JP2001341007A - 被覆切削工具 - Google Patents
被覆切削工具Info
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Abstract
向上できる被覆切削工具を提供する。 【解決手段】 基材上に硬質被膜を形成した被覆切削工
具である。この基材は、1種以上の鉄族金属を含む結合
相と、周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物、窒化物、
酸化物およびそれらの固溶体よりなる群から選択される
1種以上の物質を含む硬質相とからなる。硬質被膜は次
の条件を満たす。 アスペクト比5以上で厚さ3μm以上の柱状晶TiCN層を
有す。 柱状晶TiCN層の上部にAl203層を具える。 柱状晶TiCN層の表面のうち刃先稜線部および同稜線部
のすくい面側境界部からすくい面側に500μmの範囲が平
滑面で構成され、同稜線部の逃げ面側境界部から逃げ面
側に200μmの範囲が粗面で構成される。 周期率表IVa、Va、VIa族元素、Alの炭化物、窒化物、
炭窒化物および酸化物よりなる群から選択される少なく
とも1種以上の硬質層を具える。
Description
性とを兼ね備えた被覆切削工具に関するものである。
金基材の表面に炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタン
あるいは酸化アルミニウム等の被覆層を蒸着させること
により耐欠損性と耐摩耗性を向上させ、工具寿命を向上
させることが行われている。
切削工具を用いて加工を行った場合、特に溶着しやすい
被削材の加工において、溶着によりすくい面側の膜剥離
が起こり、基材の欠損が進行する。さらに、逃げ面にお
いては、膜剥離からの摩耗が進行することにより工具寿
命の低下が発生していた。
なるすくい面側と逃げ面側に対して、それぞれ耐欠損性
と耐摩耗性を両立させ、工具寿命を向上できる被覆切削
工具を提供することにある。
被膜を形成した切削工具において、逃げ面側とすくい面
側における硬質被膜を異なる性状とすることで上記の目
的を達成する。
質被膜を形成した被覆切削工具である。この基材は、1
種以上の鉄族金属を含む結合相と、周期律表IVa、Va、V
Ia族元素の炭化物、窒化物、酸化物およびそれらの固溶
体よりなる群から選択される1種以上の物質を含む硬質
相とから構成される。そして、硬質被膜は、以下の条件
を満たすことを特徴とする。
の柱状晶TiCN層を具える。 柱状晶TiCN層の上部にAl203層を具える。 柱状晶TiCN層の表面のうち、刃先稜線部および同稜線
部のすくい面側境界部からすくい面側に500μmの範囲が
主に平滑面で構成され、同稜線部の逃げ面側境界部から
逃げ面側に200μmの範囲の少なくとも一部が粗面で構成
される。 周期率表IVa、Va、VIa族元素、Alの炭化物、窒化物、
ホウ化物、酸化物およびこれらの固溶体よりなる群から
選択される少なくとも1種以上の硬質層を具える。
3層を順に形成した被覆切削工具で、溶着し易い被削材
を削ったときに発生する基材欠損のメカニズムを解析し
た。その結果、刃先稜線部のすくい面側境界部からすく
い面側に500μmの範囲(ランド部が500μm以下のとき
は、そのランド部のみ:図1参照)では、上層部のAl20
3層に切り屑の溶着が発生し、溶着物の脱落に伴ってAl2
03層と共に柱状晶TiCN層も剥離し、基材の損傷に至るこ
とがわかった。そこで、溶着に伴って基材が欠損するよ
うな膜剥離を抑制するには、Al203層の下層の柱状晶TiC
N層表面を平滑面にすれば良いことが判明した。
り、上層のAl203層との密着力は減少し、Al203層が剥離
し易くなる。そのため、切削を行った場合、初期の溶着
によって容易にAl203層が剥離する。この剥離の際、柱
状晶TiCN層は平滑でAl203層との密着強度が弱いため、
ほとんど損傷を受けない状態で現れる。その結果、強靭
で平滑な柱状晶TiCN層には溶着が起こり難く、基材に損
傷が至るような膜剥離を抑制して、切削工具寿命を飛躍
的に改善することができる。
らのチッピング摩耗は、刃先稜線部の逃げ面側境界部か
ら逃げ面側に200μmの範囲で主に起こることがわかっ
た。そこで、こすれに対して良好な耐摩耗性を有するAl
203層を設け、Al203層の下層にある柱状晶TiCN層の少な
