JPH0543963A - 自己潤滑性アルミニウム複合材料 - Google Patents

自己潤滑性アルミニウム複合材料

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JPH0543963A
JPH0543963A JP20053291A JP20053291A JPH0543963A JP H0543963 A JPH0543963 A JP H0543963A JP 20053291 A JP20053291 A JP 20053291A JP 20053291 A JP20053291 A JP 20053291A JP H0543963 A JPH0543963 A JP H0543963A
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JP
Japan
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self
composite material
lubricating
aluminum composite
aluminum
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JP20053291A
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English (en)
Inventor
Teiichi Usami
禎一 宇佐見
Shigeru Mikubo
滋 三久保
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Daikin Industries Ltd
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 現行鋳鉄レベルの低い熱膨張係数と高い硬度
・耐摩耗性を維持しながら潤滑性を向上させ、油切れ時
の焼付きを防止する。 【構成】 セラミック系組織成形体よりなる強化材に、
マトリクス材としてアルミニウム合金が含浸凝固せしめ
られたアルミニウム複合材料において、上記セラミック
系組織成形体中に所定量の自己潤滑材を混入することに
よって潤滑性、耐摩耗性を向上させた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、例えばロータリーコ
ンプレッサ用のベーン(ブレード)部材やロータ部材など
の摺動部材その他に適した自己潤滑性アルミニウム複合
材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば空気調和機に使用されるロータリ
ーコンプレッサは、ロータリーシリンダ、該ロータリー
シリンダ内に偏心回転可能に支持されたロータ、上記ロ
ータリーシリンダの内周面側のベーン溝内に摺動可能に
嵌挿されているとともに常時上記ロータ面に摺接するベ
ーン、上記シリンダ両側のフロントヘッド及びリアヘッ
ド等により構成されている。そして、駆動用モータが回
転すると、カムシャフト部のカムの回転により上記ロー
タは上記シリンダ内を偏心回転し、それによって冷媒ガ
スが吸入口より上記シリンダ内に流入し圧縮されて吐出
口より吐出される。この時、上記ベーンは、上記ロータ
の偏心回転に応じて当該ロータの半径方向に相当な速度
で往復摺動(出没)運動を行う。 ところで、上記のロータやベーンのような相互に当接し
て摺動する相対摺動部材は、従来一般には耐摩耗性や熱
膨張係数の点から共に鋼や鋳鉄によって形成されてい
た。しかし、最近では上記のような空気調和機用のロー
タリーコンプレッサにおいてはインバータ方式の位相制
御が主流化して来たために高速回転化が不可避の要求と
なっている。
【0003】ところが、上記鋼や鋳鉄は当然ながら比重
が高く質量が大である。そのために、例えばロータの場
合、ロータ軸受部の負荷も大きく、またクランク軸の振
れ幅も大きくなる。従って、上記モータ部に於ける回転
子と固定子の接触等の問題も生じるようになり、一定レ
ベル以上の高速回転には対応することができない欠点が
ある。
【0004】また、ベーンに関しても、所定値以上の高
速回転になると慣性力が増大して、その往復動が上記ロ
ータの回転に追従できなくなり、シール性が損なわれて
ガス漏れを招く問題がある。
【0005】このような事情から、上記ロータやベーン
等の各摺動部材を軽量で耐摩耗性の高いアルミニウム合
金で製作することが検討されている。
【0006】しかし、アルミニウム合金単体の場合に
は、熱膨張係数が鉄の約2倍であり、従って他の鉄製部
