JPH0560672U - 管内面ｔｉｇ溶接用トーチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 管内面溶接における溶接開始時の短絡、アー
クの誤発生を確実に防止すること。 【構成】 溶接トーチ３は一直線状に並ぶシャフト４、
チップ５およびフッ素樹脂製のチップカバー６を備え、
これらが一体のものとして管板２の管穴部に挿入されて
いる。タングステン電極７はチップ５の軸芯と直角に向
けられ先端を溶接線８と一致させている。タングステン
電極７は押えねじ９とフッ素樹脂製のナット10とによっ
て固定される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は多管式の熱交換器やボイラーなど強度と気密性を要求される管と管板 とを固定するために採用される管内面溶接法や外周より近接できない小口径管の 溶接などに用いられる管内面溶接に使用されるタングステン・イナードガス（以 下、ＴＩＧ溶接という）溶接用トーチに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、上記の小口径管の内面溶接では管板の管穴部あるいは管の管口などの 開口部より溶接トーチを挿入し、双方の接合部の溶接を行うが、溶接しようとす る管の内径が小さいがために管内の被溶接箇所が管穴部あるいは開口部より離れ ている場合、タングステン電極、ガスカップノズル、コレット、冷却水被套など により構成される従来のＴＩＧ溶接用トーチは使用できない。また、特殊な小形 トーチを採用し、管穴部あるいは開口部より差し込む方法もあるが、ガスカップ ノズルの大きさが制限されるためシールド不良を生じ易く、また管の内径があま り小さくなるとトーチが挿入できず、作業そのものが不可能となる。このため、 このような小口径管の内面溶接では溶接トーチのノズル部の中央に管内面の被溶 接箇所を指向するタングステン電極を取付ける軸、またはタングステン電極の取 付けられたチップを連結する軸を設け、溶接の際は溶接トーチのノズルを管板の 管穴部、小口径管の管口など開口部に差し込み、シールドガスであるアルゴンな どの不活性ガスをトーチのノズル部より管内に噴出させ、管内の空気を排除し、 不活性ガスと置換させた後に高周波を発生させ、タングステン電極と被溶接箇所 と間にアークを生じさせ、タングステン電極を装着した軸を回転させ、接合部の 溶接を行うようにしている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、このような小口径内面の溶接では極めて狭隘な箇所での施工と なるので、タングステン電極と管内に挿入されたタングステン電極の取付けられ ている軸もしくはチップと母材である管内面との距離が接近してしまうため、し ばしば、高周波の発生とそれに続くアークの発生が電極であるタングステン先端 と非溶接箇所との間では起こらず、軸あるいはチップと被溶接対象箇所以外の管 内面との間でアークが発生してしまい、この結果軸あるいはチップが損傷を受け たり、被溶接対象箇所以外の部分で管母材の溶融が発生することがある。特に、 管と管板あるいは小口径管の溶接継手の管の板厚は薄いものが多い上に、溶接の 際は溶接トーチが開口部を塞いでしまうため、この溶接開始時の短絡、アークの 誤発生の状況を目で追うことができず、そのまま溶接操作を続けてしまい、軸あ るいはチップの溶損、管母材の溶融にとどまらず、製品の損傷不具合に結び付く ことになる。

【０００４】 こうした溶接開始時の短絡、あるいはアークの誤発生という大きな危険を冒し ながらの使用は操作上に少なからず影響がある。たとえば、短絡、アークの誤発 生を防止するために高周波発生の感度を鈍らせたり、タングステン電極の消耗に 対する交換、軸あるいはチップの表面粗さの維持のための研磨とこれらの部品交 換、付着したスス状の酸化スケールの清掃などである。これらの対策でも不充分 であれば、銅などの金属材料で構成される軸あるいはチップの表面にセラミック ス等の非導電性で、かつ耐熱性のある材料を用いて被膜を形成したり、筒状にし てタングステン電極の取付け部分のみを開けて金属部を覆うような方法も試みら れている。しかし、これは溶接装置の部品としてたいへん高価なものになるばか りか、アーク発生時の急激な温度上昇によって破損する場合もあり、必ずしも最 適な方法とはいい難い。

