JPH0541624U - 硬質層複合被覆エンドミル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 長寿命の硬質層複合被覆エンドミルを提供す
る。 【構成】 エンドミルのマージン部および刃先部に（Ｔ
ｉ，Ａｌ）Ｎ，（Ｔｉ，Ａｌ）Ｃ，（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮ
のうち１種または２種以上からなる複合化合物硬質層を
被覆し、フルート部にＴｉＮ硬質層を被覆してなる硬質
層複合被覆エンドミル。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、従来よりも一層使用寿命の長くかつ仕上面精度の優れた硬質層複 合被覆エンドミルに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、エンドミルは、高速度鋼やＷＣ基超硬合金などで製造されており、さ らに上記エンドミルを基体とし、その表面に窒化チタン（以下、ＴｉＮで示す） 硬質層を被覆してなる硬質層被覆エンドミルなども知られている。

【０００３】 また、切削中のエンドミルには、マージン部と刃先部にはいずれもこすり摩耗 （切削チップの逃げ面摩耗に相当する摩耗）が発生し、一方、フルート部には切 りくずの排出によって熱を伴う摩耗（切削チップのすくい面摩耗に相当する摩耗 ）が発生することも知られている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

上記Ｔｉｎ硬質層を被覆することにより、従来のエンドミルよりも耐摩耗性は 著しく向上し、使用寿命も延長されてきたが、加工の精密化と、高能率化に伴な って一層耐摩耗性に優れ、かつ仕上面精度が良好な硬質層被覆エンドミルが要求 されるようになってきた。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

そこで、本考案者等は、かかる要求に答えるべく一層長寿命でかつ仕上面精度 の優れたエンドミルを得るべく研究した結果 上記従来のＴｉＮ硬質層被覆エンドミルは、ＴｉＮ硬質層がこすり摩耗に弱い 被覆層であるために、マージン部や刃先部にこすり摩耗が生じやすく、かかるこ すり摩耗が発生すると加工の寸法精度が低下するので、上記マージン部と刃先部 にはＴｉＮよりもこすり摩耗に強いチタンとアルミニウムの複合窒化物｛以下、 （Ｔｉ，Ａｌ）Ｎと記す｝、複合炭化物｛以下、（Ｔｉ，Ａｌ）Ｃと記す｝およ び複合炭窒化物｛以下、（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮと記す｝のうちの１種の単層または ２種以上の複数を被覆し、一方フルート部には切り屑の排出によって熱を伴う摩 耗に強いＴｉＮ硬質層を被覆してなるエンドミルは、従来のＴｉＮ硬質層を全面 被覆したエンドミルよりも使用寿命が伸びかつ仕上面精度も優れているという知 見を得たのである。

【０００６】 この発明は、かかる知見にもとづいてなされたものであって、 エンドミルのマージン部および刃先部に（Ｔｉ，Ａｌ）Ｎ硬質層、（Ｔｉ，Ａ ｌ）Ｃ硬質層および（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮ硬質層のうちのいずれか１種の単層また は２種以上の複層を被覆し、フルート部にＴｉＮ硬質層を被覆してなる硬質層複 合被覆エンドミルに特徴を有するものである。

【０００７】 この考案の硬質層複合被覆エンドミルを図１にもとづいて、さらに詳細に説明 する。

【０００８】 図１は、この考案の硬質層複合被覆エンドミルの平面図であり、マージン部１ および刃先部２には（Ｔｉ，Ａｌ）Ｎ，（Ｔｉ，Ａｌ）Ｃ，（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮ のうちの１種以上からなる複合化合物硬質層４が被覆されており、フルート部３ にはＴｉＮ硬質層５が被覆されていることを示している。シャンク部６にはいず れの硬質層も被覆されない方が好ましい。

【０００９】 図２は、図１のＩＩ−ＩＩ断面図であり、マージン部１にはＴｉ，Ａｌ）Ｎ， （Ｔｉ，Ａｌ）Ｃ，（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮのうちの１種以上からなる複合化合物硬 質層４がフルート部３にはＴｉＮ硬質層５がそれぞれ被覆されていることを示し ている。