くとも一部を粗面とすることで、Al203層と柱状晶TiCN
層との密着力を向上し、工具の耐摩耗性を改善する。
以上の柱状晶TiCN層としたのは、主にAl203層が剥離し
た後の耐摩耗性を考慮したためである。アスペクト比
は、柱状晶TiCN層の上端の水平方向粒径をd1、下端の
水平方向粒径をd2としたとき、(d1+d2)/2と
結晶粒の長さ(垂直方向長さ)との比をとる。
て、切刃を構成する曲面部分を言う。刃先稜線のすくい
面側境界部とは、刃先稜線部と、そのすくい面側に連続
する面との境界を言う。刃先稜線の逃げ面側境界部と
は、刃先稜線部と、その逃げ面側に連続する面との境界
を言う。
における長さの70%以上の範囲でRmax0.5以下であり、
粗面は0.5μm<Rmax<5.0μmであることが好ましい。平
滑面のRmaxが0.5μmを越えると、柱状晶TiCN層表面の凹
凸が大きいために上層のAl20 3層との物理的界面密着力
が大きくなる。そのために切削時にAl203層上の切り屑
溶着が起こり、溶着物の脱落に伴って生じるAl203膜の
剥離の際に、柱状晶TiCN層の剥離も生じるためである。
μm<Rmax<5.0μmであると、柱状晶TiCN層とその上層
被膜との密着力が向上し、耐磨耗性が著しく向上する。
しかし、Rmaxが0.5μmより小さいと、柱状晶TiCN層とAl
203層との密着力が低下し、耐摩耗性に優れたAl203が容
易に剥離して摩耗が進行してしまうためである。また、
Rmaxが5.0μmを越えると、チップの最表面の凹凸が大き
いために、切削時に凸部に応力がかかることからの膜剥
離が進行し、耐摩耗性が著しく低下するためである。
a、VIa族元素、Alの炭化物、窒化物、ホウ化物、酸化物
およびこれらの固溶体よりなる群から選択される少なく
とも1種以上の硬質層を具える。この具体例としては、T
iN、TiC、TiCN、TiAlN、Al2O3等が挙げられる。特に、
粒状晶のTiNを基材直上に配置することで、柱状晶のTiC
N層との密着力が強化され、柱状晶のTiCN層の耐欠損性
・耐摩耗性が一層向上する。なお、この硬質層は単層で
も多層でも構わない。
ことが好ましい。α-アルミナからなるAl203層は膜強度
および柱状晶TiCN層との密着力に優れ、刃先稜線部およ
び同稜線部のすくい面側境界部からすくい面側に500μm
の範囲では耐欠損性が、刃先稜線部の逃げ面側境界部か
ら逃げ面側に200μmの範囲では耐摩耗性が優れるからで
ある。また、刃先稜線部の逃げ面側境界部から逃げ面側
に200μmの範囲でAl 203層の表面はRmax1.0μm以下とす
ることが望ましい。この構成により、下層のTiCN層の粗
面化によって、密着力が向上した上に、アルミナ層表面
が平滑なことにより、アルミナ層への被削材の溶着がさ
らに抑制される。これにより、表面の研磨のみ(従来技
術)では得られなかった優れた耐剥離性が得られ、硬質
被膜の剥離にともなう工具寿命の低下を抑制することが
できるからである。
を制御する方法としては研磨が好ましい。特に、柱状晶
TiCN層は、研磨範囲が限定されている、所定の表面
粗さ(Rmax0.5μm以下)が得られる、といった理由から
ラッピング研磨が望ましい。ラッピングの研磨剤粒度を
変化させることで、柱状晶TiCN層あるいはAl203層自身
の表面を研磨することはもちろん、これら各層の下地表
面を研磨することでも柱状晶TiCN層あるいはAl203層の
表面粗さを制御することができる。
的蒸着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)を利用すること
ができる。特に、プラズマCVD法や、イオン照射法によ
る成膜では平滑な膜が得られ、上記の規定を満たす膜を
容易に得ることができる。TiCN層やTiC層の結晶状態を
柱状晶にするか粒状晶にするかも公知の条件、例えば主
に成膜の温度条件を制御することで調整できる。一方、
基材の材料として超硬合金を用いる場合、基材表面部に
脱β層を有し、この脱β層の平均厚みを5〜50μmとす
ることが好ましい。この構成によっても、耐摩耗性と耐
欠損性の向上を図ることができ、工具寿命を延命するこ
とができる。
する。 (実験例1)まず、87%WC-2.5%TiC-1.5%TiCN-3%TaN
bC-6%Co(いずれも質量%)からなる組成の超硬合金を