品とのクリアランスの変動が大きくなりすぎることや耐
摩耗性が低いなどの点で問題があり、そのままでは実用
化することができない。
【0007】そこで、最近では新たに耐摩耗性の向上、
熱膨張係数の低減を目的として種々の強化材料を入れた
複合材料が考え出されている。
【0008】例えばアルミナ短繊維(Al23)やアルミ
ナ・シリカ短繊維(Al23・SiO2)、ホウ酸アルミニ
ウムウィスカー(9Al23・2B2)、チタン酸カリウム
ウィスカー(K2O・6TiO2)、炭化ケイ素ウィスカー
(SiC)等のセラミック系繊維成形体を強化材とし、該
セラミック系繊維・ウィスカー等の強化組織成形体に対
して、Si,Cu,Mg,Niなどを各々所定量ずつ含むアル
ミニウム合金溶湯をマトリクス材として含浸凝固させる
ことによって摺動部材用のアルミニウム複合材料を形成
したものが、それである(例えば特開平2−28243
8号公報、特開昭63−230983号公報等参照)。
【0009】該構成のアルミニウム複合材料によると、
強化材としてのセラミック系繊維成形体又はセラミック
系ウィスカー成形体などの組織成形体の作用により、ア
ルミニウム合金単体の場合に比べて熱膨張係数を大きく
低下させることができるとともに硬度や耐摩耗性も向上
させることができるようになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のアルミニウ
ム複合材料の場合、確かにアルミニウム合金単体の場合
に比べると、熱膨張係数が低下する一方、硬度が向上
し、耐摩耗性も高くなる。
【0011】ところが、上記強化材の体積率を所定値以
上増大させると、例えば摺動部に潤滑油が無くなったよ
うな時に焼き付きを生じる問題が見出される。かと言っ
て、上記強化材の体積率が所定値以下の状態では、上記
熱膨張係数の低減や耐摩耗性の向上など本来の効果が得
られない。
【0012】従って、何等かの焼付防止策を施す必要が
ある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1〜4各項
記載の発明は、各々上記の問題を解決することを目的と
してなされたものであって、それぞれ次のように構成さ
れている。
【0014】(1) 請求項1記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の構成 該発明のアルミニウム複合材料は、セラミック系組織成
形体よりなる強化材に、マトリクス材としてアルミニウ
ム合金が含浸凝固せしめられたアルミニウム複合材料に
おいて、上記セラミック系組織成形体中に所定量の自己
潤滑材が混入されていることを特徴とするものである。
【0015】(2) 請求項2記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の構成 該発明のアルミニウム複合材料は、上記請求項1記載の
アルミニウム複合材料の構成を基本構成とし、同構成に
おけるセラミック系組織成形体が、ホウ酸アルミニウム
ウィスカーとアルミナ短繊維のハイブリッド成形体であ
ることを特徴とするものである。
【0016】(3) 請求項3記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の構成 該発明のアルミニウム複合材料は、上記請求項1記載の
アルミニウム複合材料の構成を基本構成とし、同構成に
おける自己潤滑材が、硫化モリブデン(MoS2)粉末より
なることを特徴とするものである。
【0017】(4) 請求項4記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の構成 該発明のアルミニウム複合材料は、上記請求項1記載の
アルミニウム複合材料の構成を基本構成とし、同構成に
おける自己潤滑材が、チッ化ホウ素(BN)粉末よりなる
ことを特徴とするものである。
【0018】(5) 請求項5記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の構成 該発明のアルミニウム複合材料は、上記請求項1記載の
アルミニウム複合材料の構成を基本構成とし、同構成に
おける自己潤滑材が、カーボン(C)粉末よりなることを
特徴とするものである。
【0019】(6) 請求項6記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の構成 該発明のアルミニウム複合材料は、上記請求項1記載の
アルミニウム複合材料の構成を基本構成とし、同構成に
おける自己潤滑材が、カーボン(C)短繊維よりなること
