては、ラジアル 軸受としての針状ころ軸受と、スラスト軸受としてのスラストワッシャが用いら れている。上記の針状ころ軸受は、十字軸の軸端部に嵌挿されて外輪を構成する 軸受キャップと、この軸受キャップの内周面と軸端部周面との間に介在させた針 状ころ（以下、ニードルローラという）とを備えている。スラストワッシャは、 十字軸の軸端部の端面と、軸受キャップの内端面との間に介在されている。

【０００３】 このようなユニバーサルジョイントにおいて、十字軸の軸交差部に潤滑剤溜め 部を設けるとともに、この潤滑剤溜め部から軸端側へ延びる供給孔を設け、潤滑 剤溜め部の潤滑剤を、当該ユニバーサルジョイントの回転に伴う遠心力によって 、供給孔を通して軸受キャップ内のスラストワッシャやニードルローラに供給す るようにしたものがあった。このユニバーサルジョイントでは、軸受キャップの 開口側端部と十字軸の軸部の周面との間が、オイルシールによって密封されてい る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、上記のユニバーサルジョイントにおいては、オイルシールが潤滑剤の 供給経路の末端側となるので、遠心力によって軸端部側へ送られた潤滑剤の圧力 によって、潤滑剤がオイルシールから除々に滲み出して漏れ、早期に潤滑剤が不 足して潤滑不良を起こす虞があった。このため、頻繁に潤滑剤溜め部に潤滑剤を 補給する必要があり、メンテナンスに手間がかかるという問題があった。

【０００５】 また、上記のユニバーサルジョイントにおいては、スラストワッシャやニード ルローラの周囲にある潤滑剤が殆ど入れ代わらずに潤滑に供されるので、潤滑剤 溜め部に充填された潤滑剤全体の有効利用が図れず、したがって、潤滑剤の実質 的な劣化が早期におこり、このため、一層頻繁に潤滑剤を充填しなければならず 、メンテナナンスに一層手間がかかっていた。

【０００６】 本考案の目的は、上述の技術的課題を解決し、潤滑剤を頻繁に補給する必要が なくメンテナンスの容易なユニバーサルジョイントを提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記の目的を達成するため、この考案に係るユニバーサルジョイントは、十字 軸の各軸部に嵌挿された軸受と、十字軸の軸交差部に設けられた潤滑剤溜め部と 、十字軸の各軸部を貫通して形成され潤滑剤溜め部の潤滑剤を軸受内部に供給す る供給孔とを備えたユニバーサルジョイントにおいて、 上記十字軸に、軸受内部の潤滑剤を潤滑剤溜め部側に戻して循環させる循環路 が形成され、循環路と潤滑剤溜め部の間に潤滑剤溜め部側にのみ開くチェックバ ルブが設けられていることを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】

上記の構成によれば、当該ユニバーサルジョイントの運転中、遠心力によって 、潤滑剤溜め部の潤滑が、供給孔を通して十字軸の軸端部側へ送られ、軸受内部 に供給された後、循環路およびチェックバルブを通して、潤滑剤溜め部に戻され 、これにより、潤滑剤溜め部と軸受内部との間に潤滑剤が循環される。潤滑剤溜 め部に充填された潤滑剤の全体を、軸受の潤滑に有効に利用することができる。 また、潤滑剤が循環されるので、潤滑剤の供給経路の末端となる部分は存在しな い。したがって、従来、潤滑剤の供給経路の末端部分が高圧となることにより生 じていた潤滑剤漏れの発生を回避することができる。

【０００９】

【実施例】

以下実施例を示す添付図面によって詳細に説明する。 図１はこの考案のユニバーサルジョイントの一実施例を示す概略正面図であり 、図２はその十字軸の縦断面図である。これらの図を参照して、このユニバーサ ルジョイントＡは、十字軸１と、この十字軸１の各軸部１ａの端部に嵌挿された 軸受Ｂと、この軸受Ｂの軸受キャップ２の開口側端部２ａと軸部１ａとの間を密 封するオイルシール１２と、十字軸１の軸交差部１ｂに設けられた潤滑剤溜め部 ７と、各軸部１ａを貫通して形成され、ユニバーサルジョイントＡの回転に伴う 遠心力によって、潤滑剤溜め部７の潤滑剤を軸受キャップ２内の軸受要素に供給 する供給孔８と、この供給孔８に設けられ、潤滑剤溜め部７から軸受要素への潤 滑剤の供給を制御するコントローラ９と、軸受キャップ２内の軸受要素の潤滑に 供された潤滑剤を潤滑剤溜め部７に戻す循環路１０とを備えている。