用いて、型番CNMG120408の形状の切削チップを作製し
た。次に、切刃部全体に刃先処理として、振動バレルを
用いてすくい面側から見て0.05mm幅の曲面状面取りを施
して基材とした。
晶または柱状晶TiNを被覆し、その後、柱状晶TiCN層を
形成した。TiN成膜の際は、成膜温度を変化させること
で、結晶状態の制御を行った。TiN層の厚みは0.3〜0.5
μmである。また、柱状晶TiCN層の厚みは8.0〜10.0μm
である。さらに、柱状晶TiCN層については結晶粒のアス
ペクト比も求めた。アスペクト比は、柱状晶TiCN層の上
端の水平方向粒径をd1、下端の水平方向粒径をd2と
したとき、(d1+d2)/2と結晶粒の長さ(垂直方
向長さ=膜厚)との比をとる。その結果、アスペクト比
はいずれのサンプルも5.8〜7.2の範囲であった。
び同稜線部のすくい面側境界部からすくい面側に500μm
の範囲(第一領域)ならびに刃先稜線部の逃げ面側境界
部から逃げ面側に200μmの範囲(第二領域)において、
4種類の硬さの人工ブラシを用いて研磨・ラッピング処
理を施した後、表面粗さの測定を行ったところ、表1に
示すような結果になった。刃先稜線部、刃先稜線部のす
くい面側境界部、刃先稜線部の逃げ面側境界部の各々は
図1に示す通りである。すなわち、刃先断面において、
切刃を構成する曲面部分を刃先稜線部1とする。また、
刃先稜線部のすくい面側の縁部をすくい面側境界部境界
部2、刃先稜線部1の逃げ面側の縁部を逃げ面側境界部3
とする。
し、表1に記載した各種構造の硬質被覆膜を形成した。
ここで、被覆膜表面の滑らかさは、基材のうねりと区別
するために、基準長さ20μmに対する面粗さ(Rmax)を
チップ断面の走査型電子顕微鏡写真により測定した。
ップを用いて、下記に示す条件にて、切削を行い、第一
領域の耐チッピング性と、第二領域における耐摩耗性
(VB摩耗)の評価を行った。
て第一領域でRmax≦0.5μmにした場合、すくい面におい
てはAl2O3膜が剥離して平滑な柱状晶TiCN層が露出した
後に基材露出または基材欠損にまでおよぶことが効果的
に抑制でき、TiCNの耐剥離性が著しく向上できることが
わかる。
Rmax0.5〜5.0μmである部分が存在する場合は、同一切
削時間における摩耗が抑えられ、耐摩耗性と耐剥離性が
両立されていることかわかる。
ある場合と比較して、基材との密着力、さらには上層の
TiCN層との密着力が向上するため、より好ましい。
1の試料と同様に処理し、さらに表1のNo.2の試料と同じ
ブラシを使い、第一領域にすくい面側から、第二領域に
逃げ面側から同様の磨き処理を行ったチップを4個と、
比較として表1のNo.8の試料と同じブラシを使い、同様
の磨き処理を行ったチップを作製し、表面粗さの測定を
行った。その結果を表2に示す。
はα−Al2O3膜を被覆し、表2に記載した各種構造の硬質
被覆膜を形成した。さらに、被覆したAl2O3膜上からす
くい面、逃げ面をそれぞれブラシを用いて、研磨・ラッ
ピング処理を施して表面粗さを測定したたところ、表2
に示す結果となった。表面粗さの測定は、基材のうねり
と区別するために、基準長さ20μmに対する面粗さ(Rma
x)をチップ断面の走査型電子顕微鏡写真により測定し
た。
ップを用いて、下記に示す条件にて切削を行い、第一領
域の耐チッピング性と、第二領域の耐摩耗性(VB摩耗)
を評価した。
とによって表面粗さを平滑にすると逃げ面における耐摩
耗性が良くなる。これは、下層のTiCN表面の一部に粗い
部分があることによりAl2O3との密着力が向上し、そのA
l2O3膜の表面が平滑であることからAl2O3の表面の凸部
から剥がれ落ちるようなこすれ摩耗が抑制されるためで
ある。
が好ましく、1.0μm超の場合は、Al2O3層の凸部に被削
材が溶着しやすくなり、長時間切削を行った場合、逃げ
面の異常摩耗につながる。
Dの超硬合金基材を用いて、実験例1,2と同様に切削チ
ップの作製を行った。ここで、Bの超硬合金は実験例1,
2で用いたものである。切刃部全体に刃先処理として、
振動バレルを用いてすくい面側から見て0.05mm幅の曲面
状面取りを施した。そして、各基材の脱β層の厚みを測
定した。脱β層は周期率表IVa、Va、VIa族元素の炭化物
と鉄族金属(Co)のみからなり、切刃稜線を構成する面