を特徴とするものである。
【0020】
【作用】本願の請求項1〜4各項記載の発明は、それぞ
れ上記のように構成されている結果、当該各構成に対応
して次のような作用を奏する。
【0021】(1) 請求項1記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の作用 先ず上記セラミック系組織成形体は、アルミニウム合金
と複合化させると耐摩耗性に優れるようになり、また低
熱膨張係数を有するアルミニウム複合材料が得られるよ
うになる。しかも、アルミニウム合金単体の場合と全く
同様に比重が小さく軽量である。
【0022】ところが、該成形体の摺動部材の体積率
が、例えば20%を超えるようになると、固体潤滑性が
低下し、その結果、摺動部の油切れによって焼付きを生
ずる恐れが発生する。
【0023】しかし、本発明のように、セラミック系組
織成形体自体に所定量の自己潤滑材が混入されている
と、油切れを生じた時にも当該自己潤滑材が潤滑剤とし
ての機能を果たすようになるので、上記のような焼付き
は生じなくなる。
【0024】(2) 請求項2記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の作用 該発明のホウ酸アルミニウムウィスカーとアルミナ短繊
維とのハイブリッド成形体は、アルミニウム合金と複合
化させると耐摩耗性に優れるようになり、また低熱膨張
係数を有するアルミニウム複合材料が得られるようにな
る。しかも、アルミニウム合金単体の場合と同様に軽量
である。
【0025】そして、該ハイブリッド成形体を構成する
ホウ酸アルミニウムウィスカーは、それ自体の性質とし
て固体潤滑性を有している。従って、該ホウ酸アルミニ
ウムウィスカーを含むハイブリッド成形体に対して更に
上記のように自己潤滑材が混入されていると、摺動部材
自体の自己潤滑性能は一層向上し、油切れ時の焼付は、
より生じにくくなる。
【0026】(3) 請求項3記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の作用 該発明のアルミニウム複合材料の場合、上記の自己潤滑
材が、特に固体潤滑性の高い硫化モリブデン(MoS2)粉
末よりなっているので、成形体への混入が容易であると
ともに潤滑性向上効果が特に高くなる。
【0027】(4) 請求項4記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の作用 該発明のアルミニウム複合材料の場合、上記の自己潤滑
材が、特に固体潤滑性の高いチッ化ホウ素(BN)粉末よ
りなっているので、成形体への混入が容易であるととも
に潤滑性向上効果が特に高くなる。
【0028】(5) 請求項5記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の作用 該発明のアルミニウム複合材料の場合、上記の自己潤滑
材が、特に固体潤滑性の高いカーボン(C)粉末よりなっ
ているので、成形体への混入が容易であるとともに潤滑
性向上効果が高くなる。
【0029】(6) 請求項6記載の発明の自己潤滑性ア
ルミニウム複合材料の作用 該発明のアルミニウム複合材料の場合、上記の自己潤滑
材が、特に固体潤滑性の高いカーボン(C)短繊維よりな
っているので、成形体への混入が容易であるとともに潤
滑性向上効果が高くなる。
【0030】
【発明の効果】従って、本願発明の自己潤滑性アルミニ
ウム複合材料によると、油切れによる焼付を生ぜしめる
ことなく、安定した摺動性能を確保し得る摺動部材の提
供が可能となる。
【0031】
【実施例】次に、本願発明の実施例について詳細に説明
する。
【0032】先ず本実施例においてはホウ酸アルミニウ
ムウィスカー(9Al23・2B23)とアルミナ短繊維
(Al23)との合計の体積率を複合材料全体の25%と
30%のもの2種類を選び、それぞれの体積率において
更にホウ酸アルミニウムウィスカー/アルミナ短繊維の
混合比を変えたものを2種類選ぶことにより、結局それ
によって合計7種類のサンプル成形体を採用し、これら
を所定の金型内にセットして予熱した後、マトリックス
素材であるAl−Si系アルミニウム合金溶湯を注入し、
例えばプランジャによる1t/cm2程度の加圧状態下にお
いて十分に含浸させた上で凝固させることによってベー
ン又はロータ等のロータリーコンプレッサ用の摺動部材
を製造した。そして、この場合、上記マトリックス素材
であるAl−Si系アルミニウム合金としては、次の(表
1)に示すように、Si含有量が重量比20〜25%、C