【００１０】 軸受Ｂは、上記軸受キャップ２、この軸受キャップ２内に収容されたスラスト ワッシャ５およびニードルローラ６により主要部が構成されている。軸受キャッ プ２は、頭部が閉塞し、底部が開口した略円筒状をしている。軸受キャップ２の 内周面と軸部１ａの周面との間には、環状の空間からなるニードルローラ収容部 ４が形成され、当該ニードルローラ収容部４に上記ニードルローラ６が収容され ている。また、軸受キャップ２の内端面と軸部１ａの端面との間には、円柱状の 空間からなるスラストワッシャ収容部３が形成され、当該スラストワッシャ収容 部３に上記スラストワッシャ５が収容されている。スラストワッシャ５には、少 なくとも一方の面に、その中心孔５ａから放射状に延びる、潤滑剤送給用の複数 の凹条５ｂを形成されている。さらに、軸受キャップ２内には、断面Ｌ字状のガ イドリング１１が内挿されており、このガイドリング１１は、スラストワッシャ ５の外周部およびニードルローラ６の端部に当接して、スラストワッシャ５およ びニードルローラ６の移動を規制する。

【００１１】 オイルシール１２は、軸部１ａに圧入された断面略Ｌ字状のスリンガ１３と軸 受キャップ２の開口側端部の内周面との間を密封する公知の構造のものである。 十字軸１の軸交差部１ｂには、当該軸交差部１ｂを貫通する貫通孔１４が設け られ、この貫通孔１４の両端部には、環状の段部１４ａが形成されている。上記 循環路１０は、ニードルローラ収容部４内のオイルシール１２近傍部分と上記段 部１４ａ内とを連通するように軸部１ａに形成された連通路からなり、後述する シールユニットＵ２内の通路を介して潤滑剤溜め部７に連通されている。上記潤 滑剤溜め部７は、上記貫通孔１４の段部１４ａに配置した一対のシールユニット Ｕ１，Ｕ２によって、貫通孔１４の両端部を閉塞することにより、形成されてい る。これらのシールユニットＵ１，Ｕ２は、スナップリング４０によって上記段 部１４ａに止定されている。

【００１２】 シールユニットＵ１は、本体３０と、本体３０の外周面の溝部に収容され、貫 通孔１４の段部１４ａの周面との間を密封するＯリング３１とを備えている。 シールユニットＵ２は、本体３０と、本体３０の外周面の溝部に収容され、貫 通孔１４の段部１４ａの周面との間を密封するＯリング３１と、本体３０の内側 端面の溝部に収容され、段部１４ａの端面との間を密封するＯリング３２と、本 体３０に穿設され、上記循環路１０に連通する径方向路３３と、この径方向路３ ３の途中部を外部に連通させる第１の軸方向路３４と、この第１の軸方向路３４ を開閉可能なねじ栓３５と、上記径方向路３３の端部と潤滑剤溜め部７とを連通 させる第２の軸方向路３６と、この第２の軸方向路３６に設けられたチェックバ ルブ３７と、本体３０の中央部を貫通して潤滑剤溜め部７と外部とを連通させる 第３の軸方向路３８と、この第３の軸方向路３８の端部に設けられた潤滑剤注入 用のニップル３９とを備えている。上記循環路１０は、シールユニットＵ１の径 方向路３３、第２の軸方向路３６およびチェックバルブ３７を介して、潤滑剤溜 め部７に連通されている。ニードルローラ収容部４は、循環路１０、シールユニ ットＵ２内の径方向路３３および第２の軸方向路３６を介して、潤滑剤溜め部７ と連通されている。チェックバルブ３７は、潤滑剤の流路中にあって、第２の軸 方向路３６より潤滑剤溜め部７に向かう方向のみの潤滑剤の流れを許容する開口 を有する一方向弁の機能を果たしている。