【０００５】 本考案は上記の管内面溶接における問題点を改善し、良好な溶接作業を行うた めに溶接開始時の短絡、アークの誤発生を確実に防止し、正確に電極先端よりア ークを発生することのできる管内面ＴＩＧ溶接用トーチを提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために本考案は管板に穿たれた管穴部に挿通される円柱状 のチップにチップ軸芯と直角方向に延在する電極を設けてなる管内面ＴＩＧ溶接 用トーチにおいて、電極を除くチップの突起部を覆うように非導電性の材料から なる被覆体を設けたことを特徴とするものである。

【０００７】

【作用】

小口径管内面のＴＩＧ溶接では狭隘な内面にタングステン電極、タングステン 電極を固定し、溶接電流を通電するチップが挿入され、母材である管内面と接近 して配置される。それゆえ母材と通常円筒状の銅などの金属材料からなるチップ の突起部より極めて高い頻度にて高周波とアークが発生することになる。

【０００８】 そこで、短絡あるいは、アークの誤発生の危険性のあるチップについて、その 長さを延長し、アーク熱を直接的に受けない範囲よりチップの先端の突起部をチ ップの外周面と適当な隙間を保ってフッ素樹脂、セラミックスなどの非導電性の 材料からなる被覆体で覆うことにより、高周波およびアークを電極の先端より確 実に発生することができる。

【０００９】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を図面を参照して説明する。

【００１０】 図１において、管１は管板２の内側に当接して保持される。溶接トーチ３は一 直線状に並ぶシャフト４、チップ５および被覆体としてのチップカバー６を備え 、これらが一体のものとして管板２の管穴部に挿入されている。チップカバー６ は後述されるナットと共に非電導性の、たとえばフッ素樹脂から構成される。タ ングステン電極７はチップ５の軸芯と直角に向けられ、その先端は溶接線８と一 致させている。タングステン電極７はチップカバー６の中心を貫いて延びる押え ねじ９とフッ素樹脂製のナット10とによって固定される。 また、ＴＩＧ溶接トーチ３と管板２との間にシールドガスをタングステン電極 ７の周囲に導くガスノズル11が設けられる。 次に、上記構成からなる管内面溶接用トーチの作用を説明する。

【００１１】 溶接開始前にガスノズル11とチップ５との間の隙間を通してシールドガス12を 送って管１内および管板２の管穴部に滞留する空気を排除し、シールドガス12で 置換させる。溶接施工中、このシールドガスの流れを保ってシールド条件が維持 される。この条件のもとで溶接開始すると、高周波およびアークはチップ５より 発生せず、正確にタングステン電極７の先端より溶接線８を指向する。このため シャフト４の回転によりチップ５に装着したタングステン電極７の先端より発生 したアークは管１と管板２の溶接線８に沿って移動し、溶接を進行させることが できる。

【００１２】 なお、上記の実施例ではチップ５を覆うものとしてチップカバー６を用いたが 、耐熱性テープなどでチップ５の先端である角部を巻いて覆い隠しても同様な効 果が得られることはいうまでもない。

【００１３】

【考案の効果】

以上説明したように本考案は電極を除くチップの突起部を覆うように非導電性 の材料からなる被覆体を設けているので、高周波およびアークを電極の先端より 正確に発生することができ、チップの溶損、管母材の溶融等の不具合をなくすこ とが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案による管内面ＴＩＧ溶接用トーチの一実
施例を示す構成図。

【符号の説明】

１…管 ２…管板 ３…溶接トーチ ５…チップ ６…チップカバー ７…タングステン電極 11…ガスノズル

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 管板に穿たれた管穴部に挿通される円柱
   状のチップに該チップ軸芯と直角方向に延在する電極を
   設けてなる管内面ＴＩＧ溶接用トーチにおいて、前記電
   極を除く該チップの突起部を覆うように非導電性の材料
   からなる被覆体を設けたことを特徴とする管内面ＴＩＧ
   溶接用トーチ。