u含有量が重量比2.0〜5.0%、Mg含有量が重量比0.5〜
2.0%、Ti含有量が重量比0.1〜0.2%の範囲内にあるも
のを選択して使用した。
【0033】
【表1】
【0034】そして、このようにして製造した摺動部材
のテストピースをJISに基づくT6熱処理(500℃
で4時間加熱した後、水焼入れし、再び200℃で4時
間加熱)によって析出相を形成させた後に熱膨張率の測
定及び図1に示すピンオンディスク式摩擦摩耗試験機に
よる摩耗テストをそれぞれ行った。
【0035】一般に、本発明材料のようにロータリコン
プレッサ用ベーンやロータ等に使用する場合、その熱膨
張係数がこれらの部材の周辺を構成する鉄系材料のそれ
と差のないことが望ましい。
【0036】このことから、次の(表2)に示す摺動部材
中におけるホウ酸アルミニウムウィスカーとアルミナ短
繊維の体積率(Vf)を変えた7種類のサンプルについて
各々熱膨張係数を測定した。目標とする熱膨張係数の範
囲は現行のベーン、ロータ等の周辺を構成する鋳鉄系材
料の熱膨張係数のレベル、即ち10.8/106・℃〜13.4/1
06・℃の範囲である。
【0037】
【表2】
【0038】上記(表2)よりホウ酸アルミニウムウィス
カーとアルミナ短繊維の合計(TOTAL)体積率(Vf)
が摺動部材全体の25%の時、アルミナ短繊維の比率を
最大にとると、それが目標範囲の下限であることを示し
ており、目標範囲の熱膨張係数に入るためには少なくと
も上記体積率が25%以上であることが必要である。し
かし、一方同合計(TOTAL)体積率が30%を越える
と、成形体の製造時において、体積率を上げるために圧
縮比をかなり上げることが必要となり、そのためにウィ
スカーや短繊維が細かく折れてアスペクト比の非常に小
さい、即ちウィスカーや短繊維の形状というよりはむし
ろ粒状に近い形状となり、摺動面からの脱落が生じて耐
摩耗性が著しく低下する問題を発生する。
【0039】また、本発明材料のようなアルミニウム複
合材料の製造工程において、上記合計体積率が30%以
上の成形体にアルミニウム合金溶湯を均一に加圧含浸さ
せることは現在の技術では困難である。したがってホウ
酸アルミニウムウィスカーとアルミナ短繊維のTOTA
L体積率としては摺動部材全体の25〜30%の範囲に
することが必要であり、又実際上それで十分である。
【0040】尚、ホウ酸アルミニウムウィスカー/アル
ミナ短繊維の上記合計体積率を25〜30%というよう
に広くとれるので、該合計体積率で熱膨張係数をコント
ロールできるのはもちろんであるが、体積率比によって
も熱膨張率のコントロールが可能であることが上記の
(表2)から明らかである。
【0041】次に図1に示すピン・オン・ディスク式摩
擦摩耗試験機にかけて摩耗テストを行った結果について
説明する。なお、図1において、符号1は固定側第1の
ディスク、同2は回転駆動側の第2のディスク、3a,3
b,3c(3cは図示省略)は第1のディスク1側に固定され
た3本のピン試験片を各々示している。そして、上記ピ
ン試験片3a,3b,3cと第2のディスク2を摺動させ
て、ピン試験片3a,3b,3cと相手材である第2のディ
スク2の摩耗量が測定される。摩耗テストとしては(表
2)の本実施例材料の中から摩耗試験Iにはサンプル
(A)〜(E)、摩耗試験IIには同(A),(D),(E)を選
び、一方その比較材料として下記の(表3)に示す(H)〜
(K)の材料を選んだ。また、相手方(第2のディスク2)
の材料としては、ロータ材として一般的に良く使用され
るNi−Cr−Mo鋳鉄を使用した。そして、摩耗テスト
Iは、すべり速度1m/sec、面圧645kgf/cm2の条件
で、7時間後の各々のピン試験片(図1の符号3a,3b,
3c)及び第2のディスク(図1の符号2)の摩耗体積を測
定した。一方、摩耗試験IIとして、すべり速度1m/s
ec、面圧850kgf/cm2の厳しい条件に設定して、1時
間後のピン試験片(図4の3a,3b,3c)の摩耗体積を測
定した。
【0042】
【表3】
【0043】摩耗試験Iの結果は、図3に示すように、
ウィスカーや短繊維の摺動部材中の体積率(Vf)が同一
であっても、アルミナ短繊維が単独の場合よりも耐摩耗
性が向上している。また、その体積率比を変えた(A)〜
(E)のいずれも現行の鋳鉄製ベーン材料(J)よりも耐摩
耗性が向上している。攻撃性については、(A)〜(E)の
いずれも相手材への攻撃性が少ないことを示している。
ただし、この試験ではホウ酸アルミニウムウィスカーの
摺動部材中の体積率が30%の複合材料(H)も、今回の
本実施例材料(A)〜(E)と比べて体積率、攻撃性共、同