【００１３】 さらに潤滑剤を追加して注入する際には、ねじ栓３５を取り外して第１の軸方 向路３４を外部に開放した状態で、ニップル３９から第３の軸方向路３８を通し て潤滑剤溜め部７に新しい潤滑剤を注入する。注入された潤滑剤は、供給孔８を 通してスラストワッシャ収容部３およびニードルローラ収容部４までいきわたる とともに、これらスラストワッシャ収容部３やニードルローラ収容部４に残存し ていた古い潤滑剤は、循環路１０、径方向路３３および第１の軸方向路３４を通 して、外部に放出される。このようにして、十字軸１内部の潤滑剤を新しいもの に完全に入れ代えることができる。なお、チェックバルブ３７は、循環路１０か ら径方向路３３および第２の軸方向路３６に送られてきた古い潤滑剤が、潤滑剤 溜め部７側へ送られることがないように当該潤滑剤に所定の抵抗を及ぼす。

【００１４】 コントローラ９は、供給孔８から遠心力によってスラストワッシャ収容部３側 へ送られる潤滑剤の量を適度に制限するためのものである。 この実施例によれば、ユニバーサルジョイントＡが回転されると、この回転に 伴う遠心力によって、潤滑剤溜め部７の潤滑剤が、供給孔８およびコントローラ ９を介してスラストワッシャ収容部３およびニードルローラ収容部４に供給され 、当該潤滑剤によって潤滑が行われる。潤滑に供された潤滑剤は、循環路１０、 シールユニットＵ２内部の径方向路３３および第２の軸方向路３６を通して、潤 滑剤溜め部７へ戻され、これにより、潤滑剤溜め部７と軸受キャップ２内部との 間に潤滑剤を循環させることができる。

【００１５】 循環路１０を設けていない従来の場合には、シール部材が、潤滑剤の送り方向 の末端側となって、当該シール部材に高圧がかかるので、潤滑剤漏れを起こして いたが、潤滑剤が循環される本実施例では、オイルシール３に高圧がかかること がなく、当該オイルシール３から潤滑剤が漏れるようなことがないので、潤滑剤 補給作業から次の潤滑剤補給作業までの間隔を長期とすることができる。しかも 、スラストワッシャ収容部３やニードルローラ収容部４で潤滑に供された潤滑剤 は上記循環に伴って順次に入れ代わることになり、潤滑剤溜め部７に充填された 潤滑剤の全体を有効に使用することができるので、潤滑剤補給間隔を一層長期と することができ、メンテナンスが非常に容易になる。

【００１６】 なお、この考案は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、軸受Ｂをス ラストワッシャ５を除いたものにより構成することができ、また、オイルシール １２に代えて他の公知のシール部材を採用すること等、この考案の要旨を変更し ない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。

【００１７】

【考案の効果】

以上のように、本考案のユニバーサルジョイントによれば、潤滑剤溜め部から 軸受内部に供給された潤滑剤を、循環路を通して、潤滑剤溜め部に戻すことによ り、潤滑剤溜め部と軸受内部との間に潤滑剤を循環させることができるので、潤 滑剤溜め部に充填された潤滑剤の全体を有効に利用することができる。しかも、 潤滑剤が循環されるので、局所に高圧がかかるようなことがなく、潤滑剤漏れが 発生しない。したがって、潤滑剤の補給作業を、長期にわたって行う必要がなく 、メンテナンスが非常に容易になるという特有の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例のユニバーサルジョイント
の要部を示す縦断面図である。

【図２】ユニバーサルジョイントの概略平面図である。

【符号の説明】

Ａ ユニバーサルジョイント Ｂ 軸受 １ 十字軸 １ａ 軸部 ７ 潤滑剤溜め部 ８ 供給孔 １０ 循環路 ３７ チェックバルブ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 出井 広幸 名古屋市中村区名駅一丁目１番４号 東海 旅客鉄道株式会社内

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】十字軸の各軸部に嵌挿された軸受と、十字
   軸の軸交差部に設けられた潤滑剤溜め部と、十字軸の各
   軸部を貫通して形成され潤滑剤溜め部の潤滑剤を軸受内
   部に供給する供給孔とを備えたユニバーサルジョイント
   において、 上記十字軸に、軸受内部の潤滑剤を潤滑剤溜め部側に戻
   して循環させる循環路が形成され、循環路と潤滑剤溜め
   部の間に潤滑剤溜め部側にのみ開くチェックバルブが設
   けられていることを特徴とするユニバーサルジョイン
   ト。