【００１０】 フルート部３には、エンドミル切削中に熱を伴う摩耗が発生すると共に切り屑 の溶着などが生じ、これらの現象が生じると切削仕上面精度が低下するが、かか る現象に対してはＴｉＮ硬質層が最も抵抗力があるところから、この考案のエン ドミルのフルート部３には従来の硬質層被覆エンドミルと同様にＴｉＮ硬質層５ を被覆した。

【００１１】

【実施例】

この考案の硬質層複合被覆エンドミルを実施例にもとづいて具体的に説明する 。

【００１２】 外径：６mmの寸法を有する市販のＷＣ基超硬合金製エンドミルを用意し、この エンドミルのシャンク部６、マージン部１および刃先部２をマスキングしてフル ート部３のみに通常のイオンプレーティング法により膜厚：３μｍのＴｉＮ硬質 層５を被覆し、ついでシャンク部６およびフルート部３をマスキングしてマージ ン部１および刃先部２に上記イオンプレーティング法により全膜厚が３μｍとな るように（Ｔｉ，Ａｌ）Ｎ硬質層、（Ｔｉ，Ａｌ）Ｃ硬質層および（Ｔｉ，Ａｌ ）ＣＮ硬質層を単層または複層被覆した複合化合物硬質層４を形成し、本考案硬 質層複合被覆エンドミルＡ〜Ｇを作製した。

【００１３】 一方、上記市販のＷＣ基超硬合金製エンドミルに膜厚：３μｍのＴｉＮ硬質層 をシャンク部を除いて全面被覆した従来硬質層被覆エンドミルを作製し、さらに 比較のために、上記市販のＷＣ基超硬合金製エンドミルにいずれも膜厚：３μｍ の（Ｔｉ，Ａｌ）Ｎ硬質層、（Ｔｉ，Ａｌ）Ｃ硬質層または（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮ 硬質層をシャンク部を除いて全面被覆した比較硬質層被覆エンドミルａ〜ｃを作 製した。

【００１４】 これらエンドミルを、 被削材：Ｓ４３Ｃ、 切削速度：６０ｍ／min.、 一刃あたりの送り：０．０１mm／刃、 深さ方向切り込み：１５mm、 切り込み幅：０．０５mm、 の条件でダウンカット方式による鋼の湿式片削り切削試験を行い、マージン部の 摩耗（以下、Ｖ_B max と記す）が０．２mm以上、もしくは被削材垂直面の表面粗 さ（以下、Ｒ maxと記す）が３．０μｍ以上となった時点を寿命とし、この寿命 に至るまでの時間を５分単位で測定し、それらの測定結果を表１に示した。

【００１５】

【表１】

【００１６】 表１に示される結果から、本考案硬質層複合被覆エンドミルＡ〜Ｇは、いずれも マージン部のＶ_B max が０．２mm以上となって寿命に至るまでの時間が従来硬質 層被覆エンドミルよりも格段に長く、一方、比較硬質層被覆エンドミルａ〜ｃは 被削材垂直面の粗さＲmax が３．０μｍ以上となって寿命に至るまでの時間が本 考案硬質層複合被覆エンドミルＡ〜Ｇよりも格段に短いことがわかる。

【００１７】

【考案の効果】

この考案のように異なった特性を有するＴｉＮ硬質層並びに（Ｔｉ，Ａｌ）Ｎ ，（Ｔｉ，Ａｌ）Ｃおよび（Ｔｉ，Ａｌ）ＣＮのうち１種以上からなる複合化合 物硬質層を有効に組合わせて複合被覆することにより従来よりも一層長寿命でし かも仕上面精度の良いエンドミルを提供することができ、コストの削減に寄与す ることができる為、産業上すぐれた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の硬質層複合被覆エンドミルの平面図
である。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ断面図である。

【符号の説明】

１ マージン部 ２ 刃先部 ３ フルート部 ４ 複合化合物硬質層 ５ ＴｉＮ硬質層 ６ シャンク部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンドミルのマージン部および刃先部に
   チタンおよびアルミニウムの複合窒化物硬質層、チタン
   およびアルミニウムの複合炭化物硬質層、並びにチタン
   およびアルミニウムの複合炭窒化物硬質層のうちのいず
   れか１種の単層または２種以上の複層を被覆し、フルー
   ト部に窒化チタン硬質層を被覆してなることを特徴とす
   る硬質層複合被覆エンドミル。