様に微少に良好な特性を示していることがわかる。しか
しながら、より厳しい条件下の摩耗試験IIを行うと、
図4に示すように、(H)サンプルに異常摩耗が起こり、
非常に摩耗量が多くなった。そして、本実施例材料であ
る(A)〜(E)サンプルは、摩耗試験IIの厳しい条件下
でも良好な耐摩耗性を示した。ただ、(E)サンプルの摩
耗試験IIの結果を見ると、若干摩耗量が増加してお
り、厳しい条件下での耐摩耗性が現行材料レベル(J)で
あるためには、摺動部材中におけるアルミナ短繊維の体
積率の下限は5%であると考えられる。また熱膨張係数
について考えると、表2及び図5に示すように、摺動部
材中における合計(TOTAL)の体積率Vfが25%で
ある場合のサンプル(H)が13.4/106・℃の鋳鉄レベル
の上限であることを示しており、ホウ酸アルミニウムウ
ィスカーの下限は5%となる。
【0044】したがって目標とする特性を得るためと強
化材を複合材料中に均一に分散させるためには、図6に
示すようにアルミナ短繊維とホウ酸アルミニウムウィス
カーをいずれも摺動部材全体の5%以上の範囲にしてお
くことが必要である。
【0045】このことはTOTALの体積率が摺動部材
全体の25〜30%の範囲ではホウ酸アルミニウムウィ
スカー/アルミナ短繊維の体積率の比が、0.2〜5.0の範
囲であれば、摩耗特性が良好で、しかも低熱膨張係数と
いう優れた特性が得られることを示している。
【0046】また、熱膨張係数は(表2)より、摺動部材
中のアルミナ短繊維の体積率が減少する程、小さくでき
ることがわかり、同体積率の比を0.2〜5.0の広い範囲か
ら選ぶことが可能である。
【0047】また、比較材料の中でロータリコンプレッ
サ用ベーン材料として既に発表されているアルミニウム
複合材料サンプル(K)(SiCウィスカーとアルミニウム
合金による複合材料:SiCの摺動部材中の体積率Vf=
30%)と本実施例材料を比較すると(K)は摩耗量、相
手材への攻撃量も非常に多く、本実施例材料の方が優れ
ていることを示している。
【0048】以上のように、ホウ酸アルミニウムウィス
カーとアルミナ短繊維とのハイブリッド成形体の合計体
積率Vfを摺動部材全体中の25〜30%にまで高める
と、熱膨張係数が大きく低下し、耐摩耗性も大きく向上
した軽量の摺動部材として好適なものを得ることができ
る。従って、空気調和機用ロータリコンプレッサのロー
タやベーンとしても一応最適なものとなる。
【0049】ところが、該ロータリコンプレッサでは、
通常停止状態においては冷媒中の潤滑油の殆んどが下部
のオイルパンに流下して留った状態となっている。従っ
て、起動時には、ロータおよびベーン等の摺動部に潤滑
油が存在せず、焼付が生じる恐れがある。
【0050】そこで、本実施例では、このような事情を
考慮し、さらに上記のような構成のホウ酸アルミニウム
ウィスカーとアルミナ短繊維とのハイブリッド成形体に
自己潤滑機能を有した固体潤滑剤として、例えば硫化モ
リブデン(MoS2)粉末を混入させた上でアルミ複合材を
形成することにより、摺動時の固体潤滑性能を向上させ
て油切れ時の焼付きを防止するようにしている。
【0051】すなわち、本実施例においては、例えば、
上述したホウ酸アルミニウムウィスカー(体積率15%)
とアルミナ短繊維(体積率15%)とで合計体積率30
%、かつ配合比1/1のハイブリッド組織成形体を形成
するとともに、さらにアルミナ短繊維(体積率30%)の
組織成形体を形成し、それらの各々にMOS2粉末を体
積率7%ずつ混入させておき、その後、それら2組の成
形体を各々金型内で予熱した後、それぞれにマトリクス
素材である高ケイ素アルミ系合金Al−Si−Cu−Ni−
Mg溶湯(下記表4)を注入し、例えば1t/cm2程度の加
圧下で含浸凝固させることによって(B),(D)2種のア
ルミニウム複合材料を作成した。
【0052】そして、上記(B),(D)2種のアルミニウ
ム複合材料により、図1に示すようなピン試験片(3a〜
3c)を作成し、モニクロ鋳鉄を相手材(2)として、同図
1に示すピン・オン・デイスク式摩擦摩耗試験機による
摩耗試験を行った。
【0053】測定は同摩耗試験前後のピンの体積変化量
をマイクロメータにより測定することにより行った。
【0054】ここで、比較材料として選ばれたものは、
例えば上記本実施例の(B)と同様のアルミニウム複合材
料であって特にMOS2粉末を混入していない試料
(A)、上記マトリクス素材に用いた高Siアルミニウム
合金単体(E)、ハードナブルB2鋳鉄(F)などである
(下表5参照)。
【0055】その結果、自己潤滑性をもつ本発明実施例