の平坦部に対してほぼ平行に析出していた。また、脱β
層の厚みは、この平坦部に沿った部分での厚みを測定し
た。
法)によりTiNを被覆し、その後、柱状晶TiCNを被覆し
た。TiN成膜の際は、成膜温度を変化させることで、粒
状晶に制御を行った。実験例1に示したNo.2の試料と同
様に柱状晶TiCN表面のブラシ処理を行った。
柱状晶TiCN層の厚みは8.0〜10.0μmである。さらに、柱
状晶TiCN層については結晶粒のアスペクト比も求めた。
その結果、アスペクト比はいずれのサンプルも5.8〜7.2
の範囲であった。
被覆し、表4に記載した各種構造の硬質被覆膜を形成し
た。さらに、被覆したAl2O3膜上からすくい面、逃げ面
をそれぞれブラシを用いて、研磨・ラッピング処理を施
したところ、表4に示すような結果となった。これは表2
のサンプルNo.2-1と同等処理のものである。被覆膜表面
の滑らかさは、基材のうねりと区別するために、基準長
さ20μmに対する面粗さ(Rmax)をチップ断面の走査型
電子顕微鏡写真により測定した。
ップを用いて、下記に示す条件にて、切削を行い、第一
領域の耐チッピング性と、第二領域の耐摩耗性(VB摩
耗)の評価を行った。
厚みは5μm以下になると切削の際、切れ刃部の硬度が高
いため、刃先部に小さなチッピングが見られ、摩耗量は
小さいが、そのチッピングによって摩耗の乱れがみられ
る。
表面の硬度が低くなり、耐摩耗性が低下する。
よれば、刃先稜線部からすくい面側と逃げ面側とで異な
る性状の硬質被膜を形成することで、耐欠損性と耐摩耗
性とを両立することができ、長寿命の切削工具を得るこ
とができる。
部のすくい面側境界部、刃先稜線部の逃げ面側境界部の
説明図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 基材上に硬質被膜を形成した被覆切削工
具であって、 前記基材は、1種以上の鉄族金属を含む結合相と、周期
律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物、窒化物、酸化物およ
びそれらの固溶体よりなる群から選択される1種以上の
物質を含む硬質相とからなり、 前記硬質被膜は、以下の条件を満たすことを特徴とする
被覆切削工具。 アスペクト比5以上で、厚さ3μm以上の柱状晶TiCN
層を具える。 柱状晶TiCN層の上面にAl203層を具える。 柱状晶TiCN層の表面のうち、刃先稜線部および同稜線
部のすくい面側境界部からすくい面側に500μmの範囲が
主に平滑面で構成され、同稜線部の逃げ面側境界部から
逃げ面側に200μmの範囲の少なくとも一部が粗面で構成
される。 周期率表IVa、Va、VIa族元素、Alの炭化物、窒化物、
ホウ化物、酸化物およびこれらの固溶体よりなる群から
選択される少なくとも1種以上の硬質層を具える。 - 【請求項2】 前記柱状晶TiCN層における平滑面はRmax
0.5μm以下であり、粗面が0.5μm<Rmax<5.0μmである
ことを特徴とする請求項1に記載の被覆切削工具。 - 【請求項3】 硬質層は基材の直上に形成される粒状晶
TiN層であることを特徴とする請求項1または2に記載
の被覆切削工具。 - 【請求項4】 Al203層の表面が刃先稜線部の逃げ面側
境界部から逃げ面側に200μmの範囲でRmax1.0μm以下で
あることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
被覆切削工具。 - 【請求項5】 Al203層がα-アルミナで構成されること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被覆切削
工具。 - 【請求項6】 基材の最表面に周期率表IVa、Va、VIa族
元素の炭化物と鉄族金属のみからなる脱β層が切刃稜線
を構成する面の平坦部に対してほぼ平行に析出し、その
脱β層の厚みが前記平坦部に沿った部分で5〜50μmにな
っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載
の被覆切削工具。
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2000
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