材料(B),(D)が大気中において図2に示すように最も
良好な潤滑性、耐摩耗性を示した。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】以上のことから、上記のようにセラミック
系繊維であるアルミナ短繊維(Al23)やアルミナ・シ
リカ短繊維(Al2・SiO3)およびセラミック系ウィスカ
ーであるホウ酸アルミニウムウィスカー(9Al23・2
23)やチタン酸カリウムウィスカー(K2O・6TiO
2)、炭化ケイ素ウィスカー(SiC)の任意の組合せより
なるハイブリッド成形体に上述と同様の硫化モリブデン
(MoS2)粉末を混入して上記同様の摺動部材を形成すれ
ば、上記実施例同様に潤滑性、耐摩耗性の高い好適な摺
動部材を得ることができることが明らかである。
【0059】なお、上記硫化モリブデン(MoS2)粉末に
代えて同じく固体潤滑性が高いチッ化ホウ素(BN)粉末
やカーボン(C)粉末、カーボン(C)短繊維を自己潤滑材
として使用しても上記実施例と全く同様の効果を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願発明の実施例における自己潤滑性
アルミニウム複合材料の耐摩耗性を試験するピン・オン
・ディスク式摩擦摩耗試験機の構成を示す斜視図であ
る。
【図2】図2は、同複合材料よりなる摺動部材の上記図
1の試験機による摩耗量測定データのグラフである。
【図3】図3は、上記図1の摩擦摩耗試験機によって行
った上記実施例の第1の摩耗試験(I)の結果を示すグラ
フである。
【図4】図4は、同実施例における上記図1の摩擦摩耗
試験機による第2の摩耗試験(II)の結果を示すグラフ
である。
【図5】図5は、同実施例における摺動部材の熱膨張係
数測定データを現行鋳鉄レベルと対比して示すグラフで
ある。
【図6】図6は、同実施例の摺動部材のホウ酸アルミニ
ウムウィスカーとアルミナ短繊維の各混合比を相関的に
示すグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミック系組織成形体よりなる強化材
    に、マトリクス材としてアルミニウム合金が含浸凝固せ
    しめられたアルミニウム複合材料において、上記セラミ
    ック系組織成形体中に所定量の自己潤滑材が混入されて
    いることを特徴とする自己潤滑性アルミニウム複合材
    料。
  2. 【請求項2】 セラミック系組織成形体が、ホウ酸アル
    ミニウムウィスカーとアルミナ短繊維のハイブリッド成
    形体であることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑性
    アルミニウム複合材料。
  3. 【請求項3】 自己潤滑材が、硫化モリブデン(MoS2)
    粉末よりなることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑
    性アルミニウム複合材料。
  4. 【請求項4】 自己潤滑材が、チッ化ホウ素(BN)粉末
    よりなることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑性ア
    ルミニウム複合材料。
  5. 【請求項5】 自己潤滑性が、カーボン(C)粉末よりな
    ることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑性アルミニ
    ウム複合材料。
  6. 【請求項6】 自己潤滑性が、カーボン(C)短繊維より
    なることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑性アルミ
    ニウム複合材料。
JP20053291A 1991-08-09 1991-08-09 自己潤滑性アルミニウム複合材料 Pending JPH0543963A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100805392B1 (ko) * 2006-11-21 2008-02-20 박명자 분전반용 부스바 고정홀더
KR100811374B1 (ko) * 2007-04-10 2008-03-07 이승철 버스바의 체결 방법
CN106167367A (zh) * 2016-07-12 2016-11-30 合肥新沪屏蔽泵有限公司 一种屏蔽泵专用石墨轴承的生产工艺

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